shingon - 真言宗智山派 総本山智積院

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便をお唱えする ―さまざまに心を打つその響 ひび き― [特集] SHINGON Vol. 84 真言宗智山派

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Page 1: SHINGON - 真言宗智山派 総本山智積院

平成十年十二月十六日第三種郵便物認可 第八十四号 平成二十八年三月一日発行 年四回(六月・九月・十二月・三月の一日)発行

御ご

詠え い

歌か

をお唱えする―さまざまに心を打つその響

ひび

き―

[特集]

SHINGON

Vol.

84真言宗智山派

Page 2: SHINGON - 真言宗智山派 総本山智積院

2

表紙写真埼玉県のさきたま古

墳ふん

公園は、古墳だけでなく桜の名所でもある。ここに限らず、古墳や墓地に、桜の名所が多いのはなぜだろう。人は古来より、何もない枝から芽が出て、やがて盛大に花を咲かせ、そして最後には散る桜に、人間の一生を重ねてきたのだろうか。

目次写真一本の河

かわ

津づ

桜ざくら

にメジロが集まって、せわしなく蜜を吸っていた。河津桜は、ソメイヨシノの開花よりも一足早く、1月下旬から 2月に咲く。まだ寒い日々が続いている中、この濃い桜色の可

憐れん

な花を見ると、春の暖かい気配を感じて嬉しくなる。� 撮影・解説/竹本りか

目 次

Vol. 84 SHINGON

今日の法語 冨岡宥心.............2錦秋の晋山式.............................................3特集 御詠歌をお唱えする

 ―さまざまに心を打つその響き―....6山の祈り自然の響き 佐藤秀仁.......... 10いただきますの心 音羽和紀.......... 11図解・仏教ガイド 「マンガでわかる十三仏②」

え・悟東あすか.......... 12ゆーけいの写仏をするよろこび

牧 宥恵.......... 14日本の四季を切り取る十七文字

星野高士.......... 15総本山の便りをお知らせします..... 16私の夫はお坊さん 大塚哲子.......... 18ごくらくらくご 三遊亭竜楽.......... 19仏さまの心を詠う  新堀歓乃.......... 20読者アンケートから・おしらせ・編集後記..... 22真言宗智山派出版刊行物のご案内...23曼荼羅の仏たち 小峰彌彦.......... 24刮目! 仏教体験記内藤理恵子.......... 26花に聞く仏に聞く 佐々木隆元......... 28地獄はコワイ !? 阿部宏貴.......... 29やきものをたのしむ 柳田栄萬.......... 30この書の弘法大師 飯島太千雄.......... 31

