lto 2-1 ltoテープドライブ技術 - jst

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Page 1: LTO 2-1 LTOテープドライブ技術 - JST

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1.まえがき

LTOはLinear Tape-Openの略で,リニア記録テープの

オープンテクノロジーといった意味になる.LTOはThe

LTO Programの仕様管理の下,IBM,HP,Quantumの3

社がテクノロジー提供を行っており,各社が出荷するLTO

テープドライブは互換性が保証されている.またLTO

テープメディアも複数社が提供しており,これらのテープ

も互換性が保証されている.LTOは2000年の出荷開始か

ら2012年時点で440万台のLTOテープドライブと2.25億本

のLTOテープメディアが世界中に出荷されている1).

2.LTO世代と互換性

2000年に始まった第1世代であるLTO-1から第7世代であ

るLTO-7までの実績とLTO-10までのロードマップは表1の

ようになっている.LTO-8からLTO-10までの仕様は計画

ではあるものの,テクノロジー提供企業によって,その技

術的可能性が裏付けられている.LTO-1からLTO-7に至る

まではおよそ2年から3年の間隔で新LTO世代のリリース

が行われている.今後もこのペースでのリリースが期待さ

れる.

The LTO Programは,テープドライブとテープメディ

アの両方の製品に対してUltrium/LTOロゴの使用を許諾

している.この許諾はテープドライブとテープメディアの

相互互換性試験にパスした製品に対してのみ与えられる.

LTOロゴ付きのLTOテープドライブであれば,LTOロゴ

付きのどのLTOテープメディアであっても安心して使う

ことができる.

LTOの相互互換性は,下位互換性ルールについても適用

される.LTOの下位互換性は以下の通り規定されている.

・N世代のLTOテープドライブはN世代とN-1世代の

LTOテープメディアに対して読み書きができる.

・N世代のLTOテープドライブはN-2世代のLTOテー

プメディアに対して読出しのみができる.

この下位互換性によりLTOテープメディアは長期にわ

たって利用できる.例えば,2007年にリリースされた

LTO-4ドライブは,2015年末時点でもIBMから販売され

ており,この時点で8年間製造が継続されている.一般的

にIT機器としてのLTO-4ドライブは購入時に5年間の保守

契約が可能なので,この保守5年間を含めると,実績値と

してリリースから13年間(8年+5年)は保守が受けられて

いる.一方LTO-4テープを読むことができるLTO-6ドライ

ブは,LTO-4ドライブのリリースの5年後の2012年にリ

リースされた.LTO-6ドライブもLTO-4ドライブ同様に13

年間の保守が受けら得るとするのであれば,2007年にデー

タが書かれたLTO-4テープは18年(5年+13年)後まで,

LTO-6ドライブによって読み出しが可能であることを示し

ている.The LTO Programのロードマップ上のリリース

サイクルと各世代テープドライブ製品の製造期間や保守期

間とは別の話であるので注意が必要である.

もう一つ注意が必要なのはロードマップに記載されてい

るテープ1巻あたりの容量とデータレートの値の読み方で

ある.LTOテープドライブはオンボードのデータ圧縮エン

ジンを搭載している.このデータ圧縮エンジンは,ホスト

から受け取った書込みデータをテープドライブ上で圧縮し

てテープに書き出す.読出し時はテープから読出したデー

タをテープドライブ上で元に戻してからホストに送る.

LTO-6以降のロードマップ上はこの圧縮率を2.5として記

載している.すなわち,ホストからのデータがドライブ上

で1/2.5になる想定となっている.テープドライブがテー

プにデータを書き出す速度が一定であれば,ホストからの

データ転送速度がその2.5倍でないと追いつかない.この

結果,ホストデータ速度はテープへのデータ書込み速度の

2.5倍の値として記載されている.2.5という圧縮率は圧縮

効率検証用に設定された特定のデータパターンに対する値

であり,すべてのデータパターンに適用できるわけではな

いので注意が必要である.さらに,すでに圧縮がされてい

るデータ(例えば,MPEGデータなど)は再圧縮ができな

い.非圧縮時の実転送レートとテープ容量は表1の非圧縮

列にあるように,LTO-6以降はThe LTO Programのロー

映像情報メディア学会誌 Vol. 70, No. 3, pp. 377~381(2016)

