日本サッカー界における少年サッカーの役割と その...

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平成 26 12 6 平成 26 年度卒業論文 日本サッカー界における少年サッカーの役割と その発展-日本と海外の育成システムの比較か ら人間教育と技術力向上を考える- 国士舘大学文学部教育学科初等教育専攻 11-5c038 青柳 雄大 指導教員 河野 寛 先生

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平成 26 年 12 月 6 日

平成 26 年度卒業論文

日本サッカー界における少年サッカーの役割と

その発展-日本と海外の育成システムの比較か

ら人間教育と技術力向上を考える-

国士舘大学文学部教育学科初等教育専攻

11-5c038

青柳 雄大

指導教員

河野 寛 先生

概要

少年サッカーをはじめとする日本サッカーの現状として、世界で戦えるようなレベルに

なりつつあるが、2014 ブラジル W 杯のように未だ結果が出ているとは言えないであろう。

海外の育成機関と日本サッカーの育成機関との比較・検討を行うことで、日本の少年サ

ッカーをはじめとした育成システムについて、サッカーの技術だけではなく人間教育とい

う観点からどういった位置づけをすることが必要なのかを提案することを本研究では目的

としている。

日本、ドイツ、オランダ、FC バルセロナの育成機関の比較から考察した結果、日本サ

ッカーの今後やっていくべきことが 3 点あげられる。1 点目は、トレセン制度の見直しで

ある。2 点目は、育成機関・人間教育の場の数の充実である。3 点目は育成期の選手達の

試合の年間のシーズン化である。しかし、日本サッカーがこれらを全くしていないわけで

はない。今後海外サッカーと渡り合えるようになるようにするためにトレセン制度の見直

しによる少年サッカーからの選手のための環境を整えること、そのための指導者の充実、

サッカーに限らず、一人の人間として生きていくための教育を受けさせること(サッカー

だけではない人間教育が)重要である。また、少年サッカーをはじめとした育成期からの

シーズン化により、育成期の選手がサッカーに集中できるようにすることで少年サッカー

からのレベルアップを図ることができると考えられる。

目次

はじめに ・・・1

第 1 章 日本サッカーの育成 ・・・3

第 1 節 育成制度について ・・・3

第 2 節 育成期の強化策 ・・・4

第 3 節 日本が進むべき方向性 Japan's Way ・・・9

第 4 節 世界規準 ・・・10

第 5 節 日本サッカー強化のために成されていること ・・・11

第 6 節 ライセンス ・・・13

第 2 章 2014W 杯覇者ドイツの育成 ・・・15

第 1 節 ドイツサッカー連盟組織 ・・・15

第 2 節 DFB の育成システム ・・・15

第 3 節 ドイツの人間教育 ・・・20

第 3 章 世界独自の育成を行っているオランダ ・・・22

第 1 節 オランダのサッカー ・・・22

第 2 節 指導の充実を図る ・・・22

第 3 節 オランダの幾瀬組織 ・・・23

第 4 節 アヤックス ・・・25

第 5 節 家庭とクラブと学校の連携による人間教育 ・・・27

第 6 節 アヤックスの革新 ・・・29

第 4 章 FC バルセロナの世界最高の選手育成 ・・・31

第 1 節 バルセロナの哲学 ・・・31

第 2 節 ラ・マシア ・・・32

第 3 節 ”サッカーを読む”こと ・・・34

第 4 節 バルセロナを支える指導者 ・・・35

第 5 節 カンテラでの人間教育 ・・・36

第 6 節 バルセロナが行っているサッカー普及:バルセロナ・アカデミー ・・・39

第 5 章 考察 ・・・41

第 1 節 各国、チームの特徴 ・・・41

第 2 節 日本と海外の違いについて ・・・42

第 6 章 結論 ・・・46

おわりに ・・・48

参考文献 ・・・49

謝辞 ・・・50

1

はじめに

1921 年に大日本蹴球協会が設立されてから 93 年(現在は日本サッカー協会。以下 JFA)、

日本サッカーリーグ(JSL)開幕や 2002 年日韓 W 杯同時開催など日本サッカーは国内外

でも注目されるほどの発展を成してきた。最近では、1988 年以降 W 杯本選の出場を逃し

たことがなく、サッカー先進国である海外のチームに日本のチームから移籍をして活躍し

ている選手が多くなってきている。しかしながら、発展を成してきた日本サッカーでもど

うしても越えられていない壁がある。それは W 杯をはじめ世界規模での大会で大きな結果

を出せていないことである。今年度行われたブラジル W 杯でもメディアや我々の予想を大

きく外れる、予選敗退という残念な結果に終わってしまった。なぜ勝てなかったのか。今

後日本サッカーが他国との試合をしていくなかで何を準備しておくべきなのか。JFA が掲

げる 2050 年 W 杯優勝を実現させるために今後何に重点を置くべきなのか。

少年サッカー等のジュニアやユース年代でも同様のことが言える。少年サッカーの現状

として日本の少年サッカーの技術はヨーロッパのクラブチームのユースよりも優れている

選手が多いと言われている。海外の指導者が言うには、日本のジュニア年代のサッカーは、

海外のクラブの選手と比べても、なんら遜色はない。しかし、日本サッカーは勝てないと

言われている。技術もあって、海外のクラブチームとも渡り合える日本のサッカーが勝て

ない原因とは一体何であろうか。また、成長するにつれて、海外のサッカーと差が生まれ

てしまう原因は果たして何であろうか。これらのことを深く議論することで、今後の日本

サッカーの発展に少しでも貢献できるのではないかと考える。そこで、日本が今後追い抜

いていこうとしているサッカー強豪国と言われる国のサッカーの強さの根幹にあるものと

は何か、また日本サッカーとの違いは何なのか、それらの疑問から本研究がスタートした。

まず、サッカー強豪国の強さの根幹として 4 つの仮説が立てられると考えられる。1 点

目は強豪国にはそれらの国独自のサッカーがあることではないかと考えられる。イタリア

サッカーのカテナチオやオランダサッカーのトータル・フットボールといったその国のサ

ッカースタイルがあるが、日本にはその独自のスタイルが未だ明確ではない。2 点目に、

日本はスペイン、イタリアやイングランドといった、国民のサッカーに対して情熱的な国

に比べ、日本はサッカー以外のスポーツにも広く力を入れているイメージが強く、その結

果サッカーを取り巻く環境が強豪国に比べて充実していないことが要因の 1 つではないか

と考えられる。3 点目は、海外のサッカーでは育成機関が充実しており、幼い時からの自

チームの将来を担うような子どもを育成しているからではないだろうか。それらがうまく

2

機能した結果その国の強みへとつながっていると考えられる。4 点目は、果たしてサッカ

ーについての細かい技術を指導するだけで、世界で戦える人材の育成というのは成される

のか。というものである。サッカーが上手ければ他の人間性や普段の生活態度は、どうで

もいいというわけではないだろう。強豪国やクラブには、そういったサッカーの技術だけ

を向上させるだけではない何かがあると私は考える。

そこで本研究では特に、3 点目の育成機関の充実と 4 点目のサッカーの技術だけではな

い、人間教育に着目して今年度 W 杯優勝国のドイツ、メッシやイニエスタといった世界で

も有名なサッカー選手を幼少期から育成していて現在でも育成機関が充実していることで

有名な FC バルセロナ、バルセロナ FC の育成機関の大元を創ったとされるヨハン・クラ

イフや元バルセロナ監督で 2 度の UEFA チャンピオンズリーグ制覇を果たしたジョゼッ

プ・グアルディオラの出身国であるオランダを取り上げることとした。

以上の 3 か国の育成機関と日本サッカーの育成機関との比較・検討を行うことで、子ど

もを育成していく中でサッカーの技術だけではなく、人間教育という観点から日本の少年

サッカーがどういった位置づけをすることが必要なのかを提案する。

3

第 1 章 日本サッカーの育成

第 1 節 育成制度について

①育成のコンセプト

「Players First!」(プレイヤーを第一に考える)日々いろいろな次元で何かを判断する

場合、あるいは改革等で困難なチャレンジが生じる場合、そのときに必ず立ち返るべき言

葉として掲げている。いろいろな問題や困難はある中で子ども達にとって何が一番良いの

か、という基準で物事を考えて、乗り越えていけるようにしていくことを考えている。

②トレセン制度(ナショナルトレーニングセンター制度)

