uxデザインuxデザイン体験ワークショップガイドブック 4 u x d...

50
U X D UXデザイン 体験ワークショップ ガイドブック 発行:DIMO(大阪デザインイノベーション創出コンペティション)事務局/一般社団法人DCC 編集:UX KANSAI

Upload: others

Post on 28-Jun-2020

2 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXDUXデザイン体験ワークショップ

ガイドブック

発行:DIMO(大阪デザインイノベーション創出コンペティション)事務局/一般社団法人DCC

編集:UX KANSAI

Page 2: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXDUXD発行:DIMO(大阪デザインイノベーション創出コンペティション)事務局/一般社団法人DCC

編集:UX KANSAI

UXデザイン体験ワークショップ

ガイドブック

Page 3: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

45

6

78

10

11

13

16

1920

22

23

24

25

26

27

29

31

38

40

目次

UXデザイン体験ワークショップガイドブック

2

UXD18

■ 第1部:UXデザインの基礎知識UXとは

UXの期間

UXデザインとは

UXデザインの必要性

UXデザインの手法について

最後に

■ 第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド準備

会場

時間

ファシリテーションガイド

UXデザインの基本プロセス

ワークショップの目的とテーマの発表

●1 調査

●2 問題定義

●3 作成

●4 評価

振り返り

■ はじめに本書の使い方

用語について

Page 4: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXD

UXデザイン体験ワークショップガイドブック

3

目次

■ 第3部:事例事例:1

事例:2

41

46

46

47

47

47

42

44

■ 参考文献

■ 資料

■ 作成者

■ DIMO 大阪デザインイノベーション創出コンペティション について

■ お問い合わせ

Page 5: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXデザイン体験ワークショップガイドブック

4

UXD中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

高付加価値の製品・サービスを創出するためのプロセスの基礎知識を学び、手法の一

部をワークショップを通じて体験することで、デザイナー・クリエイターと共に、新商品・

新サービスを創出するためのベースとなる考え方を身につけることを狙いとしています。

UXデザインの導入編として、考え方とプロセスをワークショップを通じて体験しながら

学ぶことを目的としています。

まず、第1部ではUXデザインの基礎知識を解説し、第2部ではUXデザインプロセスを

体験するワークショップツールの紹介および進行について解説します。

第3部では当ワークショップを実施した企業の事例をご紹介します。

はじめに(本書の目的)

■ 本書の対象者

■ 本書の狙い

■ 本書の構成

Page 6: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXデザイン体験ワークショップガイドブック

5

UXDUXD

UXデザイン体験ワークショップを進行するファシリテーターが基礎知識を参加者に共有

し、ワークショップを進行します。

ワークショップに必要な資料は「一般社団法人DCC」のWebサイトよりダウンロード

ください。

http://dcc-net.biz/

● UXデザイン体験ワークショップ(PDF)

ワークショップ進行のためのスライドです。

プロジェクターまたは大型モニターに映してご利用ください。

● ワークシート(PDF)

参加者用の体験ワークショップのワークシートです。

参加者1人1部ずつお配りください。体験ワークショップはこのワークシートを1枚ず

つ埋めながら進めます。

本書の使い方

■ 別添資料

Page 7: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXDUXデザイン体験ワークショップガイドブック

6

【デザイン】「デザイン」というと、見た目を整える装飾的な意味合いで使われることが少なくありませ

んが、ここでは広義の「設計」という意味で使用しています。「デザイン」の対象は、形・色・

レイアウトだけでなく、サービス全体や、課題、組織など多岐に渡ります。

【ユーザー】商品・サービスの利用者という意味で、顧客や消費者、生活者を「ユーザー」と表現してい

ます。

【サービス】従来は目に見えない提供価値(例えば、接客や割引など)や、商品購入後のサポートを(ア

フター)サービスと表現していました。

しかし最近は店舗内装や接客、商品、サポートなどのタッチポイントすべてをサービスとと

らえ、商品の購入や利用時、サポート時も矛盾のない体験を提供しようとしています。

本書では、「商品・サービス」と表現し、「サービス」のみの表現で受け取られる誤解を軽減

するよう努めています。

用語について

Page 8: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXD第1部:

UXデザインの基礎知識

Page 9: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXとはここ数年メディアでもUXという言葉をよく耳にするようになってきました。

社会や経済において意識されるようになってきたUX。そもそもUXとは何なのか。

まずはUXの意味をひも解いていきます。

直接的な意味としては、「User」の「Experience」、つまり「使う人」の「体験」ということ

になります。

例えば、パソコンが欲しいと思ってから実際に購入して使用するまでの流れを見てみま

しょう。

UX 【 User Experience 】 ユーザーエクスペリエンスUXとは、ある製品やサービスを利用したり、消費した時に得られる体験の総体。個別の機能や使いやすさのみならず、ユーザが真にやりたいことを楽しく、心地よく実現できるかどうかを重視した概念である。UX(ユーザーエクスペリエンス)とは - IT用語辞典 | http://e-words.jp/w/UX.html

