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トリプルネガティブ乳癌の初期治療
第16回日本乳癌学会中国四国地方会 教育セミナー
【症例1】38歳女性
二児の母親、主婦
理学所見:右乳房C領域に浸潤径1.7cmの限局した腫瘤を認め、画像上、
腋窩リンパ節腫大、遠隔転移なし。T1cN0M0 stageⅠと診断
針生検:invasive ductal carcinoma, solid type, HGⅢ、ER 0, PgR 0,
HER2 0, Ki67 70%
家族歴:姉が40歳で乳癌を発症(詳細不明)
第三子の挙児希望なし。治癒のためにはいかなる治療も受ける意志がある。
⚫ 最適な薬物療法について
⚫ 術式の選択と放射線治療について
トリプルネガティブ乳癌の初期治療
第16回日本乳癌学会中国四国地方会 教育セミナー
【解答編】
症例1のポイント
✓ stageⅠだがhigh risk なTN乳癌
✓ HBOCの可能性
✓ 治療に対する受け入れは良好
✓ 妊孕性温存は考慮せずとも良い
1. 最適な薬物療法について
論点
➢ 術前化学療法 or 術後化学療法?
➢ 至適レジメンは?
➢ 術前化学療法 or 術後化学療法?
Breast cancer mortality Any death rate
NAC vs Adjuvant(EBCTCG)
EBCTCG, Lancet Oncol 2018; 19.27-39
NACでもadjuvantでもsurvival benefitは同等
Breast cancer mortality
EBCTCG, Lancet Oncol 2018; 19.27-39
Early stageではadjuvantが良い傾向か
CQ6
手術可能な浸潤性乳癌に対して術前化学療法は推奨されるか
推奨
手術可能な浸潤性乳癌に対して、乳房温存を目的とした術前化学療法を行うことは弱く推奨される(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:強、合意率:100%)
乳癌診療ガイドライン治療編 2018年版より
➢ Survival benefitに関してはNAC、adjuvantいずれも可
➢ Response-guided therapyの観点ではNACでも良いか
T1N0のTNではややadjuvantが良い傾向にあるが明らかな有意差なし。
➢ 至適レジメンは?
(アンスラ+タキサン or TC or Dose-dense)
Taxane-plus-anthracycline-based regimens vs(L) the SAME, or (R) MORE, non-taxane chemo.
Peto,R Lancet 2012; 319(9814), 432-44
Any death
All-Comerではタキサンのsurvival benefitあり
Breast Cancer mortality by age and stage
Peto,R Lancet 2012; 319(9814), 432-44
N0でもタキサンの上乗せ効果あり?
TC vs AC+Taxane (ABC trial)
Blum,J.L ; J Clin Oncol 2017; 35(23), 2647-55
TNではN0症例でもAC+タキサンが良い傾向
➢ Early stageでもタキサンの上乗せ効果はありそうだが有意差はなし (EBCTCG)
➢ TN症例ではN0でもアンスラ+タキサンが良い傾向(ABC)
TC <アンスラ+タキサン
Dose-Denseは?
Subgroup analysis for breast cancer mortalityEBCTCG : dose-dense vs standard
EBCTCG, lancet 2019; 393:1440-52
N0症例でのDose-denseのbenefitは明らかでない
TNT trial
Tutt,A. Nat Med 2018. 21(5);628-37
Loibl S, An Oncol.2018. 29(12)2341-47
GeparSixto
プラチナ系の効果は?
gBRCA変異陽性症例ではResponse rateでCBDCA>DTX
OSでは有意差なし
CBDCA
DTXResponseRate
DFS OS
NAC後non pCR症例に対するCAPの追加効果 (TN)CREATE-X
DFS OS
stageⅠ症例における追加効果はcontroversial
Subgroup analysis of DFSN.Masuda, N Engl J Med 2017,376:2147-59
PTX or Nab-PTX ?
Untch M, Lancet Oncol. 2016
Invasive DFS of TNBC
nabPTX→EC
PTX→EC
Nab-PTX が良さそうだがStageⅠでは?
Michael,U. J Clin Oncol 2019. 37:2226-34
✓ stageⅠでもTN症例においてはタキサンを加えた方が良い傾向にある
✓ 増殖能が高くhigh riskであるためアンスラ+タキサンが妥当
✓ Dose-denseについては必須とはいえない
✓ gBRCA変異陽性であったとしてもCBDCAの有用性は不明
✓ NAC後non-pCRの場合、CAPの追加はcontroversial
✓ 末梢神経障害を許容できるのならNab-PTXの方がbetterか
手堅くいくならAC(EC)→wPTXChallengingならAC(EC)→Nab-PTX
NAC or adjuvantはどちらでも良い
2. 術式の選択と放射線療法について
論点
➢ HBOCの可能性を考慮した上で温存が妥当か
CQ12
術前にBRCA変異保持者であることが分かっている場合、乳房温存療法は推奨されるか
放射線療法を含む乳房温存療法は基本的には推奨されない(推奨グレードC-2)
遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)診療の手引き2017年版より
CQ6
BRCA1/2遺伝子変異を持つ女性が乳房温存可能な乳癌に罹患した場合であっても乳房切除術が勧められるか?
BRCA遺伝子変異を有する女性には乳房温存術が可能であっても患者が温存術を強く希望する場合以外は乳房切除術を行う事を弱く推奨する(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:とても弱い、合意率:100%)
乳癌診療ガイドライン2018年版 疫学・診断編より
推奨
放射線療法を要する乳房温存療法に関する特別な考慮点
相対的禁忌
⚫ 胸壁または乳房に対する放射線療法歴
⚫ 皮膚に波及した活動性の膠原病
⚫ 病理学的に断端陽性
⚫ 乳癌に対する遺伝学的素因が既知または疑われる女性:
➢ 乳房温存療法では同側乳房における再発または対側乳癌発症の
リスクが増大する恐れがある
➢ Li-Fraumeni症候群が既知または疑われる
Ipsilateral breast cancer recurrenceBRCA mutation carriers vs non-carriers
gBRCA mutation carrierでは温存後の乳房内再発が約1.5倍
温存を希望した場合
温存希望がない場合
術前のBRCA遺伝子検査
乳房切除術±乳房再建(BRCA遺伝子検査は術後でもよい)
BRCA変異陽性→できる限り乳房切除術±乳房再建
BRCA変異なし→乳房温存術も可