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49 1.はじめに CFT(Concrete Filled Steel Tube)造は、鋼管内にコン クリートを充填した構造形式で、主に柱として低層から超 高層建物まで幅広く適用できる躯体システムである。現在 では、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリー ト造(SRC 造)、鉄骨造(S 造)に続く第 4 の構造として確 立されており、その優れた耐震性能および耐火性能に加え、 設計自由度や施工性の向上が期待できる構造形式として、 様々な用途の構造物に適用されている。特に大都市地域で は、超高層建築物に採用されるケースが増加している。 本報告では、CFT 造の特長と CFT 充填コンクリートの施 工方法ならびに留意点、最近の適用事例として、高度な施 工管理を要する鉄筋入り CFT 造への充填施工、ジョイント 式トレミー管による落し込み充填施工、斜め柱の圧入施工 について報告する。 2.CFT造の特長と施工方法 2.1 CFT造の特長と効果 CFT 造の最大の特長は、鋼管とコンクリートそれぞれが 持つ材料特性以上の性能が発揮されることにある(図1)。 鋼管がコンクリートを拘束し、コンクリートが鋼管の局部 座屈を抑制する相乗効果により、従来の構造形式に比べ耐 震・耐火性能が向上し、計画上の自由度を高め、柱断面も コンパクトな構造が可能となる。 この相乗効果を最大限に発揮させるためには、鋼管内に コンクリートを均質・密実かつ隙間なく充填し、鋼管とコ ンクリートの一体化を図る必要がある。このため、充填コ ンクリートには、鋼管内部のダイアフラム下面に空隙を生 じさせないように、ブリーディング量や沈降量を極力小さ くするなど、いくつか特殊な性能が要求される。また、実 施工においても入念な施工計画立案が必要であり、これら については、(一社)新都市ハウジング協会(以下、協会) の「コンクリート充填鋼管(CFT)造技術基準・同解説の運 用及び計算例等」(以下、協会指針) 1) が参考となる。 2.2 鉄筋入りCFT(CFT-R)造 鉄筋入り CFT 造は、通常の CFT 造よりも軸耐力や耐火性 能が向上する構造形式である。当社では 1997 年より住友金 属工業㈱(現 新日鐵住金㈱)とともに CFT 造に鉄筋を挿入 した CFT-R 造(図 2)の共同開発に着手した。共同開発成 果として、「CFT 造および CFT-R 造の設計・施工法」につい て 2008 年 9 月に(株)都市居住評価センターの一般評定 (UHEC 評定-構 20002)を取得している。CFT-R 造は、一 般の CFT 造の特長を継承しつつ、以下のような特長を有し ており、今後、要求性能に合わせて普及が見込まれるもの と考えられる。 *1 梶山 *2 Manabu Sumi Tsuyoshi Kajiyama CFT充填コンクリートの施工管理 Quality Management of Concrete for CFT Structure 要旨 CFT 造はその優れた耐震性能および耐火性能に加え、設計自由度や施工性の向上が期待できる構造形式として様々な 用途の構造物に適用されている。本報告では、CFT 造の特長と CFT 充填コンクリートの施工方法ならびに留意点、最近 の適用事例として、高度な施工管理を要する鉄筋入り CFT 造への充填施工、ジョイント式トレミー管による落し込み充 填施工、斜め柱の圧入施工について報告する。 キーワード:CFT CFT 充填コンクリート 施工管理 鉄筋入り CFT 造 落し込み充填工法 造:靭性は大きいが 剛性が小さく座 屈しやすい 火:耐火性能に劣る 造:剛性は大きいが せん断耐力・靭 性が小さい 火:耐火性能に優れ 図1 CFT 造の相乗効果 *1 技術研究所 建築技術研究部門 *2 技術研究所

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Page 1: CFT充填コンクリートの施工管理 - konoike.co.jp · では、鉄筋コンクリート造(rc 造)、鉄骨鉄筋コンクリー ト造(src造)、鉄骨造(s造)に続く第4の構造として確