冨とみ

岡おか

宥ゆう

心しん

(群馬県前橋市・蓮れ

ん花げ

院いん

「帰き

 みょう命」

帰き

命みょう

とは、自己の身し

命みょう

を投げ出して仏さまを信

じること、帰き

依え

することです。梵ぼ

語ご

のナマス(na

mas)の漢訳であり、音訳されたものが“南な

無む

です。

インドでは「ナマステ」と合掌をして挨あ

拶さつ

します。

“テ”は、“あなたに”の意味。つまり、「あなたの

中の仏さまに礼ら

拝はい

します」という意味です。

私の中にも、あなたの中にも、仏さまがおられ

ます。相互礼拝の気持ちで、敬う

やま

いあえる世の中で

ありますように。�

合掌 

仏教について 仏教と文化わたしたちの生活と仏教 お知らせ

84三校唐糸

太刀川

Page 3: SHINGON - 真言宗智山派 総本山智積院

3

錦にしき

のように色鮮やかな紅葉に包まれた総そ

本ほん

山ざん

智ち

積しゃく

院いん

の境け

内だい

に、智ち

山さん

雅が

楽がく

会かい

による越え

天てん

楽らく

の旋せ

律りつ

が美しく響き渡っています。平成

二十七年十一月五日。この日、真し

言ごん

宗しゅう

智ち

山さん

派は

の新たな管か

長ちょう

さま、総本山智積院第七十一世

化け

主しゅ

大だい

僧そう

正じょう

小こ

峰みね

一いち

允いん

猊げい

下か

の晋し

山ざん

式しき

が勤ご

修しゅう

され

ました。

晋山式とは、“山に晋す

む”と書くように、

新たな住職が寺院に就し

ゅう

任にん

する際の儀式のこと

です。寺院は、一般世間から離れた修行道場

として“山”とも呼ばれます。このことから

智積院もまた、かつての所在である根ね

来ごろ

の地

に由来する“五い

百お

佛ぶ

山さん

”の山号を冠します。

晋山式の開式に際して、小峰一允大僧正

は、まさに根来時代から智積院の能の

化け

さま

(私たちを能よ

く教き

ょう

化け

する指導者を意味します)のみ

が嫡ち

ゃく

々ちゃく

と相そ

伝でん

する“中ち

ゅう

性しょう

院いん

流りゅう

”の法ほ

脈みゃく

を、前

能化さまの寺て

田だ

信しん

秀しゅう

猊下より相そ

承じょう

されまし

た。いわゆる“法ほ

流りゅう

相そう

承じょう

の儀”をとおして、

五百佛の山の猊げ

座ざ

(猊とは獅し

子し

のことで、転じて

宗教的指導者のお立場を意味します)に晋まれ

“猊下”となられたのです。

法流を相承された猊下は、能化職としての

誓せい

願がん

である“晋し

山ざん

傳でん

燈とう

奉ほう

告こく

文もん

”をご本尊大だ

日にち

如にょ

来らい

さまのご宝前に奏そ

上じょう

するべく、本坊の大

玄関から行列を催も

よお

して金こ

堂どう

へと向かわれま

す。その行列は荘そ

厳ごん

そのものであり、鶯う

ぐいす

色いろ

の冠か

服ぷく

をまとった楽が

士し

を先頭に、法要の職し

衆しゅう

となる紫し

衣え

の僧正たちが続き、そしてその後

に、緋ひ

色いろ

の素そ

絹けん

に身を包んだ猊下が、手た

輿ごし

担かつ

がれてゆっくりと進まれます。

小こ

春はる

日び

和より

の穏やかな日差しに映は

える美しい

行列の風景は、この晋山式に遡さ

かのぼ

ること四ヶ

月前、小峰一允猊下が初めて智積院の総そ

門もん

くぐられた“初し

登とう

嶺れい

”の日の風景に重なるも

のでした。

開かれた智ち

積しゃく

院いん

総そう

門もん

 初し

登とう

嶺れい

の風景

梅雨の折りにもかかわらず、夏色の青空が

顔を出した七月六日、猊下は、初めて智積院

の総門をくぐられました。智積院の総門の結け

界かい

は、普段は閉じられていますが、智積院に

新たな能化さまを迎える“初登嶺”のために

開かれます。

結けっ

界かい

が開かれた総門前に到着した車上か

錦き

秋し

の晋し

山ざ

式し

金こん

堂どう

に向かわれる僧そう

列れつ

の様子。智ち

山さん

雅が

楽がく

会かい

による越え

天てん

楽らく

の奉ほう

演えん

を先頭に、集しゅ

議ぎ

・菩ぼ

提だい

院いん

結けっ

集しゅう

といわれる高僧の列が続き、手

輿ごし

に乗られた小こ

峰みね

一いち

允いん

猊げい

下か

が進まれます。

総そう

本ほん

山ざん

智ち

積しゃく

院いん

第七十一世化け

主しゅ

大だい

僧そう

正じょう

小こ

峰みね

一いち

允いん

猊げい

下か

ご晋山

唐糸

太刀川

84 三校

3

Page 4: SHINGON - 真言宗智山派 総本山智積院

ら、新能化さまである猊下が静かに降り立ち

