これからの企業・社会が求める...

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これからの企業・社会が求める 人材像と大学への期待 公益社団法人 経済同友会 執行役 藤巻 正志 2016年3月9日 JASSO 平成27年度 キャリア教育・就職支援ワークショップ(東京)

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Page 1: これからの企業・社会が求める 人材像と大学への期待...これからの企業・社会が求める 人材像と大学への期待 公益社団法人経済同友会

これからの企業・社会が求める人材像と大学への期待

公益社団法人 経済同友会

執行役 藤巻 正志

2016年3月9日

JASSO 平成27年度キャリア教育・就職支援ワークショップ(東京)

Page 2: これからの企業・社会が求める 人材像と大学への期待...これからの企業・社会が求める 人材像と大学への期待 公益社団法人経済同友会

本日のトピックス

1

Ⅰ. はじめに

Ⅱ.わが国を取り巻く環境・社会構造の変化と人材育成の課題

Ⅲ.教育・採用に関する企業の意識~大学との対話を通じて~

Ⅳ.人材育成に向けて企業・大学がなすべきこと

Ⅴ.大学・学生に対する期待

Ⅵ.おわりに

(1)2014年度提言に基づくインターンシップの実現

(2)新卒採用のあり方の検討

<提言> 「これからの企業・社会が求める人材像と大学への期待」(2015年4月)

2015年度教育改革委員会の活動紹介

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<提言>

「これからの企業・社会が求める人材像と大学への期待

~個人の資質・能力を高め、組織を活かした競争力の向上~」

(2015年4月)

2

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Ⅰ.はじめに ~問題意識~

3

わが国の競争力を高めるうえで、資質・能力の高い人材育成は急務であり、社会全体で真剣に考え、対処していかねばならない問題

しかしながら...

これまで

大学での学びと企業・社会での学び

不連続なものと考える傾向

人材育成に向けた産学官での対話

不十分

企業・社会が求める人材像大学や学生にとってわかりづらい

【企業が望む人材育成が進まない理由】

今後の姿

連続的なものとして捉えていく

歩み寄り、対話を深めていく

大学や学生に明確に伝えていく

課題解決に必要な教養、知識、技術やスキルを育成する中核機関

≪大学の位置付け≫

社会の一員として積極的に関与していく責任

≪企業≫

企業が望む資質・能力を備えた人材育成は未だ途上

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(1)企業・社会の変化

4(出所)①~③:経済産業省「海外事業活動基本調査」結果を基に作成、④:経済産業省「第43回 海外事業活動基本調査」(2013年7月)概要

Ⅱ.わが国を取り巻く環境・社会構造の変化と人材育成の課題

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(2)大学を巡る環境変化

5(出所)内閣府総合科学技術・イノベーション会議有識者会合(2014年11月20日) 配布資料

2014年度収容率93.0% (大学・短大の入学者数/志願者数)

2014年度進学率56.7%(18歳人口/ 大学・短大の入学者数)

18歳人口と高等教育機関への進学率等の推移

Ⅱ.わが国を取り巻く環境・社会構造の変化と人材育成の課題

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(3)若者の雇用環境の変化

6(出所)内閣府総合科学技術・イノベーション会議有識者会合(2014年11月20日) 配布資料

Ⅱ.わが国を取り巻く環境・社会構造の変化と人材育成の課題

従業員規模別求人倍率の推移

26.6

46.1

13.5

14.4

24.3

13.3

5.3

18.9

18.6

3.9

27.9

20.2

30.3

13.5

6.9

14.5

1.8

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

全 体

(N=188)

999 人以下

(N=76)

1,000人以上

(N=111)

0% ~3 %未満 3 ~5 %未満 5 ~10%未満 10~30%未満 30%以上

卒業後3年以内の離職率(同友会会員企業)

(出所)経済同友会「企業の採用と教育に関するアンケート調査」結果(2014年調査)

(注)2012年度入社の新卒者の2014年9月1日現在の離職率

大学卒業者の卒業後3年以内の離職率の推移

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95.3

75.1

57.7

44.1

17.4

3.8

25.937

91.2

22.7

58.3 59.7

0

20

40

60

80

100

基礎学力の養成

一般教養教育

論理的思考能力や

問題解決能力の養成

語学教育

ディベートや

プレゼンテーション

能力の訓練

専門的な学問教育

中等教育(N=213) 高等教育(N=216)(%)