― 49 ―

1.はじめに

CFT(Concrete Filled Steel Tube)造は、鋼管内にコン

クリートを充填した構造形式で、主に柱として低層から超

高層建物まで幅広く適用できる躯体システムである。現在

では、鉄筋コンクリート造(RC 造)、鉄骨鉄筋コンクリー

ト造(SRC 造)、鉄骨造(S 造)に続く第 4 の構造として確

立されており、その優れた耐震性能および耐火性能に加え、

設計自由度や施工性の向上が期待できる構造形式として、

様々な用途の構造物に適用されている。特に大都市地域で

は、超高層建築物に採用されるケースが増加している。

本報告では、CFT 造の特長と CFT 充填コンクリートの施

工方法ならびに留意点、最近の適用事例として、高度な施

工管理を要する鉄筋入り CFT 造への充填施工、ジョイント

式トレミー管による落し込み充填施工、斜め柱の圧入施工

について報告する。

2.CFT造の特長と施工方法

2.1 CFT造の特長と効果

CFT 造の最大の特長は、鋼管とコンクリートそれぞれが

持つ材料特性以上の性能が発揮されることにある(図 1)。

鋼管がコンクリートを拘束し、コンクリートが鋼管の局部

座屈を抑制する相乗効果により、従来の構造形式に比べ耐

震・耐火性能が向上し、計画上の自由度を高め、柱断面も

コンパクトな構造が可能となる。

この相乗効果を最大限に発揮させるためには、鋼管内に

コンクリートを均質・密実かつ隙間なく充填し、鋼管とコ

ンクリートの一体化を図る必要がある。このため、充填コ

ンクリートには、鋼管内部のダイアフラム下面に空隙を生

じさせないように、ブリーディング量や沈降量を極力小さ

くするなど、いくつか特殊な性能が要求される。また、実

施工においても入念な施工計画立案が必要であり、これら

については、(一社)新都市ハウジング協会(以下、協会)

の「コンクリート充填鋼管(CFT)造技術基準・同解説の運

用及び計算例等」(以下、協会指針)1)が参考となる。

2.2 鉄筋入りCFT(CFT-R)造

鉄筋入り CFT 造は、通常の CFT 造よりも軸耐力や耐火性

能が向上する構造形式である。当社では 1997 年より住友金

属工業㈱(現 新日鐵住金㈱)とともに CFT 造に鉄筋を挿入

した CFT-R 造(図 2)の共同開発に着手した。共同開発成

果として、「CFT 造および CFT-R 造の設計・施工法」につい

て 2008 年 9 月に(株)都市居住評価センターの一般評定

(UHEC 評定-構 20002)を取得している。CFT-R 造は、一

般の CFT 造の特長を継承しつつ、以下のような特長を有し

ており、今後、要求性能に合わせて普及が見込まれるもの

と考えられる。

住 学*1 梶山 毅*2

Manabu Sumi Tsuyoshi Kajiyama

CFT充填コンクリートの施工管理

Quality Management of Concrete for CFT Structure

要旨

CFT 造はその優れた耐震性能および耐火性能に加え、設計自由度や施工性の向上が期待できる構造形式として様々な

用途の構造物に適用されている。本報告では、CFT 造の特長と CFT 充填コンクリートの施工方法ならびに留意点、最近

の適用事例として、高度な施工管理を要する鉄筋入り CFT 造への充填施工、ジョイント式トレミー管による落し込み充

填施工、斜め柱の圧入施工について報告する。

キーワード:CFT CFT 充填コンクリート 施工管理 鉄筋入り CFT 造 落し込み充填工法

構 造:靭性は大きいが剛性が小さく座屈しやすい

防 火:耐火性能に劣る

構 造:剛性は大きいがせん断耐力・靭性が小さい

防 火:耐火性能に優れる

図 1 CFT 造の相乗効果

*1 技術研究所 建築技術研究部門 *2 技術研究所

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鴻池組技術研究報告 2013

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[高いコストパフォーマンス]

構造性能を低下させることなく、鋼管の薄肉化を図る

ことができ、鉄筋工事の増加分を考慮しても建設コスト

の縮減が可能になる。

[高い構造性能]

内蔵鉄筋が応力を負担するため、高い軸力・大きな曲

げモーメントに対応可能である。

[柱の無耐火被覆化]

CFT 造より耐火性能が向上するため、ルート C による

耐火設計を行うことで柱を耐火被覆なしとすることがで

き、仕上げ簡素化による工期と建設コストの合理化が可

能になる。また、柱断面のスリム化により有効床面積を

増大させることができる。

2.3 充填工法および施工管理

CFT 造の充填工法には、図 3 に示すように圧入工法と落

し込み充填工法がある。充填工法は鋼管の形状、仕口部の

ダイアフラムの形式・形状および現場の諸条件を考慮し、

所要の充填性・強度・耐久性が得られるように、下記の事

項について十分な検討を行い選定する。

a) 1 回のコンクリートの充填高さ

b) 1 回のコンクリートの充填量

c) 全体の施工高さ

d) 鋼管柱の形状:円形鋼管/角形鋼管

e) ダイアフラム形式

f) 総合仮設計画(ポンプ配管計画・揚重計画など)

