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乳がんの 治療を受けられる方へ 聖マリアンナ医科大学病院乳腺内分泌外科

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乳がんの

治療を受けられる方へ

聖マリアンナ医科大学病院乳腺内分泌外科

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<はじめに>

この冊子は乳がんと診断されて、この聖マリアンナ医科大学

病院およびその関連施設でこれから治療を始めようとされ

ている患者さんおよびそのご家族のために作成しました。病

気のこと、これから行われる治療のことについて、少しでも

理解が深まれば幸いです。

これから始まる乳がん治療は長い道のりになるかもしれま

せん。しかし、乳がんは比較的治る方の多い疾患です。根気

よく治療を続けていただくことで、健やかに過ごしていただ

きたいと思います。ご不明な点は、いつでも身近な医療スタ

ッフにお尋ねください。私たちは皆さんをチームで支えたい

と考えています。

聖マリアンナ医科大学 乳腺・内分泌外科

i

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~ 目 次 ~

✼ P1 乳がんとはどのような病気か?

✼ P2 乳がんはどの様に診断されるか?

✼ P3 乳がんの病期(ステージ)

✼ P4 乳がんのタイプ(サブタイプ)

✼ P5 乳がんの治療

✼ P8 手術後病理検査報告書のみかた

✼ P9 化学療法の副作用

✼ P11 手術の種類

✼ P15 手術を受けるにあたって

✼ P16 手術後のリハビリテーション

✼ P19 遺伝子解析検査 ~Oncotype Dx~

✼ P20 遺伝性乳がんについて

✼ P21 術後の定期診察について

✼ P22 治療にかかる期間・費用

✼ P23 ホームページのご案内

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★ 術後の治療方針決定の補助に有用な遺伝子検査があります

OncotypeDX (p19 参照)

当院における診療の流れ

外来で乳がんと診断

□ 手術療法(入院)(p11〜参照)

・乳房部分切除術

・乳房切除術(乳頭乳輪温存/切除)

・乳房再建術(ティッシュエキスパンダー

挿入)

・センチネルリンパ節生検

・腋窩リンパ節郭清

※手術前日入院(病状により変更あり)

入院期間:術式による(約1〜2週間)

局所治療

□ 術前化学療法(外来)(p6〜参照)

(約6ヶ月)

点滴治療は腫瘍センターで行います

※治療中間(3 ヶ月後)、終了(6 ヶ月)後

に画像で効果判定(ブレスト&イメージングセ

ンタ—)

全身治療

□ 術後化学療法(外来)

(p6,9〜参照)

(3〜6ヶ月)

点滴治療は腫瘍センターで行います

□ 術後ホルモン療法(外来)

(p7 参照)

(5年)

・ホルモン剤内服 ・ホルモン注射

□ 放射線治療(外来)(p5〜参照)

1回約5分程度

(5~6週間・平日、毎日)

□ 追加手術(外来・入院)

・断端追加切除

・腋窩リンパ節郭清

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≪乳がんとはどのような病気か?≫

乳がんは乳腺の主に乳管という母乳を運ぶ管の部分の細胞から発生します。母乳を作

る器官である乳腺は、母乳を分泌する「小葉」と呼ばれる部分と、母乳を乳頭へ導く「乳

管」、そしてそれを支える周囲の間質からなり、周囲を脂肪組織で覆われています。

がんが乳管を破壊して管の外に及ぶことを浸潤と呼び、こうしてできるのが「浸潤が

ん」です。まだ浸潤せずに乳管の中にとどまっているものを「非浸潤がん」とよび、こ

の段階ではリンパ節や遠くの臓器に転移することもありません。非浸潤がんは乳がん全

体の約20%を占め、時間が経つとやがて浸潤癌になります。

(非浸潤がん) (浸潤がん)

