エレクトロニクス業界の歴史と動向1 エレクトロニクス業界の歴史と動向...

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1 エレクトロニクス業界の歴史と動向 2020年 群馬大学電気電子工学特別講義Ⅱ集積電子回路工学 第426回 アナログ集積回路研究会講演 2020.7.28 群馬大学協力研究員 東京電機大学非常勤講師 中谷 隆之 本日の内容 1)日本エレクトロニクス&半導体業界を振り返る ・様々なエレクトロニクス製品、半導体のシェアと歴史的推移 ・装置産業化した技術/製品のアジアシフト 2)日本の強味とは何か? ・ライフサイクルに見る日本の強みと弱み ・ライフサイクルに見るサムスンの勝因 ・スマイルカーブに見る日本の強み ・擦り合わせ技術と組み合わせ技術 ・半導体分野における日本の強みは素材と製造装置 3)様々なエレクトロニクス関連の「波」に見る歴史と今後 ・コンドラチェフの波、ハイプサイクルなど Web1.0からWeb3.0・先端USA企業Apple,Googe,Amazonは「AI+IoT」がキーワード まとめ

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Page 1: エレクトロニクス業界の歴史と動向1 エレクトロニクス業界の歴史と動向 2020年群馬大学電気電子工学特別講義Ⅱ集積電子回路工学 第426回アナログ集積回路研究会講演

1

エレクトロニクス業界の歴史と動向

2020年 群馬大学電気電子工学特別講義Ⅱ集積電子回路工学

第426回 アナログ集積回路研究会講演

2020.7.28

群馬大学協力研究員

東京電機大学非常勤講師

中谷 隆之

本日の内容

1)日本エレクトロニクス&半導体業界を振り返る

・様々なエレクトロニクス製品、半導体のシェアと歴史的推移

・装置産業化した技術/製品のアジアシフト

2)日本の強味とは何か?

・ライフサイクルに見る日本の強みと弱み

・ライフサイクルに見るサムスンの勝因

・スマイルカーブに見る日本の強み

・擦り合わせ技術と組み合わせ技術

・半導体分野における日本の強みは素材と製造装置

3)様々なエレクトロニクス関連の「波」に見る歴史と今後

・コンドラチェフの波、ハイプサイクルなど

・Web1.0からWeb3.0へ

・先端USA企業Apple,Googe,Amazonは「AI+IoT」がキーワード

まとめ

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韓国、台湾および中国の追い上げで、近年日本のB2C型エレクトロニクス産業は地盤低下。

中国勢の躍進が著しい。

・家電製品(特に液晶テレビなどのデジタル家電)

・IT製品(携帯/スマホ、タブレット、パソコンなど)

・液晶ディスプレイ、現在半導体や有機ELパネルに注力中

2

2019年メモリ金額シェア

市場 1082億ドル

DRAM+NAND

Kioxia:東芝NANDを分社WD: Western Digital

2019年世界スマホ台数シェア全出荷台数 13億7100万台

Samsung

20.8%

Apple

14.9%

その他32.9%

2019年エレクトロニクス製品世界シェア

中国

中国

中国

Samsung

29.0%その他34.1%

2019年上期テレビ台数シェア

上期出荷台数 9816万台

中国

中国中国

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テレビの世界シェア推移

・韓国SamsungおよびLGがシェア拡大したが、2014年以降中国勢力が躍進

・2016年、中国勢が33.9%シェアで1位、韓国勢は31.3%で2位に転落。

・日本勢は2016年9.4%まで激減。低価格量販モデルをやめハイエンドにシフト

Samsung

LG電子

SONY

シャープ

パナソニック

東芝

30

20

10

0

金額シェア(%)

2005 06 07 08 09 10 11 1212年のみ1Qシェア

日経産業新聞2012.8.23

世界の薄型テレビシェア推移

9.4 %

33.9 %

31.3 %

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM03H4N_

V01C16A2FFE000/ 3

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スマートフォンの世界シェア推移

・スマホのシェア争いは激しい。2010年頃まではフィンランドのノキアが圧倒的なシェアを有していた

・欧米ではAppleを除き、スマホから撤退していった

・欧米から、台湾、韓国にシフトし現在は中国がシェア拡大中

・Samsungもシェアを落としている。2020年4~6月期にHuaweiがtopへ躍進見込み

・世界のスマホ市場で日本メーカの存在感はなし

Apple

Samsung

Huawei

OPPO

Xiaomi

シェア

日経2020.7.8

Huawei

Xiaomi

Samsung

4~6月

1~3月

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5

日本半導体メーカ、世界top10から消える

週刊東洋経済 2017.5.27 もとデータはGartner

1980年代はJapan as No1と言われた時代、Top10の内6社が日本メーカ(全てDRAM)

2019年現在、日本の半導体メーカはTop10内になし(東芝半導体の分社により圏外へ)

