道路将来政策研究 - ctie.co.jp ·...

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- 4 - 道路将来政策研究 Study on a road future Policy 前田信幸 *1 岩崎順一 *1 野見山尚志 *1 山田敏之 *1 鈴村雅彦 *1 海老原寛人 *1 小原裕博 *2 田中文夫 *2 牛来司 *3 長南政宏 *3 江守昌弘 *4 土屋三智久 *4 金子学 *5 今西由美 *5 国久荘太郎 *6 Nobuyuki MAEDA, Jyunichi IWASAKII,Hisashi NOMIYAMA, Toshiyuki YAMADA, Masahiko SU ZUMURA,Hiroto EBIHARA,Yasuhiro OBARA,Fumio TANAKA, Tukasa GORAI, Masahiro CHOONAN, Masahiro EMORI,Michihisa TUCHIYA, Manabu KANEKO, Yumi IMANISHI, Soutarou KUNIHISA 急速な少子高齢化の進行、中国の経済的台頭などによる世界的な経済枠組みの変化等を背景とし、国内の 各分野の政策が転換点を迎えつつある中で、地方財政改革などの推進により、行政組織、手法自体も変貌す る可能性が高い。これらを踏まえると当社が、将来に渡り安定した技術力と生産性を保持し、より信頼させ るコンサルタントとして地位を確保してゆくためには、公共政策の動向を的確に把握し適宜必要な技術を習 得してゆくことが不可欠である。本研究では、これらを踏まえ、記の背景の元、「交通経済」、「物流」、「観光」、 「地域経営」というキーワードに着目し、それぞれの研究会を通して知識と技術の移植を図るとともに、当 社の商品技術として育成することとした。 キーワード: 交通経済、物流、観光、地域経営、産業構造 . 背景と目的、ねらい 本研究は、急速に変化する今日の社会環境下において、 当社顧客への高い付加価値・満足の提供、当社の社会的 地位向上などを最終目標に据え、これらの実現に必要な 知識や技術の習得を行うものである。中でも特に「交通 経済」、「物流」、「観光」、「地域経営」というキーワード に着目し、社内外の4つの研究会で、それぞれ研究を行 った。各研究会の狙いと主な研究テーマは以下の通りで ある。 表-1 実施研究会とその狙い 項目 主な研究会 狙い 交通経済 応用経済分析研究会 実業務で通用する交 通経済技術の習得 物流 日本交通政策研究会 物流に関する知識を 蓄積するとともに早 急に核となる技術を 習得 観光 道路計画研究会 新たな道路計画手法 への構築 地域経営 国土マネジメント研 究会 「国土形成計画法が 求める計画立案手 法」に関する研究 . 研究体制 各研究会の実施体制は以下の通りである。 <応用経済分析研究会> <日本交通政策研究会> <講師> 国久荘太郎 技術顧問 <参加者> 東京本社道路・交通部(3名) オブザーバー(適宜) 所 属 氏 名 主査 専修大学商学部 准教授 岩尾 詠一東京海洋大学海洋工学部 教授 苦瀬 博仁 早稲田大学商学学術院 教授 杉山 雅洋 宇都宮大学工学部 准教授 森本 章倫 物流評論家 富樫 道廣 日通総合研究所 経済研究部 渡部 幹 三菱総合研究所 社会システム本部 政策マネジメント研究グループ 古明地 哲光英システム(株) 野澤 良彬 財団法人 日本海事センター 企画研究部 李 志明 東京海洋大学 大学院海洋科学技術研究科 博士前期課程 海運ロジ スティクス専攻 延東 晃 東京海洋大学 海洋工学部 流通情報工学科 水野 律 国土交通省道路局企画課道路経済調査室 田中 完秀 国土交通省道路局企画課道路経済調査室 市川 智秀 建設技術研究所 技術顧問 国久荘太郎 建設技術研究所 東京本社 道路・交通部 野見山 尚建設技術研究所 東京本社 道路・交通部 山口 大輔 *1 東京本社・道路・交通部 Road & Transportation Engineering Division ,Tokyo office *2 東京本社・都市システム部 Urban Planning Division ,Tokyo office *3 東京本社・社会システム部 地域マネジメント室 Community Affairs – Research Analysis Division , Public Outreach & Awareness Section ,Tokyo office *4 中部支社・総合技術部 Engineering Division , Chubu office *5 本社機構・国土文化研究所・企画室 Research Center for Sustainable Communities, Research Planning Section ,Head office *6 本社機構・技術顧問 Technical advisor, Head office

