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3 はじめに prologue prologue Spirituality

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3 はじめに

p r o l o g u e

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はじめに

「スピリチュアル」という言葉に、あなたはどんな印象をおも

ちですか?

「パワースポットのこと?」「雑誌の占いコーナーに載ってい

る!」「開運になるグッズ?」そんなイメージでしょうか。あ

るいは、一時期噂うわさ

になった「某有名人の写真を冷蔵庫に貼は

ると

ツキが来る」「〇〇の写真を携帯電話の待ち受け画面にすると

いい」というのも、スピリチュアルのひとつと思っている方も

いるかもしれません。

でも、「スピリチュアル」とは、本来「スピリチュアリティ

(Spirituality

)」つまり、精神性や霊性を指し、魂や神など超自

然的な存在との絆きずな

を感じ、精神性を深めること。

自分自身の内側に真しん

摯し

に向き合うことであって、「開運グッ

45 はじめに

p r o l o g u e

ズ」や「ツキ」といったご利益効果というのは、あくまでもそ

の副産物なのです。

私と「スピリチュアル」との出合い、それは十数年前に大病

をしたことがきっかけでした。現代医学では完治できない難病

の潰かい

瘍よう

性大腸炎、全身の毛が抜けてしまう悪性脱毛症という奇

病。藁わら

にもすがる思いでさまざまな治療を試しました。

その闘病中、寺社祈願はもちろん、多くの本を読みながら、

自己対たい

峙じ

に深く耽ふ

ることになります。原因不明、治療法もない

病に、なぜ私が? 

