のインストールと関数グラフの作成方法yunavi.la.coocan.jp/mathnavi/file/t3_h16b2.pdftexのインストールと関数グラフの作成方法...
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TEXのインストールと関数グラフの作成方法
梅野 善雄∗
一関工業高等専門学校
1 はじめに
数学の教材プリントを作成するには,数式を簡単に作成できる必要がある。市販されて
いるワープロソフトにはそのような機能が追加されているものもあるが,式が複雑になる
につれ式の作成作業も増大してしまう。
ここに,数式を含む理工系の文書を容易に,そして綺麗に作成することを目的として開
発されたフリーソフトTEXがある。その概要や出力例などはT3Japan第 7回年会で「TEX
による数学教材作成法」として解説した。このソフトを利用すると,市販されている数学
本と同レベルの印刷出力を得ることができるばかりではなく,通常文書でのワープロソフ
トが不用になるほどである。しかし,初めて取り組む場合は,インストール作業の段階で
つまずく場合が多い。そこで,ここでは,これからTEXを使ってみようという方のため
に,そのインストール作業について解説する。
また,数学のプリントでは,図形や関数のグラフを欠かすことができない。emath.sty
というスタイルファイルを利用すると,図形やグラフを簡単に作成することができる。後
半では,emath.styを利用した図形やグラフの作成方法について解説する。
2 TEXのインストール
ここでは,必要なファイルをダウンロードして自分でインストールする場合を,筆者が
利用している角藤版のTEXを例にとり解説する。そこでは,FTPサイトからのファイル
のダウンロード,圧縮ファイルの解凍,ディレクトリーの作成,環境変数の変更,コマン
ドプロンプトでの作業等が必要になる。これらの事柄の経験がない場合や,TEXについ
て全くの初心者の場合は,自分でインストールするよりも,市販されているTEX解説本
(CD付き)を利用するのが無難と思われる。以下では,少なくとも,エクスプローラによ
るディレクトリの作成,ファイルの移動やコピー,コマンドプロンプトによるEXEファ
イルの実行等に困難を感じない程度の知識があるものとして説明する。
2.1 ファイルのダウンロード
角藤版のTEXとは,(株)アスキーが開発した日本語TEX(UNIX版)を,近畿大学の角
藤亮教授がWindows版に移植したTEXのことである。極めて頻繁に更新されている。多
数のファイル群から構成されているので,ダウンロードするにはADSL等の高速回線が
∗021–8511 一関市萩荘字高梨 一関工業高等専門学校[URL] http://www.ichinoseki.ac.jp/gene/mathnavi/
1
T3Japan第8回年会(東京大会),2004.8
望ましい。これらのファイルをまとめてダウンロードするには,FTPのクライアントソ
フトが必要である。著者は,WS FTP LE版 (Limited Edition)を使用しているので,そ
れを例にとる。このソフトは,教育関係者には無償で提供されている。
http://wwwcsoft.kgt.co.jp/product/wsftp_le/ws_ftp_le.html
FTPで接続する前に,TEXをインストールするディレクトリ (フォルダーともいう)と,
ダウンロードしたファイルを格納するデェリクトリを決めておく。無い場合は作成する。
以下では,インストールディレクトリをY=ptexとし,ファイルを格納するディレクトリを
Y=ptexY=tempとする。
次に,WS FTPを起動して必要な初期設定を行う。WS FTPを起動すると図 1のよう
な画面が現れるので,接続先の FTPアドレスを入力する。Profile Nameは適当な名前で
かまわない。角藤版のTEXは,会津大学等の幾つかのミラーサイトに常に最新版が置かれ
ている。会津大学を利用するのであれば,HostName/Addressには「ftp.u-aizu.ac.jp」を
指定する。そして,UserIDには「anonymous」を指定し,Passwordには自分のメールア