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道路将来政策研究 Study on a road future Policy

前田信幸*1 岩崎順一*1 野見山尚志*1 山田敏之*1 鈴村雅彦*1 海老原寛人*1 小原裕博*2田中文夫*2 牛来司*3 長南政宏*3 江守昌弘*4土屋三智久*4 金子学*5 今西由美*5 国久荘太郎*6

Nobuyuki MAEDA, Jyunichi IWASAKII,Hisashi NOMIYAMA, Toshiyuki YAMADA, Masahiko SU ZUMURA,Hiroto EBIHARA,Yasuhiro OBARA,Fumio TANAKA, Tukasa GORAI, Masahiro CHOONAN, Masahiro

EMORI,Michihisa TUCHIYA, Manabu KANEKO, Yumi IMANISHI, Soutarou KUNIHISA

急速な少子高齢化の進行、中国の経済的台頭などによる世界的な経済枠組みの変化等を背景とし、国内の

各分野の政策が転換点を迎えつつある中で、地方財政改革などの推進により、行政組織、手法自体も変貌す

る可能性が高い。これらを踏まえると当社が、将来に渡り安定した技術力と生産性を保持し、より信頼させ

るコンサルタントとして地位を確保してゆくためには、公共政策の動向を的確に把握し適宜必要な技術を習

得してゆくことが不可欠である。本研究では、これらを踏まえ、記の背景の元、「交通経済」、「物流」、「観光」、

「地域経営」というキーワードに着目し、それぞれの研究会を通して知識と技術の移植を図るとともに、当

社の商品技術として育成することとした。

キーワード: 交通経済、物流、観光、地域経営、産業構造

1. 背景と目的、ねらい 本研究は、急速に変化する今日の社会環境下において、

当社顧客への高い付加価値・満足の提供、当社の社会的

地位向上などを 終目標に据え、これらの実現に必要な

知識や技術の習得を行うものである。中でも特に「交通

経済」、「物流」、「観光」、「地域経営」というキーワード

に着目し、社内外の4つの研究会で、それぞれ研究を行

った。各研究会の狙いと主な研究テーマは以下の通りで

ある。

表-1 実施研究会とその狙い

項目 主な研究会 狙い

交通経済 応用経済分析研究会 実業務で通用する交

通経済技術の習得

物流 日本交通政策研究会

物流に関する知識を

蓄積するとともに早

急に核となる技術を

習得

観光 道路計画研究会 新たな道路計画手法

への構築

地域経営 国土マネジメント研

究会

「国土形成計画法が

求める計画立案手

法」に関する研究

2. 研究体制 各研究会の実施体制は以下の通りである。 <応用経済分析研究会>

<日本交通政策研究会>

<講師>

国久荘太郎 技術顧問

<参加者>

東京本社道路・交通部(3名)

オブザーバー(適宜)

所 属 氏 名

主査 専修大学商学部 准教授 岩尾 詠一郎

東京海洋大学海洋工学部 教授 苦瀬 博仁

早稲田大学商学学術院 教授 杉山 雅洋

宇都宮大学工学部 准教授 森本 章倫

物流評論家 富樫 道廣

日通総合研究所 経済研究部 渡部 幹

三菱総合研究所 社会システム本部 政策マネジメント研究グループ 古明地 哲夫

光英システム(株) 野澤 良彬

財団法人 日本海事センター 企画研究部 李 志明

東京海洋大学 大学院海洋科学技術研究科 博士前期課程 海運ロジ

スティクス専攻 延東 晃

東京海洋大学 海洋工学部 流通情報工学科 水野 律

国土交通省道路局企画課道路経済調査室 田中 完秀

国土交通省道路局企画課道路経済調査室 市川 智秀

建設技術研究所 技術顧問 国久荘太郎

建設技術研究所 東京本社 道路・交通部 野見山 尚志

建設技術研究所 東京本社 道路・交通部 山口 大輔

*1 東京本社・道路・交通部 Road & Transportation Engineering Division ,Tokyo office *2 東京本社・都市システム部 Urban Planning Division ,Tokyo office

*3 東京本社・社会システム部 地域マネジメント室 Community Affairs – Research Analysis Division , Public Outreach & Awareness Section ,Tokyo office