日本の半導体メーカはジリ貧だが、半導体材料や製造装置は今でも強味有する

2019年

インテル

サムスン

SKハイニクス

マイクロン

ブロードコム

クアルコム

TI

STマイクロ

nVIDIA

インフィニオン

ファウンドリーを除く順位

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世界半導体市場での地域別シェア推移

・汎用半導体(メモリなど)生産はアメリカ→日本→アジア(台湾、韓国、中国)へシフト

・アメリカは汎用半導体から付加価値の高い半導体(マイクロプロセッサなど)へシフト

・日本の半導体メーカのシェアダウンが止まらない。2018年は世界シェア7% に低下

参考 http://eetimes.jp/ee/articles/1606/27/news017.html

1980 1985 19951990 2000 2005 20152010

60

50

40

30

20

10

0

半導体出荷高シェア(%)

米国

アジア(台湾、韓国、中国)

日本

欧州

日本DRAMで成長 USAはMPUや通信などで成長

韓国はメモリで成長台湾はメモリからファウンドリへ

52%

36%

内訳韓国 27%

台湾 6%

中国 3%

7%

6%

2018年

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http://www.kochi-tech.ac.jp/library/ron/2007/g15/M/1105602.pdf

DRAMの国別/地域別シェア推移

・DRAMはもともとIntelが製品化。日本の半導体メーカがこぞってDRAM進出してシェア拡大

・米国のDRAMシェア低下したが、コスト重視したDRAMメーカ(Micron)出現でシェア20%維持

・1985年当時、日本メーカのDRAMシェアが80%に達した

・1985年以降、日本のDRAMは韓国のDRAMにコスト&戦略で負けて大幅シェアダウン

1985年頃を境にDRAMの市場が変化。品質重視からコスト重視へ。日本の半導体メーカ構造変化できず。

日本のDRAMは環境変化に対応できずに敗退へ

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アメリカ半導体は高付加価値品へ早々とシフト

図はhttp://www.capital-tribune.com/archives/385

・日本の半導体メーカはDRAMから、高付加価値半導体製品群や事業形態にシフトできなかった

・アメリカは、高付加価値製品(マイクロプロセッサ、通信用LSI、FPGA,アナログ半導体など)への移行

そして事業形態(設計中心のファブレス企業)の移行が行われた

初期開発

メモリ

多極化

MPU

軍需・大型コンピュータ電卓・オーディオ

パソコン

ビデオなどAV機器小型コンピュータ

携帯電話

自動車スマホ

成熟期━米国復活とアジア台頭発展期━日本主導シェア 黎明期━米国主導

米国

日本

米国は知価社会へ早々シフト

この図のシェアは、日米2国間の比8

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半導体需要は日本を除くアジアへシフト・2000年以降、半導体市場は先進国から、アジア中心の新興国へシフト。特に中国の伸びが著しい

1995年以降、先進国(欧米、日本)市場は横ばい

・市場が先進国から新興国へ移るに従い、

半導体の量は拡大するが価格下落が激しくなる

アジア市場拡大の意味

・アジア自体の消費市場拡大

・生産基地化(EMS)拡大

世界半導体出荷金額(3カ月移動平均)

出所:SIA(米国半導体工業会)より楽天証券作成

単位:1,000ドル

中国

アジア太平洋その他

日本EU

アメリカ

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汎用半導体の価格変動は激しい

・汎用品であるメモリ(DRAM,NAND)の価格変動は激しい

・DRAM(4Gb)は2018年秋の4.2㌦から2020年春には2.3㌦まで下落

・NAND(128Gb)は2017年5.3㌦をピークに2019年8月には2㌦まで下落

・劇的な価格競争に勝つには、コスト競争力

量産規模とスピーディな決断(大規模投資)が不可欠

出所:日経産業新聞主要相場欄より楽天証券作成

NAND価格推移単価(㌦)

2017 2018 2019 2020 5月

128Gb高値

128Gb安値

64Gb安値

64Gb高値

DRAM価格推移単価(㌦)

4Gb高値

4Gb安値

4月20202019201820172016201514

スポット取引ト価格 スポット取引ト価格

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日本の半導体企業の再編・日本の半導体は戦略なしに統合、再編を繰り返してきた。

・現状日本の半導体でビジネス成功しているのは、NANDフラッシュメモリの東芝、

イメージセンサ事業に集中したSONYそして三菱電機や富士電機などのパワー半導体

SONY

SOCイメージセンサ

パナソニックMicronが買収

イメージセンサ集中

撤退縮小

設計統合

大幅リストラ産業革新機構が筆頭株主へ

東芝+サンディスク連合でSamsung対抗2017年東芝メモリへ分社2019年キオクシアへ2020年東芝はキオクシア株売却 電機半導体大崩壊の教訓 湯野上隆著 日本文芸社に追記

日亜化学

白色LED

高いシェア確保

ソシオネクスト

ローム

富士電機

パワー

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装置産業化した事業、製品は中国へシフト

成熟し装置産業化した技術、製品は

欧米>>日本>>台湾、韓国>>中国へシフトする

液晶パネルはすでに中国シェアがNo1.次に狙うは半導体

日経2018.9.5 12

コモディティ化し、

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■歴史的に、コモディティ化した製品や事業は、欧米から日本へ、そしてアジアへシフトする