第1部:UXデザインの基礎知識

8

イラスト

見に行こう

どれにしよう

パソコン便利だな

パソコン欲しいなぁ

パソコンを買いに行く体験 お店でパソコンを買う体験

パソコンを使う体験

これにします

Page 10: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

9

第1部:UXデザインの基礎知識

UXとは

「パソコンを買いに行く体験」、「お店でパソコンを買う体験」、「パソコンを使う体験」、これ

らはすべて「ユーザーの体験」であり、「ユーザーエクスペリエンス」であるといえます。

UXとは、“個別の機能や使いやすさのみならず、ユーザが真にやりたいことを楽しく、心

地よく実現できるかどうかを重視した概念である。”ということから、機能性だけでなく

「やってみたい」、「楽しい」、「心地よい」など、使う人の感情や情緒的なことが含まれます。

UXに似た言葉として、CX(カスタマーエクスペリエンス)、BX(ブランドエクスペリエン

ス)などがあります。これらも意味としては大きく変わりませんが、CXが「顧客」の体験、

BXが「ブランド」の体験という特定の体験を指します。

Page 11: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

10

UXの期間UXを理解する上で重要なのは、UXの期間を知ることです。

2010年に発表されたユーザーエクスペリエンス白書によると、注目する部分によって4つ

の期間に分類されるといわれています。

例えば、パソコンがほしいと思う(予期的UX)、パソコンを使用している(一時的UX)、友

人にパソコンの使い心地を話す(エピソード的UX)、長期間使用後そのPCについて考え

る(累積的UX)というようなイメージです。

ただし、この例えはかなり簡略化しているので、もう少し深掘りが必要です。

第1部:UXデザインの基礎知識

1 2 3 4利用前 利用中 利用後 利用期間全体

予期的UX 一時的UX エピソード的UX 累積的UX

経験を想像する

いつ

なにを

どのように 経験する ある経験を内省する 多種多様な利用期間を回想する

V. Roto, E. Law, et al.(2011), hcdvalue 訳, 『ユーザエクスペリエンス白書』. | http://site.hcdvalue.org/docs

Page 12: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXD

11

UXデザインとは「User Experience Design」(UXDともいいます)。

UXをデザインすること。

ここでいう「デザイン」は、P.6の「用語について」の説明通り、デザイン本来の意味である

「設計」を指しています。つまり、「ユーザーの体験を設計すること」になります。

先ほど例に出したパソコンの購入の流れでUXデザインが悪い場合をみてみましょう。

これらは「体験が悪い=UXデザインが悪い」といえます。

ここからわかるのは、商品やサービスを購入、使用することには必ず「体験」が含まれてい

ることです。

UXデザインとは

第1部:UXデザインの基礎知識

イラスト

何買えばいいかわからないからとりあえずお店に行こう

使い方がわからない…

いっぱいあって違いがわからない

店員の説明がよくわからない

パソコンあったら勉強がはかどりそう

自分に合ったパソコンがわからないからもういいや

立ち上げるのが面倒くさい…

パソコンを買いに行く体験 お店でパソコンを買う体験

パソコンを使う体験

Page 13: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

例えば、10万円で購入したパソコンの価値には、そのパソコンの性能や品質だけではな

く、パソコンの広告を目にすること、小売店での接客販売、インストールされたソフトの使

用感、それを持つことの所有感などすべてが含まれています。

商品やサービスでは、そのもの単一で考えがちですが、その前後の事象、感情なども含め

てデザインすることがUXデザインであり、UXデザインが注目される重要なポイントにな

ります。

ただひとつ注意として、UXは限定した使用者のために設計する場合が多く、万人のため

のユニバーサルデザインとは別のものであるということも理解しておく必要があります。

このUXデザインをきっちりと行うことでユーザーが心地よく利用でき、提供者側も売れる

モノ・コトを作ることができると考えられています。

UXデザインとは

12

第1部:UXデザインの基礎知識

Page 14: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

ここまでUXおよびUXデザインについて述べてきましたが、これらは本当に必要なので

しょうか。

以下の図を見てください。

これは、ジョセフ・パイン(B. Joseph Pine II)とジェームス・ギルモア(Jemes H.

