都市空間における環境認知のフラクタル次元によるイメージ構造 … ·...

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P1 24.7 22.4 23.0 26.0 25.1 27.4 25.1 15.6 15.2 15.9 17.8 20.0 20.4 20.0 22.2 25.4 27.0 26.8 25.1 28.9 25.1 15.5 17.5 19.0 19.3 20.5 21.0 20.5 K P2 P3 P4 P5 P6 P7 街区番号 平均認知度 南北差 東西差 ImageAvility > 1.3 < 2.5 > 3.6 < 1.2 < 0.3 < 1.2 < 0.3 7.9 7.6 7.6 7.8 6.3 6.3 5.4 > > > > > > > e e e : edge e e e e e e e e e e e e p : path d : district NW NE SW SE Fig.2 平均認知度・認知特性 平均認知強度= 全体の面積 Σ(認知強度)・(面積) (%) Fig.1 認知領域図 (江東:K) Research on the image structure by the fractal dimension of the environmental cognition in urban space - Consideration of the image structure in the local resident of Kiba, Koto-ku - KANAOKA Shogo, KUDO Yasumasa and OUCHI Hirotomo 日大生産工(院) ○金岡 正悟 日大生産工(院) 工藤 恭正 日大生産工 大内 宏友 都市空間における環境認知のフラクタル次元によるイメージ構造に関する研究 -江東区木場の地域住民におけるイメージ構造の考察- はじめに 近年、都市環境をいかに形成すべきか、また都市にお ける日常生活を尊重し、「環境との共生」をいかに構築 していくか、都市空間論、環境論の検討が要請されてい る。しかし本来、環境と人間主体とが相互に秩序を保ち つつ、環境と主体が影響し合う関係の構造原理を解明せ ずして、実行力のある都市環境論は成立しえないと考え られる。 我々人間によって創出される物理的環境は、物理的現 象であると同時に社会的な役割を担う存在であり、さま ざまな用途の建築物やその集合体である街区・市街地な ども、社会システムの具現化であるといえる。これらは、 外形的・物理的な特徴のみで、そこに生活する人々の意 識を決定づけるまでには至らない。つまり人々は、そこ に生活し、個々に孤立することなく多様なイメージを心 理的空間として作り出しているといえる。 この心理的空間の形成過程には様々な因子があるが、 そのひとつとして、視覚情報の認識過程に、概念的なパ ターンや複雑さが関係している事が考えられる。多系統 におよぶ微細な差異と総体との関係性、物理的縮尺を持 たないパターンの特徴を扱う科学として、複雑系、フラ クタル理論は様々な分野に影響を与えている。 なかでもフラクタル次元を用いた分析手法は、一見不 規則な事象や形状の複雑さを定量的に示す事が可能であ り、近年では建築・都市計画分野の研究にも応用されつ つある。 これをふまえ、本研究では、既往研究の分析をもとに、 都市環境における住民の意識の総体である認知領域の広 がり(認知的特性)と、地理的要因を主とする物理的環 境(形態的特長)である街区構成の複雑性との関係性を、 フラクタル理論を用いた解析によって見出すことを研究 の機軸とし、画像相関分析、建蔽率・容積率分析といっ た都市分析手法との相違性を明確にすると同時に、都市 ・地域計画論への新たなアプローチへの発展を目的とし ている。 1.本研究の位置付け 本研究では、建物形状、建物配置及び高さの異なる街 区を想定し、3次元街区モデルに点光源を配置して、拡散 光から生じる陰影を含んだ画像(以下、陰影画像)を生 成した上で、ボックスカウンティング法によりフラクタ ル次元解析を行う。街区の外形的形態が次元値に及ぼす 影響を明確にすることで、陰影画像を用いたフラクタル 次元分析手法の有効性について検討を行う。 また、上記分析手法の実証的研究として、歴史的に江 戸時代から運河を中心としてまちが形成され、運河や道 路が住民の持つ認知領域形成に及ぼす影響が特徴的な江 東区木場を研究対象地域とし、3次元立体モデルから作成 された陰影画像を用いたフラクタル次元解析、画像相関 分析および街区構成分析を行い、実際の街区構成の複雑 性と認知領域との関係性について分析・考察する。 2.認知特性分析 2.1.認知領域調査 アンケート調査は、江東地区:1998年11月,1999年7月に 行った。調査対象者は一般の住民における認知領域を把握 するため、中学生以上の地域住民を対象とし、地域的な偏 りを無くすため、対象地域を250mのメッシュで分割し、各 メッシュあたり2戸を無作為に抽出した。結果、有効解答 数として江東:283サンプルが得られた。 2.2.調査内容 ①属性調査②日常ルート調査③利用交通手段調査④まち ・水辺・緑地の認知領域調査⑤認知領域範囲付け理由⑥デ ィストリクト・ランドマーク調査を項目とした、圏域図示 法によるアンケート調査である。調査員は記入用紙と白地 図(江東:縮尺1/10000,品川:縮尺1/11000)を使用し、基 本的に被験者による記入とする。 2.3.分析対象地域の選定 認知領域調査結果をもとに、個人(サンプル)が認知する 場所の和が解答者数に占める割合から認知領域図を作成 (Fig.1)。特徴的な街区構成を有する地域として、江東では 都市のパブリックイメージであるエッジを形成している永 代通りを、品川ではディストリクトを形成している第一京 浜からエッジである山の手通りにかけての連続した600m四 方の街区を対象地域とした。 (Fig.2)に分析対象地域の平均認知度及び認知特性を示す。 環境認知の調査より得られた283サンプルの定量・定性デ ータをもとに、都市空間における認知領域形成の分析・考 察を、数量化Ⅲ類により行う。 3. 環境認知による都市空間の内部構造 3.1 アイテムカテゴリー 地域住民における環境認知の特徴を把握する上で重要と 考えられる17アイテムの指標を、アンケート調査より得ら れた283サンプルの定量・定性データを92カテゴリーに分