■米国はコモディティ製品から早々と脱皮し、「情報化社会」という新しい仕組みを作り上げた。

情報化社会は、ハードとソフトを融合したコンセプトが重要。(Apple.Google,Amazonなど)

■アジア勢の躍進や超円高以外にも、日本企業のマネジメントのまずさも一因。

1)過去の成功体験にしばられる

2)経営のグローバル戦略欠如

3)日本人のハングリーさの欠如

4)真のグローバルリーダー人材の欠如

5)日本の強みを忘れ、欧米の経営システムを表面的、安易に取り入れ失敗。

・成果主義(目に見える目先の結果で個人を評価)

・MBA(経営学修士)信仰と数値経営重視(いかに短期で効率的に儲けるか)

・株主第一の目先利益優先(長期視点での企業経営が疎かに)

・安易なリストラ.

コモディティ化:ある製品カテゴリー中の製品において、製造メーカーや販社ごとの機能、品質などの差や違いが不明瞭化したり、あるいは均質化すること。すなわち市場に流通している商品がメーカーごとの個性を失い、消費者にとってはどこのメーカーの品を購入しても大差ない状態となる。

日本のエレクトロニクス/半導体敗退原因

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本日の内容

1)日本エレクトロニクス&半導体業界を振り返る

・様々なエレクトロニクス製品、半導体のシェアと歴史的推移

・装置産業化した技術/製品のアジアシフト

2)日本の強味とは何か?

・ライフサイクルに見る日本の強みと弱み

・ライフサイクルに見るサムスンの勝因

・スマイルカーブに見る日本の強み

・擦り合わせ技術と組み合わせ技術

・半導体分野における日本の強みは素材と製造装置

3)様々なエレクトロニクス関連の「波」に見る歴史と今後

・コンドラチェフの波、ハイプサイクルなど

・Web1.0からWeb3.0へ

・先端USA企業Apple,Googe,Amazonは「AI+IoT」がキーワード

まとめ

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ライフサイクル

元図:アクセンチュア資料 2013年

・全ての製品、事業および企業にはライフサイクルがある

・ライフサイクルは勃興期、成長期、習熟期、減衰期を経て1世代の波が終了し、新たな波に移行する

・エレクトロニクス分野において、アナログ時代のライフサイクルは3年~5年と長く日本人に合っていた

・デジタル時代の波は1年以下と極めて短く、日本人のスピード感にあってない

時間軸

従来型(ロジャース理論)成長曲線

ビッグバン型成長曲線

アナログ時代。スピード感が日本人にあっていた

デジタル時代。変化激しすぎ日本人が苦手

イノベータ(革新者)2.5%

アーリーアダプター(初期導入者)13.5%

ラガード(導入遅延者)

16%

レイトマジョリティ(後期多数導入者)

34%

アーリーマジョリティ(初期多数導入者)

34%

Samsungはこの時点で、リバースエンジニアリング戦略を駆使して参入

15

日本の強みを考える

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デジタル時代のものつくり:スピーディな開発から生産

デジタル時代、ライフサイクルはピーク鋭く短くなっている。デジタル時代は、急峻なピークの連打が必要

Samsungはこの急峻なピークにスピディーさで対応できる仕組み構築

危機の経営:畑村洋太郎+吉川良三著 講談社

日本のやり方アナログものづくり

デジタルものづくりSamsungのやり方

Samsungではこれらをコンカレント(同時並行)に行うことができる仕組み(システム)を構築

韓国Samsungがなぜ強かったのか、

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Samsungの戦略:リバースエンジニアリング

ニッポンを圧勝したサムスンのグローバル戦略 吉川良三氏 富士通PLM実践フォーラム2008

日本製品(昔SONYなど)や最近ではApple製品を徹底分析

iPhoneGalaxy プラスαの性能

・有機ELディスプレー・高速プロセッサ

先進国向け

BRICS向け性能落とした

低価格版

Samsungは、日本(最近はApple)が製品を発表されると直ちに徹底調査(設計思想、機能、構造、

使用部品、コスト)。先人が苦労して開発製品化したものが彼らの出発点であり極めて効率的。

要素機能に分析・分解した後に、地域に密着した製品開発に基づき機能わけして行くのが

Samsung流の「リバースエンジニアリング型設計」

17

このSamsung

成功戦略も限界に

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スマイルカーブ

スマイルカーブ:物づくりのどこに付加価値があるか

・製品の組み立ては利幅小さく付加価値低い(製造はアジアへシフト)

川上(製品の企画)と川下(アフターサービス)に行くほど付加価値が高まる

・新スマイルカーブでの価値はさらに上流へ。素材やコンテンツも付加価値高い

・Appleは付加価値の高い「川上」と「川下」を自社で抑え、組み立てはアジア活用

利幅小

利幅大 利

幅大

業務プロセス

販売

組み立て

アフターサービス

モジュール部品の生産

キーデバイスの生産

製品の企画・開発

付加価値

物つくりでのスマイルカーブ

素材

部品

セット

流通・ソフト・

サービス

コンテンツ

新スマイルカーブ

流通

ソフト

サービス

セット(

製品

組み立て)

部品

収益性

(付加価値)

従来のスマイルカーブ

18

日本の強みを活かすには?

