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超低ひずみ率のEL34PP カスコード・パワー・アンプ 前回は, EL34のカソードを2 SD669Aで電流ドライブしたシン グル・パワー・アンプ(第1図)荏 ご紹介しました. 15 6dBのオーバ オールNFBをかけた状態での出 刀-6.6W (RL-8J】)において, 10 kHzのひずみ率が, ・第2調波ひずみ率-0.0039% ・第3調波ひずみ率-0.0012% とシミュレーションされました. 真空管アンプとしては驚くべき低 ひずみですが, 2次ひずみをキャン セルすればさらにひずみ率か減少す るはずです.そこで今回は,プッシ ュプル方式に改めたアンプをご紹介 します. 144 EL34 PPの回路図 はじめに第2図のアンプをシミュ レーションしてみましょう. B電瀕 電圧, EL34のスクリーン・グリッ ド電圧,カソード電流は第1図のア ンプと同じで, A級PP動作です. オーバオールの負帰還はかけてい ません.下側のOPA 2604の非反転 入力端子に,ゲインニー1倍のバッ ファで位相反転した入力信号を加え ています.なお,このバッファ LAPlはアナログ・ビヘイビア・モ デルです. (1)使用オペアンプ 前回はOPA604を用いました が,今回は2個入りのOPA2604で- す. OPA2604のデバイス・モデル はバーブラウン社で作成された純正 マクロモデルOPA2604/BB OPA2604E/BBがあります. らは下記のWebサイト, httpLi//www.orca pspice/models.asp?bc にあるburLbmlibというモ ル・ライブラリ・ファイルに含まれ ています.このファイルは無条件で ダウンロードできます. OPA2604E/BBはオペア の内部雑音や入力容量も考慮した強 化モデルですが,回路規模が大きい ため, 2個使うとSIMetrix評価 の規摸制限を越えてしまいます. 今回は雑音特性をシミュレーショ ンしないの?,標準モデルの OPA 2604/BBを使います. (2)出力トランス 1次インピーダンスが5knのタ ンゴCRD-5を用いることにしま X2-20S 110 loom ifRgeRL- 擢LR5D訂聖二に 68R210k5R67「.--.V4 」Fi C1 〈第1図〉 前号で紹介したカソ ード電流駆動の EL34シングル・ア ンフ世路 ジオ技術

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Page 1: 擢LR5D訂聖二に - TOK227)EL34-pp_KurodaT.pdf · るチョーク・コイル el34のスクリーン・グリッドは 交流的にカソードに短絡する必要が あるので,チョーク・コイルtx2

超低ひずみ率のEL34PP

カスコード・パワー・アンプ

前回は, EL34のカソードを2

SD669Aで電流ドライブしたシン

グル・パワー・アンプ(第1図)荏

ご紹介しました. 15 6dBのオーバ

オールNFBをかけた状態での出

刀-6.6W (RL-8J】)において,

10 kHzのひずみ率が,

・第2調波ひずみ率-0.0039%

・第3調波ひずみ率-0.0012%

とシミュレーションされました.

真空管アンプとしては驚くべき低

ひずみですが, 2次ひずみをキャン

セルすればさらにひずみ率か減少す

るはずです.そこで今回は,プッシ

ュプル方式に改めたアンプをご紹介

します.

144

EL34 PPの回路図

はじめに第2図のアンプをシミュ

レーションしてみましょう. B電瀕

電圧, EL34のスクリーン・グリッ

ド電圧,カソード電流は第1図のア

ンプと同じで, A級PP動作です.

オーバオールの負帰還はかけてい

ません.下側のOPA 2604の非反転

入力端子に,ゲインニー1倍のバッ

ファで位相反転した入力信号を加え

ています.なお,このバッファ

LAPlはアナログ・ビヘイビア・モ

デルです.

(1)使用オペアンプ

前回はOPA604を用いました

が,今回は2個入りのOPA2604で-

す. OPA2604のデバイス・モデル

はバーブラウン社で作成された純正

マクロモデルOPA2604/BBと

OPA2604E/BBがあります.これ

らは下記のWebサイト,

httpLi//www.orcadpcb.com/

pspice/models.asp?bc - F

にあるburLbmlibというモデ

ル・ライブラリ・ファイルに含まれ

ています.このファイルは無条件で

ダウンロードできます.

OPA2604E/BBはオペアンプ

の内部雑音や入力容量も考慮した強

化モデルですが,回路規模が大きい

ため, 2個使うとSIMetrix評価版

の規摸制限を越えてしまいます.

今回は雑音特性をシミュレーショ

ンしないの?,標準モデルの

OPA 2604/BBを使います.

(2)出力トランス

1次インピーダンスが5knのタ

ンゴCRD-5を用いることにしま

X2-20S

110 loom

ifRgeRL-

擢LR5D訂聖二に 68R210k5R67「.--.V4

」Fi C1

〈第1図〉

前号で紹介したカソード電流駆動の

EL34シングル・ア

ンフ世路

ラ ジオ技術

Page 2: 擢LR5D訂聖二に - TOK227)EL34-pp_KurodaT.pdf · るチョーク・コイル el34のスクリーン・グリッドは 交流的にカソードに短絡する必要が あるので,チョーク・コイルtx2

第1図の回路のさらにひずみ化を狙ったEL

PPアンプの回路図

す. CRD-5のメ

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特性を第3図に示します.ここでは,

CRD-5を第4図の等価回路( 1次側

換算モデル)のトランスでシミュレー

ションします.