Gilmore)が1999年に発表した『Experience Economy 経験経済』で提唱した概念

図です。

横軸はPricing(価格)を表し、縦軸はCompetitive Position(差別化)を表していま

す。図中のステップはCommodities(産物)、Goods(製品)、Services(サービス)、

Experience(体験)です。

右へ行けば行くほど価格が上がり、上にいけばいくほど価値が差別化されます。上に行く

ことをカスタマイゼーション、下に下がることをコモディティ化といいます。

UXデザインの必要性

13

第1部:UXデザインの基礎知識

Differentiated

Un differentiated

Market PremiumPricing

CompetitivePosition

commodities

goods

services

experience

B. J. パイン II, J. H. ギルモア(2005), 岡本慶一, 小高尚子 訳, 『[新訳]経験経済』, ダイヤモンド社.

Page 15: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

この説明でよく用いられる例としてコーヒーがあります。

Commodities(産物)はコーヒー豆です。原料であるコーヒー豆はそのままでは飲むこ

とができないため安価です。この豆を挽いてGoods(製品)にします。ここで価値がひと

つ上がり差別化が可能になります。今度は商品を使って、お店で提供します。これが

Services(サービス)です。差別化することで価値は上がり、価格も上がります。この

サービスの上位の価値がExperience(体験)です。

そして、このサービスの上位の体験を体現したことで有名な例がスターバックス社です。

同社はコーヒーショップとしてユーザーにコーヒーを提供するサービスに体験を加えるこ

とで一躍「世界のスターバックス」に成長しました。

ユーザーは自由にカスタマイズできるコーヒーや、特に日本においては店に行くこと自体、

コーヒーを飲むこと自体に価値を感じて、スターバックスにコーヒーを買いにいきました。

これが商品やサービスを超えたExperience(体験)です。

iPhoneやMacのメーカーであるApple社も同様です。

家電製品、デジタルデバイスの広告は防水機能、カメラの解像度などスペックを宣伝する

ことが一般的です。しかしApple社の広告では、孫が祖母をiPhoneで撮影し、それを見

る幸せそうな家族が映し出される広告を行います。

Apple社はiPhoneを持つことで得られる体験を説明しているのです。

UXデザインの必要性

これらの例から言えることは、ユーザーはモノだけではなく、コトに価値を見いだしている

ということです。成熟期を迎えた社会、業界において似たような商品が似たような価格で

並び、ユーザーは価値を見いだせなくっています。

ここに重要なファクターとして「体験」があるということがいえます。

日本の高度経済成長期に発売された家電製品では、「新しい機能」がそのまま「新しい価

値」になり得ました。

例えば、洗濯板を使って衣類を洗っていた時代における手動洗濯機の登場は、ユーザーに

革新的な価値をもたらしました。さらに手動から自動への進化は飛躍的に洗濯機のもた

らす価値が上がりました。その後、脱水、乾燥と機能が追加され、様々な種類別に洗うこ

とができるモードが増えていくことはどうでしょうか。

確かに機能は豊富になっているかもしれませんが、できることが増えるにしたがってボタ

ンが増えると使いこなせないユーザーも増えていきます。

作り手が想定する新しい機能の利便性は本当にユーザーが求めていることなのだろうか、

ユーザーがどこに価値を見いだしているか、それを考えることがUXデザインであり、UXデ

ザインが必要となってきた経緯、背景なのです。

企業側もそのような状況を踏まえ、自社内にUX事業部、UXチームのような体験のデザイ

ンを専門とする部門ができるほど社会、ビジネスにおけるUXの重要性は高まっています。

14

第1部:UXデザインの基礎知識

Differentiated

Un differentiated

Market PremiumPricing

CompetitivePosition

commodities

goods

services

experience

Page 16: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

この説明でよく用いられる例としてコーヒーがあります。

Commodities(産物)はコーヒー豆です。原料であるコーヒー豆はそのままでは飲むこ

とができないため安価です。この豆を挽いてGoods(製品)にします。ここで価値がひと

つ上がり差別化が可能になります。今度は商品を使って、お店で提供します。これが

Services(サービス)です。差別化することで価値は上がり、価格も上がります。この

サービスの上位の価値がExperience(体験)です。

そして、このサービスの上位の体験を体現したことで有名な例がスターバックス社です。

同社はコーヒーショップとしてユーザーにコーヒーを提供するサービスに体験を加えるこ

とで一躍「世界のスターバックス」に成長しました。

ユーザーは自由にカスタマイズできるコーヒーや、特に日本においては店に行くこと自体、

コーヒーを飲むこと自体に価値を感じて、スターバックスにコーヒーを買いにいきました。

これが商品やサービスを超えたExperience(体験)です。

iPhoneやMacのメーカーであるApple社も同様です。

家電製品、デジタルデバイスの広告は防水機能、カメラの解像度などスペックを宣伝する

ことが一般的です。しかしApple社の広告では、孫が祖母をiPhoneで撮影し、それを見

る幸せそうな家族が映し出される広告を行います。

Apple社はiPhoneを持つことで得られる体験を説明しているのです。

UXデザインの必要性

これらの例から言えることは、ユーザーはモノだけではなく、コトに価値を見いだしている

ということです。成熟期を迎えた社会、業界において似たような商品が似たような価格で

並び、ユーザーは価値を見いだせなくっています。

ここに重要なファクターとして「体験」があるということがいえます。

日本の高度経済成長期に発売された家電製品では、「新しい機能」がそのまま「新しい価

値」になり得ました。

例えば、洗濯板を使って衣類を洗っていた時代における手動洗濯機の登場は、ユーザーに

革新的な価値をもたらしました。さらに手動から自動への進化は飛躍的に洗濯機のもた

らす価値が上がりました。その後、脱水、乾燥と機能が追加され、様々な種類別に洗うこ

とができるモードが増えていくことはどうでしょうか。

確かに機能は豊富になっているかもしれませんが、できることが増えるにしたがってボタ

ンが増えると使いこなせないユーザーも増えていきます。

作り手が想定する新しい機能の利便性は本当にユーザーが求めていることなのだろうか、

ユーザーがどこに価値を見いだしているか、それを考えることがUXデザインであり、UXデ

ザインが必要となってきた経緯、背景なのです。

企業側もそのような状況を踏まえ、自社内にUX事業部、UXチームのような体験のデザイ

ンを専門とする部門ができるほど社会、ビジネスにおけるUXの重要性は高まっています。

UXD

15

第1部:UXデザインの基礎知識

Page 17: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXデザインの手法についてUXデザインを実践するには具体的にどのような取り組みを行えばよいのでしょうか。

それには、まず大きく4つの活動、フェーズを理解することからはじめます。

以下の図は特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構が提唱する、HCDサイクルとい

うものです。

このフェーズに沿ってプロジェクトを進めることでユーザーのニーズを探り、適切なアイデ

アを導き出していきます。サイクルという名の通り、一度工程を経てひとつの答えを導き出

すものというよりは、これらのサイクルをまわすことで、商品・サービスの価値を高めていき

ます。

16

第1部:UXデザインの基礎知識

利用状況の把握と明示

ユーザーの要求事項の明確化

要求事項に対する設計の評価

人間中心設計プロセスの計画

要求事項へ適合している

適切な段階へ反復

ユーザーの要求事項を満足させる設計による解決策の作成

(実装)

1

0

2

3

4

山崎和彦, 松原幸行, 竹内公啓(2016), 黒須正明, 山崎和彦, 松原幸行, 八木大彦, 竹内公啓 編, 『人間中心設計 入門』, 近代科学社.