リンパ液が流れるリンパ管に連なって、全身に無数に存在する豆のような形をした器

官がリンパ節です。体を流れるリンパ液中の老廃物や細菌、がん細胞などの異物を見張

り、除去する働きがあります。乳房から流れるリンパ流は、腋窩(わきの下)、鎖骨の

上下、胸骨の横にあるリンパ節を通過して行きます。リンパ節へのがんの転移の有無は

病期を判断する一つの因子であり、遠くの臓器へのがんの転移の可能性を予測するため

に重要です。がんの程度を正しく評価することは治療方針を決める上で非常に重要で、

複数の検査が必要です。

また、がんと診断するために

必要なのが「針生検」ですが、

がんのごく一部を採取しての検

査であり、針生検の結果で非浸

潤がんと診断されても、手術で

取って詳しく全体を調べてみる

と浸潤癌と診断される事もあり

ます。浸潤がんの周囲では乳管

の中にとどまりながら伸展して

いることもあり、がんの広がり

を正確に知ることが切除範囲や

その方法(乳房切除術や乳房部分切除術)を決めるうえで重要です。

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≪乳がんはどの様に診断されるか?≫

胸にしこりを認めた場合、触診だけでがんと診断することはできません。そのしこり

が良性のしこりであるのか、悪性の乳がんであるのか、乳がんであった場合は治療方針

を立てるために、更に様々な検査を受ける必要があります。

◇ 視・触診

乳房のしこり、皮膚の変化、乳頭分泌物、腋の下のリンパ

節などを診察します

◇ マンモグラフィ

乳房専用のレントゲン撮影。触診では分からないような、早

期のがんを発見するできることもあります。透明なプラスチッ

ク板左右、上下と乳房をはさんで撮影します。

◇ 超音波検診

ゼリーをつけて行う検査。放射線を使用しないので妊娠中の

方でも検査が可能です。マンモグラフィではわかりにくい病変

が見つかる事もあります。

◇ 細胞診

超音波検査でしこりやリンパ節の位置を確認しながら、細い針

を刺して細胞を針の中に吸い込み、顕微鏡で良性か悪性かを調べ

る方法。

◇ 組織診

外来で、局所麻酔をして行います。細胞診で使うものよりやや太

めの針を刺し、しこりの一部組織を取り顕微鏡で調べる方法。針の種類にはいくつ

かあり、バネ仕掛けの針を用いる「針生検」や、より多くの組織を得ることのでき

る「吸収針生検」(マンモトーム、バコラ)などがあります。この検査により後に述

べるがんの性質(サブタイプ)が分かります。

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◇ MRI(磁気共鳴画像診断)

強力な磁場の中で、磁気の力を利用して体の組織を撮影する検査です。乳房を撮影

する時は専用の装置が必要で、うつ伏せになって撮影します。造影剤を使います。当科

では、新百合ケ丘にあるブレスト&イメージングセンターで主に行っています。ペース

メーカーや人工関節など金属があると撮影できない事があります。

◇ CT(コンピュータ断層診断)

X線を用いて体の断面を撮影し、得られた像をコンピュータ処理することにより画像

化する検査です。乳房や近くのリンパ節、遠くの臓器(肺・肝臓・骨)に病変がないか

を同時に評価することが可能です。造影剤を使って行う事が多いです。

◇ 骨シンチグラフィ

がんが骨に転移していないか、全身の骨を一度の検査で調べる事ができます。骨折

や炎症があっても所見として表れます。ラジオアイソトープ(放射性同位体)を使いま

す。

◇ PET/CT

全身に転移がないかの診断に用いることがあります。がんでは糖の代謝が亢進してお

り、この仕組みを用いて、ラジオアイソトープを注射して撮影します。

PETを用いたマンモグラフィ(PEM)もがんの診断に有用な事があり、同時に撮影できま

す。

◇ 腫瘍マーカー

がんは特徴的な物質を産生することがあり、そのうち血液中に増加する物質を腫瘍マ

ーカーとして検出します。がんが転移・再発したとき、治療の効果をみるのに一つの指

標として測定することがあります。(CEA 、CA15-3など) 術後に定期的に測定する意義

はあまりありません。

≪乳がんの病期(ステージ)≫

がんの大きさや広がり具合、進行度を示すものを病期(ステージ)といいます。複

数の検査結果を総合的に判断して、以下の如く病期を分類します。しかし、 終的には

術後の病理結果によって決定されるため、術前と術後の病期が異なる場合もあります。

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病期分類(TNM分類)

大きさ(T) リンパ節転移(N) 遠隔転移

(M)

病期(ステージ)

Tis(非浸潤癌) 0期

2cm以下 なし なし Ⅰ期

2cmを超える

が5cm以下

なし

あり なし

ⅡA期

ⅡB期

5cmを超える なし

あり なし

ⅡB期

ⅢA期

大きさ問わず

しこりが胸壁または皮膚へ進展 なし ⅢB期

腋の下と胸骨傍リンパ節または同側

鎖骨下または上のリンパ節転移 なし ⅢC期

他の臓器に転移している Ⅳ期

≪乳がんのタイプ(サブタイプ)≫

乳がんは女性ホルモンに反応する受容体(ER:エストロゲン受容体、PgR:プロゲステ

ロン受容体)と、上皮細胞増殖因子に関わる受容体(HER2タンパク質)の発現状況により、

サブタイプに分類されます。がんのタイプによって化学療法やホルモン療法を組み合わ

せ適切な治療が行われます。治療方法の詳しい説明は次項で述べます。

ER(+)(陽性) ER/PgR (-)(陰性)

HER2 (-)(陰性) ルミナルA (Ki−67低値)

ルミナルB (Ki−67高値) トリプルネガティブ

HER2 (+)(陽性) ルミナルB(ルミナルHER2) HER2タイプ

◇ エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体

女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)は、閉経前には主には卵巣で作ら

れます。子宮内膜の増殖、乳腺組織の発育、月経などをおこす働きのあるホルモンです。

閉経後になると、副腎や脂肪組織で少ないながらエストロゲンはつくられ続けます。癌

細胞にエストロゲン受容体が発現している場合はホルモン療法の適応となります。

◇ HER2(ハーツー)