日本のユース育成の中心的役割を果たしているのが「トレセン制度」である。世界で闘

うためには、「個」を高めていかなくてはならない。レベルの高い「個」が自分のチームで

楽にプレーができてしまって、ぬるま湯のような環境の中で刺激なく悪い習慣をつけてし

まうことを避けるために、レベルの高い「個」同士を集めて、良い環境、良い指導を与え

ること、レベルの高い者同士が互いに刺激となる状況をつくることがトレセンの目的であ

る。図 1 は、年代毎の日本型トレセン制度の全体像を表している。

③ナショナルトレセン概要

「トレセン制度」の中核を形成する「ナショナルトレセン」は、各地域から選抜された

選手たちにより良いトレーニング環境を与える強化育成の場である。1996 年度より情報発

信・共有化の機能を高めるために大会形式から研修会形式に変更し、「世界」を基準に抽出

された「日本サッカーの課題」から各年代に応じたテーマを設定し、その課題を克服する

ためのトレーニングやレクチャーを行っている。また、各地域トレセン指導スタッフや、

並行開催される指導者講習会に参加する指導者へ、テーマ・トレーニングキーファクター

4

を明確に示すことにより、各地域・各都道府県トレセンの選手たち、グラスルーツのチー

ムの選手たちにも情報・知識が伝達されていく。「ナショナルトレセン」を発信源として、

強化・育成のベースが構築されている。図 2 は、ナショナルトレセンを中心とした情報の

流れを表している。

④年齢に即したトレーニングが必要

育成年代において、その年齢で選手は何をトレーニングすべきなのかは変化してくる。し

たがって、その年齢に即したトレーニング、指導を行っていく必要がある (図 3) 。

第 2 節 育成期の強化策

①国内の「勝った」「負けた」ではなく、常に世界をスタンダードに

JFA 技術委員会では、10 年ほど前から「世界を基準とした強化策の推進」を掲げている。

世界という基準を明確に持ち、その中で闘っていくために必要なことは何か、という観点

を常に失わずに、日々の強化育成を進めていくことが不可欠であると JFA では考えている。

そして、今、JFA は世界トップ 10 を目指している。しかし、当然のことながら漠然と「目

指す」と口にすれば目指すことになるかというと、そうはいかない。具体的にアプローチ

していかなくては、決して達成に近づいてはいかないのである。そのため以前から、日本

5

が出ていようがいまいが各年代の世界大会を視察し、テクニカルレポートを作成するよう

にしている。それは、図 4、5 のサイクルを実際に推進させる非常に重要な活動である。

この活動は単に大会の報告をすることだけではない。報告から課題を抽出し、その内容

にしたがって課題のシナリオを作成、そして各年代の日本代表チーム・ユース育成(トレ

セン)・指導者養成といったところで必要な措置をとる。その後課題の克服を試み、そして

再び各カテゴリーの世界大会にチャレンジするというサイクルである。すなわち、課題を

見出し、それを解決するためのシナリオを作成し、それを必要なところに伝えていき実施

してもらうことがなければ、このスタディの意味はない。その内容を日本サッカー界全体

に頒布して、今後の強化育成に関する情報や方向性を共有化し、日本全体のレベルアップ

を図っていくことを目指している(図 4)。

それには、テクニカルスタディの内容をレポートにまとめ、それ自体を発信する。それ

ばかりでなく、それを短期的なものは代表チームへ、中期的なものはユース育成、そして

指導者養成へ、長期的なものはグラスルーツへと、さまざまな技術委員会の施策に反映さ

せる(図 5)。例えば指導指針の作成、ナショナルトレセンのテーマや内容の設定、指導者

養成の内容検討、各プロジェクトの活動、フットボールカンファレンス・テクニカルニュ

ースでの発信等、さまざまな形で活用されている。

6

世界のサッカーは刻々と発展し続けている。その傾向を常に追ってキャッチアップして

いくことが、現代のサッカーで世界と闘っていく上で不可欠ある。そのための試みとして、

テクニカルスタディグループ(TSG)を編成し、動向を分析してテクニカルレポートを作

成し、それに基づいて強化を進めていくことが、世界でも重視され世界のトップレベルの

サッカーの常識となっている。

国際サッカー連盟(FIFA)でも 1966 年より、FIFA 主催の大会にエキスパートによっ

てテクニカルスタディグループを編成し、大会前の各チームの準備の取材、大会開催時の

各試合に対する即時のコメント、マンオブザマッチ等の決定の他、テクニカルレポートを

作成している。その役割は、サッカーの変化の動向を分析し、戦術面の発展を各国協会に

伝達し、世界中の指導者が日々のトレーニングに活用できるようにするというものである。

また、サッカーそのものが常に発展し続けるように検討し見解を示すのもこの FIFA の

TSG なのである。

JFA では、1998 年の FIFA ワールドカップ、2002 年の自国開催の FIFA ワールドカッ

プからこの活動を本格化させた。現在では A 代表の大会に限らずオリンピック、U-20、

U-17、女子などの大会、また世界大会だけでなくアジアでの大会、あるいはそれら世界大

会から得られた見解と比較すべき日本の現状はどうなのか、といった観点から、ユース各

年代の国内の大会のテクニカルスタディも実施するようにしている。

②三位一体代表強化、ユース育成、指導者養成+普及の総合的アプローチ"世界"と対等に闘

うために

日本サッカー協会技術委員会では、「日本が世界のファーストランクの国々と対等に闘

う力をつけるためには何をすればよいか」という命題のもと、日本サッカーの強化構想と

して「三位一体の強化策」を掲げてきた。「三位一体の強化策」とは、①代表強化、②ユー

7

ス(若年層)育成、③指導者養成という 3 つの部門が同じ知識・情報を持ち、より密接な

関係を保ちながら、選手の強化育成と日本サッカーのレベルアップを図るというシステム

である(図 6)。

各年代のワールドカップ等で分析・評価・抽出した「日本サッカーの課題」は、その 3

つの部門を通じ、日本サッカー界全体に展開されていく。三位一体の言葉の通り、それぞ

れは密接にかかわりあっており、日本サッカーを強化しようと思えば、それらすべてを統

合して向上させていく必要がある。代表の強化は、代表となった選手を集めての短期の強

化のみでない。強化は、日々の所属チームでのトレーニングによってなされるものである。

また、1 人の選手は大人になったら突然うまく強くなるものではなく、ユース年代からの

育成の積み重ねによって強化されていくものである。

ユース育成を怠っている国は長続きしないということは、世界を見ても明らかであり、

トップレベルの強豪国あるいはトップクラブは、ユース育成を非常に重要視しているとこ

ろばかりである。日本では、ナショナルトレセンを頂点とするトレセン制度によって、日

本全体のユース育成の枠組を整え、さらにエリートプログラム、JFA アカデミー等によっ

てレベルアップを図っている。そして、そういった選手たちを日々指導するのは指導者で

あり、質の高い選手の育成は、指導者による日々の指導のレベルが高くなくしてはあり得

ない。つまりは良いユース育成をしようと思えば、指導者の質の向上が不可欠であるとい

うことである。そのために、より多くの、より質の高い指導者の養成を目指し、コースの

増設、再教育の充実を図っている。

③グラスルーツなくして代表の強化はない

2002FIFA W 杯以降、従来のこの構想の中に欠けていた概念である普及の重要性に着目

8

し、「三位一体+普及」と修正した(図 7)。JFA は、キッズプログラムをはじめとしたさ

まざまな取り組みを開始している。キッズをはじめとするサッカーを愛する多くのサッカ

ーファミリーの存在あってこそ、その国のサッカーは厚くなり、総合力がついていく。

以上のように、日本サッカー協会技術委員会が掲げる「三位一体+普及」とは、それぞ

れが日本サッカーの強化・普及のために、一体となって同じ方向を向いて、短・中・長期

的取り組みをそれぞれに推進していくことである。

④長期的視野に立った選手の育成

「長期的視野に立った選手の育成」は、JFA がユース育成に掲げている非常に重要な考

え方である。目先のその時々の勝利ではなく、一人の選手が自立期においていかに大きく

成長するのかを第一の目的とする。

人間の器官・機能の発達速度は一様ではなく、子どもは大人のミニチュアではない。あ

る課題に対して吸収しやすい時期としにくい時期がある。最も吸収しやすい時期にその課

題を与えていくことが、その選手を最終的に一番大きく成長させることにつながると JFA

では考えている。そのために、「一貫指導」の必要性をうたっている。これは何も、一貫校

や一貫した複数のカテゴリーを含むクラブなどでなくてはできないという意味ではない。

日本の指導者全体でこの考え方を共有し、種別を越えて選手がチームや指導者が移り変わ

っていく。その中にあっても、全員がその選手の将来、全体像を意識してそれぞれの担当

の年代を指導するという「考え方」である。

大きな画、全体像を完成させていくために、一人の選手が成長していく過程で、多くの

指導者がかかわりリレーをしていく。それぞれの年代がその年代に適した形で充実してい

るほど、最終的に大きく輝くことができると考えられている。そのためには、発育発達の

年代別の心身の特徴を知っておくことが大切で、指導者養成にも必須の内容として盛り込

まれている。発育発達上の特徴があるからこそ、この考え方が必要になる。勉強し、頭に

9

は入っていても、日々ある特定のカテゴリーのチームを指導していく中にあっては、なか

なか実践しがたいものであるだろう。

JFA 技術委員会は、各年代別の指導指針を作成し提示している。2000 年までは一つの

ものを出していたが、2004 年には、U-6 から U-16 まで、2 歳刻みの指導ガイドラインと

指導指針を出している。それは、年代に応じてそのときにすべきことをするという点を強

調したかったからである。その一方で、全体像を知ってほしいと考えている。全体像を知

った上で、担当の年代の指導にあたるのが理想と JFA は考えている。全体像の中の部分と

しての特定の一段階としてのその年代という認識を持つことが、長期的視野にたった選手

の育成という考え方を JFA は持っている。

第 3 節 日本が進むべき方向性 Japan's Way

日本は世界のサッカーの発展傾向を見続け、海外の強豪から多くを学びながら、自国の

システムを整えて発展を遂げてきた。世界の強豪国を真似たり、相手の特徴を受けて対応

したりすることで戦わざるを得ない時代もあったが、世界トップ 10 を目指すため、世界

に打って出ていくにはそれだけでは不可能である。国内の勝った負けたを越えて、日本が

世界のトップに追い付き追い越すことを目指していくためには、今後も世界のサッカーの

発展傾向を見続け、また学び続けていく必要がある。そして強豪のコピーをするのではな

く、日本の良さを生かした日本人らしいサッカーを追求し、確立する必要があると考えら

れる。

日本には日本の特徴があり、体格やパワーで勝るわけではないが、技術力(足首の柔軟

性等)、俊敏性、組織力、勤勉性、粘り強さ等、またフェアであることが FIFA テクニカル

レポート等でも認められている日本の特徴がある。その特徴を生かした日本人らしいサッ

カーのイメージを体現したのが、2011 年ワールドカップで体格やパワーで勝るアメリカや

ドイツを相手に戦ったなでしこ JAPAN のサッカーであると考えられる。また、日本の特

徴がチームだけではなく、選手も認められ、男女ともヨーロッパの強豪クラブで活躍する

ようになってきている。

Japan's Way とは、特定のチーム戦術、ゲーム戦術を指す言葉ではない。足りないもの

は高める努力をしつつも、世界基準よりも勝る日本人のストロングポイントをさらに伸ば

していき、それを活かして日本人らしいスタイルをもって戦っていくことである。それは

日本人の良さを活かしたサッカーを目指すという考え方そのものであり、イメージの共有

10

のための言葉であると考えられる。そしてそのイメージを共有し、そのための準備となる

「基本」、育成年代であればこそ身につけられるテクニック(技術+判断)、持久力(運動

量)、攻守に関わり続ける個人戦術を取得させることを育成年代の幹として取り組んでいる。

第 4 節 世界基準

①世界に目を向ける

スポーツ界は世界に眼を向けている。特にサッカーは、世界のスポーツであり実に多く

の国で行われている。日本代表はその中で、世界のトップ 10 を目指している。日本を代

表して世界と対峙する機会を持ち、「世界に対する日本」を考えている。したがって、ドメ

スティックな基準、自分の周辺、あるいは日本国内の「勝った」「負けた」ではなく、常に

世界基準を視野に入れていかなくてはならない。国内の日常のレベルで満足していては、

世界には決して追いつくことはできない。したがって、JFA のエリート教育の目標となる

基準は、「世界基準」である。「世界基準」で日本をリードし、サッカーのみならず、広く

スポーツ界や社会全体に発信できるトータルなリーダーシップを備えた人材の育成を目指

している。

②「ボトムアップ」と「プルアップ」

さまざまな世界でそのレベルを上げるときに「ボトムアップ」と「プルアップ」がある。

ボトムアップは平等主義で行う教育のように、全体のレベルを上げることに大いに役立つ。

プルアップはある才能のある子どもたちのレベルを上げることによって、最終的に全体の

レベルを引き上げることである。集団のレベルアップには、その両方が必要である。残念

ながら、日本には、まだ世界を目指すための両方の教育のシステムが欠けていると考えら

れる。

JFA はしっかりと教育のシステムがなされていれば、仮に後から才能を開花させる選手

がいたとしても、より高い基準をベースとし目標とすることで、充分にその差は埋めるこ

とができると考えているのである。JFA は世界のトップ 10、ひいては世界のトップを目指

している。これは、後天的な努力のみで達成されるものではない。先天的な能力のある者

に良い環境を与え、本人が努力してはじめて育っていくものなのである。世界のトップ 10

を目指すには、今までと同じ方法では間違いなく追いつくことは不可能であると JFA は考

えている(図 8)。

11

第 5 節 日本サッカー強化のために成されていること

①アカデミーの概要

日本サッカーが世界トップ 10 に入るための事業として挙げられるのが JFA アカデミー

福島、熊本宇城、堺が挙げられる。その中の JFA アカデミー福島の例を挙げる。JFA アカ

デミー福島は、2006 年(平成 18 年)4 月 8 日に開校された。JFA アカデミー福島では、

JFA が福島県・広野町・楢葉町・富岡町と連携して推進する中学・高校の 6 年間を対象と

したエリート教育機関・養成システムである。サッカー選手のエリート養成において 30

年以上の歴史を持つフランスのクレールフォンテーヌ国立研究所(INF)をモデルに作ら

れている。

②アカデミーでの人間教育

アカデミー生は J ヴィレッジ近郊に建てられた専用の寮に寄宿しながら地元の公立中

学・高校と提携して、6 年間の連携型一貫教育して学校教育を受ける。また、アカデミー

では、ピッチ外での人間的教育にも取り組んでいて、各種の教育を受ける。

一つ目が学習プログラムと呼ばれるものである。これは、学習環境の充実を図り、それ

ぞれの進路実現を図るものである。英会話、公文式学習、東進ハイスクール在宅受講コー

スがあり、内容は以下のとおりである。

・英会話

世界で活躍できる人材の育成の一環として導入されている。少人数制で会話の機械を増

やすことにより海外遠征など、他国選手との交流時に活用できるように取り組んでいる。

・公文式学習

一人ひとりの能力に応じた教材による学習のプログラム。主に数学的学習をしている。

12

日々の学習に「自学自習」形式で取り組み、自ら学習する意欲や集中力を高める。

・東進ハイスクール在宅受講コース

学力の向上、さらに大学受験対策としての高校対象のプログラム。インターネットに

より在宅(寮)にて受講することができ、多数の講座から選択する個別カリキュラムにて

学習に取り組む。

二つ目に実習プログラムと呼ばれるものである。これは、サッカー以外の活動を通して

社会に出たときに生きていくために必要な知識や情緒、能力といったものを身に着けさせ

るものである。代表的なものでコミュニケーションスキル、ボールパーソン、マナーセミ

ナー、労作体験等があり、内容は以下のとおりである。

・コミュニケーションスキル

日常での他社との会話に生かすべく、取り組んでいる。「聞く・話す・読む・書く」の

言語のトレーニングを通して、論理的に組立てる思考力や分析力、人前で話す能力や論

議をするための能力を育てる。

・ボールパーソン

多くのスタッフの支えにより試合が運営されていることを知る。そのために、SAMURAI

BLUE 日本代表やなでしこジャパンなどの国際試合で、試合運営サポートする役割を担

う。また、代表選手を、身近に感じることで自分の将来を強く意識するきっかけづくり

になっている。

・マナーセミナー

挨拶、言葉遣い、食事、手紙の書き方サドを学び場がら、マナーの本質とは何かを考え、

他者への思いやり、感謝の心を育む。

・労作体験

勤労・忍耐力・奉仕などの道徳的価値の育成を重視した、人間形成を行うプログラム。

稲作や茶摘みなどの労作体験を通して、地域の人々との交流を大切にする。

以上がアカデミーで行われている人間教育プログラムである。アカデミーでの教育内容

は日本サッカー協会の最高ランクの指導者資格である S級コーチライセンスと教員免許を

併せ持つ専属コーチやモデルとなった INF で長年校長を務めたクロード・デュソーによる

サッカーの指導を受ける。また、日本サッカー協会の技術委員会、女子委員会、スポーツ

医学委員会や、ドクター、アスレチックトレーナー、アスレチックカウンセラー、管理栄

養士らによりメディカル・フィジカル・栄養・メンタルのケアにも注意が払われている。

13

第 6 節 ライセンス

①各ライセンスの内容

指導者になるために必要なライセンスであり、ライセンスの内容を以下に挙げる。また、

2004 年 4 月に制度の見直しが行われ、従前とは体系が若干変更された。以下、これ以前

の体系を「旧体系」と呼ぶ。(表 1)

