no( )2 鶴見大学司書・司書補講習 主任教授 原田 智子 司 書 ・ 司 書 補...

( ) 1 No.64 平成26年11月 1 発行:鶴見大学 230-8501 横浜市鶴見区鶴見2-1-3 TEL.045-574-8622・3 (ダイヤルイン) http://www.tsurumi-u.ac.jp 鶴見大学学長 伊 藤 克 子 姿姿94 2 1 5 15 20 2 1 1 6 5 2 4 2 1 2 1 4 いち

Upload: others

Post on 23-Jul-2020

3 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: No( )2 鶴見大学司書・司書補講習 主任教授 原田 智子 司 書 ・ 司 書 補 講 習 六 十 周 年 記 念 の 年 の 講 習 を 終 え て 昭和二九(一九五四)年

( )1

No.64平成26年11月 1 日発行:鶴見大学

〒230-8501 横浜市鶴見区鶴見2-1-3TEL.045-574-8622・3(ダイヤルイン)http://www.tsurumi-u.ac.jp

読書について思うこと

読書について思うこと

鶴見大学学長

伊 藤 克 子

 

例年のことですが、今

年もまた大変暑い夏でし

た。暑さに加え異常な豪

雨など、「極端気象」とい

うそうですが、年々地球が

壊れていくことを実感さ

せるような天候でした。そ

んな中、司書・司書補講

習の受講生の皆さまは、連

日の講習、本当にご苦労

様でした。この講習の間は、

大学会館もとても活気が

ありました。時間とともに、

吸い込まれるように教室

に入って行く、そのうしろ

姿を、やはり目的がある

人の姿勢は外にも表れる

んだと感心しながら見

送ったことでした。きっと

今は、やり遂げたという満

足感でいっぱいでしょう。

 

ところで最近、パソコン

があれば、本はなくても

困らないという人や、ほと

んど本は読まないという

人が増えているなどという

話を耳にすると、本を読

む人と読まない人の分か

れ道は、どこで決まるのか、

とても不思議な気持ちが

します。私自身は、今日

読む本が手元にないと何

だか不安ですし、できれば

次に読む本も傍にないと

とても心穏やかにはいら

れません。私の父や母も、

明治生まれと大正生まれ

なのに、とてもよく本を読

む人でした。本を読む家

庭の雰囲気が、知らず知

らずに私にも影響したの

でしょうか。特に母は、今

94歳ですが、いまだに2

週間に1度は、妹に図書

館に連れて行ってもらっ

て、5冊ずつ本を借りてい

ます。残念ながら、目が

悪くなってしまい、最近は

大活字本になったと嘆い

ていますが、夜寝る前の読

書は、変わらぬ母の大きな

楽しみです。

 

私についていえば、今

よく行く図書館は、野毛

の中央図書館で、ここと

も15年ほどの付き合いに

なりました。その前は、

自宅が本牧でしたので、

一番近い中区青少年図書

館が行きつけで、そこは

20年以上通い続けた隠れ

家のような存在でした。

本牧在住の時期は、まさ

に私の子育ての期間と重

なっており、ベビーカー

を押したり、子どもを前

の広場で遊ばせたりしな

がら母子で通った思い出

があります。その子ども

たちも独立し、私もマン

ション暮らしを選択して

からは、最寄りの図書館

が変わりましたが、相変

わらず2週間に1度、本

を借りに行く生活は変わ

りません。1度に6冊借

りますので、結構な重さ

になりますが、トレーニ

ングと称し、リュックを

背負って歩きます。

 

館内に入ってからは、

私なりのやり方で、5階

の人文科学から2冊、4

階の社会・自然から2冊、

1階の小説・エッセイか

ら2冊と分野を分散させ

て選びます。これは、偏

らないように、いろいろ

な新しい本に出合いたい

という小さな工夫です。

また1冊は必ず外国の小

説も入れます。外国といっ

ても、英米だけではあり

ません。独仏中韓その他、

いつもここで大いに迷い

ますが、最近、意外に気

に入っているのはフラン

スの現代小説で、さりげ

ないエッセイなどでもい

ろいろ楽しい発見があり

ます。特に、成熟した大

人の感性がチラリと垣間

みえるシーンには、憧れ

の翼も広がります。

 

また、本は買って読む人、

借りて読む人がいるでしょ

うが、私は、マンション暮

らしを選んだ時点で、買っ

て読むことはほぼあきらめ

ました。今は全面的な図

書館派ですので、保管場

所に困ることはなくなり

ましたが、話題の新刊は、

順番待ちという点が少し

難点です。村上春樹の『1

Q84』は、4年も待って、

ようやく書架に並びまし

たが、こんな時に備えて別

ルートも確保しておかなけ

ればなりません。読みたい

本を読みたい時に読むに

は、いろいろな奥の手が必

要なのです。

 

