人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案...人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案...

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人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案 人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案 -日本版LLC制度の創設に向けて- -日本版LLC制度の創設に向けて- 骨子 骨子 平成15年11月 平成15年11月 経済産業省 経済産業省 産業組織課 産業組織課

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人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案-日本版LLC制度の創設に向けて--日本版LLC制度の創設に向けて-

<< 骨子骨子 >>

平成15年11月平成15年11月

経済産業省経済産業省 産業組織課産業組織課

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<< 目目 次次 >>

1.なぜ、今、人的資産を活用する新しい組織形態か1.なぜ、今、人的資産を活用する新しい組織形態か

(1)企業価値の源の変化 ~有形資産(物的資産)から無形資産へ ・・・P1,2

(2)競争力の源が変わる ~人的資産の重要性と新しい資本主義・企業のあり方についての有識者見解 ・・・P3

~物的資産から差別化を担う組織特殊的な人的資産へ ・・・P4

(3)人的組織の再評価に向けた動き ~非公開型の会社組織の可能性 ・・・P5

(4)人的組織の改革 ~「有限責任の人的法人制度」 ・・・P6

2.海外において急速に整備が進む「有限責任の人的法人制度」2.海外において急速に整備が進む「有限責任の人的法人制度」

(1)海外において急速に整備が進む「有限責任の人的法人制度」 ・・・P7~米国LLC、英国LLP、ドイツGmbH&Co.KG、フランスSAS

(2)諸外国において進む「有限責任の人的法人制度」の活用 ・・・P8

(3)有限責任の人的法人が活用される事業分野(米国現地調査結果) ・・・P9

3.我が国における組織法制度の限界と「有限責任の人的法人制度」への期待3.我が国における組織法制度の限界と「有限責任の人的法人制度」への期待

(1)我が国の組織法制度の限界 ~有限責任の人的法人制度を創設する必要性 ・・・P10

(2)有限責任の人的法人制度を整備するアプローチ ・・・P11

~会社法上の「新たな会社類型」創設の論点整理 ・・・P12

~その他のアプローチの論点整理 ・・・P13

(3)有限責任の人的法人制度に対する期待と産業政策上の意義 ・・・P14

【【参考資料参考資料】】(1-①)株式会社制度を人的資産集約型産業において活用する上での工夫

~米国における「株主主権型株式会社」の修正に向けた試み ・・・P15

(1-②) ~日本における「従業員主権型モデル」の修正に向けた試み ・・・P16

(2-①)新たな会社類型 ~人的組織として重要な組織の柔軟性の確保(会社の内部の関係) ・・・P17

(2-②) ~有限責任の確保(会社と外部との関係) ・・・P18

(3) 人的資産を活用する新しい組織形態に対する期待 ~政府決定・民間の提言 ・・・P19

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第一章

なぜ、今、人的資産を活用する新しい組織形態か

第一章では、「なぜ、今、人的資産を活用する新しい組織形態か」とい

う根本的な問いかけへの回答を試みる。

人的資産の重要性が高まる中で人的組織が再評価され、欧米では、

新しい有限責任の人的法人制度の整備が進んでいることを提示する。

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1.(1)1.(1) 企業価値の源の変化企業価値の源の変化 ~有形資産(物的資産)から無形資産へ~有形資産(物的資産)から無形資産へ

○ 企業の競争力の源泉は、設備や機械などの有形資産(物的資産)から、アイデア、ノウハウ、技術などを創造する人的資産へとシフトしている。

○ 米国企業の場合、その市場総価値に占める無形資産の割合は、1978年の17%から1998年には69%にまで飛躍的に

増加している。

○ 2001年6月末における米マイクロソフト社の保有資産は総額で390億ドルだが、そのうち有形資産はわずか6%にすぎず、

残りの94%に当たる367億ドルは無形資産が占めている。○ 日本企業についても、東証上場企業の時価総額のうち有形資産(物的資産)が324兆円で全体の70%であるのに対し、

無形資産は144兆円で30%を占めている。

市場価値総額市場価値総額

無形資産◇財として取引

可能な知的財産・ブランド・特許権・データベース

◇人的資産・経営者の企画力・技術者の開発力・従業員のノウハウ

・コンピュータ機器・機械

・設備

・建物

有形資産(物的資産)

人的資産等無形資産の占める割合人的資産等無形資産の占める割合

367億ドル(94%)

マイクロソフト

有形資産 23億ドル(6%)

無形資産

[出所]岩井 克人「会社はこれからどうなるのか」

米国市場価値総額

無形資産

69%

有形資産

31%

1998年

無形資産

17%

有形資産

83%

1978年

[出所]マーガレット・ブレア、トマス・コーチャン「新しい関係-アメリカの会社における人的資産」

無形資産

有形資産

324兆円(70%)

144兆円(30%)

東証上場企業時価総額

[出所]経済産業省「ブランド価値評価研究会報告書」 1

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1.(1)1.(1) 企業価値の源の変化企業価値の源の変化 ~有形資産(物的資産)から無形資産へ~有形資産(物的資産)から無形資産へ

○ 特に、日本を代表する企業の場合、業種を問わず無形資産の割合が高い。

企業のバランスシート

資 産負 債

資 本

ブランド知的財産技術開発力 等

有形資産

簿価純資産※

※簿価純資産:バランスシートに反映されている資産-負債(バランスシートに反映されていないブランド、ノウハウ等は対象外)

時価総額

無形資産

3.4兆円(85%)

セブン-イレブン・

ジャパン

有形資産 6000億円(15%)

無形資産

1.4兆円(77%)

花 王

有形資産 4600億円(23%)

無形資産

1.2兆円(72%)

ソフトバンク

4200億円

(28%)

無形資産

有形資産

5.9兆円(71%)

ソニー

2.3兆円

(29%)

無形資産

有形資産

2.2兆円(72%)

任天堂

8300億円

(28%)

無形資産

有形資産

2.1兆円(68%)

日産自動車

9600億円(32%)

無形資産

有形資産

3100億円(65%)

ベネッセコーポレーション

1700億円(35%)

無形資産

有形資産

9兆円(56%)

トヨタ自動車

7.1兆円(44%)

無形資産

有形資産

2.5兆円(62%)

キヤノン

1.5兆円(38%)

無形資産

有形資産

東 芝

1兆円(42%)

無形資産

有形資産

1.3兆円(58%) 2.8兆円(56%)

本田技研工業

2.2兆円(44%)

無形資産

有形資産

4400億円(48%)

大正製薬

4700億円(52%)

無形資産

有形資産

6.1兆円(47%)

NTT

6.9兆円(53%)

無形資産

有形資産

2100億円(35%)

アサヒビール

3900億円(65%)

無形資産

有形資産

人的資産等無形資産の時価総額に占める割合人的資産等無形資産の時価総額に占める割合

※有価証券報告書から入手できるデータで、可能な範囲内で試算。

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1.(2)1.(2) 競争力の源が変わる競争力の源が変わる~人的資産の重要性と新しい資本主義・企業のあり方についての有識者見解~人的資産の重要性と新しい資本主義・企業のあり方についての有識者見解

