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Richard Mitchell (ANSYS, Mechanical事業部, プリンシパルプロダクト マネージャー) ANSYS Mechanical の背後にある技術が 1969 年に発表されると,製品設計における 構造強度および安定性を確保するために必要 な複雑な解析を効率的かつ迅速に行えるように なり,すべてが変わりました.それ以降,この 技術は,ミッションクリティカルな用途で性能を 低下させることなく時間とコストを低減したいと 考えているあらゆる業界の製品開発チームによって 利用されています.ANSYS Mechanical の最新の アップデートでは,破壊や音響などの複雑な問題を解析する速度,性能,処理 能力が大幅に向上しました.また,ユーザーインターフェースの強化により, 導入の迅速化と共通タスクの簡略化を図って,エンジニアリングチーム全体の 生産性が向上します. 新たな業界標準を確立 ANSYS Mechanical の非線形 アダプティビティ(NLAD)機能は, 解析の進捗状況に合わせて, モデルを自動的にリメッシュする. 4 I ANSYS ADVANTAGE ISSUE 3 | 2019 ベストプラクティス

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Page 1: ベストプラクティス...ベストプラクティス 「ANSYS Mechanicalの機能は,エンジニアリング上の 課題とシミュレーションニーズの増大に応じて

Richard Mitchell(ANSYS, Mechanical事業部, プリンシパルプロダクト マネージャー)

ANSYS Mechanical の背後にある技術が

1969 年に発表されると,製品設計における

構造強度および安定性を確保するために必要

な複雑な解析を効率的かつ迅速に行えるように

なり,すべてが変わりました.それ以降,この

技術は,ミッションクリティカルな用途で性能を

低下させることなく時間とコストを低減したいと

考えているあらゆる業界の製品開発チームによって

利用されています.ANSYS Mechanical の最新の

アップデートでは,破壊や音響などの複雑な問題を解析する速度,性能,処理

能力が大幅に向上しました.また,ユーザーインターフェースの強化により,

導入の迅速化と共通タスクの簡略化を図って,エンジニアリングチーム全体の

生産性が向上します.

新たな業界標準を確立

ANSYS Mechanical の非線形 アダプティビティ(NLAD)機能は, 解析の進捗状況に合わせて, モデルを自動的にリメッシュする.

4 I ANSYS ADVANTAGE ISSUE 3 | 2019

ベストプラクティス

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「ANSYS Mechanical の機能は,エンジニアリング上の 課題とシミュレーションニーズの増大に応じて

拡大し続けています.」

ANSYS Mechanical の音響機能では,音圧レベルプロットとウォーターフォールダイアグラムを使用して,様々なモータ速度における騒音レベルを 1 つのグラフィックにプロットできる.最近では,シミュレーション結果から音声ファイルを作成できる機能が追加ました.

ANSYS の主力製品である ANSYS Mechanical は,世界中のあらゆる業界で活躍する数千もの製品開発チームが利用している構造シミュレーションソリューションです.ANSYS Mechanical は,有限要素法解析(FEA)などの構造解析に伴う複雑な計算の効率化,高速化,自動化を初めて実現したソフトウェアでもあります.ANSYS Mechanical を使用して開発された数百の製品設計は現在,業界標準となっています.

Mechanical の基盤となる技術が 1969 年に開発されて以降,製品開発チームが直面する課題が大きく変わりましたが,Mechanical も進化し,こうした課題にも対応できるようになりました.世界中に数千ものユーザーを有する ANSYS は,お客様とのコラボレーションを通じて,お客様のニーズに耳を傾け,実用的で付加価値のあるソフトウェア強化を図っています.あらゆる業界でグローバルな競争が激化しており,より頻繁な製品の市場投入と,より革新的な設計が求められています.ANSYSのソフトウェア開発者は,こうしたニーズに対応するため,高度なハードウェア,クラウドホスティング,ハイ

パフォーマンスコンピューティングを活用して,より高速なソルバーと斬新な並列処理法を実現し,構造解析の高速化と技術面の充実を進めています.