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P124.7 22.4 23.0 26.0 25.1 27.4 25.115.6 15.2 15.9 17.8 20.0 20.4 20.0

22.2 25.4 27.0 26.8 25.1 28.9 25.115.5 17.5 19.0 19.3 20.5 21.0 20.5

K P2 P3 P4 P5 P6 P7街区番号

平均認知度

南北差

東西差

ImageAvility

> 1.3 < 2.5 > 3.6 < 1.2 < 0.3 < 1.2 < 0.3 7.9 7.6 7.6 7.8 6.3 6.3 5.4

> > > > > > >

e e

e : edge

e e e e e e e e e e e e p : pathd : district

NW NESW SE

Fig.2 平均認知度・認知特性

平均認知強度=全体の面積

Σ(認知強度)・(面積)(%)

Fig.1 認知領域図 (江東:K)

Research on the image structure by the fractal dimension of the environmental cognition in urban space- Consideration of the image structure in the local resident of Kiba, Koto-ku -

KANAOKA Shogo, KUDO Yasumasa and OUCHI Hirotomo

日大生産工(院) ○金岡 正悟日大生産工(院)  工藤 恭正日大生産工     大内 宏友

都市空間における環境認知のフラクタル次元によるイメージ構造に関する研究

-江東区木場の地域住民におけるイメージ構造の考察-

はじめに

 近年、都市環境をいかに形成すべきか、また都市にお

ける日常生活を尊重し、「環境との共生」をいかに構築

していくか、都市空間論、環境論の検討が要請されてい

る。しかし本来、環境と人間主体とが相互に秩序を保ち

つつ、環境と主体が影響し合う関係の構造原理を解明せ

ずして、実行力のある都市環境論は成立しえないと考え

られる。

 我々人間によって創出される物理的環境は、物理的現

象であると同時に社会的な役割を担う存在であり、さま

ざまな用途の建築物やその集合体である街区・市街地な

ども、社会システムの具現化であるといえる。これらは、

外形的・物理的な特徴のみで、そこに生活する人々の意

識を決定づけるまでには至らない。つまり人々は、そこ

に生活し、個々に孤立することなく多様なイメージを心

理的空間として作り出しているといえる。

 この心理的空間の形成過程には様々な因子があるが、

そのひとつとして、視覚情報の認識過程に、概念的なパ

ターンや複雑さが関係している事が考えられる。多系統

におよぶ微細な差異と総体との関係性、物理的縮尺を持

たないパターンの特徴を扱う科学として、複雑系、フラ

クタル理論は様々な分野に影響を与えている。

 なかでもフラクタル次元を用いた分析手法は、一見不

規則な事象や形状の複雑さを定量的に示す事が可能であ

り、近年では建築・都市計画分野の研究にも応用されつ

つある。

 これをふまえ、本研究では、既往研究の分析をもとに、

都市環境における住民の意識の総体である認知領域の広

がり(認知的特性)と、地理的要因を主とする物理的環

境(形態的特長)である街区構成の複雑性との関係性を、

フラクタル理論を用いた解析によって見出すことを研究

の機軸とし、画像相関分析、建蔽率・容積率分析といっ

た都市分析手法との相違性を明確にすると同時に、都市

・地域計画論への新たなアプローチへの発展を目的とし

ている。

1.本研究の位置付け

