vol. 2 no. 1: 1-13, 2011. issn 1883-3195 帝京大学医真菌 ...2002/01/01  · issn 1883-3195...

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1. はじめに 先に、本誌(Med. Mycol. Res. Vol.1, No.1, 3-18, 2010) 1) において山口名誉教授が記述されているよ うに、帝京大学医真菌研究センター(TIMM)コレク ションは、東京大学医学部細菌学教室保存株(MTUを母体とし、1983年にTIMMの設立の中核テーマと して発足した。その当時から保存・分譲業務の実務 を担当した者として在籍していた26年間のTIMMレクションの記録をここに書き留める。 2. TIMMコレクションの保存と分譲 病原真菌を主体とするTIMMコレクションの保存 は、一般にいって他の微生物の場合よりも困難であ る。その主な理由は、(1)変異をおこしやすいこと、 (2)生残率が低いこと、(3)他の微生物や昆虫など、 とくにダニによって汚染をうけやすいこと、(4)種 類(この場合、菌属、菌種、菌株)がきわめて多く、 各々適切な取扱い・保存の方法が異なること、など があげられる 2) ここでは、実際にTIMMコレクションでおこなわれ ている保存法について記述するが、その保存には、 形態学的・生物学的諸性状が保持され保証される以 外に、病原性もしくは抗原性の低下ないし消失を起 こさないことが要求される。TIMMコレクションの一 部の特定の菌株は、継代培養保存法により維持して きたが、現在ではすべての菌株について長期保存法 のみにより保存されている。その保存法は、(1)鉱 油重層保存法(流動パラフィン重層保存法)、(2) 凍結保存法、である。鉱油重層保存法は、サブロ ー・ブドウ糖寒天培地の高層(半斜面に近い)表面 に菌を接種し、十分に発育したところで、鉱油(流 動パラフィンなど)を重層し、綿栓して冷涼な場所 に保存する方法である。本法は大多数の病原真菌を 長く変異することなしに保存するに簡便で有効な方 法である。事実、本法により保存されているMTUレクションは現在でも蘇生しうることが確認されて いる。とくに凍結乾燥法に不適な菌種や胞子形成の 貧弱な、あるいは菌糸のみで増殖する真菌に好適で ある。しかし、一部の担子菌酵母の生存率を著しく 低下させるもの、あるいは皮膚糸状菌に属する菌種 のなかには、変異を防ぎきれないものもある。その ため大部分のTIMMコレクションは、この鉱油重層法 と凍結保存法を併用している。凍結保存法はサブロ ー・ブドウ糖寒天培地などに発育した真菌を滅菌 10%グリセリン液に浮遊させたものをプログラムフ リーザーで凍結する方法である。方法は簡単であり、 ある種の真菌では、変異を起しにくい利点があると いわれ、好んで用いられる。皮膚糸状菌や酵母など 大多数の病原真菌に適する。-80℃の超低温フリー ザーで保存する。 TIMMコレクションの菌株は、病原微生物を安全に 取り扱う設備、知識ならびに技術をもつ大学等の教 育機関、公的研究機関または企業の研究室などから の分譲依頼に応じてきた 3,4) 。菌株は原則として試験 管培養のかたちで分譲する。分譲希望者は、当該菌 種についてTIMMの定めた危険度分類(表1.)に応じ た取扱実験室安全設備および運営基準(表2.)にか なっていることを確認した上で、菌株分譲依頼書書 式-1または書式-2を選び必要事項を記入し、当セ ンターへ分譲を依頼する。当センターでは、分譲依 頼書が到着後速やかにセンター長の決裁を受けた後、 当該菌株の長期保存からの蘇生培養、性状の確認、 輸送用培地へ移植、性状の確認、発送などの手順を 踏んで菌株の分譲を行う。なお、当センターでは菌 株分譲に際して次の条件を定めている。(1)菌株の 受領、取扱い、保存および使用に関する一切の責任 は依頼者が負う。(2)菌株を第三者に分譲すること を禁止する。(3)危険度分類レベル3の菌株(表1.の分譲は、TIMMが定めた「病原体等取扱実験室安全 設備および運営基準(表2)に適合する安全設備を使 用できる専門知識と技術を備えた研究者のみに限る。 -1- 帝京大学医真菌研究センター(TIMM) カルチャーコレクション過去26年間の歩み 内 田 勝 久 帝京大学医真菌研究センター前教授 Medical Mycology Research Vol. 2 No. 1: 1-13, 2011. ISSN 1883-3195

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Page 1: Vol. 2 No. 1: 1-13, 2011. ISSN 1883-3195 帝京大学医真菌 ...2002/01/01  · ISSN 1883-3195 -2- 帝京大学医真菌研究センター(TIMM)カルチャーコレクション過去26年間の歩み