そんな理不尽な現実を何とかしようと、ま

さに東奔西走しました。神頼みという感じで祈願するうち、私

は、大いに自分自身の内側、つまり精神性である「スピリチュ

アル」に向き合うことになったのです。

結果的に断食や自然療法でこの病を克服できた私はその後、

家族の転勤に伴い、二年間のイギリス生活を経験することにな

ります。

スピリチュアルな場所が点在するヨーロッパ。これまで思い

を馳は

せてきた「スピリチュアルスポット」を巡ることができる

幸運に、胸が高鳴りました。

スピリチュアルな場所を訪ねながら発見したのは、その各地

に共通する「祈りの心」でした。

畏敬する対象物への祈り。つつがなき日々の暮らしへの感謝

の祈り。平和を願う祈り。伝承や文化を守る祈り。日本にはな

いヨーロッパの精神性や、歴史から生じる活動、日本との意外

な共通点など、多様な祈りの姿を垣間見ることができました。

概して感じるのは、彼らは私たちよりもさほど「個人的利益

の追求」を祈りに託していないこと。もちろん、健康回復や子

宝、家族の幸せといった祈りはあるでしょう。ただ、神聖なる

存在にそれ以上の要望をお願いすることはお門違い、とでも言

うかのように、ただただ「祈る」ことに徹している空気を感じ

ました。

祈ること。それは、目に見えないものに思いを通わせ心に宿

すこと。祈ることで、私たちが本来もっている気高き深みが目

覚め、一層培われていく。

「困った時の神頼み」ではなく、平凡な日々に感謝し、明日一

日もどうか穏やかにと願う。そんな自分と向き合う祈りを日々

重ねることは、自分の内面からわきあがる心の声を聴くことに

もつながっていくような気がするのです。

6

本書では、欧州各国を巡った中で私が「ここはスピリチュア

リティ深き場所だ」と、印象的だったところを紹介します。名

所もあれば、あまり知られていない場所、また「スピリチュア

リティ」とは一見無縁そうな施設、活動も含まれています。

戦争の爪跡や悲しい事件のあった場所に宿る想いや祈り、そ

して平和を願う心もまた「スピリチュアリティ」のひとつとの

考えからです。

もしこの本を「ヨーロッパのツキを呼ぶ場所の本?」と思わ

れたなら、そのご期待には残念ながら添えないかもしれません。

特定の宗教をもたない私が、「典型的日本人」の目線で取材した、

涙ありときに笑いありの旅行記。それが本書です。

宗教・歴史的バックボーンの異なるヨーロッパの人々が、守

り、祈り、大切に敬ってきたもの。それらの一端を知ることで、

誰の中にも本来ある「深く祈る心、本来のスピリチュアリティ」

を見直すきっかけになれればうれしく思います。

赤池キョウコ 

Co

nten

ts

目次

はじめに 

3

Chapter1

聖母の出現と泉が

奇跡を呼ぶ聖地

フランス

ルルドの泉 

13

Chapter2

小さなメダイが

大きな癒しに

フランス

不思議のメダイ聖堂 

31

Chapter3

病を癒す

美しい湧水

イギリス

聖ウィンフリッドの泉 

43

Chapter4

心癒す

「再生」の共同体

イギリス

フィンドホーン 

59C

hapter5

日本の信仰と

ケルトの世界を重ねて

アイルランド

ケルトと伝説の国探訪 

81

Chapter6

鎮魂と平和を

祈り誓う場所

ポーランド

アウシュヴィッツ強制収容所 

101

Chapter7

国を守る

奇跡の黒い聖母

ポーランド

ヤスナ・グラ修道院 

121

Chapter8

日英の和解への

手綱となる場所

イギリス

コヒマ・ミュージアム 

131

Chapter9

欧州に残る

哀しみと平和の場

オーストリア・フランス・オランダ・スペイン・

ポーランド・イギリス・ドイツ

戦史を遺し和平を祈る地へ 

147

Chapter10

黒い聖母巡りと

自己に向き合う旅

フランス・スペイン

サンティアゴ・デ・コンポステーラ

の巡礼路 

179

おわりに 203

column

コラム

健康への祈り 55

扉に祈りを託して 98

各国墓地巡り 170

ブックデザイン 重原

編集協力 乙部美帆

C h a p t e r

1Lourdes

聖母の出現と泉が奇跡を呼ぶ聖地

ルルドの泉フランス

1415 Chapter 1 ルルドの泉

航路はパリからだけだと勘違いし、ロンドンからわざわざパリに行き、乗り継いだ私。ルルドの空港で、各国の主要空港に運航していると知り呆然。リサーチ不足でした(笑)。

ルルドは小さな村にもかかわらず

立派な空港を有しています。

町行きのバスもありますが

機を逸してタクシーで。

到着して驚いたのは

ここは温泉街かリゾート地?

「世界有数の聖地」なのに

満艦飾の土み

やげ産

物店に驚き

ょう

愕がく

宿に荷物を置き

さっそく聖域に向かいました。

ルルドの泉(フランス)2010年10月訪問

 フランス南西部、スペイン国境のピレネー山麓にある村。人口約1万5000人。 1858年2月11日、14歳のベルナデッタが同地の洞窟至近で聖母マリアの出現を目撃し、泉を見出しました。この泉の水が「奇跡的治癒をもたらす」として、多くの信者が訪れるようになり、カトリックの巡礼地としては世界屈指。現在まで、のべ1億人以上が同地を訪れています。 また、35歳で亡くなったベルナデッタの遺体は、フランス・ヌヴェールの修道院に安置されていますが、腐敗せず

「奇跡」として今も崇拝を集めています。

1617 Chapter 1 ルルドの泉

ルルドには聖域を囲むように、ベルナデッタの生家資料館などがあります。

巡礼の方に

食べてほしくて…

肌寒い10月ですが、多くの方々。

同地の求心力を感じます。

大病した私。快復できた感謝と

多くの仲間に祈りたくて…

混んでいたら、重篤な方や

篤信家にお譲りし

遠慮しなくては。

沐浴1時間前に行くと

人は少なく、ありがたく

並ばせてもらいました。

彼女は沐も

浴よく

前なのに

ピザの大きな箱を手に…なぜ?