 本研究では、建物形状、建物配置及び高さの異なる街

区を想定し、3次元街区モデルに点光源を配置して、拡散

光から生じる陰影を含んだ画像(以下、陰影画像)を生

成した上で、ボックスカウンティング法によりフラクタ

ル次元解析を行う。街区の外形的形態が次元値に及ぼす

影響を明確にすることで、陰影画像を用いたフラクタル

次元分析手法の有効性について検討を行う。

 また、上記分析手法の実証的研究として、歴史的に江

戸時代から運河を中心としてまちが形成され、運河や道

路が住民の持つ認知領域形成に及ぼす影響が特徴的な江

東区木場を研究対象地域とし、3次元立体モデルから作成

された陰影画像を用いたフラクタル次元解析、画像相関

分析および街区構成分析を行い、実際の街区構成の複雑

性と認知領域との関係性について分析・考察する。

2.認知特性分析

2.1.認知領域調査

 アンケート調査は、江東地区:1998年11月,1999年7月に

行った。調査対象者は一般の住民における認知領域を把握

するため、中学生以上の地域住民を対象とし、地域的な偏

りを無くすため、対象地域を250mのメッシュで分割し、各

メッシュあたり2戸を無作為に抽出した。結果、有効解答

数として江東:283サンプルが得られた。

2.2.調査内容

 ①属性調査②日常ルート調査③利用交通手段調査④まち

・水辺・緑地の認知領域調査⑤認知領域範囲付け理由⑥デ

ィストリクト・ランドマーク調査を項目とした、圏域図示

法によるアンケート調査である。調査員は記入用紙と白地

図(江東:縮尺1/10000,品川:縮尺1/11000)を使用し、基

本的に被験者による記入とする。

2.3.分析対象地域の選定

 認知領域調査結果をもとに、個人(サンプル)が認知する

場所の和が解答者数に占める割合から認知領域図を作成

(Fig.1)。特徴的な街区構成を有する地域として、江東では

都市のパブリックイメージであるエッジを形成している永

代通りを、品川ではディストリクトを形成している第一京

浜からエッジである山の手通りにかけての連続した600m四

方の街区を対象地域とした。

(Fig.2)に分析対象地域の平均認知度及び認知特性を示す。

環境認知の調査より得られた283サンプルの定量・定性デ

ータをもとに、都市空間における認知領域形成の分析・考

察を、数量化Ⅲ類により行う。

3. 環境認知による都市空間の内部構造

3.1 アイテムカテゴリー

 地域住民における環境認知の特徴を把握する上で重要と

考えられる17アイテムの指標を、アンケート調査より得ら

れた283サンプルの定量・定性データを92カテゴリーに分

75

4815

45

44

D1

34

55A6

41

9221B452

A9

C3B5F4A273

E1

F2 1454

F1B6G4

D351

638

B3E3134

9422

77

46D4 E422 71

12C2

66

A3

A8

11 47

A433

57 B3F52

G27

42 5631

67

E22

3

G3A7

C464

C

A1

81191

61

Fig.3 第3-1軸アイテムカテゴリープロット図

0

-4

-8

4

8

12

16

0-4-8

-12

-164 8

まちと水辺の交わり度

まちと緑地の交わり度

ランドマークの位置年齢

居住年数

まちと水辺の交わり度

まちと緑地の交わり度

ランドマークの位置

年齢

居住年数

1軸

3軸

48

75

45

1534

G1

53

B5A1

C374 A2

63

E1

736462

C1C41

49

D144

55

8234

92

F4

51

G22 68

2246 66

3C2

67

11

