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温故知新

「ニコラ・テスラの特許戦略」

Smipsオーガナイザー

弁理士 永井 隆

Smips特許戦略工学分科会2018年1月13日

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キーワード

神童のナイアガラ利用計画

グラムの発電機の問題

回転磁界の着想、テスラの思考

エジソンとの出会い・訣別

ウェスティングハウスとの連合

電流戦争 泥沼の戦い・交流の勝利

テスラコイル

無線革命、マルコーニとの闘い

世界システム 計画と挫折

幾多の発明

幻のノーベル賞

エジソンメダル受賞、物理単位Ｔ

テスラとアインシュタイン

テスラの名言

年表

1856年 クロアチアで生まれる

1882年 回転磁界を着想

1884年 米国に移住し、エジソン電灯会社に入社

1887～1896年 エジソンとの電流戦争

1891年 米国市民権を取得。テスラコイルを発明

1896年 ナイアガラ瀑布の発電所に交流システムが採用

1898年 無線操縦ボートの実演

1906年 世界システム（ワーデンクリフ塔）の挫折

1917年 エジソンメダルを受賞

1943年 ニューヨークのホテルで死去 86歳

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神童のナイアガラ利用計画

本でナイアガラを知った時、心をひかれた。

大きな水車が現れ、落下する水で回る絵が浮かぶ。「いつかアメリカに行って、ナイアガラ瀑布を利用して力をつくるんだ。」

数学に抜群の能力

8つの言語（セルビア語、英語、チェコ語、ドイツ語、フランス語、ハンガリー語、イタリア語とラテン語）に堪能で、詩作、音楽、哲学にも精通

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グラムの発電機の問題

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ベルギーのZ・T・グラムの発明

整流子から火花が発生し、損失の原因になる。

→テスラ：交流を使えばいいのでは

回転磁界の着想

整流子なしで電機子の電流を変化させる方法を探求

1982年、友人シゲティと公園で、ゲーテのファウストを暗唱しているとき、稲妻のようにアイデアが光った。

単相の欠点を解決した二相誘導電動機

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テスラの思考

My method is different. I do not rush into actual work. When I get an idea I start at once building it up in my imagination. I change the construction, make improvements, and operate the device entirely in my mind.

「私は、実際の作業を、性急に進める事はない。まずは、想像の中で組み立て作業を開始する。頭の中で装置の構造を変え、改良し、操作する。思考の中で試行しようと工場の中で試験しようと、私には関係ない。」

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USP381,968

ELECTRO-MAGNETIC MOTOR （交流モーター）

1888年5月1日登録

他に､USP382,280

USP381,970等

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USP381,968 クレーム

1. The combination, with a motor containing separate or independent circuits on the armature or field-magnet, or both, of an alternating current generator containing induced circuits connected independently to corresponding circuits in the motor, whereby a rotation of the generator produces a progressive shifting of the poles of the motor, as herein described.

2～4（略）

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エジソンとの出会い

1882年 パリの欧州エジソン社で働く

1884年 米国に移住し、エジソン電灯会社で働く

発明王エジソン（1847～1931）

投票記録器、株式相場表示機、

電話、蓄音機、白熱電球等

Genius is one percent inspiration,

99 percent perspiration

「天才は、99％の汗と１％のひらめき」

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エジソンとの訣別

発電機の問題解決に、5万ドルのボーナスを約束

テスラ：数か月後に見事解決し、ボーナスを要求

エジソン：「君はアメリカのユーモアが分からないのか」

テスラ：失望し、即座に退職（1985年）

最大の理由：電力システムの取り組みの違い

Genius is 1 percent inspiration and 99 percent vain effort.

「天才とは、99%の努力を無にする1%のひらめきのことである。」

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ウェスティングハウスとの連合

ジョージ・ウェスティングハウス（1846～1914）

鉄道用の空気ブレーキなど、生涯に400あまりの特許を取得した発明家であり、アメリカ有数の実業家。

1888年のテスラの講演「交流モーターと変圧器」

に注目し、テスラの研究所を訪問。

テスラへの支援

テスラの交流の特許全てを25万ドルと、

電力一馬力当たり2ドル50セントを支払う

ライセンス契約を結ぶ。

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USP390,721

DYNAMO-ELECTRO MACHINE （交流発電機）

1888年10月9日登録

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USP390,721 クレーム

1. The combination, with an alternating current generator having independent energizing or field and independent induced or armature coils, of an alternating current exciter having generating or induced coils corresponding to and connected with the energizing coils of the generator, as set forth.