図書館に行くたびに、一

生どころか何生かかっても

読み切れないほどの本の

棚を眺め、大図書館がバッ

クにあることの贅沢をかみ

しめています。

いち げ

Page 2: No( )2 鶴見大学司書・司書補講習 主任教授 原田 智子 司 書 ・ 司 書 補 講 習 六 十 周 年 記 念 の 年 の 講 習 を 終 え て 昭和二九(一九五四)年

( )2

鶴見大学司書・司書補講習主任教授

原田 智子

司書・司書補講習

 

六十周年記念の年の講習を終えて

司書・司書補講習

 

六十周年記念の年の講習を終えて

 

昭和二九(一九五四)年

に開講した鶴見大学司書・

司書補講習は、総持学園

創立九十周年の今年、

六十周年を迎えました。

したがって、今年は六一

年目の司書・司書補講習

となり、新たな一歩の年

の始まりとなりました。

その節目の年に受講され

た皆様は、この『一夏会報』

を読まれて、今夏の暑い

時期に一生懸命取り組ま

れた講習の授業を懐かし

く思い出されていらっ

しゃるのではないでしょ

うか。

 

司書資格を取得する場

合、短期大学や四年制の

大学では、二年間あるい

は四年間かけて徐々に学

習する内容を、二箇月と

いう非常に短期間で学ぶ

講習では、強い学習意欲

と精神力と体力が必要と

されます。時間割スケ

ジュールは、時間的制約

から過酷なほどまでに

びっしりと組まれていま

す。講習生ご自身の努力

はもちろんですが、ご家

族のご理解やご協力、講

習生同士の励ましあい等

も大きな支えになったこ

とでしょう。司書・司書

補の資格取得という明確

な目標に向かって、充実

した夏を過ごされたわけ

ですが、同じ一夏に同じ

目的に向かって頑張った

仲間の絆も鶴見大学の講

習生ということで、新た

なヒューマンネットワー

クが築かれたことと思い

ます。

 

この度、九月十三日の

六十周年記念式典当日に

発行されました『鶴見大

学司書・司書補講習六十

周年記念誌』には、皆様

の先輩にあたる講習修了

生の方々からのご寄稿が

掲載されています。昔の

講習の思い出など、その

後の人生のことなど、い

ろいろと参考になること

でしょう。図書館界でご

活躍されていらっしゃる

先輩方の思い出の中に、

時代は異なりますが皆様

の将来の姿を見ることが

できると思います。将来

の周年事業の際に発行さ

れる『記念誌』に、是非そ

の後の皆様のご様子をご

寄稿いただければ、また

それが皆様の後輩の方々

に「図書館学の鶴見大学」

の伝統が継承されていく

ことになると思います。

 

この六十年間に、図書

館法施行規則による科目

の改正は、司書補が一回、

司書が三回行われていま

す。この夏、司書講習を

受講された皆様が学習し

たカリキュラムは、平成

二十四(二〇一二)年から

施行されている最新の学

習内容になっています。

時代とともに変化する図

書館を取り巻く環境の変

化や技術の進歩に応じて、

科目の見直しが行われる

ことは当然であるといえ

ます。特に二十一世紀の

図書館においては、イン

ターネットが図書館サー

ビスに大きな影響を及ぼ

しています。図書館にお

けるデジタル化の問題や

著作権についても最新の

知識を学習されたことと

思います。すでに図書館

の現場で仕事をされてい

らっしゃる方は、是非学

習した内容を現場で活か

していただきたいと思い

ます。これから図書館で

働きたいと考えていらっ

しゃる方も、司書資格を

取得するために学習した

内容と実際の図書館と比

べて賢い利用者として、

図書館のヘビーユーザー

になっていただき、近い

将来希望する図書館で仕

事をしていただけたらと

思います。図書館サービ

スを良くしていくのは、

一人一人の利用者の声と、

サービス精神旺盛な図書

館員の存在であると思い

ます。

 

話は変わりますが、こ

の夏私はIFLA(世界

図書館連盟)が開催する

国際会議に参加する機会

を得て、フランスのリヨ

ンに行ってきました。本

講習の講師の先生も私の

他六人が参加されました。

世界中から図書館員や図

書館情報学の教員など約

四千人が会議に参加しま

した。会議への参加の他、

フランスの図書館を見学

する機会も得ました。図

書館見学の中で最も期待

していたのがパリにある

フランス国立図書館でし

た。広い敷地の四隅に、

本を開いた形をした総ガ

ラス張りの高層ビル四棟

を配置したフランソワ・

ミッテラン・ビブリオテー

クは、わが国の国立国会

図書館関西館のモデルに

もなったといわれる建物

で、棟と棟を繋ぐ長い廊

下と地下の閲覧室の広さ

は圧巻でした。リヨンで

は、国鉄やバスなどが発

着するパールデュー駅近

くの交差点の角にある市

立中央図書館を訪れまし

た。地下1階、地上5階

建の非常に大きな公共図

書館で、大勢の利用者で

賑わっていました。一階

の貸出カウンターと返却

カウンターはどちらも長

い列をなしており、IC

タグ導入による自動貸出・

自動返却は行われていま

せんでした。旧中央図書

館であったサンジャン市

立図書館は、歴史地区の

入り口付近のサンジャン

教会の建物にありますが、

見学した時、こちらも地

域の図書館として利用者

に親しまれていました。

 