7(出所)経済同友会「企業の採用と教育に関するアンケート調査」結果(2014年調査)2014年12月

Ⅱ.わが国を取り巻く環境・社会構造の変化と人材育成の課題

新卒採用の面接段階で重視される「能力的要素」(上位3位の合計)

(4)企業側の大学に対する期待学校教育に対して期待すること

92.485.3

72

20.413.7

7.1 1.9

91

79.1

57.3 51.2

3.310

2.40

20

40

60

80

100

論理的思考力

課題発見・解決力

自己PR

力/

自己分析力

学生時代に学んだ

専門知識・研究内容

語学力

学業成績

資格︵語学力以外︶

文系大学生(N=211) 理系大学生(N=211)(%)

文系での「専門知識・研究内容」の強化が課題では?

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(1)企業が求める人材像と必要な資質・能力

8

常に社会情勢に関心を持ち、なぜそうなるのか考える習慣

思考のベースとなる基礎学力や教養

他者に何が課題か説明し、理解を得て協働していくための双方向での対話力(コミュニケーション力)、課題解決に向けた企画力、実行力

Ⅲ.教育・採用に関する企業の意識 ~大学との対話を通じて~

学生時代から様々なことにチャレンジする(失敗経験を活かす)

企業内外の公の場で、上司や部下、同僚あるいは顧客等、相手の主張を正しく理解して円滑に対話できる力

臆することなく自らの考えを明確に述べ、説得することができる力(交渉力も含む)

個人として信頼される人間力の豊かさ

価値観の異なる相手と相互に認め合い、学び合う姿勢(協調性)

相手をよく理解して自己の考えを明確に伝えるための知識や教養

学生が学びを深める教科として

リベラルアーツの重要性

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<参考> 入社後に活躍している社員の特徴⇒企業が求める人材像と必要な資質・能力と合致

9

Ⅲ.教育・採用に関する企業の意識 ~大学との対話を通じて~

与えられた課題に対し、その本質を見極めようとする積極的な姿勢を持つ者。

また、その過程で先輩や上司等、周囲の社員としっかりコミュニケーションが取れる者。友人との会話とは質が異なる。

新しい企画やアイデアを生み出したり、複雑な問題も考え分析し、自分で考えながら自律的に進める事ができる人。また、大勢の意見をまとめ物事を進めていける集団統率力のある人。

自発的に自らの意志で行動を起こすことができ、また組織人としての倫理感を持ちセルフコントロールすることができる。

新しい仕事に挑戦する旺盛なファイティングスピリットと多様に変化する環境の中でも目標を達成するタフネスをもった新入社員。

(出所)経済同友会「企業の採用と教育に関するアンケート調査」結果(2014年調査)より企業の自由記述を抽出。

しっかりと自分の考えを持っており、かつ発信でき、仕事を覚えるプロセスのルーティンワークにもしっかりと対応できる人材。

自分の考えをしっかり持ち、周囲を上手に巻き込みながら業務を遂行していくタイプ。

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<参考>大学の認識 ~求める人材像~

10

企業が求める人材像と我々の求める人材像はほぼ一致していると感じた。(国立大学 学長、私立大学 総長)

産学で協力して実行するのみである。少子高齢化という環境の中で、一人ひとりの力をつけていく必要がある。日本の財政が圧迫され、ボーダレス社会となる中で日本が勝ち抜くために、産業界から求める人材像を明確に提示していただき、大変有り難い。(国立大学 学長)

企業サイドから「求める人材像は何か」を簡潔に、かつ明確に示していただいたことを非常に高く評価する。一方で、提言に記載した能力を養成するためのカリキュラムが大学にはまだないため、今後どのように育成していくべきか考えていかねばならない。(公立大学 学長)

大学進学率が50%を超え、大学に行って当たり前の時代の中で、学生にいかに知的好奇心を持たせるか、

各大学が工夫を凝らしているのが実情ではないか。提言に記載された内容は、多くの大学で取り組み始めているものが多いと思われる。 (私立大学 理事・キャリアセンター事務局長)