規制基準が厳しくなるとともに,エネルギー効率に関する懸念が高まったことで,構造エンジニアは先進的で軽量な材料を探索し,エンジニアリングマージンをできる限り少なくせざるを得なくなりました.機能が強化され続けている ANSYS Mechanical により,製品開発チームは,新しい材料をモデリングし,材料の重量と構造強度の間のインテリジェントなトレードオフを行うことで,こうした課題に正面から取り組めるようになります.

現在,企業は,博士号取得者のような高度な訓練を受けた構造エンジニアから,設計者を含む多様性の高い製品開発チームへと変化しつつあります.ANSYS では,ANSYS Mechanical の習得と利用を容易にしつつ,単純明快なワークフローに複雑な機能(破壊モデリングや連成場解析など)を組み込むことで,こうした変化に対応しています.

© 2019 ANSYS, INC. ANSYS ADVANTAGE I 5

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ANSYS Mechanical は,10 年前では物理的な複雑さ,計算時間,数値計算容量の理由で想像もできなかった用途にも使用されています.ANSYS Advantage 誌の本号では,これらの様々な用途を紹介します.

ANSYS Mechanical の機能は,エンジニアリング上の課題とシミュレーションニーズの増大に応じて拡大し続けています.

速度,直感性,使いやすさを向上ANSYS Mechanical には,すべてのユーザーがそのシミュレーション機能を利用しながら,製品開発チーム全体のスピードアップと生産性向上が図れるように設計されたユーザーインターフェースが搭載されています.

お客様の意見に基づき,以下の4 つを考慮した直感的なインターフェースが設計されました.• 使いやすさ ― このソフトウェ

アは,ワークフローの改善,マウス操作の削減,重要な機能の容易な特定,ショートカットキーによる時間節約が図れるように設計されています.また,コンテキストリボンによって,類似のコマンドをグループ化することで,現行タスクを完了させるのに必要な機能へのアクセスを向上させています.

• 見つけやすさ ― 共通タスクと使いやすいサーチエンジンに大きなアイコンが付けられているため,関連するツールとデータをすぐに利用することができます.拡張された Tool Tips 機能により,簡単なナビゲートに加えて,マウスを数回クリックするだけで実用的な情報とガイダンスを参照することができます.Quick Launchオプションでは,所望の機能やインターフェースを簡単に探して自動的にアクセスすることができます.

• カスタマイズ ― ユーザーは,画面レイアウト,クイックアクセスボタン,アドインユーザーマクロを利用することで,ANSYS Mechanical をカスタマイズすることができます.また,カスタマイズ可能なグラフィックツールバーを使用すれば,使用頻度の最も高い機能を簡単に実行できる新しいナビゲーションシステムを作成することができます.

• 拡 張 性 ― エ ン ジ ニ ア が 様 々 な タ ス クを 実 行 す る た め に 利 用 し て い る ANSYS Mechanical では,外部のソフトウェアやカスタムコードを介した拡張機能を通じて機能を追加する機能が向上しています.これは,Mechanical の高

い拡張性をもった機能をさらに多くのエンジニアリング用途で利用できるようになることを意味します.

モデリング機能の強化消費者ニーズの高まり,使用条件の過酷化,規制の厳格化,スマート機能の組込みはいずれも,問題の複雑

化と数値的に大きな計算をもたらす要因になります.ANSYS Mechanical は,こうした複雑さに対処しつつ,モデリングおよび解析精度を大幅に高めることを目的とした様々な機能を搭載しています.これらの新しい機能には,以下のものがあります.• Mixed-dimension 解析 ―

非常に複雑な製品設計全体のレンダリングと解析を 3 次元で行うとなると,多大な時間と費用がかかりますが,多くの場合,設計全体を高精度にモデリングする必要はありません.ANSYS Mechanical がサポートする Mixed-dimension解析では,設計の構造的に重要な部品を 3 次元でモデリングし,その他の部品の形状を 2次元,2 次元軸対称,または 1次元でモデリングできるため,精度を高める必要性と,速度および費用対効果向上のバラ