*4 中部支社・総合技術部 Engineering Division , Chubu office *5 本社機構・国土文化研究所・企画室 Research Center for Sustainable Communities, Research Planning Section ,Head office *6 本社機構・技術顧問 Technical advisor, Head office

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<道路計画研究会>

<国土マネジメント研究会>

3. 研究実施状況

各研究会は、以下の日程で開催した。 表-2 研究会実施状況とその内容

研究会名 実施回数 主な内容

応用経済分析 研究会

(講義形式)

計11回 ・ マクロ経済モデル構築の

ための周辺理論 ・ 日本経済の動向把握 ・ マクロ経済モデルの入力

データの取得方法

日本交通政策 研究会

計4回 ・ 産業構造の変化による流

通チャネルの変遷と交通

ネットワークのあり方の

考え方 ・ 港湾統計と貿易統計によ

る品目別の輸出入額の経

年変化の分析 ・ 圏央道埼玉区間に着目し

た東京都市圏の物流動向

について

道路計画研究会

計3回 ・ 周遊型観光交通モデルの

構築検討 ・ イベント型観光交通モデ

ルの構築検討 ・ イベント型観光交通の特

性把握調査計画

国土マネジメント

研究会

計5回 ・ 地域間産業構造分析 ・ 県別産業構造分析や 新

の経済状況を考慮した地

域間産業間の影響分析 ・ 企業立地に関する研究

4. 研究結果の概要

各研究会での結果概要を以降に示す。 4-1.応用経済分析研究会 応用経済分析研究会では、以下の内容について講義を

行った。 ①マクロ経済モデル構築のための周辺理論

以下の内容について講義を行った。 ・ケインズモデルとニューケインジアンモデル ・総需要曲線・総供給曲線 ・IS-LM分析における不均衡と不均衡からの調整過

程 ・投資関数 ・地域間格差と国土管理 ②日本経済の動向把握 平成 21 年度版経済財政白書(内閣府)を元に、こ

れまでの変遷や今後の動向について講義を行った。 ③入力データの取得方法の把握 マクロ経済モデルを構築する際に必要な入力データ

の取得方法について、講義を行った。 4-2.日本交通政策研究会 日本交通政策研究会において、当社では交通施設(道

路ネットワーク)の整備が物流システムに与えた影響の

考え方というテーマについて研究を行った。結果概要は

以下の通りである。 ①全国の物流動向 ■物流量の推移

・全国的に貨物流動量は減少傾向にあるが、関東に

おける落ち込みは全国より小さい。 ・東京都市圏においても、貨物流動量は減少傾向に

あるが、茨城関連の物流量が増大しており、特に埼

玉~茨城の物流量の増加が顕著である。

図-1 東京都市圏の物流動向

■自動車輸送の推移

・関東~中部、東北、近畿、補区立信越の順で流動

量が多い。北陸信越を除いて九州などの遠方を含め

て全国的に増加している。

流通科学大学 教授 西井和夫 山梨大学 准教授 佐々木 邦明

CTIメンバー

・ 中部支社総合技術部 江守 昌宏

・ 東京本社道路交通部 野見山 尚志

・ 同上 土屋 三智久

・ 中部支社総合技術部 香月 寛之

・ 東京本社道路交通部 山田 敏之

・ 同上 海老原 寛人

所 属 氏 名

座 長 政策研究大学院大学 教授 森地 茂

建設省道路局長/現・東京電力(株)顧問 山根 孟

東京工業大学大学院 総合理工学研究科 人間環境システム専攻 屋井 鉄雄

国土交通省近畿地方整備局企画部長 塚田 幸広

財団法人計量計画研究所 杉田 浩

財団法人計量計画研究所 森尾 淳

建設技術研究所 技術顧問 国久荘太郎

建設技術研究所 東京本社 道路・交通部 前田 信幸

建設技術研究所 東京本社 道路・交通部 野見山 尚志

建設技術研究所 東京本社 道路・交通部 山田 敏之

■財団法人 計量計画研究所(IBS ワーキングチーム)

■社内ワーキングチーム

東京本社道路・交通部 :前田信幸、岩崎順一、野見山尚志、山田敏之 鈴村雅彦、海老原寛人

東京本社都市部 :小原裕博、田中文夫 東京本社地域マネジメント室 :牛来司、長南政宏 中部支社総合技術部 :江守昌弘、土屋三智久、香月寛之 国土文化研究所 :金子学、今西由美 技術顧問 :国久荘太郎(アドバイザ)

