チョーク・コイルの使い方 - cq出版社 ·...

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ものや,コアとして磁性体を持つものなど構造や 特性もさまざまです. 図9 はコイルの構造例です.フェライト・コア に細い電線を巻いて,必要なインダクタンスを得 ています.細い電線を小さなコアに巻いています から,電線そのものの純抵抗成分(図10)があり ます.この抵抗というのは,交流に対するコイル の抵抗性というのではなくて,コイルを巻くため の電線の純粋な抵抗成分ということです.これを 直流抵抗と呼んで区別する場合もあります. コイルを等価回路で表すと,抵抗(直流抵抗)+ インダクタンスということになります.特にイン ダクタンスが大きいコイルでは,巻き数も多くな り,抵抗分が無視できなくなることもあります. インダクタンスを示す表示は通常 3 桁の数字で 表され,図8 のように値を読みます.パーツとし て一般に入手できるインダクタは,500 mH 以下 が大半でしょう.私たちの電子工作の分野で使わ れるコイルを大ざっぱに分けると,1 mH 以下が 高周波で使われ,1 mH 以上は低周波やスイッチ ングなどの用途で使われるといったところです. コイルとコンデンサの性質をうまく組み合わせる ことで,いろいろな働きをさせることができます. 図11 にその主な使い方をまとめてみました.11 a)は,100Vの商用電源を使い,トランスに より 200 V に電圧を上げて,ダイオードと平滑回 路(コンデンサ+チョーク・コイル)で直流に変換 する回路です.ダイオードは,交流のうちのプラ スの部分だけを直流にするので,直後の電圧は一 定した直流ではなく電圧の変動があります.そこ チョーク・コイルの使い方 16 第 1 章 電子部品の知識と使い方 フェライト・コア� 絶縁カバー� フェライト・コアを� かぶせることもある� 巻き線� 端子� 図9 コイルの構造例 インダクタンス+抵抗(純抵抗分)� テスタ(抵抗計)で測ると巻き線の純抵� 抗成分がわかる.� インダクタンスの大きいコイルほど巻� き数も多いので,純抵抗も大きくなる� コイルを等価回路で表すと…� 2.2mHでは� 4.9Ωだった� 33mHでは� 79Ωだった� 4.9Ω� 222 333 抵抗� インダクタンス� テスタ� 抵抗レンジ� 図 10 コイルの巻き線による抵抗成分 交流� トランス� 100V:200V� ダイオード� AC� 100V 脈流� 直流� a)チョーク・コイルとしての働き� b)低周波信号のみを通過させる� c)高周波信号のみを通過させる� 脈流はコイルを通過しづらく,コンデンサに蓄えられながら� 一定の電圧にならされて,直流となる� チョーク・� コイル� 10H 47 � 47 � μ� μ� 低周波信号� 低周波信号が通過できる� インダクタンスを選ぶ� 高周波成分� 高周波信号� 高周波信号はコンデンサを通過,� コイルで高周波信号は阻止され� 低周波成分がアースされるよう� なインダクタンスを選ぶ� 低周波成分� 図 11 コイルの使い方

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Page 1: チョーク・コイルの使い方 - CQ出版社 · ン・ダイオード,定電流ダイオードなど,たくさ んのダイオードがあります.また意外なところで

ものや,コアとして磁性体を持つものなど構造や

特性もさまざまです.

図9はコイルの構造例です.フェライト・コア

に細い電線を巻いて,必要なインダクタンスを得

ています.細い電線を小さなコアに巻いています

から,電線そのものの純抵抗成分(図10)があり

ます.この抵抗というのは,交流に対するコイル

の抵抗性というのではなくて,コイルを巻くため

の電線の純粋な抵抗成分ということです.これを

直流抵抗と呼んで区別する場合もあります.

コイルを等価回路で表すと,抵抗(直流抵抗)+

インダクタンスということになります.特にイン

ダクタンスが大きいコイルでは,巻き数も多くな

り,抵抗分が無視できなくなることもあります.

インダクタンスを示す表示は通常3桁の数字で

表され,図8のように値を読みます.パーツとし

て一般に入手できるインダクタは,500 mH以下

が大半でしょう.私たちの電子工作の分野で使わ

れるコイルを大ざっぱに分けると,1mH以下が

高周波で使われ,1mH以上は低周波やスイッチ

ングなどの用途で使われるといったところです.