○ 多くの有識者は、「グローバル化、IT化、金融改革」に伴う「知識・人的資産の重要性の増大」は「資本主義の形の変化」を

引き起こし、「企業形態の見直し」につながりつつあることを指摘している。

A. バートン・ジョーンズ氏

ニューエコノミーへと経済の変化をもたらした最大の要因は、経済活動が“知

識”への依存度を強めたことにある。知的資源を押さえる人々が企業を所有す

ることとなり、“知識主導の組織モデル”が不可欠となる。

岩井克人 東大教授物的資産の所有では利益が保証されず、「違い」を生み出す“人的資産”が利

益の源泉となる“ポスト産業資本主義”では、組織特殊な人的資産を防御する

ために、モノでもありヒトでもある“法人実在説的会社”が重要となる。

L. サロー MIT教授生産の中心的な要素は物的資本から“人的資本”に移行しつつあり、“資本を

所有できない資本主義”が到来する。そこでは、“人間主体の頭脳産業モデ

ル”が求められる。

R. ドーア

ロンドン大名誉教授“人的資本”は、すでに物的資本よりもはるかに決定的な生産要素となっている。

伊丹敬之 一橋大教授真の競争力の源泉は、コミットして働いてくれる従業員の知恵やエネルギーと

いった“見えざる資産”にあり、彼らが企業にとってメインの存在となる“従業員

主権企業”の方が合理的である。

R. ライシュ元米労働長官

大企業が規模の生産性に依存して力を得ていた古い工業社会とは異なり、“ニューエコノミー”においては、ビジネスは「信頼」が大きな利益と高い市場価値を生み出す。

渡部亮 法政大教授“ネットワーク経済”の時代となり、アングロサクソン・モデルでも、“リレーションシップ投

資”や、株主利益向上の前提条件として従業員や地域社会の利益を位置づける“包

含性の原理”への着目等、単純な株主利益極大化とは一線を画する動きが見られる。

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1.(2)1.(2) 競争力の源が変わる競争力の源が変わる ~物的資産から差別化を担う組織特殊的な人的資産へ~物的資産から差別化を担う組織特殊的な人的資産へ

○ 1960年代の高度成長期以降、日本経済を支えてきたのは重厚長大型産業である。重厚長大型産業においては最新鋭の大規模な物的資産が競争力の源であり、多数の投資家から大量に資金を調達する上で有利な公開株式会社が主役を担ってきた。また、安定した株主構造の下、経営者や従業員が主体的に大規模な物的資産を使いこなす能力に長けた組織固有の技能を形成したとところに、日本企業の強みがあった。

○ しかしながら、1990年代以降、有形資産(物的資産)を効率的に運営するだけでは、開発途上国との競争に勝ち抜くことが難しくなってきている。製造業においても、物的資産の効率運営を得意とする(主として海外の)製造企業群を、他社とは違った形で束ねて差別化していく自社独自のノウハウを持った人的資産が必要とされており、従来型の公開株式会社形態でこうした人的資産をうまく活用していくにはかなりの工夫が必要となる(具体例はP16,17を参照)。

○ また、投資銀行やファンドマネージャー等の最先端の金融産業、ソフトウェアやコンテンツ開発等の情報産業、法務・会計・税務・医療・教育といった高度サービス産業、企業の研究開発部門といった今後の成長が見込まれる産業群は、高度で組織特殊的な人的資産の固まりこそが競争力の源である。差別化を生み出す人的資産そのものが競争力の要となる「人的資産集約型産業」であり、他の企業には無い組織特殊的な能力を持った人材を生み出し続ける企業内のメカニズムをうまく築き上げることが重要となる。人的資産をフルに活かせるような新しい会社の仕組みが必要となる。

コア人材を大事にするコア人材を大事にする公開株式会社公開株式会社

重厚長大型産業重厚長大型産業

大規模な物的資産、及び物的資産を効率的に使いこなすのみならず、他社との差別化を

生み出すような人的資産

コア人材のみが集まったコア人材のみが集まった人的な会社人的な会社

組織特殊的な人的資産の固まり

人的資産集約型産業人的資産集約型産業

最先端の金融産業(投資銀行、ファンドマネージャー等)

情報産業(ソフトウェア、コンテンツ開発等)

高度サービス産業(法務・会計・税務・医療・教育等)

企業の共同研究開発(ジョイント・ベンチャー)

競争力

の源泉

産業の

種類

受け皿と

なる

会社類型

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1.(3)1.(3) 人的組織の再評価に向けた動き人的組織の再評価に向けた動き ~非公開型の会社組織の可能性~非公開型の会社組織の可能性

○ 米国では、コア人材のみが集まった組織特殊的な人的資産の固まりを活かす組織形態として、非公開型の人的組織(パートナーシップやNPOなどの非株式会社)の可能性が注目されている。

(注) 非公開型の人的組織の典型例としては、組合、組合に法人格を与えた合名会社、合名会社に経営に は参加せず出資のみを行う投資家を組み入れた合資会社がある。

米国における閉鎖系の会社組織の再評価 ① ~ パートナーシップ等の閉鎖系組織の活躍米国における閉鎖系の会社組織の再評価 ① ~ パートナーシップ等の閉鎖系組織の活躍

◎ 全米トップ10のビジネススクールの優秀な学生が、ピラミッド型の組織を嫌い、有名大企業に入る機会を放棄して、能力と勤勉を基準に報酬と責任を得る機会のある少人数のパートナーシップ組織(※)を選んでいる。

○パートナーシップ組織の1つであるリミテッド・パートナーシップの組織形態を採用。全従業員の25%が組織の所有者であるパートナーとなっている。

○このため、共同事業体として利益を分け合うプロフィットシェアリングの考えが貫徹して構成員・従業員の意識が高く、従来はニッチと考えられていた個人向けの金融商品をきめ細かく提供することに成功し、急成長。同社は、現在では、証券業界第1位のオフィス数と第4位のブローカー数を誇る。

○パートナーシップ組織の1つであるリミテッド・パートナーシップの組織形態を採用。全従業員の25%が組織の所有者であるパートナーとなっている。

○このため、共同事業体として利益を分け合うプロフィットシェアリングの考えが貫徹して構成員・従業員の意識が高く、従来はニッチと考えられていた個人向けの金融商品をきめ細かく提供することに成功し、急成長。同社は、現在では、証券業界第1位のオフィス数と第4位のブローカー数を誇る。

◆エドワード・ジョーンズ(証券ブローカー) 第 1 位 (「働きがいのある会社ベスト100」 調査(フォーチュン誌)2003.1.20 )◆

(※) パートナーシップの組織形態は、日本の組合にあたるもので、組織の構成員が所有者であり、かつ共同事業者として経営に参画する非公開型の組織である。

組織構造が柔軟で、構成員の合意による定款で自由に内部規定が決められ、事業活動の成果として創造された価値をストレートに構成員間で分配できる。

これら優秀な人材によって、所有と経営が一致したこのような組織は、自らの能力を活かし、それに応じたリターンを得るための魅力的な選択肢になっている。

米国における閉鎖系の会社組織の再評価 ② ~ NPOなどの非株式会社の活躍米国における閉鎖系の会社組織の再評価 ② ~ NPOなどの非株式会社の活躍

◎ 米国では、教育や医療など専門性と公益性が要求される事業分野でも、株式会社が参入することができるが、こうした分野では、

株式会社よりもNPOなどの非株式会社が活躍している。

[出所]Allen.F,Gale.D『Corporation Governance and Competition』より

教育サービス

70%

30%

研究開発サービス

97%

3%

娯楽サービス

59%

41%

健康サービス

64%

36%

会社

NPO

ソーシャルサービス

42%

58%

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1.(4)1.(4) 人的組織の改革人的組織の改革 ~「有限責任の人的法人制度」~「有限責任の人的法人制度」

