新規自動血管吻合器の開発 - jst...5 従来技術の問題点-1...

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1 新規自動血管吻合器の開発 久留米大学 医学部解剖学講座(肉眼臨床解剖部門) 講師 渡部 功一 久留米大学 医学部 形成外科・顎顔面外科学講座 助教 高橋 長弘

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Page 1: 新規自動血管吻合器の開発 - JST...5 従来技術の問題点-1 口径差がある血管どうしは従来の 自動血管吻合器で吻合できない!! 細い血管にリングを合わせると、太い血管壁が余る。

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新規自動血管吻合器の開発

久留米大学 医学部解剖学講座(肉眼臨床解剖部門)

講師 渡部 功一

久留米大学 医学部 形成外科・顎顔面外科学講座

助教 高橋 長弘

Page 2: 新規自動血管吻合器の開発 - JST...5 従来技術の問題点-1 口径差がある血管どうしは従来の 自動血管吻合器で吻合できない!! 細い血管にリングを合わせると、太い血管壁が余る。

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背景

・微小血管吻合は、眼科・耳鼻科・形成外科・脳外科・一般外科の領域で行われる。 形成外科手術: 症例数 約 100 症例 (久留米大学病院) 約3,000 症例 (国内全体) 例えば、遊離皮弁移植手術が必要な患者数 (推定): 年間 約1,000人 (国内)、約10,000人 (海外)

対象疾患、患者数

例えば・・・ 舌癌の再建の場合、 腹部から腹直筋皮弁を採取して 口腔内欠損部に移植する。 この際、腹直筋皮弁の栄養血管と頚部の血管(動脈、静脈)を 吻合する。

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従来技術-1 現在使用されている自動血管吻合器

(Synovis社製 自動血管吻合器)

リング:ドーナツ状で樹脂製 金属製のピンが付着

二つのリングを合わせる事で血管を吻合する

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・吻合する血管をリングに 通す。

・リングを合わせる事で 血管吻合を行う。

従来技術-2

・リングに付いたピンに 血管壁を刺し 血管を外翻する

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従来技術の問題点-1

口径差がある血管どうしは従来の 自動血管吻合器で吻合できない !!

細い血管にリングを合わせると、太い血管壁が余る。

血管(細) 血管(太)

太い血管にリングを合わせると、細い血管壁が裂ける。

血管(細) 血管(太)

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従来技術の問題点-2

手縫いの問題点

・高度な技術を要する。

・時間がかかる。 ・術者の精神的、肉体的疲労

口径差がある血管どうしは従来の自動血管吻合器で 吻合できない ので、手縫いするしかない!!

手縫い箇所

自動血管吻合器を用いて、 口径差のある血管同士を吻合できないだろうか?

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本技術について

小口径の方の血管の形状に適合するように リングを変形させる。

小口径の血管に合うように 変形させたリングどうしを 合わせて吻合する。

血管(細) 血管(太) 血管(細) 血管(太)

②リングを特殊変形させ、かつ 血管吻合可能な装置に改良

①特殊な形に変形可能なリング(素材、形、構造)に改良

主改良部 変形した2リングは合一形

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新技術の特徴・従来技術との比較

• 従来、口径差がある血管どうしを吻合する場合、手縫いで行っていたが、高度な技術が必要であり、時間と手間が必要。

• 従来技術の問題点であった、口径差がある血管どうしを吻合することが可能。

• 本技術は、従来の血管吻合器とほぼ同様に使用することができるので、簡単である。

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市場規模

血管吻合は、眼科・耳鼻科・形成外科・脳外科・一般外科の領域で行われる。 形成外科的手術において、血管を吻合する症例数は、久留米大学病院では約100症例、国内で約3000症例。 例えば、遊離皮弁移植手術が必要な患者数は、国内で年間約1000人、海外で約10000人。

【対象疾患、患者数】

【現在の市場の状況】

国内市場: (薬事工業生産動態統計り) 血管領域吻合器、縫合器5.8 億円(2008年度) 吻合器全体:40億円(2006年度) 吻合器+縫合器:200億円(2006年度) 吻合器+縫合器:240億円(2008年度) 既存製品(海外製) リング:約3万円、吻合器:約35万円 (Micro Companies Alliance, Inc. SynovisⓇ (GEM Microvascular Anastomotic System))

【事業化後の将来イメージ】

国内市場: 血管領域吻合器・縫合器 約15億円 吻合器全体で80-100億円規模 外市場展開の可能性: (外国人は細かい操作を好まないた め、手での吻合ではなく、血管吻合 器を用いた縫合を好む。よって、 需要が大きいことが分かる。)

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想定される用途

・本発明により自動血管吻合器を使用して口径差のある血管同士の吻合が可能になれば、自動血管吻合器の適応が大幅に拡がり、今後の症例数の大幅な増加が見込まれる。

・形成外科領域だけでなく、他領域でも使用される頻度が大幅に増大すると考えられる。

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実用化に向けた課題

• 現在、リング素材、変形後のリング形状、について、基本形状、要求される材料物性、リング変形の作動装置等の基本原理的な部分は検討済み。

• 今後、プロトタイプの製作と、それらの最適化を必要とし、精密加工・制御技術を保有する企業との共同開発を目指す。企業との共同開発を求めている。

(製品化に向けての、実験(動物等)による器具の作動確認、とこれらの結果をベースに器具の改良)

• 実用化に向けて、臨床データの取得。 • 薬事法上の認可(大学では出来ない。当該分野での経験を

有する医療機器関連企業の援助が必要)

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企業への期待

求める企業の種類

・金属、プラスティック等、樹脂類の微細成型・加工(製造・開発)企業 (バネ、歯車、ネジの微細加工) ・医療機器製造販売認可を取る企 業(クラスIII) ・医療機器を販売する企業など

求める技術要素

・微細・精密加工技術 ・精密・微細作動(手動中心)制御 機器加工・製造技術 ・微細ネジ、バネ、歯車加工技術

企業に具体的にしてほしいこと

・リング素材・構造の検討・最適化(複合材料も含む、微小加工) ・吻合器本体の微細構造精密加工、微細動作・変形機構(手動で操作) の最適化=リングの変形安定制御可能な微細装置の開発。 ・薬事法への対応と製造設備確保。 ・製品製造と販売

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本技術に関する知的財産権

• 発明の名称 :口径が異なる血管が 吻合可能な自動血管吻合器 • 出願番号 :特願2012-016272 • 出願人 :学校法人久留米大学 • 発明者 :渡部 功一

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お問い合わせ先

久留米大学知的財産本部

担当者:井上 薫、松尾 綾、村上 郁磨

TEL 0942-31 - 7916

FAX 0942-31- 7918

e-mail chikan@kurume-u.ac.jp