大規模サルモネラ食中毒に注意! 国内外の事例と米...
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大規模サルモネラ食中毒に注意! 国内外の事例と米国の新たな検査体制
(財) 東京顕微鏡院 食と環境の科学センター
麻布大学 客員教授
伊藤 武
For Life and Environment of All People
Since 1891
サルモネラサルモネラ
分類分類 Salmonella entericaSalmonella enterica 亜種亜種enterica enterica
血清型血清型 約約25002500 亜種亜種entericaenterica 約約15001500
分布分布 家畜家畜、、家禽家禽、、温血動物温血動物、、 冷血動物冷血動物、、魚介類魚介類 環境環境::河川河川、、
グラムグラム陰性陰性、、桿菌桿菌、、 周毛周毛、、通性嫌気性通性嫌気性
サルモネラ属の分類
Salmonella enterica subsp. enterica(亜種Ⅰ)
salamae(亜種Ⅱ)
arizonae(亜種Ⅲa)
diarizonae(亜種Ⅲb)
houtenae(亜種Ⅳ)
Indica(亜種Ⅵ)
Salmonella bongori(亜種Ⅴ)
Dul ONPG Mal Sor
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
d d -
1435
485
94
321
69
11
20
Serovars
(1997)
サルモネラ食中毒の感染環
ヒ ト
と場
食鳥処理場 輸入食品
農作物、魚介類
輸入
動物
野生・動物
鼠・昆虫など
輸入飼料
農 場
飼料
肉粉・骨粉
羽毛粉・魚粉
ペット
ヒトの食品
環境
排水・下水・河川
飲 料 水
発 生 件 数
腸炎ビブリオ
ブドウ球菌 サルモネラ
カンピロバクター
病原大腸菌
ウエルシュ菌
セレウス菌 ウイルス
わが国における微生物による食中毒発生件数(患者数2名以上)
厚労省統計より
食品安全基本法 食品衛生法改訂
食鳥検査 精度
サルモネラ 対策
腸炎ビ ブリオ対策
大量調理 衛生管理 マニュアル
HACCP 導入
サルモネラ食中毒の月別発生
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
発生件数
2002
2003
2004
2005
2006
2007
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
月
発 生 件 数
血清型とサルモネラ食中毒 (患者数2名以上の事例)
サルモネラ食中毒の発生件数(患者数2名以上)
件
数
0
50
100
150
200
250
300
'85 '90 '95 '00
SE ST その他 不明
年
届出数は氷山の一角
食中毒であるか否かが明確でないの事例は届けられない
平成17年
平成18年
254,020名
145,757名
1,545,506名
1,644,158名
推定患者数
推定患者数
平成17年
平成18年
春日らの報告
サルモネラ食中毒
カンピロバクター食中毒
100事件(3,656名)
217事件(3,011名)
99事件(2,028名)
180事件(2061名)
S.Enteritidisによる食中毒の原因食品 (平成7-10年)
原因食品 事件数 原因食品 事件数
卵料理・加熱 洋菓子など 46
卵焼・炒り卵 44 タルタルソース 4
オムレツ 20 肉 類
どんぶり物 36 焼き肉・焼き鳥 12
魚介類と卵 19 ユッケ 4
サラダ 9 食肉製品 4
サンドイッチなど 8 レバー刺しなど 2
その他 1 野 菜
卵料理・生 加熱 6
生卵 19 和え物 16
マヨネーズ 7 その他 58
山かけ 14
S.Enteritidisによる食中毒の原因食品 (平成17-19年)
原因食品 事件数 原因食品 事件数
卵料理・加熱 洋菓子など 5
卵焼・炒り卵 2 タルタルソース 2
オムレツ 1 アイスクリーム 2
どんぶり物 4 肉 類
魚介類と卵 3 焼き肉・焼き鳥 2
ユッケ 2
サンドイッチなど 1 鶏肉料理 1
その他 8 寿司 6
卵料理・生 野 菜
生卵 3 未加熱 1