1. はじめに

先に、本誌(Med. Mycol. Res. Vol.1, No.1, 3-18,

2010)1)において山口名誉教授が記述されているよ

うに、帝京大学医真菌研究センター(TIMM)コレク

ションは、東京大学医学部細菌学教室保存株(MTU)

を母体とし、1983年にTIMMの設立の中核テーマと

して発足した。その当時から保存・分譲業務の実務

を担当した者として在籍していた26年間のTIMMコ

レクションの記録をここに書き留める。

2. TIMMコレクションの保存と分譲

病原真菌を主体とするTIMMコレクションの保存

は、一般にいって他の微生物の場合よりも困難であ

る。その主な理由は、(1)変異をおこしやすいこと、

(2)生残率が低いこと、(3)他の微生物や昆虫など、

とくにダニによって汚染をうけやすいこと、(4)種

類(この場合、菌属、菌種、菌株)がきわめて多く、

各々適切な取扱い・保存の方法が異なること、など

があげられる2)。

ここでは、実際にTIMMコレクションでおこなわれ

ている保存法について記述するが、その保存には、

形態学的・生物学的諸性状が保持され保証される以

外に、病原性もしくは抗原性の低下ないし消失を起

こさないことが要求される。TIMMコレクションの一

部の特定の菌株は、継代培養保存法により維持して

きたが、現在ではすべての菌株について長期保存法

のみにより保存されている。その保存法は、(1)鉱

油重層保存法(流動パラフィン重層保存法)、(2)

凍結保存法、である。鉱油重層保存法は、サブロ

ー・ブドウ糖寒天培地の高層(半斜面に近い)表面

に菌を接種し、十分に発育したところで、鉱油(流

動パラフィンなど)を重層し、綿栓して冷涼な場所

に保存する方法である。本法は大多数の病原真菌を

長く変異することなしに保存するに簡便で有効な方

法である。事実、本法により保存されているMTUコ

レクションは現在でも蘇生しうることが確認されて

いる。とくに凍結乾燥法に不適な菌種や胞子形成の

貧弱な、あるいは菌糸のみで増殖する真菌に好適で

ある。しかし、一部の担子菌酵母の生存率を著しく

低下させるもの、あるいは皮膚糸状菌に属する菌種

のなかには、変異を防ぎきれないものもある。その

ため大部分のTIMMコレクションは、この鉱油重層法

と凍結保存法を併用している。凍結保存法はサブロ

ー・ブドウ糖寒天培地などに発育した真菌を滅菌

10%グリセリン液に浮遊させたものをプログラムフ

リーザーで凍結する方法である。方法は簡単であり、

ある種の真菌では、変異を起しにくい利点があると

いわれ、好んで用いられる。皮膚糸状菌や酵母など

大多数の病原真菌に適する。-80℃の超低温フリー

ザーで保存する。

TIMMコレクションの菌株は、病原微生物を安全に

取り扱う設備、知識ならびに技術をもつ大学等の教

育機関、公的研究機関または企業の研究室などから

の分譲依頼に応じてきた3,4)。菌株は原則として試験

管培養のかたちで分譲する。分譲希望者は、当該菌

種についてTIMMの定めた危険度分類(表1.)に応じ

た取扱実験室安全設備および運営基準(表2.)にか

なっていることを確認した上で、菌株分譲依頼書書

式-1または書式-2を選び必要事項を記入し、当セ

ンターへ分譲を依頼する。当センターでは、分譲依

頼書が到着後速やかにセンター長の決裁を受けた後、

当該菌株の長期保存からの蘇生培養、性状の確認、

輸送用培地へ移植、性状の確認、発送などの手順を

踏んで菌株の分譲を行う。なお、当センターでは菌

株分譲に際して次の条件を定めている。(1)菌株の

受領、取扱い、保存および使用に関する一切の責任

は依頼者が負う。(2)菌株を第三者に分譲すること

を禁止する。(3)危険度分類レベル3の菌株(表1.)

の分譲は、TIMMが定めた「病原体等取扱実験室安全

設備および運営基準(表2)に適合する安全設備を使

用できる専門知識と技術を備えた研究者のみに限る。

-1-

帝京大学医真菌研究センター(TIMM)

カルチャーコレクション過去26年間の歩み

内 田 勝 久

帝京大学医真菌研究センター前教授

Medical Mycology Research

Vol. 2 No. 1: 1-13, 2011.