○ しかしながら、既存の人的な組織には一長一短がある。組合には法人格がなく、登記や登録など法的な行為を団体名義で出来ないところに経済主体としての限界がある上、無限責任制が要求される。また、合名・合資会社は、最低1人以上の無限責任社員を必要とする点に組織法制度上の限界がある。

○ そこで人的組織に着目した組織法制度上の改革が諸外国で精力的に進められている。有限責任の出資者のみからなる人的な法人組織 (「有限責任の人的法人」)であり、株式会社の持つ有限責任制と法人格、組合の持つ組織内自治の徹底という特徴を兼ね備えた組織であり、会社(株式会社)、組合の間を埋める第三類型の組織とも言える。

○ 米国LLC、英国LLP、ドイツにおける有限合資会社、フランスにおけるSASである。

会社の内部の関係 (出資者間の内部関係)

会社と外部との関係

(構成員の会社債権者との関係)

有限責任

無限責任

物的組織 人的組織

~組合制度~(パートナーシップ<日本の任意組合

相当>、合名・合資会社等)

有限責任の人的法人有限責任の人的法人(米国LLC,英国LLP,

ドイツ有限合資会社,フランスSAS)

物的組織の性質からくる、人的資産重視型の企業組織の器としての限界

出資者に無限責任が要求されるという限界

~株式会社制度~

組織法制度上の特徴

法的主体性:自ら契約の主体とな

るなど法的主体性を有している。

全構成員有限責任:

負債に対して、構成員は出資額を超えて責任を負わない。

組織内の自治の徹底:

組織内のルールは法律に強制されず自由に設定できる。

「有限責任の人的法人」法人組織

法的主体性

あり

有限責任

機関等設置

組合組織

法的主体性

なし

無限責任

組織内自治

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第二章

海外において急速に整備が進む「有限責任の人的法人制度」

第二章では、海外において急速に整備が進む有限責任の人的法人

制度(米国のLLCや英国のLLP等)の現状を鳥瞰する。

また、米国における現地調査をもとに、これらの組織を活用した事業

分野と企業の事例を紹介し、LLCの持つ高度人的資産集約型産業の

創出効果を明らかにする。

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2.(1)2.(1) 海外において急速に整備が進む「有限責任の人的法人制度」海外において急速に整備が進む「有限責任の人的法人制度」~米国LLC、英国LLP、ドイツGmbH&Co~米国LLC、英国LLP、ドイツGmbH&Co..KG、フランスSASKG、フランスSAS

○ 諸外国では、「所有と経営の分離」を前提とする株式会社の対極にある、「所有と経営の一致」した人的組織が再評価され、人的組織に着目した組織法制度上の改革が精力的に進められている。

○ 米国におけるLLC、英国におけるLLP、フランスにおけるSASが、近年、こうした有限責任の人的法人制度として新たに整備されており、ドイツにおいても、有限合資会社(GmbH&Co.KG)が同様の機能を果たしている。

【米国】 【英国】

出資者間の内部関係

有限責任

無限責任

物的会社 人的会社

SA(株式会社)

SARL(有限会社)

SAS(単純型株式資本会社)

SCS(株式合資会社)

SNC(合名会社)

との関係

構成員の会社債権者

出資者間の内部関係

有限責任

無限責任

物的会社 人的会社

LLC(Limited Liability

Company)

構成員の会社債権者

との関係

LP(Limited Partnership)

GP(General Partnership)

Corporation

出資者間の内部関係

有限責任

無限責任

物的会社 人的会社

LLP(Limited Liability

partnership)

LP(Limited Partnership)

Partnership

構成員の会社債権者

との関係

Company

との関係

【フランス】出資者間の内部関係

有限責任

無限責任

物的会社 人的会社

AG(株式会社)

GmbH(有限会社)

GmbH&Co.KG(有限合資会社)

KG(合資会社)

OHG(合名会社)

構成員の会社債権者

KGの無限責任社員に全構成員が有限責任の法人(主にGmbH)がなること

によって全構成員の有限責任を確保した形態

(注)この他、LLCとは別に、法律事務所や会計事務所等の専門的サービス業を主体に利用されるLLP(Limited Liability Partnership)制度が設けられている。

【ドイツ】

との関係

Page 12: 人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案...人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案 -日本版LLC制度の創設に向けて-

2.(2)2.(2) 諸外国において進む「有限責任の人的法人制度」の活用諸外国において進む「有限責任の人的法人制度」の活用

○ 諸外国における有限責任の人的法人制度の整備は、「高度人的資産集約型産業」の創出効果を上げ始めている。

株式・有限会社55 %(45万社)←(株)6千社、(有)45万社

合名・合資会社45%(36万社)

GmbH&Co.KG8万社

◆ドイツの会社数比率(全体81万社)◆

[出所]国税庁会社標本結果調査より作成

合名・合資会社1%(4万社)

←(資)3万社(名)7千社

【英国:LLP】

○職務義務をめぐる訴訟が増加し、無限責任のリスクが高まっていた公認

会計士業界からの要望を受け、2000年に、「Limited Liability Partnership Act 2000」を制定。

○監査法人や法律事務所、経営コンサルタントなど、法制定時に想定していた専門的職種における活用に加え、デザイン、ソフトウェア開発等一般の事業体においても活用が進んでいる。

○多国籍企業が、SA(株式会社)の有している出資者の有限責任性を維持しつつ、内部規定の設定の自由度が高いというような特徴を併せ持った、合弁事業に使い勝手の良い組織形態の創設を要望したことが契機となって導入。

【フランス:SAS】

【米国:LLC】

0

500,000

1,000,000

1,500,000

2,000,000

2,500,000

3,000,000

3,500,000

93 94 95 96 97 98 99 00

LP GP LLC Corporation

◆米国の企業数の推移◆

LLCは90年代後半から急成長

50

100

150

400

450

500

(万件)

Corporation88 % (505万社)

LLC (72万社、12%)

金融、保険、不動

産、リース業

51%

サービス業

23%

その他

1%

製造業

10%

情報産業

2%

流通・小売り業

9%

鉱業

4%

○米国では、1990年代以降、各州がLLC制度を導入。

○その後1993年時点の約2万社から、2000年には72万社に達している。約500万社ある株式会社と比較してもその規模が大きいことが伺える。

◆米国の企業におけるLLCの比率◆ ◆LLCの業種別構成比◆

[出所] 米国IRS資料より作成

○ドイツの有限合資会社(GmbH&Co.KG)は、10万社あるKG(合資会社)のうち8万社を占めており、会社全体の数では、日本の3分の1しかないドイツにおいて、日本における合名・合資会社の(4万社)の2倍にあたる有限合資会社が存在していることとなる。

株式・有限会社99 %(240万社)←(株)100万社、(有)140万社

[出所]ドイツ連邦統計局資料より作成

【ドイツ:有限合資会社(GmbH&Co.KG)】

◆我が国の会社数比率(全体244万社)◆

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2.(3)2.(3) 有限責任の人的法人が活用される事業分野有限責任の人的法人が活用される事業分野 (米国現地調査結果)(米国現地調査結果)