47

A871

12E4

A4D33

F3B2

84E372

76

B363

F5

14 B6F1

83D354

C4

A7

F2

81 A9

4614391

77

42D494

G4B157 56

A321

A6

0

Fig.4 第3-2軸アイテムカテゴリープロット図

-4

-8

4

8

0-4-8-12 4 8 12

まちと緑地の交わり度

ランドマークの位置

年齢

居住年数

まちと水辺の交わり度

まちと水辺の交わり度

まちと緑地の交わり度

ランドマークの位置

年齢

居住年数

2軸

1軸 2軸 3軸

ランドマークの属性線・面

11-8まちの広さ200ha以上

14-5まちと緑地の交わり度 なし

2 9-1

年齢 30歳未満1-1まちと緑地の交わり度

なし9-1

水辺と緑地の交わり度なし

3 10-1

ランドマークの属性線

11-3職業 公務員4-3まちと水辺の交わり度

なし4 8-1

水辺の範囲 点・面6-7まちの範囲 点・面5-6水辺の範囲 なし5 6-7

職業 自由業4-4まちと緑地の交わり度

分離9-2

水辺の広さ5~10ha未満

5 15-2

職業 技能的職業4-5ランドマークの位置

外部12-4

水辺と緑地の交わり度重合

4 10-4

緑地の範囲点・線

7-5まちの範囲 点5-1ランドマークの属性

点・線・面3 10-9

職業 無職4-8水辺の範囲

点・面6-7職業 公務員1 4-3

アイテムカテゴリー上位 アイテムカテゴリーPNアイテムカテゴリーPNPN

年齢30歳未満

1-5まちの範囲

点・線緑地の範囲

点・線2 7-5 5-5

職業 学生まちの範囲 線水辺の範囲 なし1 6-1 5-2 4-7

Table.2 カテゴリーウェイト上位表

+方

向-

方向

2軸 3軸

IN アイテム IN アイテム上位 IN アイテム

5 まちの範囲 4 職業水辺の範囲1 6

6 水辺の範囲 1 年齢水辺と緑地の交わり度2 10

9 まちと緑地の交わり度 11 ランドマークの属性まちと水辺の交わり度3 8

14 まちの広さ 3 居住年数5 11 ランドマークの属性

1軸

Table.3 アイテムレンジ上位表

12 ランドマークの位置 7 緑地の範囲9 まちと緑地の交わり度4

200ha以上

Table.1 アイテムカテゴリー表

1 男 212 女 221 1~10年未満 31

3233

10~20年未満20~30年未満

4 30年以上 341 自営業 412 会社員 423 公務員 43 1 中央 B14

4

自由業 44 2 端部 B25 技能的職業 45 3 複数 B36 主婦 46 4 外部 B47 学生 47 5 複合 B58 無職 48 6

56

その他 B69 その他 49 1 駅周辺 C11 点的要素 51 2 道路周辺 C22 線的要素 52 3 単体物周辺 C33 面的要素 53 4 その他 C4

時間変動要 54 1 0~50ha未満 D15

5

点・線的要素 55 2 5~10ha未満 D26 点・面的要素 56 3 100~150ha未満 D37 線・面的要素 57 4

4

150~200ha未満 D41 なし 61 5 D52 点的要素 62 1 0~50ha未満 E13 線的要素 63 2 5~10ha未満 E24

4

面的要素 6465

3 100~150ha未満150~200ha未満

E3E4時間変動要

6 点・線的要素 66 5 200ha以上 E57 点・面的要素 67 1 0~8ha未満 F18 線・面的要素 68 2 8~16ha未満 F21 点的要素 71 3 16~24ha未満 F32 線的要素 72 4 24~32ha未満 F43 面的要素 73 5 32ha以上 F5