ISSN 1883-3195

Page 2: Vol. 2 No. 1: 1-13, 2011. ISSN 1883-3195 帝京大学医真菌 ...2002/01/01  · ISSN 1883-3195 -2- 帝京大学医真菌研究センター(TIMM)カルチャーコレクション過去26年間の歩み

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帝京大学医真菌研究センター(TIMM)カルチャーコレクション過去26年間の歩み

表1. TIMMコレクションに含まれる菌種の危険性(ハザードリスク)�

菌種� 危険度クラス�1) 実験室感染事例の有無�2) 経気道感染リスクの有無�3)

Aspergillus fumigatus レベル� 2 -� +�

Candida albicans レベル� 2 -� -�

Cladosporium carrioniii レベル� 2 -� -�

Cladosporium trichoides(=�C. bantianum) レベル� 2 -� -�

Cryptococcus neoformans レベル� 2 +� +�

Exophiala dermatitidis レベル� 2 -� -�

Fonsecaea pedrosoi レベル� 2 -� -�

Microsporum canis レベル� 2 +� -�

Sporothrix schenckii レベル� 2 +� +�

Trichophyton mentagrophytes レベル� 2 +� -�

Trichophyton rubrum レベル� 2 +� -�

Blastomyces dermatitidis レベル� 3 +� +�

Histoplasma capsulatum レベル� 3 +� +�

Histoplasma farciminosum レベル� 3 -� +�

Paracoccidiodes brasiliensis レベル� 3 -� +�

Penicillium marneffei レベル� 3 -� +�

1);国立感染症研究所病原体等安全管理規定(平成19年6月)による危険度分類。�2, 3);山口英世:モダンメディア 56(9): 199̃212, 2010.

表2. TIMMコレクションの分譲に際して必要とする�   病原体等取扱実験室安全設備および運営基準3, 4)�

レベル 1 (1) 通常の微生物学実験室を用い、特別の隔離の必要はない。�

      (2) 一般外来者の立ち入りを禁止する必要はない。�

レベル 2 (1) 通常の微生物学実験室を実験区域を限定した上で用いる。�

      (2) エアロゾル発生のおそれのある実験は生物学用安全キャビネットの中�

         で行う。�

      (3) 実験進行中は、一般外来者の立ち入りを禁止する。�

レベル 3 (1) 廊下の立ち入りを制限し、二重ドアまたはエアロックにより外部と隔�

         離された実験室を用いる。�

      (2) 壁、床、天井、作業台等の表面は洗浄および消毒可能なようにする。�

      (3) 排気系を調節することにより、常に外部から実験室内に空気の流入が�

         行われるようにする。�

      (4) 実験室からの排気は高性能フィルターで滅菌してから大気中に放出す�

         る。�

      (5) 実験は生物学安全キャビネットの中で行う。�

      (6) 動物実験は生物安全キャビネットまたは陰圧アイソレーターの中で行�

         う。�

      (7) 作業職員名簿に記載された者以外の立ち入りは禁止する。�

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Medical Mycology Research Vol. 2 (No. 1) 2011

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帝京大学医真菌研究センター(TIMM)カルチャーコレクション過去26年間の歩み

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3. TIMMコレクションの年次別保有株数と分譲

株数

表3および図1にはセンター内部記録と日本微生物

保存連盟Japan Federation for Culture Collections;