2～4（略）

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電流戦争 始まる

直流(エジソン)vs交流(テスラ､ウェスティングハウス)

エジソン：1879年、白熱電灯用に直流発電機を開発。1881年、ナイアガラに発電所を建設、パリ万博では500個の電球を点灯。

テスラ：1881年、アメリカ市民権を取得。ウェスティングハウスのコンサルタントとして、周波数60ヘルツを主張したが、当初から133ヘルツで実験してきた技術者と対立。後に60ヘルツが採用。

交流の優位

電力=V×I、損失＝R×I２：

同じ電力なら、電圧を上げた方が損失が少なくなる。交流は、高電圧で送電し、変圧器で電圧を下げられるが、直流は難しい。

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電流戦争 泥沼の戦い

エジソンのネガティブキャンペーン

交流の危険性を印象付けるため、動物を交流電気によって処分する実験を実施した。始めは野良犬や野良猫、最終的には象に及んだ。死刑手段の「電気椅子」に交流を用いて、交流の危険性をアピール。

テスラも100万ボルトの交流を体内に通して照明を灯すデモンストレーションで安全性をアピール。

なぜ、エジソンは直流に固執したか

電球販売という至上命題があり、すでに直流発電所に大量の資本を投下した経営者としては、方向転換が難しかった。

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電流戦争 交流の勝利

1893年、シカゴ万博の電気設備契約を獲得

直流を退けての快挙。博覧会のシンボル「光りの塔」には数千本の電子管が光り、噴水には七色のサーチライトが躍った。

1896年、ナイアガラの発電所に交流システムが採用

発電所にウェスティングハウスの二相交流システム、送電にはＧＥの三相交流システムが採用された。

1891年、テスラは特許ライセンスの契約を破棄

ウェスティングハウスの投資家は、ライセンス契約がリスクになると判断。テスラはこれまでの支援に感謝し、契約を破棄した。

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テスラコイル

1891年、空芯式共振コイルとスパークギャップを用い、二次コイルの共振を利用して高周波・高電圧（100万V以上可能）を発生させるもの。

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USP454,622

System of Electric Lighting

1891年6月23日登録

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USP454,622 クレーム

1. The improvement in the art of electric lighting herein described, which consists in generating or producing for the operation of the lighting devices currents of enormous frequency and excessively high potential, substantially as herein described.

2～7（略）

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無線革命

1895年、研究所焼失の悲劇

J･P･モルガンとエドワード･D･アダムスの支援で再建

1896年、X線の研究

1897年、無線操縦ボートの実演

（無線通信、遠隔制御、ロボットの複合技術）

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マルコーニとの闘い

グリエルモ・マルコーニ（1874～1937）

イタリア生まれの発明家、事業家

1902年、北米から初の大西洋横断

無線通信に成功

1909年、ノーベル物理学賞受賞

テスラと特許の先陣争い

1943年、米国最高裁はテスラ特許がマルコーニの四回路同

調結合に先行していたと判断した（マルコーニvs米国政府）。

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USP645,576

System of Transmission

of Electrical Energy

1900年3月20日登録

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USP645,576 クレーム

1. The method hereinbefore described of transmitting electrical energy through the natural media, which consists in producing at a generating-station a very high electrical pressure, causing thereby a propagation or flow of electrical energy, by conduction, through the earth and the air strata, and collecting or receiving at a distant point the electrical energy so propagated or caused to flow.

2～9（略）

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世界システム 計画と挫折

1899年、コロラドスプリングスで地球帯電の測定

1900年、「世界システム」発表

無線による電力送電と情報伝達の融合技術

大投資家J・P・モルガンの支援を受ける。

1901年、ロングアイランドに高さ57メートルの無線送信塔「ウォーデンクリフ・タワー」の建設開始。壮大な計画に建設費がかさんだ。

マルコーニの成功により、モルガンが疑問を持つ。

1906年、資金不足により、計画は挫折。

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ワーデンクリフのアンテナ塔

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幾多の発明

1906年、テスラタービン

羽のない数枚から十数枚のディスクで蒸気を受ける。

対応日本特許21883号（特許：明治45年3月26日）

自然エネルギーの利用

環境媒体から取り出されるエネルギー

→マッドサイエンティスト的な誤解

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幻のノーベル賞

1915年、ニューヨークタイムズに、テスラとエジソンがノーベル物理学賞を同時受賞するとの記事が載る。

実際には受賞はなかった。

1937年、推薦されていた。

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エジソンメダル受賞、物理単位Ｔ

1917年、米国電気工学会最高の栄誉

日本人では、西澤潤一（2000）、赤崎勇（2011）が受賞。

物理単位（1960） Ｔ：Wb/m2 = kg·s−2·A−1 （磁束密度）

特許取得 米112件、仏30件、英29件、ベルギー27件、

独21件、伊19件、オーストリア15件等

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テスラとアインシュタイン

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1921年、RCA大洋横断局にて左 アルバート・アインシュタイン（1879～1955）中 二コラ・テスラ下 チャールズ・スタインメッツ（電気工学者、1865～1923）

テスラの名言

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未来に真実を語らせようそれぞれの仕事とその達成によって評価されるために。今の時代は彼らのものだ未来、そう、私は来たる時代のために尽力したのだ。

参考文献

知られざる天才ニコラ・テスラ エジソンが恐れた発明家

新戸雅章 平凡社新書（2015年）

テスラ 発明王エジソンを超えた偉才

マーガレット・チェニー 工作舎（1997年）

二コラ・テスラの[完全技術]解説書 二コラ・テスラ

ヒカルランド（2015年）

Nikola Tesla Museum http://www.tesla-museum.org

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ご静聴ありがとうございました。