企業とキャラクター -...

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倉橋哲平■企業とキャラクター 企業とキャラクター -その歴史と関わり- History and Relations of Character and Company 倉橋哲平 東洋大学社会学部 メディアコミュニケーション学科 4 年 いまやキャラクターは我々の生活の至るところにあふれ、企業だけでなく、地方 の一自治体でさえキャラクターを制作するようになってしまった。しかし、キャラ クターはキャラクターという言葉を得る前は特定の企業や製品を表す図画、つまり ロゴや、マークとして機能していた。しかし、その機能は徐々に拡大し、自社の製 品をアピールするセールスマンとなり、ついには単体で製品となってしまった。 そして、キャラクターという商品形態は普遍のものとなり、識者はその原因を現 代人のコミュニケーション嫌い傾向にあるのではないかと指摘した。実際にそうい った論調は漠然とながらもなんとなく正しいという印象を受けてしまう。しかし、 コミュニケーションを嫌っている人間が、人間のように性格、人格があり、名前や 家族まで持っているようなキャラクターを支持したりしないのではないだろうか。 現代人はコミュニケーションを嫌っているというよりは、擬似的ではあるものの積 極的にコミュニケーションを望んでいると考える事も出来るはずだ。キャラクター とは企業にとって商品形態の一種に過ぎないが、消費者にとっては人間のようであ りながら人間ではない他者なのだ。 キーワード:オリジナルキャラクター、マスコットキャラクター、キャラクター設定 倉橋‐1

