徳洲会グループの湘南鎌倉・八尾・湘南藤沢・野崎病院 ......令和2...

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12 21 21 10 55 86 10 17 10 16 - 6 SARS-Co V2 使使使- 19 新型コロナウイルスに関連する呼吸器感染症(COVID-19)を言う。初期症 状では鼻水やせき、発熱、軽いのどの痛み、筋肉痛や倦 けんたい 怠感などかぜのよ うな症状が生じる。とくに37.5℃程度の発熱と強いだるさを訴える人が多い。 嗅覚・味覚障害を起こすこともある。初期症状が5〜7日間で軽快せず、重 症化すると、肺炎を発症し、呼吸困難に陥ることがある。 中国からの報告では60歳以上は重症化や死亡のリスクが高く、とくに80 歳以上では21.9%の患者さんが亡くなった。基礎疾患がない患者さんで亡く なった方は1.4%である一方、基礎疾患がある場合は心・血管系疾患13.2%、 糖尿病9.2%、高血圧8.4%、慢性呼吸器疾患8.0%が亡くなった。がん患者 さんもリスクが高く、7.6%が亡くなったという報告もある。 感染経路は、せきやくしゃみによる飛 まつ 感染と、ウイルスが付着したもの に接触し、その手で口や鼻、目を触り感染する接触感染がある。潜伏期間 は最大14日程度と考えられ、無症状で経過する例もある。また無症状の人 から感染したケースもある。検査は遺伝子増幅法であるPCR(ポリメラーゼ 連鎖反応)検査などがある。 治療法に関しては、現状では有効な抗ウイルス薬などがなく、対症療法 を行う。また現時点で予防接種もない。感染予防については密閉空間で換 気が悪い「密閉」、近距離 での会話や発声を行う 「密接」、手の届く距離に 人がいる「密集」という濃 厚接触を起こす環境を避 け、マスクを付けるなど せきエチケットや手指衛 生を厳守する。 ウイルス (電子顕微鏡でないと見えない) 細菌の細胞(数㎛) ㎛は 1/1000mm ヒトの細胞 ヒトの細胞の核 (遺伝子が入っている) 1000nm(1㎛) 新型コロナウイルス感染症とは 新型コロナ対策 緊急総力特集 「アビガン」特定臨床研究に参画し有効性実証へ 徳洲会グループの湘南鎌倉・八尾・湘南藤沢・野崎病院 猛威を振るう“見えない敵”への治療法確立が急務 新型コロナウイルス感染症への効果が期待されるアビガン(画像提供:富士フ イルム) アビガンが作用するメカニズムのイメージ図 出典:富士フイルム広報資料 命だけは平等だ 令和 2 4 27 日 月曜日│No. 1233 427月曜日 発行:一般社団法人徳洲会 〒102-0074 東京都千代田区九段南1-3-1 東京堂千代田ビル14階 TEL:03-3262-3133 制作:一般社団法人徳洲会 広報部 〒102-0074 東京都千代田区九段南1-3-1 東京堂千代田ビル14階 TEL:03-3288-5580 FAX:03-3263-8125  Email:news@tokushukai.jp No. 1233 27/APR. 2020 TOKUSHUKAI MEDICAL GROUP NEWS ALL LIVING BEINGS ARE CREATED EQUAL

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Page 1: 徳洲会グループの湘南鎌倉・八尾・湘南藤沢・野崎病院 ......令和2 年4月27日 月曜日 No.1233 命だけは平等だ 4月27日 月曜日 発行:一般社団法人徳洲会

野崎病院独自の

臨床研究も実施

徳洲会グループでは、

観察研究にも協力する方

針。藤田医科大と国際医

療研究センターが、それ

ぞれ取り組んでいる研究

だ。観察研究とは、通常

診療として実施した治療

結果を集積した介入がと

もなわない後ろ向き研究

を言う。

観察研究ではアビガン

だけでなく、新型コロナ

ウイルスへの効果が期待

されている吸入ステロイ

ド薬のオルベスコ(一般

名:シクレソニド)や抗

HIV薬のカレトラ(ロ

ピナビル・リトナビル)