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EV時代になると、

車も“組み合わせ技術”

製品となると言われる

日本の製造業強みは“擦り合わせ技術”製品

乗用車

走行安定性

燃費

乗り心地

ボディ

エンジン

サスペンション

製品機能 製品構造

インテグラル(擦り合わせ)アーキテクチャ

製品アーキテクチャの

基本パターン

東京大学 藤本先生提唱

計算

印刷

投影

PC

PCシステム

プリンタ

製品機能 製品構造

モジュラー(組み合わせ)アーキテクチャ

プロジェクタ

自動車乗用車 トラック

パソコンノート デスクトップ

60年代

カラーテレビデジタル

携帯

90年後半

DVDVCR

カメラ デジタル銀鉛

オートバイ日本製 中国製

鉄鋼

自動車用薄板 建築用

日本

中国

インテグラル型

モジュラー型

製品アーキテクチャの分布

単純に外部から部品やモジュール購入してきてもうまく動作しなかったり、十分な性能が出せない。最適化のために各要素の擦り合わせが必要。

各部品やモジュールの外部仕様が規格などで決まっている。どこからでも規格にあった部品やモジュールを購入してきて繋げれば、動作する。

19

擦り合わせ技術 vs 組み合わせ技術モジュラー型インテグラル型

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デジタルテレビを開発するのに技術不要

写真日経ビジネス2009.5.18

デジタルテレビを開発するには高度技術は不要

・日本の半導体メーカは、自社LSIを単体で売ろうとしてきた

・台湾半導体メーカは、自社LSIと周辺回路を含めて基板化(レファレンスボード化)し、制御ソフト

含めて、中国セットメーカに売り込んだ。中国セットメーカは、この基板をそのまま使用。

復調LSI

半導体メーカが提供する信号処理基板

液晶テレビで重要な機能は2つのLSIに納められている。

画像処理LSI

汎用電源ユニット

バックライト照明インバータ基板(現在はLED照明なのでインバータ不要)

「組み合わせ技術製品」であるデジタル製品に日本の強みは活きない

20

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スマホ作るのも高度技術不要に

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20121204/254370/

・2G時代にMediaTekが中国携帯企業にレファレンスボード(ソフト含む)を提供する戦略を展開

・Qualcommは、3G世代でQRD (Qualcomm Reference Design)として同様な戦略を展開

・QRD入手で60日で製品投入の例もあり。既に40社100機種以上が市場に投入(2012年12月記事)

QRDでQualcomm社が提供するもの :

①回路図、部品表、推奨サプライヤ ②ベースバンドおよびAndroidアプリケーションソフト

③無線機能テストや製造用ROM、ソフト開発キット ④認証関連

Qualcommスマホ用レファレンスデザイン提供

21

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中国製スマホGT900:GalaxyS5そっくり品

・GalaxyS5が599ドルであるのに対し、GT900は170ドルと約1/3の価格

・使用するプロセッサや通信用LSIなどほとんどのLSIが台湾MediaTek製

MediaTekは、スマホでもレファレンスボード化して中国メーカに提供

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140717/365836/?ST=d-ce&P=4

MediaTek製オクタコアプロセッサ

NANDフラッシュGalaxyS5 GT900

外観はGalaxyS5そっくり、内部構造作りも似ている

外観はiPhoneやGalaxyをデッドコピーし内部は、台湾半導体メーカから提供されるレファレンスボード(設計)を、そのまま使用。製造は中国のEMS(製造受託会社)利用

台湾半導体メーカMediaTekが提供レファレンスボードを活用する

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23

Huaweiはハイエンドスマホ技術も手中に

・2019年3月末に発表された「HUAWEI P30 Pro」は最先端技術を満載

・ハードウェア性能は、SamsungやAppleのハイエンド品に劣らない

・キー半導体(プロセッサおよび5G通信チップなど)はグループのHisiliconによる自社開発

・Hisiliconはファブレス企業。製造は台湾TSMCの最先端プロセス活用

・米中摩擦影響でTSMC活用がNGに。またAndroidアプリ利用もNGとなり海外展開が困難に

https://jp.ifixit.com/Guide/Huawei+P30+Pro%E3%81%AE%E5%88%86%E8%A7%A3/122028

Huawei P30 Pro

中国ハイテク分野での技術力向上が著しい

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・現在でも日本企業は部品や素材に強み。特に素材は強い

・半導体製造材料、液晶テレビ材料および部品製造素材は日本がまだ強い分野

・先端素材や超小型部品は、高度「擦り合わせ技術」製品

擦り合わせ技術製品は、長年の技術の蓄積が不可欠でアジア勢には難しい分野

東洋経済2009.11.7

日本の強みは「川上」分野の素材

2017年7%24

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25https://media.rakuten-sec.net/articles/-/26102 https://limo.media/articles/-/14077

