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1 合同研究班参加学会 日本循環器学会 日本心臓病学会 日本心電学会 日本不整脈学会 班長 青沼 和隆 筑波大学医学医療系 循環器内科 班員 新 博次 日本医科大学 多摩永山病院内科 奥村 謙 弘前大学 循環器呼吸器・腎臓内科 鎌倉 史郎 国立循環器病研究センター 心臓血管内科 櫻田 春水 東京都立広尾病院 循環器科 杉 薫 東邦大学医療センター 大橋病院循環器内科 萩原 誠久 東京女子医科大学 循環器内科 堀江 稔 滋賀医科大学 呼吸循環器内科 吉永 正夫 鹿児島医療センター小児科 協力員 池田 隆徳 東邦大学医療センター 大森病院循環器内科 草野 研吾 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科循環器内科 志賀 剛 東京女子医科大学 循環器内科 清水 渉 国立循環器病研究センター 心臓血管内科 住友 直方 日本大学医学部 小児科学系小児科学分野 髙木 雅彦 大阪市立大学大学院医学研究科 循環器病態内科学 夛田 浩 筑波大学医学医療系 循環器内科 池主 雅臣 新潟大学医学部 保健医学科 永瀬 聡 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 循環器内科 西崎 光弘 横浜南共済病院 循環器内科 野上 昭彦 横浜労災病院不整脈科 藤木 明 静岡赤十字病院 循環器内科 堀米 仁志 筑波大学医学医療系 小児内科 蒔田 直昌 長崎大学大学院 医歯学総合研究科 分子生理学 外部評価委員 相澤 義房 新潟大学大学院 医歯学総合研究科器官制御医学 大江 透 心臓病センター榊原病院 小川 聡 国際医療福祉大学 三田病院 児玉 逸雄 名古屋大学 平岡 昌和 労働保険審査会 山科 章 東京医科大学病院 第二内科 (五十音順,構成員の所属は 2012 3 月現在) 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告) QT 延長症候群(先天性・二次性)とBrugada 症候群の診療に 関するガイドライン(2012 年改訂版) Guidelines for Diagnosis and Management of Patients with Long QT Syndrome and Brugada Syndrome JCS 2012

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Page 1: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

1

合同研究班参加学会

日本循環器学会 日本心臓病学会 日本心電学会 日本不整脈学会

班長

青沼 和隆筑波大学医学医療系

循環器内科

班員

新 博次日本医科大学多摩永山病院内科

奥村 謙弘前大学

循環器呼吸器・腎臓内科

鎌倉 史郎国立循環器病研究センター

心臓血管内科

櫻田 春水東京都立広尾病院

循環器科

杉 薫東邦大学医療センター大橋病院循環器内科

萩原 誠久東京女子医科大学循環器内科

堀江 稔滋賀医科大学呼吸循環器内科

吉永 正夫鹿児島医療センター小児科

協力員

池田 隆徳東邦大学医療センター大森病院循環器内科

草野 研吾岡山大学大学院

医歯薬学総合研究科循環器内科

志賀 剛東京女子医科大学循環器内科

清水 渉国立循環器病研究センター

心臓血管内科

住友 直方日本大学医学部

小児科学系小児科学分野

髙木 雅彦大阪市立大学大学院医学研究科

循環器病態内科学

夛田 浩筑波大学医学医療系循環器内科

池主 雅臣新潟大学医学部保健医学科

永瀬 聡岡山大学大学院医歯薬学総合研究科

循環器内科

西崎 光弘横浜南共済病院循環器内科

野上 昭彦横浜労災病院不整脈科

藤木 明静岡赤十字病院循環器内科

堀米 仁志筑波大学医学医療系

小児内科

蒔田 直昌長崎大学大学院医歯学総合研究科分子生理学

外部評価委員

相澤 義房新潟大学大学院

医歯学総合研究科器官制御医学

大江 透心臓病センター榊原病院

小川 聡国際医療福祉大学

三田病院

児玉 逸雄名古屋大学

平岡 昌和労働保険審査会

山科 章東京医科大学病院第二内科

(五十音順,構成員の所属は 2012年 3月現在)

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関するガイドライン(2012年改訂版)Guidelines for Diagnosis and Management of Patients with Long QT Syndrome and Brugada Syndrome (JCS 2012)

Page 2: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

2

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

目次

I. 序文(改訂にあたって) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2II. 総論 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥31. QT延長症候群の概論 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥32. QT延長症候群の発生機序 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥63. Brugada症候群の概論 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥94. Brugada症候群の発生機序 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 11

III. 先天性 QT延長症候群の診断 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 141. 概論 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 142. 心電図診断 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 163. 負荷試験 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 194. Holter心電図,T wave alternans, ループレコーダ ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 205. 臨床心臓電気生理学的検査 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 216. 遺伝子診断 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 22

IV. 先天性 QT延長症候群の治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 241. 概論 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 242. 薬物治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 263. 非薬物治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 274. 小児における薬物・非薬物治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 27

V. 二次性 QT延長症候群の診断と治療 ‥‥‥‥‥‥‥ 281. 概論 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 282. 薬剤性 QT延長症候群 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 293. 徐脈依存性 QT延長症候群 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 304. 薬剤性,徐脈性以外の二次性 QT延長症候群 ‥‥ 30

VI. Brugada症候群の診断 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 311. 概論 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 312. 心電図診断 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 323. 負荷試験 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 334. 加算平均心電図,特殊解析心電図指標 ‥‥‥‥‥ 335. 臨床心臓電気生理学的検査 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 346. 遺伝子診断 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 35

VII. Brugada症候群の治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 371. 概論 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 372. 薬物治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 393. 非薬物治療 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 40

文献‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 41(無断転載を禁ずる)

I. 序(改訂にあたって)

本ガイドラインは,近年とくに注目されるBrugada症候群ならびに先天性QT延長症候群に対して,疫学,診断,治療に至るまでのガイドラインとして誕生(2005~2006年に策定され,2007年に公表) した.とくにBrugada症候群は,アジア人種のなかでもわが国で報告が多く,以前“ぽっくり病”と呼ばれていた夜間突然死症候群の多くが含まれている可能性もあるが,Brugada症候群患者の 20 %と先天性QT延長症候群の 70 %にイオンチャネル蛋白の責任遺伝子異常を認め,イオンチャネル病に分類されている 1,2).しかし,徐々にではあるが,遺伝子異常が予後と直接には結びつかないことや,遺伝子異常を認めない孤立性の症例も多いことが判明してきた.

2007年当時は,わが国でもエビデンスが不十分であったが,とくに Brugada症候群ではこの数年で多くのエビデンスが報告され,ある程度のデータ蓄積がなされるに至った.このように,初版ではエビデンスが十分ではなく,欧米のガイドラインを参考にせざるをえず,その治療法については日本のエビデンスを背景にした十分な検討がなされなかった感がある.突然死の二次予防として確実な治療は,現在でも最終的には植込み型除細動器(ICD) であるが,一次予防としての治療に関しては各国で異なっており,今回の改訂版では,初版を踏まえて,この 5年間にわが国で明らかになったエビデンスをもとに変更の必要がある部分に限って改

I. 序(改訂にあたって)

Page 3: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

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QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

変した.本ガイドライン作成にあたっては,合同研究班として多くの専門家に参加を求めた.とくに小児循環器病医学の専門家にも多くの参加を得て,合同研究班の総意として改訂にあたった.総論では,診断と治療に必要な基本的な知識としての臨床的特徴,予後,および発生機序を解説し,各論では従来どおり,①先天性QT 延長症候群の診断,② 先天性QT延長症候群の治療,③二次性QT延長症候群の診断と治療,④Brugada症候群の診断,⑤Brugada症候群の治療,の 5項目に分けて検討し,最新知見を盛り込むことを心がけた.診断に関しては,とくに心電図などの非観血的検査,臨床心臓電気生理学的検査などの観血的検査,および遺伝子診断の臨床的意義について新たな知見を検討した.治療に関しては従来と同様に薬物治療と非薬物治療に分けて,おのおのの有用性を検討した.とくに無症候性の場合は,診断と治療が有症候性の場合と異なるため,両者を分けて検討した.本ガイドラインの勧告策定の手順としては,AHA/ACCおよび ESCのガイドライン,わが国での報告(疫学調査,研究報告など), 海外での報告(疫学調査,研究報告など), 班員の臨床経験,をもとにして作成し,具体的には最新データを加えたうえで,各診断法と治療法の適応に関する勧告の程度をクラス I,クラス II,クラス IIIに分類し,そのエビデンスのレベルとして,レベルA,レベルB,レベルCをできる限り付記した.なお,クラス分類,エビデンス

分類は以下に示すとおりである.クラス分類クラス I : 検査,治療が有効,有用であるというエビデンス

があるか,あるいは見解が広く一致している.クラス II: 検査,治療の有効性,有用性に関するエビデンス

あるいは見解が一致していない.クラスIIa: エビデンス,見解から有効,有用である可能性が

高い.クラスIIb: エビデンス,見解から有効性,有用性がそれほど

確立されていない.クラスIII: 検査,治療が有効,有用でなく,ときに有害であ

るとのエビデンスがあるか,あるいは見解が広く一致している.

エビデンスレベルレベルA:複数の無作為介入臨床試験またはメタ解析で実証     されたもの.レベル B:単一の無作為介入臨床試験または大規模な無作為     介入でない臨床試験で実証されたもの.レベル C:専門家,または小規模臨床試験(後向き試験およ     び登録を含む)で意見が一致したもの.

また,本ガイドライン変更にあたり,現在までに報告された日本循環器学会合同研究班のガイドラインと整合性があるように考慮したが,一致しない場合はその違いを記述した.

II. 総論

1.

QT延長症候群の概論

QT 延長症候群(long QT syndrome:LQTS) は,心電図に T波の形態異常を伴う QT延長を認め, torsade de pointes(TdP) と呼ばれる特殊な心室頻拍(ventricular tachycardia:VT),あるいは心室細動(ventricular

fibrillation:VF) などの重症心室性不整脈を生じて,めまい,失神などの脳虚血症状や突然死をきたしうる症候群である.QT延長症候群は大きく先天性と二次性に分けられる.これらのうち,先天性では明らかな遺伝性を認める例(Romano-Ward症候群と Jervell and Lange-Nielsen 症候群)

3-5) のほかに,遺伝関係が明瞭でないかあるいは遺伝関係の調査が困難な例(特発性QT延長症候群) も含まれる(表1).

Jervell and Lange-Nielsen症候群 3,6) は,先天性聾を伴い,

II. 総論

1.

QT延長症候群の概論

Page 4: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

常染色体劣性遺伝を示す.常染色体優性遺伝のRomano-Ward症候群に比べて,一般に臨床症状は重篤である.また,発症していない家族,すなわち遺伝的にはヘテロ接合で,いずれかの変異のキャリアであるが,その臨床像は軽微であることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因などで生じたものが二次性QT延長症候群である(表1).最近の研究で,一見,二次性と思われる症例のなかに先天性QT延長症候群の原因遺伝子の変異が発見されることがあることがわかってきた 7).心電図所見の特徴として,QT延長だけでなく,T波の形態異常や著明なU 波を伴う.とくに後者はAndersen-Tawil 症候群 8-10) に特徴的であり,周期性四肢麻痺と種々の骨格異常を合併する.QT時間は脈拍数の影響を大きく受けるので,一般にBazett式を用いた補正QT 間隔(QTc) を診断に用いる 11) .また,性差があり,男性ではQTc で450 msec以上,女性では 460 msec以上であれば SchwartzらのQT延長症候群の診断基準(表2) を用いて評価する.この基準 11) は点数加算制になっており,3.5点以上であればQT延長症候群が確定となる.TdPに伴う症状の発現様式には,先天性の場合,遺伝子型に大きく影響される.また,治療の選択も遺伝子型によって異なる(たとえばβ遮断薬の有効性など) ため,現在,広く遺伝子診断が推奨され保険償還も始まっている.遺伝子診断が普及するに伴い,

表 1 QT延長症候群の分類

先天性 QT延長症候群

遺伝性 QT延長症候群 Romano-Ward 症候群(常染色体優性遺伝)Jervell and Lange-Nielsen 症候群(常染色体劣性遺伝):先天性聾を伴う

特発性 QT延長症候群

二次性 QT延長症候群

薬物誘発性 抗不整脈薬:I群薬(キニジン,プロカインアミド,ジソピラミドなど)      III群薬(アミオダロン,ソタロール,ニフェカラントなど)向精神薬:フェノチアジン系(クロルプロマジンなど),三環系抗うつ薬など抗生物質,抗ウイルス薬:エリスロマイシン,アマンタジンなど抗潰瘍薬:H2受容体拮抗薬(シメチジンなど)消化管運動促進薬:シサプリドなど抗アレルギー薬:テルフェナジンなど脂質異常症治療薬:プロブコールなど有機リン中毒

電解質異常 低 K血症,低 Mg血症,低 Ca血症

徐脈性不整脈 房室ブロック,洞不全症候群

各種心疾患 心筋梗塞,急性心筋炎,重症心不全,心筋症

中枢神経疾患 クモ膜下出血,頭部外傷,脳血栓症,脳外科手術

代謝異常 甲状腺機能低下症,糖尿病,神経性食欲不振症

表 2 QT延長症候群の診断

基準項目 点数

心電図所見

QT時間の延長*1

(QTc)≧ 480msec 3

460~ 479msec 2

450~459msec(男性)

1

運動負荷後 4分の QTc ≧ 480msec 1

torsade de pointes*2 2

T wave alternans 1

notched T波(3誘導以上) 1

徐脈 0.5

臨床症状失神*2

ストレスに伴う失神発作

2

ストレスに伴わない失神発作

1

先天性聾 0.5

家族歴確実な家族歴 1

30歳未満での突然死の家族歴 0.5

点数の合計が,≧ 3.5:診断確実,1.5~ 3点:疑診,≦ 1点:可能性が低い,となる. *1:治療前あるいは QT延長を起こす因子がない状態での記録.*2:両方ある場合は 2点.(Schwartz PJ, et al. 201211)より)

Page 5: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

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QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

無症候性家族キャリアや二次性の症例が増加し,遺伝子変異を有する 20~25 %でQTcが正常値を示すことも報告されている 12,13).

1.1

先天性 QT延長症候群

1.1.1

遺伝子型と分類QT延長症候群関連遺伝子は1996年に最初の報告があって以来,2012年の段階で 13個報告されているが,遺伝子検査で発見されるのは,LQT1~ 3が圧倒的に多い.その臨床像との関連については各論に譲る.1.1.2

頻度遺伝子異常の発見率からみた先天性QT延長症候群の頻度は,最近のイタリアでの研究では,約 2000の出生に 1人とされる 14) が,わが国での頻度は不明である.Jervell and Lange-Nielsen症候群 3,6) に似た病態は,2つ以上の遺伝子変異が重なる,いわゆる compound mutationsに起こりうる.後述の LQT1~3の関連遺伝子を 310人の発端者で調べたわが国での検索 15) では,実にその 8.4 %がcompound mutationsを有しており,その臨床像はほかの単一変異症例に比べて有意に重症で,発症も若年齢でQTc時間も有意に長かった.これは,前述した Jervell and Lange-Nielsen症候群家系の発端者とその家族で 1つの遺伝子異常を持つメンバーとの関係に類似していた.また,乳幼児突然死症候群の原因として,先天性QT延長症候群が注目されており,多くの報告がある 16-19).1.1.3

予後QT延長の程度が大きく不整脈の発症予後に影響し,男女に関係なく550 msec 以上であればTdPの危険が高まり,600 msec以上であれば,さらに高くなる.T波交互脈(T wave alternans)や,乳児期から発症する例やβ遮断薬などの治療下にも不整脈イベントを起こす症例の予後は悪い.初回の心事故が突然死になることもまれではなく,突然死をきたしたQT延長症候群症例の 3人に 2人は初回発作であった 20).遺伝子診断を踏まえたリスク層別化については,非常に多くの検討がなされているが,QTc 500 msec以上の LQT1,LQT2,男性の LQT3は危険度が高いとされる.次いで中等度の危険度のグループは,QTc 500 msec以上の女性の LQT3,QTc 500 msec以下でも女性のLQT1,LQT2と男性の LQT3であり,比較的危険度の低いのは,QTc 500 msec未満で男性の LQT1,LQT2であった 12).

1.2

二次性 QT延長症候群

1.2.1

二次性 QT延長症候群の誘因先天性QT 延長症候群以外に,薬剤や徐脈などが原因で二次的にQT 延長が起こり,TdPが発生することがある (表1).二次性あるいは後天性QT延長症候群と呼ばれるが,遺伝子検査が普及するにつれ,前述のようにこれらの症例のなかに遺伝子異常のキャリア(silent mutation carrier) が含まれており,表1に示すような二次的な誘因のために,著しいQT延長と TdPを起こすことがわかってきた.抗不整脈薬による TdPの頻度は,2.0~8.8 %とされるが21,22),抗不整脈薬以外の非循環器系薬剤である向精神薬,抗生物質,抗真菌薬,抗アレルギー薬,消化器疾患薬などもQT 延長をきたす.これらの抗不整脈薬以外の薬剤によるQT 延長の頻度は 1人 /1万~10万人と見積もられている 23).心不全,心筋症,冠動脈疾患,高血圧,左室肥大などの基礎心疾患の合併によりQT延長が助長される.房室ブロックなどの徐脈になると,著明なQT 延長をきたし TdPが発生する例がある 24,25).このような徐脈によって正常範囲を超えてQT が延長する例は徐脈依存性QT 延長症候群と呼ばれる.その他の誘因としては,高齢,女性,脱水,電解質異常(とくに低K血症,低Mg血症) による例がよく知られている.極度のダイエットや下痢による低K血症も要注意である.そのほか,糖尿病,アルコール中毒,神経性食欲不振症,下垂体・副腎不全,甲状腺機能低下症,低体温,低血糖などの代謝障害に伴うQT 延長がある 26).また,クモ膜下出血や頭蓋内出血の急性期にはQT またQTUの延長や,深い陰性 T波を示す例がある 26).クモ膜下出血 70例のうち,26 %に 500 msec以上のQT 延長を認め,そのうち 3例で 24時間以内に TdPを生じたと報告されている27).1.2.2

二次性 QT延長症候群の発症メカニズム二次性,とくに薬物性QT延長の機序は,心筋の再分極に関与する遅延整流K+電流(IK) が直接抑制されることから生じる 28,29).IK 抑制により活動電位の再分極が遅れQT 時間が延長し,この場合,早期後脱分極が発生してTdPが起こる.しかし同じ薬剤を内服しても,すべての症例がQT 延長を起こすわけではなく,ましてや TdPはむしろまれである.すなわち薬剤などの誘因に対する感受性には大きな個人差がある.逆にいうと,遺伝的背景を有する先天性QT延長症候群の心イベント誘因がすべて二次性

Page 6: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

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循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

の場合の誘因となる.したがって,現在,先天性と二次性のあいだの境界が明瞭でなく,二次性の症例にもQT延長症候群関連や薬物代謝に関わる遺伝子異常が次々と報告されている.また,併用薬物や食品が,薬の肝臓での代謝を阻害するため,結果的にQT延長作用を有する薬剤の蓄積や作用の増強を招き発症原因になりえる.遺伝的(体質として),K+電流による活動電位を短縮する力(再分極予備能) が低下している症例がハイリスクであり,さらなる予備力低下を起こす誘因にさらされることで二次性QT延長症候群が招来される 7,25,30-36).

2.