最後に、受講生の皆様

が、図書館や図書等に係

る仕事で、さらにご活躍

されますことを期待して

います。

Page 3: No( )2 鶴見大学司書・司書補講習 主任教授 原田 智子 司 書 ・ 司 書 補 講 習 六 十 周 年 記 念 の 年 の 講 習 を 終 え て 昭和二九(一九五四)年

( )3

常磐大学助教

田嶋 知宏

知識と「資格」とを結び付けて

   

活かすための判断のために

知識と「資格」とを結び付けて

   

活かすための判断のために

 

今年は、鶴見大学の司

書・司書補講習が開始さ

れてから六十年になるそ

うですが、そのような記

念すべき年に講習を受け

られた皆さんにとって、

司書・司書補講習で過ご

したこの夏はいかがだっ

たでしょうか。資格を取

り、達成感を得た方もい

れば、残念ながらやり残

した方もいらっしゃると

思います。いずれにして

も、二カ月に及ぶ講習を

乗り切ったという事実は

実感として残っていると

思います。

 

今回、皆さんは何を目

的に司書講習を受講され

たのでしょうか。私の場

合には、司書講習ではな

く、大学の司書課程で司

書資格を取得しましたが、

なんとなく取得できる資

格だから取っておこうと

いう軽い気持ちからだっ

たのを覚えています。後

に、司書講師の側になる

とは考えも及ばないこと

でしたが、その時学んだ

知識やスキルは活かされ

ていると思います。講習

を受けられた皆さんは、

軽い気持ちではなく、資

格を取って図書館で働き

たい、図書館での勤務に

活かしたい、図書館での

ボランティアに活かした

いなど何か目指すものが

あったと思います。講習

を終え、みなさんは目的

に照らし、何か得るもの

があったでしょうか。

 

さて、この六十年で図

書館も、講習で学ぶ内容

も徐々に変化してきまし

た。もちろん、変化しな

かった部分もあります。

図書館は資料や情報を扱

うことを前提としている

点、司書は資料や情報、

そして、図書館という場

を介して利用者を支援す

る存在である点などです。

私が、司書講習で担当し

た「情報資源組織演習Ⅱ

(分類)」で扱う分類や件

名の理論や方法は大きく

変化していません。しか

し、コピーカタロギング

が一般化した状況で司書

が、分類や件名の知識を

もち、活かす機会は確実

に変化しています。講習

中にも話したことですが、

分類や件名の知識は情報

サービスを提供する際に、

情報検索や利用者への案

内に活かすことができる

はずです。講習中は数日

おきに科目が変わり、科

目の間の繋がりや内容の

繋がりをじっくりと見直

す余裕がなかったかもし

れません。講習を終えた

今こそ、講習で学んだ内

容の繋がりを再度、振り

返って確認してみるのも

良いかと思います。

 

今回の講習で話したも

うひとつのこととして、

分類の仕方の基本は、ほ

かの図書館と一緒でも細

かなところでは異なるや

り方をする図書館が存在

するということです。利

用者の状況や利便性を考

慮し、司書が分類規程な

どの適用方法(範囲)の判

断を行った結果から生じ

ることです。資料の内容

や形態を踏まえて行われ

る別置法も同じことがい

えます。そのような説明

を受けて、講習を受けた

皆さんは、煩雑で、頭が

混乱してしまいそうと感

じた方もいたと思います。

 

図書館利用者はさまざ

まな要望をもち、図書館

に期待しています。その

要望や期待について基礎

的な知識やスキルに基づ

き、どのように対処する

べきか判断できるチカラ

をもつことこそが、司書

に求められているといえ

るでしょう。状況を判断

するには、皆さんが取得

した司書資格という基本

を踏まえる必要がありま

す。

 

残念ながら、司書資格

を取得されても、正規の

職員募集はそう多くない

厳しい現実もあ

ります。そうした

中で、図書館にか

かわる司書とい

う職を目指そう

という方は講習

を通して得た知

識やスキルをど

う活かすのかを

常に意識してい

ただくと良いと

思います。もちろ

ん、講習で学び、

身につけたたく

さんの知識やス

キルは司書とい

う職に就くかどうかは別

として、皆さんがこれか

らの人生での様々な判断

を支えるものとなってく

れるはずです。

 