基本的に上級ライセンスは下級ライセンスの内容を含んだものとなっている。ただし公

認 A 級コーチ U-12 だけは別で、既に公認 S 級コーチ・公認 A 級コーチジェネラルのライ

センスを保持している者でも、J リーグクラブ傘下の第 4 種チームやナショナルトレセン

等で U-12 世代への指導を行う場合は、別途公認 A 級コーチ U-12 のライセンスを取得し

なければならない。

②リフレッシュポイント制度

公認 C 級コーチ以上のライセンス保持者は、下記に示すように、一定期間内にリフレッ

シュ研修会の受講等で一定のリフレッシュポイントを取得しないと資格が失効する。なお

海外居住者は義務が免除されるが、一方で日本国外の指導者ライセンス保持者が日本国内

で指導活動を行う場合にもポイント取得義務が発生する。

③必要ポイント

S 級コーチ:40 ポイント/2 年間

A 級~C 級コーチ、海外ライセンス指導者:40 ポイント/4 年間

④獲得方法

研修会ポイント JFA が公認するリフレッシュ研修会の受講によりポイントを獲得でき

る。また JFA が指定するカンファレンスや指導者海外研修・ナショナルトレセン指導者研

修でもポイントを得られる。指導ポイント 47FA インストラクター、トレセンスタッフ、

JFA 加盟チームの監督・コーチを務めている場合、一期間内に 1 回だけ 20 ポイントを加

算できる。

14

表1 公認コーチ (JFA コーチライセンス より抜粋)

公認 S 級コーチ

J リーグトップチーム(第 1 種登録チーム)、日本代表チー

ムの監督

公認 A 級コーチジェネラル 第 1 種登録チームのうち、サテライトチーム(若手育成リー

グ)や JFL、なでしこリーグの監督、あるいは J リーグトッ

プチームのコーチング(旧体系の A 級、B 級に相当)

公認 A 級コーチ U-12 2007 年に新設された、U-12(小学生)年代指導者の最上位

ライセンス。J リーグクラブ・JFA 等で U-12 年代の指導を

行う場合はこのライセンスの保持が必須。

公認 B 級コーチ 第 2 種登録(ユース=高校生)以下の監督・コーチング、サ

ッカースクールの指導・普及(旧体系での C 級に相当)

公認 C 級コーチ 旧体系での公認地域スポーツ指導員 B 級、C 級、公認準指導

員に相当。取得年齢は 18 歳以上

公認 D 級コーチ 旧体系での公認少年少女サッカー指導員に相当。取得年齢は

18 歳以上 C 級、D 級は、主に第 4 種(ジュニア=小学生)

などの普及・育成活動(少年少女サッカー教室など)の指導

員として活動する

公認キッズリーダー - 幼児期や小学校低中学年代の子供たちへの指導。取得年齢は

16 歳以上

以上までが日本が行っている育成機関等についての記述である。

15

第 2 章 W 杯覇者ドイツの育成

第 1 節 ドイツサッカー連盟組織

ドイツサッカーは DFB を頂点に、5 つの Regionalverband(地域協会)、21 の

Landesverband(州協会)、25,726 のクラブそして 6,756,562 人の登録選手によって構成

されている(図 9)。

第 2 節 ドイツサッカー連盟(以下 DFB)の育成システム

①育成年代カテゴリー分け

育成年代の可で後リー分けは 2 歳刻みに A から G まで分かれている。クラブによって

は 1 歳刻みにチームを構成していてリーグ戦においても同様の措置が計られている(図

10)。

②ドイツサッカー連盟選手育成システム”DFB-Talentfoerderung“

2002/2003 シーズンに導入された育成年代のタレント促進プロジェクトである。今まで

16

ドイツサッカーがアドバンテージとして誇ってきたフィジカル面でのアドバンテージだけ

では成功を収めることが不可能であることを感じ、技術や戦略的トレンドを取り入れるこ

とでそれまでとは異なった視点からの選手育成事業を実施している。特に、”個”のテクニ

カル面での充実を図っている。

これらの目的を裏付けるものとして 2006 年~2012 年まで DFB のスポーツディレクタ

ー(現バイエルン・ミュンヘン 取締役)として活躍していたマティアス・ザマーが

DFB-Talentfoerderung の機関誌である”Info-Abende”で 2008 年ヨーロッパ選手権の覇者

スペインについて「スペインはチームの結束力によってのみ優勝を勝ち取ったのではなく、

個人技術に優れた選手がチームの軸となっていた。」と言っている。また、「スポーツに

おける成功は、選手個々人の技術がチームに反映してこそ達成される。この点において選

手個々人の技術促進が我々の育成事業の中心的な課題である」という発言から明らかにさ

れると考えられる。

③DFB-Talentfoerderung4 つの柱(図 11)

DFB-Talentfoerderung を構成していくなかで 4 つの柱が存在する。

1.”Talentzentren”(トレセン制度)

2.”Junioren-Nationalteam”(育成年代代表チーム)

3.”Trainer-Service”(指導者サービス)

4.“Schulkooperation”(学校との共同事業)

17

④育成コンセプト

“全てのタレントに同じチャンスを”と DFB が掲げているものである。このコンセプトが

できた背景には 90 年代の代表選手のうち U-15、16 カテゴリー当時にその年代の代表チー

ムに名を連ねていたのは半数だけであり、その他の代表選手はその後にトップ選手に上り

詰める成長を遂げた。その、主な例がミラフロス・クローゼである。これらの事実を受け、

DFB では自国での多くの可能性を持ったタレントを見逃さないために Talentzentren で

全ての才能と意志のある選手を日々の活動の中で把握、発見、育成し続けることによって

のみ、全てのタレントをトッププレイヤーに押し上げる可能性が高まることを認識してい

る。

Talentzentren の活動指針として DFB は以下の 10 点を打ち出している。

・定期的、徹底的なスカウティング

・包括的な選手育成

・個の育成(チームでのトレーニングの補足)

・現代的、統一的な選手育成

・技術、戦術双方に長けた選手の育成

・地域の育成年代コーチの継続研修のオーガナイズ

・DFB、地域/州協会、チームの架け橋

・育成関係者への新しいモチベーションの創出

・選手への刺激、モチベーションの創出

・新しいトレンド(サッカースタイル、トレーニング方法)の伝達

この 10 項目は選手育成の項目のみだけではなく、育成年代のコーチ、チームそして地

域/州協会までに焦点があてられており、個の事業への DFB の期待の大きさが感じられる。

⑤ドイツ連盟育成システム Talentzentren の組織 ,活動概要 Leistungszentren と

Stuetzpunkt

DFB のトレセン制度である Talentzentren は大きく二つに分類される。ひとつは、DFB

のコーチが各州協会と共同で行う”Talentzentren”。もうひとつはブンデスリーガ参加チー

ム と ド イ ツ サ ッ カ ー 連 盟 に 認 可 さ れ た ク ラ ブ ( Lizenz Verein ) が 実 施 す

る”Leistungszentren”である。Leistungszentren は日本でいう J リーグのチームの育成年

代チームが一つのトレセンと認知され、地域のトレセンへの参加が免除されるというもの

18

である。DFB は 2001/2002 シーズンから該当クラブに Leistungszentren 設置を義務づけ

るにあたり、条件を提示した。

・育成年代の部門を設置し、そこで集中的憂な選手育成を行うこと

・質と量ともに充実した、適切なスポーツ施設

・専任の育成年代部門責任者(S 級)をおくこと

・学校との連携(主に Eliteschulen des Sports:スポーツ学校との連携で学校でもチーム

の育成方針と一体感を持たせたり、試合等の際に出席の融通が利く等の連携)

これらの厳しい基準は、より高いレベルの指導をすることを目的としている。

Stuetzpunkt は日本におけるトレセンである。ドイツ全土に約 2,600 存在するクラブに

対して、現在 366 ヶ所の Stuetzpunkt が選手育成の拠点の役割を担うことになる。DFB

は 29 人の専任コーディネーターを配置し、その下でおよそ 1,000 人のコーチが指導にあ

ったっている。コーディネーター達は彼らがそれぞれ担当する地域の Stuetzpunkt で週一

回の頻度でトレーニングを行い、週末には担当地域のチームの試合会場に訪れ選手を常に

スカウティングをしている。Stuetzpunkt の対象年齢は U-11 から U-14 であり、参加選手

は実に年間 14,000 人を数える。この Stuetzpunkt を実施することで、ドイツ全土のどの

大都市、村に住んでいようとも、ブンデスリーガのクラブをはじめとするトップチームで

プレーしようが、弱小チームの選手であっても、全てのタレントがもれなく同じチャンス

を得ることが可能になったのである。また、DFB は Stuetzpunkt を基礎とする

Talentzentren のために年間 1000 万ユーロ(約 12 億円)を注ぎ込んでいる(図 12)。

19

⑥Talentzentren 活動内容

以下に Talentzentren の活動内容を示した

Talentzentren の具体的な活動内容としては、Stuetzpunkt が週一回、月曜日にトレー

ニングを行っている。時間帯は、各 Stuetzpunkt、時期によって多少異なってくることが

あるが U-11、12 が 16 時から 18 時、その後 18 時から 20 時に U-13、14 のトレーニング

となる。参加人数は各時間帯に 20 名までと DFB はホームページに明記しているが、実際

のところは各 Stuetzpunkt の事情に合わせて調整されている。例を挙げるとベルリンの”

を Stuetzpunkt Wannsee”では、育成年代ではベルリンで Tennis Borussia と2番手を

争う位置にあるチームを抱えていることもあり、25 名程度の選手がおり、その分コーチを

4 名とし、どの選手にも充分目が行き届くように配慮している。

トレーニングは、スポーツディレクターの発言に添い、選手個々人の個人技術、とくに

将来サッカー選手として大成する為に D/C 年代で習得すべき個々の基礎能力の獲得を目

的に据えた内容となっている。各地域の Stuetzpunkt の上には選抜チームがあり、選抜チ

ームで活動する為には Stuetzpunkt で実力を認められる必要がある。ドイツ国内の特徴と

して育成年代においては全国規模のリーグというものが存在しないため、育成年代のドイ

ツ代表チームのメンバーは州協会の選抜チームの活動を通じて選ばれることが一般的な道

となっているのである。

DFB では例年、デュイスブルクにドイツ全土の州協会選抜 U-15 チームを集め大会を開

催している(U-16、18、20 においても大会は催されるが、こちらは年齢が上がるにつれ

て、その名の通りの大会の意味合いが強くなる)。つまり、代表チームの一員になる為の

第一関門としての役割を Stuetzpunkt は果たしているのである。また、Stuetzpunkt は”