g) 工程計画

h) 1 日のタイムスケジュール

i) コスト

2.3.1 圧入工法

圧入工法は、鋼管下部の圧入口にポンプ配管を接続し、

下層より上部に向けてコンクリートを充填させる工法で、

圧入時の圧力の確認と圧入速度管理が施工管理のポイント

となる。一般的な施工手順を図 4 に示す。

2.3.2 落し込み充填工法

落し込み充填工法は、コンクリートバケットなどにホー

ス類あるいは充填管を接続し、コンクリートを下部まで落

とし込んでから順次ホース類を引き上げて鋼管内部にコン

クリートを充填させる工法である。地下階など比較的充填

高さが低い場合や、サイクル工程を採用した場合などに用

いられる。落し込み充填工法においても、速度管理ととも

に特に空気泡の巻き込み防止などが施工管理のポイントと

なる。図 5 に充填管を使用し、締固めをする場合の落し込

み充填工法の一例 1)を示す。

2.3.3 タイムスケジュール

コンクリート充填のタイムスケジュールは、1 本の柱に

充填するコンクリート量、1m/分以下の充填速度、ポンプの

吐出量等の条件から柱 1 本当りの充填時間を算出し、ポン

プ配管またはコンクリートバケットの盛替え時間を見込ん

で計画する。図 6 にタイムスケジュールの一例を示す。特

に圧入工法では、1 本の柱を圧入開始から完了まで連続し

て充填する必要がある。これは、流動性の高いコンクリー

トでも一度流れを止めると閉塞の可能性が高くなるためで

ある。したがって、柱 1 本の充填量が多い場合(生コン車

が複数台)には、必要な生コン車が到着してから充填を開

始するなどの配慮が必要となり、生コン工場と出荷間隔の

調整を充分に行う必要がある。

2.3.4 充填コンクリートの品質管理・検査

荷卸し地点におけるコンクリートのフレッシュ性状およ

び圧縮強度の品質管理・検査においても、大臣認定を受け

たコンクリートを使用する場合はそれによる。また、フレ

ッシュ性状が不安定になりやすい各打設日の生コン車 1 台

目から数台は、連続してフレッシュコンクリートの試験を

行うことが望ましい。

図 2 CFT-R 概念図

トレミー管または

サニーホース

バケット

圧入口誘導管

配管

一般 CFT 造 CFT-R 造

落し込み充填工法 圧入工法

図 3 充填工法 1)

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CFT充填コンクリートの施工管理

― 51 ―

図 4 圧入工法施工手順

職員および作業員の配置・役割分担の徹底

ポンプ車機種・配管経路の確認、配管の異常、

↓ 鋼管内の残水の有無

配管切替時にコンクリートのこぼれによる

↓ 汚れが生じない養生がなされているか

打設柱に必要な数量の発注および配車 鋼管内の残水確認 圧入口スライドバルブの取付

↓ ピッチの確認

↓ ← 出荷時検査 報告確認

納品書による確認

所定の試験を実施

↓ 判定基準を満足しないものは破棄

先送りモルタルの排出 配管接続

完全にモルタルが排出

↓ されていることを確認

フレッシュコンクリートの試験 圧入時の打ち上がり状況

監視カメラや蒸気抜き孔からのモルタルの

↓ 流出を確認する。圧入速度は高さ1m/分以下

を遵守して連続して行う。

↓ ← 配管内圧力の計測 圧力計による常時計測

レーザー距離計による管理 トッププレートからの流出 圧入口スライドバルブの閉鎖

↓ 蒸気抜き孔からのノロ流出チェックによる確認

ストローク数による管理

打ち止め確認-トッププレート確認孔から

↓ 余盛り分を流出させ、圧送停止

(ポンプ車無線連絡)

蒸気抜き孔などのコンクリートを取り除く 配管内圧力計測システム 計測用配管および圧力計配管取外し

圧入口の閉鎖

圧送停止

打ち止め位置の調整・確認

コンクリート上面位置・打設速度の確認

圧入開始

圧入開始の連絡

圧入口への配管接続

コンクリートの吐出確認

先送りモルタルの廃棄

先送りモルタルの圧送開始

生モルタル車・生コン車をポンプ車に横付け

ポンプ車の設置および配管

職員・作業員の配置と役割の確認

生コン車の受入検査

生コン車の配合・積載数量の確認

先送りモルタルおよびコンクリートの手配

筒先および配管継手部の養生シート敷き

空気抜き孔打設孔

図 5 落し込み充填工法 1) 図 6 タイムスケジュール

打込中の

打重ね位置

柱梁接合部

を避ける

柱打継位置

柱接合部を

避ける

ダイア

フラム

打継位置

柱梁接合

部を避け

打込中の

打重ね位

柱梁接合

部を避け

充填管

① 充填管セット② コンクリート打込み+締固め③ 充填管を引き上げながら打込み+締固め(先端部はコンクリート中)④ 第 1 回目打込み終了、充填管引き抜き⑤ バケットにコンクリート投入、第 2 回目打込+締固め⑥ 打込み完了、充填管引き抜き、コンクリート天端均し