など幅広い薬剤を対象に、

投与した薬剤、投与後の

経過や臨床所見など情報

を集めるのが目的。対象

患者さんも軽症・無症状

に限らず、中等症、重症

も含む。登録期間は藤田

医科大が12月までで、国

際医療研究センターは21

年1月まで。複数の徳洲

会病院が観察研究に取り

組んでいる。

野崎病院は独自のプロ

トコルで臨床研究を実施。

新型コロナウイルスと同

じベータコロナウイルス

属の弱毒株(かぜの原因

となるウイルス)を保菌、

もしくは弱毒株の抗体価

が高い患者さんの場合に

は、新型コロナウイルス

感染症の重症化が抑制さ

れている可能性を検討す

る。症例の登録期間は21

年3月まで。重症化のリ

スクが高い人の予測など

への活用が期待される研

究だ。4月上旬に開いた

徳洲会グループ共同倫理

審査委員会で承認、研究

を開始した。

重度肝機能障害の患者さ

んなどは対象から除外。

さらに動物実験の結果か

らアビガンには副作用と

して催奇形性が認められ

ており、ヒトでも胎児奇

形や流産・死産を起こす

恐れがあることから、妊

婦または妊娠している可

能性がある患者さんは除

外される。

条件を満たした患者さ

んに10日間、1日2回経

口投与する。経口投与が

困難な患者さんの場合は

簡易懸濁法(約55℃の温

湯で薬を溶かし経鼻胃管

で投与する方法)を行う。

参加全施設で計86人分

のデータを集めることを

目標としており、ウイル

ス消失率など評価し有効

性を判断する。8月まで

を実施期間と定め、でき

るだけ早期に成果を還元

していく方針だ。

病院と八尾病院、10日に

湘南藤沢病院、17日に野

崎病院での実施を承認し

た。ほかに全国の大学病

院や公立病院なども加わ

っており、今後、徳洲会

グループでは4病院以外

の病院でも実施していく

可能性がある。

今回の臨床研究の対象

はPCR検査で新型コロ

ナウイルスの感染が確認

された無症状または軽症

患者さん。10日間投与し

アビガンの有効性と安全

性を検討する。

具体的には①16歳以上

の男女、②咽頭ぬぐい液

または鼻咽い

んとう頭ぬぐい液を

検体としてRT(逆転写)

-

PCRで陽性を確認、

③パフォーマンスステー

タス(PS=全身状態を

表す指標)が0(日常生

活を制限なく行える)ま

たは1(軽作業を行うこ

とはできる)、④6日間

の入院が可能――など条

件に合致した患者さんが

対象となる。

一方、PSが2(歩行

可能で自分の身の回りの

ことはすべて可能だが、

作業はできない)以上、

特定臨床研究として実施。

徳洲会グループ共同倫

理審査委員会の事務局な

どを担っている未来医療

研究センターの歌田直人

社長は「猛威を振るう新

型コロナウイルスに対す

る有効な治療法の確立が

急務であることから、4

月2日付で厚生労働省新

型コロナウイルス感染症

対策推進本部が、患者登

録を迅速に行い早期に試

験結果を得ることを促進

するために『新型コロナ

ウイルス感染症に対する

厚生労働科学研究班等へ

の協力依頼について』と

いう通達を発出しました」

と説明。

こうした動きに協力す

るために、徳洲会グルー

プは翌3日の執行理事会

で協議のうえ、湘南鎌倉

断で投与が可能。

遺伝子の複製に重要な

役割を果たしているRN

A(リボ核酸)ポリメラ

ーゼという酵素を選択的

に阻害することにより、

細胞内でのウイルス増殖

を抑えるのがアビガンの

特徴だ。新型コロナウイ

ルスも新型インフルエン

ザウイルスと同じRNA

ウイルスであることから

効果が期待されており、

実際に国内外で症状が改

善したという報告もある。

徳洲会4病院が参画し

た臨床研究は「SA

RS-Co V2

感染無症状・軽症患

者におけるウ

イルス量低減

効果の検討を

目的としたフ

ァビピラビル

の多施設非盲

検ランダム化

臨床試験」。

既存の医薬品

を適応外使用

し、介入をと

もなう研究で

あるため、臨

床研究法上の

アビガンは抗インフル

エンザウイルス薬として

2014年、富士フイル

ム富山化学が製造販売承

認を取得した錠剤タイプ

の医薬品。通常は国が備

蓄・管理し新型インフル

エンザの流行時にだけ、

国が指定した医療機関に

放出し医療現場で投与さ

れる薬だ。新型コロナウ

イルス感染症に対する投

与は適応外使用にあたる

が、治療目的で患者さん

の希望と適応外使用に関

する同意があり、医療機

関ごとの倫理審査委員会

で承認を得れば医師の判

世界各国で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(COVID-

19)。現在、有効性が

確立された治療薬やワクチンはないが、既存薬のなかで効果が期待されているものが複数ある。

抗インフルエンザウイルス薬である「アビガン」(一般名:ファビピラビル)が、その有力候補

のひとつだ。新薬開発は長い時間を要するが、既存薬に効果があることがわかれば、よりスピー

ディに治療法の確立につながる。徳洲会グループでは、藤田医科大学が中心となって3月に開

始したアビガンの有効性・安全性を検討する多施設共同の臨床研究(介入をともなう特定臨床

研究)に、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)、八尾徳洲会総合病院(大阪府)、湘南藤沢徳洲会病院(神

奈川県)、野崎徳洲会病院(大阪府)が参画。また徳洲会では、藤田医科大や国立国際医療研究

センターが実施する観察研究にも参画、野崎病院は独自のプロトコル(実施計画書)を用いた臨床研究にも取

り組む。

新型コロナウイルスに関連する呼吸器感染症(COVID-19)を言う。初期症状では鼻水やせき、発熱、軽いのどの痛み、筋肉痛や倦

けんたい

怠感などかぜのような症状が生じる。とくに37.5℃程度の発熱と強いだるさを訴える人が多い。嗅覚・味覚障害を起こすこともある。初期症状が5〜7日間で軽快せず、重症化すると、肺炎を発症し、呼吸困難に陥ることがある。中国からの報告では60歳以上は重症化や死亡のリスクが高く、とくに80

歳以上では21.9%の患者さんが亡くなった。基礎疾患がない患者さんで亡くなった方は1.4%である一方、基礎疾患がある場合は心・血管系疾患13.2%、糖尿病9.2%、高血圧8.4%、慢性呼吸器疾患8.0%が亡くなった。がん患者さんもリスクが高く、7.6%が亡くなったという報告もある。感染経路は、せきやくしゃみによる飛

沫まつ

感染と、ウイルスが付着したものに接触し、その手で口や鼻、目を触り感染する接触感染がある。潜伏期間は最大14日程度と考えられ、無症状で経過する例もある。また無症状の人から感染したケースもある。検査は遺伝子増幅法であるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査などがある。治療法に関しては、現状では有効な抗ウイルス薬などがなく、対症療法