ドレスを入れる。次に,「Startup」画面 (図 2)に移り,Initial Remote Site Folderにアク
セスするFTPサイトの角藤版TEXが格納されている箇所を指定する。会津大学の場合は
「/pub/tex/ptex-win32/current」を指定する。Initial Local Folderには,ファイルをダウ
ンロードするディレクトリとして「c:Y=ptexY=temp」を指定する。そこでは,円マークY=
を打つとバックスラッシュ\が表示される。通常のインターネット接続ができる状態であ
れば,ここで「OK」をクリックすれば会津大学に接続されるはずである。
接続に成功すると図 3の画面となる。左側のLocal Systemはパソコン側のY=ptexY=temp
の内容である。右側のRemote Siteには角藤版TEXのファイル群が表示される。ハード
図 1 図 2
図 3 図 4
2
ディスクの空き領域に余裕があるときは全ファイルをダウンロードしておけばよいだ
ろう。右側で一番先頭のファイルをクリックして青色にしてから,矢印キーで一番最後の
ファイルに移動し,シフトキーを押しながらクリックすると全ファイルが選択される。そ
の後,中央にある左向き矢印をクリックするとダウンロードが開始される。ダウンロード
が終了したらWS FTPを終了させる。52ファイルで約 108MBである。職場からアクセ
スすると約 2分でダウンロードが終了した。各ファイルの概要は,README.sjに書いて
ある。
2.2 ファイルの解凍
ダウンロードしたファイルの解凍作業は,コマンドプロンプトで行う。それには
[スタート]→ [プログラム]→ [アクセサリ]→ [コマンドプロンプト]
とする。その黒い画面上で
「c:」→「cd Y=ptex」→「copy Y=ptexY=tempY=unzip.exe Y=ptex」
とすると unzip.exeがY=ptexにコピーされる。そして「unzip Y=ptexY=texinst753.zip」と
すると,インストール用のソフトである texinst753.exeや,tar.exe,gzip.exeなどがY=ptex
に解凍される。ここで「texinst753 Y=ptexY=temp」とすると,ダウンロードしたファイ
ルが自動的にY=ptexに解凍されてゆく (図 4)。かなりの時間がかかるので,コーヒーでも
入れて休憩するとよい。
2.3 環境変数の設定
TEXのファイルがどこにあるかは,「環境変数」を通してコンピューターに知らせるこ
とになる。この設定は,Windowsの種類により異なる。Windows 95/98などの場合は,
「http://forum.nifty.com/fdtp/install/win/tex.htm#path」を参照されたい。以下はWin-
dows 2000/NT/XPの場合である。
[スタート]→ [設定]→ [コントロールパネル]
→ [システム]→ [詳細設定]→ [環境変数 (N)]
と押していくと,図 5のような画面が現れる。ここで,
上側のユーザー環境変数にPATHの設定があるかどう
かを確認する。すでにあるときは,そのPATHをクリッ
クして [編集]を押し,最後の方に TEXの実行ファイ
ルの場所を追加する。我々の場合では「;cY=ptexY=bin」
を最後に追加して「OK」を押す。PATHが無い場合
は [新規]を押して,変数名に「PATH」,変数値に上
述の内容を定義して「OK」を押す。以前のTEXでは,
他にTEXMFCNF,TEXMFMAINなどの設定が必要
であったが,Web2C-7.3.7以降のTEXでは必要がなく
なった。図 5
この文面によりインストールする場合はWeb2C-7.5.3をインストールすることになる
ので,当然それらの設定をする必要はない。
3
3 DVIOUTのインストール
TEXにより出力される拡張子がDVIのファイルを画面表示したり印刷するには,DVIware
と呼ばれるソフトが必要である。WindowsのTEXでは,dviout.exeが利用されている。イ
ンターネット・エクスプローラのアドレスに