Page 18: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

この4つのフェーズにおける具体的な手法として、以下のようなものがあります。

これらの手法を適切なフェーズで実践して、ユーザーが自ら発しないものも含めた声に耳

を傾けることが重要です。

UXデザインの手法について

17

第1部:UXデザインの基礎知識

1

2

3

4

●アンケート

●インタビュー

●エスノグラフィー

●ペルソナ

●構造化シナリオ

●カスタマージャーニーマップ

●ワイヤーフレーム

●プロトタイピング

●ユーザビリティ評価

●ヒューリスティック評価

利用状況の把握と明示

ユーザーの要求事項の明確化

要求事項に対する設計の評価

ユーザーの要求事項を満足させる設計による解決策の作成

Page 19: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

最後にこのようにUXデザインはその言葉の認知が広まる前からすでに存在した、ビジネスの成

功の確度を上げるための取り組みを改めて体系化し、製品やサービス開発に活かすため

のプロセスです。

もしあなたがひとりで机に向かい、とんでもないヒットアイデアが出せるのであればUXデ

ザインのプロセスは必要ないかも知れません。

しかし、このプロセスを経てチームや組織の中で共通言語を作り、同じ方向に進むことで

必ず同じ「気づき」が生まれ、そこから導き出されたアイデアはユーザー自身が内に秘めな

がらも気付いていない欲求に応えるモノ・コトである可能性は高いといえます。

18

第1部:UXデザインの基礎知識

Page 20: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXD第2部:

UXデザイン体験ワークショップガイド第2部では、UXデザインの考え方とプロセスを約2時間の体験ワークショップを通じて学

びます。また、企業が取り組む商材をテーマにすることで、新しい商品・サービスのアイデ

アの種を生むことができます。

ワークショップガイドの構成は「準備」「ファシリテーションガイド」「事例」の3つの章に分

かれています。「ファシリテーションガイド」はワークショップの進行を担当される方のみ

お読みください。

Page 21: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

準備特別な道具や環境は不要です。4~6名で囲めるテーブルと次の備品をご用意ください。

● ワークシート:参加者人数分(A3)

A3用紙片面に印刷し、一部ごとに左上をホッチキスやクリップで留めてください。

● 黒い太めのペン:参加者人数分

書いた内容をグループ内で共有するため、黒い太めのペンをご用意ください。

またワーク中は、参加者自身が持参したボールペンや鉛筆ではなく、黒い太めのペ

ンを使うよう促してください。

「プロッキー」が裏写りしないのでおすすめです。

● ふせん:1グループ1~2冊程度

45mm×45mmサイズのふせんをテーブルごとに1~2冊ご用意ください。

色の指定はありません。

● カラーラベルシール青・赤(または色ペン):1グループ各色1枚ずつ程度

2列ずつに切り分けておくと便利です。

20

■ 備品

Page 22: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

● ストップウォッチ

ファシリテーターが各ワークの時間の計測に使用します。

● お菓子

頭が疲れてきたときの糖分補給や、噛むことによる気分転換の効果が得られます。

手やテーブルが汚れない個別包装のチョコレートや飴、クッキー、小さなドーナツな

どがおすすめです。

● 太めのカラーペン

スケッチや強調したい時のために、テーブルごとに1~2本あると便利です。

準備

21

■ あるとよい物

Page 23: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

22

会場

● スライドを投影するプロジェクターまたはモニター

● テーブルと椅子

グループで作業しやすいように机を並べます。

1グループ4名~6名、グループの数に制限はありませんが、進行をスムーズに進める

には5~6グループまでがおすすめです。(最小催行人数は2名)

● 手荷物置き場

テーブルの上はワークシートや筆記用具で埋まること、ワークの途中での席替えをス

ムーズに行えることから、テーブルとは別に手荷物置き場をご用意いただくことをお

すすめします。

■ 設備

■ あるとよい物

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

スクリーン または モニター

4人1グループ

6人1グループ

机 机

Page 24: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

23

UXDUXデザイン体験ワークショップは、ワーク時間は90分、各ワークの前の説明が2~5分加

わり、全体で120分で設計されていますが、ワークの説明がスムーズに進行した場合、早

く終了することもあります。

残りの時間は、ぜひ参加者同士の振り返りにご利用ください。

時間

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

■ ワークショップの流れ1回目のインタビュー

質問を考える

2回目のインタビュー

1-1

1-2

1-3

6分

3分

6分

ユーザー評価4-1 5分

計 90分

インタビューからの深掘り

満たしたいユーザーの要求を定義する

(グループ分け)

問題をひとつに絞る

2-1

2-2

2-3

8分

1分

6分

8分

質問文を設定する

ニーズを満たすアイデア:発散(ひとりでアイデア出し)

ニーズを満たすアイデア:発散(共有し、さらにアイデア出し)