キーワード:LTO,LTOテープメディア,LTOテープドライブ,LTFS

2章 LTO

2-1 LTOテープドライブ技術

正会員藤 原   忍†

特集A 古くて新しい磁気テープ記録技術

†日本アイ・ビー・エム株式会社 IBM東京ラボラトリー 研究開発・ビジ

ネス開発

"LTO; LTO Tape Drive Technology" by Shinobu Fujihara (R&D

Business Development, IBM Tokyo Laboratory, IBM Japan Ltd., Tokyo)

Page 2: LTO 2-1 LTOテープドライブ技術 - JST

映像情報メディア学会誌 Vol. 70, No. 3(2016)378 (18)

ドマップ値の1/2.5に,LTO-5以前は1/2になる.

3.LTOテープメディアとLTOテープドライブ

LTOはその名のとおり,リニアテープ構造,すなわち

テープ進行方向にトラックを形成し,従来のオーディオ

テープデッキと類似の構造となっている(図1).

この構造はとてもシンプルであると同時に,高いテープ

テンションでテープをヘッドドラムに巻きつけるヘリカル

スキャン型に比べて,ヘッド負荷とテープ負荷が少ない.

従来型の業務用ビデオテープデッキの中には,数千時間毎

にヘッド交換という保守項目があるものがある.これは高

いテープテンションによってヘッドが磨耗するからで,同

時にテープもテープ走行の度にダメージを受ける.一方

LTOテープドライブでは,その低いテープテンションゆえ

に定期的なヘッド交換という保守項目はなく,同時にテー

プダメージにも不安はない.同じテープを扱う装置であり

ながら,異なる設計思想によってヘッドとテープメディア

の両方の寿命が大きく改善されている.

LTOテープカートリッジは,シングルリールテープカー

トリッジで,民生用VHSテープの約半分の大きさである.

テープドライブからテープメディアを取出す際には,必ず

テープをLTOテープカートリッジ内に巻き取らねばなら

ないものの,そのコンパクトな形状は棚置きやテープライ

ブラリー装置内での取り回し,容積当たりの保管本数など

の点で優位性を発揮する.

テープの一端はLTOテープカートリッジ内リールに固定

され,もう一端はLTOテープカートリッジの外に引き出

せるピンに固定されている.このピンはLTOテープカー

トリッジに備えられたスライド窓内側に固定されている

(図2).テープドライブ内のテープロード用アーム端がこ

のピンを引き出し,テープ走行系にテープを通してテープ

ドライブ内のリール中央に固定する.以後,テープはLTO

テープカートリッジ内のリールとテープドライブ内のリー

ルの二つのリールによって走行制御が行われる.LTOテー

プカートリッジのイジェクト時には,このアームがテープ

ロード時とは逆の動作をすることで,テープ端をLTO

テープカートリッジのスライド窓内側まで搬送する.

LTOテープカートリッジ内のリールを回転させるために,

テープカートリッジ内リールとテープドライブのスピンド

ルモータを嵌合する必要がある.この嵌合は,テープカー

トリッジリールの底面の歯型部(図2)とスピンドルモータ

上面の歯型部(図3)の噛み合わせによって行われる.テー

プ走行はこのスピンドルモータと,ドライブ内リール駆動

モータの二つのモータの精密な制御によって,テープテン

ションを一定に保ちながら行われる.先に述べたように,

テープ走行系はシンプルで,テープローラーの間にヘッド

が配置された構造になっている(図4).ヘッドもテープへ

のダメージを極力減らす構造となっている.同じリニア

テープであるオーディオテープデッキの従来ヘッドは,

テープテンションに依存する蒲鉾型となっているが,例え

ば,IBM製のLTOテープドライブヘッドは,テープ走行時

特集A 古くて新しい磁気テープ記録技術

LTO世代 リリース年 非圧縮時 圧縮時

容量(GB) 速度(MB/s) 容量(GB) 速度(MB/s)