Eliteschule des Sports (スポーツ学校)への推薦状を作成する役割を担っている。

ドイツにおいて、育成年代においても選手の移籍は頻繁に行われており、1 年間でチー

Stuetzpunkt 活動内容

・活動日:毎週月曜日

・時間帯: 16:00-18:00(U-11/12) 18:00-20:00(U-13/14)

・人数:各グループ 25 名程度

・トレーニングコンセプト:将来サッカー選手として大成する為に D/C

年代で習得すべき個々の基礎能力を獲得する。

20

ム内選手の大部分が入れ替わり、上のカテゴリーでの受け入れを拒否された選手が 1 年間

の他のチームでの活動の結果、またもとのチームへ出戻るといったことも行われている。

したがって、周りの関係者もそれを自然のことと考えているようである。主に選抜チーム

において、他チームの関係者の目に触れる機会が増えることは結果として選手にはチャン

スになっているのである。

このように Stuetzpunkt はその行動指針における「選手育成」、「選手のモチベーショ

ン創出」、「指導者への刺激」、「DFB-地域/州協会-登録チームの架け橋」等の様々な

側面からの責務を負って日々活動しているのである。常に新しい情報が国内全土どの都市

にも、どの街にも隅々までに行き渡り、きめ細かい指導が可能なシステムを作り上げるた

めに、Stuetzpunkttrainer は月曜日のトレーニングと週末のスカウティングの結果を集約

し、逐一コーディネーターに連絡し情報の一元化を図っている。また、ドイツ各地のコー

ディネーターは頻繁に DFB の所在地であるフランクフルトに集まり、情報交換や最新の

トレンド、トレーニング方法を確認し、それを各地域で Stuetzpunkttrainer に会議や研

修会を通じて落とし込んでいる。そして、その講習会等の際に Stuetzpunkttrainer 同士

は情報の交換をして更なる一貫指導を可能にしているのである。

第 3 節 ドイツの人間教育

①ドイツの教育システム

ドイツの教育システムは小学校の 4 年間(ベルリンでは 6 年間)の課程を終えた段階で、

生徒は今後の進路を決定しなくてはならない。つまり、大学に進む為の”Gymnasium”

(ギムナジウム)、より実務的な知識を教育する”Real Schule”(実技学校)、または一

般的な教育を受ける“Haupt Schule”(基幹学校)、いずれかを選択することになる。現

状の教育システムにはたくさんの議論がされており、最近は中高一貫システムの学校が増

えたりという現状があり、選手は自分の道を 10 歳ないし 12 歳で選ばなければならない。

Eliteschule des Sports は Real Schule に近い位置づけとなるが、専門の教員のもと、生

徒自身の競技の授業があり、サッカーにおいては所属チームと連絡を取りつつ一貫した指

導を行っている。また、遠征等における早退、欠席もかなりの部分で融通が利く。そのた

め、競技スポーツを志す者には好条件な学校といえ、国としての選手養成の拠点という位

置づけをされている。

Gymnasium に進む選手以外には、理想の環境である Eliteschule des Sports に進む為

21

には Stuetzpunkt の選手に選ばれ、そのなかで実力を評価され、他の選手との争いに勝た

ねばならないのである。また、Stuetzpunkt は上記の2つの点とも違った側面から、選手

自身のステップアップに関係してくるのである。

②学校現場とクラブチームユースとの連携で行われている人間教育

ベルガー・フェルト総合学校学長(ドイツの公立学校、ゲオルク・アルティンカンプイ

ンタビューより

サッカーを通じて、どうやって触れ合っていくか、人間関係を作っていくかということ

をドイツの教育現場や DFB では教えている。

このように、ドイツ国内首尾一貫した組織での選手育成が一つ。早い時期からの自分の

進路選択に伴う協会、学校、クラブといった機関同士の連携により人間教育を行うことの

二つ。これらがドイツは育成年代において大きな成果を挙げ、ドイツ A 代表におけるレベ

ルの底上げを実現したのであると考えられる。

ベルガ―・フェルト総合学校は公立の総合制学校で、さまざまな能力を備えた子供た

ちが集う所です。この学校で重要なのはスポーツにおける側面です。

ここには多くのアスリートが在籍しています。サッカー選手では 6名の代表選手が通

っており、パートナークラブであるシャルケの選手も来ています。シャルケはここから

遠くなく、あの巨大なスタジアムもすぐそこです。シャルケから近いことも重要です、

授業時間中にトレーニングに行くことができます。特別なプログラムとしては、この普

通の公立校でスポーツに興味を持っている子供はもとより、アスリートとしてがんばっ

ている子供たちが一般的な社会の中で生活できるということです。こうした環境で生活

することで自分はエリートだという自意識がおさえられ、態度が傲慢にならずアスリー

トとしてしっかりと地に足をつけてやっていけるのです。

このようなことは若いアスリートの人格を形成する上で非常に重要になります。彼ら

は確かにすばらしい才能があるかもしれませんが、取り巻く社会や学校のクラスでは極

普通の人間であるべきなのです。その点を重要視して人格形成が子供たちに根付くよう

にと心がけているのです。

22

第 3 章 世界独自の育成を行っているオランダ

第 1 節 オランダのサッカー

①基本コンセプト

「TIC」というコンセプトが統一されている。「T」とは Technique を表す。サッカー

をするのに必要な基本的技術のことであると考えられている。どんなに小さな子どもでも、

ボールと遊ぶために必要なある程度の技術を学ぶ。「I」は Insight を表す。試合では状況

に応じて何が適切で何が不適切な行動か理解する洞察力が必要である。洞察力は、経験と

サッカーに関する知性によるところが大きい。「C」は Communication を表す。この場合

のコミュニケーションとは、選手と試合に関するあらゆる要素との相互作用を意味する。

味方選手とのコミュニケーション、敵チームの状態、ボールやフィールドの状態、スタッ

フやコーチとの相互作用のことである。以上の 3 点を育成するだけではなく、オランダサ

ッカー全体としてのコンセプトを出している。

②オランダサッカーの組織

オランダサッカーは,プロリーグとアマチュアリーグから構成されている。オランダ・

サッカーリーグは、プレミアリーグ(18 クラブ)と一部リーグ(18 クラブ)からなり、

自動入替が行われる。その下にサテライトの全国リーグ(12 クラブ)と地域リーグ(南・

北各 12 クラブ)がある。アマチュアリーグは、全国リーグ(84 クラブ)、一部リーグ(108

クラブ)、地域リーグ(約 2,000 クラブ)、サテライト(約 15,000 クラブ)から構成さ

れる。

第 2 節 オランダサッカーが育成で力を入れているもの

①指導者の充実を図る

オランダサッカーの育成について特筆することとして指導者の育成方法が挙げられる。

人口 1,500 万人ほどの小国でありながら世界でも強豪と呼ばれるのは、優秀な指導者なく

しては強い集団はあり得ないということが、どこの国よりも理解されている。

A から D までの 4 段階に分けて、厳しい教育カリキュラムが組まれ、サッカー理論、ス

ポーツ医学や心理学に至るまで、徹底的に叩き込まれる。現役時代に有名であった選手で

あろうと D クラスからスタートし、優秀な者のみ C クラスに上がる。その上で、少年チー

ム等でコーチとしての「実習」を行い、結果を出した者のみが B クラスに進める。D クラ

スでコーチとしてのトレーニングを受け始めた者が 1,000 人いたとしてプロ選手を教える

23

ことができる A クラスに進める 20 人もいないという。

②コーチとして求められている条件

1.サッカーの状況が読める

2.サッカーの負荷に対処できる(難易度を調節できる、体系的に段階を設定できる)

3.どこに問題があるかを明らかにできる

4.正しい例を提示し、それを見せることができる

5.学習環境をつくる、パフォーマンスをしようという雰囲気作りができる。

第 3 節 オランダの育成組織

①子ども達は地域のクラブに所属して、ライセンス指導者のもとで育成されている。

F クラス(6~8 歳)から始まり、E クラス(8~10 歳)、D クラス(10~12 歳)、C

クラス(12~14 歳)、B クラス(14~16 歳)、A クラス(16~18 歳)まで,発達段階に

合わせて指導を受ける。特に優れた能力を持つ選手は、上の年齢の子ども達と一緒に練習

したり、試合に参加したりすることもある。12 歳までの子ども達はそれぞれの地域大会に、

12 歳以上の子ども達は全国大会に出場する。

②「TIC」コンセプトに基づいた子どもへの指導内容

育成をしていく上で指導者達は子どもの年齢に応じて「TIC」を段階的にえていくことを

する(表 2)。

1. 5~7 歳:方向・スピード・制度などに関する「T」を重点的に指導する。ボールに対す

る感覚、ボール・コントロールを身につけ、ボールと仲良くすることが目的である。

2. 7~12 歳では、簡単な試合を通して基本的な技術「T」と洞察力「I」を向上させる指導が

行われる。目標は、あくまでも基本的な技術の向上である。

3. 12~16 歳になると、「TIC」をバランスよく指導する。ラインやポジションごとの役

割、チーム戦術を学ぶ。ミニゲームから 11 人で試合を戦えるレベルに達することが

目的である。

4. 16 歳以上ではチーム戦術を学び、個人技術アップとチーム力の強化を目指す。この

ように子ども達の発達段階に合わせた指導がとても重要である。

以上の 4 点が重要であると考えられている。

24

③オランダサッカー協会で行われているもの

オランダサッカー協会(以下 KNVB)では、ユース、アマチュア、プロリーグまで全て

のオランダサッカーを統括しており、代表のサッカーをはじめ、オランダサッカーの育成・

強化に統括責任を有している。それ以外の個別な問題については、自立した別な組織で運

営している。プロ選手の権利を守る組織(プロサッカー選手協会)やプロコーチの権利を

守る組織(プロサッカーコーチ協会)が独自に創設され、それぞれの権利を保護している。

オランダサッカーの伝統は、革新的な組織づくりである。オランダサッカー協会を中心と

して、地域のクラブが運営を行っている。オランダ全人口 1,500 万人に対し、サッカー人

口は 100 万人もいる。クラブ数は 2 万人に達する。どのクラブも緑のクラブにも緑のグラ

ウンドと清潔なクラブハウスが整備されている。そして何よりも指導者が充実しているの

である。

④オランダサッカー協会アカデミー

オランダではオランダサッカー協会アカデミーという組織においてオランダサッカー

に関する全ての教育部門を統括する組織がある。この組織はサッカーの普及、子ども達の

育成、指導者養成、指導者養成、国際交流等の幅広い活動を行っている。前述した通り、

オランダサッカーは、指導者の充実を図っている。そのためアカデミーでは『コーチング』

というオランダサッカー協会公認の指導書を出版している。同時に、ユース指導用の公式

ビデオテープも作成している。こうした国を挙げての戦略的な育成活動が、オランダサッ

25

カーのトータル・フットボールの原点であり、オランダサッカーを支えている。

第 4 節 アヤックス

オランダサッカーの中で古くから注目されているチームとして挙げられるのがアヤッ

クス・アムステルダムである。エールディヴィジ(オランダ国内リーグ)優勝は最多の 33

回、UEFA チャンピオンズリーグは 3 連覇を含む 4 回、インターコンチネンタルカップ 2

回の優勝をしており、リーグ優勝 14 回のフェイエノールト、21 回の PSV と共に、オラン

ダの強豪クラブと認識されている。オランダで最も人気のあるクラブである。

①アヤックスの育成哲学

アヤックスの育成システムは、基本的にプロチームの下にアマチュアの育成組織がある。

「美しくかつインテリジェンスのあるサッカーを通して子ども達の人格を形成する。」と

いうのがアヤックスのトップチームから育成年代までの哲学としてある。

②アヤックスが行っていること

(1)セレクション

セレクションはシーズンごとに 2 回、5 - 13 歳の、オランダ国内全土から家族と一緒に

居住する者を対象に実施しており、国籍、性別問わずテストを受けることが可能である。

現在アマチュアチームには女性も複数在籍している。毎年 3,000 ~ 5,000 人の中から約

30 人程が選ばれる。そしてこの中からトップチームへ上がれるのはほんの一握りである。

(2)TIPS

アヤックスは、選手を選抜するとき特別な方法で見極めている。それが「TIPS」である。

•テクニック(T)主にワンタッチプレーやトラップ技術

•インテリジェンス(I)試合の流れを読む洞察力

•パーソナリティ(P)人格、思いやり

•スピード(S)「100m を何秒で走るか」ではなく、走り出しのタイミングの TIPS を重

8 歳以上を対象にスカウティングを開始し、外国人プレーヤーは、プレースタイルや文

化、オランダ語、英語を習得させるため、数年アヤックスで教育を受けさせている。

(3)カテゴリー分け

アヤックスのカテゴリーは 19 に分かれている。ジュニアユース&ユース(F-1, E-3, E-2,

26

E-1, D-3, D-2, D-1, C-3, C-2, C-1, B-2, B-1, A-2, A-1)、リザーブチーム(Jong)はいわゆ

るプロ予備軍のことである。U8〜U20 までの 10 チームで構成されている。目標は「世界

に通用する選手の育成」技術、戦術、身体能力、社会適性力、ルール、健康管理、規律の

向上などのさまざまな項目が設定され、サッカーだけに傾倒しない基本的な教育がされて

いる。

(4)プログラム

アヤックスのプログラムで最も特徴的なのが組織のクーバー法(クーバー・コーチング)

