2018.11.21 岩手県胆江地方における ピーマンモザ...
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岩手県胆江地方におけるピーマンモザイク病の根絶へ向けて
岩手県奥州農業改良普及センター園芸経営チーム 松橋 伊織
2018.11.21 生産現場の夢トーク2018
(たんこう)
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岩手県におけるピーマン栽培
H29 都道府県別の作付面積、10a当たり収量、収穫量及び出荷量(夏秋ピーマン)
全 国 2,510 2,750 68,900 55,900
茨 城 291 4,060 11,800 10,900
岩 手 184 3,890 7,160 6,170
大 分 113 5,070 5,730 5,450
北 海 道 86 6,510 5,600 5,150
宮 崎 83 4,080 3,390 3,080
全 国・
都 道 府 県
作 付 面 積( ha )
10a当たり収 量
(kg)
収 穫 量( t )
出 荷 量( t )
岩手県におけるピーマンの作型
作型 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
ハウス ○ ●
トンネル ○ ●
露地 ○ ●
〇:播種 ●:定植 □:収穫
平成29年産指定野菜(春野菜、夏秋野菜等)の作付面積、収穫量及び出荷量より抜粋
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【胆江(たんこう)地方】奥州市と金ケ崎町で構成。全域でピーマンが栽培されている県内有数のピーマン主力産地。
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胆江地方のピーマン生産において特に警戒するべき病害
〇葉に濃淡の激しいモザイク症状を生じる
〇果実は淡黄色(着色不良)で、果形も乱れることが多い
〇収量および品質が低下する
<ピーマンモザイク病>
〇ウイルス性の病気
〇発病しても枯死しないが、生育が抑制される
〇発病すると治す術はない
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ピーマンモザイク病の原因ウイルスの1種
<Pepper mild mottle virus(PMMoV)>
○種子伝染・土壌伝染・汁液伝染する
○発病により生育抑制や奇形果が発生して収量や品質が低下する
○一旦発病すると、栽培管理作業等によって圃場全体に蔓延する
〇抵抗性品種を侵す打破系ウイルスの発生により対策に苦慮している
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PMMoVに対するピーマンの抵抗性と打破系統ウイルスの関係
PMMoV抵抗性品種に対する打破系統
P1 P1,2,3P1,2 P1,2,3,4
PMMoV
に対する抵抗性レベル
L2品種・ 京ゆたか ほか
L3品種・ 京鈴 ・京ひかり ・みおぎ・ さらら ほか
L4品種・ L4京鈴・ L4みおぎ
L5品種・なし
:無効
:有効
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胆江地方におけるピーマンモザイク病対策の取り組み
京鈴
(37.4%)
さらら
(6.1%)
京ひかり
(56.5%)
<ピーマン品種別作付け面積の割合>
※L3抵抗性品種が、100%導入されている。
※関係機関と連携し、当該ウイルスの発生をL3品種導入当初から警戒監視している。7
岩手県におけるピーマンモザイク病対策の取り組み
県域段階
地域段階
〔生産者〕①定植30~60日(集中対策期間):L3品種全株調査(チェックシート)②定植60日以降栽培期間中
⇒ 異常株・モザイク株の発生
診断結果提示
診断依頼
防止対策検討
情報共有
防止対策・協議結果の提示
情報共有対応協議(定期)
連絡・診断依頼 現地指導
〔農業改良普及センター・農業協同組合・生産部会等〕
・対策の周知徹底(事前対策、事後対策)
・全戸調査(症状観察、耕種概要等)
・TPI診断用サンプリング(現地調査の結果、疑わしいと判断した場合)
※事前に病害虫防除所に連絡し、ろ紙送付日時を調整
〔病害虫防除所〕
・診断実施
・対応協議(定期)
〔農業研究センター〕
・診断用務支援
・研究機関との連携
・対応協議(定期)
〔中央農業改良普及センター県域G〕
・診断、協議に係る調整
・作付品種調査
・技術習得研修の実施
・対応協議(定期)
〔農産園芸課 農業普及技術課〕
〔全農岩手県本部〕
<PMMoV打破系ウイルス発生に対する監視体制> 8
○PMMoV打破系ウイルス監視体制の中で、
近年、相次いでL3抵抗性品種を侵すモザイク病
(PMMoV)の発生を確認
○管内における正確な発生状況の把握のため、
全戸巡回(ハウス作型)調査を実施
→全ハウス全株を目視調査し、モザイク症状の見られた株(葉)を
サンプリングし、TPI検定による判定を行った
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ハウス作型ピーマンの全戸巡回調査結果
76%
24%
モザイク症状なし
モザイク症状あり
<モザイク病の発生圃場率> <モザイク病の原因ウイルス別割合>
産地で蔓延する事態を避けるため、モザイク病(PMMoV)対策が喫緊の課題の1つ
CMV
(62%)
PMMoV
(19%)
その他
(19%)
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ピーマンモザイク病(PMMoV)対策
寒冷地におけるピーマンモザイク病総合防除対策の確立が急務!
個別の技術では対応できない核となる対策技術がないうえ、岩手県では組み合わせ可能な技術も乏しい
種類 内容 実現性 理由
圃場転換 ×ビニールハウスの移設は難しい
適した農地がない
抵抗性品種の導入 × 打破系ウイルスの発生
罹病残さの腐熟促進 △寒冷地では、冬期低温のため腐熟が十分促進されない
発病株の抜き取り △効果不安定
経営への影響(大)
罹病残さの除去 △ 完全な除去は不可能
根域保護定植 △効果不安定
定植時の労力負担
手袋・ハサミ交換 △ 作業性の著しい低下
生物的防除 弱毒ウイルス(植物ワクチン) × 市販されていない
耕種的防除
物理的防除
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次年度以降の取り組み
〇露地作型におけるピーマンモザイク病発生
実態の把握と原因ウイルス種の特定
〇モザイク病発生圃場における総合防除対策
の検討
〇ピーマン以外の品目についても…
※現状ではピーマンモザイク病の防除対策が未確立。※弱毒ウイルス(植物ワクチン)への期待(大) 12
ピーマンモザイク病の根絶へ向けた取組に協力いただける企業・研究機関を探しています!
〇弱毒ウイルス(植物ワクチン)についての
知見や技術をお持ちの皆様
〇モザイク病の防除対策に関する
知見や技術をお持ちの皆様
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発表に関する問い合わせ先
岩手県奥州農業改良普及センター
園芸経営チーム 野菜担当
023-1111 岩手県奥州市江刺大通り7-13
TEL:0197-35-8451
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