癌細胞の表面に発現している事があります。これがある場合に分子標的治療

薬(ハーセプチンなど)が非常によく効くことがあります。

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≪乳がんの治療≫

乳房にできたがんは、その場に留まっている場合と血液・リンパの流れに乗って身

体の別の部位に及び潜んでいる場合があります。その状況に応じて、「局所治療」と「全

身治療」を上手く組み合わせて治療法を決定していきます。検査では見つからない様な

微小ながんは、何も症状を引き起こしませんので、実際に存在するのかどうかもわかり

ません。一旦「局所治療」である手術で取り切ったはずのがんが体の別の部位に再発す

ることがあります。これを防ぐためにも「全身治療」は効果を発揮します。

ご自身が受けられる治療ですので、何故必要なのか、どの様な治療なのかをしっか

り理解しましょう。不安なことは治療の前にしっかり聞いておくようにしましょう。

<局所治療>

◇ 手術療法

がんが乳管の中に留まっている非浸潤がんでは局所治療すなわち手術でがん

をすべて取り切ることで治癒を目指します。浸潤がんでも、乳房に存在するがん

はすべて切除して取り除きます。乳房切除術と乳房部分切除術(乳房温存術)がありま

す。乳房切除術の場合には同時に乳房再建術を行うこともできます。

乳房と共に手術で切除を検討するのが腋窩リンパ節です。腋窩リンパ節を切除する必

要があるか調べる方法として、センチネルリンパ節生検があります。センチネルリンパ

節に明らかな転移がある場合、その周囲のリンパ節も全て切除する「郭清」を行うこと

があります。

◇ 放射線療法

乳房部分切除術を行った後は、必ず温存した乳房に放射線を照射します。手術の際に

留置したチタン性のクリップはこの際に目印として使用します。乳房内の再発を予防す

るためです。また、乳房切除術を行った場合でも5cmを超える大きさの腫瘍やリンパ節

転移が多数認められた場合は、再発率を下げるために、胸壁や腋窩、鎖骨上周囲などへ

放射線をあてることがあります。

放射線療法は、手術後4〜6 週目ころに放射線治療医の診察があり、治療の計画を立

てます。その後、 長約6週間、平日に毎日通院して行われます。1 回の照射時間は、5

分程度です。具体的な照射の方法や期間については放射線科医師にお聞き下さい。

放射線照射中は、脱毛や吐気は殆ど無く、一時的に照射部位が日焼けしたように赤く

なるなどの副作用がみられることがあります。

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<全身治療>

◇ 化学療法(抗がん剤治療)

乳がんの抗がん剤治療は通院で行います。大学での抗がん剤の点滴治療は「腫瘍セン

ター」で、ブレスト&イメージングセンターでは「化学療法室」で受けて頂きます。

1. 術前化学療法

手術前に行う化学療法のことです。この治療法のメリットとして以下のようなものが

あります。

○腫瘍を縮小させることによって乳房温存療法の適応が拡大し、温存率が向上する、あ

るいは切除不可能な大きさの癌を切除可能な大きさにすることができる。(効果があ

っても必ず温存療法が可能となるわけではありません。)

○化学療法の効果を直接確認することができる。

○全く効果がない場合、治療を早めに中止したり、他の薬剤へ切り替えたりすることが

できる。

2. 術後化学療法

手術後に行う化学療法のことです。摘出した組織を病理検査で調べ化学療法の適応を

決めます。

<スケジュール>

通常3週間毎に通院してもらい、約2時間の点滴を4~8回(3~6ヶ月)行います。抗が

ん剤により1 週間毎に通院して行うこともあります。

適応のある患者さんに対しての化学療法の意義については、多くの臨床試験が行われ確

かめられています。つまり、再発率を下げ生存率を上げることが証明されており、乳が

んの治療において極めて重要な方法です。

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◇ 内分泌療法(ホルモン療法)

乳がん細胞には女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受け

て増殖するものがあります。内分泌療法(ホルモン療法)はこの

ような女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受けるタイプのが

んに対して行われる治療法です。 内分泌療法(ホルモン療法)は化学療法より作用がマイルドで、比較的副作用が少な

いという特徴があります。手術後、長期間(2~5年、 近では10 年も検討されている)

継続して使用することで、再発の予防効果が期待できます。

ホルモン療法剤の投与法と主な副作用

薬剤(商品名) 閉経前

投与方法 主な副作用

抗エストロゲン剤

(タモキシフェン※) 前後

毎日経口

(約5年)

ほてり、子宮内膜症、体重

増加、うつ症状など

LH-RH アゴニスト製剤

(ゾラデックス、

リュープリン)

皮下注射

(4週または 12 週に 1

回)

ほてり

アロタマーゼ阻害剤

(アリミデックス※、アロ

マシン※、フェマーラ)

後 毎日経口

(約5年)

手のこわばり、関節痛,骨

粗鬆症など

※ジェネリック製剤あり

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≪手術後病理検査報告書のみかた≫

生検や手術で摘出した組織は顕微鏡により、がん組織があるか、またそのがん組織に

はどのような性質があるかを調べます(病理検査)。全身治療の計画は、年齢や閉経の

状況、その他健康状態に加え、この病理検査の結果が重要な指標となります。

病理検査報告書の各項目については以下の通りです。

1. 占拠部位:がんが存在していた位置

A:上内側部、B:下内側部、C:上外側部

D:下外側部、E:乳輪・乳頭部

2. 腫瘍径(浸潤部):浸潤部の大きさ ※浸潤がんの場合のみ

__ X __ X __cm

3.腫瘍の広がり:乳管内の広がりも含めた大きさ

4.組織型:

非浸潤性乳管がん Ductal carcinoma in situ

非浸潤性小葉がん Lobular carcinoma in situ

浸潤性乳管がん Invasive ductal carcinoma

(乳頭腺管がん、充実線管がん、硬がん)

特殊型 (粘液がん、浸潤性小葉がん、浸潤性微小乳頭がん、他_____)

5. 浸潤度:g(乳腺)、f(脂肪)、s(皮膚)、p(胸筋)、w(胸壁)

6.リンパ管侵襲(ly)(+、ー) 静脈侵襲(v)(+、ー)

7.Tumor grade(核グレード):がん細胞の核の形態と核分裂の程度(1、2、3)

8. 腋窩リンパ節の転移状況:センチネルリンパ節( / )、レベルI( / )、

レベルII( / )

9. ER(エストロゲン受容体)__%、PgR(プロゲステロン受容体)__%

10. HER2(ハーツー)タンパクの発現

(HercepTest):0、1+、2+(FISH__:陽性、陰性)、3+

11.MIB-1 index(Ki-67)(細胞増殖能):___%

>>今後の治療方針<<

<左>

A C

B D E

8

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≪化学療法の副作用≫

化学療法、抗がん剤治療は全身に作用することで白血球減少、脱毛、吐き気、胃腸な

どの消化器粘膜への影響(口内炎や下痢)、手足のしびれ、むくみ、爪の変化などがあ

ります。これらの副作用の程度は薬剤によって異なり、また個人差があります。

◇ 代表的な副作用

【脱毛】

抗がん剤の治療を開始して2週間目頃に髪の毛が一気に抜けます。これは髪の

毛をつくる細胞(毛母細胞)が細胞分裂の活発なところであるために、抗がん

剤の作用を受けやすく、結果として髪の毛が抜けてしまいます。毛が抜けてし

まうのは抗がん剤の治療による一時的な副作用です。治療が終了すると徐々に

生え始めてきます。

【白血球減少(骨髄抑制)】

血液の中には白血球・赤血球・血小板の3 つの成分があります。これらの成分

はすべて骨髄というところで作られます。抗がん剤の治療により骨髄が影響を

受けて、骨髄機能が低下することを、骨髄抑制と言います。このうち白血球の

数が少なくなると感染が起こりやすくなります。手洗いやうがいなど十分に対

処することが可能です。

【吐き気】

抗がん剤によっては吐き気が出現することがあります。そのためあらかじめ吐

き気を強力に抑える予防薬を抗がん剤の点滴が始まる前に使います。予防薬に

より、吐き気をまったく感じない人もいます。さらに帰宅後に服用できるよう

経口の予防薬も処方します。詳細はパンフレットを御覧ください。

【無月経】

閉経前の方は抗がん剤治療により一時的に無月経になる方がほとんどです。30

代以下の方では、治療後回復することが多いですが、妊娠・出産を希望される

方は担当医にご相談ください。当院産婦人科にて妊孕性温存治療に関して相談

することができます。

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化学療法は通常外来で行います。化学療法を完遂する上で日常生活を平常に保つこと