とピラミッド化である。クーバー法 (クーバー・コーチング) は、オランダが生んだ伝説

的サッカー指導者ウィール・クーバーの育成理論のことである。5 歳から 15 歳をゴールデ

ンエイジと呼びこの時期にテクニックを学ばせると驚異的な成長を見せると言う。ピラミ

ッド化は、このクーバー法を図式化したもので、頂上に進むにつれて人数が減っていくこ

とからこの名前がつけられた(図 13)。他チームでは年齢と共に自動昇格するシステムを

採用してきたが、これをクライフが能力に応じて昇格するシステムへと一新(改革)した

のである。これにより若手選手の競争意欲が増し、組織全体のチーム力の底上げに成功し

たのである。

(5)トレーニングプログラム

サッカーの基本となる TIPS を発育に合わせて段階的に教えていく。5 ~7 歳(F-1)で

は、パス・スピード・ドリブル精度・シュート・フェイントに関する「T」を重点的に指

導する。ボールに対する感覚、ボールコントロールを身につけ、ボールと仲良く(友達に)

なることがこの時期の最大の目的である。テクニックは 5 歳~10 歳までの間にトレーニン

27

グすると効果が倍増すると言われていて、大人になってからではあまり上達しない子供の

内は短期間で驚くほどの成長を見せるため、この時期にサッカーの基本を指導する。また

「ランキング」や「点数」はつけない。目に見えない程度に競わせるのも大切である。

7~12 歳(E-3,、E-2、E-1)では、簡単な試合を通して基本的な技術「T」と洞察力「I」

を向上させる指導が行われる。目標は、あくまでも基本的な技術の向上である。子供たち

の「コミュニケーション能力」や「協調性」などもチェック項目に入る。たとえサッカー

のスキルが高くても、これら項目が一つでも欠けていたら、上のカテゴリーへ上げること

は許されない。

12~16 歳(D-3、D-2、D-1)(C-3、C-2、C-1)になると、「TIPS」をバランスよく指

導する、ライン・ポジションごとの役割・チームワークを学び、ミニゲームから 11 人で

試合を戦えるレベルに達することが目的である。インナーマッスルを鍛え「体幹」を作る

こともこの時期に行われる。あくまでも「内筋」であってアウターマッスル(外筋)は一

切鍛えない。クライフのアシスタントでもあったトニー・ブラインス・スロット氏は「体

幹を作るのに最も適したスポーツは日本の柔道だ」と述べている。

16~20 歳(B-2、B-1)(A-2、A-1)ではチーム戦術を学び、個人技術・フィジカル・チ

ーム力の強化を目指す。戦術はアヤックスの基本システムの 3 トップを中心に、個人技術

はトラップを中心に指導、フィジカルは専属のボクシングトレーナーをつけ、外筋を中心

に鍛える。発育段階(5 歳~15 歳)で過度な筋力トレーニングをすると身体に悪影響を及

ぼすためである。このように子供たちの発達段階に合わせた指導がとても重要なのである。

トップチーム(Jong)では、さらにセットプレー・スタミナ強化・サッカーエアロビク

スなどが加わる。メニューの主体は、もっぱらフィジカル強化にある。90 分以上走る体力

はもちろんのこと、体力の消費を抑えるため「トラップフォーム」「シュートフォーム」「ラ

ンニングフォーム」を研究しそれらを実践することに重点を置いている。

第 5 節 家庭とクラブと学校の連携による人間教育

①教育とルール

教育費は無料、サッカー用品などは全てクラブから支給される。プライベートもこれと

いった規制は無く、自由に生活してよい。ただし 1 つだけルールがあり、それは高等学校

までをしっかり卒業することである。クライフは「全員がプロフットボーラーとして成功

するとは限らない、だからこそしっかり勉強し失敗した時のリスクを避けるためである」

28

と述べている。

かつてアヤックスの育成責任者であったコ・アドリアンセによる育成の哲学として「ア

マチュア育成組織の目的は、優れたプロ選手を育てることにある。優れたプロ選手とは、

技術的にも、人間的にも成熟した選手のことである。サッカー選手もまた一人の社会人と

して自立しなければならない。そのために必要な人間教育を、アヤックスでは独自の育成

システムとして実行している」と述べている。

②学校との関係

アヤックスでは地元の学校と密接な交流を計っている。授業についていけないクラブ選

手の補習授業から始まり、その後にクラブでの学習活動を本格的に実施し、家庭および学

校から高い評価を受けている。例を挙げると、A1 は月曜日の 2 時 15 分にクラブバスが送

迎をし、午後 3 時から 90 分間練習を行う。その後休憩や軽い食事を済ませ、午後 5 時 15

分から 75 分間の学習活動を行う。といったスケジュールを行っている。クラスによって

多少の違いはあるがスポーツと学習が両立するようにクラブ側から積極的なサポートを行

っている。アヤックスでは、子ども達の学習成績が所定のレベルに達していない場合、一

時的に練習を休ませたり、クラブから退会させることもある。基本的にプライベートにつ

いては自由ではあるが、勉学に対して、厳しい姿勢は、窮屈な育成指導のような印象を与

えることもある。しかし、アヤックスではクラブが子ども達を全面的に受け入れるという

ことは、サッカーだけではなく学習活動を含めた人間教育を前提として成り立つと考えて

いる。

トレーニングよりも勉強を優先するというルールがあり、学校から何かマイナスの情報

が寄せられた時や、きちんと学校に通って勉強をしなければ、トレーニングに参加する事

は出来ない。サッカーも勉強も上手くこなさなければ人間として成長出来ないことが分か

るようにさせている。またアヤックスではFからAまで、どのチームでも監督は子供達を

ハイレベルなプレーに対応出来る選手に育てたいと思っている。D-1 の選手でも有望な子

供が居れば、トレーニングを積んで上のレベルのチームに入れる事もあるのだ。サッカー

だけではない他への向上心アヤックスでは育てられている。

29

第 6 節 アヤックスの革新

①アヤックスが育成年代から実践する「Lokken(ロクン)」

2003/2004 にリーグ優勝をして以来、ほぼ 10 シーズンに渡る長い期間、リーグ優勝お

よびチャンピオンズリーグから遠ざかっていたアヤックスは、この状況を打破するべく

2011 年に大きな決断を下した。それは FC バルセロナのアドバイザーとして活躍していた

ヨハン・クライフの、クラブマネージメントへの本格的な招聘である。

過去、クラブのアドバイザーとして意見を求められることはあったが、今回はクラブ全

体のマネージメントに関して、クライフ本人のアイデアと指揮のもと、抜本的な改革を進

めることとなった。現在までの間に、大きな変革が各分野に導入され日々実践されている。

②新生アヤックスの哲学

アカデミー内の具体的な改革として、クライフの哲学の1つである”アカデミーに所属す

るトップレベルの才能を誇る選手達は、元アヤックスの選手でなければ成長させることは

できない”というアイデアが導入された。つまり、アヤックスのアカデミーからトップチー

ムへ昇格し、そこで活躍できる選手を育てるためには、その過程で何が要求されるのかを

身をもって経験して理解していることが指導者に求められるわけである。この哲学のもと、

ビム・ヨンクとデニス・ベルカンプの二人がアカデミーのトップに就任した。各カテゴリ

ーの監督やパーソナルコーチも、元アヤックスの選手で占められている。

また、この新しいテクニカルスタッフを中心として"Skill Box "という新しいアヤックス

の哲学が導入された。これは、テクニックや戦術についてのテクニカル部門だけではなく、

メディカルやコンディショ二ング、ムービングや栄養学など多岐にわたる総合的なフィロ

ソフィーの総称となっている。さらに、インターネットでチーム専用のデータベースにア

クセスをすることで、選手個々の情報を携帯端末で取り出せるなど、クラブのスタッフが

情報を共有できるシステムのデジタル化も進められている。

具体的な例として、アカデミーの週末のリーグ戦は全て録画され、データベースにアッ

プロードされることにより、専用アカウントを有するスタッフは、試合後に自宅で確認す

ることが可能になった。コーチによるゲーム分析から、その試合で怪我をした選手の怪我

をした瞬間の状況の把握などのフィードバックなどに使われている。各分野のスタッフの

役割を繋ぐツールとして国内外から注目されている。

Skill Box のテクニカル部門のチーム戦術に関して、攻撃や守備などの各モーメントに従

30

って細かく各ポジションのタスクが定められている。U-17 から U-19 までのユース部門、

U-12 から U-15 までのジュニアユース部門と U-8 から U-11 までのジュニア部門の3つの

グループ別に目標とされるタスク内容やアクセントなどが異なる。その中でもクライフに

より導入された新しい考え方の1つであるのが「Lokken・ロクン」である。Lokken とは

オランダ語の動詞で、"相手をおびき寄せる"という意味があり、これはアヤックスのコー

チが頻繁に使うサッカー用語の1つになっている。

③どんな選手が求められているか

フィールドのどこで、どの選手が有効なポジションにいるのかを認知して、それを利用

する判断ができる選手の育成が、アヤックスでは攻撃時の重要な目標になっている。サッ

カーのプレースピードが上がっているモダンサッカーでは、ボールを持っている選手がフ

ィールドの選手全員を把握することは難しくなってきているのも事実である。

そこで、チームとしての戦術に関する約束事をジュニア年代から少しずつ覚え実践する

ことが大切だと考えている。繰り返し実践することで、より早くより正確にプレーするこ

とができるようになり、より先を考えた、より有効的なゴールへ結びつく判断やハンドリ

ングができる選手の育成が可能となる。また、「チームを作る=約束事を決める」とオラ

ンダでは考えられている。ただ、この考え方に対して、選手の主体性や創造性が欠けてい

るという考え方もある。それがないとは言えないであろう。しかし、プレースタイルや細

かな約束事が確立されてないチームで、サッカーを知らない選手に対して「考えなさい、

判断しなさい」と、強要することも良いとは言えない。これらの方法でサッカーを実践で

きない選手はトップチームへは上がれないであろう。そこには、良い悪いという考えは存

在しない。なぜなら、このスタイルや哲学がアヤックスであるからで、この方法でアヤッ

クスのサッカーは成功を収めて来ているからなのである。

オランダサッカーの育成の根幹は狭き門を抜けてきた指導者達がいるということ。世界

でも注目され続けている独自の育成方法があること。育成期の選手の将来性を考慮したう

えでの人間教育がなされていることであると考えられる。

31

第 4 章 FC バルセロナの世界最高の選手育成

次に注目する視点として世界的に有名であるバルセロナ FC の育成について触れていく。

バルセロナの育成システムとして特徴的なのがカンテラと呼ばれるものである。バルセロ

ナでは 1 年刻みでカテゴリーが分かれていて図のように年代別のチームが組まれている

(表 4)。

表 4 FC バルセロナ組織図

カテゴリー

トップチーム バルサ B(アスレティック)

フーニベール A(17~18歳) フーニベール B(16~17歳)