コイルとコンデンサの性質をうまく組み合わせる

ことで,いろいろな働きをさせることができます.

図11にその主な使い方をまとめてみました.図

11(a)は,100 Vの商用電源を使い,トランスに

より200 Vに電圧を上げて,ダイオードと平滑回

路(コンデンサ+チョーク・コイル)で直流に変換

する回路です.ダイオードは,交流のうちのプラ

スの部分だけを直流にするので,直後の電圧は一

定した直流ではなく電圧の変動があります.そこ

チョーク・コイルの使い方

16 第1章 電子部品の知識と使い方

フェライト・コア�

絶縁カバー�フェライト・コアを�かぶせることもある�

巻き線�端子�

図9 コイルの構造例

インダクタンス+抵抗(純抵抗分)�

テスタ(抵抗計)で測ると巻き線の純抵�抗成分がわかる.�インダクタンスの大きいコイルほど巻�き数も多いので,純抵抗も大きくなる�

コイルを等価回路で表すと…�

2.2mHでは�4.9Ωだった�

33mHでは�79Ωだった�

4.9Ω�

222333

抵抗�インダクタンス�テスタ�

抵抗レンジ�

図10 コイルの巻き線による抵抗成分

交流�

トランス�100V:200V�

�ダイオード�AC�

100V

脈流� 直流�

(a)チョーク・コイルとしての働き�

(b)低周波信号のみを通過させる�

(c)高周波信号のみを通過させる�

脈流はコイルを通過しづらく,コンデンサに蓄えられながら�一定の電圧にならされて,直流となる�

チョーク・�コイル�10H

47 �47 �μ� μ�

低周波信号�

低周波信号が通過できる�インダクタンスを選ぶ�

高周波成分�

高周波信号�

高周波信号はコンデンサを通過,�コイルで高周波信号は阻止され�低周波成分がアースされるよう�なインダクタンスを選ぶ�

低周波成分�

図11 コイルの使い方

yoshizawa
mihon
yoshizawa
テキストボックス
このPDFは,CQ出版社発売の「作りながら理解するラジオと電子回路」の一部分の見本です. 内容・購入方法などにつきましては以下のホームページをご覧下さい. <http://shop.cqpub.co.jp/hanbai/books/15/15601.htm>
Page 2: チョーク・コイルの使い方 - CQ出版社 · ン・ダイオード,定電流ダイオードなど,たくさ んのダイオードがあります.また意外なところで

⑦可変容量ダイオード

普通のダイオードとは違い逆方向に電圧をかけ

ると,電圧により端子間の容量が変化するダイオ

ードです.別名,バリキャップとも呼ばれていま

す.バリコンの代わりに同調回路に使われること

が多く,中波用の数百pFのものから,数十pFの

FM用や数pFのUHF/CATV用などいろいろな規

格のものがあります.また,FM変調などにも使

われています.

⑧発光ダイオード

電流を流すと光るダイオードで,今では,いろ

いろなところで応用されるようになりました.順

方向電圧が1.8 V程度ですから,使用する電圧に応

じて,電流制限抵抗を入れます.またより明るく

発光する高輝度LED,超高輝度LEDなどもあり,

順方向電圧もそれぞれ異なります.

なお,乾電池1本では,LEDの順方向電圧に達

しないため,LEDを点灯させることはできません.

⑨その他のダイオード

このほかに,一定の電圧を越えると電気抵抗が

低くなるバリスタ・ダイオード,電圧をかけるほ

どに電気抵抗が高くなるエサキ・ダイオード(トン

ネル・ダイオード),マイクロ波の発振に使うガ

ン・ダイオード,定電流ダイオードなど,たくさ

んのダイオードがあります.また意外なところで

は太陽電池もダイオードの一種と考えられます.

発光ダイオードとは反対に,接合面に光をあてる

と電気エネルギーに変換されるダイオードです.

①ダイオードの規格を調べよう

いろいろなダイオードの性能は規格表注4)によ

り知ることができます.

規格表を見るときに大切なのは,最大定格の電

圧や電流,消費電力などです.これらの最大定格

を越えないようにして,使う必要があります.電

圧を加えるとき,定格以上の電流が流れないよう

に必ず電流制限抵抗を入れることです.