千葉県

埼玉県

茨城県

東京都

神奈川県

流動量(トン)

凡 例

流動の伸び(H12=100)

75未満75以上125未満125以上150未満150以上175未満175以上200未満200以上

9万トン/日

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・埼玉~東京、神奈川、千葉の流動が多い。増減で

は、茨城(1.4倍)、東京(1.4倍)、神奈川(1.3倍)

への流動が増加。また、流動量は少ないが、山梨へ

の流動が1.8倍と大幅に増加(H17/H12)。

図-2 自動車輸送動向

②東京都市圏の物流動向 ■港湾・空港貨物動向

・各港湾の重量シェアは、千葉港(37%)、横浜港

(19%)、木更津港(13%)の割合が高く、増加し

ている。重厚長大型産業が多く立地する千葉のシェ

アが高く、シェアは港湾の取り扱い貨物の種別に影

響されている。 ・羽田空港の航空貨物取扱量(移出入)は全国空港

の7割を占め、伸び率も1.4倍と全国の1.2倍と比

較して高い(H19/H7)

図-3 各港湾のシェア推移

図-4 空港貨物の動向 ■埼玉県発着貨物

・埼玉県~東京都市圏近郊の主要10港湾間の自動車

による物流量は10年間で6%増加している。 ・移輸出入の状況では、港湾からの移出が増加し、

港湾への移入が減少。東京都市圏への集中傾向が見

られる。 ・港湾別では、10年間で埼玉~横浜港が20%→29%に増加したほか、茨城県内の港湾(日立港、大洗港、

常陸那珂港;開港)との流動が増加している。

図-5 埼玉県発着の港湾物流施設の構成 ■東京湾からの大型車のルート

・東京湾から沿線市町に発着する大型車のルートを

見ると、車両の規格が大きいほど高速道路利用率が

高まる。湾岸からは首都高速~外環など~放射道路

というルートを取る。 ・10t 以上貨物車において鶴ヶ島 JCT~入間 IC ま

で圏央道を利用する車両を確認。 4-3.道路計画研究会 道路計画研究会では、現在の道路交通分野の技術的

な問題点などの整理を行った上で、特に 近注目され

ている観光に着目した交通行動モデル構築に向けた基

礎的研究を行った。 ①これまでの研究経緯と今後の取り組み

図-6 これまでの研究経緯と今後の取り組み

千葉県

埼玉県

茨城県

東京都

神奈川県

流動量(トン)

凡 例

流動の伸び(H12=100)

75未満75以上125未満125以上150未満150以上175未満175以上200未満200以上

7万トン/日

10.8%

8.5%

6.5%

17%

15.4%

19%

18.5%

17.7%

9.8%

30.9%

35.3%

36.8%

2%

1.6%

1%

10.4%

8.4%

12.7%

9.8%

12%

12.4%

0%

0%

0.3%0.7%

1.1%

0.6%

0.8%

0%

0%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

平成5年

平成10年

平成15年

東京港 横浜港 川崎港 千葉港 横須賀港 木更津港 日立港 常陸那珂港 鹿島港 大洗港

78.884.8

88.483.6 86.1 89.0

49.653.8

57.8 56.2 59.464.6

95.2

70.2

121

141

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

80.0

90.0

100.0

H7 H9 H11 H13 H15 H17 H19

移出入量(万トン)

0

20

40

60

80

100

120

140

160

伸び率(H7=100)

全国空港の移出入量

羽田空港の移出入量

全国空港の移出入量の伸び

羽田空港の移出入量の伸び

34%

31%

28%

20%

17%

29%

16%

8%

7%

29%

38%

28%

1%

4%

0%

0%

0%

0%

0%

2%

2%

0%

0%

3%

0%

0%

0%

0%

0%

2%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

平成5年

平成10年

平成15年

東京港 横浜港 川崎港 千葉港 横須賀港 木更津港 日立港 常陸那珂港 鹿島港 大洗港

■これまでの研究テーマ

①交通量予測手法の研究

→プローブ調査の有効活用方策の検討(データの取得方法等の更なる研究へ)

→動的シミュレーションの導入検討(多様な交通特性の把握方法に課題)

②交通行動に関するデータの収集方法・活用方法の研究

→交通データの収集方法や収集内容(特に、プローブパーソン)