○ 「有限責任の人的法人制度」は、あるものは組合制度、あるものは合資会社制度、あるものは株式会社制度と、その淵源は異なるものの、各国において整備が進んでいる。

○ 近年増加が著しい米国LLCが使われている事業分野は、米国IRS(内国歳入庁)の統計によると、金融・保険・不動産・リース業(51%)、サービス業(23%)、製造業(10%)が主な事業分野である。米国現地調査結果によれば、その中でも特に以下の3分野は、人的資産が競争力の源泉となる事業分野(「高度人的資産集約型企業」)であり、LLCが活躍する主たる舞台となっていることが言える。

(1) 個人の専門的知識やノウハウを使った専門企業(2) 人的資産を元手にした現代的創業(3) 法人の専門的能力を使ったジョイント・ベンチャー

○大手金融機関に勤務した経験のある人間が集まって設立したモスキート(蚊のように小さい)投資銀行。

○投資銀行の本質は「知恵とネットワーク」によるビジネスで、異なる経歴・能力を持つ人間が知恵を出し合い、チームとして投資事業を実施し、投資先ハイテク企業の企業価値を高めることにより収益を得ている。

○出資者全員が業務に参加している。大きな資本を必要とせず、人材の質こそが資本であることから、株式公開で外部からの介入を防ぐためにLLCを選択。

◆モスキート投資銀行 (ロバーツ・ミタニLLC)◆

(1) 個人の専門的知識やノウハウを使った専門企業

金融、保険、不動

産、リース業

51%

サービス業

23%

その他

1%

製造業

10%

情報産業

2%

流通・小売り業

9%

鉱業

4%

[出所] 米国IRS資料作成(再掲)

[出所]神谷秀樹「ニューヨーク流たった5人の『大きな会社』-我々の仕事の仕方・考え方」(亜紀書房、2001)

(2) 人的資産を元手にした現代的創業◆物流用ラックのレンタル (E-Z Shipper Racks, LLC)◆

○創業者が、物流用のラックで、ホームセンター等に搬送後そのまま陳列できる構造をもつ特殊ラックを開発し(創業者が特許を保有)、これを大手企業にレンタルすることで収益をあげるというビジネスアイデアを考案。二人のパートナーとともにこのビジネスアイデアを実現するために、LLCを設立した。

○3名の出資者は出資割合が異なるが、経営の意思決定は3名の出資者全員の合議制で随時行うことにより、機動的な経営を可能としている。

○全米72ヶ所の拠点で、1,000人の契約社員を活用して12万個のラックを貸し出すビジネスに成長した。

(米国調査におけるヒアリングによる)(3) 法人の専門的能力を使ったジョイント・ベンチャー

○いすゞとGMが共同で中型トラックの販売管理、サービス管理を委託するためにLLCを設立。いすゞは米国での販売網の維持コストの効率化を主な目的とし、

GMは販売店におけるマネジメントの向上を主目的としており、出資比率はいすゞ側が51%、GM側が49%。

○いすゞ側は、LCFという代表的なトラックとともに、ディーラーのマネジメント手法とそれを熟知する従業員、ディーラー網を提供し、GM側はボンネットトラック

の品揃えとともに、ディーラーが使うシステムと広範なディーラー網を提供。

○収益の分配については、出資比率とは別に出来高制(GM車が売れた場合はGM側へ、いすゞ車が売れた場合はいすゞ側へ配分)を採用している。

◆日米自動車産業の合弁 ( General Motors Isuzu Commercial Truck,LLC )◆

(米国調査におけるヒアリングによる) 9

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第三章

我が国における組織法制度の限界と

「有限責任の人的法人制度」への期待

第三章では、日本の現状に目を転じ、新しい有限責任の人的法人

制度を整備すべきことを、組織法制度上の具体的な論点とともに提案

する。

また、有限責任の人的法人制度に対する期待と産業政策上の意義

を明らかにする。

Page 15: 人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案...人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案 -日本版LLC制度の創設に向けて-

3.(1)3.(1) 我が国の組織法制度の限界我が国の組織法制度の限界 ~有限責任の人的法人制度を創設する必要性~有限責任の人的法人制度を創設する必要性

○ これまで、我が国の組織法制度には、「有限責任の物的会社(※1)」と「無限責任の人的会社(※2)」の二類型しかなく、「有限責任の人的会社」は用意されていない。

○ このため、我が国おいても、新しい企業組織モデルである「高度人的資産集約型企業」の受け皿として、対外

的には法人格を持ち、出資者全員が有限責任で、かつ内部的には社員の個性を重視する人的会社の要素を

持つ「有限責任の人的会社」という第三類型の組織形態の創設が必要となる。(※1) 物的会社の内部規律 :

・ 不特定多数の出資者からの資金調達が想定される物的会社においては、所有と経営の分離が前提となっており、社員の個性は重視されない。従って、個性

のない出資者とは別の経営機関の設置が不可避となり、意思決定の効率性の追求のために多数決決議が基本となっている。

・ 持分の実現方法に関しては、社員の個性が希薄であるため、持分の譲渡が原則自由になっている一方、任意の退社や利益処分には他の社員の同意が必要

という制限が設けられている。

(※2) 人的会社の内部規律 :

・ 少人数の出資者を予定しており、社員の個性が重視される人的会社では、原則社員の総意によって定める定款で、会社内部の関係についてのあらゆる事項

(業務の運営方法、利益処分の方法及び配分の割合等)を自由に決めることができる(定款自治の徹底)。

・ 持分の実現方法に関しては、社員の個性が重視される組織であるため、持分の譲渡は制限されるが、その代わりに、原則として全員一致で意思決定を行う

組織の性質上、意見の合わない社員には脱退する自由が認められている。

会社の内部の関係(出資者間の内部関係)

(出資者の会社債権者との関係)

有限責任

無限責任

物的組織 人的組織

株式会社

有限会社

我が国には存在しない

合名会社

合資会社

/任意組合・有責組合

会社と外部との関係

との関係

有限責任

無限責任

物的組織 人的組織

合名会社

合資会社

/任意組合・有責組合

新しい新しい有限責任人的法人有限責任人的法人

株式会社

公開会社(非譲渡制限)

譲渡制限株式会社

大規模 小規模

会社と外部との関係

(出資者の会社債権者との関係)

会社の内部の関係(出資者間の内部関係)

10

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3.(2)3.(2) 有限責任の人的法人制度を整備するアプローチ有限責任の人的法人制度を整備するアプローチ

○ 有限責任の人的法人制度を整備するには、①会社法現代化に合わせて、会社法上に「新たな会社類型」を創設する方法(具体的にはP12を参照)、②合名・合資会社制度を拡充する方法、③有限責任組合制度を改正・拡充する方法、④企業組合制度を改正・拡充する方法(②~④の各方法についてはP13を参照)がある。

出 資 者 間 の 内 部 関 係

出資者の会社債権者との関係

物 的 組 織 人 的 組 織

法 人 組 合

全 構 成 員有 限 責 任

無限責任

最低1人以上の

無限責任構成員

全構成員無限責任

株 式 会 社株 式 会 社

有 限 会 社有 限 会 社

企 業 組 合企 業 組 合

合 名 会 社合 名 会 社 任 意 組 合任 意 組 合

中小企業等投資事業有限責任組合

中小企業等投資事業有限責任組合

匿 名 組 合 (※)匿 名 組 合 (※)