沐浴後ならいただき

たかったのですが(笑)。

30分前になると列は延びて

しだいに賑やかに。シーッ!

巡礼ツアーや団体が多いせいか

「ワイワイ」→「シーッ!」→

「ガヤガヤ」…の繰り返しでした。

そして定刻になり 順次沐浴へ。

私が想像していた

「ルルドの泉の沐浴」は

まさか 即入れると思わず

緊張は高まるばかり。

1819 Chapter 1 ルルドの泉

「いい大人が人前でオイオイ泣くなんて」という理性は雲散霧消。感情を抑え我慢しなくてよかった。涙は自浄作用もありますし。

「不思議のメダイの歴史ジオラマ館」(Diorama Historial de la Médaille Miraculeuse)では、ルルドに縁ある聖カタリナ(次章)の生涯を上映しています(約20分)。日本語解説あり。

更衣室ではボランティアの

女性たちが迎えてくれました。

まず大きな青い布で周囲から

隠してもらい、全部脱ぎます。

そしてブラジャーを持たされ

次のカーテン前で待機。

促されて入ると

小プールのような一人用の泉。

ここで沐浴させてもらえる…

二人の初老の女性が

手際よく応対してくれました。

謎なぞ

だったブラの行方は

彼女のポケットに。

するとその直後

無言のまま皺し

ばんだ手で

私の頰ほ

を包み 祝福するように…

その瞬間

「慈母」を

見ました。

私は頑が

是ぜ

なき子になり

感情を抑えられず

泣きじゃくりながら

泉に浸かったのです。

2021 Chapter 1 ルルドの泉

一人で入ることはできますが

委ねるままに。

きっと体の悪い方にも

こうされているのでしょう。

感極まっている私には

この時は水温の低さなど

取るに足らず…

今までの記憶がとめどなく去来し

感謝の波が満ちてきました。

慌ただしい日常でささくれそうな心も

なめらかに洗い流し、潤う

るおし

てくれる…

この地に来ることが

できてよかった!

その後ザブンと

肩まで浸けられて

約3分間の沐浴は

終了しました。

身体を拭ふ

き、衣服を着用しました。

無言と微ほほ

笑え

みの中

丁寧な所作で

扱われる私は

赤子の如く

無む

垢く

な存在に近づけた

心持ちになりました。

彼女たち一人ひとりの掌て

のひら

聖母の御手がそっと

添えられているような…

2223 Chapter 1 ルルドの泉

グロットは聖域の中でも一番神聖な場所。脱帽、騒がない、撮影時はフラッシュをたかないなど、信者さんのご迷惑にならない配慮を。

この地で働く人々の

その手に、その瞳に

宿っている、と感じました。

私は心地よい虚脱感と晴れやかな気分で

グロット(岩屋)に向かいました。

驚いたのは、この小さな聖域に

何百もの人が会しているのに

聖母の与えたもう「慈愛」が

静せい

謐ひつ

な祈りの

空間でした。

こんな静けさ

初めてです。

岩屋への列は粛し

ゅく

々しゅく

と流れ

皆、少しでもご加護を願って

岩肌に触れていくのです。

故郷で待つ人への土産を

岩に押し当てている方も…

2425 Chapter 1 ルルドの泉

約15分後

私の頭上にあったのは

「出現」を

再現したような

かの御姿。

ほの暗い岩に抱かれて立つ

慈しみの真白き御身。

約150年前

ベルナデッタもここで

見上げたのですね…

そういえば 

私が通った幼稚園(カトリック系)にも

ルルドの聖母を模した像があり

なぜか懐かしさすら感じました。

皆この神聖な「気」を

享受するため

じっとその場に…

その後、私は売店で小瓶を買い

泉の水を汲く

みに行きました。

闘病中

ルルド巡礼した信者の友人から

聖水をいただいたことを

思い出しつつ…

水汲み場は皆が利用しやすく

ズラリと並んでいます。

私の心と体をくまなく巡り

浄めてください…

この水は

健康によいとされる

ゲルマニウムが

含まれていますが

さらに神聖な「何か」も

宿っていると思います。

その信心が

病者の慰めと

励ましになるはず…

聖なる水よ

2627 Chapter 1 ルルドの泉

ルルドの町中では、聖なるものにちなんだ通りの名をよく見かけました。「Rue de St-Pierre」(聖ピエール通り)「Rue de la Grotte」(岩屋通り)など。

