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N Engl J Med 2015;373(13):1220-1229. 慈恵医大ICU勉強会 2015.12.22 集中ケア認定看護師 小俣 美紀

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Page 1: ICU勉強会N Engl J Med 2015;373(13):1220-1229. 慈恵医大ICU勉強会 2015.12.22 集中ケア認定看護師 小俣 美紀 Introducon • 鎖骨下、内頚および大腿への中心静脈カテーテル

N Engl J Med 2015;373(13):1220-1229.

慈恵医大ICU勉強会2015.12.22

集中ケア認定看護師 小俣 美紀

Page 2: ICU勉強会N Engl J Med 2015;373(13):1220-1229. 慈恵医大ICU勉強会 2015.12.22 集中ケア認定看護師 小俣 美紀 Introducon • 鎖骨下、内頚および大腿への中心静脈カテーテル

Introduc>on

• 鎖骨下、内頚および大腿への中心静脈カテーテル挿入は、感染、血栓形成、機械的合併症と関連性がある。

• カテーテル関連血流感染(CRBSI)は、患者予後および医療費の増加に重大な影響を及ぼしている。

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Introduc>on

• 短期的なCRBSIのリスクは、主に挿入部位のカテーテル周囲の微生物のコロニー形成によって影響を受ける。さらに、このコロニー形成は血栓形成にも関与する。

• カテーテル関連深部静脈血栓症(CRDVT)の重要性は不明だが、すべての血栓は塞栓を引き起こす可能性があり、PEやDVTは重症患者において過少診断されている可能性がある。

• 今回の研究は、前回著者らが行ったメタ解析の結果に基づいている。

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CritCareMed.2012;40:1627-34.

目的:鎖骨下に挿入されたCVCが大腿、内頚と比較して感染のリスクがより低いことを証明すること。方法:MEDLINE(2000-2011),EMBASE(2000-2011),CochraneLibrary、リファレンスリスト、エキスパート推薦の文献を検索。Outcome:カテーテル平均挿入期間、1000カテーテル日数あたりのCRBSI。

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CRBSI発生率 per 1000 catheter days

A.鎖骨下vs.大腿or内頚 1.3vs.2.7発生率比 0.50(95%CI0.33,0.74)

B.鎖骨下vs.内頚 1.3vs.2.6発生率比0.46(95%CI0.30,0.70)

C.鎖骨下vs.大腿 1.1vs.3.6発生率比0.27(95%CI0.15,0.48)

いずれもP<0.001

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Introduc>on

• このレビューをもとに、ICU入室中の成人患者の

CRBSIや症候性CRDVTのような主要な合併症のリ

スクはカテーテル挿入部位により違うのではない

か、という仮説を立案

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Methods

研究デザイン:多施設RCT、フランスの大学附属病院4施設と総合病院5施設の10のICUが参加研究期間:2011.12~2014.6対象患者:•  ICU入室中の18歳以上• 新たに穿刺するCVC(ガイドワイヤー下のカテーテル

交換は含まない)• 鎖骨下静脈、内頚静脈、大腿静脈の少なくても2カ所

穿刺できる部位がある•  1人の患者に複数のカテーテルが挿入されても可

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Methods

除外患者:• 皮下トンネルを使用したCVC挿入• 穿刺可能な部位が1カ所のみ

RandomizaVon•  3カ所すべてカテーテル挿入が可能          ➡1:1:1(three-choicescheme)•  2カ所カテーテル挿入が可能          ➡1:1(two-choicescheme)• それぞれのICUで抗菌薬投与の有無についても含め

無作為化

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Methods

手順<挿入に関して>• 参加しているすべてのICUは、FrenchHauteAutoritedeSantéchecklistとU.SguidelinesforprevenVngcatheter-relatedinfecVonsを使用•  ICUで少なくても50例のCVCを挿入したか、もしくは、

挿入の指導をした経験のある、スタッフ医師もしくはレジデントが行う• MaximalsterilebarrierprecauVons:手指消毒、滅菌

手袋、滅菌長袖ガウン、キャップ、マスクを着用

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Methods

手順<挿入に関して>• 消毒薬や抗菌薬でコーティングしたカテーテルは使

用しない• カテーテル挿入は、解剖学的ランドマークの使用、も

しくはエコーガイド下でセルジンガー法で実施• 内頚および鎖骨下に挿入後は、カテーテル先端がSVCに留置されていることおよび気胸の有無をX-Pで確認• カテーテルは採血や腎代替療法には使用しない

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Methods

手順<抜去に関して>• それぞれの施設の医師が判断• 無菌的に抜去後、カテーテル先端を定量培養に提出• カテーテル抜去の際に末梢血の培養を採取• カテーテルを留置したままICUを退室する際には、末

梢血とCVCからの採血を同時に実施し、培養が陽性になる時間差を観察• カテーテル抜去後2日以内に症候性もしくは無症候

性DVTを発見するために、挿入部位に圧迫超音波検査を実施

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Methods

観察期間:ICU退室または死亡するまで観察その他:•  TotalDVT:症候性DVT+無症候性DVT• 死亡患者とカテーテルを留置しICUから退室した患者

の無症候性DVTについては調査していない

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Methods

Primaryoutcome:• カテーテル挿入から抜去後48時間までに発生した主

要なカテーテル関連合併症(CRBSIと症候性DVT)

