問題提起: 水ビジネスを考える -...

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Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 問題提起: 水ビジネスを考える 2013924富士通総研 経済研究所 上席主任研究員 生田 孝史 FRI経済研ワークショップ グリーン成長シリーズ 「水ビジネスを考える: 日本の国際競争力と国内施策の課題」

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問題提起:

水ビジネスを考える

2013年9月24日

富士通総研 経済研究所

上席主任研究員

生田 孝史

FRI経済研ワークショップ

グリーン成長シリーズ

「水ビジネスを考える: 日本の国際競争力と国内施策の課題」

問題意識

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世界的に深刻化する水問題の解決が喫緊の課題に

水問題の解決に資するビジネス機会が拡大

日本は水ビジネス分野において競争力を発揮できるか

競争力強化のための方策と課題は何か

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グローバルリスクとしての水問題

10年間で発生可能性が高いグローバルリスク 発生すれば影響が大きいグローバルリスク

1位 極端な所得格差 1位 大規模でシステミックな財政破綻

2位 長期間にわたる財政不均衡 2位 水供給危機

3位 温室効果ガス排出量の増大 3位 長期間にわたる財政不均衡

4位 水供給危機 4位 食糧不足危機

5位 高齢化への対応の失敗 5位 大量破壊兵器の拡散

世界経済フォーラム「グローバルリスクレポート2013」において、水供給危機がグローバルリスクの上位にランクイン

2

出所:World Economic Forum “Global Risk 2013”

2012年 5位

2011年 ランク外

2012年 2位

2011年 ランク外

グローバルな水需要の増加

人口増・都市化・工業化によって2050年には2000年に比べて水需要が55%増加する

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11.8 12.8

32.437.6

24.9

41.0

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

2010年 2050年

OECD BRIICS その他

91.5

69.1

9.1 11.5

14.3

24.8

11.5

26.6

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

2010年 2050年

OECD BRIICS その他

62.9

34.9

993 877

1,827

3,263

745

1,327

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

2000年 2050年

OECD BRIICS その他

5,467

3,565

【世界人口の予測】 【水需要の予測】 【都市人口の予測】

出所:OECD (2012) “OECD Environment Outlook to 2050” ※BRIICS:ブラジル、ロシア、インド、インドネシア、中国、南アフリカ

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水需給ギャップの地域格差

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1996年~2005年の主要河川流域での水不足状況

※ blue water=表流水(河川・湖沼)と地下水。雨水量は含まない

淡水資源の偏在によって一部地域では水需給ギャップが深刻

出所:UNEP (2012) “Global Environment Outlook 5”

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水質汚濁問題の深刻化

途上国では排水の90%が適切に処理されていない

出所:Corcoran et al. (2010) “Sick Water The Central Role of Wastewater Management in Sustainable Development.”

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水関連災害の頻繁化

人口増、土地利用変化、気候変動の影響により、水関連災害は今後も増加傾向

出所:ICHARM

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アジア・太平洋諸国の水安全保障の状況

49か国中37カ国が「水の安全保障」に問題

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<構成要素>

①生活用水の安全保障

②経済活動のための水の安全保障

③都市の水の安全保障

④環境面の水の安全保障

⑤水関連災害への対応力 出所:Asia Development Bank “Asian Water Development Outlook 2013”

1:危険

5:モデル的

2:不十分

3:十分

4:効果的

水安全保障指標

オーストラリア、ニュージーランド

日本、韓国、台湾、シンガポールなど

国数

水-エネルギー-食料の安全保障

グリーン成長の制約条件として注目

人口増・経済成長に伴う需要増

相互に連関(ネクサス)

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出所:SEI (2011) “Understanding the Nexus”

日本の年間1人当たりの水資源量

世界平均以下。決して豊富ではない。

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出所:国土交通省 (2013)「平成25年版日本の水資源」

首都圏の一人当たりの貯水量

海外主要国の都市圏と比べて低い

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㎥/人

出所:国土交通省資料

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設備更新需要の増加

2020年(H32年)から2025年(H37年)の間に更新需要が新規投資を上回る

出所:厚生労働省

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主要な水問題と地域特性

◎: 関心が極めて高い or 極めて深刻な問題 ○: 関心が高い or 深刻な問題

△: 一部で関心がある or 一部で問題 -: 関心が低い or 該当しない問題

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欧州 米国 新興国 途上国 日本

水需給ギャップの深刻化 △ ○ ◎ ◎ -

水関連災害の頻繁化 ○ ○ ○ ○ ○

安全な飲料水と衛生施設の整備 - - ○ ◎ -

水質汚染の深刻化 ◎ ○ ◎ △ ○

水道施設の老朽化 ◎ ◎ △ - ◎

(出所)富士通総研作成

企業視点:水問題のリスクと機会の認識

【グローバル企業191社の産業セクター別の認識傾向】

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出所:CDP Water Disclosure Global Report 2012を基に富士通総研作成 13

主要な水問題に対応したビジネス機会の例

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水問題 ビジネス機会の例

水需給ギャップの深刻化

水供給ビジネス(水道事業、工業用水・農業用水)