LTO-1 2000 100 20 200 40

LTO-2 2002 200 40 400 80

LTO-3 2004 400 80 800 160

LTO-4 2007 800 120 1,600 240

LTO-5 2010 1,500 140 3,000 280

LTO-6 2012 2,500 160 6,250 400

LTO-7 2015 6,000 300 15,000 750

LTO-8 12,800 472 32,000 1,180

LTO-9 25,000 708 62,500 1,770

LTO-10 48,000 1,100 120,000 2,750

表1 LTO世代

図2 LTOテープカートリッジ

スピンドルモーターとの嵌合部

テープ端とピン

図1 LTOテープドライブのテープ走行系

ドライブ内リールLTOテープ

テープローラー

R/Wヘッド

Page 3: LTO 2-1 LTOテープドライブ技術 - JST

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にヘッドとテープとの間で発生する空気圧(負圧)を利用す

ることで,ヘッドとテープの安定した接触を確保する構造

をとり,両者の接触によるそれぞれの負荷を抑えている.

このような高いテープテンションに依存しない構造は

テープの保存寿命にも多大な効果をもたらしている.ビデ

オテープなど,高いテープテンションで巻かれたテープで

は,テープ張り付きや,磁気転写など巻き直しなしでの

テープ長期保存には不安要素があり,定期的なテープ巻き

直しなどが求められたりしていた.一方LTOテープメ

ディアは低いテープテンションに加え,テープメディア自

体のバックコーティングの改良などにより,テープ巻き直

しなしでのテープ長期保存を可能としている.電子情報技

術産業協会(JEITA)によるLTOテープメディア信頼性試

験では,20年に対応する加速試験の結果,テープ巻き直し

なしでもテープ性能に影響する劣化がなかったとのレポー

トを出している2).

2015年末時点において,LTO-6テープ1本の実売価格は

8,000円前後で,非圧縮容量2.5TBでのギガバイト単価は3円

台前半となっている.LTOテープメディアは,データバッ

クアップや長期保存(アーカイブ)用途での大量消費が今後

も続くものと予想されている.この大きな市場がある限り,

最もギガバイト単価が低い長期保存可能な大容量ストレー

ジメディアの一つとして今後も流通していくものと期待さ

れる.

4.LTOテープメディア上のトラック記録方式

LTOテープカートリッジ内のテープは1/2インチ幅で,

そのテープ長は世代によって異なるがほぼ900m前後となっ

ている.LTOテープドライブは,この1/2インチ幅のテー

プに微細な帯(Wrap:ラップと呼ぶ)を往復記録すること

で大容量のデータ記録を実現している(図5).この往復数は

LTO世代によって異なるが,およそ100回前後となってい

る.仮に100回として,テープ長がおよそ900mあるので,

全長90kmのラップが記録されていることになる.

各ラップはマルチトラックによって構成されている.こ

のトラック数はLTO世代によって異なるが,LTO-6では

16トラック,LTO-7では32トラックとなっている.つま

り,LTO-7では1本のLTOテープカートリッジに32ト

ラックで90 km以上にわたってデータを記録していること

になる.LTOが大容量ストレージである理由がここにある.

このように,非常に長い延べトラック長でありがながらも,

そのトラックがおよそ900 m長の1/2インチ幅テープに折

りたたまれ面記録されることで,短時間の頭出しを可能と

している点が,従来のオーディオテープなどのリニアテー

プ構造とは大きく異なる.

LTOテープドライブのヘッド構造は,書込みヘッドモ

ジュールと読出しヘッドモジュールを組合せたペア構造が

基本構造になっており(図6),さらにテープの両走行方向

に対応して,テープ走行方向に直角に対称構造として組み

立てられている.LTO-7は32トラック記録なので,この構

造がテープ走行方向に直角に32段積み上げられている.こ

2-1.LTOテープドライブ技術

図5 リニアテープ記録

*この図はLTO-3以降の概要を表したもので,具体的な ラップ数やテープ長はLTO世代によって異なる.