ftp://akagi.ms.u-tokyo.ac.jp/pub/TeX/dviout/current in Japanese/
を指定すると幾つかのファイル名が表示されるが,「tex316w.exe」(現時点での最新版)を
右クリックして,保存先のフォルダーとしてたとえばY=ptexY=tempを指定する。
その後,エクスプローラなどでこのファイルをダブルクリックすると,最初にファイル
を展開するフォルダ (ディレクトリーのこと) を聞かれる。著者はY=ptexY=dvioutを指定し
ているが,これにこだわる必要はない。適当なフォルダーを指定して「OK」を押す。解凍
が終わると dvioutが自動的に起動する。初めて dvioutが実行された場合は,プリンター
の解像度等のいろいろな設定を行なう必要がある。メニューにしたがって,自分の環境に
合わせた設定を行う。うまく設定できれば,必要なフォントは dvioutが自動的に作って
くれる。
なお,Y=ptexY=dvioutY=docには,TEXや dvioutのインストールに関して詳しく解説し
たファイルが納められているので,目を通しておくべきである。
tex instchk.html TEXのインストーの手順や,正しくインストールされたかどう
かのチェック方法などが解説されている。主なエラーメッセー
ジについて,エラーの意味や対応法の解説もある。
tex dvioutw.html dvioutのインストールの際に表示されるメッセージへの応答の
仕方や,いろいろなフォントの使い方や,その設定の仕方など
について解説されている。
dviouttips.html dvioutを使用する上でのちょっとした小技がまとめられている。
熟達者でも一度は目を通しておくべき内容である。
4 スタイルファイル「emathP.sty」
数学の教材プリントを作成する上においては,図形や関数のグラフを自由に描画できる
ことが理想である。TEXでは,「スタイルファイル」と呼ばれるファイルを付加すること
により,あらゆることが可能になるといっても過言ではない。図形やグラフを取り扱うの
であれば,emathP.styというスタイルファイルを勧めたい。このスタイルファイルを利
用すると,次のような図形やグラフを自分で簡単に作成できる。
O X
B
AD
E
F
C
Gαβ x
y
O Q
A′
H
P′
Px
y
O 2−2
rが減少rが増加
4
このスタイルファイルでは,中学校や高等学校の数学のプリントを作成する上において必
要な記号やコマンドなどが網羅されている。入手するには,「http://emath.s40.xrea.com/」
において「丸ごとパック」を選択して emathf14.lzhをダウンロードする。多数のファイ
ル群から構成されている。Y=ptexY=shareY=texmfY=texY=latex に emathというフォルダー
を作成して,そこに解凍しておく。使用するときは,Y=usepackageに emathPを追加して
Y=usepackage{emathP}とするだけでよい。
4.1 図形に関するコマンド
このスタイルファイルは,基本的にはTEXの picture環境を支援するものである。数学
プリントによく現れる図形要素を簡単に作成できるよう,いろいろなコマンドが用意され
ている。以下に,その幾つかを紹介する。これらのコマンドを利用すると,共有点の座標
や線分の長さなどを計算することなく図形を正確に描くことができる。
機能 使用例 解説
点の定義 Y=defY=A{(3,0)} 座標が (3, 0)の点を点Aとする
折れ線 Y=Drawline{Y=AY=BY=C} 点A,B,Cを順に直線で結ぶ
点線 (Dottedline)や破線 (Dashline)で結ぶこともできる。
極→直交 Y=kyokuTyoku(1,120)Y=A 極座標で (1,120)の点をAとする。
これで円上の点を自由に指定できる。角の単位は 60分法。
分点 Y=BuntenY=AY=B{2}{1}Y=M ABを 2:1に内分する点をMとする
2直線の交点 Y=LandLY=AY=BY=CY=DY=E A,Bを通る直線とC,Dを通る直線の
交点を Eとする。点 Eの座標を具体的に求める必要がない!