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倉橋哲平■企業とキャラクター

企業とキャラクター

-その歴史と関わり-

History and Relations of Character and Company

倉橋哲平

東洋大学社会学部

メディアコミュニケーション学科 4 年

要 旨

いまやキャラクターは我々の生活の至るところにあふれ、企業だけでなく、地方

の一自治体でさえキャラクターを制作するようになってしまった。しかし、キャラ

クターはキャラクターという言葉を得る前は特定の企業や製品を表す図画、つまり

ロゴや、マークとして機能していた。しかし、その機能は徐々に拡大し、自社の製

品をアピールするセールスマンとなり、ついには単体で製品となってしまった。

そして、キャラクターという商品形態は普遍のものとなり、識者はその原因を現

代人のコミュニケーション嫌い傾向にあるのではないかと指摘した。実際にそうい

った論調は漠然とながらもなんとなく正しいという印象を受けてしまう。しかし、

コミュニケーションを嫌っている人間が、人間のように性格、人格があり、名前や

家族まで持っているようなキャラクターを支持したりしないのではないだろうか。

現代人はコミュニケーションを嫌っているというよりは、擬似的ではあるものの積

極的にコミュニケーションを望んでいると考える事も出来るはずだ。キャラクター

とは企業にとって商品形態の一種に過ぎないが、消費者にとっては人間のようであ

りながら人間ではない他者なのだ。

キーワード:オリジナルキャラクター、マスコットキャラクター、キャラクター設定

倉橋‐1

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目 次

第1章 キャラクターの定義

1.1 キャラクターとは

1.2 マスコット・キャラクターの分類

1.3 企業が求めるキャラクターの機能

1.4 消費者が求めるキャラクターの機能

(1)キャラクターから得られる精神的効果

(2)消費者が求めるキャラクター

第2章 キャラクターの歴史と企業とのつながり

2.1 初期キャラクター

2.2 銀行のマスコット・キャラクターブーム

2.3 昭和 30 年代のアニメと CM アニメーション

2.4 キャラクター(人格)の付加

2.5 商品とのキャラクター結びつき

2.6 ハローキティ以後

第3章 キャラクターと消費者

3.1 キャラクターの向こう側

3.2 むひょキャラ

参考文献

附属資料 マスコット・キャラクター年表

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倉橋哲平■企業とキャラクター

問題意識

我々が普段使う製品や食品には、キャラクターが描かれていたりする。江崎グリコのゴールイ

ンマークやビスコ坊や、ヤンマーディーゼルのヤン坊マー坊、ヤマト運輸のクロネコマークなど、

企業のマスコット・キャラクターはありとあらゆる場所に描かれ、その業種を問わない。広告や

あるいはテレビ CM にも使われ、時には PR すべき商品そのものよりも高い知名度を持つものもあ

る。

いまや企業が商品を売る上で、キャラクターの使用という手段は一つの選択肢としてすっ

かり定着してしまっている。そういったキャラクターたちは時間の経過とともに忘れ去られ

てしまうことも多いものの、その一方で一定の支持を得たキャラクターは驚くほどの長期間

に渡り、使われ続けることもある。不二家製菓のペコちゃん、桃屋ののり平、サントリーの

アンクルトリス、日清食品の出前坊や、明星食品のチャルメラおじさん、エスエス製薬のサ

トちゃんなどなど、これらの企業キャラクターはいずれも半世紀近くも前に作られたキャラ

クターである。

なかでもサントリーの CM アンクルトリスは 20 年近い期間にわたり様々なバージョンを出し続

け、2003 年には当時の作風をそのままに再び CM が出るなど、いまだに高い人気を伺わせる。

アンクルトリス CM の多くに共通しているのが、表に出すべき、CM で消費者に訴求すべき対象

である商品の部分が出てくるのはほとんど 後の数秒ということである。YouTube で確認した

1960 年代のトリスの CM を見てみると、*1 30 秒の CM の中でトリスウイスキーのボトルが表示さ

れるのが約 2 秒、その後画面に「トリスウィスキー\330」という文字が約 3 秒間表示される。つ

まり CM 全体の約4/5が、アンクルトリスというマスコット・キャラクターの部分に費やされて

いるということになる。商品を訴求する、というよりもアンクルトリスというマスコット・キャ

ラクターによる小さな物語を提供しているようにも思われる。「CM を見る」、というよりもむし

ろ「サントリー提供のアンクルトリスという番組を見ている」といった方が正しいかもしれない。

キャラクターとは何なのだろうか。なぜ企業はキャラクターを作り、そしてなぜ消費者はキャ

ラクターを消費するのか。本論文ではキャラクターが生まれた時代背景や歴史、消費者の心理的

な側面からキャラクターについて研究していく。

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本論の構成

第 1 章では、そもそもキャラクターとは何かを定義し、キャラクターが果たす機能や出身媒体

別に分類する。また、キャラクターの必要性についてマーケティング的な視点からまとめる。第

2 章では、キャラクターの歴史や時代ごとの特徴などといった観点から論述していく。第 3 章で

は近年のキャラクターに見られる新しい要素についてまとめ、それらが消費者とどのように関わ

っていくか、第1章で述べたキャラクターの必要性と絡めて、論述していく。

第 1 章 キャラクターの定義と必要とされる理由

第 2 章 キャラクターと企業の関わり

第 3 章 キャラクターと消費者

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キャラクターの定義

1.1 キャラクターとは

そもそもキャラクターという言葉はどういった意味を持つのだろうか。キャラクターという言

葉自体はギリシャ語にルーツを持ち、「刻みつけられたもの」「彫りつけられたもの」というよ

うな意味を持つ。広辞苑によれば、「①性格。人格。②小説・映画・演劇・漫画などの登場人物。

その役柄。③文字。記号。」と説明されている。

キャラクターという言葉が日本において認知され始めたのが、1950 年代以降といわれる。1920

年代から始まったアメリカのアニメーション映画勃興期、「蒸気船ウィリー」や「船乗りポパイ」

などのヒット作が続々と登場した。そして、その人気にあやかり、登場人物たちが色々な商品に

使われるようになり、商品化に当たってファンシフル・キャラクターズ(空想上の(実際に存在

しない)登場人物)と呼ばれたといわれている。しかし、日本に入ってきた際にうまく訳語がで

きず、そのまま「キャラクター」として定着したといわれている(相原,2007)。

今現在、キャラクターという言葉は様々なところで用いられている。マンガ、アニメ、ゲーム、

映画のキャラクター、商品・店舗・あるいは企業のキャラクター、あるいはタレントなどの人柄

や性格を表すパーソナリティとしてのキャラクターなど、その言葉の範疇は時代とともに拡大を

続けてきた。しかし、よく考えてみればマンガは出版社、アニメや映画は制作会社や放送局、ゲ

ームはゲーム会社と、そのキャラクターの成立過程からして、コンテンツ企業と深く関わってい

る。タレントのパーソナリティとしてのキャラクターなども企業や団体によって主に広告として

使われるものだ。そういった意味ではキャラクターという言葉が含む意味はそのほとんどにおい

て、①なんらかの企業・団体との関わりを持つキャラクター、②人格・性格などのキャラクター

の二つに大別することができる。

本論文で重点的に扱うキャラクターは、①の商品や店舗、企業あるいは団体のキャラクター、

特に企業と強く結びついたマスコット・キャラクターとする。「実在するタレントや有名人をキ

ャラクターに用いる」や、②の「人格や性格などのキャラクター」は必要であると判断した部分

のみとりあげるに留め、基本的には扱わない事とする。

マスコット・キャラクターをあえて定義するなら「企業や団体が広報、広告、販促、その他の

目的のために作り出した独自のキャラクターなどの総称である。ただし、独自でなくとも雑誌や

新聞などに連載されるマンガ、アニメーション・フィルム、テレビ番組や映画などの、登場人物、

ロボット、擬人化された動植物、絵本や童話の登場人物から借用する場合もこれに含む」とする。

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陸川・西岡(2002)によれば、他にも一般的にキャラクターの範疇から除外するべきだと思われ

る、「アート」「イラストレーション」「商標」「ロゴマーク」「パーソナリティ(有名人や動

物などの肖像や名称)」なども、長期にわたる使用や広告表現などでの高い知名度の形成に貢献

したり、いわゆるライセンスビジネスにおける知的財産権として認知されていることから、マス

コット・キャラクターとして含むケースもある。

1.2 マスコット・キャラクターの分類

先に定義したマスコット・キャラクターたちはその機能(表 1.1)と、キャラクターの出身媒

体別(表 1.2)にいくつかに分類することができる。

表 1.1 機能別マスコット・キャラクターの分類

パブリックブランドキャラクター

公共機関や公共企業などのサービスキャラクタ

ーで親しみやすさを目的としたものが多い

ピーポくん(警視庁)

ユウちゃん・アイちゃん(郵便貯金)

アソシエーション/イベントブランドキャラクター

協会・団体などの組織、特にスポーツイベント

などのマスコット・キャラクターといわれるも

ホドリ、フーワーなど(オリンピックキャラクター)

ジュビロくん、マリノスくんなど(Jリーグキャラクター)

コーポレートブランドキャラクター

企業のアイデンティティとしてのキャラクター

カーネルサンダース(ケンタッキーフライドチキン)

サトちゃん(佐藤製薬)

サービスブランドキャラクター

企業の特定のサービスにおけるシンボルマーク

としてのキャラクター

クロネコヤマトの宅急便(ヤマト運輸)

ドコモダケ(NTT)

リテールブランドキャラクター

店舗などのシンボルとしてのキャラクター

ドナルド・マクドナルド(マクドナルド)

ペコちゃん(不二家)

キャンペーンブランドキャラクター

プレミアムキャンペーンなど販促目的で使用す

るキャラクター

バザールでござーる(NEC)

マクドナルドのハッピーセットのキャラクター

ポケモンジェット(ANA)

エビちゃん(マクドナルド)

アドキャラクター

広告やCMでアイキャッチやメッセンジャー的に

使用するもの

タッチおじさん(富士通)

アンクルトリス(サントリー)

キャラクターブランドプロダクト

子供商品など特定ターゲット向けにキャラクタ

ーをつけたブランド

ポケモンカレー(永谷園)

仮面ライダースナック(カルビー製菓)

オリジナルキャラクタープロダクト

商品のブランドシンボルの一つとして最初から

オリジナルで開発されたキャラクター

Qoo(日本コカコーラ)

カールおじさん(明治製菓)

(日本能率協会マネジメントセンター,2002)

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倉橋哲平■企業とキャラクター

必ずしもどれか 1 つのみが該当するというわけではなく、例えばケンタッキーフライドチキン

のカーネル・サンダース、マクドナルドのドナルド・マクドナルドなどはコーポレートブランド

キャラクターとリテールブランドキャラクター(考え方によってはオリジナルキャラクタープロ

ダクト)の機能を兼ね備えているといえる。また、図 1.3 の ANA のポケモンジェットはキャンペ

ーンブランドプロダクトとキャラクターブランドプロダクトの二つを同時に両立させている。他

にも NTT のドコモダケなどもサービスブランドキャラクターとキャンペーンブランドキャラクタ

ーの機能を横断しているといえる。

図 1.1 コーポレートブランドキャラクターとしてのカーネル・サンダース *2

図 1.2 リテールブランドキャラクターとしてのカーネル・サンダース *3

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図 1.3 キャンペーンブランドプロダクトとキャラクターブランド プロダクトの二つを同時に機能させ ANA のポケモンジェット *4

表 1.2 出身媒体別マスコット・キャラクターの分類

出版 ドラえもん、ミッフィー、ソニー坊や、ムーミン

テレビアニメ 鉄人28号、機動戦士ガンダム、 セサミストリート

企業オリジナル アンクルトリス、ハローキティ、アフロ犬

映画 ミッキーマウス、となりのトトロ、ウォレスとグルミット

ゲーム ポケットモンスター、どこでもいっしょ

商標・ロゴ・ブランド コカ・コーラ、ヱビス、オールドジョー

その他

リカちゃん(玩具)、The Dancing Baby(インターネット)

エビちゃん(有名人、タレント)

(陸川・西岡,2002)