信越化学32%

SUMCO

25%

Global Wafers

17%

SiltronicAG

13%

SK Siltron

12%

2019年半導体用シリコンウェハシェア300mm wafer

韓国

韓国

ドイツ

日本

半導体材料や製造装置では日本のシェアが高い

・日本企業によるシリコンウェハの世界シェアは57%(信越化学とSUMCO)

・フォトレジスト材は日本企業が寡占(JSRと東京応化2社だけで51%シェア)

・製造装置では東京エレクトロン、SCREEN、ディスコなどが高い世界シェアを有する

これらは高度な擦り合わせ技術製品分野

2019年半導体フォトレジストシェア

世界市場:1521億円

JSR

27%

東京応化24%

信越化学17%

住友化学14%

富士フィルム10%

その他8%

日本

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有機ELパネル材料や装置でも日本製が高シェア

日経2017.8.16

液晶パネルや有機ELパネル

製造は、韓国や中国にシフト。

現在Samsunが高シェア有する。

しかし、これらの製造装置や

材料などは日本企業が圧倒的

なシェアを有する。

26

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27https://limo.media/articles/-/16568

2019年半導体製造装置売り上げランキング

順位 国 企業名 売上高(Mドル) シェア(%) 主な製品

1 米国 Applied Materials 13468.2 21% プロセス装置全般

2 オランダ ASML 12769.6 20% 露光装置

3 日本 東京エレクトロン 9551.5 15% プロセス装置全般

4 米国 Lam Research 9549.4 15% プロセス(エッチング)

5 米国 KLA-Tencor 4665.4 7% 検査装置

6 日本 アドバンテスト 2469.6 4% ATE試験装置

7 日本 SCREEN 2200.2 3% プロセス(洗浄装置)

8 米国 Teradyne 1553.0 2% ATE試験装置

9 日本 日立ハイテク 1532.6 2% プロセス、検査(SEM)

10 オランダ ASM International 1260.9 2% プロセス(成膜装置)

11 日本 ニコン 1200.3 2% 露光装置

12 日本 KOKUSAI ELECTRIC 1137.3 2% プロセス(成膜装置)

13 日本 ダイフク 1107.2 2% クリーンルーム

14 中国 ASM Pacific Technology 893.6 1% プロセス装置全般

15 日本 キヤノン 692.2 1% 露光装置、プロセス

・半導体製造装置は日米欧が高いシェアを有する。中国は半導体製造装置国産化にも注力中。

・2019年現在、日本はtop15社中に8社を占める

・ただし露光装置ではニコンやキャノンが過去高いシェア有していたが先端露光装置でASMLに完敗

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iPhoneの製造は中国、先端電子部品は日本製多い先端超小型電子部品には高度な「すり合わせ技術」が必要

・iPhoneはアメリカで開発設計されているが、製造は中国の電子機器製造受託会社(EMS)を活用

・EMSでの主な製造設備(製造用ロボット)は、ファナックなど日本製が多い

A13プロセッサ+DRAM(4G)

PoP実装

PMIC

Audi

o

Code

c

U1チップ

RF

PARF

PAPMIC

NAND

(64G~512G)

WiFi+

Bluetoot

h Mode

mトランシーバ

RF

PA

PMIC

RFRF SIM

基板間の信号接続

https://jp.ifixit.com/Guide/iPhone+11+Pro+Max+%E3%81%AE

%E5%88%86%E8%A7%A3/126000

・iPhone6S使用日本製半導体は、カメラ用

CMOSイメージセンサ(SONY)、

NAND(東芝)程度

・超小型コンデンサやコネクタ、水晶発振器、

RFフィルタなどは日本製が多い

(村田製作所、TDK,太陽誘電など)

iPhone11 Pro Max基板

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なぜSONYはCMOSイメージセンサで高シェア持つのか

ハイエンドCMOSイメージセンサは高度なアナログ的「すり合わせ」製品だから

ハイエンド品は、装置入手しても容易に真似できない分野。

Apple iPhone、Samsung Galaxyはじめ中国製ハイエンド

スマホにはSONY製イメージセンサが不可欠

https://www.shmj.or.jp/museum2010/exhibi1004.html

イメージセンサ

DRAM

3μm厚

TSV

結合

TSV

結合

3層積層型CMOS

イメージセンサーCMOSイメージセンサ世界シェア

2019年

SONY

55.2%

Samsung

17.3%

OmniVision

10.3%

ONSemi.