CRBSIの定義:カテーテル先端培養と末梢血培養から同じ菌が検出される皮膚常在菌によるCRBSI:2つの末梢血培養からカテーテル先端培養と同じ菌が検出される

症候性DVTの定義:患者に徴候があり、圧迫超音波検査で診断されたもの

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Methods

Secondaryoutcome:• カテーテル先端のコロニー形成までの時間• TotalDVT発症までの時間• カテーテル挿入中と抜去後48時間の主要な機械的

合併症の発生率機械的合併症の定義• 入院治療が必要なレベル(grade3)• ただしチェストチューブ挿入が必要な気胸はgrade3と

して分類

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Methods

統計学的分析:• サンプルサイズを3333人と算出•  IntenVon-to-treatで分析• 割り付け通りにカテーテルが挿入できなかった患者

は、per-protocolで分析

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Results: Screening and randomiza>on                       3027人の患者に3471の

CVCが挿入 2532(72.9%)のCVCが 1:1:1Three-choice-scheme でランダム化 内頚845 大腿844 鎖骨下843 全体を通して3154(90.9%) のCVCがランダムかされた 内頚1174(91.4%) 大腿1114(95.1%) 鎖骨下866(85.2%)

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Results: Baseline characteris>cs年齢、性別、SAPSⅡ、BMI、糖尿病、癌、AIDS、好中球数、気管切開、抗菌薬投与、抗凝固療法、経静脈栄養の比較をしているが、大きな差はない

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Results: Catheter-related and procedural characteris>cs

•  CVC挿入時は、どの部位でもアルコールベースの消毒薬を使用していることが多い

•  解剖学的ランドマークの使用は、鎖骨下と大腿に挿入する際に有意に多い

•  挿入に要する時間は、大腿が有意に早い

•  CVC留置期間の中央値は、5日間

•  CVC抜去理由は、不必要になったからが も多く、死亡、CRBSI疑いが続く

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Results: Complica>ons鎖骨下、内頚、大腿合わせて50件のprimaryoutcomeevents(CRBSI,症候性DVT)が発生鎖骨下8件 1.5/1000カテーテル日内頚20件 3.6/1000カテーテル日大腿22件 4.6/1000カテーテル日鎖骨下で有意に発生件数が少ない P=0.02主要な機械的合併症は、大腿で有意に少ないP=0.0047鎖骨下18件、内頚12件、大腿6件気胸は、鎖骨下で13件

内頚で4件

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Results: Inten>on-to-treat pairwise comparisons

•  Primaryoutcomeのリスクは、大腿と内頚が鎖骨下より有意に高い。それぞれP=0.03,P=0.04

•  Secondaryoutcomeであるカテーテル先端のコロニー数、DVT発生件数についても鎖骨下で有意に少ない(P<0.001)

•  主要な機械的合併症は大腿が鎖骨下より有意に少ない(P=0.03)が、他の部位間の比較では有意差がない

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Discussion

• 鎖骨下静脈では、CRBSIと症候性DVTのリスクが減少していた。

• これらのことは、CDCのカテーテル関連感染症予防に関するガイドラインで示されている「成人患者では、内頚や大腿より鎖骨下を使用する」という推奨とも一致している。

• しかし、一方で鎖骨下静脈のカテーテル挿入は、機械的合併症の増加と関連があった。

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Discussion

• 本研究におけるCRBSIの発生率の低さは、他のICUのデータと一致している。

• 挿入部位によるCRBSIと症候性DVTの発生率の違いは、カテーテル先端のコロニー形成とtotalDVTの違いと一致している。

• TotalDVTの発生については慎重に解釈されるべき。挿入されたカテーテルの半数以上は調査していない、無症候性DVTに至ってはまったく調べられていないから。

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Discussion

• 鎖骨下静脈でCRBSIと症候性DVTのリスクが減少していたという結果の理由Ø 鎖骨下静脈は他の2つの静脈より血管に到達

するまでの距離が一般的に長いØ 鎖骨下は皮膚に付着する菌量が も少なく、

比較的ドレッシングがはがれにくいØ 鎖骨下カテーテルは血栓との関連が低い

• Grade3以上の機械的、感染、血栓に関する全体的なリスクは、3つの挿入部位間で似通っていた。

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Discussion

• すべての合併症を同じように考慮すると、理想的なCVC挿入部位はない。

• しかし、Ø カテーテル留置期間が長引けば長引くほど感

染や血栓のリスクは増加するが、機械的合併症は増加しない。

Ø 鎖骨下静脈穿刺に伴う機械的合併症は、エコーガイド下で実施することや経験により減らすことができる

Ø 気胸は迅速に診断し、治療することができるが、CRBSIやDVTはそうではない。

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Limita>ons

• エコーガイド下のCVC挿入については無作為化されていなかった。そのため機械的、感染的な合併症のリスクに影響を及ぼした可能性がある。1つのRCTにおいてカテーテル感染の減少がエコーの使用と関連があったが、その後の大規模観察研究では確認されていない。

• クロルヘキシジン清拭やクロルヘキシジン含有ドレッシングは使用しなかった。これが挿入部位による感染のリスクに影響を及ぼしているかは明らかではない。

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Limita>ons

• PICCについては検討していない。ICU患者では、PICCはCVCと同程度の感染リスク、より高い血栓症のリスクがある。

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Conclusion

• 鎖骨下静脈へのカテーテル挿入は、内頚静脈、大腿静脈のどちらと比較してもCRBSIと症候性DVTのリスクが低かった。

• しかしながら、鎖骨下は主に気胸の機械的合併症のリスクが高かった。

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感想

•  ICUでは、鎖骨下静脈へのCVC挿入はあまり経験したことがない。• CVC挿入時は、ほとんどのケースでエコーガイド下

で行っているため、今後は鎖骨下穿刺が増加することになるのか• 挿入に要する時間も感染のリスクを増加させるこ

とになるので、安全に挿入するための患者のアセスメントやナースの準備・介助も重要