は極めて重要です。日常生活を過ごすには、適度な運動や食事が必要です。また時には

病気を忘れることができ、ストレス解消にもつながります。

化学療法を安全に受けるためには患者さん自身にも協力して頂きたいことがあります。

それは、

・こまめに手洗い、うがいをする。

・お風呂やシャワーで身体を清潔に保つ

・虫歯、巻き爪、吹き出物の化膿などは感染の原因になりやすいの

で、化学療法を開始する前に早急に治療をしておくということです。

化学療法を開始するときには薬剤師、看護師により改めてオ

リエンテーションを行います。

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≪手術の種類≫

・乳房部分切除術

・皮膚温存乳房切除術、乳頭乳輪温存乳房切除術

・乳房切除術

手術は乳房と腋窩リンパ節に対して行われます。これらはがんの広がり、位置、乳房の

サイズやバランス、リンパ節転移の有無など考慮して決定されます。

<乳房の手術>

◇ 乳房部分切除術

がんの広がりを厳密に評価して、乳腺を部分的に切除します。皮膚の切開線はがんの

部位や大きさなどにより異なり、手術時に決定します。手術前に超音波検査やマンモグ

ラフィを再度行い、がんが広がっていると考えられる場所を確認し、皮膚の上にマジッ

クで印をつけることがあります。切除する範囲が広いほど温存した乳房の変形する度合

いが強くなります。乳房は元通りになるわけではなく、小さくなったり高さが減ったり

します。術後にドレーンを挿入することもあります。術後は温存した乳房へ放射線療法

を行います。手術時、がんを切除した後の乳腺組織に小さなチタン製の金属クリップを

つけます。これは放射線治療をする際に、がんがあった場所の目印として利用します。

クリップが入っていてもMRI への影響はありません。空港などでの金属探知機で問題に

なることもありません。治療終了後も取り除くことはありません。また、非常にまれで

すがチタンアレルギーの方はお申し出ください。

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◇ 皮膚温存乳房切除術、乳頭乳輪温存乳房切除術

皮膚や乳頭乳輪をできるだけ残して乳腺を切除します。人工乳房による再建を考えて

いる場合に行うことがあります。術後はドレーンを挿入します。

◇ 乳房切除術

胸筋を残し、皮膚を一部含めて乳腺を切除します。胸筋を切除する方法は現在ほとん

ど行われていません。術後は切除した部位に血液や浸出液が貯留するためドレーンを挿

入します。乳房切除後は乳房の変形を補うための人工乳房やパッド、専用の下着などが

市販されています。サイズ、かたち、材質、デザインなど、さまざまな種類があるので、

自分にフィットするものを選び、利用されるのも良いでしょう。

パンフレットなどもございます。看護師にお声かけください。

乳房の切除範囲 皮膚の下は筋肉

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<腋窩リンパ節の手術>

腋窩(わきの下)のリンパ節は脂肪組織の中に埋もれています。これらを一塊にして

決められた範囲まで切除することを郭清といいます。腋窩郭清後はリンパ液が貯留する

ためドレーンを挿入します。

乳がん手術の合併症に患側上肢のしびれや腫脹、腋窩にリンパ液が貯留したりする場

合があります。この多くは手術に際して腋窩リンパ節を郭清することに伴うものです。

腋窩リンパ節を廓清することは、乳がん細胞が転移をしているかどうかを調べるために

重要で、病期を判断し、全身治療の方針に大きな影響を与えます。しかし、腫瘍が小さ

い場合などには、リンパ節を切除してもがん細胞がリンパ節に転移をしていない場合が

多くあります。

このような不要なリ ンパ節郭清をでき

るだけ防ぐために、セ ンチネルリンパ節

生検を行います。

センチネルリンパ節 とは乳がんからリ

ンパが 初に流れ着く と想定されるリン

パ節のことをいい、セ ンチネルリンパ節

生検とはこのセンチネ ルリンパ節のみを

切除して、がん細胞の 転移がないかを調

べる検査のことを言い ます。このセンチネ

ルリンパ節にがん細胞 の転移がなければ、

それ以外のリンパ節に もがん細胞の転移

はないと考え、センチ ネルリンパ節以外

のリンパ節の切除は行 いません。

具体的な検査の方法としては、手術前日の午後か当日の朝、1 階の核医学検査室で放

射性同位元素(RI)を乳輪部に注射します。また、手術室で麻酔がかかった後、乳輪部

に青い色素を注射します。この併用法によってセンチネルリンパ節を同定し、摘出しま

す。通常センチネルリンパ節は1~数個あります。乳房温存術がおこなわれた患者さん

に対して、術後放射線治療が行われた場合、放射線照射の範囲を調節することで、腋窩

リンパ節郭清を行っても、行わなくても再発率に差が無いこと場合があることが報告さ

れました。従って私たちは、この様な条件を満たす場合にはセンチネルリンパ節に転移

がみられた場合でも腋窩リンパ節郭清を行わない方針を取っています。

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<乳房再建術>

◇ 人工乳房を用いる方法

乳がんの手術によって失ってしまった乳房を、新たにつくります。人工の乳房を筋肉

の下に埋め込む方法と背中やお腹の脂肪や筋肉の一部を胸に移植する方法(自家組織移

植)の2種類があります。乳がん手術に引き続き行うこともできます(一次二期再建)

し、数ヶ月~数年後に改めて行うこともできます(二次再建)。

再建をお考えであれば、主治医および形成外科医に希望を伝え、よく話し合っておく

必要があります。但し、元の乳房と全く同じ状態になるわけではないことをご理解くだ

さい。人工乳房を覆うだけ健康な大胸筋と十分な皮膚がある場合に行うことができます。

乳房切除術、皮膚温存乳房切除術または乳頭乳輪温存乳房切除術に引き続き、通常はエ

キスパンダーと呼ばれる生理食塩水を注入する袋状の人工物を大胸筋の下に埋め込み

ます。これを一次二期再建といいます。一度乳房切除を行って後日エキスパンダーを挿

入する方法を二次再建といいます。術後創の状態が落ち着いてから、形成外科の外来に

も通院しエキスパンダーの中に生理食塩水を注入して少しずつ皮膚を伸展していきま

す。数ヶ月を経た後に形成外科医によって、エキスパンダーを取り出しシリコンインプ

ラントを挿入または自家組織を移植します。この際の手術も入院して行います。乳頭乳

輪を切除している場合は、その後に乳頭乳輪再建を行います。

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≪手術を受けるにあたって≫

◇ 術前検査

手術に必要な検査は外来で行います。血液検査にて一般

的な検査を行うと同時に、感染症の有無や血液型の確認を

行います。ほかに胸部レントゲンや心電図を行います。

◇ 入院に必要なもの(術後使用する下着など)