来訪者の多くは欧州諸国から。タクシーの運転手さんによると「アジアはフィリピン、ベトナム人が多いよ」。現地で会ったフィリピンのシスターも「奉仕のため半年間います」と話していました。

さて、宿で休憩後

夜のロウソク行列を見に

再度聖域へ。

夜9時だというのに多くの方々。

女性一人でも怖くありません。

私もひとつ買いました。

あぁ

荘厳で美しい行列。

涙で光がにじみます。

やっと気づけました。

これは全部、命の灯。

消えてしまいそうな

淡き光たち。

でも、何千もの光は

命のうねりとなり

力強く流れています。

国は違えど同じ歌を紡ぐ

この一体感!

「幼稚園以来なのに

案外覚えているんだなあ」と

私も唱和しました。

ここに集う人、世界中の人の

苦しみやつらさが

やわらぎますように…

大河のように行列は進んでいきます。

ゆらめく灯と

賛美歌

かそけき光。

でも力強く

ゆっくりと

2829 Chapter 1 ルルドの泉

上記マユコさんのように、フランスではルルドへの巡礼ツアーが地域ごとで行われています。彼女は列車で10時間かけ、1500人(!)もの巡礼団に参加されました。

教会から「奇跡的治癒」として認定された67人のうち55人はフランス人。次いでイタリア6人、ベルギー3人、ドイツ・スイス・オーストリアが各1人です。

ところで、ルルドでは今までに

「泉によるとされる治癒」が

7000件以上も

報告されています。

その中でカトリック教会が認めた

「奇跡の治癒」は67件。

プラシーボ効果や

治癒の過程に偶然いた方が

「ルルドの泉の功徳」と

信じていることもあるでしょう。

無信心の私にはわかりません。

でも信仰心の自覚浅き幼児や

異例の快復など

「奇跡」とも言える症例が

あるのも事実。

「もしや自分にも治癒の可能性が?」

という期待と我が困難を

受け止めてくれる慈悲の聖母。

この地は

重い病と対たい

峙じ

する中

くじけそうになる心を慰め

再び歩む精神的強さを

くださる場所なのだと感じました。

さらにここは「いたわりあう心」を

改めて教えてくれる場所。

普段は控えめになりがちな病者が

「一番の客人」としてもてなされている

光景も印象的でした。

(本当は社会全体がそうあるべきですが)

以前、カルナック(フランス西部)の

取材で会った

敬けい

虔けん

なクリスチャンの

ご婦人の言葉がよぎります。

アカイケさん

私も巡礼のツアーで

ルルドに行ったの

その時感じたのはね

悩める心を洗い流し

人類の母の聖母マリアが

私たちを包みこんで

慰めてくれるところ…

私はここを

「天国の一隅」だと

思っているんですよ

30

日本では「ルルド」と発音しますが、イギリスやフランスの友人に言ってもまったく通じず…(汗)。「ロォゥルズ」のような発音が近いようです。

「健康」はいつの世も

万人が抱く願い

今回汲んだ聖水は

近しい二人への贈り物。

大家さん

ルルドに行ってきました

よければこれを奥様に…

Oh!Lourdes!

受け手には気休めかもしれません。

ですが、病に苦しむ方を

「案じ・想お

う心」が

聖水に託されているのは

確かなのです。

ユウジくん・キョウコさんルルドの泉の水、届きました。ありがとうございます。心なしか最近は病状も安定し調子も落ち着いています。先日は○○○へ行きましたよ!…………………………

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