②バイアスについて

ダイオードに直流電圧を加えて使うことをバイ

アスをかけるといいます.図9(a)のように電流

が流れるように電圧を加えたのが,順方向バイア

スで,図9(b)のように電流が流れないように電

圧を加えるのが逆方向バイアスといいます.ダイ

オードの種類により,順方向バイアスで使うもの,

逆方向バイアスで使うものがあります.

ダイオードの使い方

24 第1章 電子部品の知識と使い方

注4)「最新ダイオード規格表」CQ出版社.

(a)順方向バイアス� (b)逆方向バイアス�

電流は流れない�電流は流れる�

:電流制限用の�抵抗.必ず定格電�流内に収まるよう�な値を選ぶ.�逆方向の場合は,�ツェナー・ダイオ�ードなどのときに�必要になる�

RI

RI

R

図9 ダイオードに加える電圧の方向

(a)バイアスを加えない場合は,数pFの� コンデンサと同等と考えられる� (b)高周波スイッチ(アッテネータ)としての使い方�

+12V

高周波�高周波�信号�

数pFPINダイオード�

※低い周波数の高周波信号にと� っては,大きな抵抗に見える�

0.01 � 0.01 �μ� μ�バイアス電流(直流)�

高周波信号(交流)�

直流は通さず交流�(高周波)だけを通す�

直流は通さず交流�(高周波)だけを通す�

1k

1k

図10 PINダイオードの使い方

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高周波増幅回路でも,同様にこれらの応用がで

きます.低周波では抵抗負荷ですが,高周波では

共振回路やコイルが負荷になることがあります.

図15,図16に示すように,入力回路,コレク

タ負荷がコイルになります.実際に出力として取

り出すときは,トランスとして2次側から取り出

したり,チョーク・コイルを負荷として0.01μF

のコンデンサを介し,直流分をカットして,高周

波信号成分のみを出力として取り出します.

A級増幅はバイアスの設定で,コレクタ電流を

常時,流して動作させますが,高周波電力増幅な

どでは無負荷のときのコレクタ電流をアイドリン

グ電流とも言います.

たとえば高周波送信機の電力増幅回路では,ベ

ース電流を一定にするための工夫などで回路が複

雑になりますが,小信号増幅でも大電力増幅でも,

バイアスがその回路の動作を決めていることで

は,変わりありません.

図17にC級増幅の回路を示します.図15,図

16のA級動作とは違って,入力はトランジスタの

ベースにコイルが直接つながれています.直流的

にはベースはグラウンド電位と同じですから0V

で,ベース電流は流れません.

高周波信号が入力されて,コイル両端に0.6 V

を越えた信号が現れてベース電流が流れ始める

と,コレクタ電流が流れて増幅動作を行います.

しかし,図12(a)のように出力波形が歪みますが,

変調波の含まれないキャリアだけの増幅には,信

号が入力されたときにだけ動作をするので,効率

の良い増幅回路です.

CW送信機や高調波成分を取り出すための逓倍

回路,FM,AMのファイナル(変調前)に用いられ

ます.高周波でよく使われるA級とC級動作につ

いて説明しましたが,AB級はA級と同じ回路で,

ベース電流を少なめに設定します.なお,B級の

回路については触れませんが,半分の波形しか出

力に表れないので,反対側波形のために同じ増幅

回路を設けて,最後に波形を合成するプッシュプル

回路に使われることだけは知っておいてください.

C級増幅回路の動作を見る

高周波増幅回路

32 第1章 電子部品の知識と使い方

バイアス電流がコ�イルに流れるのを�阻止している�

OUT

+B

または�

入力�0.01

IN

100k~�1M

Rb

1k~10k

R

OUT

チョーク�負荷�

2SC1815など�

VCC

2次コイルで出力を取り出す�

チョーク負荷として0.01 Fで出力を取り出す�

μ�

0.01μ�

μ�

図15 自己バイアス回路による高周波増幅

OUT

+B

0.01 �

0.01

0.01

0.01バイパス・コンデンサ�

IN

33k

33k

μ�

μ�μ�

μ�

図16 電流帰還バイアス回路による高周波増幅

直流的には0V

0.01IN

OUT

出力�

VCC

2SC1815など�

μ�

図17 C級増幅回路の動作

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RFプローブは発振回路など高周波の調整を行

うときに欠かせない測定器です.しかし,発振周

波数の2倍,3倍の信号を取り出すとき,高調波

なども同時に検出してしまうために.本当に目的

周波数の信号が取り出せているのかどうか,不明

なことがあります.