を行う。また現時点で予防接種もない。感染予防については密閉空間で換気が悪い「密閉」、近距離での会話や発声を行う「密接」、手の届く距離に人がいる「密集」という濃厚接触を起こす環境を避け、マスクを付けるなどせきエチケットや手指衛生を厳守する。

ウイルス(電子顕微鏡でないと見えない)細菌の細胞(数㎛)㎛は1/1000mm

ヒトの細胞

ヒトの細胞の核(遺伝子が入っている)

1000nm(1㎛)

新型コロナウイルス感染症とは

観察研究も複数病院で推進

新型コロナ対策緊急総力特集

「アビガン」特定臨床研究に参画し有効性実証へ徳洲会グループの湘南鎌倉・八尾・湘南藤沢・野崎病院

猛威を振るう“見えない敵”への治療法確立が急務

新型コロナウイルス感染症への効果が期待されるアビガン(画像提供:富士フイルム)

アビガンが作用するメカニズムのイメージ図

出典:富士フイルム広報資料

徳 洲 新 聞徳 洲 新 聞 生い の ち

命だけは平等だ❶ 令和 2 年 4 月27日 月曜日 │ No.1233

4月27日 月 曜 日

発行:一般社団法人徳洲会  〒102-0074 東京都千代田区九段南1-3-1 東京堂千代田ビル14階

TEL:03-3262-3133制作:一般社団法人徳洲会 広報部 〒102-0074 東京都千代田区九段南1-3-1 東京堂千代田ビル14階 TEL:03-3288-5580 FAX:03-3263-8125  Email:[email protected]

