研究テーマ 「トランジスタの音響特性の比較」 継sw aiwa ls‐10 測定用回路...

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2009 年 8 月 31 日(月) 研究テーマ 「トランジスタの音響特性の比較」 実験者:Zacky

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Page 1: 研究テーマ 「トランジスタの音響特性の比較」 継SW AIWA LS‐10 測定用回路 自作 ZTT‐01 回路用電源 三菱電機 D001(DC 5.6V) (φ2.1 端子に改造)

2009 年 8 月 31 日(月)

研究テーマ

「トランジスタの音響特性の比較」

実験者:Zacky

Page 2: 研究テーマ 「トランジスタの音響特性の比較」 継SW AIWA LS‐10 測定用回路 自作 ZTT‐01 回路用電源 三菱電機 D001(DC 5.6V) (φ2.1 端子に改造)

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1. 目的 今後、趣味・実用に関わらず、トランジスタを用いたアンプをはじめとした音響機器の製作を

する可能性がある。そこで様々なトランジスタを比較することにより、トランジスタの選別作業

の手掛かりとする。

2. 原理 トランジスタの動作原理に関しては、本実験の趣旨以前の問題なので割愛する。 一般にトランジスタの特性は動作原理や構造など(Transister、Junction‐FET、MOS‐FETや、バイポーラトランジスタ、またはダーリントントランジスタなど)により決まっているとさ

れ、それに固有の増幅率等の値がある程度である。しかし現実的に同じ値のトランジスタを用意

しても、全く同じ効果が得られることは稀である。これは製造上の誤差ではなく、材質、製造工

程の差などに起因しているとされる。このような差は、トランジスタをオーディオに利用した時

に顕著に出ると言われている。 今回の実験では、このようなトランジスタの現実的な特性を測定する。 なお、今回の実験で用いるのは NPN 型トランジスタであり、型番としては「2SC~~」または

「2SD~~」である。ここで各英数字の意味は、Fig.1 の通りである。

Fig.1 NPN 型トランジスタの型番 すなわち「2S~~」というのは、2+1=3 より、「足が 3 本生えた半導体」という意味である。

3 文字目には、その半導体の構造・使用用途を示す文字が入り、他にも PNP 型トランジスタや J‐FET、MOS‐FET、UJT などもあるが、ここでは C・D の紹介だけに留める。 4 文字目以降には数字が入り、これは工業会への登録番号である。すなわち、新しい方が番号が

大きいことになる。 数字の後ろにさらにアルファベットが入ることがあるが、これは増幅率のランクや、改良品で

あることを示すものである。 また、数種類の形状がある。中には金属製の放熱板を持つものもある。それらについては、4.実験結果の項にて、写真と共に示す。

2 S C ~~ C:高周波向け NPN 型トランジスタ 有効接続端子数-1 Semiconductor(半導体) D:低周波向け NPN 型トランジスタ

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3. 実験

単純

交換の

そし

示すと

ここ

を2つこのよ

であり

準備

純なエミッタ

の実現のため

して、Fig.2とおりである

こで、トラン

つ合わせ左右

ような条件か

り、太線外は

タフォロワ回

めに、IC ソケ

の回路図を

る。なお、太

ンジスタを I右バランスと

から、基板上

は箱への埋め

回路を構成し

ケットを利用

F

をもとに、ユ

太線内が基板

IC ソケット

とすることに

上での配置は

め込みである

F

3

し、トランジ

用した。回路

Fig.2 実験

ニバーサル基

板上であり、

トにより着脱

により、比較時

は Fig.2 のよ

る。なお部品

Fig.3 回路

ジスタが交換

路は、Fig.2

験回路図

基盤上に回路

それ以外は

脱可能な構造

時に音量バラ

ようになった

に関しては、

路配置図

換できるよう

のとおりで

路を構成する

は箱への埋め

造にし、かつ

ランスの調節

た。なお、太

、千石電商、

うにする。ト

ある。

る際の配置は

込みである。

ボリューム

節ができるよ

太線内が基板

秋月電子で

ランジスタ

は、Fig.3 に

。 (Vol・VR)

ようにする。

板上への配線

で購入した。

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以上のように設計した回路の完成写真を、以下の Fig.4~ に示す。

Fig.4 完成全体写真

Fig.5 完成写真(上より)