入院時準備するものについては、外科外来看護師からの説

明と入院手続き時にお渡しする「入院のしおり」をご参照

ください。

*マニュキュア(ジェルネイル含む)は手術中酸素飽和濃

度を測定するさいに、測定する機械が反応しなかったり、爪の色が観察できないことで

循環状態が不明確となる為、必ず全て落としてからご入院していただきます。

◇ 手術前は気分を和らげ、十分な睡眠を

手術前は気分が高まり、気が滅入ったりして落ち着かないかもしれません。どんな手

術でも体の調子を整えておくことが大切です。気分を和らげるようにし、睡眠を十分と

るようにしてください。眠れないなど、十分に休息がとれていない方は担当医にご相談

ください。

<入院中の生活>

◇ 入院当日

麻酔科の医師の訪問があります(予め術前に外来で麻酔科医の診察を受けた場合など、

行われない場合もあります)。また病棟看護師より説明がありますので、心配なことが

あれば遠慮なくお尋ねください。

◇ 手術前日

・センチネルリンパ節生検を受けられる方は、手術前日または当日朝に必要な注射と検

査を行います。検査の時間は病棟の担当看護師がお知らせします。

・手術前に超音波検査を行って病変部位を確認し、乳房皮膚の上にマジックで印をつけ

る場合があります。あるいは安全対策の面から左右確認のため乳房皮膚にマジック

で印をつけます。

・就寝前に入浴をすませ身体を清潔にしておいてください。また、爪を切ってください。

・睡眠薬の処方もあります。

・前日に入室の予定時間の目安についてお知らせしますので、ご家族の方にお伝えくだ

さい。

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◇ 手術当日

・手術は全身麻酔または局所麻酔で行います。局所麻酔の場合も

眠くなるようなお薬を使い、苦痛や不安を 小限にとどめる

よう配慮しています。手術時間は3時間程度です(術式等に

より異なります)。詳しくは、当日看護師がお伝えします。

・病院で用意した手術着に着替えていただきます。身につけているものはすべて外して

入室の準備をします。貴重品はご本人にて管理してください。

・乳房切除術やリンパ節郭清を行った場合は、手術部位の近くに排液管(ドレーン)が

入ります。術後、排液量が少なくなったら抜去します。

・手術後の痛みに対しては、痛み止めを使用します。我慢しないで看護師にお申し出く

ださい。

◇ 手術の翌日から

手術の翌日には朝から歩いてトイレに行けるようになりますが、 初は看護師につい

てもらうようにしましょう。翌日より食事もご自身で摂ることができます。はじめは腕

を動かしにくいかと思いますが、徐々に回復していきます。焦らず身の回りのことなど

を行い、動かせる範囲を広げていきましょう。手術翌日から体力はどんどんと回復して

いきます。

*スケジュールは術式等によって変わってきます。詳しいスケジュールに関しては、患

者用クリティカルパスに沿って入院時術前オリエンテーションにて説明させていただ

きます。

*手術後のリハビリテーションやリンパ浮腫予防のセルフケア、補整具や下着について

は術式に合わせて入院中にパンフレットを用いて詳しく説明させていただきます。

≪手術後のリハビリテーション≫ョン

乳腺の手術をすると、手術した後の痛みや拘縮(こわばり)のために、手術した側の

腕が重だるくなったり上がりにくくなることがあります。この拘縮は肩関節の運動を行

わず、じっとしていると次第に増強していきます。

また、手術で腋窩郭清をされた方は、術後の後遺症として手術をした側の腕に、リン

パ浮腫(むくみ)が起こることがあります。これは、わきの下のリンパ節を切除したこ

とでリンパ液の流れが悪くなり、腕にリンパ液が溜まるために起こる症状です。センチ

ネルリンパ節生検のみの場合でも軽度のリンパ浮腫をおこすことがありますが、日常生

活に注意することで予防することができます。

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これらの症状を回復させるためには、手術後のリハビリテーションが必要です。リハ

ビリテーションの詳しい内容については、入院中に病棟の看護師から説明します。退院

後も不明点がありましたら外来の看護師にお気軽にご相談ください。

≪退院後の生活≫

退院時には身の回りのことはだいたいできるようになっているかと思います。しかし

まったく元通りというわけではありません。無理はせずに少しずつ調子を取り戻してい

くようにして下さい。術後の経過が順調であれば、術後2~3ヶ月もすれば軽い運動がで

きるくらいまで回復します。心配なことがあればいつでもスタッフにご相談ください。

Qお風呂はいつ頃から入れますか?

A:ドレーンが入っていない場合には、翌日からシャワー浴は可能となります。ドレー

ンが入っている場合でも、下半身のシャワー浴は可能です。ドレーン挿入部が濡れない

ようにします。ドレーンの抜去翌日から全身のシャワー浴が可能となります。湯船に入

るのも腰までなら可能です。ゆっくり肩までつかるのは退院後の診察で許可が出てから

にしましょう。創部は石けんをつけた指でやさしく洗ってください。乾かす時は押さえ

て水分をとるようにしてください。

Q退院後手術した部位が腫れてきたのですが?

A:多くの場合は手術による反応性の液体が貯留したためで心配要りません。

しかし腫れや赤みが強かったり熱感がある時は創部に感染を起こしている可能性が

あります。次回の診察を待たずに早めに外来を受診してください。

Q脇の下や上腕の内側部に違和感があるのですが?

A:腋窩郭清を行うと周囲の皮膚に違和感が出てきます。通常1年ほど続きますが徐々に

軽減していきます。センチネルリンパ節生検のみで終了したときにも同様の感覚が起き

ることがあります。

Q手術した部位がとても硬いのですが?

