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磁性・超伝導 超伝導の現象論② 2016/12/16

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Page 1: 磁性・超伝導...Ginzburg-Landau理論で最初に登場 常伝導相と超伝導相の間の中間相の構造を記述. 有効的なxとlは電子の平均自由行程lに依存.

磁性・超伝導

超伝導の現象論②

2016/12/16

Page 2: 磁性・超伝導...Ginzburg-Landau理論で最初に登場 常伝導相と超伝導相の間の中間相の構造を記述. 有効的なxとlは電子の平均自由行程lに依存.

超伝導転移の熱力学

超伝導 – 常伝導転移は熱力学的に可逆

第一種超伝導体のHc – T曲線からエントロピーの差の表式を得ることができる.

第二種超伝導体のHcは安定化自由エネルギーに関係した熱力学的臨界磁場

Ba

-4p

M

Hc

-4p

M

Ba Hc Hc1 Hc2

第I種超伝導体 第II種超伝導体

超伝導 超伝導 常伝導 常伝導

渦糸状態 (混合状態)

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超伝導状態の安定化自由エネルギー

熱測定 : 超伝導状態と常伝導状態(Ba>Hc)の比熱の差 磁気測定: Hc(T)

磁気測定

磁石 N 超伝導体

M

Ba

磁石 N 超伝導状態と常伝導状態が平衡状態で共存 Bac = Hc

M = -Ba/4p

Fs(T, Bac) = FN(T, Bac)

永久磁石が作る磁場の中で無限遠(Ba = 0)から点rまで超伝導体を可逆的に運んだときになされた仕事を考える.

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永久磁石が作る磁場Baの中で無限遠(Ba = 0)から点rまで超伝導体を可逆的に運んだときになされた仕事 W

𝑊 = − 𝑴 ∙ 𝑑𝑩a

𝐵𝑎

0

熱力学的恒等式は

𝑑𝐹 = −𝑴 ∙ 𝑑𝑩a

ここでM = -Ba/4pを代入

𝑑𝐹 =1

4𝜋𝐵a ∙ 𝑑𝐵a (cgs-Gauss)

𝑑𝐹 =1

𝜇0𝐵a ∙ 𝑑𝐵a (SI)

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自由エネルギー密度の増大

𝑑𝐹𝐹S(𝐵a)

𝐹S(0)

=1

4𝜋 𝐵a

𝐵a

0

𝑑𝐵a

FS(Ba) - FS(0) = Ba/8p 2

FS(Ba) - FS(0) = Ba/2m0 2

(cgs-Gauss)

(SI)

常伝導金属の小さな磁化率は無視する(FNは磁場に依存しないとする)

FN(Ba) = FN(0)

Bac で超伝導状態と常伝導状態のエネルギーは等しい

(cgs-Gauss)

(SI) FN(Bac) = FN(0) = FS(Bac) =FS(0)+Bac/2m0 2

FN(Bac) = FN(0) = FS(Bac) = FS(0)+Bac/8p 2

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絶対零度における超伝導の安定化自由エネルギー密度DF

∆𝐹 ≡ 𝐹N 0 − 𝐹S 0 = 𝐵ac/8π 2

超伝導状態と常伝導状態でエネルギーの低い方が実現される 自由エネルギー

(m

J/m

ol)

温度 (K)

FN

FS

Tc

Al H > Hc

H = 0 超伝導

常伝導

C. Kittel 固体物理学入門

Al : Bac = 105 G ⇒DF = (105)2/8p = 439 erg/cm3 ~ 430 erg/cm3

(熱測定による値)

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ロンドン方程式

F. W. London and H. London (1935) 局所的な電磁場を取り扱う.

1)電流密度は局所的なベクトルポテンシャルAに比例すると仮定 2)比例係数を-c/4pl2とする.

B = rot A

𝒋 = −1

𝜇0𝜆2𝑨

L

𝒋 = −𝑐

4𝜋𝜆2𝑨

L

(cgs-Gauss)

(SI) rot 𝒋 = −1

𝜇0𝜆2𝑩

L

rot 𝒋 = −𝑐

4𝜋𝜆2𝑩

L

ロンドンゲージ div A = 0かつ外部から電流が供給されていない外面上の点ではAn = 0

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ロンドン方程式によるマイスナー効果の導出

rot 𝑯 = 𝒋 +𝜕𝑫

𝜕𝑡

第2項を0とし,両辺のrotをとる.

rot 𝑩 =4𝜋

𝑐𝒋 +1

𝑐

𝜕𝑬

𝜕𝑡 (cgs-Gauss) (SI)

rot rot 𝑩 = −𝛻2𝑩 =𝑐

4𝜋rot 𝒋 rot rot 𝑩 = −𝛻2𝑩 = 𝜇0rot 𝒋

rot 𝒋 = −1

𝜇0𝜆2𝑩

L

rot 𝒋 = −𝑐

4𝜋𝜆2𝑩

L

これをロンドン方程式に代入すると

𝛻2𝑩 =𝑩

𝜆2

L

を得る. B(r) = 一定かつB(r) ≠ 0は解としてあり得ない.