ンスをとることができます.• 高度な SMART 破壊モデリング ― これまで,き

裂進展を正確に予測するには,専門的な解析を行ってメッシュを適切に生成する必要がありました.ANSYS Mechanical の SMART(Separating Morphing and Adaptive Remeshing Technology)破壊モデリング機能を使用すれば,メッシュに依存することなく,き裂進展解析を実施できるようになり,モデルのセットアップに

ANSYS Mechanical の SMART(Separating Morphing and Adaptive Remeshing Technology)破壊モデリング機能を使用すれば,メッシュに依存することなく,き裂進展解析を実施できるようになる.

エレクトロニクス製品の信頼性を確保するには, プリント基板を正確にモデリングする必要がある.

6 I ANSYS ADVANTAGE ISSUE 3 | 2019

New Industry Standard (続き)

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ANSYS Mechanical には, 様々なタイプのユーザーが そのシミュレーション機能を 利用しながら,製品開発チーム全体の効率向上が図れるように設計された新しいユーザー インターフェースが搭載されている.

Quick Launch オプションでは,必要な機能やインターフェースを

簡単に探して自動的に アクセスできる.

よる影響を受けなくなります.破壊モデリングは高速かつ高精度であり,特殊な専門知識はそれほど必要ありません.

• シェルおよびビームモデル用のメッシュベースの 自動接続機能 ― ANSYS Mechanical のバッチ接続機能(特許出願中)では,大規模なビームとシェル構造の接続を迅速かつ高精度に,しかも完全自動で行うことができます.共有トポロジーは不要であり,部品間の交差部分はメッシュレベルで解像されます.15,000 以上のビームとシートが含まれる場合でも,高速な四角形メッシングを用いたこの機能を利用すれば,メッシュ生成と接続を数分で終わらせることができます.

• 音響解析を改善 ― ANSYS Mechanical には,騒音規制の厳格化によって重要性が増しつつある複雑な騒音問題も評価できる高度な非線形機能が搭載されています.ウォーターフォールダイアグラムのほか,様々なモータ速度における騒音レベルを 1 つのグラ

フィックにプロットできる機能も備わっています.また,設計を構築する前にその音声を聞くことができる音声ファイル作成機能もサポートされています.

新しい材料とプロセスに対応現 在 の 製 品 開 発 傾 向 と し て, 複 合 材 料 の 使 用 量 の絶 え 間 な い 増 加 と, 付 加 製 造 技 術(AM:Additive Manufacturing)の採用拡大が挙げられます.ANSYS Mechanical には,これら 2 つの重要な傾向を活用するための拡張機能が搭載されています.

Mechanical の特殊な機能である ANSYS Composite PrepPost では,モデリング機能がアップグレードされており,エンジニアは実際に複合材料を構成するようにモデルを層ごとに構築することができます.製品開発チームは,剥離のほか,構造破壊の原因をより正確に予測することができます.さらに,改善されたアルゴリズムにより,破壊モードと材料特性をより正確に把握することも可能です.

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また,ANSYS Mechanical のユーザーは,AM ワークフローをシミュレーションして,様々なプリンターおよび材料で構成された設計を最適化することができます.AM プロセス時に発生する熱および構造的な応力によって生じる可能性のある応力と変形を把握し,予測することもできます.エンジニアは,これらの知見に基づいて,AM 部品の製造条件とサポートを早期に最適化し,材料の廃棄と不要な試験実行にかかるコストを最小限に抑えることができます.

データアクセスおよび管理を改善ANSYS が Granta Design 社を買収した後に Mechanicalに追加した新しい機能では,Granta 社のノウハウを利用して,材料データの管理,キュレーション,選択を行うことができます.開発チームが次世代の材料や製造手法(AMなど)を活用する際に Granta 社のデータを使用すれば,賢明な判断を下して,シミュレーション精度を確保し,製品の性能をより効率的に予測することができます.