学生は小学校から高校まで同質的な社会の中で生きてきており、違う環境の中で学ぶきっかけをいかに作っていくか、大学は様々な工夫をしてカリキュラムを動かしている。大学は企業や地域との連携など手探りで進めている。(私立大学 総長)

Ⅲ.教育・採用に関する企業の意識 ~大学との対話を通じて~

(出所)教育改革委員会での大学関係者との意見交換より。

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<参考>経営者の認識 ~新卒採用~

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新卒採用の失敗が多い。特に専門職採用で失敗が多い。(企業ニーズにあった)新人を見分けるのは難しい。

ベンチャーでは新卒採用でよい人材が獲得できない。伝統的な大企業では大勢新卒を採用しているが、学生が昔よりも小粒になっており、皆金太郎あめのように同じ個性である。入社までは一生懸命だが、入社してから何をしたいのかわからない。

昨年くらいから新卒採用は売り手市場で、企業の採用は大変になっている。採用数の歩留まりが読めず、内定者が想定以上に多くなってしまったり、いなくなったりと非常に問題になっている。対応策としては、景気に左右して採用数を変動させず、安定採用に努めることが重要ではないか。

新卒採用に関してネット応募では、(応募数が多すぎて)客観的な足切りをやらざるを得ない。その結果、インターン生として受け入れて、(実力がわかっている)本来取りたいよい人材が落ちてしまう。

新卒採用の苦労・失敗と解決方法

新卒採用で育成しても、途中でやめて他社に移ってしまう。これに対しては、社内でのキャリアパスを明確に示す、会社の長期的目標を常に繰り返し社員に示す、あるいはメンターやバディをつけて面倒を見ることが対応策になるのではないか。

新卒育成の問題点と解決方法

Ⅲ.教育・採用に関する企業の意識 ~大学との対話を通じて~

(出所)経済同友会会員との意見交換より。

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(2)企業が大学に期待する役割

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Ⅲ.教育・採用に関する企業の意識 ~大学との対話を通じて~

アクティブ・ラーニングの導入によるコミュニケーション能力の向上

様々な社会活動体験の増加 : 留学、インターンシップ、ボランティア

学生の能動的な学びによる学修時間の拡充

(出所)文部科学省「大学における教育内容等の改革状況について(概要)」 (2014年11月)

図:アクティブ・ラーニングを推進するためのワークショップまたは授業検討会を実施する大学数(2012年度)

⇒学外の“異文化”に触れる、気づきを得て成長につながっていくのでは?

先行き不透明な社会では、自らキャリアを切り拓いていく力が必要。

国立大学, 26

公立大学,7 私立大学, 96

0 20 40 60 80 100 120 140

計129大学(16.8%)

(N=766)

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(1)企業がなすべきこと

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Ⅳ.人材育成に向けて企業・大学がなすべきこと

企業は、経営者のビジョンを実現するために必要な人材の能力について、語学力や資格、成績水準、スキル等、できるだけ具体的に明示して社会に発信すべき。

①企業が求める人材像の明確化と発信

⇒就職のミスマッチ解消にもつながるのでは?

企業が採用選考で学業成績を重視することを宣言し、求める成績や知識の内容・水準を明示。

②採用選考における学業成績の積極的な活用

大学の教育水準と卒業生の質の保証

成績の根拠や学びの内容の明確化

その前提として大学に求めたいことは・・・

⇒大学・学生が学びの重要性を再認識するのでは?

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企業が学生に対して面接で確認したいことの例示(付属資料2)

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Ⅳ.人材育成に向けて企業・大学がなすべきこと

○専攻で学んだことは何か、学びで得たものは何か

○教授の講義内容、方法はどうであったか、理解できたか

○ゼミ等で課題解決のディベート、アーギュメントを体験したか

○議論で何に苦労したか、工夫したことはあるか、異なる意見の取りまとめに努めたか

○学生時代の学びを如何に社会や企業(当社)で活かし、貢献できるか、将来企業でどんなキャリアを描きたいのか

■学生時代の学びの成果 ■人や社会との交流

○部活動や就業体験で得たものは何か

○インターンシップに参加したか、そこで得たものは何か

○自己の得意なこと、長所を如何に活かして伸ばしたか、失敗や不得手なもの、短所の克服に如何に努めたか

○業務上の相手を納得させ理解を得るような、組織における(友人とは異なる)コミュニケーションが図れるか、周囲が自分に求めることを認識し、期待どおりに対応できるか

■求められるコンピテンシー

○業務に積極的に臨む姿勢や心構えができているか

○耐力、行動力(打たれ強さ、チャレンジ力など)を備えているか

○業務の目的を理解し、始める手順や段取りをつけられるか(不要不急の判断、プライオリティ、重要度、他チームとの調整範囲、スケジュール管理など)