新たな会社類型新たな会社類型

企業組合制度の拡充企業組合制度の拡充 有限責任組合制度の拡充有限責任組合制度の拡充

合名・合資型有限責任人的法人合名・合資型有限責任人的法人

合 資 会 社合 資 会 社

(※)匿名組合では、匿名組合員は有限責任を負うのみであるが、業務執行にあたる営業者が無限責任を負う。 11

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3.(2)3.(2) 会社法上の「新たな会社類型」創設の論点整理(LLC制度類似のアプローチ)会社法上の「新たな会社類型」創設の論点整理(LLC制度類似のアプローチ)

○ 会社法の現代化に合わせて、会社法上に、有限責任の人的法人として「新たな会社類型」が創設される。○ この「新たな会社類型」の要素である、①内部における組織の柔軟性の確保(定款自治の徹底)、②対外関係における

全構成員有限責任の確保(その対価としての債権者保護規定)については、以下のような具体的な論点の検討が必要である(詳細についてはP17~18を参照)。

との関係

会社の内部の関係(出資者間の内部関係)

無限責任

物 的 組 織

合名会社

合資会社

/任意組合・有責組合

新しい新しい有限責任人的法人有限責任人的法人

株式会社

公開会社(非譲渡制限)

譲渡制限株式会社

大規模 小規模

有限責任

人 的 組 織出 資 者 の 業 務 執 行 参 加 原 則

組織運営の定款自治原則と定款設定の全員一致原則

人的会社の特性を維持するための

譲渡制限原則と退社自由の原則

開 示 制 度

金銭出資原則と全額払込制度の適応

最 低 資 本 金 規 制

配 当 規 制

業務執行者の債権者等に対する

責任の明確化

①組織の柔軟性の確保(会社の内部の関係)

②有限責任の確保(会社と外部との関係)

○所有と経営が一致しており、社員は原則として業務執行者となる。原則として出資者全員が合意して定める定款において、予め業務執行者にならない出資者を定めることも可能。

○組織内部のルール(意思決定の方式、業務執行者の裁量の範囲、利益分配のルール等)は定款で自由に決められる。

○定款によって全てを決めるので、その制定、変更には原則として出資者全員の同意が必要。

○出資者の個性が重要な人的会社であるから、持分利益の実現方法は、譲渡ではなく退社が原則となる。

○会社財産の状況を債権者に明らかにするために、開示制度が設けられる。

※但し開示の範囲は、決算公告のように広く第三者に開示を求める措置ではなく、債権者の閲覧請求権に止めるべき。

○会社財産を確保するために、労務出資等は認められず金銭出資が原則となり、設立時に全額を払い込むことが義務付けられる。

※但し、労務で貢献するような社員については、利益配分を自由に工夫することにより報いることが可能。

○他の会社類型への変更規定の整備等の議論はあるが、簡素でスピード感をもって会社を設立することを可能にするため、最低資本金規制は課さないのが妥当。

○会社財産を維持する観点から、配当において純資産から資本金等の一定額を控除する必要があるなどの株式会社と同様の配当規制がかかる。

○また、社員の退社時の払い戻しについても、同様の配当規制をベースに債権者保護を検討する必要がある。

○原則として社員全員が有限責任となるため、その有限責任に伴う合理的な措置として、第三者保護の観点から、悪意・重過失の業務執行者に責任を負わせることは妥当と考えられる。

※但し、業務執行者でない社員については第三者責任を負わせる必要はない。

会社と外部との関係

(出資者の会社債権者との関係)

12

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3.(2)3.(2) その他のアプローチの論点整理その他のアプローチの論点整理

<合名・合資型有限責任人的法人の創設<合名・合資型有限責任人的法人の創設 ~~ 会社が他の会社の無限責任社員になることを許容>会社が他の会社の無限責任社員になることを許容>

<有限責任組合制度の拡充<有限責任組合制度の拡充 ~~ 有限責任の徹底と法的行為能力の付与>・・・LLP制度類似のアプローチ有限責任の徹底と法的行為能力の付与>・・・LLP制度類似のアプローチ

<企業組合制度の拡充<企業組合制度の拡充 ~~ 定款自治の徹底>定款自治の徹底>

有限責任の人的法人制度の導入

有限責任の人的法人制度の導入

○ 現在の合名・合資会社は、内部関係においては組合の規則を準用しており、定款で組織内ルールを自由に決められるようになっている。○ 但し、最低1人以上の出資者が無限責任を負う必要があり、ドイツの有限合資会社(GmbH&Co.KG)のように、この無限責任社員に有限責任の会社組織が就くことが出来ないため、出資者全員の有限責任性を確保することが出来ない。

○ 現在の合名・合資会社は、内部関係においては組合の規則を準用しており、定款で組織内ルールを自由に決められるようになっている。○ 但し、最低1人以上の出資者が無限責任を負う必要があり、ドイツの有限合資会社(GmbH&Co.KG)のように、この無限責任社員に有限責任の会社組織が就くことが出来ないため、出資者全員の有限責任性を確保することが出来ない。

○ 会社法現代化の議論にあるように、会社が他の会社の無限責任社員となることを禁止している規定(商法55条)を廃止する必要がある。

※ 現在でも、有限責任組合の無限責任社員に株式会社や有限会社がなることは可能であり、ベンチャーファンドではこうした形態が一般的となっている。

○ 会社法現代化の議論にあるように、会社が他の会社の無限責任社員となることを禁止している規定(商法55条)を廃止する必要がある。

※ 現在でも、有限責任組合の無限責任社員に株式会社や有限会社がなることは可能であり、ベンチャーファンドではこうした形態が一般的となっている。

○ ベンチャー企業向けの投資事業に用いられる中小企業等投資事業有限責任組合は、民法組合の一種なので、組織内部の柔軟性は確保でき、構成員課税である。○ もっとも、人的資産を活用する新しい組織形態の受け皿としては、①事業範囲が投資事業に限定されており、②法人格はなく、③最低1人の無限責任組合員を必要とするなどの問題がある。

○ ベンチャー企業向けの投資事業に用いられる中小企業等投資事業有限責任組合は、民法組合の一種なので、組織内部の柔軟性は確保でき、構成員課税である。○ もっとも、人的資産を活用する新しい組織形態の受け皿としては、①事業範囲が投資事業に限定されており、②法人格はなく、③最低1人の無限責任組合員を必要とするなどの問題がある。

○ ①事業内容の制約の撤廃、②有限責任の人的会社制度における債権者保護制度と同様の措置を講じることによる全構成員有限責任性の確保に加え、③団体名義での登記・登録が可能となるように何らかの法的な措置を講じるなど、組合が法的主体となりうるための適切な法制の整備を行う必要がある。※ 現在、経済産業省において、有限責任組合の投資対象を更に拡大し、事業内容を充実する方向で法改正が検討されているが、事業範囲は依然投資事業に限定される見込み。

○ ①事業内容の制約の撤廃、②有限責任の人的会社制度における債権者保護制度と同様の措置を講じることによる全構成員有限責任性の確保に加え、③団体名義での登記・登録が可能となるように何らかの法的な措置を講じるなど、組合が法的主体となりうるための適切な法制の整備を行う必要がある。※ 現在、経済産業省において、有限責任組合の投資対象を更に拡大し、事業内容を充実する方向で法改正が検討されているが、事業範囲は依然投資事業に限定される見込み。