QT延長症候群の発生機序

QT延長症候群,とくに先天性QT延長症候群におけるQT延長の成因と TdPの発生機序を論ずるには,イオンチャネル機能に関係する遺伝子異常を切り離して考えることはできない.先天性QT延長症候群の遺伝子診断の詳細は,III. 6.「遺伝子診断」(22㌻) に譲るが,先天性QT延長症候群のRomano-Ward症候群では,現在までに8つの染色体上に 13個の遺伝子型が報告されている 37,38).いずれの遺伝子型でも,外向きK+電流が減少(LQT1,2,5,6,7,11,13),内向きNa+電流が増加(LQT3,9,10,12),または内向きCa2+電流が増加(LQT4,8) すること

2.

QT延長症候群の発生機序

図 1 先天性 QT延長症候群の単相性活動電位(MAP)記録 先天性 QT延長症候群(LQTS)患者と対照群患者におけるイソプロテレノール(1μg/min)持続点滴前後の単相性活動電位(MAP)記録. 各段とも上から V3誘導,右室前壁(RVant)または右室中隔(RVsep)の MAPを示す.心房ペーシングにより心拍数は 500msecに固定にしてある.先天性 QT延長症候群では,イソプロテレノール点滴後に補正 QT間隔(QTc)の延長(570→ 620msec1/2)に一致して,MAP上に早期後脱分極(EAD)が出現し(矢印),90%MAP持続時間(MAPD90)も延長(325→ 420msec)している.これに対して対照群では,イソプロテレノール点滴前後とも EADは記録されず,QTc,MAPD90とも変化は認めない.(Shimizu W, et al. 1991 40)より)

Page 7: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

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QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

により,活動電位持続時間(action potential duration:APD) が延長し,共通の表現型である心電図上のQT延長を呈する.

2.1

QT延長症候群の発生機序解明のためのアプローチ

QT延長症候群患者のQT延長や,TdPの発生機序解明の臨床的アプローチとして,心臓電気生理学的検査時にカテーテル電極を心内膜に押し付けることにより,心筋局所の活動電位波形を記録する単相性活動電位(monophasic action potential:MAP) 記録が用いられてきた 39-43).MAPは,拍動心において心筋細胞外から心筋細胞内の活動電位波形を記録する方法である 44).MAPの振幅や第 0相立ち上がり速度(Vmax) は細胞内電位の実測値を反映しないが,第 2相から第 3相にかけての再分極過程は比較的忠実に反映され,MAP持続時間とAPDや有効不応期はよく相関する.一方,実験的アプローチとしては,動脈灌流心室筋切片標本を用いた実験的QT延長症候群モデルによる検討から,QT延長,各遺伝子型の異常 T波の細胞学的成因や,TdPの発生機序がさらに詳細に解明された 45-47).動脈灌流心室筋切片は心室筋各層,すなわち心外膜側(Epi)細胞から心筋中層に存在し,APDの長いmid-myocardial(M)細胞,心内膜側(Endo) 細胞,Purkinje細胞の活動電位と貫壁性双極心電図の同時記録を可能とした実験標本である.

2.2

先天性 QT延長症候群の異常 T波と細胞学的成因

先天性QT延長症候群で頻度の高い LQT1,LQT2,LQT3患者では,それぞれ幅広い(broad-based) T波,ノッチを伴う平低(low-amplitude,notched) T波,ST部分の長い(late-appearing) T波が特徴的とされている 48).動脈灌流左室心筋切片を用いた薬理学的QT延長症候群モデルにより,いずれの遺伝子型でも,心外膜側細胞から心内膜側細胞にかけての貫壁性の活動電位プラトー相の電位勾配が異常 T波の成因に関与することが明らかとなっている 45-47).

2.3

先天性 QT延長症候群の著明な QT延長とTdPの発生機序

MAP記録を用いた臨床研究により,QT時間の延長は

MAP持続時間(MAPD) の延長によることが証明され(図1) 39,40),また,イソプロテレノールやエピネフリンなどのカテコラミン点滴静注により,早期後脱分極(early after depolarization:EAD) 様の humpが記録され(図 1)40,41),TdP第 1拍目の心室期外収縮の機序として,EADからの撃発活動が関与することが直接的に証明されている

図 2  動脈灌流左室心筋切片標本の先天性 QT延長モデルにおいて誘発された torsade de pointes

 いずれも,M,心外膜側(Epi)細胞の活動電位と心電図(ECG)の同時記録で, A,Bは,LQT1,LQT2モデルで誘発された自然発生 torsade de pointes(TdP), Cは,LQT3モデルで心外膜側細胞からの単発期外刺激により誘発された TdPを示す. 自然発生 TdPの第 1拍目の心室期外収縮は比較的 QRS幅が狭く,心内膜側からのペーシング波形(S1)と同じ極性を示すことから,M細胞または心内膜側 Purkinje細胞を起源とすると考えられる(A,B). 一方,M細胞の活動電位持続時間(APD)が著明に延長し,貫壁性再分極時間の不均一性が増大した状態で,APDが最短の心外膜側細胞からの期外刺激により容易に TdPが誘発されることから,TdPの 2発目以降の機序は,リエントリーの可能性が示唆される(C).(Shimizu W, et al. 199745), Shimizu W, et al. 199846)より改変)

Page 8: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

8

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

41).一方,カテコラミン投与により心室筋各部位のMAPDの不均一性(spatial dispersion of repolarization:SDR) も増大し,TdPの維持には SDRの増大によるリエントリーも重要と考えられる 40).その後,動脈灌流左室心筋切片を用いた薬理学的QT延長症候群モデルにより,先天性QT延長症候群患者における TdPの細胞学的成因がさらに明らかとなった 45-47).LQT1,LQT2,LQT3の各モデルでは,しばしば心室期外収縮(単発または連発) の 2段脈に引き続いて自然発生TdPが誘発される(図2A,B).自然発生 TdPを認めない場合でも,APDが最短の心外膜側細胞からの単発期外刺激により容易に TdPが誘発される 45,46)(図 2C).TdPの引き金となる心室期外収縮は,比較的QRS幅が狭く,心内膜細胞側からのペーシング波形と同じ極性を示すことから,M細胞または心内膜側の Purkinje細胞を起源とする EADからの撃発活動が機序と考えられる.一方,いずれのQT延長症候群モデルでも,M細胞の

APDの相対的な延長により transmural dispersion of repolarization(TDR)が増大しており,TdPの 2発目以降の機序には,心室筋各部位の SDRの増大に加えて,貫壁性の TDRの増大を基質とするリエントリーも重要であると考えられる.図3に臨床的および実験的検討から考えられる先天性QT延長症候群のQT延長および TdPの発生機序を示す.

2.4

二次性 QT延長症候群の QT延長とTdPの発生機序

後天性QT延長症候群では,Vaughan Williams 分類 Ia群や III群抗不整脈薬などの遅延整流K+電流(IK) の速い

活性化成分(IKr) の遮断作用を有する薬剤,低K血症などの電解質異常,および徐脈などを原因として発症する場合が多い.一部の後天性QT延長症候群患者では,LQT1,LQT2,LQT3の原因遺伝子上の変異が報告されており 31-

33),イオンチャネル機能異常が軽度の遺伝子変異のため,IKr遮断作用のある薬剤などの増悪因子が加わった場合に,後天性QT延長症候群に特徴的な巨大陰性 T波や著明なQT延長を認め,TdPを発症するものと考えられている.動脈灌流心室筋切片標本で,IKの遅い活性化成分(IKs) の遮断により潜在的なK+チャネル異常を模擬し,これにIKr遮断薬を追加することにより作製した後天性(薬剤誘発性) QT延長症候群モデルでは 49),IKs遮断薬(Chromanol 293B) の少量投与で,QT時間は軽度延長するが TDRは変化しない.しかし,IKr遮断薬の E-4031を追加投与すると,心外膜側細胞のAPDがM細胞や心内膜側細胞のAPDに比べて著しく延長し,これに伴いQT時間と TDRは著明に増大し,薬剤誘発性QT延長症候群の TdP発症直前にしばしば認める巨大陰性 T波が再現される.また,おもに心外膜側細胞から EADが出現し,TdPが発生することも報告されている 49).

2.5

まとめ

先天性および後天性QT延長症候群のいずれでも,著明なQT延長や異常 T波の成因には,心室筋APDの著明な延長と,貫壁性の活動電位プラトー相の電位勾配や,その不均一性の増大が関与する.TdPの機序について,TdP第1拍目の心室期外収縮は EADからの撃発活動を機序とするが,TdPの 2発目以降の機序は,貫壁性および心室筋各部位の再分極時間の不均一性の増大を基質とするリエン

貫壁性(Epi-M-Endo細胞)再分極時間の不均一性(内因性)遺伝子異常(

QT延長貫壁性再分極時間(不応期)の不均一性↑

QT延長貫壁性再分極時間(不応期)の不均一性

再分極電流↓

各細胞群 APDの均一な延長

M細胞 APDの選択的延長

EADからの異常自動能(期外収縮) 

β受容体刺激

torsade de pointes(リエントリー)

LQT1-13LQT2,3,(6),(9,10,12,13)LQT1,(5, 11)

(IKs↓,IKr↓,IKl↓,IKACh↓, late INa↑,ICa↑)

KCNJ2,CACNA1C,CAV3,SCN4B, AKAP-9, SNTA1, KCNJ5KCNQ1,KCNH2,SCN5A,ANKB, KCNE1,KCNE2,

図 3 先天性 QT延長症候群の QT延長と TdP発生機序

Page 9: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

9

QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

トリーと考えられる.

3.

Brugada症候群の概論

3.1

Brugada症候群とは

Brugada症候群とは,12誘導心電図で右脚ブロック様波形と,V1~V3誘導で,上向きに凸の coved(入り江) 型,または下向きに凸の saddleback(馬の鞍) 型の ST上昇を呈し,主として若年~中年男性が夜間に心室細動をひき起こして突然死する疾患である 50).本症候群には心室細動や失神などの症状を伴う有症候群と,心電図異常を有するが症状のない無症候群がある.本疾患は多くの報告によって遺伝性不整脈疾患と考えられており,心筋のNa+チャネルをコードする SCN5A遺伝子変異 2) のほか,L型Ca2+チャネル遺伝子の変異など,これまでに 12種を超える原因遺伝子が同定されている.

3.2

Brugada症候群の疫学

Brugada症候群は,わが国ではまれな疾患ではない.J点で 0.2 mV以上の coved型 ST上昇を示す症例の有病率は,日本人学童で 0.005 %程度,成人では 0.1~0.3 %程度で,加齢とともにその比率は増加すると報告されている51-58).一方,saddleback型の ST上昇を含むとその比率は上昇し,40歳以上(平均年齢 58歳) の集団では,右脚ブロックで 0.1 mV以上の ST上昇を呈する人は,全体で 0.7 %,男性では 2.14 %に達すると報告されている 51).発症率は14.2人 /10万人・年(年間 0.014 %) 程度であり 52),30歳代から 40歳代に発症のピークがあって,その平均発症年齢は 45歳である.また男性は女性の 9倍もBrugada症候群になりやすい.突然死が生じる比率は,年間に約 0.5 %(1人 /180~280人) 程度であるが,突然死は coved型以外の症例にも生じると報告されている 51,52,54,56).

3.3

Brugada症候群の病態

3.3.1

性差Brugada症候群は男性に多く発症することが知られており,家系例を多く含む欧米の研究では,男性が全体の 7~8割を占めると報告されている 59-64).しかし,主として

発端者を集積したわが国の報告では,ほとんどが男性であり,女性は 5 %にすぎない 65,66).このようにBrugada症候群に男性が多い理由として,男性では右室心外膜で一過性外向きK+電流(Ito) 密度が高く,第 1相のノッチが深いために SCN5Aなどの遺伝子変異や種々の外的要因によるイオン電流の影響を受けやすいことがあげられる 67).また,男性ホルモン(テストステロン) の関与が示唆されている.テストステロンは IKs,IKr,IKl(内向き整流K+電流)などの外向きK+ 電流を増強させ,逆に L型Ca2+電流などの内向き電流を減少させることが知られているが,Brugada症候群例では血中テストステロンレベルが有意に高く,肥満指数(BMI) が低いことが報告されている68).3.3.2

人種差Brugada症候群は,東南アジアの夜間突然死症候群 69),または日本の“ぽっくり病”70) の原因疾患とされている.Bezzina,Shimizuらは,SCN5Aの転写領域に 3つの組み合わせ(ハプロタイプ) で連鎖する 6つの多型を同定した.このうち,ハプロタイプ Bがアジア人だけに存在し,SCN5A変異例ほどではないが,転写活性や心臓の興奮伝導能を低下させていることを報告した 71).このハプロタイプはBrugada症候群の直接原因ではないが,本症候群がアジア人に多いという人種差を説明しうる一つの根拠と考えられている.一方,Brugada症候群がアジア人以外では少ないのか否かは不明である.ただ近年,北アフリカなどではわが国と同様の発症が報告されている 72,73).3.3.3

家族歴45歳未満での突然死,またはBrugada症候群の家族歴を有する症例の比率も,欧米と日本の報告とでは大きく異なる.欧米の報告は家系例を多く含むため,必然的に突然死の家族歴を有する症例が多く,その比率は 22~55 %にのぼる 59-64).一方,主として発端者だけを対象としたわが国の検討では,突然死の家族歴を有するものは 12~14 %にとどまる 65,66).この数値は Prioriらが発端者の集団で認めた 20 %と類似する 61).3.3.4

心室細動Brugada症候群では副交感神経刺激により,L型Ca2+

電流が減少して ST上昇をひき起こす.また徐脈により一過性外向きK+電流(Ito) が増加して,STをさらに上昇させる.このため,Brugada症候群では副交感神経の緊張時,または交感神経の緊張低下時に心室細動発作が生じやすい 74).失神は安静時または夜間睡眠中に生じやすいのが特

3.

Brugada症候群の概論

Page 10: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

10

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

徴で,心室細動例では 78 %が 20時から 8時のあいだに出現し,その際,約半数で心室期外収縮が認められている66).このように心室細動の発生には日内変動があるが,春から初夏にかけて多くなる季節変動も報告されている 75).一方,初回発作後,2回目の心室細動発作が生じるまでの間隔は数週間から十数年までさまざまである.心室期外収縮は SCN5A遺伝子に変異のない例ではほとんどが右室流出路起源であるが,変異例では左室起源の心室期外収縮が多く存在すると報告されている 76).3.3.5

心房細動,その他心房細動(atrial fibrillation:AF) は 15~30 %の症例に合併しており,その多くは発作性心房細動であるが,有症候群,とくに心室細動群で合併頻度の高いことが報告されている.また SCN5A変異例では心臓電気生理学的検査で心房細動が有意に誘発されやすいが,臨床的な心房細動発生とは関係しないと報告されている 77).これに加えてBrugada症候群では,冠攣縮性狭心症,神経調節性失神の合併が,それぞれ 10~20 %,35 %の症例に認められる78,79).3.3.6

ST上昇米国および欧州Heart Rhythm学会はV1~V3誘導の

ST異常を 3つのタイプに分類し,J点で 0.2 mV以上の上昇があるが,coved型で T波が陰転しているものをタイプ1,ST部が 0.1 mV以上上昇していて saddleback型を呈するものをタイプ 2とし,ST上昇が 0.1 mV未満で,saddleback型または coved型のものをタイプ 3と定義している 74).ただ欧米では,タイプ 1波形が自然の状態で,または薬物負荷後に認められる場合はBrugada型心電図としてもよいが,負荷後でも,タイプ 2やタイプ 3にとどまる場合はBrugada型とはしないとする意見が主流である.本症候群ではNaチャネル遮断薬やCa拮抗薬,β遮断薬,狭心症治療薬,向精神薬,全身麻酔薬,低K血症,発熱などで ST上昇を生じるが,これらの薬剤,病態では心筋の内向きNa+電流やCa2+電流が低下したり,外向きのK+電流が増加したりして,STを上昇させることが報告されている 74).JunttilaらはBrugada型心電図と突然死が生じた薬剤として,プロポフォール,ブピバカイン,リドカイン,プロカインアミドなどをあげているが 80),死亡例では薬剤を高濃度で長期投与していた状況がうかがえる.このため,通常量の薬剤を用いるか,Brugada型心電図が出現した時点でただちに投与を中止すれば,重篤な不整脈の回避は可能と思われる.

また,発熱や長時間の入浴も心筋のNa+電流を抑制して突然死を生じることが知られている.とくにBrugada症候群では saddleback型 ST上昇が coved型に変化し,その後に心室細動が出現する可能性があるので,無症候のBrugada症候群でも注意を要する.

3.4

Brugada症候群の予後

これまで,Brugada症候群では,J点で 2 mm以上の電位を有する coved型 ST上昇(タイプ 1) 例だけを対象として登録研究がなされ,その予後が検討されてきた.しかし,無症候群を含めて,すべての症例の予後が悪いという結果と,すべての予後は良好であるという,まったく相反する結果が報告され,はたしていずれが正しいのかが不明であった 59-62).また,それらの結果に基づいて治療ガイドラインが報告されていたが 74),それが日本人に適しているかは疑問であった.このため,2001年から厚生労働省の循環器病委託研究と,特発性心室細動研究会による J-IVFS研究が開始され,Brugada症候群の予後が前向きで検討された 65,66).とくに前者では発端者だけの予後が調査された.その結果,いずれの研究でも無症候群と失神群の予後は良好で,心室細動群の予後は不良であった(図4).これらの結果は,2010年に報告された FINGER研究の各群の予後ともほぼ一致していたが 64),失神群の予後だけがFINGER研究よりもやや良好な傾向を示した.これはわが国の研究が純粋な前向き研究であったために,神経調節性失神を有する例が失神群に一定数含まれたためと考えられた.循環器病委託研究では非タイプ 1心電図(タイプ 2, タイプ 3,J点で 1 mm以上 2 mm未満の coved型またはsaddleback型 ST上昇) を有する症例の予後も検討された.それによると,非タイプ 1群もタイプ 1群と同様な予後を示し,心室細動既往例では約 10 %/年の頻度で心事故を生じていた 66)(図4B).

3.5

心事故予測因子

3.5.1

すべての群の予測因子欧米の大規模研究では,男性,心室細動または失神の既往,自然発生のタイプ 1心電図,心臓電気生理学的検査での多形性心室頻拍・心室細動誘発(3連発までの早期刺激,最短連結期≧ 200 msec) などが,Brugada症候群の不良な予後を予測する因子とされている 59-63).一方,突然死の家族歴は予測因子とされていない.これは欧米の報告が家系例を多く含むために,家族歴を有する例と有さない例のあ

Page 11: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

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QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

いだに差が出なかったためとも考えられる.FINGER研究でも,多変量解析で有意差が認められたのは,症状と自然発生のタイプ 1心電図だけであった 64).一方,発端者だけを集積した循環器病委託研究では,心室細動の既往,45歳未満での突然死の家族歴と,下側壁誘導での早期再分極の合併が不良な予後の独立した予測因子であり 66),タイプ 1群では,心室細動の既往,突然死の家族歴と早期再分極合併が,非タイプ 1群では心室細動の既往,突然死の家族歴が有意な心事故予測因子であった.J-IVFS研究では,心房細動既往例で心事故発生率が高く,またV2誘導での r-J間隔≧ 90 msec以上と,V6誘導でのQRS幅≧ 90 msecが心事故の有意な予測因子であった65).

