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Title 下部直腸扁平上皮癌が上部直腸に同時性壁内転移をきたし た1切除例( 本文(Fulltext) ) Author(s) 高橋, 孝夫; 徳山, 泰治; 坂下, 文夫; 長尾, 成敏; 山口, 和也; 長 田, 真二; 荒木, 寛司; 杉山, 保幸; 富田, 弘之; 廣瀬, 善信 Citation [日本大腸肛門病学会雑誌] vol.[61] no.[1] p.[33]-[38] Issue Date 2008-01-01 Rights The Japan Society of Coloproctology (日本大腸肛門病学会) Version 出版社版 (publisher version) postprint URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/29147 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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Page 1: Title 下部直腸扁平上皮癌が上部直腸に同時性壁内転移をきたし [日本大腸 … · 目立つ,充実性癌包巣の増殖を認め,角化傾向の乏 しい低分化型

Title 下部直腸扁平上皮癌が上部直腸に同時性壁内転移をきたした1切除例( 本文(Fulltext) )

Author(s) 高橋, 孝夫; 徳山, 泰治; 坂下, 文夫; 長尾, 成敏; 山口, 和也; 長田, 真二; 荒木, 寛司; 杉山, 保幸; 富田, 弘之; 廣瀬, 善信

Citation [日本大腸肛門病学会雑誌] vol.[61] no.[1] p.[33]-[38]

Issue Date 2008-01-01

Rights The Japan Society of Coloproctology (日本大腸肛門病学会)

Version 出版社版 (publisher version) postprint

URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/29147

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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症例報告 II

下部直腸扁平上皮癌が上部直腸に同時性壁内転移をきたした 1切除例

高橋 孝夫1) 徳山 泰治1) 坂下 文夫1) 長尾 成敏1) 山口 和也1)

長田 真二1) 荒木 寛司2) 杉山 保幸1) 富田 弘之1)3) 廣瀬 善信3)

岐阜大学医学部腫瘍外科1),同 消化器内科2),岐阜大学医学部附属病院病理部3)

症例は 60 歳女性,粘血便を主訴に大腸内視鏡検査,注腸造影検査を施行したところ上部直腸―直腸 S状部(Ra-Rs)に 1型腫瘍を認め,肛門管にかかる下部直腸(Rb-P)に 2型腫瘍を認めた.生検結果はともに�平上皮癌であった.以上よりRb-P の約 2cmの 2型腫瘍,Ra-Rs の約 6cmの 1型腫瘍に対し,平成17 年 8 月腹会陰式直腸切断術を施行した.病理検査結果ではRb-P 腫瘍は低分化型�平上皮癌,mp,ly2,v2 であった.Ra病変は主座が粘膜下にあり,粘膜面には陰窩が残存して比較的保たれていること,これら組織が類似していることから下部直腸�平上皮癌の上部直腸への壁内転移と判断した.われわれは下部直腸�平上皮癌が上部直腸に同時性壁内転移をきたし,切除しえた稀な症例を経験したので報告する.

索引用語:直腸癌,�平上皮癌,壁内転移

緒 言

下部直腸�平上皮癌は稀な疾患であり,更に非連続的に直腸内に壁内転移をきたした報告はわれわれが調べたかぎりでは認められない.今回,われわれは肛門管にかかる下部直腸�平上皮癌を原発巣とし,上部直腸内に壁内転移と考えられる比較的大きな転移巣を認めた症例に対し,根治切除を施行し,無再発生存中である稀な症例を経験したので報告する.

症 例

症例:60 歳,女性.主訴:粘血便,便柱狭小化.家族歴:特記すべきことなし.既往歴:特記すべきことなし.現病歴:3カ月前より粘血便,便柱狭小化を認め,

大腸内視鏡検査を施行された.肛門より約 15cmに1型腫瘍を認めた.生検結果は�平上皮癌であり,手術目的で当科紹介となった.入院時現症:身長 159cm,体重 56Kg,胸腹部に異常所見は認めず,直腸診では肛門管直上に拇指頭大の腫瘍を触知した.