○ 例えば、出資組合員(出資のみを行い組合事業に従事しない組合員)がいない企業組合で、組合員全員が理事として業務執行に参加するような企業組合は、有限責任の人的法人の性格を持つと考えられる。○こうした特定の企業組合には、定款で機関設計や意思決定の方法を自由に定めることが可能になるよう措置していけば、有限責任の人的法人制度の一翼を担える可能性がある。

○ 例えば、出資組合員(出資のみを行い組合事業に従事しない組合員)がいない企業組合で、組合員全員が理事として業務執行に参加するような企業組合は、有限責任の人的法人の性格を持つと考えられる。○こうした特定の企業組合には、定款で機関設計や意思決定の方法を自由に定めることが可能になるよう措置していけば、有限責任の人的法人制度の一翼を担える可能性がある。

○ 企業組合等は、対外的には法人格があり、全構成員の有限責任性が確保されている。○ しかしながらその内部関係を見ると、総会、理事会、監事といった機関の設置が強制され、定款でこれを緩めることができない上、意思決定の方式も多数決原則で、出資者に応じた権限配分は許されておらず、人的資産を活用する組織としては課題が残っている。※ 設立や定款変更に際しては行政庁の認可も必要。

○ 企業組合等は、対外的には法人格があり、全構成員の有限責任性が確保されている。○ しかしながらその内部関係を見ると、総会、理事会、監事といった機関の設置が強制され、定款でこれを緩めることができない上、意思決定の方式も多数決原則で、出資者に応じた権限配分は許されておらず、人的資産を活用する組織としては課題が残っている。※ 設立や定款変更に際しては行政庁の認可も必要。

13

Page 19: 人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案...人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案 -日本版LLC制度の創設に向けて-

3.(3)3.(3) 有限責任の人的法人制度に対する期待と産業政策上の意義有限責任の人的法人制度に対する期待と産業政策上の意義

○ 有限責任の人的法人制度が備え持つ、組織の柔軟性・構成員の有限責任等の性質に対し、具体的には、①個人の専門的知識やノウハウを使った高度専門職の集団、②人的資産を元手にした現代的創業、③法人と法人の共同実験(ジョイント・ベンチャー)等における活用可能性が考えられる。

○ こうした「有限責任の人的法人制度」の創設により、創業の活発化、高度サービス産業化、産業の高付加価値化、対日投資の促進、事業再編の促進、研究開発の活発化、新規事業の開拓など、様々な効果が期待される。

法人と法人の共同実験

~ 株式会社・有限会社 ~

有限責任の人的法人制度有限責任の人的法人制度(日本版LLC制度)(日本版LLC制度)

人的資産を元手にした現代的創業

物物 的的 組組 織織 人人 的的 組組 織織

有有限限責責任任

無無限限責責任任

~ 合名・合資会社 / 組合組織 ~

人的資産を元手にした

現代的創業ex)コンテンツ制作等

高度専門職

ex) コンサルティング業、監査法人等

事業再編の促進、研究開発の活発化、新規事業の開拓、対日投資の促進、

産業の高付加価値化等

創業の活発化、新規事業の開拓等

創業の活発化、新規事業の

開拓等

高度サービス産業化、

産業の高付加価値化等

○ 新たな会社類型○ 合名・合資型有限責任法人○ 有限責任組合制度の拡充○ 企業組合制度の拡充

アプローチ方法

○組織内自治の徹底による機動的な意思決定

○利益配分の自由度

○全構成員の

有限責任性の

確保

[出所]経済産業省国内アンケート結果(回答数:139社)

是非活用 活用

どちらでもない あまり活用したくない

活用したくない 無回答

48%

30%

55%

ベンチャーキャピタルの48%がファンドの組成に使いたいと回答

ベンチャー企業の30%が新たな事業を興す場合に使いたいと回答

大企業の55%が他社との実験的事業の母体に使いたいと回答

有限責任の人的法人制度の潜在的ニーズ

14

<参考>

Page 20: 人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案...人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案 -日本版LLC制度の創設に向けて-

(参考1-(参考1-①①)) 株式会社制度を人的資産集約型産業において活用する上での工夫株式会社制度を人的資産集約型産業において活用する上での工夫~米国における「株主主権型株式会社」の修正に向けた試み~米国における「株主主権型株式会社」の修正に向けた試み

○ 1980年代以降、米国では、「株主主権」と「雇用の流動化」が進展したが、組織のコアとなる人材をいかに企業の内部に引き留めて競争力を維持するかという新しい悩みに直面している。

○ 実際に、人的資産集約型企業においては、株主利益の追求が人材の流出を招いて企業価値が低下するという事例が報告されている(株主主権型株式会社のアンチテーゼ)。(「①サーチ&サーチ社」の例 、「②ソロモン・ブラザーズ社」の例参照。)

○ 米国における優良企業においては、年功制賃金や定期昇給制度による長期雇用へのインセンティブ強化、企業文化やチームワークの重視、福利厚生制度の充実など、かつて日本企業が得意とした雇用システムを採用して、離職率が上がるのを食い止めようとしている例も報告されており、米国では、株主主権型モデルを修正しながら、人的資産を重視する組織へ組み替える試みが始まりつつある。

M&C サーチ社(新設)

会長会長

役員役員 従業員従業員

顧客顧客

② 解任された会長がライバル会社設立。会長の経営手腕、従業員、顧客等が流出。

サーチ&サーチ社(英・広告会社)

会長会長

役員役員 従業員従業員

顧客顧客

米国機関投資家(30%の株を保有)

①会長の解任 ③大損害

サーチ&サーチ社の、30%の株を所有する米国機関投資家が、創業者であり 広告作品と経営を取り仕切るサーチ兄弟と役員報酬をめぐり対立したことから 同兄弟がサーチ&サーチ社を退社としてライバル会社を立ち上げたところ、 元のサーチ&サーチ社の人材、更には主要な顧客を奪ってしまった例。

米国型株主主権型モデルの限界 ①米国型株主主権型モデルの限界 ①

ソロモン・ブラザーズが取引の失敗を理由にあるトレーダーを解雇したために、当該トレーダーと人的なつながりのあるトレーダーたち(当時のソロモンの利益の大変を稼ぎ出していた人材)が次々と退社し、ロングタームキャピタルマネジメントを設立した例。

Long Term CapitalManagement

経営者

専門スタッフ 専門スタッフ

指揮・調整 忠誠心

ソロモン・ブラザーズ

債券取引部門

専門スタッフ 専門スタッフ

リーダー指揮・調整 忠誠心

資金、看板指揮・調整

忠誠心 物的・人的の両面で結合の希薄化

部下の失敗の責任を取らされ解雇

独立

ソロモン・ブラザーズの1990-93年の利益全体の87%相当の利益に貢献したスタッフが流出

米国型株主主権型モデルの限界 ②米国型株主主権型モデルの限界 ②

強い人的つながり

15

Page 21: 人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案...人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案 -日本版LLC制度の創設に向けて-

(参考1-(参考1-②②)) 株式会社制度を人的資産集約型産業において活用する上での工夫株式会社制度を人的資産集約型産業において活用する上での工夫~日本における「従業員主権型モデル」の修正に向けた試み~日本における「従業員主権型モデル」の修正に向けた試み