山かけ、とろろ 4 その他 5
プリン 2
印籠焼き(ほうれん草を巻き込んだ 卵焼き)の調理工程
8月29日
30日
14:00
17:00
4:00
5:00
6:30
9:00
10:30
(事業所給食、患者数:420名、菌数4.3×103cfu/g)
殻付き卵
割卵
3個の容器に分け冷蔵
室温30℃
冷蔵庫から出し攪拌
室温保存
ほうれん草を巻き込み焼く
90本を切る
盛りつけ、配膳
喫食
SE汚染卵
増殖
生存
12:00
増殖
鶏卵が原因と推察されるS.Enteritidisによる大規模食中毒
発生年月日:平成19年9月19日
原因施設 :仕出し弁当屋
患者数 :1,148名、喫食者数9,844名
原因食品 :18、19日の仕出し弁当
(推定 丼風煮物:鶏卵、豚肉、糸コン、人参等)
病因物質:S.Enteritidis
9月15日 鶏卵納入 冷蔵保管
17日 鶏卵128kg 手割り、ザルでこして卵殻等除去
100分以上室温放置 蓋なしバケツで冷蔵保管
18日 豚肉、野菜、糸コン等炒める、液卵を流し入れ
中心温度測定なし
室温放置 弁当調整
提供
病院食のスクランブルエッグによるSE食中毒
発生年月:平成20年8月
患者数:248名 原因施設:病院内患者用給食
原因食品:スクランブルエッグ
病因物質:Salmonella Enteritidis
原料の鶏卵にSE汚染(推定)
①1つの容器で混合
②スクランブルエッグの加熱不足:調理員から柔らかい等 の苦情がある。
③前日調理後緩慢な冷却
④当日 コンベクションオープンで再加熱:加熱温度不足
②~④ いずれも温度測定なし
⑤給食の提供まで室温放置(25~26℃)
学校給食による大規模なSE食中毒の概要
発生年月日 平成23年2月11日~
原因施設
患者数 7小学校と2中学校 1548名(全児童、生徒2,863名)
北海道 学校給食(共同調理場)
原因食品 2月9日提供のブロッコリーサラダ
汚染の要因
病因物質 Salmonella Enteritidis(SE) 入院患者15名、外来患者3名、調理従事者8名
・不適切な洗浄・消毒、 52~53℃のお湯による消毒
二次感染者
入院患者 19名
小学生1336名、中学生141名、教職員71名
サラダを攪拌する釜のアームシャフトからSE検出
・汚染区域と非汚染区域の区別が不明確 ・手洗い設備が不足
ブロッコリ-、人参、ドレッシング
・室温(29℃)に約3時間放置
21名+ (小中学生5名、乳幼児5名、成人1名)
調理機器の洗浄・消毒
①分解できる部品は取り外し、本体ともに洗浄
②本体はアルコールを浸したペーパータオルで 拭き伸ばす。
③分解した部品はアルコールあるいは 次亜塩素酸ナトリウム200ppm溶液に
5分間程度浸漬する。流水で十分洗い流し、
乾燥させる
熱湯による消毒は行わない
文部科学省の指導 洗浄・消毒マニュアルから
野菜等における食中毒細菌の汚染状況 厚生労働省:16自治体、平成17-19年
検体名 検査件数 E.coli O157
アルファルファ 89 10 - -
貝割れ 305 34 - - カット野菜 455 48 - -
キュウリ 350 30 2 -
みつば 232 76 - -
もやし 330 109 - -
レタス 330 24 - -
漬物野菜 271 8 - -
サルモネラ
食肉等における食中毒細菌の汚染状況 厚生労働省:16自治体、平成17-19年
検体名 検査件数 E.coli サルモ
ネラ O157 カンピロ
バクター
ミンチ肉 牛 438 257 9 - - 豚 551 382 22 1 - 牛・豚混合 344 238 7 - - 鶏 335 211 110 - (22) 生食用牛レバー 33 22 - 1 - 加熱加工用牛レバー 116 32 2 - (2) カットステーキ肉 465 277 - - - 牛結着肉 186 118 - - - 牛たたき 265 61 - - - 鶏たたき 110 64 11 - - 馬刺 243 61 - - - ロースとビーフ 195 16 - - - 生食用カキ 550 76 1 - -
鶏卵による食中毒防止対策 1998年11月 食品衛生法施行規則一部改訂とガイドライン
1.生食用鶏卵の表示 ・生食であることの表示
・10℃以下の保存
・期限表示(賞味期限):賞味期限を経過した場合には