そこで,目的の周波数だけを検出できる同調型

RFプローブを紹介します.

図1はRFプローブの回路です.高周波信号は

220 pFを介して1N60による倍電圧検波を経て,

メータを振らせます.周波数に関係なく広範囲の

高周波信号を検出することができます.

図2はRFプローブの入力部に同調回路を設け

たものです.こうすると同調回路で共振した周波

数だけを検出することができます.コイルとバリ

コンの大きさで,検出できる信号の周波数範囲が

決まります.

図3に実際の回路を示します.

入力部は入力①と入力②の2回路としました.

入力①はロー・インピーダンス用,入力②はハ

イ・インピーダンス用として,信号源の出力イン

ピーダンスに合わせて,どちらかを選択できるよ

うにしました.しかし,ほとんどの場合,入力①

を使うので,入力②は特に必要を感じません.入

力②は省略してもよいでしょう.

入力①のあとの5 kΩのボリュームはメータが

回路の説明

原理

472-3 同調型RFプローブの製作

2-3確実な調整のために使いたい同調型RFプローブの製作

《2-2》で紹介したRFプローブには共振回路は

なく,この場合には目的信号の周波数は問いま

せん.そのため,目的以外の高周波信号を拾っ

てしまう可能性があります.そこで考えたのが,

同調型のRFプローブです.

0.01μ�

プローブ�

1N60

1N60220p

フルスケール�100~500μA�ラジケータ�

A

250kVR

図1 基本となるRFプローブ

プローブ� 5p

図2 同調型RFプローブの考え方

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図3は,ディップ・メータの回路です.メイン

の発振部は,2SK241GRによるコルピッツ発振回

路です.ゲートに入っている1S2076Aは,0.6 V以

上の振幅を制限して発振出力を一定にしています.

また,47 kΩはバイアス抵抗です.ソース抵抗

330Ωは,なくとも発振しますが,発振強度の調

節が行いやすいので入れてあります.並列に入っ

ている0.01μFはパスコンです.

発振周波数は,コイルとバリコンによる同調回

路で決まりますが,コイルをプラグイン方式とし

て交換することで,広範囲に同調周波数が測れる

ようにしています.発振の強さは,ドレインにか

かる電圧をボリュームでコントロールします.

ドレインとコイルの間にある0.01μFは,発振回

路としては必要はないのですが,直流分をカット

してコイルに電圧がかからないようにするために

入れています.発振強度の表示は,発振出力の一

部を拾ってメータを振らせることにより行いま

す.ここは,ダイオードを使ったRFプローブの

高周波検出回路と同じです.

また,周波数カウンタで周波数を直

読できるようにしてみました.発振回

路に直接,周波数カウンタを接続する

と,発振が不安定になったり停止する

ことがあります.そこで,発振器と周

波数カウンタの間に2SK241GRによる

バッファ・アンプを挿入して,発振回

路とは小容量のコンデンサ(10 pF)を

介して,ごく軽く結合させます.そし

て信号を取り出し,発振回路に影響が

ないようにしています.

コイルを交換する方法に工夫を凝ら

しました.φ2.1 mmのDCジャックと

プラグを利用したプラグイン方式によ

り,コイルの交換ができるようにしま

した.また,コイルを巻く手間を考えて,コイル

の巻き数の多くなる周波数の低いほうでは,市販

のRFC(高周波チョーク)をそのまま利用するこ

ととしました.これが,思ったよりもうまく発振

してくれました.

RFCには,巻き線の上からプラスチックのカバ

ーがかかっているものや,塗装されたものがほと

んどですが,中にはフェライト・コアがかぶさっ

ていてシールドされているのもあります.シール

ドされているものは使えないので注意してくださ

い.周波数の高いほうのコイルは,手巻きして作

ります.

バリコンは,ラジオ用の親子バリコン160 pF+

70 pFを使います.2連のバリコンであれば,多少,

容量が違っていても使えます.メータは,100円

ショップで見つけた210円のバッテリ・チェッカ

からはずした500μAのラジケータを使いました.