オリジナルなキャラクターだけがマスコット・キャラクターというわけではなく、実際にはど

のような出身媒体でもマスコット・キャラクターになりうる。例えば、東洋大学のマスコット・

キャラクターに起用されているムーミンはもともとはフィンランドの作家トーベ・ヤンソンが

1945 年に発表した小説「小さなトロールと大きな洪水」の登場人物であった。1950 年代後半にソ

ニーが販促用のアドキャラクターとして使用していたソニー坊やも、もともと週刊朝日誌上にて

連載していた岡部冬彦氏の連載漫画「アッちゃん」に登場するキャラクターだった。

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1.3 企業がマスコット・キャラクターに求める機能

そもそも企業はなぜマスコット・キャラクターを扱うのであろうか。ここでは、先述した機能

(図 1.1)とは違った側面からマスコット・キャラクターの機能を明らかにし、企業側にどのよ

うなアドバンテージを与えるのかをまとめていく。

陸川・西岡(2002)によれば、企業がマスコット・キャラクターを用いる上での利点を 5 つの

ポイントにおいて有効であると考えられる。

表 1.3 キャラクターを使用することによる利点

①認知効果

広告にキャラクターを使用したり、アニメ、子供番組の

提供などキャラクターの認知度を利用して自社製品の認

知を高める。

②販売効果

キャラクターブランド(キャラクターのついたブランド

商品)の開発により、特定の商品カテゴリーや特定ター

ゲットでの売り上げ拡大をはかる。

③販売促進効果

プレミアムキャンペーンやキャラクターイベントなどに

より、キャラクター(商品)の価値を利用して新製品発

売や既存商品の拡販のための一時的な推進力とする。

④イメージアップ

効果

広告表現にキャラクターを使用したり、アニメ、子供番

組の提供などにより、すでにキャラクターが持っている

良いイメージを商品に付与する。

⑤ターゲットコミ

ュニケーション効

広告表現にキャラクターを使用したり、アニメ、子供番

組の提供など、コミュニケーション戦略によってターゲ

ットの変更や絞り込みをはかる。

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1.4 消費者がマスコット・キャラクターに求める機能

(1)キャラクターから得られる精神的効果

逆に消費者側はマスコット・キャラクターに何を求めているのだろうか。相原(2007)によれ

ば、キャラクターから得られる精神的効能は主に 8 つあり、それらは大きく 3 つに分類できると

している。8 つあるうちの①から④までを「癒し系」、⑤はそのまま単独で「存在確認系」、⑥

から⑧までを「活力系」として分類することができる

表 1.4 キャラクターから得られる精神的効果

①やすらぎ キャラクターと一緒にいることで心が安らぎ、癒される効能

②庇護 キャラクターから守られていると感じる効能(①を強化したもの)

③現実逃避 キャラクターといっしょにいることで嫌なことが忘れられる効能

癒し系

④幼年回帰 キャラクターを通じて、楽しかった子供時代の記憶に浸れる効能

存在確認系 ⑤存在確認 キャラクターに自己投影することで、自分を確認し、自信が持てるようになる効能

⑥変身願望 キャラクターになりきる(変身する)ことで、自分を確認し自信が持てるようになる効能

⑦元気・活力 キャラクターと一緒にいることで元気や活力がわいてくる効能 活力系

⑧気分転換 キャラクターと一緒にいることで軽い気分転換ができる効能

(相原博之,2007)

(2)消費者が求めるキャラクター

では、これらの代表的な要素の中で、強く消費者に求められているものはなんだろうか。キャ

ラクターといえば、上記の中では、⑥変身願望や⑧気分転換といった活力系などのとりわけエン

タテイメント的なものが重視され、 も強く求められているものとして挙げられるように思われ

る。しかし、バンダイキャラクター研究所が行った調査によれば、 も強く求められているのは

①のやすらぎであり、やさしくなる、さびしさがまぎれる、といった癒し系の要素も上に並んで

いる。図 1.4 は 2004 年度の調査結果であるが、実は 2000 年度に行われた調査でもほぼ同様の結

果が出ている。

本来であれば、やすらぎなどの癒し系の効能は肉親や友人といった生身の肉体を持った個々の

人間を通じて充足されるべきものである。しかし、複雑化しストレスをともなうコミュニケーシ

ョンや人間関係を持つことが多くなった現代社会においては、人間同士の絆や信頼関係は形骸化

し、そういった関係の維持や、さらにはそういった関係の形成そのものが困難になりつつある。

いわば、キャラクターは血の通った人間の代替物として、現代人の心に滑り込んでいるといえる。

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(相原,2007)

図 1.4 キャラクターに求められる効能 *5

キャラクターにエンタテインメントな要素だけでなく、より精神的な要素、癒しややすらぎ、

庇護といった効能が求められる方向へと強く方向転換していくのは 1990 年代に始まったことと

思われる。それはマスコット・キャラクターが徐々に社会に浸透していった 1960~1970 年代に幼

少時代を過ごした人たちが、大人になった時期と一致している。

これらの世代は、生まれたときから様々なキャラクターに囲まれており、往々にしてキャラク

ターに対する拒否反応が少ない。それらに対して、彼らの親に当たる世代、つまり幼少時代に戦

中や終戦直後を経験してきた世代は漫画やアニメに夢中になる子供を叱ってきた世代であり、キ

ャラクターに対する拒否反応は強かった。キャラクターは幼稚なものであるとして、成長ととも

に離れていくという風潮も強かった。しかし彼らが孫を持つようになると「孫とのコミュニケー

ションのため」という理由でキャラクターを肯定的に見る傾向が強くなっていく。

社会全体がキャラクターを許容する風潮、先述した現代社会における不安やストレス増加が重

なり、かつてであれば考えられなった「キャラクターを癒しに用いる」という考え方が普及して

いった(相原,2007)。

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マスコット・キャラクターの歴史

この章ではマスコット・キャラクターの大まかな歴史についてまとめる。

2.1 戦前の最初期マスコット・キャラクター

もともとマスコットという言葉は身近に置いたり身につけていれば幸運をもたらすと信じられ

ているものを指す。そういった意味においては七福神のヱビス様を使ったヱビスビールや、幸福

を招くとされる福助人形からヒントを得た福助マークなどは も正統的なマスコット・キャラク

ターだといえる。日本においてもっとも古いマスコット・キャラクターであるキリンビールのキ

リンのラベルは 1888 年(明治 21 年)に登場した(図 2.1)。しかし、当時はキャラクターとい

う言葉そのものがなく、マスコット・キャラクターというよりもむしろ(オリジナルキャラクタ

ープロダクトとしての)商標やロゴといったような意味合いが非常に大きかった。その傾向は、

当時に作られた多くのマスコット・キャラクターたちに見られる(図 2.1-2.3)

図 2.1 1889 年のキリンのラベル *6

図 2.2 1900 年(明治 33 年)に商標登録された福助足袋の福助マーク *7

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倉橋哲平■企業とキャラクター

(画像は明治 38 年頃のもの)

図 2.3 1905 年(明治 38 年)に登場した森永製菓のエンゼルマーク *8

そして、ほぼ同時期において海外でも著名なマスコット・キャラクターが誕生している。1898

年にフランスのタイヤメーカー、ミシュランがムッシュ・ビバンダム(当時、名前はつけられて

いなかった)を自社の看板に使用している。1900 年には亡き主人の声に聴き入っている犬を描い

た「His Masters' voice」という絵が商標として登録されている。そしてこの絵は、1901 年にス

タートしたビクター・トーキング・マシン社でロゴマークとして採用された。1927 年に日本に設

立された日本ビクターのロゴにもそのまま採用され、いま現在においても使用され続けている。

図 2.4 日本ビクターのロゴ *9 図 2.5 商標登録された「His Master's Voice」*10

また、森下南陽堂(現:森下仁丹株式会社)が 1900 年に発売した梅毒薬「毒滅」には日本で初

めて新聞各紙に全面広告を出し、また全国の街角にある掲示板に広告を出すなど、当時としては

非常に先駆的な宣伝を行っていた。その広告にドイツの宰相ビスマルクの絵が商標として用いら

れ(図 2.6)、また商品パッケージにも使用された。これは開業して 10 年足らずの森下南陽堂の

知名度上昇に大きく貢献した。有名人の図画を商標としてのマスコット・キャラクターにする、

という行為は既にこの時点から存在していた。後に発売した携帯薬「仁丹」では大礼服を着たオ

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リジナルの男性の絵が商標としてのマスコット・キャラクターに採用され、パッケージだけでな