テープ走行方向(テープ長900メートル程度)

ヘッドシーク方向

ラップ

ヘッドアッセンブリー

16または32トラック

100ラップ前後

図4 LTOヘッドアッセンブリーとテープローラー

テープローラー

テープローラー

ヘッドアッセンブリー

図3 LTOテープメディアロード状態

テープロード用アームドライブ内リール

テープスピンドルモーター

LTOテープ

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映像情報メディア学会誌 Vol. 70, No. 3(2016)380 (20)

の書込みヘッドと読出しヘッドのペア構造は,テープ上に

データを書込みながら即時読出しを可能とし,期待通りに

データが書かれたことの確認(ベリファイ)を一度のテープ

走行で実現している.これは,光ディスクのように書込み

と読出しを同時に行うことができないヘッド構造のスト

レージとの大きな違いであり,ライト&ベリファイに要す

る時間短縮で大きな効果を発揮している.

仮にテープへのデータ書込み時に,テープとヘッドの間

にゴミが入るなどしてベリファイエラーが発生した場合

は,テープ走行を継続したままでベリファイエラーが発生

したデータ単位の書込みを再度行うことで,エラーリカバ

リーを自動実行する.

データ読出し時にテープとヘッドの間にゴミが入るなど

して読出しエラーが発生することも想定される.このよう

なエラーに対応するために,LTOテープメディアは強力な

誤り訂正機能をもつデータ記録方式を採用している.この

データ記録方式は,データセットという構造を採用してい

る.LTO-5を例にとると,1データセットは32個のサブ

データセットによって構成される(図7).各サブデータ

セットはユーザデータとC1パリティとC2パリティによっ

て構成される.このC1パリティとC2パリティはいわゆる

直交パリティを構成し,強力な誤り訂正機能を提供してい

る.この機能により,LTO-5では各データセットのおよそ

15%のデータが読出しできない場合でも,データ全体の回

復が可能となっている.

5.LTFSの仕組み

IBMは2010 NAB Showにてテープファイルシステム

(Linear Tape File System: LTFS)を発表し,その仕様と

ソースコードを一般公開した.LTFSはアプリケーション

に対して,POSIX(Portable Operating System Interface)

互換のファイルインタフェースを提供し,アプリケーショ

ンのファイルメニューやOSのデスクトップ上のドラッグ&

ドロップ等により,CD-ROMやハードディスク,USBメモ

リーなどと同様にLTOテープメディア上のファイルアクセ

スを可能としている.現在,LTFS仕様書はLTOコンソー

シアムのホームページなどを通して入手可能である.

LTFSはLTO-5テープから利用可能となっている.それ

はLTFSがLTO-5から新たに実装されたパーティション機

能を前提としているからで,LTO-4以前のLTO世代では

この機能は実装されていないため,LTFSのサポート対象

外となっている.このパーティション機能はハードディス

クにおけるパーティション機能に似ている.ハードディス

クをインストールする場合,1個のハードディスクを例え

ば,ドライブDとEなど,複数の論理ドライブ(区画)に分

割することは珍しくないが,これと同様に1本の物理テー

プを複数の論理テープ(区画)に分割することを可能にする

のがLTOのパーティション機能である.

ファイルシステムで重要な性能の一つとして,そのファ

イルシステムのマウントに要する時間がある.例えば,

CD-ROMディスクをCD-ROMドライブにロードしたあと,

CD-ROMドライブアイコンがCDディスクアイコンに変わ

るまでの時間をマウントに要する時間として経験してい

る.このマウント時間は,メディアからファイルシステム

情報(ファイルリストやディレクトリー情報など)をOSが

読出す時間である.長年テープメディアでもファイルシス

テムの研究が行われてきたが,追記型メディアというテー

プ固有の性質がこの実現を難しくしてきた.ファイルを追

記したり更新したりした場合,その都度ファイルシステム

情報が更新され,結果的にファイルシステム情報がテープ

メディア上に拡散することになる.テープをテープドライ

ブにロードした場合,その情報をテープ上から集める必要

があるが,それに時間がかかるという課題があった.