Brugada症候群が遺伝性疾患であることから,遺伝子変異が予後に影響する可能性は高い.これまで SCN5A変異を有する例では,ない例に比べて PQ時間,HV時間が延長しており,加齢とともにPQ時間とQRS時間が延長する.また変異例では心房内伝導時間が有意に長く,心房細動誘発率も高いとの結果が出ているが 77),遺伝子変異が予後予測に有用との報告はいまだなされていない.一方,Moritaらは,V1~V3誘導でのQRS波上の 8個を超えるスパイクまたはノッチ(fragmented QRS) の存在が予後予測に有用と報告している 81).3.5.2

無症候群と失神群の予測因子欧米では男性,失神の既往,自然発生のタイプ 1心電図,心臓電気生理学的検査での多形性心室頻拍・心室細動誘発などが,無症候群と失神群で不良な予後を予測する因子と

されている 59-61).しかし 700例近くの無症候例を集積した FINGER研究の単変量解析で,心臓電気生理学的検査での心室細動誘発がかろうじて有意との結果が得られたものの,多変量解析では無症候群においてどの因子も有意差が出なかった 64).わが国でも,J-IVFS研究では無症候群と失神群で心事故を予測しうる因子は見つからなかったが,循環器病委託研究では 45歳未満の突然死の家族歴が唯一,心事故の独立した予測因子であった 65,66).最近,Makimotoらはトレッドミル運動負荷検査時の回復期でのST上昇(運動前に比較してV1~V3誘導で0.5mm以上) が失神群,無症候群の不良な予後予測に有用と報告している 82).また,心臓電気生理学的検査で単発または 2連発早期刺激で多形性心室頻拍・心室細動が誘発された群は,3連発刺激で誘発された群よりも有意に予後が悪いとして,2連発以下での早期刺激が失神群,無症候群の指標として有用と報告している 83).失神群,無症候群では大規模試験により証明された予測指標が少ないだけに,今後これらの指標の信頼性を多施設で検証する必要性があると考えられる.

4.

Brugada症候群の発生機序

Brugada症候群は,明らかな器質的心疾患を有さず,12誘導心電図の右側胸部誘導(V1~V3) で特徴的な ST上昇と心室細動を主徴とする症候群として報告された 50) が,その後の検討により,症状を有さず特徴的な ST上昇だけ

4.

Brugada症候群の発生機序

無症候群( =154)n 無症候群( =53)n

<0.0001p =0.0013p

失神群( n=21)失神群( n=46)

VF/SCD群( n=45)VF/SCD群( n=11)

B. 非タイプ1群の症状別の累積心事故回避率A. タイプ1群の症状別の累積心事故回避率

(月)706050403020100

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

(月)706050403020100

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

累積心事故回避率

累積心事故回避率

図 4 循環器病委託研究の登録例(発端者)の予後(Kamakura S, et al. 200966)より)

Page 12: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

12

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

を示す症例も少なくないことが明らかとなってきた.特徴的な ST上昇には上向きに凸の coved型と,下向きに凸のsaddleback型があり,とくに coved型が心室細動発生と密接に関係していると考えられている.2002年の第 1回Brugada症候群コンセンサス会議では,特異的な ST上昇が 3つのパターンに分類された 84) が,2005年の第 2回目の会議ではNaチャネル遮断薬の投与の有無に関わらず,coved型 ST上昇を示すことが診断の必須条件となっている 74).さらに,①心室細動,②多形性心室頻拍,③ 45歳以下の突然死の家族歴,④ coved型 ST上昇の家族歴,⑤心室プログラム刺激試験による心室細動誘発,⑥失神発作,⑦夜間の瀕死期呼吸,のうち 1つ以上を認める場合をBrugada症候群と診断すると記載されているが,今後の研究によってはこの診断基準も変わる可能性がある.また,わが国では,通常肋間の右側胸部誘導記録では ST上昇が軽度あるいは saddleback型であっても,高位肋間記録でcoved型 ST上昇を示す場合も,Brugada症候群と同様の電気生理学的基盤を有するものと考えている専門家が多い.これは,異常部位とされる右室流出路の電気的現象が上方の肋間の右側胸部誘導心電図でより反映される症例が存在するからである.

4.1

Brugada症候群の遺伝子異常

Brugada症候群のなかには家族性の発症も少なくない.1998年に,ヒト心筋Na+チャネルαサブユニットをコードする SCN5Aの変異が報告された 2). しかし,SCN5Aの変異が同定されるのはBrugada症候群患者の 18~30 %である.さらには,SCN5Aは,3 型先天性QT 延長症候群(LQT3)や Lev-Lenegre病,家族性洞機能不全症候群の一部の例における原因遺伝子でもあり 85),1つの遺伝子変異により 2つの病態が合併する症例や異なる表現型を示す家族例の報告もある 86).また,近年ではさまざまな遺伝子異常が報告されており,ヒト心筋Na+チャネルβサブユニットをコードする SCN1Bや,GPD-1L蛋白をコードするGPD1-L,L型 Ca2+電流チャネルをコードするCACNA1CやCACNB2b,Itoを形成するKv4.3チャネルをコードするKCNE3などの遺伝子異常が報告されている 87).初めて同定された SCN5Aの変異遺伝子を用いた発現実験,機能解析では,Na+チャネル機能異常には,Na+チャネルの機能欠損,Na+チャネルゲート機構の異常, 細胞内蛋白移送の異常(trafficking defect) などが報告されているが,共通する機能異常は Na+電流の減少(loss of function) である 2,88,89).Na+電流の loss of functionとBrugada症候群の特徴的な心電図波形や心室細動発生と

の関連については,現時点ではAntzelevitchらのイヌの動脈灌流右室心筋切片を用いた実験的Brugada症候群による右室心筋細胞の貫壁性電位勾配での説明が最も有力視されている(図5) 89,90) .

4.2

特徴的心電図の機序

心外膜側心筋細胞と心内膜側心筋細胞の活動電位波形を比較すると,脱分極は心内膜側細胞で早期に生じ,再分極は心外膜側で早期に終了する.したがって,活動電位持続時間(APD) は心内膜側心筋細胞で延長している.さらに活動電位第 1相のノッチ形成に違いがある.心外膜側心筋細胞では第 1相にノッチを認めるのに対して,心内膜側心筋細胞ではノッチを認めない.ヒトを含めた多くの動物で,このノッチ形成には一過性外向きK+電流(Ito) が直接的に関係する.

Itoは同じ心外膜側心筋細胞でも,左室に比べて右室,とくに右室流出路で豊富である.また,ノッチ形成には,第0 相脱分極に関与するNa+電流やノッチに引き続くドームの形成に関与する L型Ca2+電流も間接的に影響する.Ito

や他の外向きK+電流である遅延整流K+電流(IK),ATP感受性K+電流などの増加,あるいは内向き電流(Na+,Ca2+) が減少した場合には,心外膜側心筋細胞のノッチがさらに深くなり,引き続くドーム形成に影響を及ぼす.心内膜側の細胞ではこのような変化は起こらない.したがって,正常状態の右側胸部誘導では ST部分はほぼ基線に記録される(図 5 a) が,心臓の活動電位の立ち上がり(脱分極) に大きく関与する Na+電流の抑制(loss of function) があると,Itoと拮抗することができないため心外膜側細胞のノッチが深くなる.その結果,心外膜側細胞でいわゆるスパイクアンドドームの形状が顕著となる.この際,電位勾配により STの上昇(J 波) が認められるが,心外膜側細胞のAPD 延長が軽度で,心内膜側細胞のAPD より短いままであれば,saddleback型 ST上昇となる(図5 b).さらに,内向き電流が減少すると(内向きのCa2+電流の減少も関与する),ノッチは大きく深くなり,これに続くドーム部分が遅れて心外膜側細胞で活動電位の再分極が心内膜側細胞より遅れる.この結果,上に凸の ST上昇に続いて T波の終末部は陰性化する(図 5c). この形状がBrugada症候群の特徴とされる coved型 ST上昇である.ノッチがさらに深くなり,Ca2+電流の流入が不活化されるとドームが消失する(loss of dome).これらのドームの遅延や消失は心外膜細胞間でも不均一に生じるため,再分極時間の大きな不均一性から(図 5 d), phase 2 reentryが生じる(図5e).

Page 13: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

13

QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

4.3

日差変動の機序

ST上昇には経時的な変化がみられることも知られており,変動すること自体が心臓突然死のリスクとも報告されている 91).また,Naチャネル遮断薬,Ca拮抗薬,β遮断薬,三環系あるいは四環系抗うつ薬,α交感神経刺激薬,静脈麻酔薬などの薬剤や,迷走神経緊張,発熱などにより ST上昇が顕著になることがある 92,93).また,性ホルモンによる影響や,食後のインスリン分泌による影響も報告されている 68,94).なかでも ST変化はNaチャネル遮断薬に鋭敏なことから,診断のためにも用いられる.わが国ではピルジカイニド 1 mg/kgを 10 分かけて静注する方法で行われることが多い.交感神経β受容体刺激薬であるイソプロテレノールなどは,Ca2+電流の流入を促進することにより ST上昇を改善させる 92).Itoの遮断作用があるキニジンによっても ST上昇が正常化する症例や,心室細動発生が抑制される例がある 95,96).また,日差変動だけでなく,心室細動の発症には季節性があることも報告されている 75).

4.4

伝導遅延の関与

このように,再分極異常による説明でもBrugada症候群の発生機序は説明可能であり,臨床例でも右室流出路の心内膜側および心外膜側の単相性活動電位で,Antzelevitchらの実験と類似した波形が記録された報告がある 97).しかし,Aibaら 98) はAntzelevitchらと同様の実験モデルに高感度光マッピング法を用い,心室期外収縮とその後に引き続く多形性心室頻拍・心室細動の機序を検討したところ,心室期外収縮はドームが消失した部位と保たれている部位が近接し,AP の電気的勾配が大きくなると phase 2 reentry により発生するが,引き続いて生じる頻拍が多形性心室頻拍で自然停止するか,あるいは心室細動へと移行するかの違いには伝導遅延の関与がある可能性を示した.また,Brugada症候群例では加算平均心電図で心室遅延電位(ventricular late potential)が記録される例が多いこと 99),右室流出路心外膜側の電位記録で分裂電位が記録さ

a. 正常 b. saddleback c. coved

d. heterogeneous loss of AP dome e. phase 2 reentry

活動電位

V2 誘導

V2 誘導

活動電位

M細胞心外膜

心内・外膜電位差内・外膜電位差心内膜心外膜 心内膜

心外膜

心内膜

J 波

心内・外膜電位差内

心内膜心外膜

心内膜心外膜心外膜

心内・外膜再分極差

隣接心外膜再分極差

0

mV

-100

図 5 Brugada症候群において推定される心電図変化の機序(Antzelevitch C. 200189)より改変)

Page 14: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

14

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

れる例があること 100),QRS 幅の広い例や左軸偏位のある例,HV 時間の延長例がみられること,SCN5Aの変異が認められている例でも若年時ではなく 30~50代になって心室細動が発生しやすくなることなどは,Brugada症候群の発症機序に再分極異常だけでなく伝導異常の関与があることを示唆する所見と考えられる.また,ST上昇も脱分極異常で説明可能とする報告もある 101,102).右室心尖部から加えた期外刺激の右室流出路までの伝導時間がBrugada症候群患者で延長している報告もある 103). 0~150 Hzのフィルターを用いた心電図計測によるQRS内のスパイク(fragmented QRS) が,心室細動発生例に高率に記録され,伝導遅延を示しているとの報告もある 81).同報告では実験モデルでも検討し,心外膜の

伝導遅延と fragmented QRSの関連性から心外膜での伝導遅延が心室細動に関与していることを示唆している.2011年のNademaneeらの報告では,心外膜側右室流出路前面の遅延電位を示す部位のカテーテルアブレーションにより,Brugada症候群患者の心室細動誘発性の低下,coved型心電図の改善の結果が得られている 104).したがって,Brugada症候群における心室細動の発生や維持には,再分極の異常だけではなく,その程度は不明であるが,脱分極異常(伝導異常) も関与しているものと考えられる.また,解剖学的な異常である組織の線維化の関与も否定できない 105,106).Brugada症候群の発生機序にはいまだ不明な点もあり,さらなる検討が必要である.

III. 先天性QT延長症候群の診断

1.

概論

先天性QT延長症候群は,心電図所見,非侵襲的あるいは侵襲的検査,家族歴,臨床症状(病歴),あるいは遺伝子型により臨床的に診断される.その診断法として,Schwartzらの診断基準(表2,4㌻) が用いられることが多い 11,107).この診断基準は患者の心電図所見(QTc, TdP,T wave alternans,notched T波,徐脈),臨床症状(失神,先天性聾),先天性QT延長症候群や突然死の家族歴によってポイント(重み) を付け,その合計点数で,先天性QT延長症候群である可能性が高い(3.5点以上) か,中等度(1.5~3点),低い(1点以下) を判断する.合計点数が 3.5点以上の場合は,確定診断となる. 近年,遺伝子診断の進歩とともに遺伝子型と表現型,予後との関連が検討され 6,12,108-115),遺伝子型に特異的な臨床像が明らかになった型もあり,遺伝子型別の生活指導や治療も行われるようになってきた.Schwartzらの診断基準は,先天性QT延長症候群発現(顕性) 例に対しての診断精度

は高いが,詳細なタイプやキャリア例の診断精度は低い112).先天性QT延長症候群の各タイプやキャリア例,ハイリスク例の鑑別については,今後,遺伝子型や遺伝子変異部位による診断が必要になってくるであろう.一方,心電図が先天性QT延長症候群の診断に重要な指標であることは変わりなく,さまざまな負荷試験や T波に関わる詳細な解析が進んでいる.とくにQT延長症候群の潜在的背景を有する人をどのように検出するのか,また心事故の予知に関する精度について今後,さらなる検討が待たれる.

1.1

小児期の QT延長症候群の診断上の問題

QT延長症候群は,両側性難聴と心電図上QT延長を示す常染色体劣性遺伝形式をとる症候群(Jervel and Lange-Nielsen 症候群) として,1957年に最初に報告されている 3).その後,常染色体優性の遺伝形式を示し,難聴を伴わない家系(Romano-Ward 症候群) も報告された.1990年代になり,分子遺伝学的背景が証明されるようになると,遺伝子型と表現型とのあいだに密接な関係のあることがわかってきた.しかし,小児期には成人のQT延長症候群と

III. 先天性QT延長症候群の診断

1.

概論

Page 15: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

15

QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

は異質の問題が存在する 116).日本では学校心臓検診によって症状のないQT延長を示す児童生徒をいかにフォローするかという問題もある 116).

1.2

胎児期,乳児期早期の QT延長症候群と診断の問題

QT延長症候群の心電図所見,症状(徐脈) は胎児期から出現することが知られている 117).新生児期,乳児期に症状が出現するQT延長症候群は房室ブロックや TdPを伴い,重症であることが多い 118-120).房室ブロックは2:1ブロックが多く,一部Wenckebach型も報告されている 120).図6は,2:1の房室ブロックを伴ったQT延長症候群 2か月女児例の心電図である.新生児期,乳児期で遺伝子診断が報告されているのは LQT2あるいは LQT3であった118,119,120a).最近,胎児期に徐脈を示し,出生後遺伝子診断で LQT1である症例が報告された 121).LQT1~ 3のすべてが胎児期に徐脈を示す可能性が証明されたことになる.LQT1による例では房室ブロックを伴っていない 120a,121).妊娠後期(3rd trimester) に胎児仮死を繰り返す例も報告されている.母親が無症状でQT時間も正常でありながら,胎児だけ重症を示した理由は,母親の細胞は SCN5A遺伝子変異のモザイク状態を示しており,8~ 10 %の細胞しか変異を示していなかったためと報告されている 122).

1.3

乳幼児突然死症候群

乳幼児突然死症候群(sudden infant death syndrome:SIDS) は,日本では「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず,しかも死亡状況および剖検によっても,その原因が不詳である乳児に突然の死をもたらした症候群」と定義されている(1994年厚生省心身障害研究班報告書).疫学的データからは,うつ伏せ寝との関

係が明らかにされているが,QT延長症候群も原因の一つであることがわかってきた 16,18,123).イタリアでは 1976~1994年の 25年間に 33034人の新生児について生後 3~5日目に心電図を記録後,経過観察している.1歳までに34人が死亡し,うち 24人(0.73/1000 出生) が乳幼児突然死症候群と診断された.新生児期のQT延長をQTc≧440 msec以上と定義すると,正常QTc値の乳児に乳幼児突然死症候群が起こる率は 0.037 %,延長QTc値の乳児に起こる率は 1.53 %であり,異常QTc値群に乳幼児突然死症候群が起こるオッズ比は 41.3(95 %信頼限界 17.3~ 98.4) と著明な高値を示していた 16).乳幼児突然死症候群を起こすQT延長症候群の責任遺伝子としてKCNQ1,KCNH2,SCN5A変異が報告されていたが 18,123,124),ほかに caveolin-3蛋白遺伝子(CAV3) 125),Na+チャネルβサブユニット蛋白遺伝子(SCN3B,SCN4B) 126),α1-syntrophin遺伝子(SNTA1) 127) の変異も責任遺伝子の一つとして報告されている.遺伝子診断により,乳幼児突然死症候群例のなかに占める(あるいは紛れ込んだ) QT延長症候群症例の頻度も明らかにされた.ノルウェーで 1988~2004年の 17年間に発生した乳幼児突然死症候群 201例の遺伝子診断が行われている 19).LQT3 が 13例,LQT1,LQT2がそれぞれ 2例,LQT6,LQT9がそれぞれ 1 例であった.すなわち 201例中 19例(9.5 %) にQT延長症候群の遺伝子変異が証明されたことになる.日本では 1995~2004年の乳幼児突然死症候群 42例のうち,遺伝子変異が証明された例は LQT3が 2例,digenic inheritance例(LQT2+ LQT3) が 1例,LQT1が 1例,計4例(9.5 %) であり 128),頻度はノルウェーとまったく同じである.QT延長症候群では 2種以上の変異を持つ場合,重症であることがわかってきつつあるが 15),乳幼児突然死症候群を起こした患児も 1遺伝子の中に 2個の変異(compound mutation) を,あるいは 2つの異なる遺伝子の変異(digenic inheritance) を持つことがわかっている 129).

P波

QRS波

2 : 1 房室ブロック

QT 間隔 : 560 msecRR 間隔 : 680 msecQTc : 679 msec

torsarde de pointes(倒錯型心室頻拍)

図 6 2:1房室ブロックを伴う QT延長症候群患児(2か月女児)2:1房室ブロックを伴った著明な QT間隔の延長を示し,torsade de pointesに移行している.

Page 16: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

16

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

QT延長症候群による乳幼児突然死症候群予防のための大規模研究が報告された.45000人に及ぶ大規模な乳児期での検討により,心電図および遺伝学的検査を勘案すると2000人に1人程度である 14).本報告での頻度は心電図上のQT延長と遺伝子変異を持っている乳児からのQT延長症候群患児頻度の推測であり,症状を起こしたQT延長症候群乳児の頻度ではない.

1.4

学校心臓検診での問題

日本では学校心臓検診が小学校,中学校,高等学校のそれぞれ 1年生全員に行われている.このシステムは全世界で日本だけであり,このシステムにより日本の児童生徒は突然死から守られていることが最近報告された 130).一般的に症状の出現した QT延長症候群の頻度は 5000~10000人に 1人程度と考えられていた 131) が,学校心臓検診で確定的なQT延長症候群(Schwartzのポイントで 4点以上〈旧診断基準〉) と診断される頻度は中学 1年生で1200人に 1人程度である 132).すなわち,日本では症状出現前のQT延長症候群患児に対する症状出現予測が必要になっている.日本における調査報告として 197例の小児例の報告がある 133).初診時,すでに症状がある場合,症状が再出現する頻度は 47 %,初診時までに症状がない場合,新しく症状が出現する頻度は 5 %であった.初診時,すでに症状がある患児(平均観察年 7.2年) の症状再出現のリスクファクターは,低年齢から症状があること(p< 0.05) と怠薬(p<0.005) であった.初診時までに症状がない患児では,

SchwartzらのQT延長症候群ポイントが4点未満であると,平均観察期間 4.5年で症状出現者はいなかった.現在,日本小児循環器学会で症状出現に関するQT延長症候群患児の前向き試験が始まっており,無症状で検出されるQT延長症候群患児の予後が検討できると考えられる 134).