第4図のトランスの周波数特性を

第5図に示します. 200 kHz以上で

メーカー発表の特性(第3回)とや

や違いがあります.

第2図の回路にトランスを配置す

るには,回路図ウインドウのメニュ

-から, [Place]-[Passives]-

[Ideal Transformer-]をクリッ

クします.トランスの属性は第6図

のように設定します.図の項目

[De斤ne Turns Ratio]における

Prim.2. See. 1, See.2は巻線を表

します(第7図).

詳細は, 2004年4月号p.

148-150を参照してください.

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周波赦(Hz)

〈第3図) CRDでの周波数,位相,インピーダンス特性

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〈第4図〉 CRDづ出力トランスの等価醜

MAR 2005

(3) EL34のSG端子に接続す

るチョーク・コイル

EL34のスクリーン・グリッドは

交流的にカソードに短絡する必要が

あるので,チョーク・コイルTX2

でB電源から交流的に絶縁します.

ここでは中点タップつきコイルを用

いました.なお,シミュレーション

には,理想トランスを用います.

すなわち,回路図ウインドウのメ

ニューから[Place]-[Passives]

- [Ideal Transformer-]をクリ

ックし,現われたダイアログボック

スを第8図のように編集します.

ニ講 #S。。。ndari。S (2次巻線の個数)を

0にセットすると,チョーク・コイ

ルになります.インタクタンスは10

Hとします. EL34の両SG間の負

荷イシダクタンスは4倍の40Hに

なります.

特性のシミュレーション

(1)周波数特性

第2回のアンプのAC解析結果

を第9図に示します. I kHzのゲイ

ンは37.4 dBです.オーバオールの

145

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〈第14図)第13図実用回路のフーリエ解析綜栗

(-110dBc)にすぎません.

(3)出力インピーダンス

第2図と第3図のアンプの出力段

は2SD669AとEL34のカスコ

ード接続になっているので,出力イ

ンピーダンスが趣めて高くなってい

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〈第15図〉第13図の実用回路の出力インピーダンス特性

に示します.これは1次および2次

の負荷抵抗を開放したときの出力ト

ランスのインピーダンス常陸そのも

のです.数100Hz以下においてイ

ンピーダンスが周波数に比例するの

は, 1次イングクタンスに起因しま

ます.第13図のアンプの出力イン  す.

ピーダンス対周波数特性を第15図  また,数kHz以上における出力

インピーダンスの低下は,巻線容量

に起因します. 700 Hz付近のピー

クは1次インタクタンスと1次巻線

容量の並列共振です.鋭い共振峰は

巻線抵抗が小さいことを表します.

300kHz以上で出力インピーダン

スカ浅動口するのは,リーケージ・イ

ンタクタンスに起因します.

なお, 700 Hz付近の共振峰はス

ピーカを接続すれば消失します.第

2図と第13図のアンプは理想的な

電流駆動アンプになっています.

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148

(第16図)

さらに低ひず

みを狙ってオ-パオール

8 NFBと同相軋  NFBをかけ

た回路

LdB

ラ ジオ技術

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(第17図)第16図の回路の周波数特性

オーバオールの負帰還と同

相負帰還をかける

第2図と第13図のアンプは,ス

ピーカを接続したとき,スピーカの

インピーダンス特性と相似の周波数

特性になります. 「投的にスピーカ

のインピーダンスはオーディオ帯域

において大きく変動するので,音正

対周波数常陸が大きく乱れます.

この間題を回避するにはオーバオ

ールの電圧負帰還をかける必要があ

ります.第16図のアンプは,下側の

オペアンプの非反転入力端子にオー

バオールの負帰還を戻しています.

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〈第18図〉第16図の回路フーリエ解析結果

そうすると,大きな同相入力電圧が

発生し, ACバランスが完全に崩れ

てしまいます.

そこで,第16図のアンプは同相

負帰還を併用しています.すなわち

QlとQ2のエミッタ電圧をR12と

R2。で分圧して同相信号電圧を検出

し,ゲイン-50倍の理想アンプで増

幅し, R21とR22で両オペアンプの反

転入力端子にフィードバックしてい

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〈第19図)

第16図の回路の出力

インピーダンス特性

ます.理想アンプの入力端子

~GND間に挿入したC1-1nFは

同相負帰還を安定にかけるための位

相補償容量です.

(1)周波数特性

第16図のアンプの周波数特性を

第17図に示します.低域は10Hz

までフラットです.

(2)ひずみ率特性

第16図のアンプのフーリエ解析

結果を第18図に示します.

基本波成分(10kHz) : 16.07V

3次調波成分(30kHz) :258

〟V

となっています.すなわち,

3次調波ひずみ率-0. 0016%

です. 2次調波ひずみ率は0.001%

を切っています.

(3)出力インピーダンス

第16図のアンプの出力インピー

ダンス対周波数特性を第19図に示

します. 20 Hz-20kHzの範囲で

約0.850です.

149

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