No.123327/APR. 2020

TOKUSHUKAI MEDICAL GROUP NEWS

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BEINGS ARE CREATED EQUAL

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WEB会議は原則、毎

週月曜日に開催。感染管

理部会の執行部から部会

長の佐藤守彦・湘南鎌倉

総合病院(神奈川県)感

染対策室部長をはじめ看

護師、薬剤師ら計6人と、

事務局の一般社団法人徳

洲会(社徳)医療安全・

質管理部職員3人が参加。

「新型コロナウイルス感

染症の状況が日々変わる

なか、グループとして統

一の指針を示し対策を講

じるため、社徳の鈴木隆

夫理事長、福島安義・副

理事長(感染管理部会担

当理事)の指示の下、始

めました。迅速に対応す

るために、開催頻度を増

やし、かつ定期的に行う

こととしました」(阿部

真也・医療安全・質管理

部副主任)。

会議では、グループ内

の新型コロナウイルス対

応状況に関する最新情報

を共有し、対応事例や厚

生労働省、

国立感染症

研究所など

の指針をも

とに、グル

ープとして

の対策や方

針を協議。

決定した内容を福島・副

理事長名の通知として適

宜、現場に発している。

1月下旬以降、感染が

疑わしい患者さんの判断

基準の統一や対応、中国

から帰国した職員への対

応に始まり、マスク着用・

手指衛生など標準予防策

の周知徹底や新型コロナ

ウイルス対応を想定した

訓練の要請、不要不急の

会議・研修の中止、就業

制限や復職時期の判断基

準など、矢継ぎ早に通知

を発信。3月中旬にはマ

ニュアルも策定。時間の

経過とともに、より具体

的な対応方法を示した。

グループの各ブロックで

検査体制を整えることも

話し合った。

直近の会議では、職員

の復職基準の見直しにつ

いて協議。また、マニュ

アルの改訂を行っており、

近日中に発信する予定だ。

田辺准教授は「ライブ

講義も考えましたが、パ

ソコンを持っていなかっ

たり通信環境が整ってい

なかったりする学生もい

るので、まずは動画など

使用せずにできることを

考えました。集中的にひ

とりで勉強に取り組める

この機会を生かしてほし

いと思います」と話す。

荒賀学長は「大学に登

校できないのは残念です

が、前向きに、できるこ

とからしっかりとやって

いきます」と意欲的だ。

ー入門」は1日2時限(1

80分)で15回分、「基

礎ゼミナールⅠ」は1日

1時限(90分)で6回分

の講義を行う。各講義で

は、学生は専用のクラウ

ド(インターネットを通

じ必要時に使えるサービ

ス)に保存された資料を

見ながら教科書を読み、

最後に小テストなど実施。

全講義終了後、レポート

を提出して履修となる。

湘南鎌倉医療大学(神

奈川県)は4月23日、オ

ンライン講義をスタート

した。同大は新型コロナ

ウイルスの影響により、

4月4日に予定していた

1期生の入学式を中止、

授業開始時期を延期して

が入院しています。

その後、厚生労働省の要請も

あり、大型クルーズ船の乗務員

を、葉山ハートセンターの田中

江里院長が前号の「直言」に記

したように、10人受け入れまし

た。以後、感染者の増加と相ま

って、各地の自治体からの受け

入れ要請もあり、全国のグルー

プ病院の入院患者数が徐々に増

加しました。しかし、3月28日

までは累計38人でしたが、29日

以降、急速に増加。緊急事態宣

言が出た4月7日には累計10

4人となり、18日時点の入院数

は全国19施設で124人、入院

累計は219人に達しています。

この間、グループでは、PC

R検査が可能な病院を北海道、

北関東、南関東、大阪、九州、

沖縄の各ブロックに1カ所配置

し、ブロック内で検査できるよ

うにしました。目下、より短時

間で検査可能な別の機器を、こ

れらのブロック、さらには東北、

関西、離島などのブロックの病

院に導入、全ブロックで検査で

きる体制を築く予定です。

感染疑いの患者さんについて

は、できる限り保健所を通じた

検査に委ねますが、なかなか検

査してもらえないことも多々あ

り、また接触したグループ職員

に感染がないかどうかをいち早

く知るために導入しています。

素早い反応が院内感染を防ぎ、

また院内に感染を拡大させない

ために必要と考えるからです。

院内感染発生などに起因する

医療崩壊を防ぐための努力を

全国の有名な大病院で院内感

染が起きています。このウイル

新型コロナウイルス感染症患

者数の累計が、大型クルーズ船

の感染者を含め、4月18日に1

万人を超えました。7日に緊急

事態宣言が出され、不要・不急

の外出の自粛や、いわゆる3密

(密閉空間、密集場所、密接場面)

の回避が要請されてから、間も

なく2週間になります。この宣

言の効果の有無が明らかになる

のは、宣言から2週間経過以降

と言われていますので、本稿が

活字になる頃には、せめて発生

数がプラトー(水平状態)にな

っていてほしいと願っています。

未知の感染症に打ち勝つため

全ブロックで検査体制構築へ

国家による宣言が出された頃

から、私たち徳洲会グループの

病院でも、新型コロナウイルス

感染症患者さんの外来対応数や

入院数が急速に増加しています。

同時に院内感染や、市中感染と

思われる職員の感染など憂慮す

べき問題も出てきています。

グループ内の現状と今後につ

いて考えてみたいと思います。

私たちのグループで、最初に

新型コロナウイルス感染症に対

応したのは、1月27日、体調不

良を訴え、あるグループ病院の

ER(救急外来)を受診した患

者さんでした。疑似症として徳

洲会外の病院に転送、翌日のP

CR(ポリメラーゼ連鎖反応)

検査で陽性が確認されました。

入院例では2月14日、大型クル

ーズ船の乗客を受け入れたのが

初めてです。外国籍の方で、陰

圧個室をもつ神奈川県内の徳洲

会2病院で対応しました。17日

には沖縄県で初めての患者さん

スとの闘いは簡単ではありませ

ん。どのようにすれば、このよ

うな院内感染を防げるのか――。

さまざまな工夫が必要です。ひ

とつの方法として、新型コロナ

ウイルス感染者の病棟を院内で

はなく、独立したプレハブを建

てて運用する試みもグループ内

で始めています。なかなか防ぎ

得ない院内感染の例として、他

の疾患で入院されていた方が、

感染者であったという事例が発

生しています。また、前述した

とおり市中感染が疑われる職員

の感染例も見られます。

フランスの作家、アルベール・

カミュの『ペスト』が、最近よ

く読まれているようです。19

47年に発表された同書は、ア

ルジェリアのオランという港町

が、ペストの感染拡大阻止のた

めに封鎖され、外界から完全に

遮断された状態のなかで、医師

のリウーや友人のタルーたちの

姿をとおして、極限状況での人

間の尊厳とは何かを考えさせら

れる“不条理の哲学”と言われ

る作品です。あらためて今、こ

の小説が読まれているのは、現

在の日本の状況が、ペストほど

強烈ではないにしろ、何か似通

った状態だからかもしれません。

私たちは医療者の集団です。

新型コロナウイルス感染症とい

う、まだよくわかっていない感

染症に対し、恐れを抱きながら

も、感染防御の方法を守り、『ペ

スト』の主人公たちのように、

この病にかかられた方々に対し、

誠実に自分たちの職務を遂行し

ていくことが大切だと思ってや

みません。

皆で頑張りましょう。

新型コロナウイルスは徳洲会グループの医療ツーリズム事業にも影響している。本格的に乗り出した2012年以降、堅調に実績を伸ばしていたが、新型コロナウイルスの感染拡大にともない現在は全面ストップ。こうしたなか、グループ病院で国際医療支援室など医療ツー

リズムに関連する部署の職員は、在留外国人患者さんへの対応や、他部署のサポート業務に従事している。一般社団法人徳洲会国際部の渡部昌樹課長は「病院によって異なりますが、日本で暮らす外国の方が受診されるので、従来の業務を引き続き行ったり、院内の感染管理や他の事務職のサポートなど、ふだんとは異なる仕事を行ったりしています」と説明。「今も『徳洲会で健診を受けたい』という声はありますし、これまで医療ツーリズムの患者さんを紹介いただいているエージェントから、マスクや防護服の寄贈を多くいただいています。各国関係者との良い関係づくりを心がけ、事業が再開できた時には速やかにニーズに応えたいです」と準備に余念がない。

新型コロナ対策緊急総力特集

医療ツーリズム全面ストップ在留外国人や他部署をサポート

徳洲会グループ感染管理部会は執行部メンバーによ

るWEB会議を週1回開き、新型コロナウイルス感

染症に対するグループの方針を協議、状況に応じた

対応方法を矢継ぎ早に徳洲会病院・介護施設などに

発信している。

WEB会議で方針発信

徳洲会感染

管理部会

毎週開き変化に対応

いた。オンライン講

義は「授業開始まで

の間にできること

を」と荒賀直子学長

が発案、通常であれ

ば1年生の前期に履

修する「情報リテラ

シー入門」と「基礎

ゼミナールⅠ」を、

23日から5月4日ま

で(土日を除く8日

間)の集中講義に変

更した。

両講義とも田辺直

行准教授が担当。期

間中「情報リテラシ 「集中的にひとりで勉強

に取り組める」と田辺准教授

新型コロナウイルス感染症患者さんのために

恐れを抱きながらも感染防御法を守り医療者の集団として誠実に職務遂行を

まず「できることから」

オンライン講義開始

湘南鎌倉医療大学

福ふ く し ま

島 安や す よ し

義一般社団法人徳洲会副理事長

徳 洲 新 聞生い の ち

命だけは平等だ 令和 2 年 4 月27日 月曜日 │ No.1233 ❷

Page 3: 徳洲会グループの湘南鎌倉・八尾・湘南藤沢・野崎病院 ......令和2 年4月27日 月曜日 No.1233 命だけは平等だ 4月27日 月曜日 発行:一般社団法人徳洲会