入院時検査所見:血液生化学検査ではALP 350IU�L と軽度高値を示す以外異常は認めなかった.腫瘍マーカーはCEA6.6ng�ml(正常値 5.0ng�ml以下),SCC 8.4ng�ml(正常値 1.5ng�ml以下)と高値を示したがCA19-9 は正常範囲内であった.大腸内視鏡検査所見:肛門縁より約 15cmの上部直腸(以下Ra)に約半周性で易出血性の 1型腫瘍を認めた(図 1A).また肛門管にかかる下部直腸(以下Rb-P)左壁に約 2cmの 2型腫瘍を認めた.中心部はやや陥凹しており角化と思われる白色物が付着していた(図 1B).EUSでは深達度MPであった.生検結果はともに�平上皮癌であった.注腸造影検査所見:Raから直腸 S状部(以下Rs)に及ぶ後壁左側中心に約 6cmの比較的辺縁明瞭で立ち上がりのなだらかな隆起性病変を認めた(図2).下部直腸の病変は指摘できなかった.

CT検査所見:Ra-Rs に直腸壁肥厚を認め,周囲の脂肪織上昇があり,漿膜を越えた浸潤が示唆された(深達度 SE)(図 3).壁在リンパ節転移を疑う所見も認めた.肝,肺など遠隔転移は認めなかった.

MRI検査所見:Ra-Rs に約 5cm大の腫瘤を認め,壁外に明らかに突出し,深達度 SEと判断した(図4A).直腸傍リンパ節転移を認めた.また下部直腸

日本大腸肛門病会誌 61:33―38,2008

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34 日本大腸肛門病会誌(年間 1―10 号)第 61 巻第 1号 2008 年 1 月・高橋孝夫ほか

図1 大腸内視鏡検査:A. 肛門より約15cmの上部直腸に約半周性で易出血性の1型腫瘍を認めた.B. 肛門管にかかる下部直腸左壁に約2cmの2型腫瘍を認めた.

図2 注腸造影検査:上部直腸から直腸S状部に及ぶ後壁左側中心に約6cmの比較的辺縁明瞭で立ち上がりのなだらかな隆起性病変を認めた(矢印) .

図3 CT検査:上部直腸から直腸S状部に直腸壁肥厚を認め,周囲の脂肪織上昇があり,漿膜を越えた浸潤が示唆された(矢印).

(以下Rb)にも造影効果を認め,Ra病変と同等の異常信号を示す約 2cmの腫瘍を認めた(図 4B).以上より肛門管にかかるRbに約 2cmの 2型腫

瘍(深達度MP),Ra-Rs に約 6cmの 1型腫瘍(深達度 SE)を認め,これらの腫瘍は非連続性であった.多発癌またはRb-P�平上皮癌が原発巣で,Ra-Rs病変が同時性壁内転移である可能性が疑われた.他の遠隔転移は認めなかった.よって腫瘍は直腸内 2カ所に存在し,上方向はRsまで及ぶため,放射線化学療法ではなく,切除による根治手術を行うこととした.平成 17 年 8 月 2カ所の�平上皮癌を摘出できるよう自律神経温存側方郭清をともなう腹会陰式直腸切断術(D3)を施行した.