4.3%

その他10.2%

STM 2.6%

もとデータHIS Markit

金額ベース

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日本のエレクトロニクス産業はB2CからB2Bへシフト

B2C: Business to Consumer

企業対消費者間取引

B2B:Business to Business

企業間取引

成熟した産業や技術(特にB2C

製品)は歴史的にもアジアへシフトする。先進国は新たな分野やB2B分野へシフトするのは当然な流れ。

2018年度の各社事業構成

車載、電池、電子部品など

白物家電、テレビなど

照明、住宅関連

IT関連

日経業界地図2020年版

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ハーバード(HBS)が見る日本の強み

ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか 佐藤智恵 著 日経プレミアム

経済複雑性ECIランキング

順位 国 ECI指数

1 日本 2.43

2 スイス 2.17

3 韓国 2.11

4 ドイツ 2.09

5 シンガポール 1.85

6 オーストリア 1.81

7 チェコ 1.80

8 スエーデン 1.70

9 ハンガリー 1.66

10 スロベニア 1.62

11 アメリカ 1.55

ハーバードビジネススクール(HBS)では日本関連講座が人気

様々な日本企業のケーススタディが取り上げられている。

トヨタ、復活SONY、Honda Jet,コマツ、ディスコ、テッセイ、亀田製菓、AKB48 etc

日本は自国の「弱み」や「課題」ばかり気にして悲観的になりすぎ。強みの理解が必要と指摘

ハーバード見る日本企業の強み、注目点

・長寿企業が多い、長寿企業は企業最大の財産を「人」とする

・長期的視点による経営。短期利益最適化より長期企業存続を優先

・欧米とは違い、歴史ある大企業でイノベーションうまれている。

海外では企業の新陳代謝によりイノベーションがうまれる

・日本の製造業は今でも強い

・経済力指標として、最近では経済複雑性指数(ECI)が注目

ECIでは各国社会が「どれだけ知識が集約されているか」を数値化。

輸出品を俯瞰し、品目の多様性、遍在性、製造可能国数などから分析

・この経済複雑性指数(ECI)にて日本がtopでアメリカは11位

2018年

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32ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか 佐藤智恵 著 日経プレミアムhttps://atlas.cid.harvard.edu/explore?country=114&product=undefined&year=2018&productClass=HS&target=Product&partner=undefined&startYear=undefined

日本の輸出に見る経済複雑性 2018年

集積回路3.34%

機械関連

車関連

エレクトロニクス関連(半導体、電子部品など)

化学関連

金属関連貴金属

繊維

情報通信

金融

輸送

紙、食品

・日本の業種別輸出比率を見ると、輸出品目の幅が広く経済複雑性がよくわかる

・輸入資源に高付加価値をつけ、高度素材や製品にして世界に輸出。

「日本の製造業の強さ」がでている

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本日の内容

1)日本エレクトロニクス&半導体業界を振り返る

・様々なエレクトロニクス製品、半導体のシェアと歴史的推移

・装置産業化した技術/製品のアジアシフト

2)日本の強味とは何か?

・ライフサイクルに見る日本の強みと弱み

・ライフサイクルに見るサムスンの勝因

・スマイルカーブに見る日本の強み

・擦り合わせ技術と組み合わせ技術

・半導体分野における日本の強みは素材と製造装置

3)様々なエレクトロニクス関連の「波」に見る歴史と今後

・コンドラチェフの波、ハイプサイクルなど

・Web1.0からWeb3.0へ

・先端USA企業Apple,Googe,Amazonは「AI+IoT」がキーワード

まとめ

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第一の波

第二の波

第三の波

第四の波

第五の波

第六の波コンドラチェフの波とは、約50年を周期とする長期景気変動の波。1925年に出された説。これまでに5波があったとする。各波では景気を牽引するイノベーションがあった。現在は「第6の波」にあると。

持続可能性大幅省資源基本設計の見直しバイオミミクリーグリーン化学工業エコロジー再生可能エネルギーグリーン・ナノテク

コンピュータネットワークソフトウェア情報産業

石油化学電子航空宇宙

電気化学内燃機関

蒸気機関鉄道、製鉄綿鉄、水力、

機械繊維産業、商業

http://www.jetiserv.com/myBloggie/index.php?mode=viewmonth&month_no=09&year=2011

長期景気変動の波とイノベーションの波:コンドラチェフの波

日本の強みを時代の流れに活かす

34

様々な波(wave)

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技術分野のライフサイクル:S字カーブ

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140627/361500/?ST=observer&P=2 35

2000年代はITソフト~サービスの時代

今後は脳科学サービス(例えばAI人工知能)の時代

2014年資料

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日本の今後狙うべき産業分野

日経BP電子ニュース2009.3.2

民生

携帯電話

パソコン

メインフレーム

ネット接続パソコン

QOL

半導体業界にはいくつかのブームがあった。最近のブームは民生機器が牽引(2007年ピーク)

このブームは既に終わりをつげ新しいブームが始まっている。

次の牽引役は生活の質を高める電子機器(Quality of Life)

--環境、エネルギー、電気自動車/ハイブリッド車、医療/ヘルスケア、セキュリティ関連など--

QoL:

・環境

・エネルギー

・医療(およびヘルスケア)

・ライフサイエンス

例えばパナソニックは、家電メーカから環境、エネルギー、医療にシフトしている。東芝、日立も同様。

欧米のGEやフィリップスは、既に上記に事業シフト

36

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世界半導体市場の変遷

・2019年の世界半導体市場は4123億ドル(約45兆円) 前年比12%減

・世界の半導体市場は1960年~1995年までの35年間、年率約+17%の高成長

1995~2010年は年率約+5%、 2010~2015年は年率約+2.4%、2017~2018年は大きく成長

・牽引する市場は時代とともに変化。

市場額データはSIA,WSTSデータ

CAGR:年平均成長率

2015201020052000199519901985198019751970196519601955

1兆

1000億

100億

10億

1億

市場(ドル)