○業務遂行に必要な情報、知識、人材、予算、機材などをイメージして、チーム作りができるか

○組織のチームの一員として役割を果たせるか、取りまとめができるか、チームのなかで他者と相互に補完し、相乗効果を発揮できるか

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(2)企業と大学が協力すべきこと

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Ⅳ.人材育成に向けて企業・大学がなすべきこと

①インターンシップの強化・充実

課 題

大学の組織的な関与が少ない

企業側の体制、プログラム企画・立案が未整備(※)

期間が短い(1週間程度が主)

大学3年生、修士1年生の参加が主で、参加者が少ない

報酬の支給がない

望ましい枠組み 大学での支援体制整備 大学が関与する形でのプログラム開発 教員の関与によるPBLの実践 大学でのより一層の単位化

長期化(1ヵ月以上)

学部1、2年生からの早期参加により、裾野を広げるとともに、その後の学びに生かす

報酬の支給(実費の支給は必須)

36.3  21.3 14.4 12.5 6.9

3.1

3.1

1.3

1.3

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

①社内体制の整備②プログラムの企画・立案③将来の就職との関連性④参加者の募集・選考⑤大学との連携⑥プログラムの運営⑦終了後の学生へのフィードバック⑧保険(災害、事故、賠償責任)等の事務手続き⑨その他

① ② ③ ④⑤

※図:企業から見たインターンシップを実施するうえでの 大の課題(N=160)

(出所)経済同友会「企業の採用と教育に関するアンケート調査」結果(2014年調査)2014年12月

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<参考>企業側から見たインターンシップの現状

16

Ⅳ.人材育成に向けて企業・大学がなすべきこと

図1:大学生・院生を対象としたインターンシップ実施状況

54.7

67.8

45.3

32.2

0% 20% 40% 60% 80% 100%

文系

(N=128)理系

(N=146)

大学

報酬がある 報酬はない

74.666.7 65.0 62.5 56.3 51.8

25.4 33.3 35.0 37.5 43.7 48.2

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2014年2012年2010年2008年2006年2003年(調査年)

実施している/個別要望により検討 実施していない

31.7

22.7

38.9

68.3

77.3

61.1

0% 20% 40% 60% 80% 100%

全体

(N=167)製造業

(N=75)非製造業

(N=90)

既に実施している まだ実施していない図3:学部1、2年生対象のインターンシップ

11.79.5

4.94.3

45.6

37.9

24.3

31.0

4.98.6

4.95.23.93.4

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

文系

(N=103)理系

(N=116)

6 ヵ月超

~6 ヵ月

~3 ヵ月

~1 ヵ月

~3 週間

~2 週間

~1 週間

~3 日

1 日

図2:実施期間

図4:報酬の有無

(出所)経済同友会「企業の採用と教育に関するアンケート調査」結果(2014年調査)2014年12月

大学生

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17

インターンシップは、受入数が限られるため、いつも有名大学で表面的に成績のよい人の受入れが中心になってしまうことが問題である。間口を狭くしてしまっている。インターンシップを実施することと、公平・公正な機会を全員に与えることとは相反するため、矛盾がある。

弊社のインターンシップは3日間で、学生から見て企業参観といった内容である。これには学生のニーズの問題で、期間を延ばそうとしたこともあるが、学生が集まらなかった。夏休みは、学生はアルバイトや旅行で忙しい。大学のカリキュラムにインターンシップを織り込まないと本来の目指すべきインターンシップの形にはならないのではないか。

海外の大学の学生は約1ヶ月の大学のプログラムで来日し、そのひとつの活動として弊社のインターンシップにも参加しており、単位にもなる。この違いは大きい。大学で単位として認め、1、2ヶ月のインターンシップを実施するのであれば、企業としてもしっかりとした受け入れの形が取れるのではないか。