A:手術をすると、その部位が硬くなっていきます。これは傷が治っていくために必要

な過程なのです。1 年ほどすると固さが徐々にとれていきます。しかし数年経っても硬

さが一部残ってしまうことがあります。

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Q趣味、仕事、旅行はしても良いのでしょうか?

A:いままで通りでかまいません。ただし激しい運動は手術後しばらく控えた方が無難

でしょう。スタッフと相談してください。

Q性生活、妊娠はどうでしょうか?

A:病気をなさってもあなたご自身にかわりはありません。しかし治療が性生活に及ぼ

す影響もあります。何よりも大切な事は、パートナーと治療中の身体の変化についてよ

く話し合ってともに理解することです。治療による膣の乾燥や萎縮には、専用の潤滑ゼ

リーで対処することもできます。心配なことはスタッフと相談して下さい。ただ治療中は

妊娠をさけなければなりません。たとえ内分泌療法中などで月経が止まっている場合で

も、確実な避妊が必要です。避妊方法は様々ありますが、薬剤を使用するものは治療に

大きく影響を与えることが考えられます。

Q健康食品など代替療法を行いたいのですが?

A:特別に必要な健康食品等はありません。

しかし健康食品など代替療法を取り入れることで、前向きな気持ちになり、積極的に

治療に参加していく助けになるとお感じになる方も多いかと思います。その場合は、上

手に取り入れていかれると良いでしょう。ただし、ほとんどの健康食品に関して、その

効果は立証されておりません。非常に高価なものもあります。誇大広告等に惑わされな

いよう注意してください。書店に並んでいるいわゆるバイブル本やインターネットで検

索できる多くの情報はうのみにしない方が無難です。

化学療法など当院での治療を受けている間は特に注意が必要です。相互作用に気をつ

けましょう。

乳がんは女性ホルモンに影響を受けることが多くあります。女性ホルモンに関する製

品は避けた方がよいでしょう。

スタッフに相談する際は内容を印刷したものやコピー、メモなどをお持ちになると良

いでしょう。

Q手術をした方の腕のリンパ浮腫症状が気になったら? A:リンパ浮腫は発症から早期に対応すると、症状の改善やそれ以上の悪化を予防する

ことができます。手術側の手を握ると違和感がある、腕の重い感じがする、服がきつい、

目で見て明らかにむくんでいる、などの変化があったら外来で医師に相談しましょう。

リンパ浮腫かどうか診断をしたうえで、該当すればリハビリテーション部でリンパ浮腫

日常生活指導や、*スリーブ(弾性着衣)の選択と購入方法の説明を受けていただくこ

とができます。また、必要があれば自費診療の乳がんリンパ浮腫看護相談でマニュアル

リンパドレナージ(用手リンパドレナージ)圧迫療法など、リンパ浮腫セラピストによる

専門のセラピーを受けることができます。

*スリーブ(弾性着衣)やバンデージ(圧迫包帯)は療養費の支給対象となっております。

詳しくは外来でお尋ねください。

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≪遺伝子解析検査 ~OncotypeDX~≫

OncotypeDX は、米国のGHI(ジェノミックヘルス)社により開発された検査法で、乳

がんの組織から遺伝子を抽出し、このうち21種類について解析する検査です。

この検査はER(+)/HER2(-)初発乳がん患者において、ホルモン療法のみを行った場

合の再発リスクや化学療法を併用した場合の治療効果を予測することができ、その方に

適した術後補助療法を選択するための情報を提供します。

検査結果は、乳がんが再発する可能性が0~100の数値(再発スコア)で表され、この

数値から「低リスク」「中間リスク」「高リスク」に分類され、乳がんが再発する可能

性が示されます。

リスク群 低リスク 中間リスク 高リスク

再発スコア 0~17 18~30 31以上

検査の対象となるのはER(+)/HER2(ー)の方で、閉経前ではリンパ節転移なしに限ら

れますが、閉経後であればリンパ節転移なしにとどまらず、1〜3個までは許容されま

す。費用は保険適応外となるため約40万円かかります。検査を希望される方には、術後

の外来で主治医より詳しい説明をさせていただきます。

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≪遺伝性乳がんについて≫

近い血縁者(父母、兄弟姉妹、子供、祖父母、叔父叔母)に下記のような方はいませんか?

“遺伝性乳がん、卵巣がん”の可能性があります。

乳がん全体の5-10%は遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)であることがわかっています。

近年、乳がん患者数は増加しそのため遺伝性乳がん患者数も増加しているのが現状です。

当院では患者さんご自身やご家族の

遺伝性乳がんに対する不安や心配を相

談できる乳がん遺伝相談外来を開設し

ています。遺伝性乳がん卵巣がんの患

者さんやそのご家族をはじめ遺伝性乳

がん卵巣がんに不安をお持ちの方のた

めの外来です。乳がんを患いその乳が

んが遺伝性なのか、乳がんは発症して

いないが家族の方に乳がんや卵巣がん

の方が多くおられ心配している、遺伝

子検査に対する質問など遺伝性乳がん

全般のご相談が対象です。遺伝子検査の実施も行っています。

お申し込み・お問い合わせ先 聖マリアンナ医科大学病院メディカルサポートセンター 乳がん遺伝相談外来 担当

電話番号 044−979−5591(直通)

