f-14 vaping © richard vandermeulen / planepix · 2017. 8. 1. · f-15 にテコ入れするよう...

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F-14 vaping © RICHARD VANDERMEULEN / PLANEPIX.COM

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TOMCAT

F-14 Tomcat sunset © TOM TWOMEY / PLANEPIX.COM

本書を卓越した人物であり、優れた写真家であったジョージ・ホールの思い出、精神、そして理想に捧げる。ジョージは本書を生み出したチームの原動力だったが、その刊行を目にすることはなかった。出版決定から間もない2006年4月、心臓病のため彼は手術台で不帰の人となった。それから数か月後、本書はトムキャットの退役に合わせて出版され、大成功を収めた。彼の死により海軍航空界と航空写真界は最もひらめきと才能にあふれた商業写真家をひとり失った。だがジョージはそれ以上の存在だった。彼は出会った皆と親交を結び、無数の写真家、ライター、編集者たちの指導者であり協力者、そして友人であった。

―――― 2011年、デイヴ・パーソンズ

全体権利者:© 2006 planepix.com

各個人権利者:© Dave Baranek© Dan Bayer© Ted Carlson© John Cetrino© Keith Chapman© John Clark© Pete Clayton© Curtis Fowles© Mike Grove© George Hall

© CJ Heatley© Jon Houghtaling© Jan Jacobs© Bob Lawson© John Lillard© Rick Llinares© Bill Minich© Dave Parsons© Dana Potts© Tyson Rininger© Barry Smith© Katsuhiko Tokunaga© Tom Twomey© Richard VanderMeulen

All Rights Reserved

*本書掲載のすべての写真はwww.planepix.comから 最高画質のフォトプリントがご入手いただけます。

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CHECK SIX

F-14 Tomcat sunset © TOM TWOMEY / PLANEPIX.COM

本書の刊行はノースロップ・グラマン統合システムズ社の矜持をもつ男女からの支援によって可能になった。

彼らはトムキャット伝説を陰で支えた人々だ。

私たちの背シックス

後をチェックしてくれてありがとう。

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トム "スタウト" マクギネスへ。彼は非凡なトムキャッターであり、2001年9月11日にアメリカン航空11便の副操縦士を務めていた。

Any Time, Baby...! いつまでも、ベイビー……!

Pick Of The Litter 究極の逸品

Tomcat Ball トムキャットボール

Feet Wet 洋上飛行

Fangs Out 攻撃準備完了

Zone V 第5ゾーン

Nine Lives 猫に九生あり

Bombcat ボムキャット

Top Cats トップキャッツ

Feline Grace ネコ族の美徳

Call Signs コールサイン

Swan Song 白鳥の歌

Stout and Tumor on cat © GEORGE HALL / PLANEPIX.COM

DEDICATION

005

F-1

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AIM

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CONTENTS

006

パワフルで信頼性の高いF-110双発エンジンの排気ガスが鼻孔に充満するのも、キャノピーを下ろして機体に生命を吹き込むまでだ。機

E C S

材冷却システムを通るエアーの唸り。各システムパワー、アップ。カ

キ ャ ッ ト

タパルト後方に駐機して、俺たちの順番を待つ。重量提示板員に了

ロジャー

解と合図、68,000ポンド、ベイビー、68,000ポンドか! ブン投げられるもんなら、やってみろ。ジェットブラスト・デフレクターが下がると俺たちは所定の位置へとタキシーする。2本のノーズタイヤで巧みにカタパルト軌条へ入っていく。それから(何十年も同じことを繰り返してるのに)トムキャット独特の甲板でのバレエが始まると、アドレナリンがあふれ出てくる。首脚ストラットを縮めた機体はまるで軌道式ドラッグスターみた

今でも目を閉じると次の射出のために後退するシャトルの音が聞こえてくる

F-14 Tomcat of VF-2 on cat © DAVE BARANEK / PLANEPIX.COMANY TIME, BABY...!

007

いだ。射出バー下げ、主翼モーター前進、フラップ下げ、外翼スポイラーモジュール回路遮断器を接続、古参RIOにはお馴染みの手順。ミサイル、爆弾、機関砲の安

オ ー デ ィ ー ズ

全装置解除が始まり、俺たちは両手を上に差し出す。カキ ャ ッ ト オ フ ィ サ ー

タパルト士官の手が上がる。パイロットはスロットルをMILパワーに入れ、操縦系統を確認する。操縦桿前、後、左、右、ラダー左、ラダー右。

「ムーチ、準備は?」 と彼。

右手の指で下部脱出ハンドルを撫でる。もちろん単に心構えのためだ。そして

答えは 「準レ デ ィ

備完了」 彼は左手で敬礼をキャットオフィサーと交わす。俺たちは二人ともやや前のめりになり、ベルトを胸に食い込ませる。誇り高いトムキャッターならばカ

キ ャ ッ ト シ ョ ッ ト

タパルト射出時にヘッドレストに自分のオツムを押しつけることはない。機体は前方に飛び出す前にぐっと沈み込むので、それだと脳天をしたたかに打つことになる。ふたつの噴煙を残し、俺たちは放たれる。空へ。