IBMが開発したLTFSはこの問題をパーティションの利用

によって解決した.すなわち,ファイル本体を記録する区

画に加えて,ファイルシステム情報を記録する区画を用意

し,ファイルシステム情報をその区画に局所的に記録する

ことで,ファイルシステムのマウント時間の劇的な短縮を

可能としたのである(図8).前者の区画をデータパーティ

ション,後者の区画をインデックスパーティションと呼ぶ.

特集A 古くて新しい磁気テープ記録技術

図7 データセット構造

データセットサブデータセット

ユーザデータ

C2 パリティ

C1 パリティ

LTO-5の場合,データセットは32個のサブデータセットで構成される.

図6 ヘッド構造イメージ

ヘッドアッセンブリー

Writeヘッド Writeヘッド

ReadヘッドReadヘッド

テープ

トラック

Page 5: LTO 2-1 LTOテープドライブ技術 - JST

(21) 381

2-1.LTOテープドライブ技術

先に述べたように,LTOテープメディアはラップ単位で

テープ端間での折り返し記録を行っているが,最初の2

ラップをインデックスパーティション,残りのラップを

データパーティションとして区画設定している.さらに,

インデックスパーティションとデータパーティションの間

に2ラップ分のガードバンドを設定している*.この結果,

ユーザデータの保存先となるデータパーティションは,

テープ全体の容量から4ラップ分(全体容量の5%未満)差

し引いた容量となるので注意が必要である.これらの仕組

みによって,LTOテープメディアをLTOテープドライブ

にロードすると,LTFSはインデックスパーティションの

ファイルシステム情報を読出すことで,ファイルシステム

のマウントを短時間で完了するこが可能となった.

ファイルシステムの場合,その互換性が話題になる場合

がある.LTFSの仕様とソースコードは一般公開されてい

るので,そのライセンス条件の下で誰でもLTFSを製品に

実装することができる.このため,独自の機能追加などに

よりLTFSの互換性が影響を受ける場合も考えられる.こ

の懸念を解決するため,The LTO Programは互換性検証

サービスを行っている.LTFSを採用する場合は,The

LTO Programに技術提供している企業が提供するLTFS

か,The LTO Programの検証をパスしているLTFSかの

確認も検討に加えていただきたい.

6.むずび

LTOテープメディアは複数のベンダーがテープドライブ

とテープメディアを提供することで,幅広い用途で活用が

進んでいる.特にLTFSは今までのテープ利用の概念を大

きく変え,幅広い利用方法を可能とした.更なる活用方法

の開発に大いに期待したい. (2016年1月21日受付)

〔文 献〕

1)http://www.lto.org/2013/09/lto-generation-6-tape-storage-adoption-

outpaces-previous-generation/

2)http://home.jeita.or.jp/upload_file/20130617102525_XwG0 sm45iu.pdf

図8 LTFSの仕組み

インデックスパーティション

ファイル本体

ファイルシステム情報

インデックスファイル

ファイル属性

ディレクトリ構造

ファイルポインタ

LTOテープテープ始点(BOT)

ガードバンド

データパーティション

テープ終点(EOT)

藤原ふじはら

忍しのぶ

1984年,名古屋工業大学生産機械工学科卒業.諏訪精工舎(現セイコーエプソン)を経て,1988年より,日本アイ・ビー・エム(株)にて,ストレージ製品開発に従事.現在,映像系アーカイブ関連ビジネス開発に従事.正会員.

* LTOテープドライブが瓦記録方式を採用しているため,インデック

スパーティションへの記録の際に,データパーティションを保護す

る目的でガードバンドが必要.