大切なことは、講習で

得た知識やスキルをどう

活かすかということだと

思います。皆さんが鶴見

大学の司書・司書補講習

を経て、どうなりたいの

か―その目標に、この講

習で身につけた知識と「資

格」とを結び付け、活か

そうという考えをもち、

行動していくことを期待

しています。

Page 4: No( )2 鶴見大学司書・司書補講習 主任教授 原田 智子 司 書 ・ 司 書 補 講 習 六 十 周 年 記 念 の 年 の 講 習 を 終 え て 昭和二九(一九五四)年

( )4

明治大学講 師

片岡 了

「旅するように学びたい」

「旅するように学びたい」

 

よく人生は旅に例えら

れますが、いま「学び」を

旅に例えて考えてみるこ

とにします。幸いに「旅」

にまつわることわざがた

くさんあります。まずよ

く知られたものとして〈か

わいい子には旅をさせよ〉

を挙げてみましょう。わ

が子が愛おしいなら甘や

かして育てるより、旅に

出させて学ばせた方がよ

く育つと昔の人は考えて

いました。まだ交通手段

が発達していない頃の旅

は苦労も多かったと思い

ますが、体験から得た学

びがよく身になることを

知っていました。今年の

司書・司書補講習に参加

された方々は、すでに閉

講式を終えていますが、

長期にわたって講習期間

を過ごす中で、専門領域

の豊かな学びにとどまら

ず、何かと多くの事柄を

体験されたことと思いま

す。興味・関心のある講

義ばかりではなかったは

ずです。科目ごとに代わ

る講師との相性はどうだ

ったでしょうか。講義ば

かり続いて途中で嫌にな

り投げ出したくなったこ

とはなかったでしょうか。

長旅のようなひと夏の講

習で味わった苦労から学

ぶこともたくさんあった

と思われます。

 

また、〈旅は道づれ(世

は情け)〉といいます。長

く辛い道中に同行者がい

ると慰められたり励まさ

れたりすることがあり(浮

き沈みの多い世間の中で

人の情けに触れ心を動か

されることもあり)ます。

一人旅もいいけれど、と

もに旅する同好の友がい

ればなおありがたいとい

うところでしょうか。と

ころで、司書・司書補講

習の中で私が担当する講

義科目は「生涯学習概論」

です。司書講習の場合、

受講生が最初に学ぶ科目

に当たります。受講生に

向けて「最初から最後ま

で一人で学ぶのもいいで

すが、助けあう仲間がい

ればより楽しく学べます」

と誘いかけながら、同じ

目標を掲げる仲間ととも

に学びあう喜びが感じら

れるように、グループ討

議の機会を提供していま

す。受講生の大半は社会

経験の豊富な大人の方々

とあって、簡単な自己紹

介を終えるとすぐに和や

かに話しあうことができ

ます。対応に少し難しそ

うなテーマであっても真

剣に向きあい討議に参加

しています。後で受講生

に感想をうかがうと、グ

ループ討議の時間が印象

的で楽しかったという意

見が多数寄せられてしま

います。内容の詰まった

(と思っている)講義の方

はどうだったのかと担当

講師としては気になると

ころです。苦しみ(講義)

があるからこそ楽しさ(討

議)がより深まると思っ

て自らを慰めています。

 

さいごに、〈旅の恥はか

き捨て〉を挙げます。旅

先では知りあいもいない

からどんな恥しいことを

してもその場限りで済ん

でしまい、気にすること

はないというような意味

です。やはり旅は気楽に

したいものです。旅先で

の解放感と同様に、学び

の場においても失敗を恐

れず何ごとにも気軽に挑

戦していただきたいと思

います。受講生の中には

昔の学校時代に戻って堅

くなっている方もいます。

最初のうちは講師の問い

かけに教室内は静まり返

っていますが、しだいに

問いかけなくとも声が飛

び交うようになります。

そうなると講義も脂がの

ってくる(?)か

ら不思議です。た

まに講師が後で恥

ずかしくなるよう

なことを口走って

しまうこともあり

ます。講習を旅先

と思えば、受講生

は(講師も互いに)

もっと恥をかきあ

う気持ちで臨めば

いいのではないで

しょうか。だから

「こんな質問して

笑われるのではな

いか」「もし自分だけわか

らなかったら恥ずかしい」

などと思い悩まなくとも

よいと伝えるようにして

います。勇気を出して学

ぶ仲間に声をかけてみて

ください。講師をつかま

えて訊いてください。そ

こから新しい学びがひら

かれることを期待してい

ます。

 

講習を終えられた方々

には、学んだことをそれ

ぞれの場や機会で生かし

ながらご活躍されること

を祈念します。

Page 5: No( )2 鶴見大学司書・司書補講習 主任教授 原田 智子 司 書 ・ 司 書 補 講 習 六 十 周 年 記 念 の 年 の 講 習 を 終 え て 昭和二九(一九五四)年