加熱殺菌を要することの表示
2.鶏液卵の規格基準の設定
・殺菌液卵:サルモネラ25gにつき陰性 ・未殺菌液卵:細菌数1gにつき106個以下
成分規格
製造基準・使用基準・保存基準
3.GPセンターの衛生管理基準の策定
4.家庭における卵の衛生的な取り扱い要領の策定
農場におけるSE対策 鶏卵のサルモネラ総合対策指針
農林水産省通知(平成17年)
鶏卵のサルモネラ汚染を防止するために、 種鶏場、ふ卵場、採卵養鶏場の
総合的な衛生管理対策を策定した。
・種鶏場、ふ卵場:施政内の清浄度保持・衛生管理の向上
・採卵養鶏場:効果的な衛生対策
・農場へのサルモネラ侵入防止
ゆで卵の加熱時間とSEの死滅(金子通治、2003年)
5分 85℃ 310万 変化なし 一部凝固,他変化なし
6分 96.9 40万 変化なし 半分ゾル状態
7分 99,8 16万 表面薄く凝固 殆どゾル状態
8分 99,8 0 表面軽く凝固、中心部粘ちょう
殆ど凝固
9分 99.8 0 表面凝固、中心部粘ちょう
凝固
10分 99,8 0 表面固く凝固 凝固
12分 99.8 0 表面固く凝固、中
心部凝固
凝固
SE菌数 加熱 時間
水温
卵黄の状態 卵白の状態
卵黄に340万個SE接種
サルモネラを増やさない対策
室温に2時間以上放置しないこと
・生肉、生魚は冷蔵庫或いは冷凍庫に保管
・卵ご飯、卵納豆、卵とろろはすべてその場 で喫食、 残り物は保存しない。
・鶏卵はケースごと冷蔵庫に保管。
・割おきをしない 賞味期限の確認
Salmonella Enteritidis食中毒の制御は可能か
輸入ひな
種鶏場
ふ卵場
採卵養鶏場
検査によりSE陽性ひなの排除
① 感染鶏の排除
②鶏舎の洗浄・消毒・オールイン・オールアウト方式
③ネズミ、野鳥の侵入防止
④従事者の衛生管理
⑤車両等の消毒
⑥SEフリーの飼料・飲料水
・機器、器具・器材等の洗浄・消毒
・従事者の衛生管理
SEフリーにするためのモニタリング箇所と実行
GPセンター(洗卵)
輸送
販売店
集団給食施設 飲食店 家庭
鶏卵加工工場
・消毒薬による洗卵
・洗卵水の温度管理
・卵殻の乾燥
・器具器材・施設の消毒
・ひび割れ、糞便汚染卵の排除
輸送・販売時の時の温度管理
加熱温度管理 製造工程の衛生管理
・調理時の加熱温度管理
・二次汚染防止 汚染・非汚染区域の区分
洗浄・消毒
手指の洗浄・消毒
・10℃以下の冷蔵庫保管
・増殖防止
Salmonella Enteritidis食中毒の制御は可能か
丸松水産 サルモネラの菌数:<102~103
製品 バリバリいか、イカそうめん、 おやつちんみ、元祖おやつ
ちんみ等 14品目 出荷業者:112(9,712kg+α)
患 者 数:1,505
イカ加工品によるSalmonella Oranienburg食中毒(1999年1~5月)
0
1~5
6~25
26~50
51~100
>100
サルモネラは乾燥にも 抵抗性が高い細菌である。
報告患者数
イカ乾燥品の製造工程上の問題点 (品川邦汎)
屋外で自然乾燥,3~4時間
屋外で22時間実施
1. 原料イカミミの解凍
2. 原料イカミミの調味液へ浸漬
3. 調味付けした原料イカミミの乾燥温度
4. 原料の加工と乾燥後の製品を同一処理室で実施
5. 解凍用タンクと調味用タンクの区別なし
6. 乾燥用の網・乾燥室の洗浄・消毒
40~45℃,24時間
水洗いのみ
年数回,消毒なし
食品関連従事者からのサルモネラ陽性者数とS.Oranienburg検出数(財 東京顕微鏡院のデーター)
月
42
1431
25
15
22
7
14
23
1817
146
1
69
29
17
2
1
0
10
20
30
40
50
60
9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8
98年
人
S.Oranienburg
その他のサルモネラ
99年
S.Oranienburgaの分離地域: 岩手、山形、新潟、栃木、茨城、山梨、千葉、 神奈川、静岡、岐阜、愛知、三重、大阪、兵庫、広島、福岡、佐賀、長崎の18府県
XbaI処理パルスフィールド電気泳動像
レーン 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 M(Kb)
582
485
298