ニーズを満たすアイデア:収束

コンセプトの整理

クリエイティブ・コアの抽出

実現しにくい部分をピックアップ

実現しやすいアイデアにブラッシュアップ

コンセプトをまとめよう

3-1

3-2

3-3

3-4

3-5

3-6

3-7

3-8

3分

3分

10分

8分

3分

7分

3分

5分

5分

●1 調査

●2 問題定義

●3 作成

●4 評価

Page 25: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

24

ファシリテーションガイドここから先はファシリテーター(ワークショップを進行する人)だけお読みください。

UXデザイン体験ワークショップは、前半・後半の2部構成となっており、前半は2人1組の

ペアワーク、後半は2~6名のグループワークとなります。

ペアワークとグループワークの間には席替えが発生します。また、ワークシートや筆記用

具でテーブルが埋まるため、私物はテーブルの上にできるだけ置かないように参加者へ事

前にお声がけください。

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

Page 26: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

25

UXデザインの基本プロセス

第1部の基礎知識で解説したように、UXデザインの一般的なプロセスは次の図で表

されます。

各ステップの名称を正しく繰り返し読み上げにくいため、本ワークショップでは以下

の名称に置き換えています。

スライド:P2~3

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

利用状況の把握と明示

ユーザーの要求事項の明確化

要求事項に対する設計の評価

人間中心設計プロセスの計画

要求事項へ適合している

適切な段階へ反復

ユーザーの要求事項を満足させる設計による解決策の作成

(実装)

1

0

2

3

4

山崎和彦, 松原幸行, 竹内公啓(2016), 黒須正明, 山崎和彦, 松原幸行, 八木大彦, 竹内公啓 編, 『人間中心設計 入門』, 近代科学社.

Page 27: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

ワークショップの目的とテーマの発表

ワークショップ実施前に、参加者と以下のワークショップの目的を共有します。

テーマは全体でひとつ、「タオル」「Tシャツ」など、新たに開発したい商品・サービス

のカテゴリを入れてください。

スライド:P5~6

26

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

Page 28: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

27

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

●1 調査利用状況の把握と明示

このステップでは、ユーザーの特性や商品・サービスの利用状況を理解し、共感する

ことを目的にインタビューをします。調査の姿勢としては、ユーザーに興味を持って

問いを立てながら、ユーザーの特性や利用状況、そして利用時の感情まで掘り下げ

ていきます。

通常、ユーザーへのインタビューの機会は1人1回ですが、ワークショップでは段階的

に掘り下げていけるように2回実施します。

スライド:P7~12

実践隣の人とペアになってもらい、交互にインタビューし合います。なるべく知らない人同士のペアが理想です。

1回目のインタビューは今回テーマに設定した商品またはサービスをユーザーが利用するにいたった

理由と、実際の利用状況を知ることが目的です。

ワークシートに記載している質問文の例を参考にインタビューを進めてください。

1回目のインタビュー1-1 3分×2人

次ページにつづく

タイムキープ

Page 29: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

28

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

1回目のインタビューから気になる発言をピックアップし、その発言の気持ちや考えを掘り下げる質

問を考えます。

掘り下げるための質問文を考える1-2

作成した質問をベースに2回目のインタビューを実施します。

心のなかで「なぜ?」を5回くり返し、問いを立てながらインタビューしてみましょう。

2回目のインタビュー1-3

3分

タイムキープ

3分×2人

タイムキープ

Page 30: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

29

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

●2 問題定義ユーザーの要求事項の明確化

UXデザインでは、調査データを分析してユーザー自身ですら気づいていない本質的

な要求を発見することで、世の中にない新しい価値の提供を目指します。

ワークショップでは、インタビューで得られた「発言」から態度(考え・気持ち)、さら

に価値観を推測・解釈し、ユーザーの心理状態を分析します。

スライド:P13~20

実践

次ページにつづく

一番左の欄に、気になった発言をピックアップして記入します。

真ん中の欄には、2回目のインタビューをヒントに、態度(気持ち・考え)を推測・解釈して記入しま

す。さらに一番右の欄には態度とインタビューで得られた相手の人柄や行動をヒントに、相手の価値

観を推測・解釈して記入します。

インタビューからの深掘り2-1 8分

タイムキープ

Page 31: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

30

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

分析結果が2つ以上あった場合は、その中からユーザーが一番大事にしていると思える(または分析

者が面白いと直感する)態度や価値観と、それに基づく要求を文書にまとめます。

態度・価値観の欄に機能的な要求が入らないように注意してください。※

※「なぜなら」の欄のチェックポイント

情緒的・感情的な言葉(嬉しい・ホッとした気持ちになれる、など)が含まれている

「~がほしい」といった機能的な要求が含まれている

満たしたいユーザーの要求を定義する2-2

ここからグループワークとなります。

これまでペアとなっていたインタビューの相手と分かれて、4~6名のグループとなります。(1グルー

プしかできない場合は、ペアと同じグループでも構いません)

その際、なるべく年齢や性別、職業、職種が偏らないように、ファシリテーターが誘導してください。

グループができたら、文書化した問題定義を一人ひとり共有します。(1人1分程度)