Fig.6 電源装置

以下、便宜のため、このトランジスタ音響特性測定回路を、ZTT‐01(Zacky Transister Tester

壱号機)と呼ぶことにする。

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4. 実験結果 実験概要

実験日: 2009 年 8 月 31 日(日) 実験室: Zacky 自宅・自室 気象条件: 天候 雨 温度 22℃ 湿度 65%

使用機器 音源 SONY PSP3000 (mp3 320kbps) ミキサー Vestax Professional Mixing Controller PMC‐03A (Ch.1) ヘッドフォン NAPOLEX TPH‐100

中継 SW AIWA LS‐10 測定用回路 自作 ZTT‐01 回路用電源 三菱電機 D001(DC 5.6V)

(φ2.1 端子に改造)

これらを、Fig.7 のように接続した。 なお、電源は ZTT‐01 用である。 また、自室アンプ設備を利用せず、PSP を利用するのは、

仮に自室設備を利用した場合、経由する機器が多くなるため

である。 被測定トランジスタ(NPN 型) 2SC 114 2SC 124 2SC 732 2SC3112 2SC3311 2SC4408 2SC5000 2SD560 (※) 2SD1419A (※) 2SD1513 計 10 組 ※購入場所

無印 「千石電商」(秋葉原) ※ 「埼玉パーツセンター」(東大宮) なお、今回使用したトランジスタの外形は、以下の Fig.8 に示すように、4 種(5 種)に大別さ

れる。

Fig.7 接続図

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左か

TOTOTOTOTO 特

に便利

評価基

以下

りつけ

から順に、以

O‐3P 型(金

O‐3P 型(

O‐376 型 O‐92 型 O‐92MOD

特に TO‐3P利である。

基準 下の項目別に

けないものと

各音域の鳴

音の輪郭、

安定性・耐

以下に示すと

金属製放熱板

モールド放熱

D 型

型に関して

に、4 段階(

とする。 鳴り(高音・

アタック 耐久性

Fig

とおりである

板) 熱板)

ては、ケースや

(◎、○、△

中音・低音)

6

g.8 トランジ

る。 (2SD1128)(2SD2012)(2SC3311)(2SC732)(2SC4408)

や放熱フィン

、×)で評価

) (ミキサ

・ダイナミッ

・ノイズ具合

ジスタの外形

) ) ) )

ン取り付け用

価する。基本

サーで高音・

ックスレンジ

用のネジ穴が

本的に、”×”

・低音を調節

が付いている

”はよほどひ

節して評価)

・備考

るため、実装

ひどくない限

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使用音源(mp3 320kbps) モーツァルト 「歌劇「フィガロの結婚」序曲 K492」(ロンドン交響楽団) James Barns 「Heatherwood Portrait」(The Southern Winds Band) Michel Camilo 「Not Yet」 T-Sliding 「The Sultan Fainted」 The King’s Singers 「Hummelflug/Flight of the Bumble Bee」 Cream 「I Feel Free」 Eric Clapton 「Layla(Acoustic)」 Offspring 「Video Killed the Radio Star」 広瀬香美 「Groovy!」 坂本真綾 「プラチナ」 グミ 「Catch You Catch Me」 観月あんみ 「0 の軌跡」 第二文芸部 「go on a trip」 放課後ティータイム 「ふわふわ時間(StudioMix)」 田井中律 「Girly Storm 疾走 Stick」 SURFACE 「さぁ」 fripSide 「hurting heart」 妖精帝國 「last moment」 いとうかなこ 「悲しみの向こうへ」 ワイルド三人娘 Feat. M.C. マヨ

「CC♪4U [Chiyoren-channel♪for you]‐ちよれんちゃんねる♪の歌‐」 ave;new feat.佐倉紗織 「true my heart –Lovable mix-」 し・ふぉ・ん 「絶対領域っ!」 青葉りんご 「ぶっちぎりシューティングスター(short ver.)」 yozuca*・YURIA・佐藤裕美 「ガッデーム&ジュテーム」 Honey Bee(YURIA) 「プラスチックスマイル(虹色ギターVIRSION)」 yozuca* 「Happy my life ~Thank you for everything!!~」 yozuca* 「Rainbow 07」 計 27 曲の冒頭、ないしサビ部分を連続的に試聴した。

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以下の Fig.9 ~に、測定中の写真を示す。

Fig.9 音源・ミキサー・ZTT‐01 の写真

Fig.10 使用ミキサー写真

Fig.11 使用ヘッドフォン写真

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測定結果は、以下の表 1 のようになった。

表 1 トランジスタ音響特性の測定結果

Tr.型番

2S~~ 形状

各音域の鳴り 音の輪郭

・アタック

ダイナミックス

レンジ

安定性・

耐久性

ノイズ

具合 備考

高音 中音 低音

C114 TO‐376 ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 元音量が小さい。 音源に忠実。

音の重心が上なので、ジャズなど「味」のある音は難しい。

C124 TO‐376 ○ ○ △ ○ ○ ○ × 元音量が小さい。 音源に忠実。

打撃音は good!