( )5

受講 生

司 書

 

さて、一夏会報の原稿

を頼まれた。これは困っ

たことである。なにかや

らかしたからかもしれな

いが、思い当たるところ

がない。思えば受講の合

格通知を頂いたことが、

やらかしてしまったこと

の始まりかもしれない。

人生とは、やらかしたこ

との積み重ねである。

 

鶴見大学司書講習の名

は、高校生の時に入り浸

っていた学校図書室の優

しい司書さんから聞き、

大学生の時に司書教諭課

程の厳しい先生から聞

き、そして社会に出ては

図書館のブラリアンな同

僚からも聞いた。司書資

格の勉強をするなら鶴見

大学しかない、というよ

り自宅からあまりにも近

い距離なのだからと思っ

たものだ。今、自分がそ

の鶴見大学で勉強するこ

とになるとは驚きであ

る。

 

2か月間は長いようで

短い。振り返ってみると、

あっという間に過ぎてい

ったが、充実していた。

先生方は個性豊かで、授

業を受けることが楽しく

てたまらない。授業に真

面目に取り組んだり、睡

魔と戦ったり、試験であ

たふたしたり、レポート

のために休日を潰した

り、体調を崩したり元気

になったり、新しい知識

を得て喜んだり、図書館

についてあれこれ考えた

り、演習科目に苦しみつ

つ楽しんだり、その他も

ろもろ、学生の時でもこ

れほど集中して勉強した

のかというくらい勉強漬

けだったのは、私だけで

はないはず。単位を落と

していませんようにと願

うのもまた、私だけでは

ないはず。

 

ここで学んだこと、考

えたことは、多くのもの

を得ることができた。今

後は、願うならば図書

館に関わって、より面

白くしていきたいと思

う。

 

最後に、日々ご指導

を頂いた先生方、親切

にして頂いた事務の

方、ともに学んだ仲間

たち、毎朝挨拶を欠か

さなかった警備の方、

あと会館1階に鎮座し

癒しをくれた「飛べま

せん」ペンギンの像に、

感謝したい。おかげで

最後まで頑張ることが

できた。学ぶ機会を頂

き、ありがとうござい

ました。そして迷惑か

けました、ごめんなさ

い。

 

司書講習という、私

にとってよい意味でや

らかしたひと夏は、実

りの多い貴重なひと夏

であった。

 

さて、紙面が尽きた。

これは困ったことでは

ない。

受講 生

司 書

敗者復活にかけた夏

市田 さゆり

 

2013年はわたしに

とって過酷な1年でし

た。仕事を辞めて挑んだ

ものに失敗して目標を失

い、挫折と敗北感から物

事を前向きに捉えられ

ず、赤ちゃん以上によく

泣いた年でした。自分の

進む道が分からないま

ま、就職先を決められず

にいた今年の春、父の一

言がそんなわたしを救っ

てくれました。「小さな

頃から図書館が好きなお

前に図書館司書は合って

いると思うし、取得すれ

ば来年開館する新しい図

書館で働けるんじゃない

か?」

 

ガラス美術館と複合施

設になる予定の富山市立

図書館本館にはより多く

の利用者が訪れ、留学経

験を活かして外国人利用

者にも役立てるかもしれ

ない、と想像すると心が

弾み、もう一度だけ、挑

戦してみようと自然に決

めることが出来ました。

司書資格の無い状態では

難しいと思いながらも講

習開始前に公務員一次試

験を受け、奇跡的に通

過!事務室の方々や講習

で出会えた友達に迷惑を

かけながら、片道4時間

をかけて日帰りで富山と

神奈川を往復し二次、三

次面接を受け、無事合格

に至りました。

 

講習は予想よりとても

忙しく、情熱的な先生方

が数日毎に変わり、常に

時間と試験対策に追われ

ていたように感じます。

学んだ知識が段々と定着

していく感覚は心地よ

く、社会に応じて変化し

続ける図書館には多様な

可能性があり、一人ひと

りが考え、行動すること

の大切さを学びました。

外の暑さに耐え、時には

室内の寒さに凍えながら

も二ヶ月間充実した時を

過ごせたのは、真摯に教

えて頂いた先生方と会

館職員の方々、そして

同じ目標を持つ講習生

のみなさんのお陰で

す。本当にありがとう

ございました。

 

また常に自分を支え

てくれる家族、友人、

特にわたしの今を導い

てくれた父に特別の謝

意を表します。そして

鶴見大学司書講習60周

年という記念すべき年

に受講出来た事を嬉し

く感じます。立派なラ

イブラリアンとして

120周年記念式典に

参加できるよう、これ

からより一層励みたい

と思います。最後に講

習生のみなさん二ヶ月

間本当にお疲れ様でし

た。

 

