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高齢者の自動車運転に関連する認知機能 平成 30 年度(本報告) タカタ財団助成研究論文 ISSN 2185-8950 研究代表者 目黒 謙一

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Page 1: 高齢者の自動車運転に関連する認知機能 - TAKATA FOUND...高齢者の自動車運転に関連する認知機能 ― 平成30年度(本報告) タカタ財団助成研究論文

高齢者の自動車運転に関連する認知機能

― 平成 30 年度(本報告) タカタ財団助成研究論文 ―

ISSN 2185-8950

研究代表者 目黒 謙一

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研究実施メンバー

研究代表者 東北大学 CYRIC 高齢者高次脳医学 目黒 謙一

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報告書概要

高齢運転者による交通事故が増加する中、免許更新時の「認知機能検査」(以後、「警察庁

検査」)が義務付けられたが、その検査内容については議論の余地がある。我々は、「警察庁

検査」で第 1 分類(認知症の疑い)に分類されない場合でも、家族から見て危険な状況が認

められる事例を報告した。本プロジェクトはこの現状を踏まえ、地域在住高齢者の自動車運

転の実態調査並びに「警察庁検査」で抽出されない運転危険群のスクリーニング検査の予備

的検討を実施するものである。実態調査は、もの忘れ外来の受診者 30 名とその家族に運転の

実態調査の聴取を実施した。内容は、運転の目的、必要性、運転時のヒヤリとした経験、事

故歴等である。運転危険群のスクリーニング検査の予備的検討は、情景画課題と遂行機能検

査を実施した。情景画は自動車運転シミュレータの映像を紙に出力して作成し、これを提示

して危険予知の認知の可否を判定するものである。併せて遂行機能検査も実施した。結果、

実態調査においては、「警察庁検査」が第 2・第 3 分類であっても運転中の交通事故の経験が

ある事例が存在した。また、情景画課題と遂行機能検査については「警察庁検査」の第 2・

第 3 分類で、運転中の交通事故の経験がある人は両検査の成績が低下していた。以上のこと

から、「警察庁検査」でスクリーニングできない運転危険群が存在し、これを補完するものと

して、情景画課題、遂行機能検査の有用性が示唆された。

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目 次

高齢者の自動車運転に関連する認知機能

第 1 章 はじめに

1.1 研究背景

1.2 目的

第 2 章 高齢者の自動車運転の実態調査

2.1 調査方法

2.2 調査結果

第 3 章 情景画課題と遂行機能検査

3.1 検査方法

3.2 検査結果

第 4 章 考察と今後の課題

4.1 高齢者の運転実態調査

4.2 情景画課題と遂行機能検査

4.3 限界点と今後の課題

参考文献

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第 1 章

はじめに

1.1 研究背景

高齢運転者による交通事故が社会問題化している。交通事故の件数は減少傾向にあるが、

高齢者は若年層を除き他の年代よりも相対的に事故の件数が多い(図 1.1、1.2)。特に注目

すべきは高齢者の交通事故は死亡率が高く(図 1.3)、重大事故につながりやすいのが特徴で

ある。そうした背景から、道路交通法が改正され、平成 29年 3月 12 日より 75歳以上の高齢

者の免許更新時に「認知機能検査」(以後、「警察庁検査」)が義務付 けられた。しかしなが

らその検査内容についてはまだまだ議論の余地がある。その根拠として我々は、「警察庁検査」

で第 1 分類(認知症の疑い)に分類されない場合でも、家族から見て危険な状況が認められ

る事例を報告した(日本神経精神医学 会、2017年 10 月、東京)。

図 1.1 原付以上運転者の年齢層別免許保有者 10 万人当たりの交通事故件数の推移

出典:警察庁, 2018

https://www.npa.go.jp/news/release/2018/20180213001H29zennjiko.html

図 1.2 年齢層別の免許人口 10 万人当たり事故件数(原付以上第一当事者)(平成 29 年中) 出典:警察庁, 2018

https://www.npa.go.jp/news/release/2018/20180213001H29zennjiko.html

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図 1.3 年齢層別の免許人口 10 万人当たり死亡事故件数(原付以上第一当事者)(平成 29 年) 出典:警察庁, 2018