ました。そして総門の階段を一段一段、力強

い足取りで登られます。その凛り

然ぜん

としたお姿

には、猊下のこれまでの歩みと、これからの

誓いが窺う

かが

われるものでした。

猊下は、これまで東京都練馬区の名め

刹さつ

、関

東十一檀だ

林りん

の隨ず

一いち

に数えられた歴史深い三さ

寳ぼう

寺じ

のご住職として、日々の行法を欠かさず、

多くの徒と

弟てい

を育成され、仏法の興こ

隆りゅう

にご尽じ

力りょく

されてきました。

宗内においては教学部長の任にあたり、特

に智山伝で

法ぼう

院いん

を発足させる等、智山教学の発

展に力を注ぎました。さらに、智山教化セン

ター長として、教化活動の推

進も諮は

られました。特に、檀

信徒とともに唱える御ご

詠えい

歌か

発展布教には力を注がれ、密み

厳ごん

流りゅう

遍へん

照じょう

講こう

全国連合会の会長

もつとめられました。

猊下のこれまでの歩みは、

まさに事じ

教きょう

二に

輪りん

(真言の作法を

修得し、教えを学ぶ)を欠かす

ことなく兼け

修しゅう

されたものであ

り、そしてその眼ま

差ざ

しはいつ

も後こ

身しん

の育成と、檀信徒の安

らかなる心を育むことに向け

られていたのです。

総門をくぐられると、猊下

は一礼され、そのまま金堂に向かって歩を進

められました。金堂に続く参道の両側には、

新しい能化さまを迎えるように桔き

梗きょう

の花が満

開に咲いていました。“初登嶺の儀”では、

猊下は金堂のご本尊大日如来をはじめ、明み

ょう

王おう

殿でん

、大師堂、密み

厳ごん

堂どう

、神し

殿でん

、求ぐ

聞もん

持じ

堂どう

、運う

敞しょう

蔵ぐら

、先せ

師じ

供く

養よう

塔とう

、光こ

明みょう

殿でん

、学が

侶りょ

墓ぼ

地ち

、戦せ

没ぼつ

供く

養よう

塔とう

と順次まわられ、それぞれに心をつく

してご法ほ

楽らく

をつとめられます。最後に智積院

化主第一世玄げ

宥ゆう

僧正像の前で法楽を捧げられ

た猊下の目は、玄宥僧正以来の智積院の歴史

を受け止められ歩まれる、強い決意を感じさ

せるものでした。

4

穏おだ

やかな日差しの中、秋色に染まる境け

内だい

の木々が、ご晋山を祝うかのように、

手た

輿ごし

の猊げ

下か

を優しく包み込んでいます。

右 �平成 27年 7月6日に行われた“初しょ

登とう

嶺れい

”において智ち

積しゃく

院いん

総そう

門もん

を潜くぐ

られた猊げい

下か

。京都七条通り東の終点にある総門は普段は結界されていますが、初登嶺の日は門が開かれ、猊下のみとおりぬけることができます。

左 初登嶺の儀では、智積院の諸堂で法ほう

楽らく

が捧ささ

げられます。

唐糸 84責了

太刀川

4

Page 5: SHINGON - 真言宗智山派 総本山智積院

5

奏そう

上じょう

 晋し

山ざん

傳でん

燈とう

奉ほう

告こく

文もん

初登嶺の日から四ヶ月の間、智積院では晋

山式に向けて、入念に準備をすすめてきまし

た。晋山式当日、金堂内に用意された席は

五百席を超えます。真言宗各派の管長さまを

はじめ、宗内外の高僧方が来ら

賓ひん

として参列

し、猊下のご家族・ご親族をはじめ、ご自坊

である三寳寺の檀信徒の方々が喜びを胸に見

守る中、手輿を降りた猊下は、金堂の正面か

らまっすぐに内陣へと進まれ、猊下のみが坐

ることのできる二に

畳じょう

台だい

に静かに着座されまし

た。猊

下がご本尊大日如来に向かわれ合掌され

ると、参列者とともに厳お

ごそ

かに

法ほう

要よう

が勤められました。数百

名の参列者が一斉にお唱えす

る「奠て

供ぐ

、理り

趣しゅ

経きょう

、讃」の声し

ょう

明みょう

。金堂一杯に響きわたる妙た

なる法音は、まさに法要の極

みというべきものでした。

法要を終え、猊下は晋山傳

燈奉告文を読み上げられまし

た。傳燈奉告文は、法ほ

身しん

大日

如来より付ふ

法ほう

された真言密教

の法燈を掲か

げて歩み続ける真

言宗智山派の近代百年の行ぎ

ょう

跡せき

を綴つ

るものでした。 

その中で猊下は、これまで

の智山派の歩みを停滞させる

ことなく、社会教化の一層の

興隆のために、さらなる一歩

を踏み出そうという誓願を示

されました。その誓願が報わ

れるとき、わたしたちの願いも、きっと成就

するはずです。それはすべての人々が安らか

なる心をともにする世界。“生きる力”が充

満する世界の実現です。ご本尊大日如来さま

は、猊下の誓願をしっかりとお受けなされた

ように、わたしたちに静かな微ほ

笑え

みを振り向

けられています。

(智山教化センター所員/伊藤尚徳 撮影/村中修)