努力したこの日々が

全員にとって生涯の素

敵な思い出となります

ように。

やらかしたひと夏

 陳 建安

Page 6: No( )2 鶴見大学司書・司書補講習 主任教授 原田 智子 司 書 ・ 司 書 補 講 習 六 十 周 年 記 念 の 年 の 講 習 を 終 え て 昭和二九(一九五四)年

( )6

受講 生

司書補

 

本棚から、講義で使っ

たファイルを手に取り見

てみると、驚くほど鮮明

に講習の日々が脳裏に蘇

ります。実を言えば、私

は図書館に対して全く無

関心でした。まだ春の頃、

求職中で偶然に図書館と

司書というものへ辿り着

き、興味を抱き調べてい

くと、私がそれまでに持

っていた『読書好きと、

学生のためだけの地味な

施設である』というイメ

ージが全くの偏見である

と知りました。そして、

私の知らなかった図書館

の本当の姿が段々と見え

ていき、その行く末を見

たい、関わりたい。と惹

かれていったのです。

 

図書館界を本当に熟知

した、図書館の歴史を作

ってこられた先生方によ

る講義では、資格を取る

だけの勉強ではない、大

変多くの事を楽しく学ば

せて頂きました。講義を

通じ、図書館の静かなイ

メージとは裏腹に、時代

の流れに敏感で、自ら進

歩する事に余念の無い姿

勢を感じた事が強く印象

に残っています。運営、

サービスをより良くし得

る技術等や、それに付随

する様々な問題が混在す

る中で日々向上を続ける

のが図書館であると。そ

してそこへ自分がどう関

わっていけるのか、無関

心だった私の経験や物の

見方はどう活かせるか。

そう考えられるようにな

ったのは先生方1人1人

からの洗練された講義を

通じ、その技術、知識、

経験を受け継ぐことがで

きたからです。その事に

感謝すると共に、移り変

わる時代の中で取り残さ

れる事のないよう、講習

で得た事を土台に更に自

己研鑚して行きたいと思

います。

 

鶴見大学の講習が、非

常に充実した一夏であ

ったというのは、私だ

けではなく全員が感じ

ている事だと思います。

先生方、事務の方々、

本当にありがとうござ

いました。

 

そして、講習を一緒

に受けた皆様との出会

いで得たものは、とて

も短い文章に収めるこ

とができず、勉強も息

抜きも、正に一夏の思

い出と言える良い体験

でした。皆様と同じ目

的に向かって共に講習

に励み、助けあう事が

できた事を嬉しく思い

ます。これからも目標

へ向かって歩んでいく

皆様にいい風が吹きま

すように。この一ヶ月

半は私にとって特別な

日々でした。また皆様

と何処かでお会いでき

る日を楽しみにしてい

ます。

受講 生

司書補

 

私にとって、夏と図書

館はとても縁の深いもの

があります。数年前、た

またま見かけた地元の図

書館のホームページに臨

時職員の募集が出てい

て、応募して働き始めた

のが夏でした。最初の一

週間で、夏休みの膨大な

量の配架に手足が筋肉痛

で悲鳴を上げて、図書館

で働く過酷さを思い知ら

されたことを今でも覚え

ています。その後、任期

満了で退職し、現在の図

書館で働き始めた時もや

はり夏からでした。

 

あれから数年、図書館

で働く喜びや楽しみも知

ることができ、利用者の

方と接する機会が増える

ほど、図書館の事につい

てきちんと学び、より正

しいサービスを提供した

いと考えるようになりま

した。そして今年、職場

の協力もあって、鶴見大

学の司書補講習を受講す

ることができ、私にとっ

て3回目の夏と図書館の

縁になったのです。

 

めまぐるしく過ぎてい

く日々でしたが、毎日の

授業の中で、今まで業務

を行う上で漠然と知って

いたことが、きちんと自

分の知識として吸収され

る瞬間があり、「そうい

うことだったんだ!」と

思えたことが何度となく

ありました。また、図書

館の過去を学び、現在を

考え、未来について想像

することで、これからの

仕事への活力もいただき

ました。

 

大人になってから、こ

んなにも学ぶことが楽し

いと思えるなんて、とて

も貴重な経験ができたと

思います。それもこれも、

個性的でパワフルな講師

の先生方のおかげです。

時にはユーモアを、時に

は図書館の裏話を交え、

私たちの興味を掻き立て

て授業をしてください

ました。図書館の業務

に戻った今も、これは

あの時の授業で習った

ことだ、と思いながら

仕事をしています。

 

あっという間に終わ

ってしまった今年の夏

ですが、この講習で学

んだことは、なにもの

にも代えられない大切

なものとなりました。

講師の先生方をはじ

め、私たちを支えてく

ださった事務の方々に

この場を借りて、お礼

を申し上げます。

 