共有し終えたら、全員が(なるべく)共感できるユーザーの要求を1枚選びます。

問題をひとつに絞る2-3

1分

タイムキープ

8分

タイムキープ

Page 32: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

31

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

●3 作成ユーザーの要求事項を満足させる設計による解決策の作成

選んだ問題の解決法を作成します。

創造的思考には発散思考と収束思考があります。これらを同時に行うと、発想が膨

らまず凡庸なアイデアに留まってしまいます。

発散と収束は必ず分けて行いましょう。

また、アイデアは「それぞれ違ったものの組み合わせ」です。一発で新しいアイデアが

生まれることはありません。

突拍子のないアイデアも凡庸なアイデアも歓迎することで、出たアイデアを組み合

わせたり、アイデアを基にしてに別のアイデアを思いつくことができます。

まずは、質より量。たくさんアイデアを出しましょう。

ただ、この段階で出たアイデアはそのまま実現できないことがほとんどですので、実

現可能なアイデアへと軌道修正します。

スライド:P21~39

Page 33: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

実践

32

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

ここからは、ワークシートはグループで1セット利用します。

まず、アイデア出しの準備として、ブレーンストーミングするテーマをグループ内で明確にするために質

問文を作ります。

質問文がないままブレーンストーミングを始めてしまうと、人によってテーマがブレるだけでなく、機能

的な要求の解決に思考が偏ってしまうことで、抽出した態度や価値観が活かせない機能的なアイデア

に陥りがちです。

UXデザインでは「ユーザーの要求の定義で挙げられた態度や価値観を満たす体験をするにはどうす

ればよいか?」という思考が重要です。

質問文を設定する(ブレーンストーミングの下準備)

3-1 3分

タイムキープ

次ページにつづく

Page 34: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

ニーズを満たすアイデア:発散

次ページにつづく

まずは、アイデアの発散の時間になります。アイデアの発散は2回に分けて行います。

各自黙々と態度・価値観を含むニーズを満たすアイデアをふせんに書き出します。アイデアの発散は

質より量が大事です。

「1人最低3枚以上」など目標を与えて参加者のポジティブな意欲を引き出してください。(3分)

3分後、グループ内でアイデアを共有します。

ファシリテーターはテーブルの真ん中にアイデアを書いたふせんを出すように誘導します。

共有のスペースにアイデアを置くことで、「○○さんのアイデア」から「みんなのアイデア」となります。

アイデアを聞く側の態度は、「他人のアイデアを批判しない」こと。

むしろアイデアのよいところを見つけて率先してほめるような態度が望ましいです。

また、新しいアイデアを思いついたら随時ふせんに書いてもらいます。

全員のアイデア共有が終わったら、残りの時間を使ってさらにアイデアを出します。

この時の注意としては、おしゃべりに夢中にならないようにすること。

ファシリテーターは、手を動かしてアイデアをふせんに書くように参加者を誘導してください。

アイデアが枯渇してきたら、2つのアイデアを組み合わせてみたり、アイデアの面白いと思うポイント

から新しいアイデアを発展させます。(10分)

3-2 13分

タイムキープ

33

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

Page 35: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

次ページにつづく

34

ニーズを満たすアイデア:収束3-3 8分

タイムキープ

アイデアから提供する商品・サービスの内容と魅力を、企画の骨子として文書化します。

コンセプトの整理3-4 3分

タイムキープ

次にアイデアの収束の時間です。

今回は赤と青のシールを使ってアイデアを評価します。

ユーザーの(態度・価値観を含む)ニーズに効果がありそうだと思うアイデア(有用性)は青色、世の中

にまだない面白いアイデア(新規性)には赤色のシールを貼って投票します。

一つのふせんに青・赤それぞれ一人ひとつだけ投票できます。

投票するふせんの数に制限はありません。

赤・青両方の投票が集まったアイデアをひとつ選びます。ひとつだけを選べなかった場合は、数枚に

絞った上で未投票者がいれば投票してもらいます。(3分)

Page 36: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

次ページにつづく

35

文書化すると実現性が低すぎたり、倫理的に難しいといった課題が浮き彫りになります。そこで、実

現可能性のあるアイデアに軌道修正します。しかし、このまま軌道修正すると、結局凡庸なアイデア

にまとまってしまうことが少なくありません。

そこで、アイデアのキラリと光る核(クリエイティブ・コア)を見つけ、それを温存したまま軌道修正

を行います。

CPS(創造問題解決)におけるCreativeの定義である「新しい有用性」から核を発見します。

文書化された企画の骨子を見ながら、アイデアの「新しさ(他にない)」「有用性(ユーザーの役に立

つ)」それぞれピックアップします。(3分×2)

そして、もっとも新しく、もっとも有用なキーワードを組み合わせて1つの文章にします。

この時、具象(カタチや色、モチーフ、商材など)が入らないように注意してください。

クリエイティブ・コアの抽出3-5 7分

タイムキープ

Page 37: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

36

次ページにつづく

次に実現しにくい部分をピックアップします。

実現しにくい部分をピックアップ3-6 3分

タイムキープ

● 使い方に無理はないか?

● 美観的な問題はないか?

● やりたくない部分はないか?(感情や心情、倫理)

● 会社の戦略や保有資源に合っているか?