カデーテ A(15~16歳) カデーテ B(14~15歳)

インファンティール A(13~14歳) インファンティール B(12~13歳)

アレビン A(11~12歳) アレビン B(10~11歳)

ベンハミン A(9~10歳)B ベンハミン(8~9歳)

第 1 節 バルセロナの哲学

①変わらない哲学

まず、バルサの強さの一つがチームの理念・哲学である”美しく、勝つ”である。これはバ

ルセロナの創設期からの理念・哲学であり、そのサッカーは監督が代わり現在のルイス・

エンリケ氏まで引き継がれ、今後もその理念・哲学は変わることはないという。

チームとしての理念が全ての選手、監督、コーチ、さらにはバルセロナ FC を取り巻く

人々にまでその理念が統一されている。そのため子どもの時からバルサの一員という自覚

を持っている。これらがバルセロナの強さのための哲学であり、強さを整えるための環境

にもつながっている。

②厳しい競争意識

スペインのカンテラにいる選手達は、最低 2 年間は所属することができる。その期間を

過ぎると、子どもであろうとトップチームと同様に 1 年毎に契約を行っている。1年毎に

再評価され、ふるいにかけられた選手達が残っていくのである。幼い頃からポジション争

いやチームに在籍できるかといった厳しい競争意識という環境がある。そうした幼い頃か

らの競争意識であったり、グローバルなトレーニングを積むことがバルセロナサッカーの

32

強さの根幹にあるものの一つであると言えるであろう。

第 2 節 ラ・マシア

①”きらきら星”達が集まるバルセロナの寮

地下鉄マリア・クリスティーナ駅方面からカンプノウを目指すと、巨大なスタジアムの

となりに、歴史ありそうな石造りの古民家のような建物がある。これが 18 世紀に建てら

れ、選手育成寮として使い始められたラ・マシアである。

それ以前はクラブの事務所として使用されていた。現在では、選手たちの生活する寮と

しての機能はバルセロナ市の隣町サン・ジョアン・デスピにあるトレーニング施設シウタ

ー・エスポルティーバに移転しているため、ここに“キラキラ星”たちは暮らしていない。

かつてはとなりにトップチーム用の練習グラウンドがあり(現在は駐車場)、ここを通称

でラ・マシアと呼んでいた。

バルサの選手として地元以外の各地からスカウトされてきた子どもたちが住むことに

なるマシア。ここでは、毎日のトレーニングや年間を通して約 50 試合をこなして経験を

積んでいくといった、サッカーが最優先されている場である。

そして古くから憧れの対象であるバルセロナといわれるビッククラブに自分が所属し

ているということを子どもたちが幼いころからの夢をかなえるために努力すること、身近

に自分たちの目標があることが子どもたちが努力することの活力につながっている。

②サッカーだけではない、人間形成のための勉学とマシア

バルサのカンテラ育成哲学で特筆すべきなのは、ラ・マシアが勉学も含めた人間形成、

人間教育の場であり、一流のスポーツ選手であると同時に、一人前の大人にならなければ

ならないというものである。よってマシアに入寮した少年たちは、フットボールの練習だ

けではなく、勉強にも励む。学業が疎かになり、進級できなければ即退寮。無断外泊など、

規則違反をしても即退寮である。そうした厳しい規律からバルセロナからは規律正しいス

ターが生まれてくるのだ。また、カンテラにスカウトされたが、充分に結果が出なかった

ため、バルセロナに残れなかった選手たちが社会でも立派に生活していける道をラ・マシア

は開いている。

カンテラに所属をしている子ども達は、全員が同じ学校に通っていて授業が終わるとク

ラブのバスに乗り、練習に行く。スペインの学校では、クラブのシーズン中には、サッカ

33

ーを優先する傾向にある学校があり、選手達がサッカーに集中しやすい環境が整えられて

いることも、子ども達の育成をしていく上での強みであるだろう。

③育成期からのトレーニング

小さいころ(7~8 歳)からのグローバル(総合的)トレーニングの(メニューの中にテ

クニック、戦術、フィジカル、メンタル等の複合的な効果が期待できるトレーニング)の

積み重ねをしている。それにより、サッカーの実践的な内容が効率的に成長させている。

年間 50 試合以上の公式戦が行われ、ほぼ毎週自分の力を最大限に引き出すことを要求

されている(表 5)。トレーニングの内容として 7 つのテクニック(キック、コントロー

ル、ボールを運ぶ、相手を抜く、ヘディング、個人ディフェンス、パス)を 7、8 歳ころ

に行う。それらの学んだテクニックを 9~12 歳からゲームの中で生かしていくためのトレ

ーニングを積む。テクニックのベースができ、使い方を理解した子ども達が次のステップ

へと進む。その年齢まで行ってきたトレーニンからバルササッカーの重点的トレーニング”

サッカーを読む”ことへ繋がっていく。

表 5 週末の試合に向けてのトレーニング

曜日

内容 トレーニング 目的

月曜日

リカバリー

(メンタル)

OFF

リカバリーには積極的休養(身体を動かす)と完

全休養(オフ)の 2 種類がある。

精神的な休養を与えることで、週末の大事な試合

に向けて気持ちを切り替える。

火曜日

準備

メンテナンス

・Rondo(球回し)

・ポゼッション

・狭いスペースで

のポゼッション

週のトレーニングをスタート。週末に控えた緊張

をほぐすことが大切になる。選手たちは、重要な

試合を控え、プレッシャーを感じ敏感になってい

る。なるべくリラックスさせ、明るい雰囲気を作

り出すのが重点に置かれる。

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水曜日

守備練習 ・ポゼッション練

習でアップ

・チームの守備練

・ゲーム

対戦相手に応じた準備に入る。まず守備での対応

を準備する。基本的なコンセプトは変えないが相

手の分析に基づき微調整を行う。

木曜日

攻撃練習 ・スピード練習

・シュート

・センタリング合

わせ

・チームの攻撃練

対戦相手に基づく、攻撃の準備を行う。ボールを

使ったスピードトレーニングを行うが、20分未満

にとどめると、12時間で回復できる。

金曜日

セットプレー

の確認

・スピード練習

・リスタート

・ミニゲーム

セットプレーの確認を行う。選手をリラックスさ

せ、緊張、プレッシャーヲ和らげるミニゲームで

サッカーを楽しみ、再び選手をリラックスさせて

終わる。

土曜日

試合

第 3 節 ”サッカーを読む”こと

バルセロナが重要視するサッカーを読むとは、状況判断能力を育てるということである。

バルセロナの考える状況判断能力とは、試合のなかでお起こる場面においてどんなプレー

をすべきなのかという判断する能力である。

まず、サッカーを読むことは個人から始まっていく。指導者がその選手の特性を考え、

試合の中で想定される状況を切り取り、論理立てて説明し、状況に即したプレーでの反復

トレーニングを行い、選手にそれらの成功体験を積んでいくことである。バルセロナのカ

ンテラ監督であったジョアン・サルバスがユース世代のボージャン・クルキッチに行った

トレーニングである。彼がボージャンに行ったトレーニングがフォワードがゴールキーパ

ーとの 1 対 1 のチャンスを確実に決められるようにするというものである。

ジョアンが指導したこととして 1 対 1 の場面でゴールキーパ―がどういった対処をして

くるのかを理解させ、次のステップとしてゴールキーパーの心理を理解させることでその

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シーンの中でよりベストな選択ができるようにする。というようにサッカーの試合の中で

何度も訪れるであろうプレーを切り取りその場に応じた状況判断ができるようにする。と

いうものがジョアンの考える”個人でサッカーを読む”ということである。

次のステップとして”グループでサッカーを読む”ことである。個人でサッカーを読むこ

とと同様に何千、何万というプレーの中から出てくるシーンの中から解決策を見出させる

というものである。自分が置かれている状況を理解させその時によってどんなプレーがで

きるのかをトレーニングの中で指導していく。少人数から始まり、11 対 11 の状況へとス

テップアップしていく中でプレーの方向付けをしていくことで、その状況ではどんなプレ

ーが最適でなぜそのプレーが最適なのかを子どもたちが理解できるようにすることで自発

的にプレーの質が上がっていく。これらがジョアンの考えるバルセロナの育成期から重要

視している”サッカーを読む”ということである。

第 4 節 バルセロナを支える指導者

強豪バルセロナには、その育成機関であるカンテラの指導者になるために 2 通りの方法

がある。一つはカタルーニャ州のクラブで長く育成の指導に携わり、優れた成績を残す。

それが評価され引き抜かれるパターンである。もう一つは、バルセロナのトップチームで

活躍し、引退して指導者の道を歩むパターンである。バルセロナでは二つ目のパターンが

主流で過去には、ジョゼップ・グアルディオラ等の名前が挙がる。

また、育成に携わる指導者にも 2 通りのタイプがある。ひとつは、長く育成のスペシャ

リストとして生きていこうと考えているタイプである。もうひとつは、下部組織で経験を

積み、それをステップにして将来はトップチームの指導をしたいと考えているパターンで

ある。

バルセロナの育成の指導者の傾向として多いのは、かつてバルセロナで活躍していたり、

携わっていたことがある者が多い傾向にある。その背景として、クラブの理念・哲学が現

役の頃から徹底して身に付いているためであると考えられている。クラブの理念・哲学を

理解できていない者より、指導の方法やクラブとって何をすべきなのかを理解できている

者が多いからである。

また、バルセロナが求める指導者として自分の理念を持つ指導者も必要としている。そ

の理念とバルセロナの理想とする理念が合致してバルセロナの指導者となれる。育成年代

において、目先の勝利を優先すると結果として早熟な子どもを出場させたりフィジカルを

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押し出したサッカーをしたりと、長期的な育成の視点が損なわれる。一方で育成を優先す

るとなかなか試合に勝てず、勝つことを通じた喜びや学びが伴わない可能性がある。

バルセロナの指導者の理念として一例を挙げると、グアルディオラやビラノバはそろっ

て勝利と育成は両立できるものであると言っている。その言葉の中には勝利こそが育成の

近道であるというニュアンスが含まれている。

グアルディオラ、ビラノバの言葉

彼らの考えは、仲間や指導者、対戦相手をリスペクトして全力で戦い、バルサの哲学を

守った形で勝つことそのものが育成であるということである。ここから読み取れるのは、

「育成を優先すれば勝利は二の次でもよい」という考えは甘えであり逃げであるというこ

とだ。志向するサッカーはクラブ(や学校)の哲学に沿えばよい。なにより大切なことは、

その哲学に則りながら勝つことで勝者のメンタリティを養うことであり、それこそが育成

に他ならないと考えられている。

第 5 節 カンテラでの人間教育

①バルセロナを支えるカンテラ出身の選手達

現在、バルサのトップチームには多くのカンテラ出身選手が在籍している。メッシをは

じめ、イニエスタ等多種多様な選手が多く在籍している。チャンピオンズリーグ優勝候補

の常連であるバルサのようなビッグクラブで、これほどまでに下部組織上がりの選手が多

グアルディオラ「勝つことは優れた育成と両立できる。若い頃からしっかり教育す

る良い方法は『力を出し切って勝つ』ということに慣れさせることでそれをさせるに

は、対戦相手を尊重すること、自分がクラブを代表していると自覚すること、指導す

る人間がいることを受け入れること、戦術上の規律を守ること、練習はしっかりやる

こと。 要するに、しっかりやるべきことをやりながら常に勝利を目指すことの大切さ

を子どもたちに教えることが重要だ。」

ビラノバ「バルサのカンテラでは常に勝たなければならない。この勝者のメンタリ

ティーはカンテラの若者がトップチームに上がった時に効果を発揮する。カンテラか

ら上がってきた選手の 90%は機能する。常に勝ちに行かなくては行けないと分かって

いるからだ。」

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いのはきわめて稀である。しかもそのほとんどがチームの中心であるから、バルサ・カンテ

