高効率な表面硬化技術の開発 -...
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わ が 社 の 素 形 材 技 術 最 前 線
熱処理
SOKEIZAI Vol.54(2013)No.1
浅川熱処理株式会社
高効率な表面硬化技術の開発表面硬化処理を施した新たな製品
1.開発の目的
現在製品を黒くする表面処理として鉄表面に Fe3O4(四三酸化鉄膜)が用いられている。この Fe3O4 を製品表面に付けるプロセスは複数あり、浅川熱処理ではFe3O4(四三酸化鉄膜)を作るのに(従来ドリルの表面処理で使用されている)焼き戻し処理中に水蒸気を入れることにより、大変密着性が良く、高い硬さが得られる水蒸気被膜処理加工をボルトに行っている。
2.開発の内容
(1)コスト、生産効率 焼入れした鋼は硬すぎるため、靭性を与える目的で焼き戻しを必ず行う。焼入れ、焼き戻しの中でも調質処理は、ボルトのように、高い靭性が必要な製品に行う熱処理で 400℃以上の焼き戻し温度を必要とする。この焼き戻し加熱中に水蒸気を流すため表面処理としての熱エネルギーは不要になり、低コストとなる。また焼戻しと同時に行うため生産効率も大変良い表面処理である。
浅川熱処理株式会社〒409-3853 山梨県中巨摩郡昭和町築地新居 1584-2TEL. 055-275-5231 FAX. 055-275-5408http://www.netushori.co.jp/
(2)処理方法 焼き戻し加熱中(400℃~ 600℃)中に水蒸気を入れ製品表面にFe3O4 被膜を作る。
3.開発の成果
<被膜の特徴>① Fe3O4 被膜が 1000HV以上と大変硬い膜のため耐摩耗性が向上できる。
② Fe3O4 被膜は 400℃~ 600℃と高温で作るためポーラス状に成長し油の含浸力が高く、油切れし難い。
③ 耐食性が上がり、赤さび(Fe2O3)と白錆の発生を防止する。
④ 浅川熱処理で行うホモ処理後の亜鉛メッキは、塩水噴霧試験で 300 時間以上の耐食性がある。
写真 1 SPCC材 590℃ 生成ホモ層表面
写真 2 ホモ処理品 高強度ボルト
図 1 ホモ処置後のボンデ材(Ca)が酸洗浄で剥離する シミュレーション
中和反応酸の(H+)と塩基の(OH-)が結び付いて水分子(H2O)を生じる。
ボンデCaと水蒸気中のH2Oが結びつく Ca(OH)2水酸化カルシウムになる
ホモ処理中ホモ処理後
塩酸洗浄中
HClHCl
Ca(OH)2
CaCaO2H2OH2O
Ca(OH)2 Ca(OH)2
・鉄の酸化物(1)2Fe+O2 2FeO (ウスタイト)(2)4Fe+3O2 2Fe2O3(ヘマタイト)(3)3Fe+2O2 Fe3O4 (マグネタイト)
ホモ処理はポーラスに成長している
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