97
48.5
分離されたS.Oranienburgのパルスフィールド
電気泳動パターン
1~5:乾燥イカ分離株 6~10:保菌者由分離株
11: 乾燥イカ由来株、12~14: 患者由来株 (11~14の菌株は元東京都立衛生研究所分離株)
同時期に保菌者から検出 されたS.Oranienburg菌株
は乾燥イカ製品と同一パ ターンであることから、
本流行と密接な関わりが あったことが示唆される。 また、陽性者の聞き取り 調査では乾燥イカ製品の 喫食が確認された人も
あった。
保菌者由来菌株から 広域的流行の予測が
可能であろう。
米国における細菌性食中毒患者数と死者数(推定)
Scallan,E. et al: Emerg.Infec.Dis:17(1),2011
病因物質 食中毒 患者数 死者数
総国内 感染者数
サルモネラ属菌
カンピロバクター
EHECO157
EHEC Non157
赤痢菌
ブドウ球菌
その他 16菌種など
計
1,322,137 845,024 76 96,534 63,153 20
168,698 112,752
1,229,007 1,027,561 378
494,908 131,254 10
6 241,994 241,148
4,883,568 3,645,773 861
1,330,290 1,2244881 371
米国においてSE汚染が疑われた 鶏卵5億5千個回収
2010年5月~8月、鶏卵が原因と推察されるSE食中毒患者千名以上
汚染農場: Wright County Egg 社(アイオワ州)
Hillandale Farms社(アイオワ州)
汚染経路:
農場の堆肥、通路など区域、 設備、農場内およびその他 の周辺、飼料、卵の水洗浄
施設 17件からSE検出
PFGEパターンが患者株と一致
5年間の平均患者数
米国におけるS.Saintpaul食中毒
発生月日: 2008年4月16~8月11日
患者数: 1,442名
原因食品: Jalapeno peppers, serrano pepper, tomatoe???
ピーナツバターを含む製品によるS.Typhimurium食中毒(米国)
発生月日:2008年9月~2009年1月
患者数:575名(2月5日現在)
回収: ピーナツバターやピーナツペーストを原料とした菓子 クッキー、クラッカー、シリアル、チョコレートなど
O157 リステリア
サルモネラ
内臓未除去魚
異物 非表示*
その他
計
1 8 1 0 0 8 0 18
0 9 0 5 0 2 1 17
0 0 16 0 0 1 0 17
1 0 1 0 0 14 0 16
0 1 12 0 0 3 0 16
0 0 14 0 0 0 0 14
2 5 5 0 0 0 1 13
0 2 1 0 0 9 0 12
0 2 0 0 0 9 0 11
0 3 3 0 0 3 0 9
0 0 1 0 0 7 0 8
ナッツ/種子製品
食品群
酪農製品
魚介類
スパイス/調味料
パン類
生鮮農産物
生鮮カット農産物
果物/野菜
調理食品
冷凍食品
洋菓子類
FDA(米国)に報告された危害と食品群(2009年9月8日から1年間)
*非表示のアレルゲンなど
(1)
流通食品に内在するリスクを明確にするために、検査などを実施し、病原菌等が 検出された件数で、今後のリスク管理の基礎資料とする。
O157 リステリア
サルモネラ
内臓未除去魚
異物 非表示*
その他
計
0 0 6 0 0 2 0 8
0 0 1 0 0 6 0 7
0 1 0 0 0 5 0 6
0 1 5 0 0 0 0 6
0 1 1 0 0 2 0 4
0 0 0 0 0 4 0 4
1 0 3 0 0 0 0 4
0 0 1 0 0 1 1 3
0 0 0 0 0 2 0 2
0 0 1 0 0 1 0 2
0 0 1 0 0 0 1 2
1 0 0 0 0 0 0 1
油/マ-ガリン 0 0 0 0 0 1 0 1
0 0 13 0 3 0 12 28
計 6 33 86 5 3 80 16 229
複合製品
食品群
添加物
スナック食品
ドレシング/ソース
健康食品など
スープ
穀類/粉
飲料
酸性食品
オートミールなど
卵
ゲームミート
家畜/ペット飼料
FDA(米国)に報告された危害と食品群(2009年9月8日から1年間) (2)