500μA以下のものであれば使えます.

そのほかのパーツは,表1のパーツ一覧を参考

に集めてください.

パーツを集めるポイント

52 第2章 ラジオ製作に必要な測定器と,手作りする高周波用ツール

10p

10p

1N60

500 A�ラジケータ�

メータ表示部�

周波数�カウンタ�出力�

160p

D

S

G

D

S

AK

AK

G

親子バリコン�

70p

47p47k

470k

DCカット用�

リミッタ�

1S2076A

1N60

330Ω�

100Ω�

10k Aカーブ�スイッチ付き�

0.01�

0.01�

0.01�

0.01�

VR��

0.01�

μ��0.01μ�

006P�9V

2SK241GR

2SK241GR

1S2076A�1N60

2SK241GR

220 H

D S G

�

図3 ディップ・メータの回路

Page 6: チョーク・コイルの使い方 - CQ出版社 · ン・ダイオード,定電流ダイオードなど,たくさ んのダイオードがあります.また意外なところで

タを接続して,10.0MHzを発振させます.発振が

確認できたら周波数カウンタをはずして,接続ケ

ーブルでインダクタンス・メータに信号を入力し

ます.インダクタンス・メータの感度がフル・ス

ケールになるようにボリュームをセットします.

コイル端子に0.1μH~12μHのRFCコイルを取

り付けてバリコンを回してディップするかどうか

を確認してみましょう.筆者は,8.2μHのRFC

コイルを使いました.ほかの周波数で測定できる

RFCコイルを確かめてもかまいません.

バリコンをゆっくり回していくとメータの針が

一瞬,ストンと下がります.これをディップする

と言いますが,このディップするところが共振点

です.

動作確認ができたら,目盛りを記入します.バ

リコンの軸を中心にして,図7や写真2のようにケ

ント紙を切って目盛りが記入できるようにした紙

をケースに粘着テープで仮止めします.ツマミを

取り付けて,市販のRFCコイルのインダクタンス

のわかっているものを利用して,メータがディップ

するところにRFCコイルのインダクタンスの読み

を記入していきます.著者は,手持ちの関係で

1.2μH,8.2μH,22μH,33μH,47μH,100μHを

用いて目盛りを付けました.

まず,10MHzを発振させて,1.2μH,8.2μHの

目盛りを付けます.22~100μHは,3.16 MHzの

592-5 インダクタンス・メータの製作

写真1 内部の配線のようす

発振�

ディップ・�メータ�

1.5D-2V 30cm�接続ケーブル�

プラグ�

信号INカウンタ�出力(信号)�RCA

プラグ�

RCA コイル�

インダク�タンス・�メータ�

A B C

10MHz�31.6MHz�3.16MHz�1MHz

1.2 H~12 H�0.12 H~1.2 H(× )�12 H~120 H(×10)�120 H~1.2mH(×100)�

μ� μ�μ� μ�μ� μ�μ�

101

図6 ディップ・メータとインダクタンス・メータの接続

40

60

25

20

10

25

30 (単位:mm)�

図7 目盛り板

写真2 目盛り板の作例

Page 7: チョーク・コイルの使い方 - CQ出版社 · ン・ダイオード,定電流ダイオードなど,たくさ んのダイオードがあります.また意外なところで

その代わりに12 k:8Ωの真空管用のアウトプッ

ト・トランスを用いて,8Ωのスピーカをつない

でみました(写真3).音はとても小さくスピーカ

に耳を近づけてやっと聞こえる程度ですが,ダイ

オード検波の出力だけでもスピーカを鳴らすこと

ができました.これはダイオード出力のハイ・イ

ンピーダンスをトランスでスピーカ負荷の8Ωに

変換したことでできるのです.なお,スピーカも

できるだけ能率のよいものを選んでください.音

量的にはちょっと物足りませんが,夜中にベッド

に入り,耳元に置いて静かに聞くには,楽しいの

ではないでしょうか.

スピーカでは音量がちょっと少ないので,ウォ

ークマンのステレオ・ヘッドフォン(入力インピ

ーダンス=4~32Ω)をつないでみました.音量は

バッチリです.クリスタル・イヤホンでは,出に

くい低音もしっかり聞こえて,透明感のあるとて

も良い音質にびっくりしました.