手術所見:口側の腫瘍の下縁は腹膜翻転部近傍に位置し,存在部位はRaと判断した.腫瘍の大きさは約 6cm大で明らかに漿膜浸潤をきたし,また直腸固有間膜内にも張り出すように浸潤していた.間膜内にはリンパ節転移も存在すると考えた.深達度はsSE,sAと判断した.肛門側の腫瘍はRb-P に存在し,深達度は sMPと判断し,その近傍の壁在リンパ節には転移を疑う所見は認めなかった.触診上これら 2カ所の腫瘍は明らかに非連続性であり,Ra腫瘍が Rb-P 腫瘍よりサイズは大きかった.肝転移,腹膜播種は指摘されず,子宮など他の臓器に異常は認めなかった.摘出標本所見:肛門側の病変は大きさ 20×15mmで下縁は歯状線近傍で存在部位はRb-P と判断した.深達度 sMPと判断した.口側の病変は粘膜面で約半周を占める 45×40mmであったが粘膜下から

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図4 MRI検査:A. 上部直腸から直腸S状部(Ra-Rs)に約5cm大の腫瘤を認め,壁外に明らかに突出していた(矢印).B. 下部直腸にも造影効果を認め,Ra-Rs病変と同等の異常信号を示す約2cmの隆起性病変を認めた(矢印) .

図5 摘出標本:肛門側の病変は大きさ20×15mm,下縁は歯状線近傍で存在部位は肛門管にかかる下部直腸(Rb-P),深達度sMPと判断した.口側の病変は粘膜面で約半周を占める45×40mmであったが粘膜下から壁外に拡がり,約60mm大の腫瘍を形成していた.これら2カ所の腫瘍間は70mm離れており,非連続性に存在した.

壁外に拡がり,約 60mm大の腫瘍を形成していた.これら 2カ所の腫瘍間は 70mm離れており,非連続性に存在した(図 5).この病変の壁在リンパ節転移を認めた.側方郭清を行ったが他にリンパ節転移は認めなかった.病理検査所見:Rb-P 腫瘍は角化傾向の乏しい低

分化型�平上皮癌と診断された.正常�平上皮と連続性は認めなかった.深達度 pMP,脈管侵襲を認め,ly2,v2 であった(図 6).Ra 腫瘍は中心部の壊死が目立つ,充実性癌包巣の増殖を認め,角化傾向の乏しい低分化型�平上皮癌であった.固有筋層を越え浸潤し,直腸固有間膜内に深く浸潤していた(図 7).大腸癌取り扱い規約に準じると深達度 pSE-pA,ly2,v2 であり,壁在リンパ節転移を 1個認めた.これら 2カ所の腫瘍は�平上皮からの瘻孔は認めず,腺癌成分は全く認めなかった.またこれら 2病変は

全層にわたり連続性は認めなかった.Rb-P 病変は肛門管由来の原発性が示唆された.Ra病変は病理学的に病変主座が粘膜下にあり,粘膜面には陰窩が散在性に残存して比較的保たれていること(図 7,図 8),Rb-P と Ra の組織が類似していること(図 6,図 7)から Rb-P�平上皮癌のRaへの壁内転移と判断した.リンパ節転移は n1 であった.術後経過:術後は順調に経過し,MMC,CDDP,5FUの抗癌剤治療を施行し,その後TS1 を内服している.現在 1年 7カ月経過するが再発の兆候は認めていない.

考 察

結腸直腸原発の悪性腫瘍は大部分が腺癌で,�平上皮癌はきわめて稀である.結腸直腸の�平上皮癌は腺�平上皮癌を含めてもCrissman1)によると全大腸癌の 0.1%程度とされる.純粋な大腸原発の�平上皮癌と診断するには①正常の�平上皮と連続性を持たない,②他癌からの転移や浸潤ではない,③�平上皮からなる瘻孔を認めない,④腺癌成分を全く認めない,の 4条件が必要とされる2,3).肛門管部の上皮は肛門側 2�3 は重層�平上皮より成り,口側 1�3の単層円柱上皮よりなる直腸粘膜とこれらの上皮の境界に存在する移行上皮の 3種類で構成されている.肛門管に由来する癌では腺癌が 74.5%,�平上皮癌が 15.5%と報告されている4).自験例は病理所見では直腸粘膜部位から�平上皮癌が発生し,正常�平上皮とは独立しており,上記のすべての条件を満たし直腸�平上皮癌と診断された.