https://www.npa.go.jp/news/release/2018/20180213001H29sibou.html

しかし、代替交通手段の少ない地方では、生活水準の維持のためには車で移動しなければ

ならないが、認知機能が低下しているにもかかわらず車を運転せざるを得ない人が少なから

ず存在するものと思われる。 人間は、脳により身体を使いこなして歩行し、自動車はその身

体の延長でもある。認知機能が低下すれば運転に影響が出るはずであるが、定常的な運転や

閑散たる交通事情でたまたま何事もなく運転している、という状態も想像に難くない。

表 1.1平成 28年中 認知機能検査の結果

第 1分類 第 2分類 第 3分類

75歳以上のドライバー(%)* 2.8 26.8 70.4

死亡事故(%)* 7.3 41.8 50.9

算出した推定オッズ比 3.6 2.2 -

警察庁、2018

https://www.npa.go.jp/toukei/koutuu48/H29siboubunnseki.pd

我々はまず、「警察庁検査」と事故率の分析を行った(表 1.1)。すると第 1 分類がそれ

以外と比較して、約 3 倍事故率が高いことを算出した。すなわち「警察庁検査」で測定され

る認知機能と死亡事故率は密接に関係している。

また、認知症患者の運転能力の測定についてのシステマティックレビューでは、神経心理

学検査の有用性は、遂行機能検査などが検討されているが単独では乏しく、複数の検査を組

み合わせて行うことを支持している(1.Bennett et. al. 2016)。

つまり、前出の我々が報告した事例のように「警察庁検査」では検出できない事故リスク

群の存在が示唆される。

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一方、我々はリスク予想情景画課題(以下:情景画課題)を用いて、東日本大震災の被災

者において,軽度認知障害(MCI)者は優位にスコアが低く、不適切行動との関連があること

を報告した(2.Akanuma et. al. 2016)。

図 1.4 リスク予想情景画の例

また、本学未来科学技術共同研究センター(New Industry Creation Hatchery Center:NICHe)

においては、ドライブシミュレータを用い、より現実に近い設定で運転能力の研究を行って

いる。

図 1.5 本学 NICHeドライブシミュレータの様子

これらの研究資源を駆使して、高齢者死亡事故ゼロを目指すために、運転に関する認知機

能の評価をすすめていく。

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1.2 目的

① 生活上の必要性の把握:

本人および家族に対しアンケートを実施し、運転行動と生活の実態を把握する。

② リスク高齢運転者のスクリーニング:

臨床的に診断した認知症とそれ以外の高齢者を対象に、「警察庁検査」と申請者らが独自に

開発した課題(記憶・言語・視空間機能検査、ならびに運転シミュレータ)を行うことで、

「警察庁検査」の妥当性を検討する。

なお、本研究は東北大学大学院医学系研究科と実施施設の倫理委員会の承認を得ている。

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第 2 章

実態調査

2.1 高齢者の自動車運転の現状

地域在住高齢者の自動車運転の現状を調査するにあたり、まず運転の意義としては移動手

段と QOL(生活の質)の維持とし、目的としては買い物、仕事、余暇活動などを想定した(3.

「認知症高齢者の自動車運転を考える家族介護者のための支援マニュアル©」を参照)。本プ

ロジェクトにおいては、自動車を運転している地域在住高齢者を事故あり群・事故なし群に

分類した上で生活について検討をおこなうこととした。調査実施場所である 1997 年に開設さ

れた当スキップセンターは、科学的根拠に基づく地域における脳卒中・認知症・寝たきり予防の

ために当時の田尻町長が発案し宮城県を介して東北大学に要請があったもので、現在の地域包括

ケアの学術版とでも言うべき発展形を先取りしたものであった。当診療所は地域の介護保険事業

や社会福祉協議会とも連携を取っており、生活実態に関する緊密な情報が得られることが大きい

特徴である。その他の詳細は下記の通りである。

実施施設:大崎市民田尻診療所(大崎市田尻スキップセンター)

実施期間:2017年 4 月~2018年 8月

対象者:「もの忘れ外来」新規受診者(以下,本人)で運転免許保有している 34名

実施した連続外来データベース:

神経心理検査→*MMSE、CASI、TMT-A、Digit Symbol、WMS-R

画像検査→*MRI、ECD-SPECT *MMSE=Mini Mental State Examination, CASI=Cognitive Abilities Screening Instrument, TMT=Trail-Making Test, WMS=Wechsler Memory Scale, MRI=Magnetic Resonance Imaging, ECD-SPECT=99mTc Ethylcysteinate Dimer - Single Photon Emission Tomography