→ 超伝導体内部には一様磁場は存在しない.

(cgs-Gauss) (SI)

(cgs-Gauss) (SI)

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𝛻2𝑩 =𝑩

𝜆2

L

微分方程式 を解くと

𝑩(𝒓) = 𝑩(0)exp −𝑥

λL.

ここでB(r) は超伝導体内部での,B(0)は超伝導体の境界での磁場. 磁場は超伝導体内部に入るにつれて指数関数的に減衰する. lLはロンドンの侵入の深さ(London penetration depth)と呼ばれ,磁場の侵入の深さの目安になる. B = 0の場合 j = 0,B ≠ 0の場合 j ≠ 0.

超伝導体

r

B

𝜆L =𝑚𝑐2

4𝜋𝑛𝑞2 𝜆L =

𝜀0𝑚𝑐2

𝑛𝑞2 (cgs-Gauss) (SI)

m : 超伝導を担う粒子の質量, 2 m*

q : 超伝導を担う粒子の電荷,2 e n : 超伝導電子密度, ½ nn

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C. Kittel 固体物理学入門

lLよりも十分に薄い超伝導薄膜に磁場を印可した場合,マイスナー効果は不完全となる.誘起される磁場が小さいので,エネルギー密度への磁場の影響は小さく,臨界磁場は非常に高くなる.

超伝導薄膜

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コヒーレンスの長さ

Pippardによるロンドン方程式の非局所場一般化

不確定性原理 : Δ𝑝Δ𝑥 ≥ ℏ

磁場が空間的に変化していても超伝導電子密度がそれ以下では大幅に変化しない長さの目安があるはず.

コヒーレンスの長さ( coherence length)

電子状態の空間変化による運動エネルギーの増大

超伝導状態の安定化エネルギー <

𝜑 =1

2𝑒𝑖 𝑘+𝑞 𝑥 + 𝑒𝑖𝑘𝑥 : 変調を受けた波動関数

𝜑∗𝜑 =1

2𝑒−𝑖 𝑘+𝑞 𝑥 + 𝑒−𝑖𝑘𝑥 𝑒𝑖 𝑘+𝑞 𝑥 + 𝑒𝑖𝑘𝑥

=1

2𝑒0 + 𝑒0 + 𝑒−𝑖𝑞𝑥 + 𝑒𝑖𝑞𝑥 = 1 + cos 𝑞𝑥

オイラーの公式より = cos 𝑞𝑥 − 𝑖 sin 𝑞𝑥 + cos 𝑞𝑥 + 𝑖 sin 𝑞𝑥

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∵ q ≪ kよってq2 ~ 0

𝜓 = 𝑒𝑖𝑘𝑥 の運動エネルギーは ℏ2𝑘2

2𝑚

運動エネルギーの期待値は

𝑑𝑥𝜑∗ −ℏ2

2𝑚

𝑑2

𝑑𝑥2𝜑 =

ℏ2

22𝑚[(𝑘 + 𝑞)2 + 𝑘2]

≅ℏ2

2𝑚(𝑘2+𝑘𝑞)

よってエネルギーの増加は この増加がエネルギーギャップEg

を超えると超伝導は破壊される.臨界値をq0とすると

ℏ2𝑘𝑞

2𝑚

ℏ2𝑘F𝑞02𝑚

= 𝐸g で与えられる.ここでkFはフェルミ波数.

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固有コヒーレンスの長さ(intrinsic coherence length) x0

𝜉0 =1

𝑞0 と定義すると

𝜉0 =ℏ2𝑘F2𝑚𝐸g

=ℏ𝑣F2𝐸g

∵ 𝑣F=ℏ𝑘F

𝑚 (フェルミ速度 = フェルミ面上での電子の速度)

𝜉0 =2ℏ𝑣F𝜋𝐸g

(BCS理論)

Ginzburg-Landau理論で最初に登場

常伝導相と超伝導相の間の中間相の構造を記述. 有効的なxとlは電子の平均自由行程lに依存.

𝑑𝑥𝜑∗ −ℏ2

2𝑚

𝑑2

𝑑𝑥2𝜑 = −

ℏ2

21.5𝑚𝑑𝑥𝜑∗ −(𝑘 + 𝑞)2𝑒𝑖 𝑘+𝑞 𝑥 − 𝑘2𝑒𝑖𝑘𝑥

=ℏ2

22𝑚𝑑𝑥 (𝑘 + 𝑞)2𝑒0 + 𝑘2𝑒0 + (𝑘 + 𝑞)2𝑒𝑖𝑞𝑥+𝑘2𝑒−𝑖𝑞𝑥

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C. Kittel 固体物理学入門

Dirty limit

不純な物質,合金の超伝導体

電子の波動関数が揺らいでいるため,電流密度の局所的な変動を作るのにより小さいエネルギーで済む.そのため有効的なコヒーレンス長は短くなる.

𝜉 ≈ 𝜉0𝑙

𝜆 ≈ 𝜆L 𝜉0/𝑙 𝜅 =

𝜆

𝜉≈𝜆L𝑙

不純物が多い (lが短い)極限