JFCC)に加盟した1985以降は年度末の活動報告に

よる年次別保有株数と分譲株数を示した5,6)。なお

JFCCは1993年に学会(日本微生物資源学会Japan

Society for Culture Collections; JSCC)へ改組され

た。

表3と図1に示すように、創設された1983年には酵

母529株と糸状菌715株の合計1244株の保有株数で

あり、すでに10件、23菌株の分譲がみられた。この

分譲株数のなかには日本細菌学会教育委員会の要望

による教育実習に供する菌株が2件(5株)含まれて

いた。この細菌学会への協力は1999年まで続いた。

なお細菌学会教育用菌株に関しては項目を設けて後

で述べることとする。その後、保有株数は徐々に増

加し4年後には酵母1945株、糸状菌969株となり、

それぞれ3.7倍と1.4倍に増加した。さらにその7年後

にはそれぞれ7.1倍と2.7倍、さらにその7年後にはそ

れぞれ7 .8倍と4倍になり、25年後にはそれぞれ

6521株(12.3倍)と3169株(4.4倍)まで到達した。

その増加率を総数でみると4年後に2.3倍、11年後

4.6倍、18年後に5.6倍、25年後には7.7倍に増加し

た。一方、26年間の分譲に関しては、件数として

683件、株数として3100株に達した。このなかには

細菌学会を経由して教育用菌株として分譲した81

件、320株が含まれる。酵母および糸状菌の保有菌

株の年次的推移を図1に、およびそれぞれの分譲菌株

数の年次推移を図2に示した。保有株数は新規抗真菌

薬の治験における分離株の同定および感受性試験が

委託研究として行われたか、または多施設サーベイ

ランスに参加した際の分離株が寄託されたことによ

って増加した。担当した26年間をTIMMが設立され

てから最初の5年間を仮に新興期(1983-1987年)、

次の7年間を最盛期前期(1988-1994年)、次の7年

間を最盛期後期(1995-2001年)、著者が退職し研究

生または非常勤講師として担当した7年間(2002-

2008)を休止期とした場合、酵母の保有菌株数は新

興期には略直線的に増加し、その後の最盛期には

年々わずかの増加に留まるが、休止期になると再び

急激な増加がみられた。これは抗真菌薬感受性サー

ベイランスが1年置きに行われたためである。

他方、分譲については新興期から始まり、最盛期

前期を経て、最盛期後期の始の1995年をピークとし

て年々増加傾向を示した。当初は年間100株以下で

あったものが、ピーク時には300株を超える年間分

譲株数に達した。その後急速に減少し新興期後期の

末期から休止期には年間50株以下に低下した。これ

は言うまでもなく、担当者の退職にともない特別な

場合を除いて分譲業務が凍結されたために起因する。

その後、菌株保存を担う後継者が育ち、新体制のも

とに分譲業務も再開された。

4. 分譲菌株の菌種別内訳および各年次区分の

菌種別分譲頻度

TIMMコレクションの分譲菌株を菌種または菌群別

に内訳をみると、26年間を通してCandida 属酵母が

最も多く30~40%を占めていた。それを先に述べた4

つの年次区分にわけてみると、新興期ではCandida

属酵母に次いで皮膚糸状菌、Cr. neoformansの順に

多かった。次に最盛期前期では皮膚糸状菌、黒色真

菌の順になり、次いで最盛期後期では皮膚糸状菌と

ともにAspergillus spp.が10%以上を占めた。次いで

-5-

Medical Mycology Research Vol. 2 (No. 1) 2011

付表 病原体等のバイオセーフティレベルを分類する基準3, 4)�

病原体等を試験管内で通常の量を取り扱う場合、ヒトを基準にして以下の基準により、�

病原体等のバイオセーフティレベルを分類する。�

レベル 1(個体および地域社会に対する低危険度)�

   ヒトに疾病を起こし、或いは動物に医学的に重要な疾患を起す可能性のないもの。�

レベル 2(個体に対する中等度危険度、地域社会に対する軽微な危険度)�

   ヒト或いは動物に病原性を有するが、実験室職員、地域社会、家畜、環境等に対し�

   重大な災害とならないもの、実験室内で暴露されると重要な危険を起す可能性があ�

   るが、有効な予防法があり、伝播の可能性は低いもの。�

レベル3(個体に対する高い危険度、地域社会に対する低い危険度)�

   ヒトに感染すると重篤な疾病を起すが、他の個体への伝播の可能性は低いもの。�

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帝京大学医真菌研究センター(TIMM)カルチャーコレクション過去26年間の歩み

0

5000

10000

1983 1988 1993 1998 2003 2008

年次�

株数�

酵母�

糸状菌�

総数�

図1. TIMMコレクションの保存菌株数の年次的推移�

0

50

100

150

200

250

300

350

1983 1988 1993 1998 2003 2008

株(件)数�

年次�

件数�

株数�

図2. TIMMコレクションの分譲件数と分譲菌株数�

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休止期になるとCandida spp., Aspergillus spp.,接合