くリテールブランドキャラクターとして看板(図 2.7)に使われた。この看板は全国の薬店に配

布され、後に薬店の目印となるまでになった。現代の薬局における佐藤製薬のサトちゃん人形や

興和のケロちゃん人形のはしりといえる。

図 2.6 1900 年の「毒滅」新聞広告 *11 図 2.7 薬局の看板*12

他にも大阪商船(現:商船三井株式会社)が 1916 年に当時人気のあった横綱太刀山の絵を描いた

広告ポスターを出した。こちらはいわば有名人のアドキャラクターとして採用であった。

図 2.8 1916 年の大阪商船のポスター *13

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2.2 銀行のマスコット・キャラクターブーム

戦後の荒廃から朝鮮戦争特需を経て、1956 年には経済白書の「もはや戦後ではない」が流行語

となり、日本経済は高度成長期への弾みをつけていた。1950 年代後半から金融機関は、個人預金

を獲得するために様々なサービスを展開し、新規顧客開拓に力を入れていた。

こうした動きの中、1959 年 11 月に近畿地区信用金庫協会でマスコット・キャラクターの「信ち

ゃん」が登場した。都市銀行などの金融機関と同じように個人資産の獲得に力を入れていた信用

金庫は、このキャラクターを 1 年後の 1960 年 12 月に、店頭ディスプレイやチラシ、ポスターな

どに大きく登場させ、マスコット・キャラクターとして全面的に採用したのである。1962 年の 11

月にはキャラクターのソフトビニール製の貯金箱も作られ、1994 年の 5 月までに 100 を超えるバ

リエーションが生まれた。

この「信ちゃん」を機に銀行でオリジナルのマスコット・キャラクターを展開する流れが生まれ

た。三菱銀行では、1961 年に「ブーちゃん貯金箱」が登場、1962 年には富士銀行の「ボクちゃん」、

日本勧業銀行の「のばらちゃん」(岡部冬彦によるデザイン、後にソニー坊やのデザインも担当)、

1963 年には北海道拓殖銀行の「タクちゃん」が登場している。

図 2.9 信用金庫協会「しんちゃん」*14 図 2.10 日本勧業銀行「のばらちゃん」*15

また、現実の世界を色濃く反映させたバリエーションを展開していたのも特徴である。例として

富士銀行が 1962 年に配布した「ボクちゃん」貯金箱はネイティブアメリカンの格好をした男の子

だった。さらにその後、オリンピック日本代表団、宇宙飛行士などの世相を強く反映したバリエ

ーションや、イヌイット、スペインの闘牛士、英国の近衛兵、法被姿などの国際色を強くしたバ

リエーション(図 2.11)が登場した。

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図 2.11 「ボクちゃん」貯金箱のバリエーション *16

なぜ銀行にマスコット・キャラクターが爆発的に普及したのだろうか。伊藤・新田(2005)によ

れば、その原因はソフトビニール人形の成立と金融機関の積極的な個人向け戦略にあるという。

戦前から輸出品として定評のあったセルロイドの玩具は後に発火の危険性が指摘され、輸出相

手国側が禁輸措置を講じてしまい、販売ができなくなってしまった。国内においては販売禁止な

どは行われなかったものの、多くの販売店は商品を店頭から撤去した。セルロイド業者は代替手

段としてソフトビニール製造に切り替えていった。製造工程が似ているためにかつてのセルロイ

ドと同じように容易に大量生産が可能になった。そして増田屋斎藤貿易(現:株式会社増田屋コ

ーポレーション)が 1957 年に発売した「小鳩くるみのカール人形」が流行し、ソフトビニールと

いう素材が大きく注目されるようになった。児童向けソフトビニール製人形は、1955 年から 1958

年の 4 年間に国内で 1200 万個が発売されたといわれている。1959 年にヒット商品となった「バ

ービー人形」はアメリカのマテル社から発売されたが、生産は日本で行われていた。日本のソフ

トビニール人形は、国際的に競争力を持つ製品になっていたのである。 そして、このソフトビニ

ール製の人形が、日本で生産され始めたのは、1954 年ごろといわれ、先述した金融機関による貯

金箱の景品利用とほぼ一致している。

1960 年代後期になるとほとんどの銀行がマスコット・キャラクターを象ったソフトビニール製

の貯金箱を預金者向けのサービスとして契約時や集金時などに配布していた。伊藤・新田(2005)

によれば以前までは金融機関で配布される景品はマッチやカレンダーなどの一部分に限定されて

いたが、1954 年に貯金箱の景品利用が解禁され、この事が銀行のマスコット・キャラクター採用

に大きく貢献した。

一方、景気の拡大によって飛躍的に上昇した個人所得は、消費以上に貯蓄などに向かい、貯蓄

率は増加の一途をたどっていった。銀行は個人貯蓄を、景気変動の影響に左右されにくい資金源

と見込んで、顧客の取り込みに積極的になった。富士銀行が 1955 年に開始した子供の成長記録手

帳付きの預金をきっかけにして、各行で様々な個人向けサービスが本格的に展開した。家計手帳

付きの家計預金やテレビ購入を目的とした預金、配偶者へのプレゼントを目的にした預金など、

多岐にわたる。

この「銀行の大衆化」と「ソフトビニール技術の発展」の流れが合わさった結果、銀行による

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倉橋哲平■企業とキャラクター

マスコット・キャラクターのブームを引き起こしたのではないかと指摘している(伊藤・新田,

2005)

2.3 昭和 30 年代のアニメと CM アニメーション

テレビが急速に普及した昭和 30 年代には CM という新たな広告手法と深く結びついた企業のマ

スコット・キャラクターが一つの 盛期を迎えている。テレビ放送は 1953 年 2 月に NHK、同年の

8 月に日本テレビが開局して始まったが、NHK の開局当時の視聴世帯数は 800 世帯前後で日本テレ

ビ開局後も 1000 世帯前後であった。メディアとしてはあまりにあまりに貧弱だったために放送局

側が都内の数十カ所にわたって街頭テレビが設置したり、メーカー側が巡回テレビカーなどを用

意する始末であった。しかし、1955 年にはテレビ受信契約数が 10 万台を突破、そしてわずか 5

年後の1960年には前年の皇太子ご成婚の生中継もあり、その数が500万台を突破していた。また、

NHK の国民生活時間調査によると 1960 年のテレビ視聴時間は 1 日でおよそ 56 分だったが、東京

オリンピックの翌年、1965 年の調査では約 2 時間 52 分と急激な伸びを見せている。

そして、この昭和 30 年代には企業のマスコット・キャラクターによるアニメーション CM が非

常に多く登場している。この時代に登場したキャラクターには寿屋(現サントリー)のアンクル

トリスや桃屋ののり平、ヤンマーディーゼルのヤン坊マー坊などの今現在においても著名なキャ

ラクターがいくつも登場しており、そしてこれらはすべてアニメーションである。

図 2.12 三菱電機の三菱ミキサー(1955)*17 図 2.13 三共電機の三共洗濯機(1957)*18

図 2.14 救心製薬「延若」(1956)*19 図 2.15 新白砂電機「シルバーラジオ」(1954)*20

倉橋‐17

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なぜ当時の CM にアニメーションが多用されたのだろうか。吉村(2007)によれば、これらの