→交通データの組合せ等による新たな切り口での分析可能性

③観光地における効率的な交通運用方策に関する研究

→観光地における観光客の交通行動や交通ニーズや交通行動特性の把握方法

④道路政策・施策に対する評価方法の研究

→観光地における観光客の交通行動や交通ニーズや交通行動特性の把握方法

■富士北麓地域での観光行動特性モデル・観光振興に資する道路交通政策の研究

1.富士北麓地域の地域特性・課題整理

富士北麓地域における地域特性・課題を、観光面を中心に整理を行う

(富士吉田市、富士河口湖町、忍野村、山中湖村 等)。 ⇒各市町村マスタープランを活用、各種アンケート調査

2.モデル構築のためのシナリオ検討(アウトプットを描く)

1.の整理より、課題を発生させる要因と想定される要素について分析。 その結果を踏まえ、富士北麓地域における観光行動モデル構築のため

のシナリオ検討。 ⇒対象:周遊交通 要因:交通手段、交通状況、観光資源の魅力、情報提供、サービス 施策:ソフト施策、ハード施策(→地域住民の意向も踏まえつつ)

3.調査実施方針の検討

調査概要について検討 ⇒調査時期、調査箇所、調査方法、調査内容、サンプリング数 等

【研究上の課題】 ・モデル構築のためのサンプルデータが収集困難

・交通政策実施困難、施策評価困難

■鈴鹿地域の交通円滑化に関する研究(三重河川国道業務と連携)

・鈴鹿サーキット F1 開催時の交通行動モデル構築

・交通行動モデルによる交通円滑化施策の評価

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②鈴鹿地区を対象とした観光モデル構築の方針につい

て観光モデルの構築の基本方針について検討した。

■全体方針

・10/4 に開催されるF1 日本グランプリ(於;鈴鹿サ

ーキット)開催時における鈴鹿地域の交通流動をモ

デル化し、次年度以降の交通円滑化方策を検討する

うえでの基礎データとする。 ■今年度の目標

・今回の F1 開催時の交通流動を明らかにする(プロ

ーブカー、プローブパーソン等)。 ・アンケート調査を実施し、今回実施した施策の評価

を行う(例;情報提供に対する認知率・行動率など)。

また、その結果をもとに、次年度以降の交通円滑化

方策を検討する。 ■目的

・鈴鹿地区における F1 などの大規模イベント開催

時の交通円滑化のためにどんな方策が有効かを

事前に予測するため、観光行動モデルを構築する。 ・副次的には、イベント系(花火大会など)や特定

の季節に需要が集中する観光地(桜・紅葉ものな

ど)における効果的な交通円滑化方策が検討可能

なものにすることを念頭に置く。 ※今回実施する交通円滑化方策の評価は、モデルで

はなく、実証データにより評価する予定。 ■問題意識

・観光行動モデルの構築に当たり、以下の事項に着

目している。 ●情報提供の有効性 ・情報提供により交通平準化が可能か?(空間的・

時間的に) →「経路選択モデル」を構築し、分析・評価

●効果的な交通需要の平準化方策 ・イベント等の実施により帰宅時の出発時間をずら

せるか? →「経路選択モデル」の中で扱う発生集中量の設

定方法の検討 ※評価・検討のタームを1日単位とするか、ピーク

時間帯とするか等の整理が必要 ●公共交通の利用拡大 ・どんなインセンティブを与えれば公共交通への利

用転換を促進できるか? →「交通機関選択モデル」を構築し、分析・評価

③観光モデルの概要(案)

■基本的な考え方

・本研究会では、鈴鹿地区におけるイベント開催時

に想定される交通特性や、次回大規模イベント開

催時の適切な交通円滑化方策を提案することを

目的とする。

→ダミー変数を設定するなどして交通円滑化方策

による効果を推定できるモデルを構築し、施策の

効果を評価する。 ・上記の目的に鑑み、以下のモデルを構築する。

■モデルの概要

●交通機関選択モデル ・多段階選択モデル;Nested Logitモデルを想定し、

来場者の交通機関選択状況をモデル化。 →第1段階;自動車×マストラの選択、第2段階;

