世界の気候区分 -...
TRANSCRIPT
世界の気候区分
地球のエネルギー収支と大気の大循環
ケッペンとアリソフの気候区分
1/37
気候区分の方法
主要な気候要素である気温と降水量の組み合わせで表現.
世界の気候を区分するためには気象データが必要.しかし,気象観測データの観測地点は少なく,平均化できるほど長期のデータも少ない.
気象データ以外の要素を利用して,気候を区分する必要がある.
ケッペンの気候区分(p24)
植生の分布を利用して,気候の分布を把握.
植生の分布は“熱”と“水”の長期的な平均値を表す
ケッペンの分類の考え方①
地球上を赤道から極に向かってA~Eの5つに区分.
ACD:樹木気候
BE:無樹木気候
Bは熱は充分だが,水が足りない乾燥地域(BW,BS)
Eは熱が足りない極地気候(EF,ET)
Aは常緑広葉樹(熱帯林)が生えている地域
Cは落葉広葉樹(温帯林)が生えている地域
Dは常緑針葉樹(冷帯林)が生えている地域
ケッペンの分類の考え方②
樹木気候(ACD)については,小文字で雨が降る時期を付ける.
f:一年中降水がある地域
s:夏に乾期がある
w:冬に乾期がある
CとDに関しては,最高気温,最低気温によって,a,b
,c,dの4地域に区分される.
南西日本:Cfa
温帯(落葉広葉樹林帯)にあり,年中雨が降る
東北日本:Dfb
冷帯(常緑針葉樹林帯)にあり,年中雨が降る?
実際の日本は?
実際の日本列島の植生は
南西日本:常緑広葉樹林(熱帯~亜熱帯)
東北日本:落葉広葉樹林(温帯)
ケッペンの気候区分は・・・
単純な二つの指標によって機械的に区分できることから,わかりやすく便利.
それぞれの境界値は経験的に求めたので,現実と一致しない地域もある(たとえば日本).
ケッペンの気候区分の問題点
本質的には「植生景観区分」であり,「気候区分」ではない.
気候以外の指標で気候を区分しているため,境界値に気候学的な意味が存在しない.
ケッペンの気候区分は長らく日本の中等教育で愛用されている.
シンプルで規則的
問題を作る側としては便利な内容.
気候の成因論による気候区分
代換指標による区分ではなく,気候の本質から気候区分を行おうとする視点が出てくる.
代表的なものがアリソフによる成因論的気候区分
アリソフの気候区分を理解するためには,大気の大循環モデルを理解する必要がある.
大気の大循環モデル 地球上の大気を媒介にした熱の移動を理解するためのモデル.
大気大循環モデルⅠ
前提 地球に入ってくる熱は,すべて太陽から(地球外から)もたらされる
地球に入ってきた熱は,すべて何らかの形で地球外に放出される(熱収支の均衡)
事実 地球に入ってくる熱量は,赤道付近で大きく,両極で小さい.(p33,図4.2)
地球から放出される熱量は,入力される熱量の赤道と極の差より,緯度による差が小さい.
緯度毎の熱収支
大気大循環モデルⅡ
考察
地球上の熱量は,なんらかの形で低緯度から高緯度に向かって輸送されている.
輸送しているものが「大気の循環」と「海洋の循環」
貿易風,偏西風
暖流,寒流
大気大循環モデルⅢ
気団の種類
赤道気団:E
熱帯気団:T
寒帯気団:P
極気団:A
大気のブロック(気団)の性質が,その地域の気候を決定.
気団と気団の境界が前線
E-E:熱帯収束帯(ITC)
E-T:熱帯前線
T-P:寒帯前線
P-A:極前線
E
T
P
A
大気大循環モデルⅣ
赤道地域で取り込まれた熱量は,この大気の循環によって顕熱,潜熱(水蒸気)として高緯度側に輸送される.
このうち,潜熱として輸送される熱量の寄与が大きい.低緯度の海で蒸発した水蒸気が高緯度で雨として降るときに,大量の凝結熱を放出する.(例:台風)
大気の大循環は熱の大循環として理解できる.
大気大循環モデルと気候
顕熱・潜熱(降水)の配置,すなわち気団の配置が気候を決める.
それぞれの地域の気候は,どの気団に覆われているかによって異なる.
季節変化(太陽高度の変化)によって,気団の支配地域が変化する.
アリソフの気候区分(p29)
アリソフは気団の支配地域の季節変化によって,地球上を7つの地域に区分した.
1:一年中 赤道気団に覆われる(EE)
2:夏は赤道気団,冬は熱帯気団に覆われる(ET)
3:一年中 熱帯気団に覆われる(TT)
4:夏は熱帯気団,冬は寒帯気団に覆われる(TP)
5:一年中 寒帯気団に覆われる(PP)
6:夏は寒帯気団,冬は極気団に覆われる(PA)
7:一年中 極気団に覆われる(AA)
アリソフの区分による日本の気候
南西日本:4帯(TP)夏は熱帯気団に覆われ,冬は寒帯気団に覆われる.
東北日本~北海道:5帯(PP)一年中,寒帯気団に覆われる.
4帯は気団の移動に伴って「寒帯前線」が通過する.この前線が日本にとっては「梅雨前線」「秋雨前線」.
寒帯前線の北上限界は東北北部.北海道には梅雨がない.
日本の景観・文化と気候区分
日本の気候は,アリソフの区分に示されるように,「夏に熱帯になる」南西日本と,「一年中冷涼な」東北日本に区分される.
日本は「温帯の国」ではなく「夏には熱帯」なのだということを知っていて欲しい.
日本の植生景観は,この気候区分とも対応する.
南西日本:照葉樹林帯・・・常緑広葉樹
東北日本:ブナ・ナラ林帯・・・落葉広葉樹林
植生の違いは文化の違いをも産む.
照葉樹林文化とブナ帯文化