○ 我が国の80年代までの企業モデルは「従業員主権型モデル」と呼ばれ、安定した株主構造と組織特殊的な人的資産の蓄積を進め、メインバンクシステムが経営危機時の介入を行い、従業員主権のなれ合いを防ぐことにより、有効に機能する企業モデルであった。

○ しかしながら、90年代に入り、従業員主権型モデルの監視役を果たしてきたメインバンク機能が弱まった結果として、相次ぐ企業不祥事や変化への適応の遅れ、過剰債務構造の温存という形でその弊害が目立つようになった。

○ 高度成長を支えてきた日本型の従業員主権モデルは修正を余儀なくされているが、雇用の流動化や株主機能の強化は、米国企業が直面しているように、企業内における人的資本への投資を阻害する副作用を伴う可能性がある。日本の優良企業は、株主監視が強まる中でも長期雇用を経営の理念として掲げて対応するなど、我が国においても、人的資産重視型の新しい企業モデルの模索が始まっている。

80年代までの日本型企業モデル~従業員主権型の企業モデル~

80年代までの日本型企業モデル~従業員主権型の企業モデル~

我が国の企業システムは、「株式持ち合い」

「メインバンクによる監視機能や経営危機時

における介入機能」「終身雇用制」により、株

主の短期的視点に基づく意思決定による侵

害から組織特殊的な人的資産を防御し、そ

の蓄積を促進する上で積極的な役割を果た

してきた。

終身雇用制

メインバンクシステム

株式持ち合い

競 争 力 の 源 泉

企業固有の人的投資の促進

日本型「従業員主権型」モデルの限界

90年代に顕在化した日本型企業モデルの変質

90年代に顕在化した日本型企業モデルの変質

1980年代以降、メインバンク機能が低下し

たことにより、年功制の弊害顕在化を有効に

阻止する機能がなくなるという「ガバナンス

の空白」が生じた。その結果、相次ぐ企業不

祥事や変化への適応の遅れ、過剰債務構

造の温存という形でその弊害が現れた。

不良債権、過剰債務構造、人材の死蔵

終身雇用制

メインバンクシステム

株式持ち合い

ガ バ ナ ン ス の 空 白

内部のもたれあい

新しい企業モデルの模索新しい企業モデルの模索

株主監視が強まる中でも長期雇用を経営の理念に掲げた新たな企業モデルが模索されている。

町田町田 勝彦勝彦 シャープ社長シャープ社長

技術の融合を生むためにも、社内にノウハウ、

人材のストックをいかに積み重ねるかが重要

になる。特にこれからは、専門外を経験した

技術者、「ゼネラルスペシャリスト」をどう育成

するかの競争になるだろう。それだからこそ、

早期退職みたいなことをせず、頑張って終身

雇用を維持していきたい。ただし、実力主義

だということをはっきりさせ、一方で個人のス

キルを高める受け皿を用意する。

(日経ビジネス 2003.1.6)

御手洗御手洗 冨士夫冨士夫 キヤノン社長キヤノン社長

知識創造企業においては、会社の実体は社

員。従って会社の実力を突き詰めれば社員

の実力の集積値。

終身雇用による運命共同体意識が社員の団

結力となり、目標に向かって一致団結

して進む。新技術は発想から製品化まで10年以上かかるため、生活の不安なく長期間

没頭できる環境が研究開発には必要。

(経済産業省「日本企業の将来像を考え

る研究会」資料 2002.1)

16

Page 22: 人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案...人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案 -日本版LLC制度の創設に向けて-

(参考2-(参考2-①①)) 新たな会社類型新たな会社類型 ~人的組織として重要な組織の柔軟性の確保(会社の内部の関係)~人的組織として重要な組織の柔軟性の確保(会社の内部の関係)

物的・人的の区別

組 織 形 態 株式会社 有限会社 企業組合(注1) 新たな会社類型

合資会社 合名会社 有限責任組合(注2)

任意組合

物 的 組 織 人 的 組 織

持分の考え方

意思決定

定款変更

業務執行

利益処分

脱退(退社)

持分譲渡

法定の意思決定機関における多数決が強制され、基本的には定款によって

決議要件を緩めることが出来ない

原則全員一致ではあるものの、定款によって意思決定方法を自由に定めることが可能

・株主総会特別決議事項(3分の2以上の多数決)

・社員総会特別決議事項(4分の3以上の多数決)

・総会特別決議事項(3分の2以上の多数決、但し、行政庁の認可が効力発生の要件)

・株主総会普通決議、特別決議

・社員総会通常決議、特別決議

・総会普通決議、特別決議

・原則として総社員の一致によるものとする。

・原則総社員の同意が必要。

・原則総社員の同意が必要。

※明確な規定なし。 ※明確な規定なし。

出資者から独立した業務執行機関等の設置が法的に強制され、

機関の設置や在り方に自由度がない

・取締役会、監査役 ・取締役(監査役の設置は任意)

・理事会、監事

原則として社員全員が業務執行に参加するが、定款で業務執行機関そのものや機関の在り方を自由に定めることが可能

・原則として、社員全員が会社の業務を執行する権限を有するものとする。

・各無限責任社員は定款に別段の定めのない限り、業務を執行する権利を有し義務を負う。

・社員は定款に別段の定めのない限り、業務を執行する権利を有し義務を負う。

・無限責任組合員が業務執行者となる。

・各組合員は、各自業務執行に参加する権限を有する。

利益処分には組織としての意思決定が必要

・株主総会普通決議事項(多数決)

・社員総会普通決議事項(多数決)

・総会普通決議事項(多数決)

いかなるルールでどのように利益配分するかを定款で自由に定めることが可能

※明確な規定なし。 ※明確な規定なし。 ・損益分配の割合は組合契約で定めることが可能。

・損益分配の割合は 組

合契約で定めることが可能。

・定款に、損益分配の割合、及び分配の手続について定めることが可能。

退社の自由は認められない

明確な規定はないものの、株主(社員)平等の

原則の観点から一部の構成員だけが任意に会社から財産の払戻しを受ける制度は認めにくい。

原則的に脱退(退社)の自由は認められる

・90日前までに予告し、

事業年度の終において脱退することが出来る。

・やむを得ない事由があるときは、定款の定めにかかわらず、退社できるものとする。

・やむを得ない事由がある場合は、任意に脱退出来る。

・やむを得ない事由がある場合は、任意に脱退出来る。

※やむを得ない事由がある場合を除いて、任意に脱退出来ることは出来ない。

・やむを得ない事由がある場合は、任意に 脱

退出来る。

原則持分の譲渡は自由 持分の譲渡は、原則他の構成員全員の同意が必要

・社員以外への譲渡には、社員総会での承認が必要。

・組合員は、組合(理事会)の承諾を得なければ、持分を譲渡することが出来ない。

・持分の譲渡は、原則として総社員の一致によるものとする。

・①有限責任社員は無限責任社員全員の、②無限責任社員は他の社員全員の同意がそれぞれ必要。

・他の社員全員の承諾が必要。

※明確な規定はないが、全組合員の同意が必要とされる。

※明確な規定はないが、全組合員の同意が必要とされる。

※取締役会で承認されない場合は譲渡制限にかかる旨を、定款に定めることは可能。

(注1)企業組合は、設立に行政庁の認可が必要。 (注2)有限責任組合は、事業範囲が原則として投資事業に限定されている。 17

○ 人的会社や組合は、誰が社員であるかが重要であり、社員の総意によって定める定款で全て定められ(定款自治)、強行規定は少ない。いかなる機関を設ける否かも定款で定めることができ、株主平等原則も適用されず、定款により特定の社員に意思決定権限や損益の帰属を集中させることもできる。