造水(海水淡水化・再生水)ビジネス

水資源最適管理支援ビジネス

節水機器、節水型商品、節水支援サービス

ウォーターフットプリント(WFP)評価、低WFP商品供給

水関連災害の頻繁化

治水ビジネス

防災(水害)対応インフラ整備、雨水排水・貯水

水害予測・監視ビジネス

安全な飲料水と衛生施設の整備

浄水ビジネス(水質浄化剤など)

飲料水製造・販売ビジネス

下水道整備、簡易トイレ

水質汚染の深刻化 下水・排水処理、水質改善サービス

水質測定・監視サービス、水質取引市場

水道施設の老朽化 上下水道インフラ保守点検・漏水管理

上下水道補修・更新ビジネス

出所:富士通総研作成

日本政府の水ビジネスの海外展開推進

経産省に水ビジネス・国際インフラシステム推進室設置(2009.7)

政府目標・・・2025年に海外市場で1.8兆円獲得 (2007年実績の10倍超)

政権交代後も、「新たな成長戦略(第三の矢)」の「国際展開戦略」の主要施策「インフラ輸出」の主要分野として、引き続き、日本企業による水ビジネスの国際展開を支援

※ インフラシステム輸出戦略目標・・・2020年に約30兆円 (現状の3倍)

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17.2

38.83.7

12.2

15.3

35.5

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

2007 2025

兆円

差別化困難 下水

上水 差別化困難

海水淡水化、工業用水・下水、再利用水 技術優位

重点分野 36.2

86.5

(水ビジネス国際展開研究会(2010)を基に富士通総研作成)

15

経済産業省が支援する水プロジェクト案件

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(出所)海外水インフラPPP協議会資料を基に富士通総研作成

目的 地域 事業者 内容

事業経験蓄積

中国 三井物産、ハイフラックス 水事業(上水・下水・再利用水)

中国・天津市 日揮、ハイフラックス 海水淡水化事業

豪州 三菱商事、日揮、産業革新機構、マニラウォーター

水事業会社(UUA)買収

チリ 丸紅、産業革新機構 水事業会社(Aguas Nuevas)買収

案件形成関与

中国・内モンゴル自治区 月島機械 下水処理事業

フィリピン・マニラ 丸紅、マニラッド 都市の水インフラ改善事業

ベトナム・ハノイ メタウォーター、ビワシン 上水事業

ベトナム・ホーチミン 東洋エンジニアリング、大阪市 上水事業

マレーシア 住友商事、MMC、東京水道 サービス、東京都下水道サービス

都市の水インフラ改善事業

サウジアラビア 日揮、水ing、横浜ウォーター 都市の水インフラ改善事業

カタール 三菱重工 都市のかん水淡水化事業

カタール・ラスアブフォンタス 三菱商事、日立造船 海水淡水化施設増設事業

技術実証

北九州市、周南市 GWSTA ウォータープラザ

中国・てん池 日揮 湖沼水質浄化事業

ベトナム・フエ メタウォーター 高濁度河川水利用型水供給事業

豪州・クインーズランド州 JFEエンジニアリング、野村総研 分散型水資源供給事業

オマーン 日立プラントテクノロジー、双日 難処理性廃水再利用型水循環事業

UAE・ラスアルハイム首長国 GWSTA 小規模分散型水循環事業

サウジアラビア 千代田化工建設 省エネ型造水システム事業

資源獲得連動 アルゼンチン 三菱マテリアルテクノ、豊田通商 資源開発権確保連動水事業

(注)赤字は海外事業者

水ビジネス:上下水道サービス人口トップ10

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企業名 (国) サービス人口

(百万人) 国内サービス

比率

上水供給量

(百万㎥/年)

下水処理量

(百万㎥/年)

上下水合計

(百万㎥/年)

ヴェオリア (フランス) 131.3 18% 6,475 7,100 13,575

スエズ (フランス) 117.4 10% 4,484 3,189 7,673

北控水務集団 (中国) 28.5 100% 159 969 1,128

FCC (スペイン) 28.3 46% 677 496 1,173

SABESP (ブラジル) 27.1 100% 2,045 1,486 3,531

RWE (ドイツ) 18.3 72% - - -

ACEA (イタリア) 18.0 54% 1,254 935 2,189

上海実業控股 (中国) 17.5 100% 1,053 995 2,048

新創建集団 (中国) 16.1 100% - - -

アメリカンウォーター ワークス(米国)

16.0 98% 1,142 224 1,366

(出所)Pinsent Masons Water Yearbook 2012-2013を基に富士通総研作成

問題意識(再掲)

Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 18

世界的に深刻化する水問題の解決が喫緊の課題に

水問題の解決に資するビジネス機会が拡大

日本は水ビジネス分野において競争力を発揮できるか

競争力強化のための方策と課題は何か

パネルディスカッションの議題

Copyright 2013 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE 19

1. 日本が国際競争力を発揮できる水ビジネスの分野と 可能性

2. 水ビジネス強化のために国内市場で行うべきこと・ 政策課題など

3. 水ビジネス強化のために海外進出支援策として行う べきこと

4. 対策の優先順位づけ、その他検討課題

20 Copyright 2012 FUJITSU LIMITED