2.

心電図診断

QT延長症候群の診断は,心電図所見,家族歴,既往歴,現症の組み合わせによってなされ,Schwartzらによって作成された診断基準 11)(表 2,4㌻) が用いられることが多い.表のポイントからわかるように,心電図診断としてQTc値, TdP(図6),T wave alternans(図7),3誘導以上での notched T 波(図8) が診断上,重要になる.TdPは失神と同一の意味を持ち 135),T wave alternansは TdPや失神を伴うときに出現しやすい 136), また, notched T 波の存在も重要な診断基準であり,とくに LQT2(HERG遺伝子変異) でみられる傾向がある 137).ほかに再分極過程の不均一性(heterogeneity) の指標もQT延長症候群の診断的補助になる.代表的なものはQT dispersionの増大 138,139)

であるが,T波形態の解析も有用であり,さまざまな定性的方法 48,140),定量的方法 141-143) が報告されている.したがって,安静時心電図以外に,QT間隔の増大,QT dispersionの増大,T波の変化を誘発する目的で,運動負荷 144-147),顔面浸水負荷 132),24時間心電図 148-152),薬物負荷 153-157) などが施行される.とくに薬物負荷は,QT延

2.

心電図診断

V4

V5

V6

図 7 T wave alternans(2か月女児)T波の向きが 1心拍ごとに逆向きになっている.

Page 17: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

17

QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

長症候群患者の分類と健常者との区別ができる有用な方法と考えられるが,健常女性でも変化することがあるので注意が必要である 158,159).下記に Schwartzらの診断基準(表2,4㌻) のうち,心電図所見に示された内容を説明した.最後に,QT延長症候群における T波形態の変化と再分極過程についても記載した.

2.1

補正 QT間隔(QTc値)

一般的に,QT間隔を先行するRR間隔の 2乗根で割るBazettの補正 [(QT間隔) /(RR間隔) 1/2] が用いられる.しかし,QT時間をBazettの補正方法で補正すると心拍数

が高い場合,過剰に補正してしまう(図9) 160).コンピュータでの自動診断では心拍数が 75拍 /minあるいは 80拍 /min以上で実際にQT延長があっても“QT延長”という異常を診断結果に表記していないことがある.また,学校心臓検診では省略 4 誘導( I,aVF,V1,V6) と心音図で行われている地域がある.QT延長症候群に特徴的なnotched T 波はV2からV4で記録されることが多い 135).心拍数が 75拍 /min以上でQT延長があっても notched T 波が心電図上にないと診断が困難になることが実際に起きている 161). 心拍数に影響されない方法として,International Conference Harmonization(ICH) E14 ではFridericiaの補正 [(QT間隔) /(RR間隔)1/3] を採用している 162).マニュアルで計測した値と Fridericia補正を用いた小学校,中学校,高校 1年の男女別のQT延長の基準値を表 3に示した 163).日本小児循環器学会でも,心拍数の速い小児でのQT時間補正には Fridericiaの補正方法を採用するよう勧めている 164).発端者の遺伝子変異が判明したあとの家族検診で,変異がありながら心拍数で補正された補正QT間隔(QTc) が正常範囲の家族の扱いが問題になっている 165).

a b

図 8 負荷試験による notched T 波の出現安静時(a)にはなかった notched T 波が顔面浸水負荷(b)により V4,V5にも出現している.(Fukushige T, et al. 2002132)より改変)

25 50 100 125 150

n = 3.299r = 0.534p < 0.0001

500

450

400

350

300

QTc 値(msec)

心拍数(拍/min)

75

図 9  中学 1年生女子の心拍数と QTc(Bazettの補正)との関係

(Yoshinaga M, et al. 1993160)より改変)

表 3 Fridericia補正での基準値

対象者数(名)

平均 QT時間(msec)

平均 RR時間(msec)

平均心拍数(拍 /min)

抽出基準値(msec)

小学 1年男児 2368 332±23 764±108 82±12 ≧ 430

同   女児 2287 327±22 733±106 84±12 ≧ 430

中学 1年男子 2368 353±25 805±132 77±12 ≧ 445

同   女子 2287 350±25 765±122 81±13 ≧ 445

高校 1年男子 2598 360±29 949±185 66±13 ≧ 440

同   女子 2675 358±27 873±154 71±13 ≧ 455

(Hazeki D, et al. 2010163)より)

Page 18: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

18

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

2.2

torsade de pointes(TdP)

QRSの極性と振幅が心拍ごとに変化して,等電位線を軸にしてねじれるような特徴的な波形を呈する心室頻拍をいう.QT時間が延長しているときに出現する.失神は一時的な,自然に回復した TdPによるものと考えられている 135).しかし,TdPから心室細動に増悪すると心臓突然死につながる 135).

2.3

T wave alternans(T波交互脈)

体表面心電図で,T波が 1心拍ごとに変化するものをいう.T wave alternansが存在するときは心室頻拍を起こしやすく,予後が悪い 166,167).T wave alternansはQT延長症候群だけでなく,虚血性心疾患などでも出現する.

2.4

notched T wave in 3 leads

bifid T 波ともいう.陽性 T波のピーク部の直前(上行脚) あるいは直後(下行脚) に切れ込みがある T波をいう.反対に,陽性 T波のピーク部の直前(上行脚) あるいは直後(下行脚) に突然の隆起部がある T波と定義 137) している論文もある.通常,3誘導以上に認めた場合に陽性とする.notched T 波がある場合,予後が悪い 168).

2.5

年齢不相応の徐脈(low heart rate for age)

この項目は小児だけの診断基準になる 11).Romano-Ward症候群患児と健常児とのあいだで心拍数に有意差があるのは新生児期から 3歳までとなっている 169).各年齢の 2パーセンタイル値を基準にする.小児の心拍数については,Rijnbeekらは新しい基準値を提唱している 170).新しい基準値での各年齢の 2パーセンタイル値を表 4に示した. 胎児期,乳児期では持続性洞性徐脈,2:1~高度房室ブロックが重要な QT延長症候群の表現型である120a,171,172).房室ブロックを伴ったものは LQT2か LQT3に多く,LQT1にはまれである 120a).房室ブロックの機序としては,著明なQT延長のために次のp波がT波に重なって,機能的に 2:1ブロックを呈するものが多いが,房室結節における変異イオンチャネルの分布に異常があり,房室結節自体に問題がある可能性もある 174).

2.6

T波形態の変化

QT延長症候群では T波形態が変化することが知られている.QT延長の程度によらず,特徴的な T波形態からQT延長症候群の診断に至ることがある 175).また,T波形態からQT延長症候群の遺伝子型をある程度推測することができる.Mossらは LQT1~3はそれぞれ特徴的な T波形態を示す傾向があることを初めて示した(図 10) 48).その後,Zhangらは,Mossらの分類が単純すぎることから,詳細な T波の定性的解析を試み,

LQT1には,infantile, broad-based, normal-appearing, late-onset normal-appearingの 4パターン,

LQT2には,obvious bifid T wave, subtle bifid T wave with second component on top of T wave in limb and left precordial leads, subtle bifid T wave with second component on downslope of T wave, low-amplitude bifid T wave with second component merged with U waveの 4パターン,

LQT3には,late-onset peaked/biphasic T wave, asymmetrical peaked T waveの 2パターンに分類できることを示した 140).しかし,これらの定性的な解析は判読者の経験に依存するところが多く,明確に分類できない症例も少なくない142).いずれにしても Schwartzのポイント(表2,4㌻) の項目に含まれる notched T 波(bifid T 波) は LQT2(HERG遺伝子変異) にみられやすい波形であることがわかってきた 137).また,LQT7(Andersen-Tawil症候群) ではU波の幅と振幅が増大して目立つ特徴がある.QT時間は延長していないことも多く,QU complexとして評価する必要がある 176).

2.7

再分極過程の不均一性

心筋再分極過程の不均一性(heterogeneity) を定量的に評価する方法としてQT dispersion(QTd) がある 138,139).

表 4 徐脈の診断基準(各群での 2 パーセンタイル値)

男子 女子

0 ~1 か月 129 136

1~3 か月 126 126

3 ~6 か月 112* 122*

6 ~ 12 か月 106 106

1~ 3 歳 97 95

*:例数が少ないため,95 %信頼限界値を用いている.(Rijnbeek PR, et al. 2001170)を改変 )

Page 19: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

19

QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

QTdは標準 12誘導心電図の [(最大QT時間)-(最小QT時間)] として求められるが,誘導によって T endが不明瞭で信頼性に乏しい場合があるばかりでなく,同一の電流双極子を別の方向から観測しているだけで,再分極の不均一性の評価にならないという指摘がある 139).一方,T波の頂点から終点までの時間(T peak-T end〈Tp-Te〉) は心室全体の再分極過程の transmural dispersionを反映すると考えられている.LQT2では LQT1よりも Tp-Teが長く,両者を鑑別できる可能性があるが,心室頻拍発生の予測はできなかったと報告されている 177).主成分分析(principle component analysis:PCA) を用いて,再分極過程の [第 2主成分 /第 1主成分比](PCA ratio) を求める方法も応用されている 141,178).PCA ratioが大きいほど不均一性は高く,QT延長症候群の診断だけでなく,あらゆる心疾患の予後予測に役立つことが報告されている 179).

3.

負荷試験

3.1

運動負荷147,180-187)

立位負荷では,健常群でQT時間は短縮するが,QT延長症候群では延長する.RRも短縮するのでRR補正すると,健常群でQTcは 50±30 msec延長するが,QT延長症候群では一般的に 89±47 msec延長する 180).先天性QT延長症候群例に運動負荷試験を行うとLQT1ではQTc(510±68→ 599±54 msec),T波の頂上から終末までの時間(Tp-Te)(143±53→ 215±46 msec) の両者が延長するが,

LQT2ではQTc(520±61→ 502±82 msec),Tp-Te(195±69→ 163±86 msec) とも延長しない 147).運動中止後 4分のQTcが> 445 msecであると,LQT1もしくは LQT2である感度 92 %,特異度 88 %である 181). LQT1では,運動負荷中止直後の QTc< 460 msecであり,これがLQT2との鑑別に有用である(感度 79 %,特異度 92 %) 181,182).運動中のQT時間と,運動 2分後で心拍数 10拍 /min以内の差のQT時間の差をQTヒステレシスと定義すると,LQT2では LQT1と比較しQTヒステレシスは>25 msecとなる(感度 73 %,特異度 68 %).表 5に運動負荷試験の適応のクラス別を示す.

3.2

カテコラミン負荷試験(エピネフリン) 188-191)

カテコラミン負荷試験も診断に有用であり,運動負荷が困難な症例でも負荷を行える利点がある.現在ではエピネフリン負荷が一般的である.Shimizuらの方法 188) は,12誘導心電図をとりながら,0.1 µg/kgをボーラス投与し,その後 0.1 µg/kg/minの持続投与を 5分間行う.エピネフリンを中止して,さらに 5分間心電図を記録する.エピネ

3.

負荷試験

LQT3 LQT2 LQT1

II

aVF

V5

図 10  LQT 1~ 3と心電図変化 (Moss AJ, et al. 199548)より)

表 5 先天性QT延長症候群における運動負荷試験の適応

クラス I ・ QT延長症候群が疑われるが,安静時心電図がQTc≦ 440 msecで QT延長症候群かどうかの診断が困難な症例.

・ 安静時心電図で QT延長を認め,運動に対する反応により治療方針を決定する必要のある症例.

・ 運動中の原因不明の失神を認める症例.

クラス IIa ・ 原因不明の失神を認めるが,運動との因果関係が不明な症例.

・ LQT1か LQT2かの鑑別を要する症例.

クラス IIb ・明らかな QT延長症候群の診断がついている症例.

Page 20: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

20

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

フリン投与開始前,投与開始後 1~ 2分でRRが最短の最大効果(peak),投与開始 3~ 5分の定常状態(steady state) での心電図を計測する 188).Ackerman らはエピネフリンを 0.05,0.1,0.2,0.3 µg/kg/minと徐々に増量し,投与前と,最大負荷時の心電図を計測する 189).Shimizuらによる LQT1,LQT2,LQT3鑑別のためのフローチャートを図11に示す 188).エピネフリン 0.05 µg/kg/minの投与でのQT絶対値の増加 30 msec 189),35 msec 188),0.01 µg/kg/min投与で 30 msec 155),QTcが 65 msec以上増加 190),もしくは 0.4 µg/kg/minまでの投与でQTcが 600 msec以上になるもの 191) などが,LQTの鑑別に有用との報告がある.表6にカテコラミン負荷試験の適応のクラス別を示す.

3.3

アデノシン負荷試験

アデノシン投与による突然の徐脈とその後の頻脈によるQT変化がQT延長症候群の診断に有用との報告がある192).最大徐脈時のQT> 410 msec(感度 94 %,特異度 90 %),最大徐脈時のQTc> 490 msec(感度 94 %,特異度85 %) がQT延長症候群を鑑別するのに有用である.

3.4

顔面浸水試験193-195)

 

運動負荷,カテコラミン負荷と反対に,徐脈でのQT延長を評価するのに有用な検査である.心電図のV4~V6を連続記録しながら,洗面器に入れた水温 0~ 10 ℃の冷水中に,最大吸気の状態で顔面浸水を行う.息こらえの続く限り負荷を持続する.不整脈の発生の有無を観察し,V5誘導のQT(msec) / HR(bpm) を 4点プロットし,この傾きが<- 2.0,もしくは最低心拍数時のQTc> 450 msecのときにQT延長を疑う.とくに水泳中の失神の既往があり,先天性QT延長症候群が疑われる症例に有用である.

3.5

経口糖負荷試験196)

75 g経口糖負荷試験を行い,投与前,30分後,60分後,120分後,180分後に心電図を記録する.先天性QT延長症候群ではQTの最大値,QT dispersionともに,健常群より延長する.食後の失神を認め,先天性QT延長症候群が疑われる症例に有用である.また近年,1型,2型糖尿病にQT延長を合併する報告も増加している 197-199).

4.

Holter心電図,T wave alternans,ループレコーダ

QT延長症候群の診断あるいは病態との関連性を知るうえで,Holter心電図, T wave alternansなどの非侵襲的検査・指標は有用とされており,数多くの研究報告が出されている 12).

4.1

Holter心電図

先天性QT延長症候群では,QT時間が延長(≧ 440~460 msec) していることがその診断の根拠になる 11).しかし,12誘導心電図でその延長が明らかでない患者では,その診断に苦慮するときがある.このような場合は,Holter心電図を用いてQT時間あるいは T波の変化を解析して診断率が向上することが示されている 200-205).Holter心電図で計測された再分極の空間的異常を反映する QT dispersionあるいは貫壁性異常を反映する Tp-TeもQT延長症候群の診断に有用であることが示されている151,204,206).Holter心電図上の心拍数の変化あるいはノッチを伴う T波などを解析することによって,先天性QT延長症候群の診断,さらには遺伝子異常の型(とくに LQT1

4.

Holter心電図,T wave alternans,ループレコーダ

表 6  先天性 QT 延長症候群におけるカテコラミン負荷試験の適応

クラス IIb ・QT延長症候群が疑われるが,安静時心電図がQTc≦ 440 msecで QT延長症候群かどうかの診断が困難でかつ運動負荷が困難な症例.

・安静時心電図で QT延長を認め,カテコラミンに対する反応により治療方針を決定する必要のある症例.

Δ corrected QTend ≧ 35 msec(Steady state-Baseline)

Δ corrected QTend ≧ 80 msec(Peak state-Baseline)

LQT3 or Control

NOYES

LQT1

LQT2

NOYES

図 11  エピネフリン負荷による遺伝子型推測のためのフローチャート

(Shimizu W, et al. 2004188)より)

Page 21: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

21

QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

とLQT2) による違いを評価した研究もいくつかある 137,150-

152).先天性QT延長症候群での TdP の発現には,運動,精神的興奮,ストレスなどの関与が知られており,とくにLQT1と LQT2では交感神経活動の亢進が強く関与する.Holter心電図上のRR間隔の変動,すなわち心拍変動を解析し,交感神経活動の亢進と TdP発現とに関連性があることを評価した報告もある 207,208).先天性QT延長症候群の遺伝子異常の型の鑑別で,Holter心電図によるQT時間や T波あるいは心拍変動の解析が有用であるとする報告が多いなかで,これらのHolter心電図指標が有用でないとする報告もある 209).

4.2

T wave alternans

先天性QT延長症候群では,心電図上で肉眼的に識別可能な T wave alternansのみられることが知られており,診断基準の一つに入れられている 12).体表面電位図を用いてT wave alternansの生じやすい部位を評価した研究があり,左前胸部でみられやすいことが報告されている 210).このT wave alternansの有無をHolter心電図で解析した報告がいくつかあり 141,211-215),TdP発現のリスクの高い患者ほどその傾向が強いといえる.しかし,Holter心電図で計測された T wave alternansは,先天性QT延長症候群の遺伝子異常の型の診断には有用でないとする報告が出されている 209,215).近年,心臓突然死で有用とされるマイクロボルト T wave alternansとの関連性を評価した報告があり,先天性 QT延長症候群患者のマイクロボルト T wave alternansは比較的低い心拍数で生じやすいことが示されている 216,217).しかし,リスク層別化ではマイクロボルトT wave alternansの有用性を疑問視する内容となっている217).

4.3

ループレコーダ

原因不明の失神をきたした患者では,植込み型ループレコーダ(心電用データレコーダ) が有用であることが数多くの臨床研究で示されている 218-220).先天性QT延長症候群も TdPにより失神をきたす恐れのある疾患であるため,植込み型ループレコーダは当然ながら先天性QT延長症候群に有用である.しかし,先天性QT延長症候群患者に限定して植込み型ループレコーダの有用性を評価した研究はまだない.

5.

臨床心臓電気生理学的検査

5.1

TdPの発生機序

実験的には,TdPをひき起こす第 1拍目の期外収縮はM細胞またはPurkinje細胞から生じる早期後脱分極(EAD) であり,第 2拍目以降の頻拍は,活動電位持続時間(APD) が著明に延長したM細胞または Purkinje細胞と他の細胞間での再分極時間の不均一性の増大によるリエントリーと考えられている 45,46).実験モデルは,LQT1では,IKs遮断薬とイソプロテレノールを,LQT2では IKr遮断薬を,LQT3では late Na+ 電流(INa) を増強させるATX-IIを用いており,先天性および二次性QT延長症候群いずれもTdPの発生機序は同様と考えられる.実験モデルでは心内膜側からではなく,心外膜側からの電気刺激により TdPを誘発することが可能である 45,221).臨床例でも,カテーテル電極押し付け法による単相性活動電位(MAP) により,先天性,二次性ともにQT時間の延長に一致してMAPの延長や EADが記録される 40,43,222)

ことから,撃発活動による発生機序が考えられている.発症時に short-long-shortの先行周期によって生じやすいことも EADの関与を示唆する所見である 223).

5.2

心臓電気生理学的特徴

以下に,現時点でわかっている心臓電気生理学的特徴を列挙する.先天性QT延長症候群では洞性徐脈を示し,洞房伝導時間も延長している例が少なくない.房室伝導は正常であるが,心室筋の不応期の延長により,2:1房室ブロックがみられる例がある.実験と異なり心室プログラム刺激試験による TdPの誘発がみられることはまれである 222,224).これは,APDの比較的長い心内膜側からの刺激であるためと考えられている.誘発がみられた例では,心室頻回刺激後のRR間隔延長に伴い,あるいは short-long-shortの心室プログラム刺激試験によって誘発されている 225,226).したがって,現時点では先天性QT延長症候群に対する心室プログラム刺激試験の有用性は少ないと考えられている.