CM にアニメーションが多用された理由を技術的なものが大きかったと指摘している。制作スタッ

フの実写フィルム制作におけるノウハウの積み重ねが充分でなかったり、当時の白黒テレビだと

実写よりもアニメーションの方が見栄え良くできるなど、アニメーションの CM 制作の方が作りや

すいという背景があった。

そして、この時代の CM アニメーション制作によるノウハウや資金の蓄積が、鉄腕アトムや鉄人

28 号などの国産のテレビアニメシリーズ(アニメーション映画は戦前からあったものの毎週放映

するアニメシリーズは前代未聞だった)の量産化体制を可能にしたのではないかと指摘している。

(吉村,2007)

図 2.16 鉄腕アトムの「アトム」*21 図 2.17 鉄人 28 号の「金田少年」*22

2.4 キャラクター(人格)の付加

そして、この時代に登場した企業のマスコット・キャラクターの中のいくつかには以前のマス

コット・キャラクターには見られなかった要素がいくつか見られる。テレビという新しいメディ

アの登場により広告表現の幅は大きく広げられたため、キャラクターの詳細なバックグラウンド

を付加することができるようになった。とりわけアンクルトリスの存在は際立って大きい。壽屋

(現:サントリー株式会社)の開高健、柳原良平、酒井睦雄の 3 名により、当時としては非常に

細かい人物設定がなされていた。

「飲んベエなのは当然である。小心者だが思い切ったこともする、少しエッチで女好きだが正義感

は強い、あまり喜怒哀楽をあらわさないが神経は細やか、あとは忘れた。」(ポッププロジェクト,

2004 ,p38)

この設定はアンクルトリスに付加された人格、性格としてのキャラクターである。アニメーシ

ョンでしかできない独自のコミカルな表現で人気を博したCMは 終的に200本近くにまで及んだ。

1958 年に放送されたアンクルトリスの CM(題名:トリスバー)は全日本シーエム放送連盟(ACC)

により設立されたCM殿堂第1回の選考会で殿堂入りさえ果たしている。このアンクルトリス以降、

倉橋‐18

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倉橋哲平■企業とキャラクター

企業オリジナルのアドキャラクターに詳細な設定を作るという手法が徐々に浸透していった。(ポ

ッププロジェクト,2004)

2.5 商品とキャラクターの結びつき

テレビなどのコンテンツ系の産業が少しずつ拡充されていった昭和 30 年代は、次第にそれらの

コンテンツ系のキャラクターを商品と結びつける、キャラクターブランドプロダクトの動きが出

てきた。

1963 年 7 月に明治製菓はマーブルチョコレートに、単独でスポンサー提供していた「鉄腕アト

ム」のキャラクターのおまけシールを封入するキャンペーンを開始した。当時、森永製菓のおま

けとしてバッヂを封入した競合製品、パレードチョコが人気を博していた。当然これに呼応する

形でマーブルチョコレートもおまけを付けようとしたが、しかしマーブルチョコレートは筒型と

いう形がネックとなり、なかなかおまけを入れることができずにいた。仕方なく筒型でも入れる

ことのできる薄いシールを封入してスポンサー提供していた「鉄腕アトム」のキャラクターの絵

をつける、という対抗策をとった。この「シールをおまけとして封入する」という手法は当時と

しては前例が無く、いわば苦肉の策であった。しかしながらこの戦略は成功し爆発的な売れ行き

を見せた。

「鉄腕アトム」が 1963 年から 1967 年までの長期にわたり放映された理由は単にアニメ自身の

人気があったため、という理由だけではなかった。「鉄腕アトム」の単独スポンサーである明治

製菓が作製したおまけのアトムシールは制作が容易で、バリエーションを簡単に増やすことがで

きた。つまり、お茶の水博士やウランなど、アニメ内での登場キャラクターを増やすことで、お

まけのバリエーションを多彩に広げられたのである。オバケの Q 太郎が 20%~30%の高視聴率を誇

っていたにも関わらず、キャラクター関連商品の売れ行きが不振という理由で打ち切られてしま

ったのとは対照的に鉄腕アトムが長期にわたって放映され続けたのはこういった背景もあると山

崎(2005)は指摘している。鉄腕アトムシールの大成功により、各企業はテレビアニメのスポン

サー枠をこぞって獲得しようとした。これよりキャラクターは本格的に商品との結びつきを強め

ていった。

2.6 ハローキティ以後

1974 年登場したハローキティは無表情なキャラクターという意味で 近になって「むひょキャ

ラ」といわれるようになった。このハローキティに代表される「むひょキャラ」については第 3

章で詳しく述べるとする。

ハローキティの登場以後は、それまでは「おまけとして」別の商品に付随していたキャラクタ

倉橋‐19

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ーがそのまま単体で商品化される事が多くなっていった。それまで多く見られてきた人間をモチ

ーフとしたキャラクターが徐々に衰退をはじめ、かわりに動物をモチーフとしたキャラクターが

多くなる傾向が見られる。また、80 年代はファミリーコンピュータが登場し、様々なソフトが販

売され人気を誇った。キン肉マンやガンダムなどのブームもこの頃と一致している。

こうした傾向から単一の企業独自のマスコット・キャラクター(オリジナルキャラクターブラ

ンド)は、少しずつ廃れていった。しかし 90 年代に入ると企業も大量のキャラクターを登場させ

るという手法に追随し、ペアやチームを組んで 初から複数でいるキャラクターが多く登場した。

あるいは既存のキャラクターになんらかの関連性を持たせた新キャラクターを追加させテコ入れ

を図るといった動きも見られた。DC カードの「カッパとたぬき」や湖池屋の「スリーポリンキー

ズ」らが登場した 1990 年代以降それらは顕著に見られる(キャラデパ mia,2003)。また、おや

つカンパニーも 1992 年にそれまでの「ベビーちゃん」から「ベイちゃん」に刷新され、2000 年

に「ビーちゃん」というキャラクターを加えて「ベイちゃん・ビーちゃん」としてペアになった。

他にも、キレイママやビオレママなど母親を核とした家族をイメージしたキャラクターも登場し

た。

表 2.1 1980~ 1990 年代複数キャラクター

1983 ライオンちゃん一家 ライオン

1985 カバ親子 明治製菓(イソジン)