ラのすさまじさがよく分かる。全てのポジションにカンテラ出身者がいるのも特筆すべき

ことである。過去の輩出選手を見ても、ガブリ、セルジ、グアルディオラ、フェレール、

アモールなど多士済々。バルサだけではなく、ルイス・ガルシアにレイナ、デラ・ペーニャ、

ルケ、ルフェテ、セラデス、F.ナバーロ、セルヒオ・ガルシア、ジェフレン、ボージャンな

どがカンテラから巣立ち、各トップチームで活躍をしている。

②カンテラでのバルセロナへの意識からくる人間教育

前節までや本節の①で述べたように、バルセロナは、過去、現在と大勢の世界的有名選

手をカンテラから輩出している。そのことからも見て、バルセロナというチームに所属す

ることがどれだけ名誉なことで素晴らしいことであるのかがわかる。したがって、バルセ

ロナに所属する選手は、厳しい規律を持ったスターになるという覚悟を持たなければなら

ない。それは、カンテラにおいても同じことであるとバルセロナでは考えられている。バ

ルセロナのカンテラに所属している選手は、マシアを通じて行われる勉学での人間形成だ

けではなく、普段の生活からもバルセロナの一員として恥ずかしくないように、という意

識を指導されている。

バルセロナ下部組織のテクニカル・ダイレクターとしてチームの育成を支えるギジェル

モ・アモール・マルティネスは、選手に対して、普段の

中で人間教育を行っているという。

以下は、アモールやバルセロナも下部組織全体で行っている選手に対しての指導である。

(1)バルセロナの選手として

選手の誰かが道端に落ちていたゴミを素通りすれば、「あのゴミは自分で捨てたもので

はないかもしれないけれど、見て見ぬ振りすることがバルサの選手として相応しいか?」

とコーチが問いかけた。こういったプロセスがピッチに立ったときの振る舞いにも表れる

のだとアモールらは考えている。

(2)今必要なことを瞬時に察知し実行する能力を育てる。

ある大会の日、第一試合に登場するはずのバルセロナは渋滞に巻き込まれ、少し遅れて

の到着。定刻よりやや遅れてのキックオフになった。

ウォーミングアップもそこそこに慌ただしくピッチに登場したバルセロナ。両チームと

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普段から自分は、何をすべきなのか。という意識を持たせる。これは親や指導者に言わ

れてから行動することよりも非常に大事なことであるだろう。

③戦術最重視・自主練をしない文化

FC バルセロナの育成選手は自主練をしない。街中でボールを蹴り続ける。生活の中で

ボールを触れ続けることに最大の喜びを感じながら成長していく。シュートやパスの練習

はするが、個々のスキルは重要視されない。寧ろ自分の特性をどうしたらプレーの中で活

かせるか、そうした戦術的な視点を何より重要視している。

戦術を磨くということは、選手一人一人がピッチ全体を見渡さなくては不可能だという

ことを意味する。優れた選手は皆一様にピッチを見渡す仮想的・俯瞰的視点を常に頭の中

にイメージしている。あるいはメッシのプレーを見ていればわかるが、シュート直前にゴ

ールなど見ていない。

④課題を求めない

FC バルセロナの育成選手たちは課題を求めない。つまり「何をすればいいんですか」

等という質問はしない。自身の力で、自分に何が必要なのか、ひたすら模索をしていく。

その中で湧きあがった複雑な問いに対してのみ、指導者はコミュニケーションをとる。ス

ケールが小さい学生は、その世界観も狭い。小さく、思考の均衡も縮小していく。当然大

器にはならない。FC バルセロナは美しく勝つことを常に求められる。

も試合準備が整っていたが、時間をずらした関係で 3 分の空白ができてしまった。主審か

らそのことを伝えられると、マルセル・サンス・ナバーロ監督がボールをピッチに投げ入

れ、選手に向かって指を 3 本立てた。「3 分あるよ。どうしたらいい?」

ひとつのボールとわずかなジェスチャーで、選手たちにメッセージを送る。

スタッフからもボールが投げ入れられると、バルサの選手たちはすぐさまこれに反応して

思い思いにボールを回しはじめた。変な時間が空いちゃってかわいそうだな」ピッチサイ

ドで見ていた観客が感じたことを、すぐさま指導者がケアし、選手たちもそれに呼応する。

「バルサの選手ならばどう行動するべきなのか」行動の基準があるチームは、いますべき

ことをすぐさま実行できる。

これが、アモールやバルセロナの考える「普段からの人間教育」なのである。

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これが意味することは、戦術を組み立てていく上で、自発的に考えその場でのより良い

プレーとはなんであるかの選択をたくさん持てることにつながるのではないだろうか。

指導者に支えられながら、自分でプレーを考えサッカーをする喜びを感じることが、上達

のための道であるとバルセロナは考えている。そういった選手をバルセロナは育成してい

るのである。

この自発的に考え、自らが答えを出そうとする姿勢は教育の場においても重要なのでは

ないかと筆者は考える。教師が、子どもに一つの問題に対して自発的に考えられるような

場をたくさん設けてやることが今後の日本サッカーだけではなく、教育としても必要なの

である。

第 6 節 バルセロナが行っているサッカー普及:バルセロナ・アカデミー

①バルセロナサッカーアカデミー(以下 BSA)とは

BSA は、元 FC バルセロナの育成機関(カンテラ)で優れた実績を持つ指導者を中心に

構成されたメンバーにより優秀な選手の育成とより良いサッカーの普及を目的に設立さた

ものである。世界の子供たちがサッカーをより楽しむことができサッカーレベルをさらに

向上できるよう、BSA では FC バルセロナ育成組織で蓄積された知識と経験を基礎とし、

さらに専門家が「戦術」「技術」「精神」の側面から子供たちの可能性を最大限伸ばせる

指導方法を構築しているのが特徴である。

②BSA Level Up Camp

昨年は世界 20 か所以上で開催したこのキャンプでは、FC バルセロナの持つ世界で最も

注目されるバルサメソッドを独自に進化させた最新の指導として、直接子供たちが体験で

きるとともに新しい仲間と1歩上のレベルを楽しみながら目指す充実した内容となってい

る。

③トレーニング

BSA は高度な資格と専門的な知識を持つ専門家チームを持ち現代サッカーを研究、独自

のトレーニングメソッドを開発している。その内容は、パス・ドリブル・クロス・シュー

ト・ディフェンスなどの「基礎技術」となる。そして基礎技術を最大限生かすために必要

な「戦術」「状況判断」など、BSA は各プレーヤーが持っているすべての才能を開花させ

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ることを目的としてトレーニングプログラムを構築している。このプログラムは各プレイ

ヤーの才能を最大限伸ばすことができ、各選手が所属しているクラブでの活躍を支援する

ことを目的としている。

1.技術的トレーニング

次のプレーを考えたコントロール、軸足の場所、蹴り足のポジションの学習、逆腕の動

きの学習など、現地でこの年代で特に重要視されている技術練習をメインに行う。

2.戦術的トレーニング

戦術的練習メニューの特徴としては、個々の認知力、判断力を高めることにより組織と

してボール保持率を高めていけるようなポゼッション練習をメインに行う。例を挙げると、

パスコースを意識した練習、スペースの有効活用を意識した練習、サイドチェンジを意識

した練習等々がある。意識した練習、スペースの有効活用を意識した練習、サイドチェン

ジを意識した練習等々である(図 14)。(BSA ホームページより)

BSA では各プレイヤーが持つ才能を開花させるとともに、各プレーヤーが向上心を持っ

て取り組めるトレーニングを行っている。また各プレイヤーが各チームへ貢献するために

必要な知識や考え方を指導し心身ともに素晴らしい選手を輩出することを目指している。

バルセロナの強さの根幹は徹底したクラブの理念・哲学やサッカー選手としてだけでは

なく、人間的にも優れた選手を育成することにある。幼い頃からのサッカー中心の生活や

研究され続けているトレーニングや、環境の整備など育成方法だけではない幅広い要素を

揃えたこれらがバルセロナの強さの根幹であると言えるであろう。

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第 5 章 考察

前章までで述べた日本・ドイツ・オランダ(アヤックス)・バルセロナ FC の 4 つの育

成機関・または育成機関で行われている方法等の特徴を研究して、日本と海外の育成の違

いや、特徴から比較する。

第 1 節 各国、チームの特徴

①日本

力のある海外のチームから学び、いいものを吸収し、自国の特徴を活かしたサッカーの

スタイルを明確にしようとしている。育成年代におけるより、優れた個の育成のためのト

レセン制度によるエリートの育成。トレセンからのグラスルーツへの情報の共有を図って

いる。また、育成の二大要素として高校・クラブチームのユースが挙げられる。

JFA アカデミーのようにサッカー育成だけではなく、社会性や勉学でも支援できるような

人間教育の環境が揃っている機関が増えてきている。

②ドイツ

”DFB-Talentforerderung”を中心とする”Talentzentren”のコンセプトである全てのタ

レントにチャンスが与えられるようにすること。ドイツのどの地域のどの選手でもチャン

スが与えられるよう DFB 専任のコーディネーターが中心となり、各地域の選手を常にス

カウティングできるようにしていること。ドイツのトレセン制度と各専門の学校に行くこ

とを薦めたり、中高一貫指導を取り入れたりといったものが特徴としてあげられる。早い

時期からの人生の選択により、子どもの将来の確立を図り、その将来のための知識や技能

といった人格形成や人間教育を行っている。

③オランダ

オランダの特徴として挙げられるのは、指導者の充実である。指導者になるためのカリ

キュラムであったり、条件の厳しさ等が挙げられる。その中から数多くの指導者を輩出し

ている。(グアルディオ、クライフ等)また独自の育成機関の充実、トレーニング方法で、

世界中からその育成のメソッドや、システムに対する注目が高い。クラブの中でも極的な

セレクションや、チームとしてのコンセプトが画一されている。勉学を第一に考えていて、

普段の素行が悪い選手に対しては、厳しい措置をとることもあるといったサッカーだけで

はない人間的にも優れた選手の育成を行っている。

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④FC バルセロナ

カンテラを中心とする育成によってクラブの理念・哲学を幼い頃より、身に付かせてい

る。また、マシアという寮や昔からのクラブとしての人気や、クラブの価値を感じさせる

こと。バルセロナというチームに所属することはどういった選手でなければならないのか

といった、厳しい規律や社会性を持たせるための人間教育が普段の生活の中から行われて

いる。また、勉学に対しても同様で子どもの社会性、基礎知識といったサッカー選手以外

の選択肢を子どもが将来持った時のための教育がされている。年間 50 試合以上の経験を

積むこと。元在籍選手によるクラブの哲学が育成期から普及されていること。

第 2 節 日本と海外の違いについて

①サッカーの環境による比較

まず、日本と海外の大きな違いについてはヨーロッパには、サッカー発祥の地とされて

いるイギリスを中心にサッカーが盛んで、各クラブや代表の試合でもトップチームの試合

を見ることができ、サッカーに触れる機会が多いということが挙げられる。トップチーム

の良い試合や自分の憧れとする存在は、育成期の選手が成長するのに優れた手本があり、

育成期の選手の目標になり得るであろう。また、それらの手本となる選手らを見て、育成

期の選手がチャレンジする機会が無数にある。

日本は、J リーグができ、日本のサッカーファンの目は肥えてきて、世界的に有名なク

ラブに移籍をする選手が出てきている。しかし、まだ世界レベルといえる程の実績を残せ

てなく、海外へのチャレンジをする機会が多いとは言えない。育成期の選手がチャレンジ

できるような機会や場を設けられるようにしていく必要があるであろうと考えられる。

②育成する上での育成理念や育成機関の充実、育成においての考え方についての比較

第 1 章での述べたように、日本の選手育成において日本の特徴を活かしたサッカーをし

ていくことが重要であると考えられている。では、実際どういったサッカーが日本の特徴

を表しているのかということになる。

バルセロナのような確固とした理念・哲学が足りないことにより、強豪国のサッカーを

学ぶことはいいことであるが、日本独自のサッカーというものがどういったものあるべき

なのかというものが希薄であるため、明確にするべきだと考えられる。また、第 4 章で述

べた、育成をする上での考え方として、グアルディオラやビラノバの様な考え方は日本の

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高校生世代においても同様の論争が湧き上がったことがある。小峰忠敏監督率いる国見高