1960-1995CAGR:17%

1995-2010CAGR:5%

1995年1,440億

1960年6.5億ドル

世界の半導体市場と市場を牽引する機器の変化

2010年2,983億

軍用

産業用コンピュータ

アナログ民生機器

パソコン

デジタル家電、携帯電話

自動車、環境、医療、ロボット

2010-2015CAGR:2.4%

2019年4,123億ドル

AI/IoT

2019

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デジタル社会はWeb1.0>>Web2.0>>Web3.0と進化してきた

Web3.0時代は、クラウドがAIと一体化、個人に紐づいたデータが爆発する世界

・デバイスについてはスマホの次が情報を直接目に届けるVRとAR(拡張現実)、MR(複合現実)の流れ

・IoT(Internet of Things)はソーシャルで得られたデータをさらに加速度的に爆発、

そしてクラウドは大量のデータを処理するだけでない、高度な解析を付加した「クラウドAI」になる

デジタル社会はWeb 3.0へ

http://thebridge.jp/2017/05/web30-hironao-kunimitsu-the-first-part

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クラウド(雲)

クラウドコンピューティング

クラウドコンピューティングと言う言葉は2006年8月に会議でグーグルのCEOでエリック・シュミットが言及

電波新聞 2010.1.12

クラウドコンピューティングとは、ネットワーク上に存在するサーバが提供するサービスを

それらサーバ群を意識することなく利用できるコンピューティング形態を表す。

ネットワークを図示するのに雲状の絵を使うことが多いことから来た表現。

雲の中にはハードウェアやソフトウェアの実体があるが、

その中身は見えない(気にしなくてよい)というイメージ

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“ネット上の不特定多数の人々(や企業)を、受動的なサービスの享受者ではなく、能動的な表現者と認めて積極的に巻き込んでいくための技術やサービスの開発姿勢“

不特定多数の人々には、サービスのユーザもいれば、サービスの開発者も含まれる。

2005年頃から話題

階層

対象属性

Web2.0:クラウド活用し集中から分散へ

週刊東洋経済

GoogleやAmazonが牽引

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IoT:Internet of Things

・IoTは、従来おもにパソコンやサーバ、プリンタ等のIT関連機器が接続されていた

インターネットに、それ以外の“人”を含む様々な“モノ”を接続する技術

・各種センサ、RFIDや無線LANなどによりインターネットに接続し、識別したり、位置を

特定したり、状態を監視したり、コントロール可能とするビジョン

・「2020年には530億個のモノがインターネットに繋がる」と予測

図http://tocos-wireless.com/jp/tech/Internet_of_Things.html

Blu

eto

oth

Sm

art

ノートPC

デスクトップPC

サーバ

スマホ

タブレット

プリンタ

インターネットに繋がるモノの数

データ日経2016.7.26(もとデータはHIS)

IoT:Internet of Things

Key WordはIoT+AI

41

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IoTは、フィジカル空間とサイバー空間を繋ぐ

図 日経ビジネス2016.4.25

IoTは、実空間(フィジカル空間)とデジタル空間(サイバー空間)を,

4つの工程--センシング、デジタル化、ビッグデータ解析、フィードバック--で繋ぐ

「モノ」の状態をモニター、センス

実空間 デジタル空間

モノ

IoT端末 IoT端末

(無線)

データを端末側でデジタル化し、無線でデータ転送

クラウドでAI(人工知能)ビーグデータ解析ディープラーニング

クラウドで解析したデータを端末に送信し、アクチェータでモノにフィードバック

フィジカル空間

デジタル空間

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1社では無理。連携が必要。

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パソコン、携帯電話、スマホ、タブレット、テレビ、また放送と通信の間にも垣根が無くなった。

今後は異分野の技術融合が新しい事業や製品を生み出す時代 「事業の再編成」

電機・半導体大崩壊の教訓湯之上隆著 日本文芸社

テレビ

IoT様々な“モノ”

IoT時代、既存事業/製品の破壊と再編成が

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Appleはi-Cloudをベースとしたプラットフォーム企業

i-Cloud

アプリ開発

金融業界銀行,クレジット会社など

IT企業Google,

IBM,MSなど

プロバイダ携帯キャリア

小売業ネット&リアル

店舗

書籍

音楽、映像

放送局

有線LAN (光、CATV)4G/LTE

Apple Store

iTune

個人端末

i-ビーコン端末

TV周辺機器スピーカなど

NFC端末Suica対応

各種センサ加速度、温度他

ウェラブル端末

NFC

BLE

BLE BT:Bluetooth

HDMI

地デジ/

BS/CS

BLE:Bluetooth Low Energy

Apple TV

Apple Watch

データセンター

コンテンツ

位置情報発信

カード支払

Apple Pay iBook

s

iPhone

iPad MAC

様々な個人データがiCloudに集約されていく iMusic

自動車?