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図6 病理検査所見 肛門管にかかる下部直腸(Rb-P)腫瘍(HE染色,A:弱拡大,B:強拡大):正常扁平上皮と連続性は認めない角化傾向の乏しい低分化型扁平上皮癌,深達度pMP, ly2, v2と診断した.

図7 病理検査所見 上部直腸(Ra)腫瘍(HE染色,A:弱拡大,B:強拡大):低分化型扁平上皮癌であった.固有筋層を越え浸潤し,直腸固有間膜内に深く浸潤していた.病変主座が粘膜下にあり,粘膜面には陰窩が散在性に残存して比較的保たれており,肛門管にかかる下部直腸(Rb-P)の組織像と類似していた.

図8 切り出し病理標本:Ra病変とRb-P病変は非連続性であり,Ra病変は主座が粘膜下にあり,直腸固有間膜内に深く浸潤していた.

自験例は術前診断ではRa-Rs に約 6cm大と Rb-P病変より明らかに大きな病変を認めた.ここで①

Ra-Rs 病変と Rb-P 病変の多発癌②Ra-Rs 病変が原発巣で,Rb-P 病変が転移巣③ Pb-P 病変が原発巣でRa-Rs 病変が転移巣,の 3パターンが考えられた.病理学的には 2つの病変はともに低分化型�平上皮癌で脈管侵襲に関しても類似していることから多発癌ではなく,どちらかが転移であると考えられた.①Rb-P の病変は 2cm,深達度MPと小さいがRaよりは肛門管由来の直腸�平上皮癌の頻度が高いこと3),② Ra 病変は粘膜下中心で粘膜面は陰窩が散在性に残存して比較的保たれていることより,最終的にRb-P�平上皮癌が原発巣でRa病変が直腸壁内転移と判断した.大腸直腸�平上皮癌の再発形式は局所再発やリンパ節再発,肝転移,癌性腹膜炎などが報告されている3).われわれが医学中央雑誌およびPub Med で検索した限りでは下部直腸�平上皮癌の直腸壁内転移に関する報告は認めなかったが,井

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日本大腸肛門病会誌(年間 1―10 号)第 61 巻第 1号 2008 年 1 月・高橋孝夫ほか 37

久保ら5)は学会発表にて直腸Rb部の連続性のない 2カ所に�平上皮癌を有した症例を報告している.この症例は多発癌と考えられているが詳細は不明である.また自験例は腫瘍マーカーである SCCは高値で

あり,CEAも 6.6ng�mlと若干高値であった.直腸�平上皮癌においてCEA値異常をきたすのは 20%で,高値例は組織がより低分化で,再発率が高いとされる6).予後に関して大腸�平上皮癌は腺癌と比べ予後不良とする報告7,8)が多く,日野らの報告3)によると本邦報告例は 28 例であり,発生部位は 14 例が直腸で大部分はRb,ついでRaとされ,進行度は 23例中 17 例が III 期以上で進行例が多く,予後は不良であったとしている.自験例は現時点ではCEA,SCCともに正常範囲内であり,術後 1年 7カ月経過し無再発生存中である.肛門�平上皮癌に関しては放射線化学療法が第 1選択で,化学療法としては 5FU,MMC,CDDPを使用する報告がある6,9-11).自験例は�平上皮癌であるが①肛門�平上皮癌でないこと,②Rb-P だけでなく 70mm離れたRaにも病変を認めたことより,第 1選択として放射線化学療法ではなく,根治切除術を選択した.術後 5FU,MMC,CDDPによる化学療法を施行し,その後TS1 を内服継続中で,術後1年 7カ月無再発生存中である.再発危険群であることや予後不良であることを考慮するとこれらの抗癌剤の効果がある可能性も考えられる.