晋しん

山ざん

傳でん

燈とう

奉ほう

告こく

法ほう

要よう

の様子。金堂を埋め尽くす参列者の中、厳おごそ

かな読ど

経きょう

が響ひび

きわたりました。

傳でん

燈とう

奉ほう

告こく

文もん

を読み上げられる猊げ

下か

。法燈を受け継ぐ者としての並々ならぬご決

意を私たちにお示しくださいました。

太刀川

84 三校

5

唐糸

Page 6: SHINGON - 真言宗智山派 総本山智積院

四国八十八ヶ所遍へん

路ろ

で御ご

詠えい

歌か

をお唱えするお遍路さんたち。御詠歌の響

ひび

きは、霊場を一カ寺ずつ巡り、時を同じくして巡

じゅん

礼れい

する同どう

行ぎょう

の人々の心を一つにしていきます。その心穏

おだ

やかな祈りこそが、仏さまに出会う瞬

間き

となるのです。

6

御ご

詠え い

歌か

をお唱えする―さまざまに心を打つその響

ひびき―

智山教化センター専門員・密みつ

厳ごん

流りゅう

遍へん

照じょう

講こう

指導師範詠えい

秀しゅう

吉よし

岡おか

光こう

雲うん

特 集

6

84再校 84太刀川

唐糸

Page 7: SHINGON - 真言宗智山派 総本山智積院

みなさんは御詠歌をご存ぞ

知じ

でしょうか? 

『生きる力SHINGON』を通読している

方なら、御詠歌に関連した記事にも目をとお

していただいていることと思います。子守唄

のような響ひ

きでどこか懐かしいような、それ

でいて厳げ

粛しゅく

な気持ちにさせる歌です。どこか

で聴いたことはありませんか?