湘南鎌倉

病院が敷地

内に設けた

臨時の受け

入れベッド

は31床。陽

性患者さん

のための個

ンを構え、日中は医師1

人と看護師4人、夜間は

医師1人と看護師3人が

常駐。看護師はいずれも

同院の感染管理認定看護

師の教育を受けている。

4月22日夕方に最終的な

準備を整え、翌23日に診

療を開始した。

当初は独自の取り組み

を考えていたが、神奈川

県が同院の敷地に隣接す

る湘南ヘルスイノベーシ

ョンパークに仮設病床を

新設する構想が浮上。県

と協議を重ねた結果、同

仮設病床の設計・建築と

運用を湘南鎌倉病院が県

から受託し、180床で

5月から段階的に稼働す

ることとなった。同院の

31床も含まれているため、

臨時の受け入れベッドは

6月頃に同仮設病床に移

行する。

「新型コロナ感染症患者

さんへの対応を物理的に

分けることで、院内感染

の発生リスクを低減でき

ます。同感染症以外の患

者さんも安心して当院を

受診していただける環境

が整いました」(芦原教

之事務長)

同院以外にも、徳洲会

グループでは千葉西総合

病院と宇治徳洲会病院

(京都府)が現在、プレ

ハブの臨時受け入れベッ

ドの設置を検討している

という。

また、野崎徳洲会病院

(大阪府)は増床を見越

して確保していた病棟ス

ペースを生かし、新型コ

ロナウイルス感染症患者

さんに対応。今まで倉庫

として活用していたが、

府や地域の保健所の要請

を受け感染隔離病棟とし

て開棟した。病床数は個

室(6床)と4人部屋

(32床)の計38床。看護

師8人を配置し、中川秀

光院長をはじめ各診療科

の医師がローテーション

で診療にあたっている。

同病棟に通じる非常階

段の使用禁止や二重扉の

設置、清潔・不潔ゾーン

の区分け、一般患者さん

と異なる動線計画、同病

棟看護師に対する週1回

のPCR(ポリメラーゼ

連鎖反応)検査など、院

内感染の予防を徹底。木

下美智子・看護部長は「新

型コロナウイルス感染症

患者さんに対応実績があ

る葉山ハートセンター

(神奈川県)の協力を得

るなど準備を進め、3月

24日に稼働しました。私

自身、夜勤に入るなど慎

重に慎重を重ねて対応し

ています」。

「いかに断らず安心・

安全な医療できるか」

また、湘南鎌倉病院は

従来、ER(救急外来)

の一角で行っていた発熱

外来を敷地内にプレハブ

を設け、独立したスペー

スで実施。プレハブは最

大70人程度が過ごせる待

合と診察室3室に加え、

X線検査装置も完備して

いる。診察室の医師と患

者さんの間には透明なア

クリル板を設置したり、

建物の片側だけに換気扇

を配置して空気の流れを

一定の方向にしたりする

など、建物内は感染防止

に十分配慮。

「当院の他診療科や医師

会の先生方のご協力を得

て運用します。院内感染

を防ぐことはもちろんで

すが、患者さんが安心し

て診察が受けられる良い

環境です」と山上浩・救

命救急センター長。発熱

外来は4月22日午後に診

療を開始した。

これらの取り組みにつ

いて、篠崎伸明院長は「徳

洲会の理念を追求した結

果」と語気を強め、「い

通常の流れだ。しかし、

今年は3月から合同説明

会の開催がなくなり、そ

こでの学生からのエント

リーがなくなった。また、

対面での面接ができない

ため、就職支援サイトを

通じたエントリーに対し

一般社団法人徳洲会(社

徳)は、事務職への就職

を希望する学生と薬学生

に向けた就職説明ビデオ

の制作を開始した。新型

コロナウイルス感染拡大

の影響により、これまで

実施していた合同説明会

などが中止となったこと

による。

事務職説明会は3月以

降、開けなくなったため、

その対策として採用担当

者が社徳広報部と協力し

かに断らず安心・安全な

医療を実践できるか考え

た末の結論です。当院が

地域の拠点病院として機

能するには、患者さんや

職員を守り、地域の医師

会・病院会と協力するこ

とが不可欠。予断を許さ

ない状況が続くと思いま

すが、当院が“最後の砦と

りで

となる覚悟で、今後も取

り組んでいきます」。

ても、採用を進めること

ができなくなった。

そこで就職説明ビデオ

の制作を開始。薬剤部の

高橋智部長は「徳洲会グ

ループに興味をもってい

る学生は多く、徳洲会の

理念などをしっかり理解

したうえで応募していた

だきたいと考えています。

どのように就職活動を進

めていいか、迷っている

学生へのニーズに応えて

いきたいです。一次面接

をWEB上で行うことも

検討しています」と積極

的だ。

制作している。徳洲会グ

ループの概要や事務職の

仕事内容、待遇など説明

するビデオを就職支援サ

イトにアップ、エントリ

ーした学生に視聴しても

らう。一次面接もWEB

上で行う。

薬学生に対しては12月

から就職支援会社主催の

合同就職説明会などでア

プローチを始め、3月か

ら募集を開始、病院ごと

に面接を行うというのが

新型コロナ対策緊急総力特集

新型コロナウイルスの影響で国内外の学会が軒並み中止や延期となっている一方で、医療の進歩のため工夫して乗りきろうという動きも活発化している。岸和田徳洲会病院(大阪府)の横井良