時間変動要 74 1 縦型 G15 点・線的要素 75 2 横型 G26 点・面的要素 76 3 同心円 G37 線・面的要素 77 4 その他 G41 なし 812 分離 823 接触 834 重層 841 なし 912 分離 923 接触 934 重合 94

14

13

12 ランドマークの位置

にぎわい

まちの広さ

まちと水辺の交わり度

水辺の広さ

緑地の広さ

まちの形17

16

15

02

03

08

居住年数

性別

緑地の範囲

水辺の範囲

まちの範囲

職業04

09

11

まちと緑地の交わり度

05

06

07

60歳以上

IN アイテム CM カテゴリー1 30歳未満23

23

440~50歳未満50~60歳未満

5

01 年齢30~40歳未満

PN IN アイテム CN カテゴリー PMなし分離接触重合

01020304

水辺と緑地の交わ

り度

11121314

1

15 1 なし2 点的要素3 線的要素4

234

面的要素時間変動要素点・線的要素

7 点・面的要素8 線・面的要素9 点・線・面的要素

ランドマークの属性

10

A1A2A3A4A5A6A7A8A9

IN:アイテムナンバー CN:カテゴリーナンバー PM:プロットマークナンバー

まち 水辺 緑地

交わり度① 交わり度③

交わり度②

A.なし B.分離

C.接触 D.重合

まち、水辺、緑地の交わり度

けた。Table.1 にアイテムカテゴリー表を示す。

3.2 共通因子の抽出による軸の解釈

 前項より分類された17アイテム92カテゴリーに対して、

数量化Ⅲ類の分析により、多様なデータ内に含まれる潜在

的な類似性や共通性を持つ因子を抽出し、これらの因子に

より成立する因子軸を解釈することにより、環境認知によ

る都市空間の内部構造を明らかにする。以下に、アイテム

カテゴリープロット図(Fig.3,4)、カテゴリーウェイト上位

表(Table.2)、アイテムレンジ上位表(Table.3)の相互の関連

性から軸の解釈を行った。

第1軸  +方向には居住年数(1~10年)が多く、まちと

水の交わり(なし)、まちと緑の交わり(なし)、水と緑

の交わり(なし)が端的に認識されている。また-方向に

は居住年数(30年以上)、まちと水の交わり(重層)、ま

ちと緑の交わり度(重層)、水辺と緑の交わり度(重層)

が多くそれぞれの交わり度が重層化している傾向がある。

カテゴリーウェイト表より、まちの緑地の交わり度(なし)、

水辺と緑地の交わり度(なし)、まちと水辺の交わり度(な

し)が上位に占めており、下位に水辺と緑地の交わり度(重

合)が占めている。アイテムレンジ上位表水辺とまちの交

わり度、まちと水辺の交わり度、まちと緑地の交わり度が

高く寄与している。これらより、第1軸はまち、緑地、水

辺に関する空間把握に関しての関係性、すなわち、「自然

環境の複合度」をあらわす軸として考察される。

第2軸  +方向には年齢(50~60歳未満)(60歳以上)、

居住年数(30年以上)、まちの広さ(200ha未満)が占め

ている。-方向には居住年数(1~10年)、年齢(30歳未

満)、の年月にかかわるアイテムが占め、まちの広さ(0

~20ha未満)が占めている。カテゴリーウェイト表より、

上位ではランドマークの位置(中央)が、下位ではランド

マークの位置(外部)、年齢(30歳未満)が-に進むにつ

れて年齢、居住年数は下がり、まちと緑地の交わりが単純

化し、ランドマークの位置が狭まっていく。アイテムレン

ジ表よりまちと緑地の交わり度が高く寄与している。これ

らより、第2軸は年数などの時系列的要素と空間の広がり

についての関係性、すなわち「まちの認識度」をあらわす

軸であると考察される。

第3軸  プラス方向には年齢(30歳未満)(30~40歳未

満)が多く、同様に居住年数(1~10年未満)(10~20歳

未満)、まちと水辺の交わり度(重合)ランドマークの位

置(中央)、まちと緑地の交わり(重合)が多い。-方向

には、居住年数(30年以上)、年齢(60歳以上)、まちと

水辺の交わり度(分離)(接触)、ランドマークの位置(

類型Ⅰ(19サンプル)