学生だけでなく企業の採用も大変であり、人事としては頭ではインターンシップの重要性を分かっていても勘弁してほしいというのが正直なところである。少なくとも各部門はインターンシップの受け入れを歓迎している。ボトルネックは人事・採用である。

大学側はインターンシップをカリキュラムに組み込む等し、変えていく必要がある。全体で決めていくことも大事だが、大学も企業も徹底的にセグメンテーションをして、具体的な方向性を出していかないと議論が進まないのではないか。医療系やメーカー系など分野によって内容は変わってくる。

大学側と企業側でインターンシップについて摺り合わせをし、両者の溝を埋めた形で進めていくべきである。今のインターンシップは必ずしも充実したものではないが、他者、異文化を知ることで、自他を知り、自分を変えていくという視点は重要である。

<参考>経営者の認識 ~インターンシップの課題~

Ⅳ.人材育成に向けて企業・大学がなすべきこと

(出所)経済同友会会員との意見交換より。

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18

<参考>大学の認識 ~インターンシップの現状~

インターンシップは、学生のアンケートで非常に大事との回答を得ている。例えば、 「研究室で修得できないことが企業で修得できた」、「企業の研究開発や商品化のプロセスがよくわかった」、「時間の管理や仕事の仕方がよくわかった」、「コミュニケーションやチームワークが必要ということもよくわかった」と、大学では得られない気づきがあるとの感想が沢山ある。ぜひ充実したインターンシップを実施したいが、内容は十分に大学と企業で十分に意思疎通を図っていく必要がある。 (国立大学 学長)

インターンシップは学生が社会に出て行く際に職業観を養成するための第一歩として重要だが、今のインターンシップは大学から見て規模が小さい。(公立大学 学長)

インターンシップは徐々に増えているが、企業と学生で個別に行われる場合があり、全て把握できていない。(国立大学 学長)

インターンシップに一番関心があるのは、修士課程の学生である。学部生も多く参加しているが、博士課程になるとインターンシップに馴染みにくい。(国立大学 学長)

インターンシップを経験する学生は、学部3年生や修士1年生が中心である。しかし、今後の方向性として、積み上げ型のインターンシップとして、1年生の転換教育の一環としてインターンシップも取り入れたい。現行は2学期制だが今後4学期制に変更して、6週間あるいは夏休みまで含めた期間で、インターンシップや地域活動、海外留学、あるいは学生の提案に基づいた活動等も含め多様な転換教育を考えている。 (国立大学 学長)

現状のインターンシップは、どうしても教員と企業の関係で決まってしまう。もう少し違うスタートがあってもよい。個人の教員に依存しない形で様々な企業とのインターンシップができるとよい。例えば、本学では、 近ブラジルの商工会議所とMOUを締結し、学生にブラジルでインターンシップを経験させるプログラムを開発した。ブラジルは日系社会を通じて、様々な業種の日系企業でのインターンシップを受け入れてもらえる。 (国立大学 学長)

各大学ではインターンシップを行っており、マスコミで言われているほど大学は改革に鈍感ではない。マスコミでは1dayや2、3日でもインターンシップと呼んでいるが、これをインターンシップと呼んでよいのか。中身のあるインターンシップを実施したい。(私立大学 総長)

効 果

対象、枠組み

Ⅳ.人材育成に向けて企業・大学がなすべきこと

(出所)教育改革委員会での大学関係者との意見交換より。

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<参考>大学の認識 ~インターンシップの課題~

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問題点としては、大学では教育の一環としてのインターンシップを考えているのに対して、企業では採用と結び付けて捉えている印象がある。教育の一環としてインターンシップを積み重ね、学生に様々な教えを与えていくことが大学側の望みである。(国立大学 学長)

現実のインターンシップは、学生にとって就職のためのステップとなっていることが多い。企業側でも、多くの場合、学生を採用するための手段となっている。企業に学生を引き受けてほしいとお願いしても、受け入れ対象の大学ではないと回答されることもある。インターンシップの費用、手間を誰がどのように負担するかが未解決である。(公立大学 学長)