校がフィジカルを全面に押し出したサッカーで 2000 年代前半の高校サッカー界を席巻し

ていた。大久保嘉人、平山相太らが日本一に輝いた時代である。ちょうど同じ時期、日本

サッカーは劇的な進化を遂げ、98年W杯初出場から 2002年自国開催によるW杯初勝利、

そして中田英寿や中村俊輔のような非凡なパスセンスをもったプレイヤーを中心としたポ

ゼッションを伴うサッカーを世論としても志向し始めていた時期でもあった。そんな中議

論の的となったのが国見高校のサッカースタイル(パスサッカーに対抗した)の是非であ

る。しかし小峰監督の答えは実に明快であった。「勝ってから反論してください」。パス

サッカーがそんなにも素晴らしいものであるのであれば、まずは勝ってみてくださいとい

うことだ。小峰監督の中には勝つことでしか学べないことがあるという信念があったのだ

ろう。勝利と育成は相反する概念ではなく、勝利の中に育成が包容されていると言った考

え方である。

③少年期からの試合数の差

育成期での試合の少なさも挙げられるであろう。第 4 章でも述べたようにバルセロナの

カンテラでは、年間に公式戦を含めた試合を 50 試合以上、つまり週に一回程度は試合が

行われているのである。一方で日本の育成期における公式戦の数は、極めて少ない。それ

が原因で試合や公式戦では、試合に出る選手が固定されがちである。そうすると選手一人

一人の試合に出る機会が少なくなってしまって、選手の育ちに偏りができる。強豪校等に

見られるのがいい例である。部員 100 名といった強豪校では、上手くても試合に出場でき

る機会が少なく、またレベルが下の選手にとっては、試合のための練習ではなく練習のた

めの練習になってしまうと考えられる。

少年サッカーも技術があるのに海外のチームに勝てない原因の一つが試合数の少なさ

であるだろう。また、少年期の練習の特徴として、日本では、場面を切り離しての反復を

ただやっているだけの傾向があると海外の指導者は言う。確かに、技術は育つであろう。

しかし、それだけではいざ試合の時の想定が成されていないために、少年サッカー期の選

手達はバルセロナの様な状況判断能力に優れているチームに対して後手に回ってしまうの

である。

日本では、武道のように反復練習をしてこそ力が付くと考えている指導者は少なくない

(先述した国見高校の小峰忠敏監督の指導もそうであった)。反復練習を全て否定するわ

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けでは決してない。しかし従来の少年期から反復練習をしていく様な練習方法をとり続け

ていくならば、今後日本と海外の差は開く一方であろう。これからの少年サッカーの発展

のためには、指導者があえて子どもに指導しないといった子どもの発想が出てくるまで根

気強よく待ってみる等、子どもの自主性に働き欠けるような指導が必要であと考えられる。

④トレセン制度についての比較

トレセン制度についても同様なことが言えるであろう。各地で選抜会に参加した選手の

中で選ばれた選手のみがトレセンでの指導を受けられるのだ。しかし、このトレセン制度

では選手のその場での試合中のプレー等しか見ることはできない。

筆者は、”DFB-Talentforerderung”を中心とする”Talentzentren”のコンセプトである全

てのタレントにチャンスが与えられるような機会が必要なのではないかと考える。選考会

という緊張した状態でのプレーより自分のリラックスした状況でのプレーを見ることの方

がより、その選手の良いところが見られるからであろうと考えられるからである。

公式戦の内容にも言えるであろう。日本の公式戦では、トーナメント方式、またはグル

ープ総当たり戦を行っている傾向が強い。逆に海外のサッカーでは、シーズンをグループ

でホーム・アウェイでの試合を行っている。これらの違いも日本の育成期での試合数が少

ないことに繋がるであろうと考えられる。

⑤人間教育についての比較

4 つの育成の中の人間教育について比較すると、共通しているのは、どの育成でも勉学

に妥協はさせないこと、人間教育として、選手としてそのチームに所属するということは、

どんなことであるのかを選手に考えさせること等道徳的な人間教育を重点的に行っている。

JFA アカデミー福島では、実習プログラムの中でマナーや、地域での労作体験等のより細

かな人間指導を行っている。このことから、JFA アカデミー福島等で行われている人間教

育は最も優れているであろう。それは、日本サッカーの特徴であるフェアプレーにも表れ

ている。しかし、もしそのフェアプレーである日本サッカーと海外の選手と比べたときに

日本の選手に相手を思いやる気持ちから、1 プレーでの絶対に 1 対 1 に負けないといった

気持ちが海外の選手より、劣っている可能性も考えられる。フェアプレーを重きに入れた

人間教育はもちろん大事である。しかし海外との試合で勝てないという点で足かせとなっ

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てしまっているのならば、必ずしも日本サッカーの人間教育というものは、世界で戦う上

ではベストではないのかもしれないと筆者は考える。

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第 6 章 結論

本論文の中で日本サッカーと海外のサッカーを比較したことを踏まえて、今後日本サッ

カーの育成機関が力を入れていくべき点を挙げる。

1 点目は、トレセン制度の見直しである。前章にも述べたように育成期の選手全体での

レベルが高い内容の練習を受ける機会が少ない。レベルの高い個ばかりに力を入れるばか

りでは、日本が育成年代で行っていこうと考えているボトムアップは実現不可能であろう。

日本全体で目指す日本サッカーを実現させるために育成年代からの統一された意識を持っ

て指導していく必要があると考える。そのために日本のトレセン制度の選考会だけではな

く、JFA からの公認のコーチによる各地へのスカウティングが必要であると考えられる。

また指導をしていくために JFA 直属の指導者の育成をすることも必要であると考えられ

る。より良い指導ができるように、指導者のライセンス取得のための講習会等の情報交換

を JFA から主催し地域毎の指導者へと発信していくべきである。

2 点目は、育成機関・人間教育の場の数の充実である。第 1 章でも述べたように JFA で

は福島、熊本宇城、堺を代表するように、サッカーだけではなく、学校の教育以外の学習

プログラムや実習プログラム等、社会にでても困らないようにするための機関が設立され

てきている。海外での経験を積むことや国内でのレベルの高い指導機関を充実すること、

海外のサッカー強豪国の育成方法や子どもに持たせる意識の改革等で日本サッカーのレベ

ルは自然と上がって来るのではないだろうか。ドイツ、オランダ、バルセロナでも行って

いるように、サッカーの育成だけではなく、地域の学校等の教育機関とも連携して子ども

が社会に出たとしても困らないように学力等の充実化を図っている。そのために、JFA と

教育機関は連携を密にしていくことをしていくべきであると筆者は考える。その理由とし

て育成年代としての一般的な知識だけではなく、アスリートとして知っておくべき知識、

そして何より一人の人としてこれから先、生きていく子どもに対してサッカー以外でも伝

えなければいけないこと(良好な人格形成を行うため)を指導していくべきであると考え

るからである。そのための機関の充実を図るために各地にアカデミー、もしくはアカデミ

ー主催である練習会やアカデミーのようなプログラムを育成機関と教育現場と連携し実施

することでレベルの高い指導がより、各地で発信されるであろう。

3 点目は育成期の選手達の試合の年間のシーズン化である。日本の育成期の学校の部活

の特徴として 1 年間を通してオフシーズンがないため、育成期の選手の休養期間がない。

世界的に見ると日本の育成期における、このような傾向は珍しい。プロサッカー選手にと

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っても必要な心身ともにリラックスをしないとコンディションを整えるための期間を設け

る必要があり、それは育成期においても変わりはないと考えられる。公式戦や試合をシー

ズン中の期間で集中し、オフシーズンでしっかりと休息を取ることでコンディションを整

え次シーズンに集中ができるようになり、選手のパフォーマンスが上がると考える。

日本サッカーが今後世界ベスト 10 に入っていくために、トレセン制度の見直しによる少

年サッカーからの選手のための環境を整えること、そのための指導者の充実、サッカーに

限らず、一人の人間として生きていくための教育を受けさせること(サッカーだけではな

い人間教育が)重要である。また、少年サッカーをはじめとした育成期からのシーズン化

により、育成期の選手がサッカーに集中できるようにすることで少年サッカーからのレベ

ルアップを図ることができると考えられる。

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おわりに

本論文では、日本の少年サッカーから育成年代において今後やっていくべきであろうと

筆者が考えることについて海外の強豪国の育成機関や育成方法、さらには人間的教育を踏

まえたて比較・検討を行ってきた。一見、日本の育成は、海外にまったく届いてないよう

に記述しているが、海外からの日本の育成については、高い評価を得ている箇所もある。

しかし、それでも尚、良い国の体制や考え方をしていくことで日本サッカーが強くなって

いくために本研究で日本サッカーと海外の強豪国の育成を比較した。

そのうえで日本が世界と戦うために必要な第 1 段階が少年サッカーのレベルアップであ

る。日本は、経済的にも環境的にも恵まれている。その恵まれている状況を最大限に利用

し、世界各国の強みに勝るものをこれから作り上げていく必要があるだろう。そのために

学校教育や家庭教育とサッカーの育成機関の連携等による環境づくりをより高いレベルで

整えることが必要である。より良い環境で指導する中で、子どもが様々な発想を持ちチャ

レンジする心を育てていくことが重要である。これからの未来の人材育成のために少年サ

ッカーの発展を図ることで、今後の日本サッカーが強豪国と渡り合い、日本国民が夢に見

た W 杯優勝をもたらしてくれるだろう。その結果、日本サッカー界だけではない、経済効

果等により日本が豊かになっていくのではないか。

日本の発展。それを担う存在として少年サッカーの発展を願い筆を置くこととする。

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参考文献

・日本サッカー協会(JFA)公式ホームページ http://www.jfa.jp/

・JFA トレセン制度 http://www.jfa.jp/youth_development/national_tracen/

・JFA アカデミー福島公式ホームページ http://www.jfa-academy.jp/

・リバプール・コーチが指摘する日本の育成現場に欠けていること

http://www.footballchannel.jp/2013/09/03/post8505/

・ドイツサッカー協会(DFB) http://www.dfb.de/index/

・「ドイツサッカー協会における若手タレント発掘、育成プログラム 」(少年期からの

コーチングの課題) スポーツ教育学研究 祖母井秀隆 [20](-), 35-38, 2000

・「ドイツブンデスリーガにおけるユース育成に関する研究-Research on Developing

of Youth Academy in Bundesliga Clubs-」 早稲田大学 大学院スポーツ科学研究科

・「日本-ドイツ間における育成制度の差異からみる、日本サッカー活性化計画」

http://katsutoshi31.web.fc2.com/Top/Report.html

・ドイツの主力選手を育てた「エリートシューレ」とは?ユース育成システムの秘密!

http://www.jsports.co.jp/press/article/N2014110121492502.html

・「オランダサッカー選手育成プログラム」

大修館 オランダサッカー協会 2003 年 10 月 10 日

・「オランダサッカー強さの秘密」 三省堂 糀正勝 2000 年 6 月 30 日

・アヤックス公式ホームページ

http://jp.uefa.com/teamsandplayers/teams/club=50143/domestic/

・名門アヤックスが取り組む“革命”から見える『ユース育成システムの未来像』とは?

http://www.soccer-king.jp/sk_column/article/33480.html

・FC バルセロナ公式ホームページ http://www.fcbarcelona.jp/

・「史上最高バルセロナ-世界最高の育成メソッド」

小学館 ジョアン・サルバス 2009 年 11 月 6 日

・「FC バルセロナの人材育成術」

アチーブメント出版 アルベルト・プッチ・オルトネーダ 2011 年 9 月 29 日

・人生はサッカーだけじゃない。社会に適応するバルサの人間教育

http://www.sakaiku.jp/series/jwc/2013/005622.html

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謝辞

本論文の作成にあたり、ご指導、ご鞭撻いただいた河野寛講師にまずは感謝の意を示し

ます。河野講師には論文作成初期から河野講師の経験や知識をご教授いただきました。河

野講師から教えていただいたことを今後、発展させていくために努力していきます。また、

前年度卒業研究体育指導教員であった中野紀明教授にも感謝の意を述べさせていただきま

す。そして、卒業研究体育でともに研究を行った仲間にも感謝の意を述べます。研究の内

容の相談や資料等、ご協力をいただきました。そして、最後に大学まで育ててくれた両親

に感謝します。初等教育で学び、本研究についてのご協力に対し、感謝を述べて終わりと

させていただきます。