利用駐車場(自動車)、利用駅(マストラ) ※マストラの場合、鉄道がその代表的な移動手段

となるため、鉄道を主体として考える。 ●自動車経路選択モデル ・一般的に交通量推計にて用いられている「 短時

間経路探索」を基本とし、自動車の経路選択状況

をモデル化。 →道路の混雑状況や推奨ルート、駐車場などにつ

いての情報提供により、どの程度混雑緩和が図

られるかを予測し、効果的・効率的な交通円滑

化方策を提案する。

図-7 観光モデル体系 ④アンケート調査 本研究は、三重河川国道業務と連携して実施している。

47期では、交通円滑化方策を検討する上での基礎データ

となるアンケート調査を実施した。

4-4.国土マネジメント研究会 国土マネジメント研究会では、「地域間産業構造分

析」、「県別産業構造分析や 新の経済状況を考慮した

地域間産業間の影響分析」、「企業立地に関する研究」

というテーマに基づき、研究を行った。 ①地域間産業構造分析

(1)地域別移輸出および移輸入に関する分析

・地域間産業構造を①地域間国際間分業型、②移輸

出型、③自給型、④移輸入型に分類 ・北海道は加工組立型製造業のみが地域間国際間分

業型。それ以外の製造業は移輸入依存型 ・東北、中部、近畿、中国は製造業と商業が地域間

国際間分業型。それ以外は自給型 ・関東は加工組立型製造業のみが地域間国際間分業

型。それ以外は自給型 ・四国は製造業と商業が地域間国際間分業型。農林

自動車 マストラ

鈴鹿サーキット

経路 2

①交通機関選択モデル

②自動車経路選択モデル 経路 3 経路 1

駅 2 駅 3 駅 1 駐車場 2 駐車場 3 駐車場 1

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水産業は移輸出型 ・九州は加工組立型製造業のみが地域間国際間分業

型。基礎素材型は移輸入依存型 ・沖縄は製造業と農林水産業は移輸入依存型

(2)地域間経済構造分析

・1人あたり生産額の高い県ほど1人あたりの県民

所得は高い傾向を示す。 ・県民所得の高い県では、移輸出や移輸入の割合が

高く、生産誘発も移輸出の割合が高い。 ・県民所得の低い県では、県内 終需要の占める割

合が高く、生産誘発は民間消費が多い。 ・地域別スカイライン図では、大都市圏では製造業

の移輸出が高いが、地方では農林水産業や食料品、

運輸の移輸出が高い。 (3)近年の日本の内需、外需の推移と国内生産額の推移

・近年外需拡大を背景に内需(設備投資や民間消費)