MAP記録では,カテコラミン負荷後にQT延長や T波終末部の増高に伴い,EADがしばしば記録され,EADに及ぼす薬剤の有効性が検討されている 41,42,227).

5.

臨床心臓電気生理学的検査

Page 22: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

22

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

5.3

臨床心臓電気生理学的検査の適応

表 7に臨床心臓電気生理学的検査の適応のクラス別を示す.

6.

遺伝子診断

先天性QT延長症候群は,循環器疾患のなかでも最も遺伝子診断が進んだ遺伝性疾患である.常染色体優性遺伝形式をとるRomano-Ward症候群では,現在までに 8つの染色体上に 13個の遺伝子型が報告されている(LQT1~LQT13) 37,38) (表8).また,常染色体劣性遺伝形式をとり,両側性感音性難聴を伴う Jervell and Lange-Nielsen症候群では 2つの遺伝子型が報告されている(JLN1と JLN2) 37,38) (表8).先天性QT延長症候群では,臨床診断される患者の 50~70 %でいずれかの原因遺伝子上に変異が同定される.遺伝子診断結果に基づく生活指導やテーラーメード治療が実践されているため,先天性QT延長症候群の遺伝子診断検査は,平成 20(2008) 年 4月 1日付で保険診療(現在,診断 4000点,遺伝子カウンセリング 500点) が承認されている.各遺伝子型の頻度は,LQT1が 40 %,LQT2が40 %,LQT3が 10 %で,この 3つで 90 %以上を占めるため 37),通常の遺伝子スクリーニングではこれらの 3つの原因遺伝子,すなわちKCNQ1,KCNH2,SCN5Aのスクリーニングを行う.既知の原因遺伝子上の変異をスクリーニングする方法には,最初から PCR直接シークエンス解析を行う以外に,DNA断片中の 1塩基の違いで生じる電気泳動上の移動差を原理とした single strand conformation polymorphism (SSCP),conformation sensitive gel electrophoresis(CSGE) や,これをさらに高感度,高精度,低コストで行うことを可能にした dHPLC(denaturing HPLC) 法を応用したWAVE DNAフラグメント解析法などがある.検出された変異の塩基配列の決定にはシークエンス解析が行われる.

2011年に,先天性QT延長症候群の遺伝子診断に関する米国心調律学会(Heart Rhythm Society:HRS) とヨーロッパ心調律学会(European Heart Rhythm Association:EHRA) 合同の Expert Consensus Statementが発表された228).これによれば,①病歴,家族歴,心電図所見(安静時12誘導心電図,運動負荷試験,カテコラミン負荷試験) により先天性QT延長症候群が強く疑われる患者,②QT延

長をきたす二次的な原因(電解質異常など) がなく,安静時 12誘導心電図で補正QT(QTc) 間隔> 480 msec(思春期前),または> 500 msec(成人) の無症候患者では,遺伝子診断はクラス Iの適応である.また,③QT延長症候群遺伝子に変異が同定された発端者の家族構成員における変異部位のスクリーニングもクラス Iの適応としている.さらに,安静時 12誘導心電図でQTc> 460 msec(思春期前),または> 480 msec(成人) の無症候患者では,クラス IIbの適応としている.心電図上QT時間の延長という共通の表現型を呈するのは,Romano-Ward症候群,Jervell and Lange-Nielsen症候群のいずれの遺伝子型でも,心室筋活動電位プラトー相の外向き電流が減少(loss of function) するか,または内向き電流が増加(gain of function) することにより活動電位持続時間(APD) が延長するためである 37,38).

LQT1と LQT5の原因遺伝子であるKCNQ1(αサブユニット) とKCNE1(βサブユニット),および LQT2と LQT6の原因遺伝子であるKCNH2(αサブユニット) とKCNE2(βサブユニット) は,それぞれ複合体を形成して遅延整流K+電流(IK) の活性化の遅い成分(IKs) および速い成分(IKr) の機能を示し,これらの遺伝子変異により IKsまたは IKrの減少をきたす.LQT3の原因遺伝子である SCN5Aは心筋タイプNa+チャネル遺伝子であり,その変異により活動電位プラトー相で流れる late Na+電流(INa) が増強する.LQT4の原因遺伝子はNa-K ATPaseやNa+-Ca2+交換系電流(INa-Ca),IP3受容体などの細胞膜蛋白発現に関係する巨大膜蛋白であり,その変異により細胞内Ca2+負荷をきたす.症候の一つとしてQT延長を認めるものに,周期性四肢麻痺と骨格異常を合併する LQT7(Andersen-Tawil症候群),先天性心奇形,合指症,免疫不全,自閉症などを合併する LQT8がある.LQT7と LQT8の

6.

遺伝子診断

表 7  先天性 QT延長症候群における臨床心臓電気生理学的検査の適応

クラス I なし.

クラス IIa ・原因不明の失神があり,QT延長を伴う患者.

クラス IIb ・心停止蘇生例,または心室細動が臨床的に確認されている例(レベル C).

・ torsade de pointes(TdP)が確認されている例(レベル B).

・突然死や TdPによる失神の家族歴があり,心電図上 QT延長が確認されている例(レベル C).

クラス III ・QT 延長の原因,誘因が明らかであり,それらの除去,是正後に QT時間が正常化する,家族歴のない例(レベル C).

Page 23: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

23

QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

原因遺伝子はそれぞれKCNJ2,CACNA1Cで,これらの遺伝子変異により内向き整流K+電流(IKl) の減少,L型 Ca2+電流(ICa-L) の増強をきたす.LQT9,LQT10,LQT12の原因遺伝子はCAV3,SCN4B,SNTA1で,これらの遺伝子変異によりいずれも INaの増強をきたす.また,LQT11の原因遺伝子はAKAP-9で,遺伝子変異により IKsの減少をきたす.最も新しく同定された LQT13の原因遺伝子KCNJ5で,遺伝子変異によりアセチルコリン感受性K+電流(IKACh) の減少をきたしQT時間の延長をきたす.

JLN1と JLN2は,KCNQ1またはKCNE1のホモ接合体であり,KCNQ1とKCNE1は内耳の内リンパ液産生にも関与するため重症のQT延長に難聴を伴う 37,38) (表8).

Romano-Ward症候群は,従来,優性遺伝形式を示すと考えられていたが,イオンチャネル機能抑制が弱い遺伝子変異の場合には,ヘテロ接合ではQT時間は正常範囲で,ホモ接合となって初めてQT時間が延長し先天性QT延長症候群と臨床診断される,いわゆる劣性遺伝形式を示すRomano-Ward症候群も報告されている 229).また,薬剤や電解質異常などを原因とする後天性(二次性) QT延長症候群の一部の家系でも,LQT1,LQT2,LQT3の原因遺伝子であるKCNQ1,KCNH2,SCN5Aの異常が報告されている 32) (表8).先天性QT延長症候群で頻度の高い LQT1,LQT2,

LQT3患者では,遺伝子型と表現型(臨床的特徴) の関連が詳細に検討されている 12,48,110).これにより,遺伝子型特異的な心電図異常(T波形態),TdP(心事故) の誘因,自然経過,予後,重症度の違いなどが明らかとなり,遺伝子型に基づいた患者の生活指導がすでに可能となっている.また,遺伝子型特異的な抗不整脈薬による薬物治療,ペースメーカや植込み型除細動器などの非薬物治療も実践されている 37).さらに LQT1,LQT2,LQT3の原因遺伝子であるKCNQ1,KCNH2,SCN5Aには,それぞれ多数の変異が報告されており,日本国内または国際的な多施設共同研究により,各遺伝子型の変異部位別,変異タイプ別,あるいは変異の機能異常による臨床病態の解析も行われるようになり 109,111,114,115),遺伝子型にとどまらず遺伝子変異部位,タイプ,機能別の患者管理や治療の可能性も示唆されている.

表 8 QT延長症候群の原因遺伝子とイオンチャネル機能

タイプ  遺伝子座 原因遺伝子 イオンチャネル

先天性 QT延長症候群 Romano-Ward症候群  LQT1    LQT2     LQT3     LQT4    LQT5   LQT6    LQT7    LQT8    LQT9    LQT10    LQT11    LQT12    LQT13 

11(11p15.5) 7(7q35-q36) 3(3p21) 4(4q25-q27) 21(21q22.12) 21(21q22.12) 17(17q23.1-q24.2) 12(12p13.3) 3(3p25) 11(11q23.3) 7(7q21-q22) 20(20q11.2) 11(11q23.3-24.3)

KCNQ1 KCNH2 SCN5AANK2KCNE1KCNE2KCNJ2 CACNA1C CAV3SCN4BAKAP-9 SNTA1KCNJ5

IKs(α)IKr(α)INa(α)   Na-K ATPase, INa-CaIKs(β)IKr(β)IK1ICa-LINaINaIKs INaIKACh

 Jervell and Lange-Nielsen症候群  JLN1  JLN2

11(11p15.5)21(21q22.12)

KCNQ1(homozygous) KCNE1(homozygous)

IKs(α) IKs(β)

後天性 QT延長症候群11(11p15.5) 7(7q35-36) 3(3p21-23) 

KCNQ1KCNH2SCN5A

IKsIKrINa

Page 24: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

24

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

IV. 先天性QT延長症候群の治療

1.

概論

先天性QT延長症候群の治療は,QT延長に伴って生じる多形性心室頻拍の torsade de pointes(TdP) 発症時の治療(急性期治療) と,TdPおよびこれによる心停止,突然死予防のための治療(予防治療) に分けられる 230).

1.1

急性期治療

TdPは自然停止する場合と,持続して心室細動に移行する場合がある.心室細動に移行すれば,ただちに電気的除細動が必要となる.TdPの停止と急性再発予防には硫酸マグネシウムの静注が有効である.徐脈が TdP発症を助長すれば一時的ペーシングで心拍数を増加させる.再発予防の基本はβ遮断薬であるが,徐脈の増悪が予測されれば一時的ペーシングを併用する.薬剤誘発性QT延長症候群に伴う TdPの抑制にはイソプロテレノールによる心拍数の増加が有効であるが,先天性QT延長症候群では TdP発生を助長するため避けるべきである.症例によっては抗不整脈薬(リドカインおよびメキシレチン) が TdP停止に有効なこともある.なお低K血症は TdP発症を助長するので是正する.

1.2

心事故リスクの予測

まず個々の症例で,TdPによる失神および心停止の心事故発生のリスクを評価する(リスク層別化).QT延長が高度な例(QTc間隔> 500 msec) はリスクが高い 12,231).QT延長に聾を合併する例(Jervell and Lange-Nielsen症候群) や合指症を合併する例はリスクが高い 230,232).徐脈例(60拍 /min以下) はリスクが高い 231).遺伝子型では,LQT1および LQT2が心事故のリスクが高く,一方,LQT3は心臓死のリスクが高い 233).失神や心停止などの心事故既往例が最もリスクが高いとされ,Mossらの検討では,心事

故の既往がない例に比べてハザード比が 3.1倍と報告されている 231).最近の前向き登録調査研究の結果では,遺伝子型と性別とQTc間隔を組み合わせることにより,リスク層別化が可能とされている 12).Prioriらは LQT1,LQT2,LQT3の遺伝子型が同定された先天性QT延長症候群 647例を対象とし,40歳までに発生した心事故(失神,心停止,突然死) と性別,QTc間隔の関連を検討し,図12に示すようなリスク層別化を提唱した 12).先天性QT延長症候群のすべての例で遺伝子型の同定が可能というわけではないが,発作の誘因(運動,興奮,驚悸,夜間安静時など) 110) や心電図の T波形 48) により,ある程度の推定は可能である.一方,突然死の家族歴がリスクと関連するかどうかはいまだ確立されていない 230).患者の家族のなかでも,QT延長を認めなければ予後は良好である.最近,LQT2でQT延長をきたす遺伝子変異に加え,

KCNH2の多型であるK897Tが重なることによりQT延長が顕性化されることが示され 234),潜在性QT延長の機序として注目されている.LQT1で変異が膜に存在する例ではC末端の例の 2倍以上,ミスセンス変異例は非ミスセンス変異例の 1.5倍,そしてドミナントネガティブ例は,心事故リスクが 2倍以上高くなることが示されている114).臨床的特徴に加え,遺伝子変異の局在,タイプにより,さらなるリスクの層別化が可能になると考えられる.

1.3

植込み型除細動器

心停止蘇生例や心室細動の既往を有する例(超ハイリスク例) に対しては(二次予防),植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator:ICD) が適応となる 230).後述するβ遮断薬は,心事故発生の減少効果はあるものの完全ではない 235).心事故既往例では,β遮断薬を投与しても無症候例に比べて 5.8倍の心事故発生(再発) のリスクがあり,5年間に 32 %で再発を認める.心停止既往例では,無症候例に比べて 12.9倍の心停止発生(再発) のリスクがあり,5年間に 14 %で再発を認める.心事故の既往を有する例に ICD治療を行った場合の死

IV. 先天性QT延長症候群の治療

1.

概論

Page 25: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

25

QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

亡率が 3年間に 1.3 %(73例中 1例) であったのに対し,ICD治療を行わなかった場合の死亡率は 8年間に 16 %(161例中 26例) と高くなることが報告されている 236).心事故既往例には ICD治療が不可欠といえる.一方,心事故の既往のない無症候例に対する ICD植え込みの有用性は確立されていないが,図12のハイリスク例 12) にはβ遮断薬との併用が考慮されるかもしれない 230).TdPまたは失神の既往を有しβ遮断薬が無効の場合や,突然死の家族歴を認め,β遮断薬が無効の場合は ICDが有用と考えられる.

1.4

薬物治療

リスクを認めるものの心事故の既往がない例にはβ遮断薬を投与する.徐脈を認める例ではペースメーカ植え込みとβ遮断薬の併用が有用とされている 237,238).LQT3は徐脈時に発症するため,ペースメーカ植え込みが TdPの予防に有効である可能性がある.なおβ遮断薬は LQT1, LQT2に有効で, LQT3への効果は少ないとされている230,239).β遮断薬投与にも関わらず失神や TdPを繰り返す例には,左心臓交感神経節切除術が有効と報告されている240).LQT3はNa+チャネルの不活性化の障害を原因とするため,メキシレチンやフレカイニドがQT間隔の短縮に有用とされている 241).LQT2ではKとK保持性利尿薬(スピロノラクトン) によって血清Kを増加することにより

QT間隔の短縮が得られる 242).ただし,QT短縮のためのこれらの方策が生命予後の改善につながるかどうかは明らかでない.フレカイニドを LQT3の患者に投与するとBrugada症候群の心電図パターンに変化することが報告されており 243),注意を要する.1.4.1

TdP発症時の急性期治療 230)

TdPは自然停止する場合と持続して心室細動に移行する場合がある.心室細動に移行すれば,ただちに電気的除細動が必要となる.TdPの停止と急性期の再発予防には硫酸マグネシウムの静注(30~40 mg/kgを 5~10分間で静注し,さらに 1~5 mg/minで追加静注) が有効である.徐脈がQT延長を増悪させ TdPの発症を助長する場合には一時的ペーシングで心拍数を増加させる.再発予防の基本はβ遮断薬であるが,徐脈の増悪が予測されれば一時的ペーシングを併用する.薬剤誘発性QT延長症候群に伴う TdPの抑制にはイソプロテレノールによる心拍数の増加が有効であるが,先天性QT延長症候群では TdP発生を助長するため避けるべきである.抗不整脈薬(リドカインおよびメキシレチン) が TdP停止に有効な場合もある.なお低K血症は TdP発症を助長するので是正する.1.4.2

TdP発症の予防治療遺伝子検査の普及に伴い,サブタイプの同定から重症度評価 12) や治療方針の決定が可能 244) となってきているた

High Risk(≧50%)

Intermediate Risk(30-49%)

Low Risk(<30%)

QTc≧500 msecLQT1LQT2

Male sex, LQT3

QTc<500 msecMale sex, LQT2

LQT1

QTc<500 msecFemale sex, LQT2Female sex, LQT3Male sex, LQT3

QTc≧500 msecFemale sex, LQT3

図 12 遺伝子型と性別による先天性 QT延長症候群患者のリスク層別化(Priori SG, et al. 200312)より)

Page 26: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

26

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

め,積極的な遺伝子診断が望ましい.安静時の心電図波形から,LQT1, LQT2, LQT3, LQT7(Andersen症候群) などのサブタイプを類推できることも報告されている 110).一般に過度のQT延長(QTc> 500 msec),失神の既往や突然死家族歴,先天性聾などは TdP発症のハイリスクであるため,積極的な治療の適応となる.こうした情報をもとに個々の症例でリスク評価を行い,運動制限などの日常生活指導を行ったうえで薬物治療を開始する.薬物治療の中心はβ遮断薬投与であり,失神などの心事故を認めない症例でもリスクを認めれば勧められるが,LQT1に比べて LQT2ではやや効果が弱く,LQT3では効果はあまり期待できないことが知られている 230,239).

1.5

その他の治療

先天性QT延長症候群では TdP発症のトリガー(誘因) が見いだされることが多く,サブタイプによりその誘因は異なる 233).LQT1では交感神経刺激時に起きやすく,運動(マラソン) や興奮,とくに水泳中に多いことが知られている.LQT2では急激な交感神経の緊張による心拍数の増加が重要で,電話や目覚まし時計などの音刺激時に起きることが多い.LQT3では夜間就寝時や安静時に起きやすく,徐脈が増悪因子となる.発作の起きる状況から誘因を見いだし,とくに LQT1および LQT2では誘因を避けるよう指導することが大切である 230).以上の日常生活での注意点に加え,QT延長を助長する薬剤(Vaughan Williams分類 Ia群および III群抗不整脈薬や抗うつ薬など) や低K血症,低Mg血症を助長する薬剤などを避けるよう注意しなければならない 230).LQT2では出産前後の周産期に TdPが発生しやすいことも知られている 245).

2.

薬物治療

先天性QT延長症候群の治療は,QT延長に伴って生じる多形性心室頻拍の TdP発症時の急性期治療と,突然死予防を目的とした TdP発症の予防治療に分けられる 230).

2.1

β遮断薬146,235,238,246-250)

小児のQT延長症候群は,運動やストレスが原因で失神が誘発されるものが大部分である.このような場合の第一選択薬がβ遮断薬である.ただし,LQT3などβ遮断薬が効果の薄い例もあることに注意が必要である.表 9に

β遮断薬の適応のクラス別を示す.

2.2

ベラパミル41,251-255)

Ca拮抗薬の使用例の報告は少ない.しかし LQT8(Timothy症候群) 255) や EADが心室性不整脈に関与していることが疑われる例で,使用されることが考えられる.

2.3

カリウム242,256)

QT延長症候群の多くが IKs,IKrなどのK+チャネルの異常で発症する.このため低K血症はQT延長を悪化させる.LQT2で血清Kを高値に保つことが有効であったとの報告がある.

2.4

ニコランジル42,47,257,258)

カリウムと同様,有効な症例の報告があるが,エビデンスは少ない.

2.5

Naチャネル遮断薬(メキシレチン) 259-261)

SCN5Aの機能亢進で発症するLQT3では有効と報告されている.表10にメキシレチンの適応のクラス別を示す.

2.6

硫酸マグネシウム262)

TdPの急性期治療として有効である.通常 2 gを数分かけて静脈注射し 2~20 mg/kgで持続投与(小児では 3~12 mg/kg 262) ) を行う.

2.

薬物治療

表 9 先天性 QT延長症候群におけるβ遮断薬の適応

クラス I ・失神の既往がある QT延長症候群,とくに LQT1,LQT2*.