菌の順に多く、この3菌種で分譲菌株全体の80%を

占めた。このような分譲菌種または菌群の変遷は、

それぞれの時代で注目される感染症に関連している

と思われ、ユーザーの分譲の要望は教育用よりも研

究用菌株として求めているものと思われる。それは

後に述べる分譲先の施設別集計から半数以上が企業

であることからも伺える。26年間の菌種別集計では

Candida spp.(37.1%), 皮膚糸状菌(17.4%)、

Aspergillus spp. (11.1%)の順に多く、次いで

Cr. neoformans(6 .7%)、黒色真菌(6 .3%)、

Malassezia spp.(5.1%)の順に多かった(表4, 図

3a, 3b, 3c, 3d)。

5. 細菌学会教育用菌株の分譲について

5.1 指定された教育用菌株の菌種・菌株と分譲菌株

TIMMコレクションの設立経緯からMTUコレクシ

ョンを引き継ぐと同時に日本細菌学会教育委員会の

依頼により教育用菌株の分譲についても協力するこ

ととなった7, 8)。この協力はTIMM創設の1983年から

始まり1999年までの17年間にわたって続いた。その

分譲株として指定された菌株は表5aに示す通り15菌

属、25菌種で、担当した17年間の分譲株総数は81件、

230株であった(表3)。この分譲株を菌種別にみる

とC. albicans 42株(18.3%)、T. mentagrophytes

24株(10.4%)、同数でA. fumigates とT. rubrum 19

株(8.3%)、次いでCr. neoformans 18株(7.8%)の

-7-

Medical Mycology Research Vol. 2 (No. 1) 2011

表3. TIMMコレクションの年次別の保有菌株数と分譲菌株数�

年次� 保有菌株数� 分譲件数および分譲菌株数�

酵母� 糸状菌� 総数(増減*)� 件数� 株数�

*; 前年度比�

**; 細菌学会教育用菌株として分譲した件数�

***; 細菌学会教育用菌株として分譲した菌株数�

1983

1984

1085

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

529

632

941

1480

1945

1968

3281

3533

3562

3683

3703

3752

3809

3904

3985

4038

4093

4094

4122

4862

5488

5544

5954

5954

6516

6521

715

876

886

922

969

970

1152

1549

1557

1761

1761

1945

2360

2367

2677

2764

2787

2829

2859

2884

2899

2978

2987

2989

3137

3169

1244

1508

1827

2402

2914

2938

4433

5082

5119

5444

5545

5697

6169

6271

6662

6802

6880

6953

6981

7746

8387

8522

8941

8943

9653

9690

(+264)

(+319)

(+575)

(+512)

(+24)

(+1495)

(+649)

(+37)

(+325)

(+101)

(+152)

(+472)

(+102)

(+391)

(+140)

(+78)

(+73)

(+28)

(+800)

(+641)

(+135)

(+419)

(+2)

(+710)

(+37)

10

18

26

32

31

37

42

37

34

44

44

54

55

54

42

37

10

10

13

11

11

5

3

8

8

7

(2**)

(5)

(16)

(8)

(4)

(6)

(5)

(8)

(3)

(5)

(3)

(1)

(0)

(6)

(4)

(4)

(1)

23

39

76

143

95

130

191

184

161

221

204

281

307

241

242

123

29

32

111

54

21

41

29

39

14

69

(5***)

(11)

(53)

(32)

(11)

(18)

(8)

(26)

(5)

(29)

(6)

(2)

(0)

(10)

(7)

(6)

(1)

合計� 3100 (230)683 (81)

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帝京大学医真菌研究センター(TIMM)カルチャーコレクション過去26年間の歩み

表4.過去26年間における分譲菌株の菌種別内訳、各年次区分の菌種別分譲頻度�

� � �年次区分� 1883~1987 1988~1994 1995~2001 2002~2008 合計�(%)

菌種または菌群� � �

酵母:�

Candida spp. 167(44.4%) 473(34.5%) 393(36.2%) 117(43.8%) 1150(37.1)

Cr. neoformans 49(13.0) 63( 4.6) 92( 8.5) 4( 1.5) 208( 6.7)

Malassezia spp. 4( 1.1) 72( 5.2) 76( 7.0) 7( 2.6) 159( 5.1)

S. cerevisiae )2.1 (83 )4.0 (1 )6.0 (7 )0.2 (72 )8.0 (3

Trichosporon spp. 4( 1.1) 26( 1.9) 59( 5.4) 1( 0.4) 90( 2.9)

その他の酵母� 11( 2.9) 78( 5.7) 23( 2.1) 2( 0.2) 114( 3.7)

糸状菌:�

Aspergillus spp. 18( 4.8) 124( 9.0) 125(11.5) 78(29.2) 345(11.1)

皮膚糸状菌� )4.71(835 )9.4 (31 )1.31(241 )6.22(013 )4.91(37

黒色真菌� )3.6 (591 )2.2 (6 )5.3 (83 )4.01(341 )1.2 (8

接合菌� )3.1 (14 )7.6 (81 )3.1 (41 )2.0 (3 )6.1 (6

二形性真菌� )5.2 (67 )1.1 (3 )2.4 (64 )9.0 (31 )7.3 (41

S. schenckii )9.1 (06 )4.0 (1 )3.3 (63 )9.0 (31 )7.2 (01

その他の糸状菌� 9( 2.4) 27( 2.0) 34( 3.1) 16( 6.0) 86( 2.8)

合計� )001(0013 )001( 762 )001(5801 )001(2731 )001(673

表5a. 日本細菌学会教育委員会において教育用菌株として指定した�   菌株リストと分譲菌株総数�

菌種� 菌株� 総数� �(%) �

Aspergillus fumigates TIMM0063 19 (8.3)

Blstomyces dermatitides � TIMM0132 � 3 ( 1.3)

Candida albicans TIMM1623 42 (18.3)

Candida glabrata TIMM1064 6 ( 2.6)

Candida guilliermondii � TIMM0260 � 4 ( 1.7)

Candida kefyr )3.1 ( 3 2030MMIT

Candida krusei TIMM0269 4 ( 1.7)

Candida parapsilosis TIMM0292 6 ( 2.6)