が拡大。 ・リーマンショックで輸出が35兆円減少し、設備

投資の落ち込みが顕著 (4) 終需要項目別 地域間産業構造分析

・民間消費は関東と中部で購入より販売の生産誘発

が高い。 ・政府消費は関東と中部と近畿で購入より販売の生

産誘発が高い。 ・公的投資は関東と中部と近畿で購入より販売の生

産誘発が高い。 ・民間投資は関東と中部と近畿と中国で購入より販

売の生産誘発が高い。 ②県別産業構造分析や 新の経済状況を考慮した地域

間産業間の影響分析

(1)1人あたり県民所得の格差に関する分析

・2001年から2006年で1人あたり県民所得は東京

都の増加率がもっとも高く、北海道、高知県、徳

島県、島根県で減少率が高い。 ・全産業の成長率と製造業の寄与度の相関は高い傾

向にある。 ・2005年から2006年では、青森県、岡山県、三重

県で特にその傾向が高い。 (2)県別産業連関表によるスカイライン分析

・中部では、愛知県、岐阜県、三重県で輸送機械の

純移輸出が顕著。三重県では移輸入率も高く、部

品等の取引も多い。 ・九州では、福岡県以外の県で、農林水産業の移輸

出が超過。大分県では電気機械の移輸出が顕著。 ・大都市圏では、商業や対事業所サービスなどの第

3次産業で純移輸出が大きい。 ・地方圏では、県内需要に占める建設の割合が高い。

(3)地域間産業連関表を用いた輸出減少による影響分析

・輸出減少による影響は、電気機械、輸送機械、サ

ービス、一般機械の順に大きい。 ・消費減少による影響は、サービス、金融・保険・

不動産、商業、食料品の順に大きい。 ③企業立地に関する研究

(1)10年間の新設・廃業事業所の動向

・サービス業は、10年間で事業所数が減少してい

るものの、従業員数については増加傾向。 ・建設業、製造業、卸売り・小売り・飲食業は、事

業所数、従業員数共に減少。 ・運輸・通信業の新設事業所の活発度は、他業種と

比較して非常に大きい (2)経済成長県と非成長県の動向

・人口増加県で、県成長力および人口一人あたりの

成長力が共に増加しているのは、東京都、静岡県、

三重県、沖縄県である。 ・人口減少県で、県成長力および人口一人あたりの

成長力が共に増加しているのは、徳島県、広島県、

大分県、鹿児島県である。 (3)産業別の総生産寄与度と新設・廃業事業所(従

業員)について

・サービス業の総生産寄与度が高いと、経済成長率

がプラスになっている県が多く、マイナスだと経

済成長がマイナスとなっている。 ・経済成長がマイナスである県において、ある産業

が大幅な増加を見せ、経済成長率がプラスになる

と、同時にサービス業の総生産寄与度が大幅に増

加する傾向が見られる。 ・建設業の総生産寄与度が高い県では、経済成長率

が低い。 ・卸売・小売業・飲食店は、経済成長率がプラスに

なると、廃業事業所・従業員の寄与度が新規事業

所・従業員より大きい (4)産業別新設・廃業事業所(従業員)の変動について

・輸送機械の事業所は、県内総生産の寄与度がプラ

スが大きい広島県、静岡県では、新設、廃業共に

マイナスが大きく、変動が小さい。 ・運輸、通信業では、県内総生産がプラスの沖縄は

事業所、従業員共に変動が小さく、東京は、従業

員の変動が少ない (5)新設・廃業事業所規模について

・ 電気機械は、三重県の新設事業所規模と廃業

事業所規模の差が も大きい。 ・輸送用機械は、県内総生産の増加が大きい静岡、

三重、広島は、新設事業規模が 30(人/所)弱、

廃業事業所規模20(人/所)前後に固まっている。 ・サービス業は、すべてが新設事業規模の方が大き

く、特に東京都の事業規模が大きいことが特徴で

Page 6: 道路将来政策研究 - ctie.co.jp · ・ケインズモデルとニューケインジアンモデル ・総需要曲線・総供給曲線 ・is-lm 分析における不均衡と不均衡からの調整過

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ある。 5. 今後の課題

本研究では、様々な研究テーマを持って、取り組みを

行ってきた。 応用経済分析研究会では、社会資本整備に関する経済

分析技術を身につけることを目的として、経済学に関す

る基礎的な勉強を11回の勉強会を通じて行った。今後

は、これらの知識を活かし、業務での活用の他、学会等

への投稿も視野に入れた実践での取り組みに傾注してい

くことが必要である。 日本交通政策研究会では、「産業構造の変化による物

流システムの変遷と交通施設のあり方」というテーマの

基、当社は、全国および東京都市圏の物流動向について

研究を行った。また、日通総研や三菱総研、物流コンサ

ルタントなど、これまで当社との繋がりが弱かった業界

の方々の研究発表を通じて、物流に関する様々な現況や

課題について把握することが出来た。今後は、これらの

情報や人脈を通じて、新たな分野開拓を行っていくこと

が求められる。 道路計画研究会では、46期で着目した観光に関する研

究をさらに具体的に進めた。当初、山梨県の富士北麓地

域を対象とした、観光モデル構築を考えていたが、既往

のアンケート調査データでは、データ数およびデータ内

容などから分析が困難であること、また三重河川国道業

務において、同種業務をプロポーザルで獲得できたこと

から、研究対象を鈴鹿地区へ変更した。今期は、観光モ

デルの構築およびアンケート調査までを実施した。観光

モデルは、当社において初めての試みとなる研究である

ため、新たな技術分野となるよう、効果の他、課題の整

理なども整理していくことが重要と考える。 国土マネジメント研究会では、国土形成計画の立案手

法を目的とし、その も基礎となる地域や都市について

分析を行うとともに、一方で、今後のわが国における都

市と産業の健全な発展をもたらすような政策提言に向け

た基礎研究について実施した。 今後は、本研究により得られた知見などをもとに、よ

り計画論もしくは手法論に展開していくことが必要であ

る。 本研究分野は極めて裾野が広く、適用される分析手法

も多岐に及ぶ。また、行政施策や産業動向などに関する

知識や見識、洞察力なども必要であり研究は容易ではな

いが、今後も着実に進めていくべきだと考えている。 また、これまでの成果を書籍として取りまとめていく

よう、進めていきたい。 後に、本研究は、日本交通政策研究会、流通科学大

西井教授、山梨大佐々木准教授、国土マネジメント研究

会、財団法人計量計画研究所のご支援の賜物であり謝意

を表す。