明副院長が前身を立ち上げたアジア最大級の末

まっ

梢しょう

血管内治療のライブデモンストレーションJET(JapanEndovascularTreatmentConference)は、2月の学術集会を延期し、4月18、19、25、26日と4日間、WEB上で開催した。同院循

環器内科の藤原昌彦部長が事務局長を務めた。「来年まで開催しないと患者さんへのデメリットが大きく、新たなエビデンス(科学的根拠)や、より適切な治療など情報発信するのが望ましいためWEB開催しました」(藤原部長)。開催当日は、発表者が事前に日本語で吹き込んだナレーション付きのスライドを配信。座長などを交えた討

論も各自の場所からリモート参加で行った。テレワークの推奨で普及するWEB会議ツール「Zoom」の活用例もある。徳洲会外傷整形外科部会の部会長を務める土田芳彦・湘南鎌倉総合病院(神奈川県)兼湘南厚木病院(同)副院長・外傷センター長は、自ら主催・監修するWEBセミナーをZoomで開催している。以前から移動時間などを節約できるWEB開催の構想を温めてきた。新型コロナの影響をきっかけに、教育活動を継続する方策として実行。3月上旬から湘南鎌倉病院外傷センター主催で「湘南WebMeeting」などシリーズ化して開催。また全国各地で「重度四肢外傷PeerReviewWebMeeting」を監修、順次開いている。「ハンズオン(体験学習)やグループワークと異なり、講義であればWEBでも何の支障もなく実施できます。感染終息後も、従来式のセミナーとWEBセミナーを使い分けていきたい」(土田副院長)と展望している。

新型コロナウイルス禍での自宅待機にともない、世界各国でDV(家庭内暴力)が増加傾向にある。日本では内閣府と厚生労働省が各地方自治体にDVに関する注意喚起を行った。しかし、「まだ具体的な数字は出ていませんが、警察や児童相談所への虐待相談件数は、むしろ減少傾向にあるようです」と東大阪徳洲会病院の橋爪慶人院長。これは日本でDVや虐待が少ないという意味ではなく、「加害者がすぐ近くにいるため、相談したくてもできない状態なのだと思います。夏休みなど長期休暇でも同様の事象が起こります」(橋爪院長)。休業・失業など将来への不安に、長期間、ほぼ家にい

るストレスが加われば、DVや虐待は増加してもおかしくない。橋爪院長は「こんな時だからこそ、近くの家から物の割れる音が頻繁に聞こえたり、尋常でない泣き声が聞こえたりしていないか、気にかけることが大切です」と強調。また医療機関も新型コロナ対応に追われ、ふだんなら気付くことができるDVや虐待のサインを見過ごしている可能性があることを指摘。「忙しいとは思いますが、来院した患者さんの体にあざやけががないか、保護者の表情や説明に違和感はないか、アンテナを張るのを忘れないでください」(同)と医療者に呼びかける。DVや虐待は少しずつエスカレートするため、被害者は

逃れるタイミングを見失うことが多い。また、外出自粛が逃げ出す際の心理的障壁になっている可能性もある。橋爪院長は「もう無理だと思う前に躊

ちゅう

躇ちょ

なく逃げてほしい。DVや虐待からの避難は不要不急の外出にはあたりません」と訴える。主な相談先DV相談ナビ(内閣府) 0570-0-55210配偶者暴力相談支援センター(内閣府) 全国287カ所(2019年10月現在)みんなの人権110番(法務省) 0570-003-110警察相談専用電話(警察庁) #9110児童相談所虐待対応ダイヤル(厚労省) 189

湘南鎌倉総合病院(神奈川県)は新型コロナウイルス対応の一環で、敷地内に臨時

の受け入れベッドを設置、4月23日に運用を開始した。患者さんの動線を分け、院

内感染を防ぐのが狙い。プレハブの建物に擬似症(新型コロナウイルス感染症が強

く疑われる)を含む患者さんを最大31人受け入れることが可能。ただし、同ベッド

は5月中に神奈川県が同院近隣に新設する仮設病床に移行する。同院は院内で行っ

ていた発熱外来も敷地内にプレハブ専用スペースを設け、22日に診療をスタート。

プレハブ建設などで臨時ベッド

徳洲会

病 

倉庫を活用し感染隔離病棟も

「患者さんや職員を守る」

室(11床)とHCUタイ

プの多床室(15床)、擬

似症患者さんのための個

室(5床)からなり、扉

を設けエリアを区分して

いる。全体が見渡せる場

所にスタッフステーショ

学生向けビデオ制作

就職説明に新アプローチ

横井副院長(右)と藤原部長

「WEB 会議システムは非常に有効なツール」と土田副院長

湘南鎌倉病院が設けた臨時の受け入れベッド(写真は HCU タイプ)