結 語

直腸内に離れた 2カ所に腫瘍が存在した直腸�平

上皮癌の 1例を経験した.肛門管にかかる下部直腸を原発巣とし,上部直腸に同時性壁内転移をきたしたと考えられたたいへん稀な症例を報告した.

本論文の要旨は第 61 回日本大腸肛門病学会総会(2006 年

9 月弘前)において発表した.

文 献

1)Crissman JD: Adenosquamous and squamous cell carci-noma of the colon. Am J Surg Pathol 2: 47―54, 1978

2)Comer TP, Beahrs OH, Dockerty MB : Primarysquamous cell carcinoma and adenoacanthoma of thecolon. Cancer 28: 1111―1117, 1971

3)日野直樹,原内大作,滝沢宏光:腺癌切除部に再発した直腸扁平上皮癌と腺癌の重複癌の 1例.日臨外会誌66:1130―1134, 2005

4)安富正幸,武藤徹一郎,馬場正三:大腸外科.医学書院,東京,1999,p276―285

5)井久保丹,木村誉司,大友直樹ほか:直腸の扁平上皮癌の 1例.愛媛病会誌 29:109, 1993

6)守本芳典,岩垣博巳,森下紀夫ほか:CEA高値を示した肛門管扁平上皮癌の 1例.日本大腸肛門病会誌 57:273―277, 2004

7)牧野知紀:術前放射線化学療法にて腫瘍の完全消失を認めた下部直腸扁平上皮癌の 1例.日本大腸肛門病会誌60:105―109, 2007

8)Frizelle FA, Hobday KS, Batts KP, et al: Adeno-squamous and squamous carcinoma of the colon and up-per rectum. Dis Colon Rectum 44: 341―346, 2001

9)Nigro ND: Multidisciplinary management of cancer ofthe anus. World J Surg 11: 446―451, 1987

10)石田秀之,龍田眞行,古河 洋ほか:放射線,化学療法が奏功した肛門扁平上皮癌の 1例.日本外科系連合会誌28:1044―1047, 2003

11)笹岡政宏,不破信和,松本 陽ほか:肛門管扁平上皮癌に対する化学放射線療法の経験.癌と化学療法 28:399―402, 2001

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38 日本大腸肛門病会誌(年間 1―10 号)第 61 巻第 1号 2008 年 1 月・高橋孝夫ほか

A Case of Squamous Cell Carcinoma of the Lower Rectum with Simultaneous

Intramural Metastasis of the Upper Rectum

T. Takahashi1), Y. Tokuyama1), F. Sakashita1), N. Nagao1), K. Yamaguchi1), S. Osada1),K. Araki2), Y. Sugiyama1), H. Tomida1)3)and Y. Hirose3)

1)Oncologic Surgery, 2)Department of Gastroenterology, Gifu University Graduate School of Medicine,3)Gifu University Hospital, Division of Pathology

A 60-year-old woman with bloody stool and narrow feces visited our hospital. The colonoscopy and barium en-

ema revealed two elevated lesions of the rectum, one in the lower rectum (Rb) and one in the upper rectum (Ra). Bi-

opsy specimens suggested that both lesions were squamous cell carcinoma. The Rb tumor was a 2cm type-2, and the

Ra tumor was about a 6cm type-1. We performed resection by abdominoperineal resection in August 2005. Histologi-

cal examination of the specimen of Rb revealed poorly differentiated squamous cell carcinoma: mp, ly2, v2. Histologi-

cal examination of the Ra specimen revealed similarity to Rb tumor and suggested that the origin of Ra tumor was

submucosal. We suggest that squamous cell carcinoma of the lower rectum was the primary carcinoma and that

squamous cell carcinoma of the upper rectum at 70mm distant from the cancer of Rb was intramural metastasis from

Rb. We report this rare case with lower rectal squamous cell carcinoma (Rb-P) with simultaneous intramural metas-

tasis.

(2007 年 3 月 26 日受付)(2007 年 6 月 7 日受理)