近はインターンシップが変容している。企業は採用候補者のプールの場として、1day、2dayのインターンシップを実施しており、その中で有望な学生を採用しようとする傾向がある。学生も企業の意図に迎合してしまっており、就活の一手段となっている。本学ではインターンシップの前後に教育をして、単位を付与しているが、学生が単位化のインターンシップに目を向けず、自由応募のインターンシップに流れてしまっている。(私立大学 キャリアセンター長)

本来のインターンシップは今行われているようなものではないのではないか。採用の手段になっており、これからあり方を考えていかねばならない。(私立大学 理事長)

大学、企業、学生間の考え方の違い

Ⅳ.人材育成に向けて企業・大学がなすべきこと

企業の協力がないと実現できない。全学部、全学生に提供するのは難しい。また、全大学でこれらを実施した場合に、企業側の受け皿がどの程度あるのかが課題である。(私立大学理事 キャリアセンター事務局長)

全員に同じ体験をさせるのは難しいが、学生に学びのモチベーションを高める場を(企業に)提供してもらえると有り難い。(国立大学 学長)

インターンシップは、大学にも企業にも非常に手間がかかることが非常に大きなネックとなっている。学生は有名な企業にしか行きたがらない。企業の受け入れ人数も少ないため、選考が必要になる。提言内容はその通りであるが、現場から見た時にうまくいくのかと考えてしまう。(私立大学 キャリアセンター長)

企業側の受け皿

(出所)教育改革委員会での大学関係者との意見交換より。

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<参考>大学の認識 ~インターンシップの課題~

20

大学全体として単位として認める制度設計にはなっていない。大学側の反省としてインターンシップを進めていくにあたり、単位化を十分検討する必要がある。(国立大学 学長)

今のインターンシップは(単位と連動しておらず)オプションに過ぎず、優先順位が劣るため、今後カリキュラム化を図っていきたい。大学全体のカリキュラムの中でインターンシップをどう組み込んでいくのかを研究したうえで、1~2ヶ月の中長期のインターンシップを実現していきたい。(公立大学 学長)

私立大学の学生は、積極的に参加する学生とそうでない学生とに二極化しており、全員に必須を課さないとなかなか広がっていかない。単位化は有効だが、優秀な学生は単位がなくても進んでインターンシップを受ける学生も多く、むしろ単位化により、平均成績が下がる可能性があるため「認定」制度を選ぶ傾向にある。現場としては複雑な要素がある。うまくいくような具体策が必要である。 (私立大学 キャリアセンター長)

単位化

Ⅳ.人材育成に向けて企業・大学がなすべきこと

大学のカリキュラムの中で、インターンシップがようやくキャリア教育の一環として位置付けられるようになってきたが、遅れている。この要因として、キャリア教育を専門的に担っていく大学の教職員が圧倒的に不足していることに問題がある。大学ではどうしても専門教育、教養教育が主体となるため、キャリア教育といった新しいカリキュラムの要素がまだ十分開発されていない。(公立大学 学長)

インターンシップの期間にも問題がある。本学では長くても1ヶ月程度、通常は1週間程度、少ないと2、3日となる。1ヶ月間となると、時期によっては通常の授業に支障を来すことがある。本学の実情としては、インターンシップ推進の仕組み作りがまだ十分ではない。総合的にインターンシップを進めていくために、今後、ぜひ企業の方々と一緒に議論していきたい。(公立大学 学長)

夏休みであれば、2、3週間の就業体験は可能だが、授業がある場合は1週間程度でなければ授業に支障が出て実施は難しい。海外のように授業を休んででも1セメスターの長期のインターンシップを実施して、就業につなげていく形なら可能であるが、日本では金銭的負担もあり4年間で卒業せざるを得ない。(私立大学 常務理事)

人材不足、スケジュール

(出所)教育改革委員会での大学関係者との意見交換より。

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<参考>大学の認識 ~インターンシップに対する要望~

インターンシップを1年生で経験させて、積み上げ、次第に専門性の高い長期のインターンシップに切り替えていけるようにしたい。ただし、大学が地方にあるため、企業の業種や規模の多様性に欠ける。地元の企業には小さくても世界進出している企業も多くあることが分かってきたため、学生にこうした企業でインターンシップを経験させることも重要だと考えている。(国立大学 学長)