製品開発チームは,ANSYS Mechanical に組み込まれている 600 種類以上の材料(金属,プラスチック,複合材料,AM 用粉末など)を使用することで,モデルのセットアップ時に材料特性の検索にかかる時間を大幅に短縮することができます.

ANSYS Mechanical の一部であるデータパッケージ製品「ANSYS GRANTA Materials Data for Simulation」では,ほぼすべての材料タイプをカバーしており,構造解析に必要で重要なデータに迅速かつ簡単にアクセスすることができます.

ANSYS Sherlock:エレクトロニクス 設計に対応する新しい機能

DfR Solutions 社を買収した ANSYS は現在,エレクトロニクスシステムとそのコンポーネントの故障物理現象を解析できるターンキー技術を提供しています.ANSYS Mechanical の一部であるSherlock Automated Design Analysis は,エレクトロニクスメーカーが,製品の落下,熱,低温,湿度への耐久性を確保しつつ,パッケージの小型化と高密度化のニーズを満たすのに役立ちます.

エンジニアは ANSYS Sherlock の検証済みのアルゴリズムを使用することで,製品設計に温度変化,熱サイクル,パワー温度サイクル,熱衝撃,ランダム振動,調和振動,機械的衝撃,たわみを与えることができます.エンジニアリングチームは,潜在的な様々な性能 / 製造の問題を設計サイクルの早期に特定して対処し,革新的な製品を迅速かつ低コストで市場投入することができます.

開発チームが製品の仮想モデルを作成する際にSherlock を使用すれば,500,000 以上のコンポーネント(様々な部品,パッケージ,材料,はんだ,積層など)を含むライブラリから適切なコンポーネントを選択して FEA モデルを迅速に作成することができます.さらに,Sherlock と他の ANSYS ソリューションやサードパーティ製の CAE ツールとの緊密な統合を活用することで,このモデル上で様々な使用条件をシミュレーションすることができます.

エレクトロニクス製品の開発コストの大部分は,テスト - 失敗 - 修正 - 再試行というサイクルに費やされています.ANSYS Sherlock は,エレクトロニクス開発チームが設計の初期段階で製品の寿命性能をコンポーネント / ボード / システムレベルでシミュレーションできる環境を提供し,資金の大幅な削減と,製品の構造健全性の大幅な向上に貢献します.

設計プロセスに信頼性物理を導入(英語) ansys.com/reliability-physics

将来を考慮した設計近年,ANSYS Mechanical には,インターフェース全般の改善から,破壊などの非常に特殊な問題の解決方法の変更まで,様々な機能強化が施されました.これらすべてのアップデートには,Mechanical を日常的に使用しているお客様からの実際のご意見を参考にしたものであるという 1 つの共通点があります.

大規模なアセンブリをシミュレーションするには,効率的なワークフローが必要であるが,多くの材料データが必要になることもよくある.

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ANSYS では,お客様の課題を把握し,これに対して,常に進化し続けるクラス最高のシミュレーション機能で対応することに注力しています.これらの機能は,ANSYS Mechanical に留まらず,当社の製品群全体をカバーしています.Mechanical は,当社の主力製品かもしれませんが,音声ファイルを作成して音響などの複雑な問題に適切に取り組む際に使用できる最新製品(ANSYS VRXPERIENCE

など)と統合されています.ANSYS FEA ソフトウェア技術が製品の設計と開発に

革命をもたらしてから 50 年経ちましたが,ANSYS は現在も,お客様の成功に劇的な影響を与えることができるよう,最も革新的で先進的なシミュレーション機能を特定してユーザーに提供することに取り組んでいます.今後,ビジネス界と技術がどんなに変化しようとも,このお客様への誓いが変わることはありません.

ユーザーが取り組んでいるタスクに対応するツールは,ANSYS Mechanical 内のワークフローの迅速化に役立つ.

www.ansys.com/ja-jp/about-ansys/advantage-magazine

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