円と直線,円と円の交点も同様の形で指定できる。
重心 Y=ZyuusinY=AY=BY=CY=G 点A,B,Cを頂点とする三角形の重心
を点Gとする。垂心,外心,内心を指定するコマンドもある。
たとえば,右図は下にあるようなソースで描画される。
点A,Bを定義して,線分ABをAを中心に 60度回転した
端点をCとする。点A,B,Cを書いた後で4ABCとその内
接円を描画する。そして,点Cから線分ABに下した垂線
の足をEとして,点Eを書いて線分CEを描画してから点
Eに直角記号を付している。座標を具体的に指定したのは,
2点A,Bだけである。なお,バックスラッシュ\は,円マー
クY=のことである。
A B
C
E
\unitlength8mm
\begin{picture}(5,5)
\def\A{(0,0)}\def\B{(4,0)}
\Kaiten\A\B{60}\C
\Put\A{\makebox(0,0)[r]{A }}
\Put\B{\makebox(0,0)[l]{ B}}
\Put\C{\makebox(0,.7)[c]{C}}
\Drawline{\A\B\C\A}
\Naisetuen\A\B\C
\Suisen\C\A\B\E
\Put\E{\makebox(0,-.7)[c]{E}}
\Drawline{\C\E}
\Tyokkaku\E[\B]\C
\end{picture}
5
4.2 関数のグラフ
関数のグラフを描画するには,zahyou環境を利用する。いろいろな関数は,この zahyou
環境の中で指定することになる。以下に幾つかの例をあげる。
機能 使用例 解説
座標環境 Y=begin{zahyou}(−2, 2)(−1, 3)~Y=end{zahyou}−2 <= x <= 2, − 1 <= y <= 3の範囲のグラフを考えたいときは,こ
の環境の中で考える。
整関数 Y=Gurafu{1,2,0,3}{a}{b} x3+2x2+3のグラフを [a, b]で描画。
2次関数 2x2 + 3x + 1であればY=Gurafu{2,3,1}{a}{b}とする。整関数の定義 Y=defY=Fx{1,2,0,3} f(x) = x3 + 2x2 + 3と定義する。
任意関数の定義 Y=defY=Fx#1#2{Y=Add#1{4}Y=x Y=Div{1}Y=xY=yY=edef#2{Y=y}}#1は独立変数,#2は従属変数である。上式では,#1に 4を加え
た値をY=xにセットし,1をY=xで割った値をY=yにセットし,その
Y=yの値を#2に返している。つまり,f(x) = 1/(x + 4)を定義し
たことになる。同様の形で,任意の関数を定義できる。
グラフの交点 Y=Gkouten{Fx}{Gx}{a}{b} 2つの関数Y=Fx,Y=Gxのグラフの交
点の座標を (a, b)とする。
たとえば,右下の図は次のソースで記述される。はじめに,−3 <= x <= 3,−3 <= y <= 3.5
の範囲の座標平面を方眼あり目盛なしで作成する。次に f(x) = x, g(x) = x2− 2を定義し
てグラフを描画する。それらの交点の x座標を求めて xi, xiiという変数にセットし,g(x)
の場合の対応する y座標を yi, yiiにセットする。最後に,囲まれた部分を角度が 60度の
斜線で塗りつぶしている。グラフの交点の座標を自分で求めることなく作成できるところ
が非常にありがたいところである。
Y=unitlengthの値を変えると,図形の大きさを自由に変更できる。媒介変数や極座標に
よるグラフも描画できる。emathのファイルをダウンロードすると,詳細なマニュアルも
添付されてくる。emathをダウンロードしたサイトには掲示板もあるので,疑問等がある
ときは利用するとよい。
\unitlength7mm
\begin{zahyou}(-3,3)(-3,3.5)
\zahyouMemori[g][n]
\def\Fx{1,0}
\def\Gx{1,0,-2}
\Gurafu\Fx{-2}{3}
\Gurafu\Gx{-2}{2.3}
\GKouten\Fx\Gx\xi\xii
\Kansuuti\Gx\xi\yi
\Kansuuti\Gx\xii\yii
\Nurii*[60]\Fx\Gx{-1}{2}
\end{zahyou}
x
y
O
6