実現しにくい部分の見つけ方

Page 38: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

37

クリエイティブ・コア以外はすべて変更しても構いません。

実現しにくい部分を削ぎ落とし、実現しやすいアイデアを再度ブレーンストーミングします。

実現しやすいアイデアにブラッシュアップ3-7 5分

タイムキープ

コンセプトをまとめる3-8 5分

タイムキープ

新しいアイデアを再び商品・サービスの企画の骨子にまとめます。同時にアイデアスケッチもシート

に描きます。

アイデアスケッチは、商品・サービスの単体だけでなく、利用状況がわかるユーザーや環境も描くこ

とが重要です。そしてキャッチコピーや特徴は文字で書き込みます。

UXD

Page 39: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

●4 評価要求事項に対する設計の評価

実際にユーザーに使ってもらうことで、新しい商品・サービスのアイデアがユーザー

の問題を解決しているかを確認します。

評価のタイミングはリリース前とリリース後がありますが、UXデザインではリリース

前に素早く作って素早く失敗することを推奨しています。

特にコンセプトは早いタイミングで評価することで後戻りのコストを軽減すること

ができます。

素早く作る「プロトタイプ(試作品)」は、プロダクトであれば紙や粘土、Webであれ

ば手書きのワイヤーフレームがよく用いられます。

当ワークショップでは、アイデアスケッチを用いてユーザー評価を実施します。

スライド:P40~45

38

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

UXD

Page 40: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

39

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

実践「3-8.コンセプトをまとめる」で作成したスケッチを用いて、ユーザーにプレゼンし、フィードバックをもら

います。

別のグループから「ユーザーに近い人」をテーブルに招待します。

グループの中から1名説明員を決めて、招待した人(以下、ユーザー)にアイデアスケッチを見せて商

品・サービスを説明します。ユーザーはそれに対して自由に質問することができます。説明員以外の

人はユーザーの様子を観察します。

ユーザーの発言や行動はフィードバック用のメモ用紙に記入します。ユーザーが商品・サービスを理

解できたら、アイデアの面白いところや使いにくい点、その他気になる発言や行動について、全員で

質問します。

UXデザイン体験ワークショップはここで終了ですが、ユーザーのフィードバックを分析してアイデア

が悪ければ作成フェーズへ、ユーザーの要求とのズレが発見されたら問題定義フェーズへ、そもそも調

査データが不十分であれば調査フェーズへ戻るというのがUXデザインの基本プロセスとなります。

ユーザー評価4-1 5分

タイムキープ

Page 41: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

40

第2部:UXデザイン体験ワークショップガイド

振り返り1人1分程度でワークショップでの気づきを共有します。

残り時間があれば、異なるグループ間でアイデアと気づきを共有します。

体験の内省や他人との意見交換は学びにおいて重要な時間ですので、ぜひ時間

に余裕をみての実施をおすすめします。

Page 42: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXD当ワークショップを大阪府の中小企業とUX KANSAIメンバーで実施した事例をご紹介します。

第3部:

事例

Page 43: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXD 42

第3部:事例

事例:1

タオルそのものの価値を新たな視点でとらえ、タオルの可能性を探るべく、タオルメー

カー数社が集まりワークショップを実施しました。

タオル商材そのものを超え、サービスのアイデアの種が生まれました。

■ 実施日:2017年10月31日

■ 参加者:10名タオル製造会社3社:5名

組合:1名

関連クリエティブ会社:2名

UX KANSAIメンバー:3名

■ ワークショップの様子

■ テーマ:タオルの新しい商品・サービスのアイデア発想

Page 44: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

新しいビジネスモデルになりそうなアイデアが出たので、今後ためしてみたい。

UXデザインの考え方を自社でも取り入れたいと思う。

一人暮らしの方向けの、格安でタオルの洗

濯・宅配を行う商品・サービスです。

この商品・サービスの魅力は、自分の好み

(サイズ・手触り)に合わせたタオルを選ん

で使えることです。また、使い終わったタオ

ルは業者が洗濯してくれるので、ユーザー

の負担がとても少ないことです。

タオルを捨てるタイミングがわからず捨て

られない人向けの、タオルの色が変わるこ

とで捨てる時期をお知らせしてくれる商

品・サービスです。

この商品・サービスの魅力は、タオルをゴミ

として捨てずに腐葉土のように再利用でき

ることです。

モノの「タオル」とサービス(コト)を考えることで、新しいものが必要になる(生まれる)と感じました。

普段考えないようなことや、働かせていない部分の頭を動かせてよかった。まずは否定無しでのアイデア出しというのを

社内で実践してみたい。

今までにない頭の使い方、考え方を試すいい機会になりました。

ニーズ(使用方法など)を収集するためなどにインタビューやそれらの深掘りをやってみたい。

新たな価値観を得られた。ユーザー目線の「ものづくり」への決意を新たにできた。

タオルという完成された商品に対する、(ユーザーへの)新たなサービスを実現していきたい。

ターゲットのはじめの不満からUXデザインをすることで、新たなアイデアやサービスが出てきました。

とても勉強になりました。アイデアを実現できるよう、さらにUXデザインを学んでみたいと思いました。

43

第3部:事例

事例:1

■ アイデアの種:1 ■ アイデアの種:2

■ 参加者の感想(アンケートより)

Page 45: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

44

事例:2

国産にこだわるファクトリーブランドを展開する企業にて、新たに開発したTシャツブラ

ンドの可能性を広げるべく、Tシャツをテーマにワークショップを実施しました。

Tシャツを着る体験を掘り下げ、ストーリー性のある商品アイデアの種が生まれました。

■ 実施日:2017年11月1日

■ 参加者:8名繊維メーカー:3名

関連クリエイティブ会社:2名

UX KANSAIメンバー:3名

■ ワークショップの様子

■ テーマ:Tシャツの新しい商品・サービスのアイデア発想

第3部:事例

Page 46: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXD

45

事例:2

体験からアイデアを考え出すという新しい方法を学べて非常に良かったです。

ユーザーの満足度だけでなく、自分のアイデアの幅も広がるような気がしました。

UXのことを学び、「体験」を含めてすべて整える必要を感じた。

お客様のUXをすべて見直したい。

UXデザインの概念を初めて聞いたので、日常の中でおきかえてみようと思った。

通常の業務ではデザインを考えることはないので、この機会に消費者の方が本当に求めているものを

考えることができてよかったです。また、他の人のいろんな発想を伺うことができ、

勉強になりました。

言語化の手法としてデザインが形になる気持ちよさ。アイデアを出すことと収束することについて、会社でも伝えていきたいと思います。短い時間の中でとても充実した内容で

とても勉強になりました。

■ 参加者の感想(アンケートより)