クラス IIa ・症状はないが,QT延長を認め,①先天性聾,②新生児,もしくは乳児期,③兄弟姉妹の突然死の既往,④家族もしくは本人の不安,もしくは治療に対する強い希望がある場合 .

クラス IIb ・症状がなく,①先天性聾,②兄弟姉妹の突然死の既往などを認めないもの.

*:とくに LTQ1では 0~14歳の男子,LTQ2では 15~40歳の女性のリスクが高く,β遮断薬の有効性が示されている 250).

表 10  先天性 QT延長症候群におけるメキシレチンの適応

クラス IIa ・ LQT3 と診断のついた失神歴のある QT延長症候群.

・β遮断薬単独で効果のない QT延長症候群.

Page 27: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

27

QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

3.

非薬物治療

QT延長症候群に対する非薬物治療には ICD治療 12,236),ペースメーカ治療 238),左心臓交感神経節切除術 263) がある.これらの治療法は,発作誘因となる運動制限やQT延長をもたらす薬物使用の制限など,日常生活の注意点を守り,さらに薬物治療を十分に行ったうえでも致死的発作がコントロールできない可能性が高い場合に選択される 263a).

3.1

植込み型除細動器(ICD)

表11に ICD植え込みの適応のクラス別を示す 264) .

3.2

ペースメーカ植え込み12,238)

β遮断薬の投与によりTdPは抑制されたが徐脈となり,徐脈による症状が出現した場合は,ペースメーカ植え込みの適応となる.徐脈が増悪因子となり TdPによる失神を認める症例も植え込みの対象となったが,ICDの普及につれてペースメーカの代わりに ICDを植え込むようになった.

3.3

左心臓交感神経節切除術230,263,265,266)

わが国ではほとんど行われていない手術だが,欧州からは薬剤抵抗性の患者に施行してよい結果が報告されている.表12に適応のクラス別を示す.

4.

小児における薬物・非薬物治療

小児における薬物・非薬物治療は成人のそれに準じる.とくにTdPのトリガー(誘因)が見いだされることが多いので,症候例では運動制限がきわめて重要であり,とくにLQT1のトリガーとして重要なマラソンと水泳には注意が必要である.

3.

非薬物治療

4.

小児における薬物・非薬物治療

表 11 先天性 QT 延長症候群における ICD植え込みの適応

クラス I ・心室細動または心停止の既往を有する患者(レベル A)

クラス II*1 ・① torsade de pointes(TdP)または失神の有無,②家族の突然死の有無,③β遮断薬に対する治療抵抗性,の 3つから以下のように IIa,IIb に分類する.

TdP,失神の既往 + + - + + -

突然死の家族歴 + - + + - +

β遮断薬*2 無効 無効 無効 有効 有効 有効

IIa IIa IIa IIa IIb IIb

*1:クラス IIは,TdP,失神の既往の有無,突然死の家族歴の有無,β遮断薬の有効性の有無の 3つを同等の重みとして,2つ以上の場合を IIa,1つの場合は II bに分類した.*2:β遮断薬の有効性は症状と負荷による QT延長の程度で判断する.LQT3と診断された場合は,β遮断薬は無効とする.注:小児では LQT2,LQT3で ß遮断薬が有効でない症例に対し,ICD植え込みが有効であったとの報告がある 264).

表 12  先天性 QT延長症候群における左心臓交感神経節切除術の適応

クラス I なし.

クラス IIb ・ICD装着後にβ遮断薬治療に関わらず頻回作動を認める.

・β遮断薬による治療に関わらず torsade de pointes による失神を認める(レベル B).

Page 28: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

28

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

V. 二次性QT延長症候群の診断と治療

1.

概論

先天性QT延長症候群以外に,薬剤や徐脈はQT延長をひき起こす.これらは二次性QT延長症候群あるいは後天性QT延長症候群と呼ばれる.二次性QT延長症候群は,“通常のQT間隔は正常であるが,外的要因(薬剤,徐脈,低K血症,心不全など) によって著明なQT延長とそれに伴う torsade de pointes(TdP) を呈する症例”と考えることができる.QT延長が高度になると, TdPをきたし突然死の原因になる 222).TdPは心筋の活動電位持続時間(APD) の延長と,そのための再分極相での早期後脱分極(EAD) によって発症する 267-270).TdPはQT延長が高度になるほど発症しやすいが,それ以外にQT延長時の増大した不応期の不均一性(APDの不均一性) が重要な役割を果たしていると考えられる 271).二次性QT延長症候群の分類と,それをきたす薬剤や要因は表1(4㌻) に示した.しかし,これらの薬剤や要因に曝されても,全例でQT間隔が高度に延長して TdPをきたすとは限らない.このような個体差は単に感受性の差あるいは特異体質と解されてきたが,その背後に遺伝的背景が明らかにされつつある.本ガイドラインでは二次性QT延長症候群を薬剤性QT延長症候群,徐脈依存性QT延長症候群,およびその他に分けて述べる.

1.1

薬剤性 QT延長症候群

表 1(4㌻)に TdPの原因となった薬剤がまとめられている 29,272,273).そのほかにもQT延長をきたす薬剤については http://www.qtdrugs.orgに詳細が記載されている.このうち抗不整脈薬については古くからキニジン失神として知られ,これは TdPによる 21,274).これはキニジンに限らずあらゆる抗不整脈薬でみられると考えてよい 21,275-

278).抗不整脈薬による TdPの頻度は 2.0~8.8 %とされる 21,22).今日では,再分極を遅らせてQT延長をきたす薬

剤であるVaughan Williams分類 III群薬の使用頻度が増加し 22,279,280),TdPの原因薬剤として最も多い.このうちソタロールは遅延整流K+電流(IK) のうち活性化の速い成分(IKr) を,アミオダロンはおもに IKの遅い活性化成分(IKs) と IKrを抑制し,APDの延長およびQT延長をきたす 22,279).しかしQT延長度は薬効や TdPの出現とは必ずしも 1:1の対応を示さない.実際,ソタロールでは 4 %前後に TdPを認めるとの報告があるが 22),アミオダロンでは少ない 280).これは薬剤によるQT延長以外に,心筋再分極の不均一性が増大するかどうかが重要であると考えられている 281).IV群抗不整脈薬に分類されるベプリジルも,おもに IKsと IKrを抑制してQT延長を生じる.ベプリジルもQT延長から TdPを発症することが知られており,III群薬と同様の注意が必要である 282). 抗不整脈薬以外の非循環器系薬剤である向精神薬,抗生物質,抗真菌薬,抗アレルギー薬,消化器疾患薬などもQT延長をきたす 23,283-287).これらの抗不整脈薬以外の薬剤によるQT延長の頻度は 1人 /1万~ 10万人と見積もられている 23).薬剤誘発性QT延長症候群の機序の多くは IKrの抑制によることが判明している 288-290).先天性QT延長症候群と同様に,QT延長は EADをもたらし 267,268-270),TdPが発生する.臨床心臓電気生理学的検査により,QT延長例でTdPの発生しているときには,心腔内から EADに相当する humpが単相性活動電位(MAP) で記録される 39).しかし同じ薬剤を用いても,一様にQT延長をきたすとは限らない.これは薬剤への個体差や感受性の差異があることを示しており,さらにこの個体差の背景には心筋のイオンチャネルのレベルでの遺伝子異常や一塩基多型(SNP)が想定されている 29,31,286,291,292).このような遺伝的背景を有する例では,①サブクリニカルなチャネルの遺伝子異常に薬剤作用が加わる,②チャネルの遺伝子異常が薬物への感受性(結合など) を亢進している,などで薬剤への個体差や感受性の差を生じると想定される.また,併用薬物や食物が抗不整脈薬の肝臓での代謝を阻害したり,代謝に関わる酵素異常なども薬剤の蓄積や作用の増強を招き,QT延長の原因になる 30,293).実際,

V. 二次性QT延長症候群の診断と治療

1.

概論

Page 29: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

29

QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

二次性QT延長症候群の症例でも,先天性QT延長症候群と同様の遺伝子異常が予想された以上の 40 %に認められることが報告されており 7),一部には誘因薬剤との特異的な相互作用も報告されている 35,291,294,295).

1.2

徐脈依存性 QT延長症候群

QT間隔は心拍数が上昇すると短縮し,低下すると延長する.ときに徐脈や心室期外収縮などによってRR間隔が延長すると,著明なQT延長をきたし TdPが発生する例がある 24,39,222,296).このような徐脈によって正常範囲を超えてQT間隔が延長するものを,徐脈依存性QT延長症候群と呼び,TdPの原因となる.したがって,洞不全症候群や房室ブロックなどの徐脈では,徐脈自体に加えQT延長による TdPも死因となる.

TdPの発生機序は他のQT延長症候群と同様で,高度のQT延長による EADが関わる 267,268,297).動物実験で房室ブロックを作製すると,心室筋の再分極に関わるK+電流が減少することが判明しており,これがQT延長の原因になると考えられる 298,299).徐脈依存性QT延長は,しばしば低K血症などによって増悪する 300).

QTc間隔が 550 msec(または 500 msec) 以上になるとTdPは発現しやすいとされるが,TdP発生直前には T波形の異常や変動が顕著になり,また期外収縮により short-long-short のシークエンスを呈することが多く 24,222,296),TdPが発生するときのQT間隔は 600 msecまたはそれ以上へと著明に延長している.徐脈や期外収縮などによるRR間隔の延長は,Vaughan

Williams分類 Iaや III群抗不整脈薬の投与後に発現するTdPでも増悪因子となる 24,267).徐脈時に TdPを示した完全房室ブロック例では,ペーシングにより心拍数を正常化するとQT間隔が短縮する 39).また,ペーシングによる心拍数の増減に伴うQTの変化は,ジソピラミドを投与したときのQTの変化と相関する 301).これは薬剤性QT延長症候群と徐脈依存性QT延長症候群には共通の背景があることを推定させる.同程度の徐脈であっても,QT間隔が著明に延長する例は限られ,むしろ多くの例では著明なQT延長は認めない.また徐脈依存性QT延長は女性により多く認め 301),薬剤性QT延長症候群と同様に性差がある 29,285).プロゲステロンやテストステロンにQT短縮作用があるとされる一方で 302,303),女性の場合には,性周期や周産期におけるQTの変化が不整脈発生や,二次性QT延長症候群発症と関係する可能性が考えられる 304,305).このような徐脈依存性QT延長の発生頻度の性差や個体差の背景にも,心筋の

チャネルの潜在的異常があると考えられる 306).

1.3

薬剤性,徐脈性以外の二次性 QT延長症候群

QT延長は上記以外のさまざまな原因によってももたらされる(表1,4㌻) が,心疾患が原因の場合と非心臓病性疾患に大別される.

2.

薬剤性QT延長症候群

薬剤投与後にQT時間が過度に延長し,それに起因するTdPが生じることで診断される.QT延長の原因となった薬剤(抗不整脈薬,抗生物質,向精神薬,抗アレルギー薬など) を中止し,薬剤やペーシングにより治療する.またQT延長の誘因となる低K血症,徐脈などの増悪因子に注意する.

2.1

診断

Bazettによる補正QT間隔(QTc) が薬剤投与後に 25 %以上延長するか,500msec以上となる場合に異常QT延長ありと診断される.QT時間を延長させる可能性のある薬剤を表 1(4㌻) に,また危険因子を表 13に示す12,29,272,291).

2.2

治療230)(発作急性期 〈QT延長に伴う TdP

を認める場合〉)

・QT延長の原因となった薬剤を中止する.(レベルA)

2.

薬剤性QT延長症候群

表 13 薬剤性 torsade de pointesの危険因子・女性・低 K血症・徐脈・最近洞調律化された心房細動例・心不全・ジギタリス投与・薬の血中濃度の上昇(薬物の相互作用による)・薬物の急速な静注投与・薬物投与前の QT延長・先天性 QT延長症候群・イオンチャネルの多型性・重度の低 Mg血症・QT延長作用のある薬物の併用

Page 30: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

30

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

・硫酸マグネシウム静注:硫酸マグネシウム 2 gを数分で静注する.さらに状態により 2~ 20 mg/minで持続静注する.(レベルB) ・ペーシング:100回 /minで心房または心室ペーシングを行う(房室伝導が不良であれば心室刺激) .(レベルB) ・イソプロテレノール:持続点滴投与で心拍数 100回 /minを目標に投与量を調節する.基本的には心室ペーシングまでのつなぎである.(レベルB) ・カリウム点滴静注: カリウムが正常範囲でも 4.5~ 5 mmol/Lを目標に点滴投与する.(レベルC) ・リドカイン静注:通常,50~100 mgを数分で静注したあと維持点滴を行う.(レベルC)

3.

徐脈依存性QT延長症候群

徐脈依存性QT延長症候群はQT延長症候群に伴う TdPの後天的原因として代表的疾患であり,房室ブロックや洞不全症候群による著明な徐脈によって惹起される 24,39,297).

3.1

病態,臨床的意義

完全房室ブロック,洞不全症候群などによる顕著な徐脈により,徐脈依存性にNa+-K+ポンプの活動性が抑制され,さらに遅延整流Kチャネルの不活性化により活動電位は延長して,QT間隔の延長をきたし,EADを形成し,TdPが発現する 267,268,297-299).しかし,著明な徐脈による反応は個体差があり,QT延長および TdPをきたす例で過剰反応を示すと考えられている 24).また,Vaughan Williams 分類Ia群や III群の抗不整脈薬投与後に発現する TdPでも,しばしば徐脈が増悪因子となる 267,268,301).

QTc間隔が 550 msec以上となった場合,TdPは発現しやすい.またTdP発生直前にはT波形の異常が顕著になり,short-long-short のシークエンスを呈することが多い24,268).

3.2

治療

徐脈依存性の再分極異常であるため,心拍数を増加させ,早急に徐脈を改善させることが必要である.薬物治療として,迷走神経緊張に伴う徐脈の場合はアトロピンやイソプロテレノール投与が有効性を示すことがある 268,307). しかし,交感神経作動薬は EADの形成をひき起こすため,投与後には心拍数増加の程度とQT間隔および T波形を

注意深く観察すべきである.一般に,原因疾患として高度房室ブロックの頻度が高いため,ペースメーカ植え込み術が適応となる.徐脈依存性QT延長症候群をきたした症例では,ペースメーカの心拍数を 60回 /min以下に設定するとQT間隔の短縮が不十分で,植え込み後でも TdPが発生することがあるため,70回 /min以上にすることが推奨される 24).徐脈依存性QT延長症候群に伴う TdPはペースメーカ治療により予防されるため,通常は,ICDの植え込みは必要としない.

4.

薬剤性,徐脈性以外の二次性QT延長症候群

二次性QT延長症候群の原因として多いのは抗不整脈薬や向精神薬を始めとする薬剤と,房室ブロックなどの徐脈性不整脈に伴う場合である.これ以外のQT間隔延長をきたす原因は表 1(4㌻) のとおりであり,おもなものとして急性心筋梗塞,低K血症などの電解質異常,中枢神経疾患などがあげられる.

4.1

心疾患による QT間隔の延長

4.1.1

急性心筋梗塞あるいは急性心筋虚血心筋梗塞を発症すると,健常群に比べて有意にQT間隔が延長することは,すでに 30年以上前から知られている308).心筋梗塞発症後の突然死例と生存例を比較すると,QT延長の頻度は 57 %対 18 %であり,平均QT間隔は443±27 msec 対 429±20 msecであったという 309).約30 %の急性心筋梗塞患者がQT間隔の延長を示すといわれ,その基準はQTc> 440 msecであった 310).心筋梗塞急性期には前壁心筋梗塞のほうが下壁心筋梗塞よりQT間隔は延長するといわれる.心筋梗塞の経過をみると,最初の 2日間に最もQT間隔は延長し,12か月にわたって次第にQT間隔は短縮する 309).4.1.2

心筋症とうっ血性心不全拡張型心筋症の小児のうち,32 %の患者でQTc間隔は

450 msecより大であり,同様に肥大型心筋症の小児のうち,24 %の患者でQTc間隔が 450 msecより大であったという報告がある 311).一般に,うっ血性心不全の患者ではQT間隔が延長する.細胞レベルの報告では,心不全による傷害心筋では Itoと IKlの減少のために,明らかな活動電位の延長が報告されている 312).たこつぼ心筋症あるいはスト

3.

徐脈依存性QT延長症候群

4.

薬剤性,徐脈性以外の二次性QT延長症候群

Page 31: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

31

QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

レス心筋症でもQT間隔が延長して TdPを生じることがある 313,314).また,川崎病 315) および急性リウマチ性心筋炎を含む心筋炎 316,317) でもQT間隔は延長することが知られている.

4.2

非心疾患による QT間隔の延長

4.2.1

糖尿病および代謝異常インスリン依存性糖尿病(1型:IDDM) 患者で,とくに自律神経障害を持つ症例では,健常者に比べて高率にQT間隔が延長している 318,319).QT延長を伴う非インスリン依存性糖尿病(2型:NIDDM) でも TdPが報告されている 320).神経性食欲不振症による突然死の直前にはQT間隔の延長が観察されている 321).電解質異常としては低K血症がよく知られており,心電図上ではQT延長とともに T波の陰転を伴うことが多い 322).利尿薬使用により低K血症が容易に生じる.甲状腺機能低下症でもQT間隔の延長から TdPを生じる報告がある 323).

肝硬変患者のQT間隔延長も報告されており,肝硬変患者ではQT間隔を延長させる薬剤の使用に注意すべきとしている 324).4.2.2

中枢神経疾患中枢神経疾患の急性期にはQT間隔の延長に加え,U波が顕著となり,深い T波の陰転をも伴うことがある 325).クモ膜下出血 27) あるいは頭蓋内出血 326) に伴ってQT間隔が延長し,TdPを生じる例がある.70例のクモ膜下出血例のうち,500 msec以上にQT間隔が延長していたのは 26 %あり,24時間以内に 3名が TdPを生じたと報告されている 27).

4.3

治療

原疾患の治療を優先するが,TdPを生じたときには,①救命治療のできる病院へ搬送,②可能ならば心臓ペーシングで心拍数を上昇させてQT間隔の短縮を図る,③薬物治療としては硫酸マグネシウム(2g) をゆっくり静注か,点滴静注する.

VI. Brugada症候群の診断

1.

概論

1992年,Brugada P,Brugada J 50) により,安静時の 12誘導心電図で右脚ブロックパターンを呈し,複数の右側胸部誘導(V1~V3) で心筋梗塞を思わせる ST上昇を示し,明らかな心疾患を認めず,電解質異常,QT延長もなく心室細動発作をきたした 8症例が報告された.この特異な心電図学的特徴を有する特発性心室細動は,以前に報告された症例にも認められていたが,Brugadaらはこの心電図学的特徴を有する症例をまとめ,心電図学的所見と心室細動

を関連づけた.この特異な心電図所見を呈する患者群は,今日では報告者の名を付しBrugada症候群と呼ばれる.

Brugada症候群に特徴的とされる心電図所見は,ときに正常化することもあり,その診断的価値について議論がなされている.失神,心肺蘇生の既往がある症例に植込み型除細動器(ICD) を使用することは異論のないところであるが,心電図所見が偶然に発見されただけの無症候例に対しての対応が問題となる.今日では,本症候群の診断には,単にBrugada型心電図を主観的に判断するのではなく,ヨーロッパ心臓病学会の診断基準が広く認知され用いられるようになった.Naチャネル遮断薬による誘発試験の意義,心臓電気生理学的検査による心室細動誘発試験の意義について多くの議論がな

VI. Brugada症候群の診断

1.