密厳流の御詠歌

私たちの御詠歌は「密み

厳ごん

流りゅう

」と称し、ご葬

儀やご法事をはじめとして、あらゆる場面で

お唱えしています。お釈し

迦か

さまをはじめとし

た諸仏諸菩ぼ

薩さつ

を讃さ

嘆たん

するものや、弘こ

法ぼう

・興こ

教ぎょう

両大師さまのご生涯を綴つ

ったもの、ご先祖さ

まや亡き人の供養に捧さ

げるものなどがあり、

御詠歌を聞き、そしてお唱えすることで、真し

言ごん

宗しゅう

智ち

山さん

派は

がどのような教えを受け継いでい

るのか、檀信徒のみなさんにどのようなこと

をお伝えしたいのか、といったことがよく分

かる内容になっています。

この御詠歌は、檀信徒のみなさんととも

に、至し

心しん

にお唱えするところに妙み

ょう

味み

がありま

すので、御詠歌の練習会を開いている寺院が

お近くにありましたなら是非一度見学にいら

してください。入門は至って簡単です。

練習会に参加して密厳流の節せ

調ちょう

に慣れてき

たら、数曲の課題曲による検定を受けてお免め

状じょう

をいただいたり、仲間と一緒に練習した曲

を発表する奉ほ

詠えい

大たい

会かい

に参加したり、観音さま

やお大師さまの霊れ

場じょう

巡めぐ

りをして旅先の空の下

でお唱えしたりと、楽しみがどんどん膨ふ

らん

で気力充実の日々があなたを待っています。

御詠歌の一つ「いろは和讃」のなかにもあ

るいろは歌は、

色いろ

はにほへど散ち

りぬるを 

 我わ

が世よ

誰たれ

ぞ常つ

ならむ 

  有う

為い

の奥お

山やま

けふこえて 

   あさき夢ゆ

みじゑひもせず

と詠まれています。すべてのものは移り変

わっていく、という仏さまの教えが歌詞に込

められていま

す。いつまで

も若くて元気

でいたいのは

人情ですが、

そのことに執し

ゅう

着じゃく

すると、か

えってどうに

もならない苦

しみが生まれ

るということ

です。

寺院との付

き合いも、もしかしたら、“いつかはお世話

になるところ”だけれども、“そのことを考

えるのは縁え

起ぎ

が悪い”から“今はまだ疎そ

遠えん

もかまわない”という具合に、若くて元気な

人ほどそうお考えになるかもしれません。し

かしながら、“有為の奥山をこえて、安らか

なる心をともにする”ためには、今から寺院

に慣れ親しんでいただくほうがよいと思いま

す。御

詠歌と仲間

真言宗智山派では、総そ

本ほん

山ざん

智ち

積しゃく

院いん

をはじめ

各地の講習会で、若い僧侶たちが一い

所しょ

懸けん

命めい

御詠歌を勉強しています。御詠歌を通じて檀

御詠えい

歌か

をともに学ぶ人たちと一緒に、巡じゅん

礼れい

に出かけるという人も少なくありません。そして長い道のりの中、ともに祈ることで一体感が生まれ、いつしか胸に溜

まった思いを話し合えるまでに心を開く仲間になっていくこともあるのです。

7

7

84 三校太刀川

唐糸

Page 8: SHINGON - 真言宗智山派 総本山智積院

家さん、信者さんとふれあうことを希望して

いるのです。

以前、私と檀家さんとのふれあいで、忘れ

ることのできない出来事がありました。

ある年、御詠歌の練習会と四国遍路に参加

していた女性が、ご病気で亡くなりました。

八十八ヶ所の札所を四回に分けてお参りを進

めていましたが、この方は三回までお参りが

済んでいたので、あと一回で結願を迎えると

ころでした。すると、この方のご主人(以下

Aさんと呼びます)が、「あとたった一回なの

だから、残りは私が妻の代わりにお参りに行

きます」といってくれたのです。四国遍路を

結願し、高野山の奥之院にお参りした時に

は、御詠歌の練習会で奥さんと仲がよかった

ご婦人とAさんが手を取り合って喜んでいる

姿が印象に残りました。

よかった、と安あ

堵ど

したのもつかの間のこと

でした。Aさんはその後、急き

ゅう

激げき

にお酒へと溺お

れていきました。肝か

臓ぞう

を傷めてしまい、お医

者さんから「もうお酒は飲んじゃいけない

よ」といわれたそうです。

亡くなった奥さんの友人が、見かねてAさ

んを御詠歌の練習会に誘いました。そのころ

私たちは、四国に続いて、西国の観音霊場巡

礼を計画していたので、Aさんも一緒に行く

ことになりました。この時、Aさんは断だ

酒しゅ

誓ちか

って一滴も飲みませんでした。そして私

は、Aさんが語る奥さんの思い出話に耳を傾か

たむ

けました。普段はできない話も、この観音巡

礼の道すがら、お互い胸き

ょう

襟きん

を開いて話すこと

ができたと思います。

総そう

本ほん

山ざん

智ち

積しゃく

院いん

での結けち

縁えん

灌かん

頂じょう

の様子。結縁灌頂は、檀信徒が仏さまとのご縁を結ぶとても大切な儀式です。この儀式に参加することで、仏教への帰

依え

の心がさらに深まっていきます。

全ぜん

国こく

奉ほう

詠えい

大たい

会かい

の様子。御詠歌を学ぶ大勢の人たちの祈りの集大成ともいえる盛

せい

儀ぎ

な奉詠が、会場に響

ひび

きわたります。こういった活動によって皆さんの結

けっ

束そく

がさらに強まり、一生の仲間を育んでくれることにもつながっていくのです。

8

8

84三校太刀川

唐糸

Page 9: SHINGON - 真言宗智山派 総本山智積院

ある年に、私たち東京北部の智ち

山さん

派は

寺院が

集つど

い、結け

縁えん

灌かん

頂じょう

という厳粛な儀式を行いまし

た。御詠歌、巡礼と仏さまとのご縁を深めて

いったAさんもこの時、「もっと仏さまとご