やり方のフローがわかった。参加者の体験が新しいアイデアになる。

第3部:事例

普段Tシャツを着ないバンド好きの◯◯

さん向けの、思い入れのあるものをTシャ

ツに織り込むことができる商品・サービス

です。

この商品・サービスの魅力は、よい思い出

をいつでもTシャツを通じて楽しめること

です。

洋服に着心地の良さを求める人向けの、

予算と自分好みの着心地に出会えるT

シャツの商品・サービスです。

この商品・サービスの魅力は、日本酒のよ

うに産地による違いや、綿の加工の仕方

による肌触りを味わうように体験できる

ことです。

■ アイデアの種:1 ■ アイデアの種:2

Page 47: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXD参考文献

資料

46

V. Roto, E. Law, et al.(2011), hcdvalue 訳,

『ユーザエクスペリエンス白書』.

http://site.hcdvalue.org/docs

B. J. パイン II, J. H. ギルモア(2005), 岡本慶一, 小高尚子 訳,

『[新訳]経験経済』, ダイヤモンド社.

山崎和彦, 松原幸行, 竹内公啓(2016), 黒須正明, 山崎和彦, 松原幸行, 八木大彦, 竹内公啓 編,

『人間中心設計 入門』, 近代科学社.

特定非営利活動法人 人間中心設計推進機構,

『人間中心設計入門 教材β版』

スタンフォード・ハッソ・プラットナー・デザイン研究所,

『デザイン思考家になるための90分集中講座』

https://www.youtube.com/watch?time_continue=15&v=AWxOAPNhTUQ

ジェームス・W・ヤング(1988), 竹内 均 監修, 今井 茂雄 訳,

『アイデアのつくり方』, CCCメディアハウス.

Brair Miller, Roger Firestien, Jonathan Vehar(2006), 弓野憲一ほか訳,

『創造的問題解決―なぜ問題が解決できないのか?』, 北大路書房.

石井力重(2017)

『アイデアワークショップ・デザイン講座』

ワークショップに必要な資料は「一般社団法人DCC」のWebサイトよりダウンロードください。

http://dcc-net.biz/

● UXデザイン体験ワークショップ(PDF)

● ワークシート(PDF)

Page 48: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

47

作成者

DIMO 大阪デザインイノベーション創出コンペティション について

問い合わせ先

「DIMO 大阪デザインイノベーション創出コンペティション」は、自社製品や技術等を活用して、新たな高付

加価値製品やサービスを開発したい大阪府内の中小企業とそれらを活用した新製品・新サービス開発アイ

デアのある、ソリューションを提供できるデザイナー・クリエイターとをマッチングさせることで、中小企業

の「デザインイノベーション」を推進する事業。

[平成26年度~平成29年度、おおさか地域創造ファンドの助成事業として実施しました。]

一般社団法人DCC [DIMO事務局]

TEL:06-4792-8205

FAX:06-6944-3748

E-mail:[email protected]

住所:〒540-0029 大阪市中央区本町橋2-5 マイドームおおさか6F

徳見 理絵 (トクミ リエ)シナジーマーケティング株式会社/UX KANSAI 運営

1979年生まれ。HCD-Net認定人間中心設計専門家として自社プロダクトのUI開発に従事。

2016年 UX KANSAI を立ち上げ。現在は、瀬戸内海の島にてリモートワークをしながら製品開発を

行っている。

藁 毅 (ワラ ツヨシ)株式会社ペンク 代表取締役/大阪成蹊大学 講師/UX KANSAI 運営

1978年生まれ。Web制作会社を経て2012年 株式会社ぺンクを設立。Webサイト、スマホアプリ、映像な

どデジタル領域を中心にコミュニケーションデザインを含めたコンテンツの企画、設計、開発を行っている。

UXデザイン体験ワークショップガイドブック DIMO 担当コーディネーター

重盛 忠司 (シゲモリ タダシ)株式会社モリモリ 代表取締役

Page 49: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

DIMO 大阪デザインイノベーション創出コンペティション

(おおさか地域創造ファンド クリエイティブ連携・高付加価値ビジネス創出プロジェクト)

UXデザイン体験ワークショップガイドブック

平成30年2月16日発行

※本冊子は、おおさか地域創造ファンドの助成事業により作成しています。

発行:DIMO(大阪デザインイノベーション創出コンペティション)事務局/一般社団法人DCC

編集:UX KANSAI

この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 3.0 非移植 ライセンスの下に提供されています。

Page 50: UXデザインUXデザイン体験ワークショップガイドブック 4 U X D 中小企業の商品開発担当者、インハウスデザイナー、UXデザイン導入検討者

UXD※本冊子は、おおさか地域創造ファンドの助成事業により作成しています。

発行:DIMO(大阪デザインイノベーション創出コンペティション)事務局/一般社団法人DCC

編集:UX KANSAI

平成30年2月16日発行