放送局の近くで強力な電波の届くところであれ

ば,高周波増幅も必要ありません.ということは,

ゲルマニウム・ラジオでスピーカが鳴らせるので

す.近くに放送局のある方は,ぜひ試してくださ

い!

この高1付きゲルマニウム・ラジオの検波出力

の後に低周波アンプを入れれば,スピーカから十

分な音量で放送を聞くことができます.

713-1 ゲルマニウム・ラジオの基本と応用

100Ω�

+� -�

0.01

0.01

220p

0.01

トランス T-600 12k 価格:672円�12kΩ:8Ωのアウトプット・トランス(真空管用)�入手先:東栄変成器(株)�    〒101-0021 東京都千代田区神田1-14-2�    TEL 03(3255)6589

トランス�12kΩ:8Ω�

スピーカ�2.7mH

006P9V

0-4-8Ω�

TOEI�

0-7-10-12k1N60

2SK241GRアンテナ�

1N60

ダイナミック・�スピーカ�9V

8 65

1610

12kΩ:8Ω�

負荷抵抗 470kΩを取り去り,�代わりにトランスを付ける�

RL

RL

μ�

μ�

μ�

-�

+�

図5 高一付きゲルマニウム・ラジオでスピーカを鳴らす

写真3 高1付きゲルマニウム・ラジオでスピーカを鳴らす

Page 8: チョーク・コイルの使い方 - CQ出版社 · ン・ダイオード,定電流ダイオードなど,たくさ んのダイオードがあります.また意外なところで

という小さな容量での結合で信号が受けられます.

同調回路は,14MHz用FCZコイルと160 pF+

70 pFの親子バリコンをパラレル接続で230 pFと

して同調を取っています.230 pFでは,およそ

6.8~16MHzに同調します.これだけ同調範囲が

広いと,チューニングが取りにくいのでメイン・

バリコンと並列に周波数の微調整用のスプレッ

ド・バリコンをいれました.

20 pFのFM用2連バリコンの片側に6pFを直列

に入れて,見かけ上の容量を小さくして周波数を

微調整するようにしました.7MHz付近ではおよ

そ40kHz,15MHzでは350 kHzほどの可変幅にな

ります.

同調回路で選択された信号は,2SK241GRで検

波すると同時に,ソースに現れた高周波信号を

FCZコイル10S14の1次側に戻して再生をかけま

す.同調コイルに戻す再生量は10 kΩのボリュー

ムで調整します.なお,ボリュームと直列に入っ

ている0.01μFのコンデンサは,直流をカットす

る役目をしています.

再生検波の周波数の安定度をよくするために,

2SK241GRに供給する電圧は5 Vの3端子レギュ

レータを入れて安定化しています.

2SK241GRのドレインからの検波信号は,0.1μF

を介してLM386で増幅され,スピーカ(ヘッドホ

ン)を鳴らします.スピーカは外付けとして,出力

はステレオ・ジャックを用いて,スピーカ,ステ

レオ・ヘッドホンどちらも使えるようにしました.

パネルの配置図を図3に,実体配線図を図4に

示します.なお,バリコンのシャフトは,φ6×

10 mmのスペーサと2.6×12 mmのビスで延長し

てからパネルに取り付けます.バリコンやボリュ

ームの操作のときにボディ・エフェクトにより周

波数が動かないように,パネルとランド基板はた

作り方

994-4 7~16MHz用再生式(オートダイン)受信機の製作

81

4D S G OUT G IN32

LM3862SK241GR

2SK�241

78L05

LM386

78L05

1234

8765

16V

ステレオ・�ジャック�

10k(B)�

16V1k

25V

25V

25V

+�

-�

IN

G

OUT

3.3k

LED

積層セラミック�

積層�セラ�ミック�

積層�セラ�ミック�

006P�(9V)�

10k12p

D

GS

2SK241GR

FCZ�10S14

2.2k

4.7k

20pF�FM用バリコン�

230p6p

(160p+70p)�親子バリコン�(B)�

VR

10k(B)�

VR

C1

VR

図2 7~16MHzオートダイン受信機

(単位:mm)�※点線で折り曲げて板の上からビス止めあるいは� 折り曲げないで正面から板にビス止め�

200

15

14

70 30

30

35 20

55

25

10

リア・パネル�

5015

801015

1510

VCLED

BNC

トグルSW

ジャック� VR VRVR

14

VC

図3 パネルの配置

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弱くしていくと感度が上がります.ただし,受信

状態ではP-16の周波数カウンタ表示ができなくな

ります.再生を強くかけたときと実際の受信のと

きでは,7MHz付近で5 kHz,14 MHzで60 kHz

ほど上側に周波数がズレてしまいました.しかし,

この範囲まで周波数が追い込めるので,ズレを考

慮してスプレッド・バリコンで目的の周波数を探

すことは簡単です.