1990 カッパとたぬき DCカード

1990 スリーポリンキーズ 湖池屋

1991 バザール・デ・ゴザール一家 NEC

1993 たまちゃん、ひよちゃん ベネッセコーポレーション

1994 さやえんどうず カルビー

1996 マーブルわんちゃん 明治製菓

1997 キレイママ一家 ライオン

1998 バリン&ボリン 栗山米菓

1999 ビオレママ一家 花王

そして、2000 年代に入るとダイキンの「ぴちょんくん」、サントリーの「DAKARA 小便小

僧」、興和の「液キャベコーワ・ウナコーワ」、ファルマシアの「吸いたくなるマン」など

のように人間でも動物でもなく、無生物をモチーフとしたキャラクターが多く登場する傾向

が生まれた。

倉橋‐20

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倉橋哲平■企業とキャラクター

図 2.18 ぴちょんくん *23 図 2.19 吸いたくなるマン*24

キャラクターと消費者

この章では近年のキャラクターがどのような形で消費者からの支持を集めたのか、大塚の

(2001)「物語消滅論」、 香山リカ・バンダイキャラクター研究所(2001)の「87%の日

本人がキャラクターを好きな理由」、相川(2007)の「キャラ化するニッポン」を参考に

まとめていく。

3.1 キャラクターの向こう側

キャラクターと企業との結びつける上で重要なひとつの象徴的な商品がある。1985 年に登場し、

大ヒットしたロッテのビックリマンチョコレートである。この商品はお菓子のチョコレートに附

属のおまけとして漫画風のキャラクターが描かれたシールを一枚添付するというものであった。

しかし、こういった「おまけで類似製品との差別化を図る」という手法は古典的なもので、第 2

章で取り上げた鉄腕アトムのシール入りのマーブルチョコレートや、1971 年に発売されて同じよ

うな社会現象を起こした仮面ライダースナックなどもほとんど同じ仕組みである。鉄腕アトムや

仮面ライダーはアニメや特撮として既に人気を博しており、キャラクターブランドプロダクトと

してはうってつけの存在だったと言える。しかし、ビックリマンチョコレートはあくまでロッテ

によるオリジナルキャラクタープロダクトであり、アニメや漫画などで既に人気を獲得していた

わけではない。

なぜビックリマンチョコレートはオリジナルキャラクタープロダクトでありながら社会現象を

巻き起こすほどのヒット商品になったのだろうか。大塚(2001)によれば、ヒットの要因は神話

倉橋‐21

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のように非常に細かく作り込まれた世界観や多種多様なキャラクターに設定された物語にあると

指摘している。シールはいわばキャラクターを媒体とした「物語」への入り口であり、子供たち

が買い求めたのはチョコレートではなく「キャラクター」や「物語」そのものである、と大塚(2001)

は結論づけた。

また、ビックリマンチョコは一枚のシールにわずかな断片情報だけを載せ販売された。ビック

リマンシールはあえて不透明、不十分な情報を提示することで、消費者が自らがキャラクター像

やそれに付随する物語を作り上げていった。こうした消費者が入り込む空白、余地を残すことで

大量生産製品をそれとなく個々の消費者の好みに合わせた製品に作り替えていったと言える(大

塚,2001)。

3.2 むひょキャラ

近年人気がある「たれぱんだ」や「こげぱん」、「リラックマ」「キティ」などのキャラクタ

ーにはひとつの共通点があり、そのいずれもが表情が乏しい無表情なキャラクターだということ

である。これらのキャラクターは「むひょキャラ」と呼ばれカテゴライズされている。

図 3.1 ハローキティ *25 図 3.2 たれぱんだ *26

なぜこのような無表情なキャラクターが支持を集めるのか、香山(2001)は次のように説明し

ている。現代人は他者と関係を深めていくといったようなことに対して嫌悪感を感じてしまうと

いう心理傾向が見られ、感情や喜怒哀楽をはっきりと表したキャラクターに押しつけがましい表

情を向けられるのは昔と比べると疲れてしまうといった意見が多くなっている。それよりは感情

が欠落したかのようなのっぺりとした顔や自ら何かを主張する事のない物言わぬ顔の方が、自分

の気持ちや感情をキャラクターに対してよりストレートに投影することができる。「自分が悲し

い時は一緒に泣いてくれて、嬉しい時は一緒に喜んでくれる」などと自分の都合に合わせて、自

由に表情を解釈することができる。消費者はキャラクターの無表情=余地の部分に自分の都合に合

わせた感情を入れ、庇護や安らぎを求めるのである(相原,2007)

倉橋‐22

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倉橋哲平■企業とキャラクター

戦前のキャラクターは区分けとしての役割を担っていた。「この図が張られているビールは A

社の製品である」といったように区分けのためのロゴとしての意味合いが非常に強かった。しか

し、徐々にキャラクターのデザインの中に企業としての姿勢や商品の強みをある程度反映させる

ようになったように思える。第 2 章の梅毒薬「毒滅」の新聞広告(図 2.6)などには厳つい顔の

ビスマルクが大きくあしらわれ、消費者に「いかにも効果がありそうだ」と思わせるには充分だ

っただろう。

企業がかつては区別のロゴとして使っていたキャラクターは、やがて商品を消費者に強く訴求

するためのセールスマンとなり、ついにはその商品を追い越して単独で商品として成立するに至

った。企業にとってキャラクターとは、もはや商品の一形態に過ぎなくなっていた。

1980 年代に登場し絶大な売上を記録したビックリマンチョコは、それ以前に登場し、社会現象

まで起こすヒット商品となった仮面ライダースナックとは大きく異なっていた。仮面ライダース

ナックがはじめから「仮面ライダー」という完成された物語からキャラクターをおまけとして引

用しているのに過ぎなかったのに対し、ビックリマンチョコは完全に企業オリジナルのキャラク

ターだった。そして、肝心のおまけのシールには全容のよくわからない、不十分な物語の小さな

断片情報が載っているだけだった。しかし、その情報の不十分さ、不透明度は消費者にとって、

空想や想像の余地として機能した。あえて空白を残すことで個々の消費者が自発的に商品に対し

て入り込む。大量生産品が自動的に消費者にとって都合の良いように作られた自分だけの特注品

となりうるようになった。このビックリマンで提示された「空白、余地の部分に消費者自らが入

り込む」という構造は、むひょキャラなどに受け継がれた。「無表情なキャラクターの中に自分

の都合にあわせた感情を入れる」という形でむひょキャラに受け継がれた。

しかし 1960 年代の桃屋のオリジナルキャラクター「のり平」はむひょキャラとは違い、当時の

世相を色濃く反映した CM で人気を博した。人類初の月面到達があれば宇宙飛行士として CM に出

たし、国会で一悶着あれば政治家として CM に出た。第 2 章で挙げた富士銀行の「ボクちゃん」は

世相を反映するだけでなく、世界の様々な民族衣装を身にまとい、顧客を楽しませた。1960 年代

のキャラクターが現実世界の鏡として機能していたといえる。しかし、「むひょキャラ」などに

はそういう傾向はあまり見られない。四季など小さな変化を取り入れたりはするものの、現実世

界に起こる事象を意識することはほとんどない。世間の動きに合わせて変化し、世の中の鏡とし

て機能した 1960 年代のキャラクターと、無表情で変化をせず、自分の鏡として機能したむひょキ

ャラこの二つは非常に対照的だと考えられる。1960 年代当時の世相が高度成長期もあって比較的

明るい話題に満ちていたということも考えられるが、それ以上に人々が世間に対しての関心を失

い、自分の身の回りの事の方にしか興味がもてなくなったように思う。

倉橋‐23

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香山(2001)は、むひょキャラを論ずるにあたり、むひょキャラ人気の原因の一つに現代人の