また、共に学んだ受

講生の皆さん。毎朝教

室に入りいつもの顔触

れを見る度に、みんな

が頑張っているから私

も頑張ろう、と元気を

いただきました。本当

にありがとうございま

した。

『風薫る、

明日への途』 

狩野 智博

夏と図書館の

縁に支えられ 

佐藤 麻弥

Page 7: No( )2 鶴見大学司書・司書補講習 主任教授 原田 智子 司 書 ・ 司 書 補 講 習 六 十 周 年 記 念 の 年 の 講 習 を 終 え て 昭和二九(一九五四)年

( )7

◆平成26年度司書講習アンケート集計結果◆

男女別データ

職業別データ 印象に残った講師(複数回答)

印象に残った科目(複数回答)感 想

年齢別データ 出身県別データ

神奈川県63%

東京都23%

無職43%

図書館派遣職員4%

原田先生 4%加藤先生 5%

小田先生 8%

角田先生 5%

その他22%

情報サービス演習Ⅱ 13%

情報サービス演習Ⅰ 9%

児童サービス論 11%

情報資源組織演習Ⅱ 9%

情報資源組織演習Ⅰ 6%

生涯学習概論 6%

図書館情報資源特論 5%

図書館情報技術論 5%

図書館概論 9%

図書館サービス概論 6%

その他21%

図書館パート・アルバイト勤務

6%

学生 5%

無回答26%

図書館専任職員2%

その他14%

●主な理由・岡田先生 … こちらのペースに合わせて授業をすすめてくれたので、ノートもとりやすくわかりやすかったです。・宮部先生 … 講習が始まるにあたってガイダンスがあり、進め方等が分かり易く明確であった。内容に入っても丁寧で、       安心して受講出来た。・小田先生 … 内容が耳や頭に入りやすく、飽きさせない講義構成で、毎時間あっという間に終わってしまいました。・小山先生 … 基本用語を中心に徹底的にたたき込まれた感じがします。授業内容にメリハリがあり、楽しみながら       勉強ができました。・角田先生 … 授業中に身についた、理解したという感覚をこの授業で初めて味わったような気がする。・原田先生 … 厳しかったですが、先生はプロフェッショナルだと実感しました。・榎本先生 … 目録の授業の内容や進め方など、はきはきと講義をしていただき、とてもわかりやすかったです。

●主な理由・情報サービス演習Ⅱ… 演習の課題がとにかく多くて、提出期限に間に合うのか不安でした。 実際に自分でレファレンスを           行うのは簡単じゃないということが良く わかりました。・児童サービス論 … 講義と共にビデオ等で事例がたくさん見られ、視野が広まった。目指そうと思えるライブラリアン像に          出会うことができた。・図書館概論 … 図書館には何が必要なのか、外国の図書館についても様々な話が聞けたので、その後学ぶのが楽しみに        なりました。・情報サービス演習Ⅰ … ここでしっかり検索の仕方を憶えなかったら、情報サービス演習Ⅱでできない問題があった。           この講義を思い返すことが多かった。・情報資源組織演習Ⅱ … 実技的な演習でわかりやすく、実務に役立つと思ったから。

岡田先生23%

榎本先生 3%小山先生 7%

男24%

女76%

50代 10% 60代 2%

20代43%

30代21%

40代24%

宮部先生11%

石田先生 3%

長塚先生 3%藤田先生 3%

松本先生 3%

(回答数/受講数=107名/143名)

ア ン ケ ー トア ン ケ ー ト

関東 2%

千葉県2%

埼玉県3%

北海道・東北2%

甲信越 1%

北陸 1%

中国・四国 1%

九州・沖縄2%

・とてもキツく、苦しい講習でしたが思いかえせば一瞬だったように感じます。有意義な時間を過ごすことができ、司書講習を受講して良かったと思っています。

・念願だった司書講習に参加させていただき、とても感謝致しております。授業の進め方など全く知らなかったので、思った以上にハードでついていけるか心配でしたが、皆に助けてもらいながらなんとかこの講習で学んだことを糧に、実際の仕事につなげていけたらと思います。

・OA研修室での授業では、先生の操作しているPC画面が見れるディスプレイが設置されていたので、受けやすかったです。・司書講習を開いていたり、ドキュメンテーション学科があることもあり、図書館には参考資料が充実していました。選書ツアーやキャリア支援もあって、学生がうらやましいです。・図書館やOA研修室はもう少し開館時間を長くしてほしい。・空調の調整が悪かった。・人生の中でこれほど図書館に通って勉強することはなかったので、本当に1つ1つのレポートをこなしていくのは大変でした。しかし講義の折り返し地点から実際にたくさんの本に触れ、知らなかった本ばかりで楽しくなりました。志を同じにする幅広い年齢層の方々と出会えたこと、60 周年という節目でこのような機会を頂けたことに感謝の思いでいっぱいです。・今後は現場に即した課題や問題点、最新の話題や取り組みなどの講義を受講したい。