概論

Page 32: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

32

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

されてきた.とくに運動負荷試験などによる非観血的検査によるリスク層別化は,臨床的に価値ある手段として利用されるべきと言える.著しい進歩を遂げた遺伝子変異の検索でも,当初の SCN5A変異が検出されて以来,多くの情報が提供されている.このような研究により心電図異常のないキャリアや,典型的な Brugada型心電図を有する非キャリアの存在することが判明している.

2.

心電図診断

2.1

心電図診断の基準

Brugadaら 50) の報告した症例のタイトルが右側胸部誘導の ST上昇を伴う右脚ブロックであったために,当初は右脚ブロックに注目が集まったが,次第にV1~V3誘導の ST上昇が注目されるようになった 327).とくに ST上昇の形態がR波の頂点から凸状に下降する coved型と,凹状になる saddleback型に特徴がある.Brugada症候群の心電図の特徴は ST上昇の形態が同一症例で coved型からsaddleback型,あるいは ST上昇が顕著でなくなるように変化することである.

Wildeら 84) による2002年のコンセンサスレポートでは,V1~V3誘導の J点が 2mm以上を示す ST上昇で,タイプ 1は,ST上昇波形が coved 型を示す場合,タイプ 2とタイプ 3は saddleback型を呈し,それぞれ STの終末部が1mm以上あるいは 1mm未満の上昇を示す場合とした.また,タイプ 1で coved型の ST上昇波形は,その特徴をST部分が徐々に下降する(gradually descending) という説明で定義づけられた 84).さらに,2005年のコンセンサス会議の報告では,タイプ 3は ST上昇波形が coved型かsaddleback型のどちらかを示す場合としていた 74).2012年の LunaらによるコンセンサスレポートではV1~V3誘導のQRS-T形態において,タイプ 1を coved型 ST上昇とし,タイプ 2を saddleback型 ST上昇の 2つに大きく分けている 328).

Brugada症候群の診断に関しては,タイプ 1の心電図(薬剤投与後の場合も含む) が右胸部誘導の 1つ以上に認められることに加え,①多形性心室頻拍・心室細動が記録されている,② 45歳以下の突然死の家族歴がある,③家族に典型的タイプ 1の心電図を認める者がいる,④多形性心室頻拍・心室細動が心臓電気生理学的検査によって誘発さ

れる,⑤失神や夜間の瀕死期呼吸を認める,のうち 1つ以上を満足するものとしている 74,329).心電図がタイプ 2, 3の場合は,薬物で典型的なタイプ 1になった症例だけを上記の診断基準にあてはめている.わが国では,失神などの症状や多形性心室頻拍・心室細動が認められた場合を有症候性Brugada症候群,特徴的な心電図で発作を起こしていない場合は無症候性Brugada症候群に分類することが多い 330).タイプ2とタイプ3でも,1肋間上のV1~V3誘導で典型的なタイプ 1のBrugada型心電図を有する症例があり,潜在的なBrugada症候群の検出と,ハイリスク群の識別に有用とされている 331).さらにBrugada様心電図を示す例の非典型的失神の識別に,植込み型ループレコーダが有用であるという報告がある332).

2.2

わが国における心電図診断の基準

Brugada症候群の心電図判定基準は ST上昇の程度ばかりでなく,ST上昇の波形に注目する必要がある.とくに,coved型を示す場合は ST波形自体が臨床的に心室細動および突然死の発生と密接に関連しているため,J点 1mmを満たしていれば本疾患と診断される症例も報告されている 51,52,54,333,334).したがって,J点 1mmを示す coved型の ST上昇を診断基準に入れ,検診例における頻度について検討する必要がある.

Brugada症候群の心電図診断で,V1~V3誘導でのST-T偏位はA型(=タイプ 1:coved型 ST上昇〈J点≧ 0.2 mV〉),B型(=タイプ 2,3:saddleback型 ST上昇〈J点≧ 0.2 mV〉),C型(=タイプ S:coved型軽度 ST上昇〈0.2 mV> J点≧ 0.1 mV〉) の 3型に分類されている 329,335).さらに各型の心電図自動診断に必要な指標を,Brugada症候群の心電図を対象として,右脚ブロック型心電図と識別するために検討した結果を以下に示す.①A型(=タイプ 1) ではBrugada症候群と右脚ブロックの識別で,J点≧ 0.2 mVに加えて,R - R40≦ 0.4 mVおよび R >R40>R80の基準項目を用いて鑑別可能であった.②B型(=タイプ 2,3) では J点 0.2 mVに加えて,J点> ST最下点(終末部) および T波> ST最下点(終末部) を用いて検出可能であった.③C型(=タイプ S) では 0.2 mV> J点≧ 0.1 mVに加えて,A型の R 基準および R -R40≧ 0.04 mV,R40-R80≧ 0.04 mVを追加項目とすることにより,成人および小児におけるBrugada症候群と右脚ブロック心電図の鑑別が可能であった 335,336).

2.

心電図診断

Page 33: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

33

QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

3.

負荷試験

3.1

臨床的意義

本疾患の診断は,器質的心疾患を認めず,急性心筋虚血や電解質異常などを示さず,coved型や saddleback型の特徴的な心電図変化を呈し,失神や心室細動を発症する場合に確定する 50).しかし,わが国では検診にてBrugada症候群と同様な心電図変化を示す例が散見されるため,心電図異常から検出される頻度が高い 52,54,336).また,心電図上の ST上昇は 時期によって正常化する例もしばしば認められるため,負荷試験を行い,ST上昇や波形変化が増強または顕性化することで診断する.その際,症状や家族歴の有無によって負荷試験の臨床的意義が高まる.

3.2

薬物負荷試験

薬物負荷にはVaughan Williams分類 Ia群および Ic群のNaチャネル遮断薬が用いられ,症状の有無により診断的アプローチは異なるが,薬物負荷後に ST上昇の程度や波形変化が増強し,coved型 の ST上昇(J点が 0.2 mV以上) に移行した場合に陽性と判定される.代表的薬剤として,ピルジカイニド(1 mg/kgを 10分で静注),フレカイニド(2 mg/kgを 10分で静注),プロカインアミド(10 mg/kgを 10分で静注) などが用いられる 74,84,92,337-344).3.2.1

有症候性の場合心肺停止(心室細動) の蘇生例や,原因不明の失神や夜間瀕死期呼吸の既往例で,心電図上 ST波形が正常あるいは saddleback型の ST上昇だけの場合に適用する.薬物負荷後に陽性となった場合にBrugada症候群と診断され,植込み型除細動器(ICD) の適応となる 74,84,341).3.2.2

無症候性の場合 心臓性突然死やBrugada症候群の家族歴を有する例で,

ST波形が正常あるいは saddleback型の ST上昇だけを示す場合に適用する.薬物負荷後に陽性となった場合にはBrugada症候群を強く疑い,さらに心臓電気生理学的検査によって治療方針を決定する 74,341).心臓性突然死や Brugada症候群の家族歴を認めず,

saddleback型の ST上昇だけを示す例に適用され,薬物負

荷後で陽性の場合には,Brugada症候群を疑うが,一般に予後が良好とされている 62,64-66,345).これらの症例では,他の負荷試験や加算平均心電図および心臓電気生理学的検査などの所見を総合的に判断しリスク評価を行う.

3.3

その他の負荷試験

運動負荷試験では交感神経が刺激され,カテコラミンの増加に伴い ST上昇の程度や波形変化は軽減し,coved型より saddleback型に変化することがしばしば認められる92).逆に,負荷後では副交感神経系の緊張により ST上昇や波形変化が顕著になることがある.経口糖負荷試験中の心電図記録では,血糖値およびインスリン値の上昇に伴い,ST上昇が増強し,ST波形はsaddleback型から coved型へ移行することがある 94,346).本試験は ST上昇の増強,coved型 ST波形の顕性化の誘発に利用できる.さらに,ST-T波形はしばしば日差変動,日内変動を示し,食事後,とくに夕食後に saddleback型から coved型への顕性化をみることがあるため,頻回の心電図記録が推奨される 346,347).また,短時間に多くの料理を摂取させ,満腹にすることで副交感神経を亢進させ,coved型 ST上昇を顕性化させる試みも有用である 348).さらに,1~2肋間上の高位肋間で心電図を記録することによっても,ST上昇の増強や,coved型へ顕性化させることもある 331,338,349).

4.

加算平均心電図,特殊解析心電図指標

加算平均心電図による心室遅延電位などの非侵襲的検査指標を用いて,Brugada症候群のハイリスク患者を同定することが可能であるか否かの評価がなされている350,351).以下にこれまで評価されてきた非侵襲的検査指標を順にあげ,エビデンスレベルに基づく有用性について記載する.

4.1

加算平均心電図

有症候性あるいは不整脈イベントを経験した Brugada症候群患者の多くで,加算平均心電図(signal-averaging electrocardiography:SAECG) では心室遅延電位が検出される 69,99,352,353).心室遅延電位が検出されるということは,一般には心室筋で伝導遅延(脱分極異常) 領域が存在する

3.

負荷試験

4.

加算平均心電図,特殊解析心電図指標

Page 34: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

34

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

ことを意味する.加算平均心電図には時間領域解析と周波数領域解析があるが,評価が多くなされているのは時間領域解析によって測定された指標である.時間領域解析指標には,①フィルター処理されたQRS幅(f-QRS),②QRS終末部 40 msecで記録された電位の 2乗の平均値の平方根(RMS40),③QRS終末部で 40 μVである低電位の持続時間(LAS40) の 3つのパラメータがある.Brugada症候群では,通常RMS40と LAS40の 2指標を満たす場合を陽性とすることが多い 99,354) が,3つのパラメータのいずれか 1つを重要視する報告もある 355,356).心室遅延電位と不整脈イベントとの関連性を示す研究報告は多数あり,前向き研究でも,リスク評価で心室遅延電位の有用性が示されている 81,354,357,358).心室遅延電位の存在は心臓電気生理学的誘発性に関連することが示されており 359-361),右室流出路の伝導遅延がその原因である 81,100).心室遅延電位の検出率はBrugada型心電図の波形 362) によって異なり,自然変動することも知られている 363).

4.2

体表面電位図

体表面電位図は,前胸部と背面に貼り付けた体表面上の多数の単極誘導点での電位記録を用いて,心臓内の興奮伝播過程を比較的正確に描写する検査法である.右室流出路での伝導遅延の存在を非侵襲的に評価することができ,Brugada症候群の不整脈発生の背景を知るうえで応用できる 338,364).体表面電位図で得られたデータがリスク層別化に関与するかは明らかではない.

4.3

心拍変動

心拍変動は自律神経活動をある程度評価できる指標であり,心拍変動の周波数領域解析で測定された高周波成分のパワー値は,瞬時における迷走神経活動を鋭敏に反映するとされている.Brugada症候群の不整脈イベントは,夜間就眠時,早朝あるいは食後に多いことが知られており,迷走神経活動の亢進と密接に絡んでいる 94,348,365-369).Brugada症候群患者でこの高周波成分の変化を解析した報告がいくつかあり,心室細動出現の直前に高周波成分のパワー値が急激に増加,すなわち迷走神経活動が亢進することが示されている 351).Brugada症候群患者では典型的な心電図波形が迷走神経の影響で日内あるいは日差変動することが知られているが,これは不整脈イベントのリスクにも関与する 346,357,370).

4.4

T wave alternans(T波交互脈)

T wave alternansは再分極異常を反映する指標であるが,この T wave alternansとBrugada症候群との関連性を評価した報告がいくつかある.Brugada症候群患者では肉眼的に識別可能な T wave alternansを生じやすいことが示されている 94,339).近年,心臓突然死の予知指標として用いられているマイクロボルト T wave alternansについては,Brugada症候群では有用でないとの報告がなされている99,371).

4.5

QT間隔

右側胸部誘導で,QT間隔延長,Tp-Te間隔延長,およびTp-Te dispersionが,Brugada症候群のリスク層別化に有用とする研究があるが 372-374).QT dispersionについてはリスクに関連しないという報告がある 99).

5.

臨床心臓電気生理学的検査

Brugada症候群の ST上昇および心室細動の易発生は,Antzelevitchらの実験モデルによれば,右室流出路の再分極異常により説明が可能である 89).しかし,臨床例では誘発の際に伝導遅延がみられたという報告 360) や右室流出路心外膜側心筋の電位で微小な遅延電位が記録されたという報告 100) もあり,さらには加算平均心電図で心室遅延電位が記録されることなどから,伝導の異常も示唆されており,右室流出路心外膜側前面での異常電位に対するカテーテルアブレーションの成功例も報告されている 104).phase 2 reentryが期外収縮の機序となりうることや,心外膜側の伝導遅延が不整脈発生の基質となっている可能性は示唆されているが,臨床例における心室細動の心臓電気生理学的発生機序はいまだ明らかとはなっていない.

5.1

Brugada症候群の心臓電気生理学的特徴

現時点で知られているBrugada症候群の心臓電気生理学的特徴を以下に列挙する.なお,Brugada症候群の心電図は欧州および米国Heart Rhythm 学会によるタイプ 1,タイプ 2,タイプ 3に分類し 74),Brugada症候群のうち,症状(心停止,多形性心室頻拍・心室細動あるいは原因不明の失神) を伴う例は有症候性Brugada症候群,症状のな

5.

臨床心臓電気生理学的検査

Page 35: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

35

QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

い例は無症候性Brugada症候群として取り扱う.①心室プログラム刺激試験により,高率に心室細動が誘発されるが,誘発率は無症候例より,有症候例で高率である 62,375).②刺激部位によって誘発性が異なり,右室心尖部よりも右室流出路でより誘発されやすい 376).③期外刺激法により,右室流出路における伝導遅延の所見がみられることがある 91,103,377).④自律神経系作動薬が誘発性に影響する 352).⑤心室細動の誘発を抑制する薬剤として,一過性外向き

K+電流(Ito) を抑制するキニジン 95,96) が有効とする報告がある.⑥無症候性Brugada症候群のリスク層別化には心室プログラム刺激試験 の評価は定まっていない.Brugadaら60) は,心室プログラム刺激試験により心室細動を誘発される患者は心事故を起こしやすいとして心室プログラム刺激試験の有用性を述べているが,他の報告 61,62,378)

では,同様の所見は得られていない.これは,Brugadaらの報告を除くと,これまでに行われた数年の経過観察期間ではいずれも良好な経過を示しているからである.⑦洞不全症候群や心房停止を合併した症例の報告もある.⑧His-Purkinje系の伝導時間を反映するHV 時間が延長(≧

55 msec) している例が認められる 69).無症候例より有症候例で,および心室プログラム刺激試験による心室細動非誘発例より心室細動誘発例でHV 時間の延長例が多い.また SCN5Aの遺伝子異常が認められる例にHV 時間の延長例が多いことも報告されている.しかし,無症候例でHV 時間の延長がハイリスクであるというエビデンスは得られていない.⑨心室プログラム刺激試験により,心房細動が誘発されやすく,心房の受攻性が高まっていることが報告 379) されている.そのほか,房室結節リエントリー性頻拍,心房頻拍,単形性心室頻拍,副伝導路症候群の合併がみられる 380).

5.2

臨床心臓電気生理学的検査の適応

Brugada症候群に対する臨床心臓電気生理学的検査は,①心室プログラム刺激試験による発作の誘発,②発生機序を検討する,③他の電気的な異常の有無を検討する,を目的で行われる.しかし,実際は,ほとんど①の目的で施行されている.表 14に臨床心臓電気生理学的検査の適応のクラス別を示す.

6.

遺伝子診断

Brugada症候群は,右側胸部誘導の ST上昇を特徴とする特発性心室細動の一群である.本症候群における ST上昇の機序は,右室の心外膜に多く発現する一過性外向きK+電流(Ito) の相対的な増加によって,活動電位第 2相の貫壁性電位勾配が増加することであると考えられている381).1998年,心筋Na+チャネルαサブユニット遺伝子(SCN5A) 変異が同定されて以来,これまでに 300種近くの変異が報告され(BrS1),そのほかにも 6種類の原因遺伝子(BrS2~7) が知られている(表15) 2,382).変異Na+

チャネルを培養細胞などに発現させてその電流を測定すると,そのほとんどはゲート機構の異常,またはチャネル蛋白の細胞膜への輸送(membrane trafficking) によってNa+電流量が減少または消失している(loss-of-function).この異常は活動電位 0相の急速な立ち上がりを担う内向

6.

遺伝子診断

表 14  Brugada症候群における臨床心臓電気生理学的検査の適応

クラス I ・coved 型 Brugada 心電図(薬剤負荷後を含む)を呈する患者で,多形性心室頻拍・心室細動は確認されていないが,失神, めまい, 動悸などの不整脈を示唆する症状を有する.

・coved 型 Brugada 心電図(薬剤負荷後を含む)を呈する患者で,多形性心室頻拍・心室細動は確認されておらず,また失神, めまい, 動悸などの不整脈を示唆する症状はないが,若年~中年者の突然死の家族歴がある.

クラス IIa ・saddleback型 Brugada心電図を呈する患者で,多形性心室頻拍・心室細動は確認されていないが,失神, めまい, 動悸などの不整脈を示唆する症状を有する.

・saddleback型 Brugada心電図を呈する患者で,多形性心室頻拍・心室細動は確認されておらず,また失神, めまい, 動悸などの不整脈を示唆する症状はないが,若年~中年者の突然死の家族歴がある.

・ Brugada 心電図(coved 型および saddleback 型)を呈する患者で,多形性心室頻拍・心室細動が確認されているが,植込み型除細動器の植え込みが困難な症例における心臓電気生理学的薬効評価(レベル B).

クラス IIb ・Brugada 心電図(coved 型および saddleback 型)を呈する患者で,多形性心室頻拍・心室細動の記録,不整脈を示唆する症状,若年~中年者の突然死の家族歴,のいずれも認めない場合.

・Brugada 心電図(coved 型および saddleback 型)を呈する患者で,多形性心室頻拍・心室細動が確認されている.

Page 36: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

36

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

きNa+電流を抑制し,さらにそれに引き続く 1相の Itoを相対的に増加させる.

SCN5Aは Brugada症候群患者の最多の原因遺伝子(BrS1) だが,変異の検出率は約 20 %にすぎない 382).また, SCN5A陽性の家系内でも,遺伝子型と表現型が完全に一致しているわけではなく,心電図異常のないキャリアや,典型的なBrugada心電図を有する非キャリアの存在する例も知られている 383).したがって,Brugada症候群の病因として,SCN5A以外の遺伝子や未知の修飾遺伝子を含む“遺伝的背景”や環境要因の関与を考慮する必要がある.

SCN5A変異キャリアと非キャリアを比較すると,体表心電図 PQ時間と心内心電図HV時間が長く,Naチャネル遮断薬投与時の PQ時間,QRS時間の延長幅が大きいという特徴がある 384).また,Brugada症候群に合併の多い心房細動については,SCN5Aキャリアでは心房伝導時間が長く心房細動誘発性が高いが,心房細動の自然発生や臨床的重症度とは関連のないことが判明している 77).また本症の突然死のリスク評価には,失神などの症状,突然死の家族歴,心臓電気生理学的心室細動誘発試験,心房細動の有無,加算平均心電図,V1 誘導の S 波の幅など,さまざまな要因が考慮されるが,SCN5A変異の有無は心室細動や心房細動の予後予測因子にはならない 61,74).Brugada症候群の遺伝子解析の診断的意義は大きいが,リスク層別化を含む臨床的意義については,少なくとも現時点では限定的であるといわざるをえない .一方,日本人全体の 0.1~0.2 %に認められる無症候性

Brugada症候群(またはBrugada型心電図) は,有症候性群に比較して一般に予後は良好であるが,そのなかからハイリスク症例を選別し突然死を予防することは重要である.しかし,無症候性Brugada症候群の SCN5A変異頻度やその長期予後に関する十分なデータはなく,今後の研究が期待される.