他者とのコミュニケーションを嫌う傾向がある、といったように述べた。現代人はコミュニケー

ション嫌い、と言われてしまうとなんとなく「そういえばそうかもしれない」といったように思

えてしまう。が、私はこれが必ずしも的を射ているとは思えない。むしろ現代人は積極的にコミ

ュニケーションを望んでいるように思える。1970 年代以降に見られた動物のキャラクター化傾向、

2000 年代に見られた無生物のキャラクター化傾向があったが、企業はこういった人間をモチーフ

としていないキャラクター達にまでさえ、詳細な人格や、背景、設定などを作り、あたかも人間

のようなキャラクターを作った。だが、本当に他者とのコミュニケーションを嫌っているのであ

れば人間のようなキャラクターを作る必要はないはずである。消費者は擬似的にとはいえども人

間のように振る舞う他者としてのキャラクターを望んだと言えるのではないだろうか。

1990 年代以降、キレイキレイ一家、ビオレママ一家、あるいは 2000 年代のホワイト家族など

といった家族系のキャラクターが多く生まれてきたが、これは擬似的な家族としての需要があっ

たからではないか、とも考える事もできる。家族系のキャラクターは多くが一組の夫婦とその子

供達という構成でこれは核家族化が進展した現代を反映していると言える。マスコット・キャラ

クター達が演じる穏やかな家族劇は、少し見た感覚では「家族とはこうあるべき」といった押し

つけがましい印象はしない。エンタテイメント的な面白さを強調したものもあるが、どちらかと

いえばどこにでもある家族のどこにでもあるような風景を表現しているものが多いという印象を

受ける。だが、これは日常性を表現することによって、家族の強い普遍性を表しているものだと

私は思う。

多様化が進んだ現代においては、かえって強固なモデルケースのような存在が人々の興味や関

心を引くのではないだろうか。人の手によって人間のような設定を背負わされたキャラクター達

は、これからもその時代ごとに合わせた形態でこれからも生み出され続けるだろう。

企業がかつては区別のロゴとして使っていたキャラクターは、やがて商品を消費者に強く訴求

するためのセールスマンとなり、ついにはその商品を追い越して単独で商品として成立するに至

った。企業にとってキャラクターとは、もはや商品の一形態に過ぎない。

倉橋‐24

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倉橋哲平■企業とキャラクター

引用文献・参考文献

【注】

*1 1960 年代のトリスの CM [online]

http://jp.youtube.com/watch?v=BbSk1s7hH50(参照年月日 2008 年 10 月 27 日)

*2 コーポレートブランドキャラクターとしてのカーネル・サンダース[online]

http://www.kfc.co.jp/info/index.html(参照年月日 2008 年 10 月 27 日)

*3 リテールブランドキャラクターとしてのカーネル・サンダース[online]

http://www.kfc.co.jp/info/index.html(参照年月日 2008 年 10 月 27 日)

*4 ANA のポケモンジェット[online]

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%82%B1%E3%83%A2%E3%83%B3%

E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%88(参照年月日 2008 年 10 月 27 日)

*5キャラクターに求められる効能

相原博之,『キャラ化するニッポン』,講談社現代新書,2007,p41.

*6 1889 年のキリンのラベル[online]

http://www.kirinholdings.co.jp/company/history/history1.html(参照年月日 2008 年 10 月

20 日)

*7 福助足袋の福助マーク[online]

http://www.fukusuke.co.jp/museum/logo/index.html(参照年月日 2008 年 10 月 20 日)

*8 森永製菓のエンゼルマーク[online]

http://www.pref.saga.lg.jp/at-contents/kenseijoho/koho/zanza/46/02.html(参照年月日

2008 年 10 月 20 日)

*9 1900 年の「毒滅」新聞広告[online]

http://www.jintan.co.jp/museum/ads/900_4.html(参照年月日 2008 年 11 月 2 日)

*10 仁丹看板[online]

http://www.rose.ne.jp/~perceus/horo/kusuri/jintan2.html(参照年月日 2008 年 11 月 2 日)

*11 ビクターロゴ[online]

http://www.interq.or.jp/classic/classic/LP_data/victor/preface.html(参照年月日 2008

年 10 月 27 日)

*12 His Master's Voice[online]

http://www.christostango.com/(参照年月日 2008 年 10 月 20 日)

*13 大阪商船ポスター

倉橋‐25

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中井幸一『日本広告表現技術史―広告表現の 120 年を担ったクリエイターたち』玄光社,1991.

p117.

*14 信用金庫協会「しんちゃん」

オオタマサオ『広告キャラクター人形館-昭和 30 年代のスターたち』筑摩文庫,1995.p137.

*15 日本勧業銀行「のばらちゃん」

オオタマサオ『広告キャラクター人形館-昭和 30 年代のスターたち』筑摩文庫,1995.p127.

*16 「ボクちゃん」貯金箱のバリエーション

オオタマサオ『広告キャラクター人形館-昭和 30 年代のスターたち』筑摩文庫,1995.p131.

*17 三菱電機の三菱ミキサー

山田奨治編『文化としてのテレビ・コマーシャル』世界思想社教学社,2007.p65

*18 三共電機の三共洗濯機

山田奨治編『文化としてのテレビ・コマーシャル』世界思想社教学社,2007.p65

*19 救心製薬「延若」

山田奨治編『文化としてのテレビ・コマーシャル』世界思想社教学社,2007.p66

*20 新白砂電機「シルバーラジオ」

山田奨治編『文化としてのテレビ・コマーシャル』世界思想社教学社,2007.p66

*21 鉄腕アトムの「アトム」[online]

http://www23.tok2.com/home/greenhat/history/38.html(参照年月日 2008 年 11 月 3 日)

*22 鉄人 28 号の「金田少年」[online]

http://wiki.livedoor.jp/ebatan3/d/%B6%E2%C5%C4%C0%B5%C2%C0%CF%BA(参照年月日 2008 年

11 月 6 日)

*23 ぴちょんくん[online]

http://blog.goo.ne.jp/ma100hide/e/03ccb0a6e6baeff9b57e2aad38910754(参照年月日 2008

年 12 月 11 日)

*24 吸いたくなるマン[online]

http://www.daikokudrug.com/tokushu/kinen/kinen.html(参照年月日 2008 年 12 月 11 日)

*25 ハローキティ[online]

http://item.rakuten.co.jp/popcute/sbc-9kt10471--10473/(参照年月日 2008 年 12 月 11 日)

*26 たれぱんだ[online]

http://gomojiten.ggpp.cc/?cid=28171(参照年月日 2008 年 12 月 11 日)

【参考文献】

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日本シーエム放送連盟(ACC)創立 40 周年記念誌』,宣伝会議,2000.

全日本シーエム放送連盟,『ACC CM 年鑑 2004』,宣伝会議,2004

山田奨治編,『文化としてのテレビ・コマーシャル』,世界思想社教学社,2007.