インターンシップを拡大するにあたり、企業にはまず低学年の受け入れをお願いしたい。受入学生数を増やしてほしい。学生に様々な企業での体験させるため、受入企業の多様性を求めたい。従前よりも長期化を目指しているため、長期間受け入れてほしい。教育目的での実施となるため、大学とともにプログラム内容を一緒に考えてほしい。学生の評価もお願いしたい。逆に学生からの評価も企業側に受け入れてほしい。インターンシップを拡大し、学生の数も増やしていきたい。インターンシップを体験した学生が他の学生に体験を話すことで、学生への参加も広がっていくと思われる。 (国立大学 学長)

国内ではなく、海外支社等に派遣する形で海外でのインターンシップを実施してほしい。(公立大学 学長)

様々な異文化体験を含めたインターンシップを、もう少し広義のインターンシップとして広げてもよいのではないか。企業だけが受け皿になると今以上のキャパシティは難しいと思われ、体験できる学生は限られる。企業でのインターンシップに限らず、社会福祉施設や公的機関での就業体験、ボランティアも含めて広い意味で学生の体験を評価する動きになれば、もっと多くの学生が広義のインターンシップに参加するようになる。就職の際に(学生がこの体験を)アピールできる環境づくりができるとよいのではないか。(私立大学 常務理事)

Ⅳ.人材育成に向けて企業・大学がなすべきこと

(出所)教育改革委員会での大学関係者との意見交換より。

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<参考>企業・社会が求める人材育成に向けて社会の仕組みとして変えていくべきこと

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今の学生は昔よりも優秀と感じる。むしろ企業の採用の基準が古いままになっているのではないか。学生に多様性があるのに、企業の方に多様性がないことを、我々自身が見直さねばならないのではないか。

学生のポテンシャルは高いと感じる。外資系で世界中から学生を集め、課題を与えるプログラムを出すと、圧倒的に能力を発揮する学生もいる。素材は悪くはなく、大学や企業の変革能力にむしろ問題がある。

学生に「働く意識」をあえて作らせる必要がある。昔は一生懸命働くことが当たり前であったが、今は本人に(将来の)ビジョンを考えさせるようなことが必要である。

通年採用が望ましいが、現状では学生が通年採用を選べない。3年程度は新卒扱いにしてほしい。韓国や台湾では大学で資格を

取り直して、再就職、転職することが一般的だが、日本ではフリーターになってしまう恐れがあるため、なんとかできないか。

Ⅳ.人材育成に向けて企業・大学がなすべきこと

就職時期をぜひ統一し、マッチングをもっとスムーズにしてほしい。今年は就職活動時期の後ろ倒しの開始1年目であり早計に評価できないが、今年に限ると学生は一年半を就職活動に費やしてしまい、これから(の学生生活)が大変である。(公立大学 学長)

卒業生がどのような実績を上げたのか大学として重視していかねばならない。これまで大学は学生を卒業させたら終わりであったが、卒業生の団体、同窓会ともステークホルダーとして一緒に活動を進めていかねばならない。ただし、卒業生が社会でどのような評価を受けているかは大学側で把握することはできないため、経済団体やマスコミに評価の方法をある程度作ってほしい。(公立大学 学長)

かつては理系の研究室では企業と接点があり、企業に就職したが、今はエントリーシートでの採用となり、専門が生かされない。採用試験を受けてもどの部署に配属されるかわからないため、せっかく勉強したことが生かされない。今の採用だと、企業側も欲しい人材が確保できないのではないか。(私立大学 理事長)ではない

大学の意見

経営者の意見

(出所)経済同友会会員との意見交換より(上)。教育改革委員会での大学関係者との意見交換より(下)。

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(1)大学への期待

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Ⅴ.大学・学生に対する期待

①大学のビジョンの明確化・具体化と機能の強化・分化

②国際化対応:優秀な外国人教員の受入れ、英語による授業・情報公開

⇒教員・職員ともに、年功序列型の硬直的処遇から、成果に応じた弾力的な処遇への移行に期待。

③教職員の資質・能力の向上

大学が担う役割として特に教育への期待が大きいことから、教育に重きをおいた評価システムの構築に期待。加えて、評価項目には学生の就職実績や就職先の評価も盛り込んでは?