SCN5A変異は,gain-of-functionを示す変異が 3型先天性QT延長症候群(LQT3) に同定されているほか,進行性心臓伝導障害(progressive cardiac conduction defects:PCCD),洞不全症候群,先天性房室ブロック,乳幼児突然死症候群,拡張型心筋症などにも報告されている.これらは SCN5Aを共通の原因遺伝子とするアレル疾患“心筋Naチャネル病”と総称される.

SCN5Aのプロモータ領域に 6個の一塩基多型(SNP) があり,連鎖不均衡によって遺伝子型(ハプロタイプ) はほぼ 2種類(HapA, HapB) に限定される 385).HapBは日本人の約 25 %にみられるが白人や黒人にないハプロタイプで,SCN5Aの転写活性が低下する.したがって,東アジアで罹患率が高いBrugada症候群の病因にHapBが関与している可能性がある.

Brugada症候群には SCN5Aを含めこれまでに 7つの原因遺伝子(BrS1~7) が報告されている(表 15).第 2の原因遺伝子BrS2は glycerol-3 phosphate dehydrogenase like(GPD1L) で 386),変異はNa+チャネルのトラフィッキングを阻害する 387).続いて,QT短縮を合併したBrugada症候群家系に Ca2+チャネルα1サブユニット(CACNA1C),β2サブユニット(CACNB2b) の変異が報告された 388).その後,少数例ではあるが,BrS5:SCN1B 389), BrS6:KCNE3 390), BrS7:SCN3B 391) が報告されている.また,Ca2+チャネルα2δサブユニット(CACNA2D1) 392),ペースメーカチャネルHCN4 393),Brugada感受性遺伝子MOG1 394), 後述する早期再分極症候群の原因遺伝子でもあるKATPチャネルKir6.1サブユニット(KCNJ8) 395) にも変異が同定され,関連遺伝子のリストはさらに拡大すると予想される.

Brugada症候群の類似心電図としてQRS-ST接合部の上昇,すなわち早期再分極パターンがある.これは低体温の際にみられるOsborn波としてもよく知られているが,

表 15  Brugada症候群の原因遺伝子

サブタイプ 遺伝子 蛋白 遺伝子座 障害される電流 電流の効果 頻度 OMIM*

BrS1 SCN5A Nav1.5 3p21 Na(INa) ↓ 約 20% 601144

BrS2 GPD1L GPD1L 3p22.3 Na(INa) ↓ 希 611777

BrS3 CACNA1C Cav1.2 α1C 12p13.3 L型 Ca(ICa-L) ↓ 希 611875

BrS4 CACNB2b Cav1.2 β2b 10p12 L型 Ca(ICa-L) ↓ 希 611876

BrS5 SCN1B Navβ1 19q13.12 Na(INa) ↓ 希 600235

BrS6 KCNE3 MiRP2 11q13.4 一過性外向き K(Ito) ↑ 希 613119

BrS7 SCN3B Navβ3 11q24.1 Na(INa) ↓ 希 613120

*:Online Mendelian Inheritance in Man(www.ncbi.nlm.nih.gov/omim)登録番号.

Page 37: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

37

QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

健常人にもしばしばみられる心電図所見である.Haïssaguerreらは,特発性心室細動(idiopathic ventricular fibrillation:IVF)蘇生例 206例を再検討したところ,31 %に下方誘導または側方誘導に 0.1 mV以上のQRS-ST接合部の上昇(J波) が認められた 396).したがって,J波は必ずしも予後良好なバリエーションではなく,部位や広がりの程度によっては予後不良の予測因子と考えられる.早期再分極症候群(early repolarization syndrome:ERS) は,早期再分極パターンを伴った心室細動と定義される.早期再分極症候群の原因遺伝子として最初に報告されたのはKATPチャネルKir6.1の遺伝子(KCNJ8) である 395,397).しかし,Kir6.1は心筋での発現レベルが低いサブユニットであり,また S422L以外の変異が早期再分極症候群患者に見つからないなど,早期再分極症候群の原因遺伝子としてのコンセンサスが得られているとはいえない.最近,Brugada症候群と早期再分極症候群を包括し,臨床的・遺伝学的にオーバーラップした“J波症候群”とい

う大きな枠組みでとらえることが提唱されている 398).Brugada症候群は右室の異常によってV1~V3で J波が明らかになるのに対して,早期再分極症候群は左室の前側壁や下壁で起きる異常によって I,V4~V6,II,III,aVFで J波がみられる,という考えである.この概念をサポートする事実として,Brugada症候群と早期再分極症候群の合併家系に,Ca2+チャネルのサブユニットα1C(CACNA1C), β2b(CACNB2b), α2δ(CACN2D1) の遺伝子異常が同定されたこと,Brugada症候群を除外した早期再分極症候群患者にも SCN5A変異が同定されること 399),早期再分極症候群に同定されるKCNJ8変異 S422LがBrugada症候群家系にも同定されたこと 395),などがあげられる.このようにBrugada症候群,早期再分極症候群,J波症候群の疾患概念・遺伝子基盤に関しては,研究者のあいだにもまだ統一した見解が得られておらず,今後の研究による解明が期待される.

VII. Brugada症候群の治療

1.

概論

Brugada症候群の突然死予防に有効な唯一の治療方法は植込み型除細動器(ICD) である.欧米だけでなく,わが国でも心停止蘇生例,自然停止する多形性心室頻拍・心室細動 確認例の再発率は年間 10~17 %であり59,66,341,400,401),このような症例の二次予防に関しては ICDの絶対的適応となる 402-404).しかし,原因不明の失神既往例および無症候性Brugada症候群など,ICDの一次予防については,いまだに一定の見解は得られていない.したがって,Brugada症候群の予後およびリスク層別化はきわめて重要な課題である.現時点ではエビデンスに基づいて,ICDによる突然死予防という利点と,ICD植込みに伴う患者の不利益(植込み合併症とショック作動や誤

作動に対する不安,うつなどのQOLの低下) を十分に比較考慮して,最善と考えられるガイドラインを作成することが臨床的に重要となる.

Brugada症候群は一過性外向きK+電流(Ito) の増大と,Na+電流,Ca2+電流の低下,ATP感受性K+チャネルの活性化,IKs,IKrの抑制および副交感神経活性の上昇などが原因となって,ST上昇および phase 2 reentryによる心室細動の発生が考えられている.したがって,薬物治療は上記の増悪因子を抑制する薬剤を用いて,多形性心室頻拍・心室細動や ICDの頻回作動を予防することが目的となる.しかし,いずれも少数例に対する有効性の報告にとどまっており, Brugada症候群に対する薬物治療は ICDに比較して有効性は不確実なものであり,高レベルのエビデンスもない.しかし,ICD自体は多形性心室頻拍・心室細動 の予防効果を有しないことから,ICD植込み後の多形性心室頻拍・心室細動発作の予防ないし頻回作動に対する薬物療法が必要な場合がある.

VII. Brugada症候群の治療

1.

概論

Page 38: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

38

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

1.1

Brugada症候群の予後

本ガイドラインは 2007年版 405) を踏まえて再度改訂されたものであるが,2007年以降のエビデンスとして,日本の登録研究結果が発表されたことがあげられる 66).1998年のBrugadaらによる 63症例の予後調査では,心停止蘇生例ないし失神既往例では平均 34か月で 34 %,無症候例でも 27 %に心室細動が発症している 400).しかし,2002年のBrugadaらの報告によれば,アメリカを含む 690症例の予後調査での不整脈事故発生率は,心停止蘇生例では平均 54か月で 62 %,失神既往例では平均 26か月で 19 %に対して,無症候例では平均27か月で8 %以下(3.5 %/年) であった 59)(図13).また,2005年の報告では,無症候例の不整脈事故発生率は 1.7 %/年と,さらに発生率は低下している 341).一方,Prioriおよび Eckardtらは不整脈事故発生率がさらに低いことを報告している 61,62).Prioriの報告では 200例の症候性Brugada症候群では平均 33か月で 16 %に対して,無症候例では 1例も不整脈事故を認めていない 61).また,Eckardtらの報告でも心停止蘇生例(24例),失神既往例(65例) の不整脈事故はそれぞれ 17 %,6 %であったが,無症候例(123例) の発生率は 0.8 %と予後は良好であった 62) (図14).鎌倉らによる日本の循環器病委託研究では,タイプ 1群

(245例) および非タイプ 1群(85例) のBrugada症候群,330例が登録された 66).約 4年間の観察期間中におけるタイプ 1群の致死的不整脈事故発生率は,心室細動および心停止蘇生群 45例中 15例(33 %,10.2 %/年),失神群 46例中 1例(2 %,0.6 %/年) および無症候群 154例中 3例(2 %,0.5 %/年) であった.非タイプ 1群に関しては,それぞれ 11例中 4例(36 %:10.6 %/年),21例中 1例(5 %,1.2 %/年),53例中 0例(0 %) とタイプ 1群と比較して予後に差を認めなかった(図4,11㌻).心室細動および心停止蘇生群の年間不整脈事故発生率は欧米の報告と近似したが,失神群の心事故発生率は 1.2 %/年以下と欧米の約 2~9 %/年より低く,無症候群の年間心事故発生率は Prioriや Eckardtらと同様,予後はきわめて良好であった.日本人の失神群で心事故が低い原因としては,欧米の後ろ向き研究に対して,日本では前向き登録研究と登録方法が異なることも一因と考えられる.患者背景や遺伝子多型など,今後も人種差に関してさらなる研究が必要である.

1.2

リスクの層別化

心停止蘇生例および多形性心室頻拍・心室細動既往例以外のBrugada症候群では,突然死予測がきわめて困難である.その層別化として,①タイプ 1型の ST上昇,②心臓電気生理学的検査による多形性心室頻拍・心室細動の誘発 59,375),③失神既往 61),④突然死の家族歴 74),⑤SCN5A変異陽性,⑥Naチャネル遮断薬によるタイプ 1の ST上昇 406),⑦加算平均心電図による遅延電位陽性351,354),⑧右胸部誘導心電図で認められる棘波(fragmented QRS) など,があげられている 81).自然発生の coved型 ST上昇例はタイプ 2,3よりも不整脈事故発生率は高いと考えられている.しかし,日本の

1.0

0.8

0.6

0.4

0.2

0

Free of Events

Months0 100 200 300

Asymptomatic pts

Syncope pts

Sudden Death pts

p=0.00001

Arrhythmic Events

図 13 Brugadaらの調査患者の予後(Brugada J, et al. 200259)より)

Asymptomatic pts

Syncope pts

Sudden Death pts

p=0.0028

p=0.0006

p=0.0039

Free of SD or VF

1.0

0.9

0.8

0.5

0.7

0.6

0 12 24 36 48 60Months Follow-up

123 65 24

108 51 22

734118

432718

191916

6 913

N. of PatientsAsympto.SyncopeSCD

図 14 Eckardtらの調査患者の予後(Eckardt L, et al. 200562)より)

Page 39: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

39

QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

登録研究ではタイプ 1型と非タイプ 1型の予後に有意差は認められず 66),ST上昇波形だけでは必ずしも層別化は困難である.タイプ 1型 ST上昇を誘発,増悪させる試みとして,右胸部誘導の1~2肋間上での心電図記録,Naチャネル遮断薬投与,糖負荷試験,満腹試験などがある.心電図所見では,S波形の特徴も指摘されている 407).

Brugadaらは無症候例の臨床心臓電気生理学的検査で多形性心室頻拍・心室細動誘発を予後予測因子として強調している 59,375).すなわち,心停止蘇生例では誘発率は 83 %,失神既往例で 63 %,無症候例で 33 %であり,誘発された症例では不整脈事故発生率は 28 %と高く,非誘発例は 2 %にすぎなかった.一方,日本のデータやメタ解析結果では,多形性心室頻拍・心室細動誘発性と不整脈事故発生のあいだに相関を認めない 66,401,408).とくに,最近の Prioriらによる PRELUDE試験では,多形性心室頻拍・心室細動誘発性と不整脈事故発生率を前向きに検討している 378).この結果でも,誘発性と不整脈事故発生のあいだには相関を認めなかった.本ガイドラインでは多形性心室頻拍・心室細動誘発性を一つの危険因子として適用しているが,今後のガイドラインでは再検討が必要と考えられる 409).

Prioriらは,以前から自然発生のタイプ 1型心電図とともに失神の既往が最も予後不良を示す因子としているが61),今回の研究結果でも双方の合併によるハザード比は4.2倍であった.また,新たな危険因子として心室有効不応期200 msec未満(ハザード比:3.9倍) および fragmented QRS(ハザード比:4.9倍) を報告している.さらに,鎌倉らは下側壁領域で早期再分極所見(J波) を認める症例のハザード比は 2.7倍であると報告しており 66),fragmented QRSとともに,今後も新たなリスク層別化に関して検討する必要がある.突然死の家族歴については,予後予測因子となるか否か

は議論が分かれている.2006年のACC/AHAガイドラインやGehiらによるメタ解析結果では有意差を認めていない 402,408).しかし,日本の登録研究では,45歳未満の突然死家族歴を有する症例のハザード比は 3.3倍であり,ICD適応を考慮する際の重要な因子と考えられる 66)(表16).

2.

薬物治療

Brugada症候群の突然死予防に有効な治療手段は ICDである.しかしすべてのBrugada症候群に ICDがただちに植え込めるわけではなく,薬物治療が必要になる場合もある.また ICD装着後の頻回作動例には薬物による発作予防が必要になる.

2.1

急性期の心室細動(electrical storm) の予防

欧米のガイドラインでは, イソプロテレノールを 0.01μg/kg/minから開始し,心電図変化を確認しながら投与量を調節することが推奨されている 92,230) (レベルC).わが国からの報告では,イソプロテレノール低用量 1~2 μgをボーラス投与し,その後0.15 μg/min持続点滴,または0.003~0.006 μg/kg/min持続点滴が有効である 410,411) .

2.2

慢性期の心室細動の予防

2.2.1

キニジン欧米からの報告では,発作予防のためには大量投与

1400 mg/dayが必要とされるが,わが国での通常の投与

2.

薬物治療

表 16 日本人の Brugada症候群における予後予測因子

Univariate Analysis Multivariate Analysis

HR 95%CI P Value HR 95% CI P Value

Prior VF FH of SCD Inferolateral ER AFSyncopeSp. type1 VF induc.(apex/OT) VF induc.(apex)

21.466.35 4.14 2.15 0.352.31 1.81 1.58

8.00‒57.532.84‒14.19 1.71‒10.000.92‒5.03 0.08‒1.09 0.67‒7.940.72‒4.70 0.60‒4.11

< 0.0001 < 0.0001 0.001 0.07 0.150.180.200.34

17.483.28 2.66 0.87

6.22‒ 49.111.42‒7.60 1.06‒6.71 0.36‒2.09

< 0.00010.0050.030.75

Male NA

(Kamakura S, et al. 200966)より)

Page 40: QT 症候群の診療にあることが多い.一方,薬物,電解質異常,その他の原因 などで生じたものが二次性qt 延長症候群である(表1).

40

循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)

量は 300~600 mg/dayである 95,96,230,412) .(レベルC) 2.2.2

シロスタゾールホスホジエステラーゼ阻害薬は ICaを増加させ,頻脈による Itoを減少させ発作を予防する.200 mg/dayの投与で発作が抑制できると報告されている 413).2.2.3

ベプリジルCa拮抗薬であるが Itoと複数のK+チャネルを含むマルチチャネル遮断薬であり発作を予防する.通常 200 mg/dayの投与で有効であるが 414),SCN5A変異を有する患者では 100 mg/dayの投与でも有効との報告もある 415).その他,ソタロール 416),ジソピラミド 417),デノパミン

411) が有効であったとする報告があるが,いずれもきわめて少数例での報告であり十分なエビデンスではない.

3.

非薬物治療

Brugada型心電図に加えて心停止蘇生および多形性心室頻拍・心室細動確認は単独の予後予測因子であり,ICDの絶対的適応である.しかし,それ以外の予後予測因子についてはいまだ異論が多い.2005年のHRS/EHRAコンセンサスカンファレンスでは自然発生タイプ 1の ST上昇に加えて失神既往例は ICD適応クラス Iとし,無症候性では突然死の家族歴と心臓電気生理学的検査による多形性心室頻拍・心室細動誘発例がクラス IIaとされていたが 74),2008年のACC/AHA/HRSの心臓デバイス治療に関するガイドラインでは,失神既往のBrugada症候群はクラスIIaとされた 263a).一方,わが国でも,2001年の『不整脈非薬物治療ガイドライン』では失神既往で多形性心室頻拍・心室細動誘発例をクラス Iとしたが,その後の調査ではそのショック作動率はきわめて低く,2006年の改訂版からはクラス IIaと変更されている 403,418).これまで,ACC/AHAガイドラインでもメタ解析でも,失神既往例および無症候性Brugada症候群の突然死予測因子として,Brugada型心電図に加えて単一の因子だけでは高いレベルのエビデンスをもって確立されたものはない.一方では,発現頻度としてまれであったとしても,成人の突然死は社会的意義が大きい.したがって,現時点では失神既往例および無症候性Brugada症候群に対するICDの一次予防についてはタイプ 1の ST上昇に加えて,①失神の既往,②突然死の家族歴,③心臓電気生理学的検査による多形性心室頻拍・心室細動の誘発のうち,2項目以

上を満たした場合をクラス IIaとすることが妥当と考えられる.これまでの本学会の 2つのガイドラインでは,②を重要視して,それを満たさない① +③をクラス IIbと分類していたが,本ガイドラインでは,3項目を同一とみなしてクラス IIaとしている.ただし,この妥当性については,今後の検証が必要である.

Brugada症候群は明らかな器質的心疾患を認めず,特徴的な心電図所見を有し,心室細動による心停止発作を認める症候群であり,現在のところ突然死予防に唯一の有効な治療法は ICD である.しかし,Brugada症候群として考えられる症例のなかには,心停止発作蘇生例から無症候例まで多くのサブタイプを認め,すべての例に ICD植え込みがなされるべきであるとは考えられない.実際,多施設共同研究で ICDを植え込んだBrugada症候群患者(症候性,無症候性を含む) の適切作動は年間 2.6 %であったのに対し,不適切作動を含む ICD関連合併症の発生率は年間 8.9 %にも及んでいた 419).現時点では病状を層別化し,致死的な心停止発作が生じる可能性の高い場合に対して ICD植え込みが選択される 59-62,74,84,420).表 17に ICD植え込みの適応のクラス別を示す.また,特殊例としては,心室細動のトリガーとなる心室期外収縮に対してカテーテルアブレーションが行われることもある 104,421-425).トリガーとなる心室期外収縮の起源の多くは右室流出路であり,心外膜側を広範にアブレーションすることでトリガーの消失だけでなく,前胸部胸部誘導の心電図も正常化したとの報告もある 104).しかし,その効果と長期予後に関してはいまだ不明である.

3.

非薬物治療

表 17 ICD植え込みの適応

クラス I ・心停止蘇生例.・自然停止する多形性心室頻拍・心室細動が確認されている場合.

クラス IIa ・Brugada型心電図(coved型)を有する例*で,以下の 3項目のうち,2項目以上を満たす場合.  ①失神の既往.  ②突然死の家族歴.  ③心臓電気生理学的検査で心室細動が誘発され   る場合.

クラス IIb ・Brugada型心電図(coved型)を有する例*で,上記の 3項目のうち,1項目のみを満たす場合.

*:薬物負荷,1肋間上の心電図記録で認めた場合も含む.

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QT延長症候群(先天性・二次性)と Brugada症候群の診療に 関するガイドライン(2012年改訂版)

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