倉橋‐26

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倉橋‐27

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附属資料 マスコット・キャラクター年表

マスコット・キャラクター年表

西暦 キャラクター 時代背景

1887

1888

1890

1898

1900

1905

1909

1910

1913

1922

1928

1933

1945

1949

ヱビスビールのヱビスさま登場

キリンビール、キリンのラベル登場

花王のお月さまのマーク登場

仏ミシュランのムッシュ・ビバンダム登場

「His Master's Voice」の絵が商標登録される

森永製菓のエンゼルマーク登場

ブルドッグソースのブルドッグが商標登録され

金鳥の鶏が商標登録される

キャメルのパッケージにオールドジョーが登場

グリコのランニングマークが登場

キューピーマヨネーズのキューピーが商標登録

される

牛乳石鹸の牛のマークが登場

ビスコの商品パッケージにビスコ坊やが登場

オリエンタルカレーのコックが登場

くいだおれ太郎が大阪に登場

不二家のペコちゃん登場

銀座にサンドイッチマンが登場

大日本帝国憲法発布

富山で米騒動

日本映画が初めて制作

義和団事件

ポーツマス条約、日露戦争終戦

伊藤博文暗殺

NY株大暴落、世界恐慌

原爆投下、終戦

ドッジライン実施

倉橋‐28

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倉橋哲平■企業とキャラクター

1950

1951

1952

1955

1956

1957

1959

1960

1962

1965

1966

1967

1968

1970

メンソレータムのリトルナース登場

エスエス製薬のピョンちゃん登場

米ケロッグのトニー・ザ・タイガー登場

米マクドナルドのドナルド登場

寿屋のアンクルトリス登場

ヤマト運輸が米アライド・ヴァン・ラインズ社

の猫のマークを使用

ヤンマーディーゼルの提供による気象情報番組

、「ヤン坊マー坊天気予報」が開始

桃屋ののり平登場

マルコメのマルコメ君がCMに登場

ブラックニッカのキング・オブ・ブレンダーズ

登場

明星食品のチャルメラおじさん登場

森永製菓のチョコボールのパッケージにキョロ

ちゃんが登場

日清食品の出前一丁に出前坊やが登場

ケンタッキーフライドチキンの日本一号店がオ

ープン、店頭で立像が設置

小僧寿司チェーンの小僧が登場

朝鮮戦争

テレビ本放送開始(NHKと日本テレビ)、サンフラ

ンシスコ平和条約

GHQ廃止、全日本広告連盟発足

テレビの受信契約数が1万件を突破

第一回原水爆禁止世界大会

テレビ受信契約数30万件を突破

この頃、テレビ広告費がラジオ広告費を抜く

所得倍増計画

キューバ危機

東京オリンピック

米軍、北爆開始

カラーテレビの全国網完成

「週刊漫画アクション」「ヤングコミック」「COM

」創刊

ラジオ受信料廃止

プラハの春、日本のGNPが世界第2位

よど号ハイジャック、三島由紀夫自殺

倉橋‐29

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1972

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1982

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1987

1988

1989

1990

ポッカの缶コーヒーに男の顔(正式名称不明)

が登場

サンリオのハローキティ登場

メガネドラッグのモモちゃんが登場

明治製菓のカールおじさんがCMに登場

なめ猫大ブーム

赤城乳業のガリガリ君登場

ペンギン、サントリー缶ビールのイメージキャ

ラクターとして登場

カイゲンの風神誕生

コアラのマーチが発売

湖池屋カラムーチョのヒーおばあちゃん登場

イソジンのカバ君、CMに登場

ロッテのビックリマンチョコ、

ビックリマンシールが大ヒット

警視庁のピーポ君登場

ミスターフレンドリー登場

東京電力のでんこちゃん登場

テンコーポレーションのてんやおじさん登場

カッパとたぬきがDCカードCMに登場

湖池屋のスリーポリンキーズ誕生

自衛隊のピクルス王子とパセリちゃん登場

チキンラーメンのひよこちゃん登場

フジカラーパレットプラザのニャン太登場

セガのソニックがゲームに登場

浅間山荘事件、ミュンヘンオリンピック

オイルショック、江崎玲於奈がノーベル物理学賞受

深夜放送中止、高校進学率90%を超す、佐藤栄作が

ノーベル平和賞を受賞

レーガン大統領就任、ローマ法王来日、中国残留孤

児団の肉親捜索開始

東北新幹線開業、日航機逆噴射墜落事故、500円硬

貨発行

東京ディズニーランド開演、ロス疑惑、大韓航空機

事件

グリコ森永事件、ガンジー暗殺、ロサンゼルスオリ

ンピック

ゴルバチョフ書記長就任、広島で第一回国際アニメ

ーション・フェスティバル開催

日本航空民営化、ブラックマンデー(NY株式市場大

暴落)

リクルート事件、ソウルオリンピック、東京ドーム

完成

天皇崩御、天安門事件、消費税開始、ベルリンの壁

崩壊

ゴルバチョフ初代大統領就任、東西ドイツ統一、イ

ラク軍クウェート侵攻

倉橋‐30

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倉橋哲平■企業とキャラクター

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1994

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1996

1997

1998

NECのバザールでござーる登場

呉羽化学工業のキチントさん登場

サントリーのBOSSコーヒー登場

日本テレビのなんだろうくん登場

税関のキャラクターカスタム君登場

サンライズのCMでゴン太登場

JALリゾッチャのキャラクター太平洋ちゃん登

NTTのタウンページ君登場

富士通のタッチおじさん登場

JR東日本のトレン太くん登場

ペプシコーラのペプシマン登場

ナムコナンジャタウンのナジャヴ登場

ポケモンがゲームに登場

東京湾アクアラインのマスコットに登場

明治製菓のアポロチョコにアポロちゃん登場

新潮文庫のYonda?登場

郵政公社のポストン登場

日光江戸村にニャンまげ登場

駅ビル「ルミネ」のキャラクター、ルミ姉登場

サントリーのソフトドリンクなっちゃん登場

TOTOのベンキくん登場

NHKのどーもくん登場

たれパンダブーム

東北電力のえここ登場

海上保安庁のうみまる登場

コカコーラ社のQooが登場

味の素のごはんがススムくん登場

SCEのゲーム「どこでもいっしょ」が発売

湾岸戦争勃発、ソビエト連邦解体、バブル崩壊、雲

仙普賢岳大噴火

毛利衛がスペースシャトルで宇宙飛行、山形新幹線

開業、公立の小中高等学校で第二土曜日が休校制と

なる

EU発足、クリントン大統領就任

関西国際空港開港、水不足

阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、フランスがム

ルロア環礁で核実験、ウィンドウズ95発売

ペルー日本大使館人質事件、 藤子・F・不二雄、

渥美清死去

アジア通貨危機、神戸連続児童殺傷事件

ダイアナ元皇太子妃が交通事故死

印パ核実験、Windows98発売、和歌山毒物カレー事

件、黒澤明死去

倉橋‐31

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1999

2000

2001

2002

2003

NHKのだんご3兄弟がCDとして発売

国勢調査のセンサスくん誕生

ダイキン工業のぴちょん君登場

サントリーのDAKARAのCMにおいて小便小僧登場

NHKドラマ「ちゅらさん」からゴーヤーマンが登

サッポロ生搾りのCMにドン・シボリオーネ登場

アイフルのCMにおいてチワワのくーちゃんが登

NOVAのNOVAうさぎ登場

ホクトのCMで「きのこ組」登場

キリン生茶の生茶パンダ登場

東京シティ競馬のうまたせ君が登場

アンクルトリスのCMが復活

EU内統一通貨ユーロ登場、2000年問題、ジャイアン

ト馬場死去

小渕恵三首相が在職中に死去、雪印集団食中毒事件

、佐賀バスジャック事件、2000円札発行

ユニバーサル・スタジオ・ジャパンがオープン、小

泉内閣発足、アメリカ同時多発テロ

住基ネットワーク開始、日朝首脳会談、完全週五日

制、モスクワ劇場占拠事件

イラク戦争、六本木ヒルズオープン

倉橋 哲平(くらはし・てっぺい)

1987年生まれ。草加高校出身。

[趣味]映画、漫画鑑賞

[サークルなど]漫画研究会

[関心]語学

[一言コメント]

なんとか完成させることができました。辛かったですが

この経験はいつかどこかで役に立つことがあると思い

ます、きっと。

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倉橋哲平■企業とキャラクター

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