Candida stellatoidea * TIMM0310 6 ( 2.6)

Candida tropicalis TIMM0313 13 ( 5.7)

Cladosporium carrionii ** TIMM0337 1 ( 0.4)

Cryptococcus neoformans TIMM0354 18 ( 7.8)

Epidermophyton floccosum TIMM0434 13 ( 5.7)

Exophiala dermatitidis TIMM0439 1 ( 0.4)

Fonsecaea pedrosoi TIMM0482 4 ( 1.7)

Histoplasma capsulatum TIMM0726 7 ( 3.0)

Malassezia furfur TIMM2789 1 ( 0.4)

Microsporum audouinii TIMM0757 3 ( 1.3)

Microsporum canis TIMM0760 11 ( 4.8)

Microsporum gypseum TIMM0776 9 ( 3.9)

Paracoccidioides brasiliensis TIMM0880 2 ( 0.9)

Phialophora verrucosa TIMM0907 2 ( 0.9)

Sporothrix schenckii TIMM0959 9 ( 3.9)

Trichophyton mentagrophytes TIMM1188 24 ( 10.4)

Trichophyton rubrum TIMM1216 19 ( 8.4)

合計� )0.001( 032

正式名:�*Candida albicans, **Cladophialophora carrionii

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Medical Mycology Research Vol. 2 (No. 1) 2011

Candida spp.�167株(44%)

Cr.neoformans�49株(13%)

Malassezia spp.�4株(1%)

S.cerevisiae�3株(1%)

Trichosporon spp.�4株(1%)

その他の酵母�11株(3%)

Aspergillus spp.�18株(5%)

皮膚糸状菌�73株(19%)

黒色真菌�8株(2%)

接合菌�6株(2%)

二形性真菌�14株(4%)

S.schenkii�10株(3%)

その他の糸状菌�9株(2%)�

a)1983-1987年�

図3. 過去26年間における分譲菌株の菌種別内訳�

Candida spp.�473株(34%)

Cr.neoformans�63株(5%)

S.cerevisiae�27株(2%)

Trichosporon spp.�26株(2%)

その他の酵母�78株(6%)

Aspergillus spp.�124株(9%)

皮膚糸状菌�310株(23%)�

黒色真菌�143株10%

接合菌�3株(0%)

二形性真菌�13株(1%)

S.schenkii�13株(1%)

その他の糸状菌�27株(2%)

b)1988-1994年�

Malassezia spp.�72株(5%)

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帝京大学医真菌研究センター(TIMM)カルチャーコレクション過去26年間の歩み

Candida spp.�393株(36%)

Cr.neoformans�92株(9%)

Malassezia spp.�76株(7%)S.cerevisiae�

7株(1%)

Trichosporon spp.�59株(5%)

その他の酵母�23株(2%)

Aspergillus spp.�125株(12%)

皮膚糸状菌�142株(13%)

黒色真菌�38株(4%)

接合菌�14株(1%)

二形性真菌�46株(4%)

S.schenkii�36株(3%)

その他の糸状菌�34株(3%)

c)1995-2001年�

Candida spp.�117株(44%)

Cr.neoformans�4株(2%)

Malassezia spp.�7株(3%)

S.cerevisiae�1株(0%)

Trichosporon spp.�1株(0%)

その他の酵母�2株(1%)

Aspergillus spp.�78株(29%)

皮膚糸状菌�13株(5%)

黒色真菌�6株(2%)

接合菌�18株(7%)

二形性真菌�3株(1%)

S.schenkii�1株(0%)

その他の糸状菌�16株(6%)

d)2002-2008年�

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順に多かった。なお、指定された25菌株のすべてに

おいて分譲依頼があった(表5a)。

5.2 教育用菌株として分譲した株数のTIMMコレク

ション全体の分譲株との比率

TIMMコレクション全体の分譲株数のなかで教育用

菌株して分譲した株数の占める割合を、菌種または

菌群としてまとめて表5b.に示した。酵母はCr.

neoformans 8.7%, Candida spp. 7.3%, Malassezia

spp. 0.6%と低い値であったのに対して、糸状菌では

二形成真菌 15.8%, S. schenckii 15.0%, 皮膚糸状菌

14.7%と比較的高い値を示したものと、黒色真菌

4.1%, Aspergillus spp.5.5%のように低い値を示すも

のがあった。

6. 分譲先の施設別集計

TIMMコレクションを分譲した施設を大学等の教

育・研究施設、研究所等の研究施設(企業附置の研

究所は除く)、病院等の医療施設および企業の4つに

大別して集計した結果を表6に示した。なお、参考の

ため細菌学会教育用菌株して分譲した件数も示した

が、細菌学会教育委員会では大学等の教育機関に限

定せず所定の費用を負担すれば企業の要望にも対応

することになっている。社内教育に用いる菌株とい

う建前であるが、実情は不明である。表4に示したよ

うに、TIMMコレクションの総分譲株数全体の半数が

企業に分譲された。それは企業が菌株を必要とする

場合は新規抗真菌薬の開発と密接な関わりがあるこ

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Medical Mycology Research Vol. 2 (No. 1) 2011