類型Ⅱ(47サンプル 類型Ⅲ(38サンプル)

類型Ⅴ(41サンプル)類型Ⅳ(136サンプル)

Fig.8 永代通り・首都高速深川線交差地点 陰影画像

8bitグレースケール画像

分割後の2値化画像 (512×512pixel)

NW NE

SESW一部を拡大した画像

光を受けているPixel→白(人が視認可能な範囲)

(人が視認不可能な範囲)陰になっているPixel→黒

NW NW

Fig.6 類型別認知領域図

Fig.5 3D類型プロット図

P11.74 1.76 1.81 1.68 1.70 1.74 1.711.65 1.74 1.81 1.74 1.75 1.74 1.73

1.74 1.77 1.82 1.73 1.65 1.78 1.741.77 1.76 1.80 1.76 1.71 1.76 1.77

Ligh

t 1Li

ght 2

P2 P3 P4 P5 P6 P7街区番号

フラクタル次元

南北差

東西差 < .06 < .02 = < .04 > .05 < .03 < .04 .03 .02 .01 .01 .07 .01 .03> > > > > > >

NW NESW SE

1.79 1.75 1.74 1.80 1.79 1.71 1.801.77 1.75 1.71 1.83 1.80 1.71 1.70

1.75 1.67 1.76 1.82 1.77 1.72 1.741.74 1.73 1.75 1.85 1.79 1.73 1.67

フラクタル次元

南北差

東西差 > .04 > .05 < .03 < .02 > .02 < .02 > .05 .02 .03 .02 .03 .02 .01 .08

> >

> > > > >

NW NESW SE

Fig.9 フラクタル次元解析結果

部)まちと緑地の交わり度(なし)が多い。カテゴリーウ

ェイト表より、+方向に年齢(30歳未満)、年齢(30~40

歳未満)居住年数(10~20年未満)が占め、-方向に年齢

(60歳以上)居住年数(30年以上)まちのひろさ(0~

50ha未満)が占め、+方向にいくにつれて居住年数は短く

なりまちの広さが小さくなる。また-方向にいくにつれて

居住年数が高くなり、まちの広さも広域になる。アイテム

レンジ表より年齢が寄与率第2位で、緑地の範囲、居住年

数、まちの広さが寄与していき、年齢、居住年数などの項

目とまちなど空間の広がりに関する項目が高く寄与してい

る。これらより第3軸は人の地域における経験とまちの構

造や景観との関係性、すなわち「景観の認識度」をあらわ

す軸であると考察される。

4.クラスター分析

前項において第1軸「自然環境の複合度」第2軸「まちの認

識度」第3軸「景観の認識度」の各因子軸が木場周辺の環

境を構成する要素として深く関連する軸であることがわか

った。3つの軸におけるサンプルスコアを用い、最遠隣法

によるクラスター分析によって個人認知特性の類型化

(Fig.5)を行い個人サンプルを5つの類型(類型Ⅰ:19サン

プル、類型Ⅱ:47サンプル、類型Ⅲ:38サンプル、類型Ⅳ:

136サンプル、類型Ⅴ:41サンプル)に分類した。

分析の結果より類型ごとに認知マップ(Fig.6)を作成した。

果類型Ⅳに最も多くのサンプルが大きく偏り、この類型を

扱うことにより地域住民のイメージを視覚化した。

作成された認知マップより永代通りは、わたしのまちで得

られたパブリックイメージであるエッジであるのと同時に

賑わいの中心であることが読み取れた。

5.江東における3次元画像解析を用いた分析

 ここでは、江東の永代通り沿いにおける連続した街区を

対象に3次元画像解析を用いた分析を行う。

5.1.フラクタル次元解析方法

 GISを用いてP1~P7の街区データを抽出し、エッジ形

成の物理的要因と考えられる運河、道路及び建築物を包

含した3次元モデルを構築(Fig.7)。3DCGソフトを用い

てフラクタル次元解析用の画像を作成する。

この際、人の心理的要素である環境認知との関係性にお

いて街区の複雑性を分析するために、高さの異なる2種

類の光源を用いる。Light1は幅(L)+建築高さ(h)の平均

から45度、Light2は人の目線高さとして1.6mの高さに配

置し、減衰率は視覚的認知のAerial-Spaceのうち、動的

要素の識別限界(SPR)である半径135mから3次元モデル

の外接円(300√2 m)までの逆2乗減衰に設定し、人の視

覚的条件に基いた光の分布を得るように設定。高さ600m

に配置されたカメラからレンダリングを行い、3次元モ

デルを画像に変換する。

 こうして作成された画像を、最大高輝度を含んだ

256Pixcel×256Pixcelの4枚の画像に分割。2値化処理を

施し、Px-NW,NE,SW,SEの陰影画像(Fig.8)を作成し、フ

ラクタル次元解析を行った。

5.2.フラクタル次元解析結果

 各区分のフラクタル次元解析の結果(Fig.9)、Light1に

おけるフラクタル次元は1.71~1.82、Light2では1.54~

1.79までの値を示した。同一区域内において値の差異が

現れており、Light1では交差点を中心とした街区構成が、

光源の位置の低いLight2では主に交差点を中心とした街

路沿いの街区構成が、それぞれの陰影画像における照度

分布に影響を及ぼした結果といえる。

6.江東・品川におけるImageAvilityでの分析結果

 江東・品川両区において、各Placeごとに、エッジと

ディストリクトでの心理的エレメントで認知強度・フラ

クタル次元解析、建蔽率、容積率による相関分析を行っ

た(Fig-10~13)。

 選定敷地での心理的空間を形成する要因である

ImageAvility。この要素を構成するエッジ、ディストリ

クトでの街区構成との関係性を測るために行った認知強

度・フラクタル次元解析の相関分析(Fig-10)より、心理

的なエッジが現れている区域で逆相関の傾向を有してい

ることが得られる。同時に心理的なディストリクトを特

性として持つ区域では相関の傾向が得られる。また、分

析地域のパブリックイメージにあたるエッジ、ディスト

リクトを形成していない通り沿いでの分析(Fig-12)では、

認知強度・フラクタル次元解析、建蔽率、容積率すべて

の相関分析(Fig-11~13)において明確な関係性はみられ

ない。

 認知強度・建蔽率、容積率による相関分析からは

Placeごとに明確な関係性は見出せない。

6.まとめ

 認知強度と認知特性について陰影画像心理的空間の形

成過程の規定因子としての街区の形態的複雑性について

江東における3次元画像解析を用いた実証的研究を行っ

た。その結果を以下にまとめる。

1)クラスター分析によって得られた、木場住民の持つイ

メージ構造は永代通りをエッジとイメージすると同時に

にぎわいの中心だととらえている。

2)都市のパブリックイメージであるエッジ、ディストリ

クトにおいてのフラクタル次元解析の結果と認知強度と

の比較では、エッジとなっている地域ではフラクタル次

元と認知度とは逆相関の傾向を示した。

3)江東・品川共にパブリックイメージを形成していない

方向での認知強度認知強度とフラクタル次元解析結果・

建蔽率・容積率の相関分析からは明確な関係性はいずれ

の分析においても得られなかった。

4)都市のイメージをつくることに対しての大きな要素で

あるImageAbilityを構成する心理的エレメントを強く感

じさせる通りにおいて、認知強度とフラクタル次元解析

結果の間には一定の相関関係を得られた。

 以上のことから、都市のパブリックイメージである心

理的エレメントにおいてのフラクタル次元解析結果は、

建築形態の集合としての3次元都市空間における、画像

相関、建蔽率・容積率による分析のみでは指標化できな

いデータを提示できたといえる。

引用文献

大内宏友・高橋聖(1999):地域住民の環境認知にもとづく景観圏域について、

第13回環境情報科学論文集

M.Batty・P.Longley(1994):Fractal Cities, Academic Press Inc,

木村敏浩・黒いわ孝・坂口浩一・松原三人・大内宏友(2003):3次元都市空間

における街区のフラクタル性と環境認知との関係性について、第17回環境情