縁を結びたい」と参加を申し出てくれまし

た。ご家族が介か

添ぞ

えを申し出てくださり、何

とかAさんに受けさせてあげたいと祈るよう

な気持ちで準備を進めましたが、惜お

しいこと

にAさんは結縁灌頂を受けることなく帰らぬ

人となってしまいました。

御葬儀では、御詠歌の練習会の仲間もお焼

香に訪れ、Aさんと最後のお別れをしまし

た。ご長男夫妻からは、「父は母が亡くなっ

て一時生活が乱れ苦しそうでしたが、みなさ

んの励は

ましのお陰か

で元の充実した日々を取り

戻し、穏やかな最後を迎えることができまし

た」と、私たちに有難い言葉をかけてくださ

いました。私にとってそれは、忘れることの

できない思い出に残る御葬儀となりました。

御詠歌の祈り

私たちが御詠歌を唱えるのは、その声が祈

りとなって仏さまに届くことを信じ、お唱え

する声をそのまま、お供えする心で、精し

ょう

進じん

しているのです。ですから、きっと仏さま

も、そんな私たちをご覧になり、救い取るこ

とを思お

し召め

しになるのではないでしょうか。

み仏ほ

とけ

居い

ます現う

つし

世よ

 そのまま永と

遠わ

の春は

にして

  小こ

鳥とり

の歌う

も法の

の声こ

   是こ

ぞ密み

厳ごん

国くに

なれや

「密み

厳ごん

国こく

土ど

和わ

讃さん

」より

私たちは、一人でも多くの方と一緒に御詠

歌をお唱えしたい、と切に願っています。最

初は見学だけでも結構です。是非一度、御詠

歌を体験してみてください。あなたの入門を

心よりお待ちしています。

御詠歌に興味を持たれた方はCD「ご詠歌のしらべ」をお聴きになってはいかがでしょうか。このCDは、御詠歌の旋

せん

律りつ

をより身近に感じていただくため、そのしらべを、鈴れい

や鉦しょう

といった法具は使わず、バイオリンをはじめとする西洋の弦楽器を用いて奏

かな

でています。ですから、御詠歌に親しんでいる方はもちろん、御詠歌を聴いたことのない方にとっても、馴

染じ

みやすいものとなっています。どうぞ密みつ

厳ごん

流りゅう

御詠歌の美しい旋律にふれてみてください。(価格 税込1,300円)

御詠歌を聞いたことのない方へバイオリンが奏でる御

詠え い

歌か

CDのご案内

「密厳流 ご詠歌のしらべ」

ご購入ご希望の方は出版係まで真しん

言ごん

宗しゅう

智ち

山さん

派は

 宗務出張所 出版係Tel. 03-3431-7828 電話受付時間 9:30 ~ 17:00 土・日・祝日を除くホームページ 出版物のご案内 http://www.chisan.or.jp/publication/

密厳流遍照講事務局(別院 真福寺内)〒 105-0002 東京都港区愛宕 1-3-8TEL:03-3431-0280

御詠歌に興味を持たれた方は菩提寺にお問い合わせいただくか、密厳流遍照講事務局にお問い合わせください。

密み つ

厳ご ん

流りゅう

遍へ ん

照じょう

講こ う

からのご案内

9

9

84 責了太刀川

唐糸

Page 10: SHINGON - 真言宗智山派 総本山智積院

平成十年十二月十六日第三種郵便物認可「生きる力S

HIN

GO

N

」第八十四号 平成二十八年三月一日発行 年四回(六月・九月・十二月・三月の一日)発行 定価一〇〇円(本体九三円)

発行人/小宮一雄 編集/智山教化センター 発行所/〒  

京都市東山区東大路七条下ル東瓦町九六四 総本山智積院内 真言宗智山派宗務庁

605-0951

真言宗智山派HP http://www.chisan.or.jp

総本山智積院別院 真福寺

〒105-0002 

東京都港区愛宕一︱三︱八

TEL 

03―3431―1081

FAX 

03―3431―0203

愛あた

宕ご

薬やく

師し

ご縁日

・大護摩供法要 

12時より

・写経会(納経料千円)14時より

3月8日(火)

4月8日(金)

※花まつり・11時30分より

5月6日(金)

やすらぎ寄席

毎月第3木曜日 

18時30分より

於 

本堂(木戸銭千五百円)

3月17日 

三遊亭

4月21日 

談志一門会

5月19日 

三遊亭

真福寺阿あ

字じ

観かん

会え

昼15時・夜19時より

於 

本堂(無料・要事前申込)

3月22日(火)

4月26日(火)

5月24日(火)

愛宕薬師フォーラム(無料)

2月17日(水)14時より

「仏ほとけ像

たちは何を語るか」

龍谷大学特任教授/宮みや

治じ

昭あきら

先生

〒605-0951 

京都市東山区東大路�  

     

七条下ル東瓦町九六四

TEL 

075―541―5361

FAX 

075―541―5364

写しゃ

経きょう

のつどい

毎月21日 13時より

於 

金堂

納経料 

千円

宿泊料金�

6、670円

    (朝食・灯明料・税込)

ご予約・お問い合わせ

TEL 

075-541-5363

・JR京都駅よりバス約10分

・京阪七条駅より徒歩約10分

総本山智積院真言宗智山派

ホームページ

智積院会館

605-0951

京都へお越しの際には、宿坊智積院会館をご利用ください。朝、静寂に包まれた名勝庭園があなたをお待ちしております。そして、宿坊ならではの魅力をぜひ体験してください。

【ご宿泊料金】 ◦6,670円(朝食付き・坊入り灯明料・税込) ◦ご夕食は1,620円より別途承ります。

http://www.chisan.or.jp/sanpai/kaikan/宿坊智積院会館

(ご予約・お問い合わせ)TEL:075―541―5363 mail:[email protected]