表5b.年次区分別分譲菌株の総菌株数と細菌学会教育用菌株の分譲株数との比率�

年次区分� 1883~1987 1988~1994 1995~2001 2002~2008 合計�(%***)

菌種または菌群� � �

酵母:�

Candida spp. 38*/167** 37/473 9/393 0/117 84/1150(7.3)

Cr. neoformans 10/49 7/63 1/92 0/4 18/208( 8.7)

Malassezia spp. 1/4 0/72 0/76 0/7 0/159( 0.6)

糸状菌:�

Aspergillus spp. 10/18 6/124 3/125 0/78 19/345( 5.5)

皮膚糸状菌� )7.41(835/97 31/0 241/11 013/43 37/43

黒色真菌� )1.4 (591/8 6/0 83/0 341/4 8/4

二形性真菌� )8.51(67/21 3/0 64/0 31/0 41/21

S. schenckii )0.51(06/9 1/0 63/1 31/5 01/3

合計� )4.7 (0013/032 762/0 5801/52 2731/49 673/211

*; 細菌学会教育用菌株として分譲した菌株数�

**; 総分譲菌株数�

***; 細菌学会教育用菌株分譲数 / 総分譲菌株数(%)

表6. TIMMコレクションの分譲先の施設別集計�

年次� � � � � 1983~1987 1988~1994 1995~2001 2002~2008 合計�(%)

施設�

大学等の教育・研究施設� 24*/50** 20/120 10/99 0/22 54(66.7)/291(42.6)

研究所等の研究施設� 0/3 2/5 2/9 0/4 4(4.9)/21(3.1)

病院等の医療施設� 0/0 0/9 0/4 0/0 0(0)/13(1.9)

企業等� 11/64 9/158 3/109 0/27 23(28.4)/358(52.4)

合計� 35/117 31/292 15/221 0/53 81(100)/683(100)

*; 細菌学会教育用菌株の分譲件数�

**; TIMMコ�レクションの総分譲件数�

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とに起因するためである。次いで、大学等の教育施

設が4割を占め、研究所等の研究施設および病院等の

医療施設は数%と極めて少なかった。一方、教育用

菌株の分譲先は、当然ながら大学等の教育施設が

6~7割を占め、企業は3割以下にとどまった。

7. 危険度レベル2および3に該当する菌株の分

先に述べたように、TIMMコレクションのカタログ3 ,4)には危険度2および3に該当する菌種が示され

(表1)、分譲依頼の際にそれぞれの該当する書式-1

または2によって申し込むことになっている。その分

譲に際して必要とする病原体等取扱実験室安全設備

および運営基準は表2に示した通りである。わが国で

は日本医真菌学会から危険度クラス分類の試案が9,10)、また国立感染症研究所からハザードリスク分類

に対するバイオセイフティークラスが11)、各々提示

されている。ここではTIMMコレクションカタログと

国立感染研で提示されたBSLに基づいてBSL2および

3に該当する菌株の分譲実績を表7に示した。BSL2

には11菌種あり、1983~2008年の26年間に1631株

が分譲され全体の分譲株数の52.6%にのぼった。菌

種別にみるとC. albicans(19.4%), A. fumigates

(7.3), T. mentagrophytes(6.7), Cr. neoformans

(6.7)の順であった。一方、BSL3には5菌種あり、

分譲株数は76株で総分譲株数の2.5%にすぎなかっ

た。このなかではH. capsulatumがもっとも多く、次

いでB. dermatitidis, P. brasiliensisの順に多かった。

なお、このBSL3の総分譲菌株のなかで細菌学会教育

用菌株として分譲した株数は表5aに示したように、

H. capsulatum 7 /29 , B. dermatit idis 3 /21 , P.

brasiliensis 2/16であり、センター直接の分譲した場

合の方が多い傾向にあった。

8. おわりに

TIMMコレクションの設立以来26年間の歩みを、

(1)保存と分譲の実際、(2)年次保有株数と分譲株

数、(3)分譲菌株の菌種別内訳、(4)細菌学会教育

用菌株の分譲、(5)施設別集計、(6)危険度レベル

2および3菌株の分譲、の順にそれらの概略を述べて

きた。拙い表現の文章のためTIMMコレクションの歴

史の記述は不十分なものとなったが、創設当初から

TIMMの活動の中核となって作り上げた世界有数の菌

株コレクションは、近年のわが国における医真菌学

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帝京大学医真菌研究センター(TIMM)カルチャーコレクション過去26年間の歩み