C732 TO‐92 △ ○ △ ○ ○ ◎ ○ 中域 good! 上下 bad… 男声高音が良さげ。

ハーモニー ○、音ののび ×

C3112 TO‐92 ◎ ○ ○ ◎ △ ○ △ 音量大で曇る。 平均的な sound 小電力向け

C3311 TO‐376 ◎ ○ ◎ ◎ ◎ △ ○ 音量大で明るくなる! 各音域が明確。 凄く良い!

ただ、発熱大。

C4408 TO‐92MOD ○ ○ ○ ◎ ◎ △ ○ ギターの歪み系・Tube サウンドに良さげ。 音量大で太い音。

のびのある音。 大音量でロックを聴くのに良いかも。

C5000 TO‐3P ○ ○ △ ○ ◎ ○ △ 温まるのが遅い。 渋めのサウンド。

D560 TO‐3P △ ○ ○ △ ◎ △ ○ 癖は少ない。 重心低めの重厚な sound

D1419A TO‐3P ○ ○ ◎ △ ◎ ○ △ 温まるのが遅い。 大音量でも歪まない。

楽器による特性小。 声楽・しっとり系向き。

D1513 TO‐92 ◎ ○ ○ ◎ ◎ ○ × 音量大で低音上昇。 高音が太い。

ライブ音源系向け。

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5. 考察 表 1 から型番が新しいものほど、「音の輪郭・アタック」が良いことが分かる。これは、旧型の

トランジスタは低周波のみでしか動作しなかったが、現在のものは技術向上により高周波に対す

るレスポンスが良くなったためであろう。そのため、「C」は高周波用、「D」は低周波用と言われ

るが、実際、「C」は高周波”にも”対応しているという結果が、「各音域の鳴り」からも分かる。古

い型番は高周波に弱いが、現在のものが低周波に弱いということは言えない。 「ダイナミックスレンジ」に関しては、それほど大きな差はみられなかった。これは、通常の

電気回路として使用する信号に対し、音声波形がそれほど大きなものではなかったためであろう。

電源電圧も 5V 程度しか印加していないため、限界試験としては不十分だったようだ。しかし、ダ

ーリントントランジスタ(D560、D1419A)は、入力を大きくしても歪みも少なく、流石はパワ

ーに強いダーリントンと言ったところだろうか。 「安定性・耐久性」に関しては、試験後の発熱を中心に判断した。TO‐3P 型は放熱板が付属

しているため、元々の発熱量が大きかったが、放熱効率を考えれば十分な性能だろう。 「ノイズ具合」は、無音時のハム音(ホワイトノイズ・レディオノイズ)の大小を比較した。

元々IC ソケットに乗せているだけなので完全な無音は難しいと思われたが、やはり大きくなって

しまっているものが目立ったように思われる。 以下、Zacky 主観で、各トランジスタにあった楽曲を列挙する。

2SC 114 Groovy! 2SC 124 Catch You Catch Me 2SC 732 Flight of the Bumble Bee 2SC3112 true my heart ‐Lovable mix‐ 2SC3311 何でもいけます 2SC4408 ロック系 2SC5000 I Feel Free 2SD560 0 の軌跡 2SD1419A last moment 2SD1513 ライブ音源系

全体を通して、「2SC3311」の音響特性が素晴らしかった。音量を大きくしても音が曇るどころ

か、さらに明るさが増し、各音域が明確に鳴る。欠点としては、TO‐376 型のためか、発熱が大

きく、トランジスタ本体が熱を持ちやすいという点にある。ケースのク工夫などからこの問題を

解決できれば、相当に優秀なトランジスタといえるだろう。

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6. 参考文献

MKK(松下開発研究) > Other > 電子工作 > ヘッドフォンアンプの製作 http://mkk.s20.xrea.com/AMP.htm

FreeLab 部品倶楽部 > 能動素子「トランジスタ」 http://part.freelab.jp/p_transistor.html