野崎病院は感染隔離病棟へのアプローチを厳重にするなど感染予防を徹底

仮設発熱外来の診療イメージ

Zoomを活用したWeb meetingの画面

過日の合同説明会で賑わいを見せる徳洲会ブース(薬剤部)

学術集会をWEB上で開催「Zoom」活用し学習機会も医療進歩のため教育活動継続

DVや虐待の見落とし橋爪・東大阪病院院長が注意喚起

社 徳

徳 洲 新 聞 生い の ち

命だけは平等だ❸ 令和 2 年 4 月27日 月曜日 │ No.1233

Page 4: 徳洲会グループの湘南鎌倉・八尾・湘南藤沢・野崎病院 ......令和2 年4月27日 月曜日 No.1233 命だけは平等だ 4月27日 月曜日 発行:一般社団法人徳洲会

送する。

院内の感染対策も強化。

救急外来や地下駐車場か

らの出入口を封鎖し、入

口を正面玄関に一本化、

職員が来院する患者さん

を問診したうえで、一般

外来と発熱外来に分けて

いる。マスクをしていな

い患者さんには、売店に

ハンカチやハンドタオル

を用意し、即席でマスク

をつくるように呼びかけ

ている。

同院も症状の安定して

いる患者さんの再診に限

り、電話診療を実施。在

宅診療の患者さんへの定

期処方でも、本来であれ

ば家族に薬を取りに来て

原因のひとつかもしれま

せん」と推測する。

初の感染者を確認した

前週、地域の医療機関が

集まり対策会議を実施。

そこで感染者もしくは感

染疑い例が出た場合、島

内の感染症指定医療機関

である県立八重山病院が

一括して管理し、石垣島

病院を含む他の医療機関

は後方支援に回る方針を

決定した。池原院長は「感

石垣市は4月6日、臨

時会見を開き、新型コロ

ナウイルスの感染を防ぐ

ため、観光客などへの来

島自粛を強く呼びかけた。

そんな矢先の13日、沖縄

本島以外では初めて、石

垣島で感染を確認。石垣

島徳洲会病院の池原康一

院長は「とうとう来たか、

と思いまし

た。3月い

っぱいは、

卒業旅行や

家族旅行な

どで来島さ

れる方が多

かったのも、

染者が増えた場合、病棟

を閉じて隔離する必要性

も出てきますので、八重

山病院の入院患者さんを

当院で受け入れることに

なります」と説明する。

一方、石垣島病院でも

院内の感染対策を強化。

発熱外来を病院入口付近

にスペースを区切って設

置、発熱患者さんは専用

玄関から入り、受付後、

自分の車の中で診察まで

待機してもらうなど、一

般の患者さんと動線が重

ならないようにした。ま

た、健診センター、通所

リハビリテーションセン

ターの稼働を停止した。

今後、感染者が爆発的

に増え、八重山病院で収

まりきらなくなった場合

を想定し、石垣島病院で

は院内のどこで受け入れ

るか、人の配置をどうす

るかなど検討を始めてい

る。池原院長は「感染者

が出る前から感染対策は

始めていましたが、出た

ことで、より一層、身が

引き締まりました。こん

ななかでも、地域の方々

はPCR(ポリメラーゼ

連鎖反応)検査を受けた

いと押し寄せることもな

く、冷静でいることが、

とてもありがたいです」

と謝意を表す。

本土から離島に送る

人工呼吸器ストック

鹿児島県の離島病院の

中心的な役割を担う名瀬

徳洲会病院の松浦甲彰院

長は「離島で感染者もし

くは感染疑い例が発生し

た場合、どうしても対応

が遅れる可能性がありま

す」と警鐘を鳴らす。

離島にはPCR検査を

実施できる機関がないた

め、診断が遅れ、感染が

広がるリスクも大きくな

る。感染者が発生した場

合、受け入れ先が少なく、

病床があったとしても感

染防護具やマンパワーが

足りない。重症化した患

者さんに行える治療も限

られ、本土の病院に搬送

しなくてはならない。

こうした事態に備え奄

美大島では、4月9日に

地域の医療機関が集まり

対策会議を開催。帰国者・

接触者相談センターへの

相談件数が増えているこ

とを共有したうえで、も

し感染疑い例が発生した

場合、島内の感染症指定

医療機関である県立大島

病院で一括して管理する

方針など協議した。

名瀬病院でも感染対策

を強化すると同時に、院

内感染が起きた場合を想

定したシミュレーション

も始めた。また、通常の

外来通院で症状が安定し

ている患者さんの再診に

限り、電話診療を実施。

電話診療の最中に必要と

判断した場合は、受診を

促すこともあるが、薬の

定期処方だけで良い場合、

患者さんは電話診療が終

わった後に同院を訪れ、

薬の受け取りと会計を行

い、なるべく院内で過ご

す時間を短くする。

今後、送迎バスの運行

がなくなった際には職員

がバス停を巡回し、薬の

受け渡しと会計ができる

ように調整中だ。

一般社団法人徳洲会

(社徳)も離島病院をサ

ポート。マスクや防護服

など物資の提供に加え、

重症化した患者さんの治

療に必要な人工呼吸器を、

いつでも離島に送れるよ

うにストックしている。

松浦院長は「今のところ

離島病院で、すぐに人工

呼吸器が必要になること

はないので、グループ全

体のバランスを見て使っ

ていただければと思いま

す」と配慮しつつも、「グ

ループのサポートがある

のは、とても心強いです。

離島で医療崩壊を起こさ

せないように、できる対

策はすべてやっていきた

いと思います」と意欲を

見せる。