表7. TIMMコレクションの分譲菌株のうちバイオセーフティレベル�   BSL2およびBSL3に該当する菌種の分譲菌株数�

1983-1987 1988-1994 1995-2001 2002-2008 � 計� (%3)

BSL2

Aspegullus fumigates 1,2 17 84 75 51 227 ( 7.3)

Candida albicans 1,2 96 238 196 71 601 (19.4)

Cladosporium carrionii 1,2 1 9 6 0 16 ( 0.5)

Cladosprum trichodes 1,2 1 1 3 0 5 ( 0.2)

Cryptococcus neoformans 1,2 49 63 92 4 208 ( 6.7)

Exophiala dermatitidis 1,2 1 13 4 1 19 (0.6)

Fonsecaea pedrosoi 1,2 3 77 4 3 87 ( 2.8)

Microsporum canis 1 9 41 12 0 62 ( 2.0)

Sporothrix schenckii 1,2 10 13 36 1 60 ( 1.9)

Trichophyton mentagrophytes 1 28 111 63 7 209 ( 6.7)

Trichophyton rubrum 1 14 67 52 4 137 ( 4.4)

合計� )6.25( 1361 241 345 717 922

BSL3

Blastomyces dermatitidis 1,2 6 3 12 0 21 ( 0.7)

Histoplasma capsulatum 1,2 5 6 18 0 29 ( 0.9)

Histoplasma farciminosum 1,2 0 0 2 0 2 ( 0.1)

Paracoccidioides brasiliensis 1,2 3 4 9 0 16 ( 0.5)

Penicillium marneffei 1,2 0 0 5 3 8 ( 0.3)

合計� )5.2 ( 67 3 64 31 41

1 ; 国立感染症研究所病原体等安全管理規程(平成19年6月)による危険度分類。�2 ; TIMM catalogue of fungal strain (1993)における危険度分類。�3 ; 1983-2008間における総分譲菌数(3100株)に対する%を示す。�

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の進歩・発展におおいに貢献してきた。そしてコレ

クションの維持・拡充の責務を果たす努力は次の世

代に引き継がれてゆく。

末筆にあたり、TIMMがわが国を代表する医真菌学

研究機関ならびに保存機関として、今後ますます発

展してゆくことを心より祈念する。

謝 辞

26年間に亘りTIMMコレクションを維持していく

上で、多大のご指導ご鞭撻をいただいた歴代のセン

ター長でありTIMMコレクションの責任者であられた

故冲永荘一総長、山口英世名誉教授、斎藤日向名誉

教授に深甚な謝意を表します。また、コレクション

を保存・分譲するに際して、実務上のご援助をいた

だいた大井昭子さん、蓮見弥生さん、横田展子さん、

保坂純子さんおよびTIMM在籍者各位に感謝いたしま

す。

文献・資料

1)山口英世:帝京大学医真菌研究センター

(TIMM)コレクションの設立に至るわが国病原

真菌株保存活動の系譜、Medical Mycology

Research 1(1): 3-18, 2010.

2)岩田和夫:病原真菌の保存法、p265-274、根井

外喜夫(編)微生物の保存法、東大出版会、

1978.

3)Hideyo Yamaguchi (ed) : Catalogue of

Medically Important Fungal Strains Collected in

Japan 1985, First Edition, Japan Scientific

Societies Press, Tokyo, 1986.

4)Hideyo Yamaguchi, Katsuhisa Uchida, Hiuga

Saito (eds) : TIMM Catalogue of Fungal

Strains 1993 (First Edition), Center for

Academic Societies Japan, Osaka, 1993.

5)日本微生物保存連盟雑誌:各年度の活動報告、

1984~1992

6)日本微生物資源学会雑誌:各年度の活動報告、

1993~2009

7)日本細菌学会カルチャーコレクション委員会:

細菌学教育用菌株(昭和59年改訂)の分譲につ

いて、日本細菌学会雑誌39: 905-918, 1984.

8)日本細菌学会:細菌学教育用菌株の分譲につい

て、日本細菌学会雑誌50: 1019-1031, 1995.

9)山口英世:輸入真菌症の生物学的検査:いかに

安全に、どう検査を進めるか、モダンメディア

56(9): 199-212, 2010.

10)山口英世:真菌、p.146-159、バイオメディカ

ルサイエンス研究会(編)バイオセーフティ辞

典 病原微生物とハザード対策と実際、みみず

く舎、東京、2008.

11)国立感染症研究所バイオリスク管理委員会

(編):国立感染症研究所病原体等安全管理規

程、2007.

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Medical Mycology Research Vol. 2 (No. 1) 2011

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