図3に,高周波増幅と周波数カウンタ用バッ

ファ・アンプのようすを示します.また,全体の

回路を図4に,全体のようすを写真1に示します.

1054-5 オートダイン受信機のグレードアップ方法

+�

-�

ステレオ・ジャック�

12p積層セラミック�

積層�セラ�ミック�

積層�セラ�

ミック�

FCZ�10S14

230p 6p

20pFMバリコン�

(160p� +70p)�

D

ATT

DS

SG

G

470k

10k(B)�

10k

2.2k

D

S

G

4.7k

1k

(B)�

10k(Aカーブ)�

2SK241GR 2SK241GR

2SK241GR6p

周波数�カウンタ出力�RCAジャック�

再生コイル�ドレイン電流用�

LM386

78L05

1234

8765

16V

25V

25V

25V

3.3k

LED

SW

006P�(9V)�

16V

μ�0.01

220 100 Hμ�

μ�0.1μ�10

μ�100

μ�100μ�10

μ�

0.01

μ�0.01

μ�

0.01

μ�0.01

μ�

0.01

μ�0.1 μ�0.1

100

100

μ�470

10

18

100 Hμ�

Ω�

Ω�

Ω�Ω�

Ω�

μ�0.01

μ�0.01

図4 オートダイン受信機(1-T-1)の回路

ATT10k(B)�

D

D

S

S

G

G

ANT�(BNCへ)�

高周波増幅�2SK241GR

周波数カウンタ用�バッファ・アンプ�

周波数カウンタ出力�RCAジャックへ�

+B 9V

2SK241GR

470k

12p

6p

μ�0.01

μ�0.01

μ�0.01μ�0.01

μ�0.01

μ�100 H

μ�100 H

Ω�220

Ω�

100

図3 高周波増幅カウンタ用バッファ・アンプ実体配線図 写真1 グレードアップした1-T-1の基板面

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があれば周波数を確認します.著者の場合,36.002

MHzで発振をしていました.

L3のコアで最大感度に合わせます.ここの発振

が確認できなければ,絶対に動作しませんから,

確実に発振させてください.高周波増幅は5~

10 mA程度です.もし,異常発振ぎみのときはRs

の100Ωを220~330Ωと大きくしてください.

混合器には0.3mA程度の電流が流れていればOK

として,ケースに入れて配線します.

ケースはタカチのYM-130(130×30×90mm)を

使いました(写真1).図4のケースの配置図,図5

の実体配線図を参考にしてください.LEDは瞬間

接着剤でケースに固定しました.入出力の高周波

信号の部分は同軸ケーブルで配線します.

著者の場合,発振周波数は36.002MHzで,50.00

MHzの電波はBCLラジオでは13.998MHzで受信

することになります.

BCLラジオのアンテナ・ジャックとクリスタル・

コンバータのRX出力を同軸ケーブルでつなぎま

す.もちろん,HFトランシーバや受信機を親受

信機としてもOKです.クリスタル・コンバータ

の感度調節VRは,最大感度としておきます.こ

のとき調整にはディップ・メータが信号源として

利用できます.

アンテナに1mほどのビニル線をつないでおき,

写真2のように,ディップ・メータで50.5 MHz

付近を発振させます.次に受信機で14.5 MHz付

調 整

130 第5章 アマチュア無線機器と周辺アイテムの製作

写真1 50MHzクリスタル・コンバータをケースに組み込んだようす

1515

LED

25 25

15

15

15

DC�ジャック�

φ12 φ10 φ8

φ3

φ10

ケース:タカチ YM-130�(130×30×90mm)�

BNC BNC VR〔単位:mm〕�

(b)リア�

(a)フロント�

図4 ケースの加工寸法

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でモニタしましょう.