報科学論文集

Takahashi KUROIWA,Hirotomo OUCHI,‘¼(2004):Study on the Structure Analysis

of 3D Urban Space Model by Fractal Theory, Reprinted from Jornal of Enviromental

Science Vol.32,No5

参考文献

Kevin Lynch(1960):The Image og the CIty,the Masachusetts Insitute of Technology

Mandelbrot・Bonoit B.(1977):Fractals, W.H.Freeman and Company

Mandelbrot・Benoit B.(1983):Fractal Geometry of Nature, W.H.Freeman and

Company

高安秀樹(1985):フラクタル、朝倉書店

大内宏友・高橋聖(1999):環境認知における画像解析を用いた景観圏域に関す

る研究Ⅰ、第22回情報・システム・利用・技術シンポジウム論文集

大内宏友・澤良木公一・廣瀬栄司(2000):環境認知における画像解析を用いた

景観圏域に関する研究Ⅱ、第23回情報・システム・利用・技術シンポジウム

論文集

金岡正悟・木村敏浩・大内宏友:都市空間における街区の複雑性と環境認知

の関係性について、第27回情報・システム・利用・技術シンポジウム論文集

Fig.13 容積率・認知強度相関図

-1.2

-1.0

-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

NW NE

SW SE

SW NW

SE NE

K:江東区 S:品川区

K:江東区 S:品川区

NW NE

SW SE

SW NW

SE NE

edge・district

エレメントごとでの分析

エレメントが形成されていない方向での分析

edge・district

Fig.11 エレメントごとの認知強度・建蔽率相関図

K S

K S

K S

-0.04

-0.02

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

Fig.10 エレメントごとの認知強度・フラクタル次元相関図 Fig.12 認知強度・フラクタル次元相関図

P1 P2 P3 P4 P5 P6 P7 P1 P5 P6 P7 P8 P2 P3 P4 P1 P2 P3 P4 P5 P6 P7 P1 P5 P6 P7 P8 P2 P3 P4 P1 P2 P3 P4 P5 P6 P7 P1 P5 P6 P7 P8 P2 P3 P4 P1 P2 P3 P4 P5 P6 P7 P1 P5 P6 P7 P8 P2 P3 P4

P1 P2 P3 P4 P5 P6 P7 P1 P5 P6 P7 P8 P2 P3 P4P1 P2 P3 P4 P5 P6 P7 P1 P5 P6 P7 P8 P2 P3 P4P1 P2 P3 P4 P5 P6 P7 P1 P5 P6 P7 P8 P2 P3 P4

-0.06

-0.04

-0.02

0.00

0.02

0.04

0.06

0.08

0.10

districtedgeK S S

districtedgeK S S

districtedgeK S S

districtedgeK S S

-0.10

-0.04

0.00

0.04

0.10

0.16

-0.6

-0.4

-0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0 -0.10

-0.05

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

-0.10

-0.05

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

Light1 (Lh=h+1/2L)K: P1~P7 (N-S)S: P1,P5,P6,P7,P8 (W-E)

S: P2,P3,P4(W-E)e dLight2 (Lh=h+1/2L)

K: P1~P7(N-S)S: P1,P5,P6,P7,P8(W-E)

S: P2,P3,P4(W-E)e dLight1 (Lh=h+1/2L)

K: P1~P7(W-E)

Light2 (Lh=h+1/2L)

K: P1~P7(W-E) S: P1~P7(N-S)S: P1~P7(N-S)

K: P1~P7(N-S)S: P1,P5,P6,P7,P8(W-E)

S: P2,P3,P4(W-E)e d K: P1~P7(N-S)S: P1,P5,P6,P7,P8(W-E)

S: P2,P3,P4(W-E)e d K: P1~P7(W-E) S: P1,P5,P6,P7,P8(N-S)

N-S:南北差 W-E:東西差

W-E:東西差 N-S:南北差

認知強度 認知強度 認知強度 認知強度

認知強度 認知強度

認知強度

フラクタル次元_L1 フラクタル次元_L2

容積率

建蔽率

容積率

フラクタル次元_L1 フラクタル次元_L2