F-14 Tomcat of VF-2 on cat © DAVE BARANEK / PLANEPIX.COM

008

Tomcatters © TOM TWOMEY / PLANEPIX.COM

009

それから数時間、このマシーン(アメリカのノウハウと工業技術の驚異の結晶)をあらゆる事態に即応可能な状態に保ち続ける。どうやら今日は俺たちが世界を救う日じゃないようだ。そこで俺たちはある少年からのリクエストに応えて上

フ ラ イ バ イ

空航過することにする。あるいは、ただ可能だからという理由で音速の壁を突破する、そんなことをしても眼下の火種からずらかられるだけの高度は充分あった。もちろんこれは過ぎ去った日々のことだ。かつてこうして俺のメシの種だった物の残りかすは、もうじき航空博物館で展示されたり、正面ゲート前のポールの上に飾られるんだろう。目をつぶるだけで俺は似合わないキャップと色褪せたフライトジャケットを身に着け、若い少尉たち(それとも目配せしてくるどこかのバカや、武勇談を引っさげてくる奴もいれば、ない奴もいる)にうざったがれるオッサンに戻る。あいつらは本物の戦闘飛行隊だった。神に誓って間違いない。ソーズメン、ピューキンドッグズ、グリムリーパーズ、ダイアモンドバックス、そのすべての中心にいたのが、まさにあの飛行機だった。そしてあの機のハートと個性と魅力があんなにも凄かったから、あいつとの別れは搭乗する特権を味わった野郎たちを打ちのめした。もうお別れだ、親愛なる友よ。悲しみにくれる俺を許してくれ。話によれば未来の技術はすばらしいそうだし、新型機 (虫の名前がついたやつ!)にも探せばいい所はあるだろう。でも戦いの舞台で俺はいつもお前と一緒だった。お前が黄昏へと去るのを目の当たりにして、時の早さに驚かされる。俺たちが一心同体で、固い絆で結ばれ、お前あっての俺だったのは、ついこの間だった気がする。無限の可能性にあふれた世界は我らのもの、そうやって任務を遂げたよな。勝利の世界は俺たちのものだった。さらば偉大なる戦闘機よ。アメリカの流儀と我らが国土の守護者に恵みあれ。堂々たるお前の力強さと優美さをもう見られなくなるのはわかっている。技術が進歩しようとも、お前は誰にも負けなかった。思い出をありがとう!

ウォード "ムーチ" キャロル

WARD “MOOCH” CARROLL

WE'RE FLYING A TOMCAT,BABY...!俺たちはトムキャットを飛ばしてたんだぜ

Tomcatters © TOM TWOMEY / PLANEPIX.COM

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F-14A moves to cat © TOM TWOMEY / PLANEPIX.COMPICK OF THE LITTER

THE CLAWS COME OUT飛び出した鉤爪

011

トムキャットの誕生にはひどく時間がかかった。ペンタゴンにマクナマラの神

ウィズキッズ

童たちがいた時代、彼らは空軍と海軍で共用可能な新型戦闘機に固執していた。その不幸な機は試

T F X

作戦術戦闘機といい、F-111となった。F-111Bは海軍型だった。これを 「鬼

デヴィアント

っ子」 と揶揄する者もいた。同機はアンダーパワーで、着艦時にMIL出力でも必要な加速力を出せない代物だった。海軍のテスト結果はどれも惨憺たるものだったが、にもかかわらず計画は進められた。上院公聴会でこのプロジェクトに引導を渡したトム・コノリーは、真のアメリカンヒーローだった。上院軍事委員会議長ジョン・ステニス上院議員に召喚されたコノリーは率直に報告した。 「議長殿、全キリスト教世界がどう頑張ろうとも、この飛行機を海軍の戦闘機にはできません」 その瞬間、デヴィアントは死に、トムキャットが生まれた。コノリー海軍中将はこれが自分の軍歴の終止符となるのを予見しており、事実そのとおりになった。だが彼は自分のなすべきことを果たしたのだった。

ポール "ゲイター" ギルクリスト

PAUL “GATOR” GILLCRIST

私がまだ若手戦闘機パイロットだったころ、誰が最強の空戦名人なのかで、いつも喧々囂々の議論があったが、これはまだ一人前でない後輩から挑戦的に吹っかけられる場合もあった。生意気野郎への私のお決まりの台詞はこうだった。 「い

A n y T i m e , B a b y

つでも来な、ベイビー!」 トムキャットの基本ロゴマークの開発中、マンガのネコに何かキャッチーな文言が要ることがわかった。こうして 「ATB」 が復活したのだが、驚いたことに例の成り上がり航空グループがその後、金ピカメッキでぼったくり価格のスパローシューター、F-15にテコ入れするようになったのだ。

ノーム・ガンディア

NORM GANDIA

F-14の成功の最大の功労者はグラマンF-14計画初期のパイロット、ビル・ミラーだろう。一人の海軍テストパイロットとして彼は駄作機F-111Bのテストに深く関わり、あの不幸な機体に巣食う問題を何とかしようと心に決め、全身全霊で取り組んでいた。彼ほど才能にあふれる働き者で、謙虚だった人物を私は知らない。あの飛行機で見せた彼のひたむきさは、F-14の10号機での事故死の予兆だったかもしれないが、少しでも彼がそれを悔やんだとは思えない。

カート・シュローダー、グラマン社主任テストパイロット

KURT SCHROEDER, GRUMMAN CHIEF TEST PILOT

F-14A moves to cat © TOM TWOMEY / PLANEPIX.COM