○ 会社法現代化にあわせて検討されている「新たな会社類型」の内部の関係については、こうした既存の人的会社(合名・合資会社)の規定が準用されており、定款による自治の徹底が確保されることとなる。

Page 23: 人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案...人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案 -日本版LLC制度の創設に向けて-

(参考2-(参考2-②②)) 新たな会社類型新たな会社類型 ~有限責任の確保(会社と外部との関係)~有限責任の確保(会社と外部との関係)

○ 有限責任の会社の場合、債権者にとっては、会社財産が債権回収のよりどころになるため、一定の債権者保護規定が必要とされる。→「試案」における個別の検討事項についてみれば、以下の通り。

【配当規制】有限責任性の確保に伴う当然の措置であり、純資産から資本金などの一定額を控除するなどの、株式会社と同様の配当規制がかかる。また、退社員に対する持分の払戻しについても、同様の配当規制をベースに債権者保護を検討するのが妥当である。

【最低資本金制度】人的資産を持ち寄り、スピード感をもって簡易に会社を設立することを可能にしておくべきであるため、適用しないのが妥当。【計算書類等の開示制度】債権者の求めに応じて計算書類を開示するということで、債権者に閲覧請求権を与えることは考えられるが、債権者以外

の第三者にも広く開示を求める決算公告のような義務は不要とすべきと考えられる。【業務執行者の第三者責任】業務執行者については、悪意・重過失の業務執行者に責任を負わせることは有限責任性に伴う合理的な措置と思わ

れる。但し、この点に関し、業務執行者でない社員についても、第三者に対する責任を負わせるべきとの議論もあるが、現行の合資会社の規定をみても、定款設定の意思決定に参加することとなる有限責任社員は、第三者責任を負わないことになっており、この「新たな会社類型」についても同様の考え方を採るべきと考えられる。

規制有り

最低1人以上が無限責任を負う構成員の責任の範囲

組織形態規定項目 株式会社 有限会社 企業組合 新たな

会社類型合資会社 合名会社 有限責任

組合

任意組合

財産的基礎

充実のための主な規律

主な情報開示義務

取締役等の第三者に対する

責任

最低資本金制度有り※下限額の引き下げ乃至撤廃で検討中。

※この他、資本不変の原則(減資時の債権者保護手続の必要)有り。

最 低 資 本 金 制 度 無 し

資本維持・充実の原則有り○配当規制:会社の貸借対照表上の純資産額が資本・法定準備金等の総額を上回る場合でなければ、会社は株主(社員)に対し、利益配当等財産分配をしてはならない。○全額払込主義:資本の額に相当する財産が出資者から確実に拠出されることを要する。

計 算 書 類 等 の 開 示 規 制 有 り

悪意・重大なる過失がある場合の第三者に対する責任規定有り

資本維持・充実の原則無し

・財務諸表等、公認会計士等作成の意見書の備置き・閲覧。

○悪意又は重大なる過失があった場合は、その取締役等は第三者に対して連帯して損害賠償の責任を負う。

公 告 ( 及 び 個 別 催 告 ) 等 の 義 務 有 り

・計算書類等の備付及び閲覧等

・債権者に、貸借対照表及び損益計算書の閲覧請求権を与えるものとする。

計算書類等の開示規制無し

無し・計算書類等の備付及び閲覧等

・合併については、官報による公告等を要する。

・合併については、官報による公告等を要する。

・計算書類等の備付及び閲覧等

※決算公告のように、広く第三者に決算内容の開示を求める措置はなし。

・分割、合併等は官報等による公告等を要する。

計算書類等の開示

規制

公告等その他

資本維持・充実の原則

最低資本金制度

その他

○配当規制や全額払込主義は適用されない。

有り・組合財産は、純資産額を超えて分配出来ない。

無し

・合併、出資一口の減少等については公告等を要する。

・計算書類の公告を要する。

・分割、合併等は官報等による公告等を要する。

無し

全 構 成 員 有 限 責 任

※有限責任組合員の存在を明確化する為、登記制度が導入されている。

18

・現行1,000万円以上。

※新事業創出促進法による適用除外の特例有り。

・現行300万円以上。

※新事業創出促進法による適用除外の特例有り。

Page 24: 人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案...人的資産を活用する新しい組織形態に関する提案 -日本版LLC制度の創設に向けて-

(参考3)(参考3) 人的資産を活用する新しい組織形態に対する期待人的資産を活用する新しい組織形態に対する期待 ~政府決定・民間の提言~政府決定・民間の提言

○研究開発型ベンチャーの創出と育成について<総合科学技術会議意見具申> 平成15年5月人的資本を基礎とする閉鎖型の簡易で柔軟な組織形態という特性を活かし、ファンドやベンチャーキャピ

タル等の運営組織して、米国で最近急速に普及しているLLC制度があるが、日本においても、合理的かつ健全な私法上の事業組織形態の在り方について、私法上の問題点の整理と検討を行うとともに、併せて税法上の取扱いも検討する。

○早期事業再生ガイドライン <経済産業省> 平成15年2月~ベンチャー事業やジョイントベンチャーなどにおいて活用されている米国におけるリミテッド・ライアビリティ・カンパニー(LLC)の

ような新たな有限責任組織については、~出来るかぎり早期に、構成員の有限責任性が確保された事業組織法制の整備のあり方について検討し結論を得るとともに、併せて税制のパススルー性についても検討を行う。

○規制改革の推進に関する第2次答申<総合規制改革会議答申>平成14年12月

私法上の事業組織形態についての検討 現在用意されている私法上の組合や法人の諸形態については、これらを一層利用しやすい制度に再構築する必要がある。~合理的かつ健全な事業組織形態の在り方について、私法上の問題点の整理と検討を行うとともに、併せて税制上の取扱いも検討すべきである。

○対日投資会議専門部会報告(別表) 平成15年3月新しい事業組織形態(日本型Limited Liability Company 等)の創設につき検討する。

○経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003(骨太方針) <閣議決定> 平成15年6月~研究開発型ベンチャーの創出、知的財産推進計画の推進、知的技術革新・産業集積の充実を一体的に推

進する。このため、最低資本金規制の撤廃の恒久措置化、有限責任会社(LLC)、有限責任組合(LPS)の早期創設、全国レベルでの見本市の開催、起業家支援機能の強化、特許審査の迅速化、投資ファンドに対する支援策の改善等を行う。

(注) 経済界からの要望

○産業力強化の課題と展望-2010年におけるわが国産業社会- <日本経団連> 平成15年4月高成長・新規分野における起業や、共同事業再編をはじめとする企業の戦略的連携、投資ファンドへの

リスクマネーの集約と投資拡大などを促すためには、リスク分散を可能とするとともに二重課税を排除する、新しい企業組織制度の創設が必要となる。…米国のLLCなどにならい、①法人格、②出資者の有限

責任性、③税制上の導管性、④組織の柔軟性を備えた「日本型LLC」を創設すべきである。

○対日投資促進民間フォーラムからの提言 平成14年12月対日直接投資促進に向けた抜本的な税制改革~米国のLLC並みの機能を持った日本版LLCの制定~ 19