※ 専用電話のため、川崎市内の方も市外局番「044」をお付けください。

<時間> 平日の14:00~16:00(土曜・休日は受け付けておりません)

〔休診日:日曜、祝日、第1・3土曜日、10月第2土曜日<開学記念日の振替休日>、年

末年始(12月29日~1月3日)〕

家族集積性 15~20%

散発性      80~85%

遺伝性         5~10%

乳がんや卵巣がんを発症した人がいる 両方の乳房にがんを発症した人がいる 若い年齢(40才以下)で乳がんを発症した人がいる 乳がん・卵巣がんの両方を発症した人がいる 男性乳がんを発症した人がいる

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≪術後の定期検診について≫

術後は定期的な通院を、術後10 年間に渡り行います。安全を確認し充実した日常を

安心して過ごして頂く為です。乳房に関しては当科で、それ以外に関しては通常の健診

を定期的に受けてください。年に一度のマンモグラフィが勧められます。その間はご自

身で月に一度は手術部位の周囲や反対側乳房の自己検診を行いましょう。万が一、異常

を感じたときは遠慮なく、外来に連絡して相談し、必要に応じた検査を受けて下さい。

どの様な症状に気をつけたら良いか?

遠隔転移の徴候として、次のような症状に気を付けましょう。

骨:腰痛、関節痛など骨と関連した痛み

肺・肝:咳、全身倦怠感、食欲不振が続く

脳:吐き気やめまい、頭痛、麻痺など

一時的で、自然に改善してしまうような症状は心配ないでしょう。

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≪治療にかかる費用≫

「外来化学療法や入院費用・手術は高額なのでは?」というご心配は当然のことです。

しかし、医療機関や薬局の窓口で支払った額が一定額を超えた場合、その超えた金額は

後に支給されるしくみになっています。これが、高額療養費制度です。

また、あらかじめ高額な治療が見込まれる場合(外来化学療法の一部や入院)には、

先に「限度額適用認定証」を取得して保険証と一緒に提示すれば、医療機関の窓口で

の支払いを自己負担の上限額までにおさえることができます。

※診断書等文書代や、入院時の食費負担・差額ベッド代・レンタルパジャマ代等は含みません。

○具体的な自己負担の上限額は、世帯の所得や健康保険の種類により異なります。

例えば…

70 歳未満の一般所得区分の方であれば、80100 円+(医療費-267000 円)×1%

70 歳以上の一般区分の方であれば、外来 12000 円/入院 44400 円(手続き不要)

これが、暦月(月の初めから終わりまで)の 1 ヶ月の自己負担上限額となります。

※平成 26 年 4 月現在。

○限度額適用認定証の申請や自己負担上限額の確認は、各申請窓口で行えます。

・国民健康保険、後期高齢者医療制度 …各市区町村

・健康保険 …健康保険組合 又は 全国健康保険協会の各都道府県支部

(健康保険によっては、ホームページに詳細を掲載している場合や、

申請用紙がダウンロードできる場合もあります。ご確認ください。)

その他詳しいことは、申請窓口またはがん相談支援センターソーシャルワーカーにお問

い合せください。

≪がん相談支援センター≫

患者さんとご家族は多くの不安や辛さを抱えて、治療と生活に前向きになれないこと

があります。1 人で抱え込まずに、どうぞ私たちにご相談ください。

解決へ向けてともに考え、適切な情報も提供します。

聖マリアンナ医科大学病院 がん相談支援センター(病院別館 2 階腫瘍センター内)

Tel:044-977-8111 月~金 8:30~16:00、第 2・4・5 土曜 8:30~12:00

スタッフ:社会福祉士・精神保健福祉士、がん化学療法看護/乳がん看護/がん性疼痛看護/緩和ケア認定看護師、がん

薬物療法認定薬剤師、管理栄養士、心理士など。 初に、がん専門相談員がお話を伺います。

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「がん心理相談」のご案内

病状が受け入れられない、がん治療をめぐる家族との関係、治療スタッフとのかかわ

り…その他がんに関わる心理的な不安、悩みはありませんか?

秘密は守られます。適切な相談機関を紹介することもできます。

【30 分 \3000、50 分 \5000 (消費税別)】

*完全予約制。初回は無料です。患者ご本人又はご家族も相談できます。

担当医もしくはがん相談支援センターへお申込みください。

≪ホームページのご案内≫

聖マリアンナ医科大学病院・ブレスト&イメージング先端医療センタークリニックでは、

診療内容やスタッフ紹介、乳がんについてのQ&A等をホームページでご案内していま

す。また、乳がん診療ガイドラインのホームページでも乳がんに関する様々な情報提供

が行われています。本冊子と合わせてぜひご覧ください。

◇聖マリアンナ医科大学病院(乳腺・内分泌外科)

http://www.marianna-u.ac.jp/breast_surgery/index.html

◇ブレスト&イメージング先端医療センタークリニック

http://www.marianna-u.ac.jp/breast

◇患者さんのための乳がん診療ガイドライン(日本乳癌学会)

http://www.jbcsfpguideline.jp/

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発行:聖マリアンナ医科大学病院 乳腺・内分泌外科

(監修: 津川 浩一郎)