運転アンケート:本人や家族に自動車運転の目的、“運転をやめることを考えているか”、

1年以内の事故の有無など聴取。

交通事故 (事故なし VS 事故あり)

交通事故(自損事故を含む)に関する質問に対し、該当した者を“事故あり群”、 該当しな

かった者を “事故なし群”とした(自損事故に関する質問の例:この 1年で、壁や車庫に車

をこすったり、ぶつけたりしたことがありますか)。

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表 2.1対象者のデモグラフィック

臨床的特徴 全体 事故あり 事故なし

N (男性:女性) 34 (25:9) 15 (11:4) 12 (7:5)

年齢 (SD) 78.0 (6.2) 78.9 (6.3) 77.1 (6.0)

教育年数 (SD) 10.6 (2.1) 10.4 (1.6) 11.0 (2.6)

MCI / 認知症 11 / 16 5 / 10 6 / 6

MMSE (SD) 19.9 (5.0) 20.4 (5.5) 19.9 (4.2)

警察庁 「認知機能検査」

第 1 分類 15 8 3

第 2・3 分類 17 6 8

*年齢・教育年数・MMSE は平均 (SD) と示す MCI :Mild Cognitive Impairment 運転アンケートの内容(一部抜粋) 1.自分で自動車を運転して出かけますか(複数回答可) ①買い物(食料品や洋服などの買い物、銀行)、②余暇活動(サークル、 知人との交流、旅行、スポーツ、学習・自己啓発、③仕事・通勤、④通院、 ⑤送迎(孫など)、⑥社会活動(ボランティア) 2.過去 1 年間で自ら運転する自動車を車庫や壁、ガードレール、縁石などぶつける、 こするなどの事故を経験しましたか。または交通事故を起こしたことがありますか。 ⇨ 1)はい 2)いいえ 3)わからない

3.自動車の運転をやめることや運転免許返納を考えていますか。 ⇨ 1)考えていない 2) 迷っている 3) やめることを考えている

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2.2 調査結果 まず、今回の調査と過去に行われた調査の比較を行ったところ、運転の目的について,先行文献

は買い物、仕事、余暇活動の順で、本プロジェクトでは買い物、余暇活動、通院の順に高かった

(図 2.1)。

図 2.1 運転の目的 (本人) 本プロジェクトと過去の文献の比較 *文献: 「認知症高齢者の自動車運転を考える家族介護者のための支援マニュアル」

国立長寿医療研究センター 長寿政策科学研究部

http://www.ncgg.go.jp/cgss/department/dgp

事故の有無での比較を行ったところ、“事故あり群”は“なし群”に比べ、 1日当たりの運転

時間が約 1.5 倍長く、余暇活動や仕事で増加していた。 “運転をやめることを考えているか”の質問に対しては、本人と家族は概ね一致していた。

しかし、本人と家族が乖離する事例もあった。

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「警察庁検査」第 2 分類、第 3 分類でも事故を起こした事例があった。

表 1.3 事故ありの 2 事例

#1 #2

年齢/性別 82 歳/男性 76 歳/女性

診断 MCI MCI

警察庁「認知機能

検査」分類 第 3 分類 第 2 分類

MMSE 29/30 18/30

運転継続 (本人/家族)

迷っている/継続 中止/迷っている

本人の理由 交通手段がない、趣味の運転がな

くなる、楽しみや外出が減る 事故が心配、免許更新時期

家族の理由 お金や時間がかかる、生活に支

障、楽しみや外出が減る 交通手段、生活に支障、家族の負担、気

持が落ち込む、楽しみや外出が減る

MCI :Mild Cognitive Impairment

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第 3 章

情景画課題と遂行機能検査

1.1 検査方法

情景画については本学 NICHe で使用している三菱プレシジョン社製のドライブシミュレータ

上で作成した画像(図 3.1,3.2)を A4 サイズの紙に印刷して使用した。情景画を1枚ずつ提示

し、画像に含まれるリスク情報について質問を行い、それぞれの情景画で、危険箇所の指摘の有

無について採点し、その合計点を情景画得点とした。 神経心理学的検査については遂行機能検査に着目し、Trail Making Test Part-A(TMT-A)(図