著者はコンデンサ・マイク・ユニットを小さな

プラスチック・ケースに入れてハンド・マイクと

しています.

受信機は《5-3》項で作ったクリスタル・コンバ

ータとBCLラジオDE1103です.BCLラジオの

代わりにHFトランシーバや受信機で14MHzに

周波数を合わせてもOKです.

まず,送信機からクリスタル・コンバータに接

続する信号用のケーブル(1.5D-2Vの同軸ケーブル

50 cmの両端にBNCメス・コネクタを取り付けた

もの)とDC用のケーブル(30 cmの平行ビニル線の

両端にφ2.1 mmのDCプラグを取り付けたもの)

を用意します.電源として著者はNi-MHのエネ

ループ(サンヨー製)を8本直列にしたものや,乾

電池8本を使っています.安定化電源ではノイズ

が気になるかもしれないので,注意してください.

アンテナとして λダイポール・アンテナなど

を用意します.50MHz帯のAMはほとんど聞こ

えないので丹念にワッチして相手を探すか,ロー

カル局とスケジュールを組むのが手っ取り早いで

しょう.出力が70 mWと小さいためローカル局

との交信しかできませんが,標高の高いところで

はびっくりするほど飛ぶこともあります./�21

運用しよう!

1375-4 50MHz AM送信機の製作

1515

トグルSW

マイク・ジャック�(イヤホン・ジャックφ3.5)�

25 30

15

15 15

15 15

DCジャック�

φ12 φ12

φ6 φ6

φ10

φ10

ケース:タカチ YM-130�(130×30×90mm)�

(RX)�(DC IN)�BNC�(ANT)�

(RX)� BNC

〔単位:mm〕�(b)リア・パネル�

(a)フロント・パネル�

図6 フロントとリア・パネルの寸法

写真2 ケースに入れた50MHz AM送信機

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わないよう注意してください.

図4のようにL1,L3,L4は,φ0.4mmのポリウ

レタン線を必要な長さにカットして,巻き始めを

20mmほど線を残してから,コアに均等になるよ

うに巻いていきます.巻き数は,コアの中を通過

した数をカウントします.

ところで,L2だけはほかのコイルと違って,二

本のより線を巻くバイファイラ巻きという方法で

す.これが製作するときに,ちょっとたいへんか

もしれません.

まず,150 mmにカットした二本の線を軽くよ

じります.20mmほどコアから出して,同様にコ

アの中を8回とおします.

巻き終わったら,巻き始めと巻き終わりをほど

き,被覆を紙やすりやカッター・ナイフで,てい

ねいにはがします.テスタで導通を確認し,間違

わないようにしてお互いの巻き始めと巻き終わり

をよじって結線します.

マルツパーツ館で販売されている基板上には,

送信回路とは別にブレークイン回路も含まれてい

ます.まずは先に,送信回路だけを組み立てます.

基板のシルク印刷(パーツ・ナンバー)にしたが

ってパーツをはんだ付けしていきます.パーツの

リード線を基板の穴に入るように形を整えて差し

込み,裏面ではんだ付けしていきます.

Tr1やTr2のトランジスタのピン足の配置は間

違わないように注意してください.コイルのリー

ド線は,絶縁被覆をきれいに取って,基板の裏で

リード線を折り曲げて基板に密着させてからはん

だ付けすると,うまくできます.

L2のバイファイラ巻きのリード線の配置にも

気をつけてください.コイルの取り付け不良を防

ぐために,4個のコイルがしっかりはんだ付けで

きているかどうか,各コイルの両端の導通を確か

製作しよう

1415-5 「あゆ40」7MHz CW送信機の製作

写真4 T-37#6のトロイダル・コアに巻いたL3とL4(同じもの)

この二本を�たばねる�

a′�b′�a b

a′�

b′a

b

巻き数の数え方はコアの中の数�

L1(黒コア)�

(黄色コア)�L3,�L4

180mm

270mm

線の長さ� 巻き数�

バイファイラ巻き�

20mm

4回�巻いた�

二本の線を�よじる�

20mm

10回�

10回,19回�L2(黒コア)�150mm×2本� 8回�

19回�

図4 コイル(L1~L4)の巻き方