Page 8: No( )2 鶴見大学司書・司書補講習 主任教授 原田 智子 司 書 ・ 司 書 補 講 習 六 十 周 年 記 念 の 年 の 講 習 を 終 え て 昭和二九(一九五四)年

( )8

◆平成26年度司書補講習アンケート集計結果◆

男女別データ 年齢別データ 出身県別データ

男32%

20代53%

10代8%

神奈川県34%

東京都37%

30代10%

40代21%

50代 8%

女68%

埼玉県8%

職業別データ

その他24%

無職24%無回答

34%

図書館派遣職員2%

学生 3%

図書館パート・アルバイト勤務13%

印象に残った講師(複数回答)

感 想

《司書・司書補講習60周年記念式典、講演会》 鶴見大学の司書・司書補講習は昭和29年(1954)に開講し、今年度で60周年を迎えました。最終日の9月13日に記念式典・講演会を行い、講習の歴代講師をはじめ、今年度の受講生、学内外関係者など、多くの方にご出席いただきました。 式典では、来賓の文部科学省生涯学習政策局生涯学習総括官 藤野公之様、公益社団法人日本図書館協会副理事長 山本宏義様に御祝辞を頂き、講演会では文部科学省生涯学習政策局社会教育課長補佐 髙橋陵子様、公益社団法人日本図書館協会専務理事 西野一夫様に御講演を頂きました。式典終了後は祝賀会も行い、大盛況のうちに幕を閉じました。 本学司書・司書補講習は、これまでの歴史と数多くの優秀な修了生を誇りに今後ますますの発展を期して努力してまいります。

レファレンスサービス 20%

図書館サービスの基礎 11%

図書館の基礎 8%

図書館特講 8%

生涯学習概論 3%

レファレンス資料の解題 3%

情報検索サービス 3%

資料の整理 3% 無回答 8%

児童サービスの基礎 19%

図書館の資料 14%

松林先生20%

岡田先生17%

藤井先生 14%黒沢先生17%

𠮷田先生 10%

角田先生 2%

山川先生 3%松本先生 3%

伊倉先生 7%

その他 7%

●主な理由・松林先生 … 試験の後に解説をして下さり、時間の限りがある中で先生の真摯さを感じました。・岡田先生 … 丁寧な講義でとても分かりやすかったです。質問も遠慮なくしていいとおっしゃって下さり、安心して講義を受ける       ことができました。・黒沢先生 … 授業の内容がおもしろく、常に笑っていた気がします。実際に絵本を使って読んでくれたり、ゲームみたいなのをして       くれたりと、とにかく先生の人柄がよかったです。・藤井先生 … 最初の授業で不安でしたが、やさしそうな人柄が出たお話の仕方で安心できました。・𠮷田先生 … 図書館員のあり方を熱心に教えて下さったのがとても印象的でした。興味を引く楽しい講義でした。・伊倉先生 … とてもやさしく教えてくれ、図書館でお会いした時は「がんばってますね」と声をかけられ、励みになりました。

●主な理由・レファレンスサービス … 働いていてもなかなかレファレンスを行うことがないので、実演をじっくり行えて、ためになりました。・児童サービスの基礎 … 体験談などを交えた講義はおもしろかったです。 仕事でも児童サービスにかかわりたいと思いました。・図書館の資料 … 今まで知らなかった古典籍の世界は奥深く楽しかったです。・図書館の基礎 … 一番最初の授業で、幅広く様々なことを学べた。

(回答数/受講数=25名/38名)

福島県 3%

静岡県5%

栃木県 5%茨城県 2%群馬県 3% 千葉県 3%

ア ン ケ ー トア ン ケ ー ト

印象に残った科目(複数回答)・先生方は、人間としてもとても魅力的な方達ばかりで、講習が終わり会えなくなってしまうのはすごく残念です。

・今回の受講にあたり、授業について行けるだろうかなど、とても不安でした。しかし、毎日先生方から教えていただくことは、自分の知らないことが多く、それは自分を磨くことだと気づきどんどん吸収していきたいと思えるようになりました。

・図書館にはたくさん本があり、PCの数も多くて助かりました。敷地の広さにも内心ワクワクしました。

・全体的にはとても勉強になったが、先生によって授業内容に差を感じた。

・PC初心者講習は先生のお人柄が良かったおかげで、日々の授業で疲れていても楽しく受講できました。

・図書館における状況や環境は常に変っていくと思うし、多くの知識を備えたいので、上級講座も是非受けたいです。

・空調の調整が悪かった。・警備の方々や事務室の皆さんが、顔を合わせるといつも気持ちの良いあいさつをして下さったので嬉しかったです。