PCR検査の検体採取

被験者との接触者限定

徳之島徳洲会病院(鹿

児島県)は保健所からの

依頼により、PCR検査

のための検体採取を実施

している。

今のところ陽性者は出

ていない。検体採取には

病院の駐車場にあるプレ

ハブ小屋を使用し、基本

的に藤田安彦院長が担当。

「私が不在の場合は非常

勤医師にお願いすること

もありますが、研修医に

はさせません。感染疑い

の患者さんと接する職員

を、できるだけ限定する

ように気を付けていま

す」と強調する。

感染者が出た場合の対

応も地域で共有。同院が

位置する徳之島町では、

軽症・中等症であれば宿

泊施設であるバンガロー

に隔離したうえで対応、

重症者であれば本土に搬

もらうが、今はなるべく

病院に人を入れないよう

にするため、職員が届け

る場合もある。

また、遠隔操作できる

アバター・ロボットを試

験的に導入。

これは、ANAホール

ディングスが開発したも

ので、タイヤが付いてお

りラジコンのように操縦

することが可能だ。上部

のモニターには操縦者の

顔が映し出され、あたか

も対面して会話している

ようなコミュニケーショ

ンができる。

藤田院長は「問診など

に有効と考えます。また、

入院が長引く患者さんに

はアバターにインしても

らい、外の様子を見たり、

逆にご家庭にアバターを

配置し、ご家族との会話

を楽しんだりすることが

できるなど、使い方はい

ろいろあると思います」

と期待を寄せている。

グループ一丸となり全力サポート

「医療崩壊を決して起こさせない」

徳洲会グループの研修プログラムは、初期研修医が2年目に2カ月間、離島・へき地の徳洲会病院で地域医療研修を行うことを定めている。幅広い診療スキルを身に付け、医師としての資質を磨くうえで重要な研修だ。広域に及ぶ病院間の移動がともなう同研修に関して、研修医自身の感染防御や研修先施設へのウイルス持ち込み防止のため、どう対応しているのか―。徳洲会グループ研修委員会委員長の田村幸

大・大隅鹿屋病院(鹿児島県)副院長は「感染防止に関する一般社団法人徳洲会(社徳)からの通達に沿い、初期研修医も手指衛生・標準予防策、いわゆる3密の回避など感染対策や健康チェックを徹底しています」と説明する。2年目を迎えた初期研修医の一部は、4月1日から5月末までの日

程で地域医療研修を実施。「感染の終息が見えなければ、次に研修医が交代する5月末のタイミングで、研修先に出向く研修医に、事前にPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査を行うという案も出ています。状況に応じ検討します」と田村副院長は危機感をにじませる。毎年5月末頃に実施する1年目初期研修医の合同オリエンテー

ションは中止を決定。虐待に関する研修など必修項目は、感染終息後に行う計画だが、感染拡大が長引いた場合にはWEB講座も視野に入れる。また例年6月に実施する2年次初期研修医の中間研修会も中止を決めた。

徳洲会グループ初期研修医

感染対策徹底し地域医療研修研修前のPCR検査実施も検討

徳洲会グループは離島・へき地病院をサポートするため、都市部病院の多職種が応援スタッフとして現地に入っている。新型コロナウイルスの感染拡大により、徳洲会感染管理部会は応援業務に関する指針を発信、応援の出し手と受け手の双方の病院や関連部会で、その必要性を十分に協議したうえで決定する方針を明示した。奄美大島に位置する名瀬徳洲会病院(鹿

児島県)の松浦甲彰院長は「応援いただいている本土の病院から、院内の感染対策で手いっぱいになり医師を出すことができないと相談されたこともあります。今後は応援が途絶えることも想定し、対策を立てる必要があります」と険しい表情。徳之島徳洲会病院(同)の藤田安彦院長

は「徳洲会外の病院ですが、院内感染を起こしたため、話し合いの結果、しばらく派遣はやめようという結論になったケースもあります。応援いただいている病院側も、島にウイルスを持ち込まないようにと、最善策を考えてくださっています」と明かす。応援体制は、これまでどおりというわけにはいかず、

受け手の病院では、特別診療を休診するなど診療体制を変更したり、定期処方を別の診療科の医師が対応したりしている。今後も、とくに流行地域にある病院との人材交流には、検討に検討を重ね、万全を期す構えだ。

離   島へ き 地

応援によりウイルスを

持ち込まないよう尽力

徳洲会の

離島病院

4月1日に鹿児島県の沖永良部島、13日に沖縄県の石垣島、18日には鹿児島県の

奄美大島で新型コロナウイルス感染症患者さんを確認、離島にも見えない敵が上

陸し始めている。こうしたなか徳洲会グループの離島病院では、感染疑い例が発

生した時の対応を院内、さらには地域で検討するなど感染対策に力を入れている。

また、グループのスケールメリットを生かしたサポート体制も敷いている。

新型コロナ対策緊急総力特集

PCR検査の検体採取前に感染防護具を付ける藤田院長

徳之島病院では駐車場内にあるプレハブが発熱外来

試験的に導入したアバター(左)の操作方法を尋ねる藤田院長(右)

「地域の方々の冷静さがありがたいです」と池原院長

「できる対策はすべてやります」と松浦院長

「感染疑いの方と接する職員を限定しています」と藤田院長

「初期研修医の感染対策も徹底」と田村副院長

徳 洲 新 聞生い の ち

命だけは平等だ 令和 2 年 4 月27日 月曜日 │ No.1233 ❹