3.3)と WAIS-R、WAIS-Ⅲの符号問題l(Digit Symbol)(図 3.4)を行った。 実施場所等詳細は以下の通り。

実施施設 : 大崎市民田尻診療所(大崎市田尻スキップセンター) 実施期間 :2017 年 4 月~2018 年 8 月 対象者 : 「もの忘れ外来」新規受診者で運転免許保有している 40 名中の 23 名

• 実施した連続外来データベース: 神経心理検査 → MMSE 、CASI 、TMT-A 、Digit Symbol 、WMS-R 画像検査→ MRI、ECD-SPECT

• 追加の検査 1.「警察庁検査」→「認知機能検査進行要領」に則り、実施 2. 情景画課題→ ドライブシミュレータ画像で作成 3.事故の聴取→ 運転アンケート

表 3.1 対象者のデモグラフィック

“事故なし群” (N=12) “事故あり群” (N=11)

年齢(歳) 76.2 (7.5) 76.0 (5.3)

性別(男/女) 9/3 8/3

教育年数(年) 11.9(2.6) 10.6 (1.9)

MCI / 認知症 7/5 8/3

MMSE 23.7 (4.1) 21.8 (3.9)

「認知機能検査」(第2/第3) 7/4 12/0

*年齢・教育年数・MMSE は平均 (SD) と示す MCI :Mild Cognitive Impairment

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図 3.1 情景画の例1(危険箇所:直進時・路上駐車車両の間に立つ子供)

図 3.2 情景画の例2(危険箇所:右折時・対向車の後続のバイク)

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図 3.3 Trail Making Test Part-A(TMT-A)の例 ランダムに記載された 1〜25 の数字を 1 から順番に線を可及的速く結んでいき、 作業完了までの所要時間を測定。

図 3.4 WAIS-R、WAIS-Ⅲの符号問題 1(Digit Symbol) 数字と対になった記号を可及的速く書き写す課題。90 秒及び 120 秒まで時間内で実施可能な個数

を算出。

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3.2 検査結果 「警察庁検査」第 2・第 3 分類を対象に、情景画課題と遂行機能検査を施行した結果、「事故あ

り群」は両検査の成績が低下していた。

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第 4 章

考察と今後の課題

4.1 高齢者の運転実態調査

運転の目的については、先行文献と比べ、余暇活動で増え、仕事で減少している。MCI・認知

症対象のため、免許返納後の活動低下には注意が必要である。“事故あり群”は“なし群”に比べ、

運転時間が長い。運転時間が関係する可能性もある。運転の可否について本人と家族は概ね一致

するものの、個別に対応が必要な症例もあり注意しなければならない。事故リスク群を早期に検

出できる「警察庁検査」であるが、第 2 分類、第 3 分類でも事故を認めた。「警察庁検査」を補足

する検査の必要性が示唆された。

4.2 情景画課題と遂行機能検査

第 2 分類にも情景画課題・遂行機能検査低得点者、事故者が存在していたが、「警察庁検査」だ

けでは検出できない「事故リスク群」が、情景画課題、遂行機能検査との組み合わせで検出でき

る可能性が示唆された。

4.3 限界点と今後の課題

今回の報告における本プロジェクトの限界点は分析中のサンプルサイズが小さいことである。

今後、対象数を増やして調査する必要がある。また、認知症疾患別の傾向の分析は未実施である。

また、よりリアルワールドに近いエビデンス創出のために、前出の運転シミュレータを用いた調

査を施行する予定である。 以上

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参考文献

1.Cognitive Tests and Determining Fitness to Drive in Dementia: A Systematic Review. Bennett,et.al. J Am Geriatr Soc. 2016 Sep;64(9):1904-17. doi: 10.1111/jgs.14180. Epub 2016

Jun 2. 2.Disturbed social recognition and impaired risk judgement in older residents with mild

cognitive impairment after the Great East Japan Earthquake of 2011: the Tome Project. Akanuma,et.al.Psychogeriatrics. 2016 Nov;16(6):349-354. doi: 10.1111/psyg.12175. Epub

2016 Jan 12. 3.「認知症高齢者の自動車運転を考える家族介護者のための支援マニュアル©」 国立長寿医療研究センター 長寿政策科学研究部 http://www.ncgg.go.jp/department/dgp/index-dgp-j/htm