次の狙いは、病院

デジタルヘルス?

B2B強化

Home Pod 図 T.Nakatani

ioT+AIの先駆者

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GoogleのIoT+AI戦略

・Googleの稼ぎは検索連動広告収入。無料各種サービスはこのためのtoolにすぎない

・Googleの次なる戦略はIoT+AI(人工知能)

これまではユーザが主体的に各種情報や関連広告にアクセスするプル型

これからは、ユーザの置かれた状況により、必要な情報や関連広告を提示するプッシュ型

このためにはIoTによるセンシングと人工知能によるビッグデータ解析が重要

図 T.Nakatani

巨大サーバ群企業広告主

Google提供サービス&プラットフォーム群

スマホ/

タブレット企業

PCウェラブル端末

タブレット/

スマホ

アプリ開発企業

個人端末

AdWords

AdSense

自動車

IoT端末Google

TV

コンテンツ開発企業

自動運転

Android,Chrome,YouTube

Search,Gmail,Gmap,

Google Play,Google Drive ほか

Google

With

Nest

広告

Google Glass

次世代研究開発Google X

Google

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Amazon:先端 IoT+AIをフル活用

・オンラインショッピングをコアコンピタンスに「顧客最優先」をプラットフォーム上に構築

・オンラインショッピングの強み(ロングテール戦略)を更に強化しつつ、弱みを克服する

新規サービスを次々に開発し提供(多大な投資の継続)

データセンタ

物流センタ企業/個人

Amazon

宅配業者

商品(新品&中古)

リアル店舗コンビニ

Amazon提供サービス群(プラットフォーム)

金融カード会社/銀行

電子コンテンツ

書籍、音楽、映像など

・オンラインショッピングサービス・ウェブサービス(Amazon Web Service)

・電子書籍サービス・クラウドソーシングマーケットプレイス・在庫管理/出荷代行サービス・ロボット物流システム ドローン/

無人ヘリコプターサービス

配達検討中

図 T.Nakatani

豊富な品揃え

当日/翌日配達

商品受け取り

PC 電子書籍リーダ

タブレット スマホ

顧客

Kindle PaperKindle Fire

パーソナライゼーション顧客毎に最適な情報、サービスを提供

各種IoT端末

Amazon Dash

Amazon EchoFire Phone(撤退)

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AI(Deep Learning)プロセッサの自社開発が増加

Cerebras

Wafer Scale AIプロセッサ215 x 215 mm

16nmプロセス40万CPUコア

Preferred(日本)Deep Learningプロセッサ

MN-Core

32.2x23.5mm

TSMC 12nmプロセス500W

Google TPU

Deep Learning

プロセッサ

Apple Aシリーズ

独自AIエンジン搭載

TSMC 7nmプロセス

85億トランジスタ,

ダイサイズ98.48mm2

本格的AI時代に向けて、専用プロセッサが各社の独自性や差別化に必須条件となりつつある。

ACT(Arm,Cadence,TSMC)環境が専用プロセッサ開発を可能としている。

2020年以降MacプロセッサもIntelからApple Siliconへ

本格AI時代、キー技術は自社で

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先進テクノロジーのハイプサイクル2019年版Hype Cycle for Emerging Technologies

時間生産性の安定期

(安定期)啓蒙活動(回復期)

幻滅期(反動期)

黎明期 「過度な期待」のピーク期

(流行期) https://www.gartner.com/jp/newsroom/press-releases/pr-20190830

期待度

ハイプサイクルとは、話題や評判が先行する新技術が実際に普及するまでの間、

その期待度が時間経過とともに、どのように変化するかを示した図(調査会社Gartnerが提唱)

典型的なハイプサイクルには、「黎明期」「流行期」「反動期」「回復期」「安定期」の5段階がある

2019年版で期待度大きいもの

・5Gが期待のピーク

・AI/IoT関連の期待が強い

・完全自動運転(レベル5)

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まとめ

・歴史的に、成熟化し装置産業化した産業、製品は欧米から、日本、アジアへシフトする

・現在、大量生産B2Cデジタル製品は中国が製造拠点。今後は中国からインド、東南アジアへ

・日本の強みは「擦り合わせ技術製品」分野。日本は技術の長期蓄積が重要な分野に強み

・日本の半導体関連産業は、素材や製造装置分野で強い

・付加価値はスマイルカーブの「川上」と「川下」にあり。Appleは独自戦略でこの両端を抑えていて強い

・日本も各社の強みを活かした「川上戦略」と「川下戦略」を徹底追及すべき

・様々な「波」が繰り返し押し寄せてきている。この「波」には将来の重要な示唆がある。

・IoT時代は「集中から分散」へ、また小品種大量生産から多品種少量生産の時代へ

・IoT+AI時代本格化し、ますます既存のビジネス形態が破壊され、あらたなビジネス創出が期待

・IoT+AIを活用し、日本および自社の強みを活かした独自ビジネス戦略が重要

・本格的AI時代、製品差別化の武器となるキー半導体のカスタム化が進行

ご清聴ありがとうございます質問は下記まで

[email protected]