教員評価の徹底と教員の教育力向上

大学職員の資質・能力向上

学校運営に係る重要な役割を担う職員は、教員と分担して業務の効率化、高度化を目指すべき。

④卒業生の資質・能力の保証

教育内容・レベル、学生の到達度の明確化と学業成績への反映

卒業資格の厳格化

学び・専攻の柔軟化

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(2)学生への期待

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Ⅴ.大学・学生に対する期待

自己のための大学での真剣な学び

専門知識とそれを支える基礎力の修得(※)

多様な人々と触れ合い、視野を広げるための海外留学等の経験

職業観を醸成するためのインターンシップ等の社会経験

(出所)経済同友会「企業の採用と教育に関するアンケート調査」結果(2014年調査)(2014年12月)

理系学生に対しては、製造業では「学生時代に学んだ専門知識・研究内容」を特に重視。

※新卒採用の面接段階で重視される「能力的要素」(上位3位の合計)

ただし、専門知識のベースとなる、「論理的思考力」、「課題発見・解決力」を重視。

92.485.3

72

20.413.7

7.1 1.9

91

79.1

57.3 51.2

3.310

2.40

20

40

60

80

100

論理的思考力

課題発見・解決力

自己P

R

力/

自己分析力

学生時代に学んだ

専門知識・研究内容

語学力

学業成績

資格︵語学力以外︶

文系大学生(N=211) 理系大学生(N=211)(%)

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Ⅵ.おわりに:大学・学生へのメッセージ

英知と活力に溢れた世界に通用する人材

耐力を備え何事にも柔軟に対応して道を切り拓くことができる人材

仕事に欠かせないスキルを身につけ、実践の場で活躍できる人材

これからの社会が求める人材

社会の様々な現場で求められるスキルの伝授、低学年からのインターンシップや留学等

大学に求められること ⇒ 学生が実社会で生き抜く基礎力を身につけさせること

⇒個々の大学の特色を活かしたカリキュラムを設置し、学生の資質を高める教育の実践が重要

エリート段階

大学進学率15%未満

マス段階

進学率15~50%未満

ユニバーサル段階

進学率50%以上

【高等教育の発展段階 by M.トロウ】

1960年代~ 2000年代~ 大学全入化時代~1950年代

「大学の大衆化」

結果として卒業の時期も多様となり、将来的には通年採用へ移行することが望ましい

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2015年度の教育改革委員会の

活動紹介

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(1)2014年度提言に基づくインターンシップの実現

(2)新卒採用のあり方の検討

⇒(1)、(2)ともに2016年3月末に公表予定

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提言に示した「望ましい枠組み」のインターンシップ実現に向けて、大学と企業との協働により実践段階にある。

①学校区分(国・公・私立大学/高専)のバランス②地域バランス(首都圏だけでなく地方大学とも連携)③トップ校に限らず、中堅校、高専も加え、層の厚みを持たせる④学長、校長のインターンシップに対する意欲(ある程度のインターンシップの実績)

<連携大学・高専の選定方針>

教育改革委員会委員に参加呼びかけ

<企業>

関係者による意見交換

インターンシップ派遣/受入れの意向調査

を基に基本枠組みを検討

①対象は学部1、2年生(高専は専攻科1年生)②大学・高専での単位化③原則、1カ月以上④実費相当の支給

<基本枠組み>

(1)2014年度提言に基づくインターンシップの実現

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就職活動の早期化・長期化

雇用のミスマッチ

採用人数がその年の景気動向に左右される

■新卒一括採用の弊害

大学卒業後3年以内の離職率3割

ワンチャンスの就活

年齢階級別非正規の職員・従業員の割合の推移

■新卒と既卒をワンプールにして通年で採用へ

若者にとって望ましい就職活動、採用方法の実現に向けて… 若者(24才以下)が非正規社員として固定化

出所:厚生労働省「新規学卒者の離職状況(H24年4月卒業者の状況)2015年10月

出所:総務省「平成26年労働力調査年報」

15~24歳の非正規率は48.6%

離職率30%

新卒者・既卒者(学部卒業後5年程度)をワンプールで通年採用する動きを定着させるなお、新卒一括採用の枠組みは残す

(2)新卒採用のあり方の検討

全体