25 110.5 15:00

26 115.0 15:15

27 119.5 15:30 ※数量調整要

※実際の打設スピードに応じて調整

※打ち上げ速度は、1.0~1.5m/min目標

※通しダイヤ・内ダイヤ部は1.0m/min以下

※最大打ち上げ速度は1.5m/minとする(鴻池鋼管コンクリート構造:BCJ-S1351)

計 9 9 9 3合計(本)

▼14:45

▼15:40

(累計103.2m3)

(累計119.3m3)

(15min)▼15:00

9 本 数量 119.5 m3 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨

C3 C1 C5 C5 C2 C5 C5 C4 C4

1W 4W 8W 封緘 11-F 10-F 9-F 9-E 11-D 8-F 8-E 8-D 9-D

モルタル 0.5 7:10 (※●テストピース採取) 11.1m3 16.2m3 11.0m3 11.0m3 15.9m3 11.0m3 11.0m3 16.1m3 16.1m3

1 4.5 7:15 ○ ※(単位水量・W/C)測定

2 9.0 7:30 ○

3 13.5 7:45 ● 3 3 3 1

※(1台目~3台目全てフレッシュ試験)

4 18.0 8:15

5 22.5 8:30

6 27.0 8:45

7 31.5 9:00

8 36.0 9:15

9 40.5 9:30

10 45.0 10:00 ● 3 3 3 1

11 49.5 10:20

12 54.0 10:45

13 58.5 11:00

14 63.0 11:15

15 65.5 11:30 ※数量調整要(2.5m3見込)

※配管段取替え+昼食(交代で)

16 70.0 12:15

①~⑨ 鋼管圧入高さ H=36.0m

打設本数

台 数累 計

(m3) 予定時刻フレッシュ試験

供試体採取(本)

▼7:30打設開始

▼8:10

(累計27.2m3)

▼8:20

▼9:15

▼9:55

▼12:20

(10min)

▼9:00

(累計49.2m3)

(15min)

(累計65.1m3)

(15min)▼10:10

▼10:50(15min)

▼11:05

▼11:45

(累計38.2m3)

(累計11.0m3)

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鴻池組技術研究報告 2013

― 52 ―

2.3.5 充填性に関する品質管理・検査

CFT 造では打込み後に充填性を確認することができない

ため、施工中のプロセス管理が重要である。充填管理は、

ワーカビリティーが適切であること、かつ充填速度が計画

書どおりに行われていることを確認する。

充填性については事前の施工実験等により確認されてい

るが、充填監視カメラによる方法は、直接目視により充填

状況を確認できることから、上部からの機器設置が可能な

場合には採用を検討することを基本としている(写真 1)。

また、当社では、圧入高さ管理と同時に実施すべき管理項

目として、配管圧力の計測管理を実施しており、配管内で

の閉塞や CFT 鋼管内での閉塞にともなう鋼管のはらみや破

裂を防止する観点からも重要である。

3.適用事例

3.1 事例Ⅰ CFT-R造における圧入施工

3.1.1 工事概要と構造計画

工事概要を表 1 に、建物外観を写真 2 に、構造軸組図を

図 7 に示す。本建物は CFT 造と S 造からなり、1~11 階の

オフィス部は制震部材、ブレースを含むラーメン架構で、

12~17 階のホテル部は純ラーメン架構としている。本建物

の大きな特徴として、上階ホテル部が 12 階でセットバック

しており、12 階から上部の陸立ち柱を支持するために M12

階にトラス架構を設ける構造となっている。また、1~11

階のオフィス部では、スパン約 15m の無柱空間とするため

に CFT 造柱としており、このうち Y4 通りの 1~7 階には上

部トラス架構からの応力伝達のために、通常の CFT 造柱よ

りも大きな耐力と剛性を確保できる CFT-R 造柱が採用され

ている。充填コンクリートの設計基準強度は 60N/mm2 であ

る。

表 1 工事概要

写真 2 建物外観

図 7 構造軸組図

写真 1 充填状況監視カメラによる管理

CFT柱

CFT柱

鉄筋内蔵CFT柱

SRC柱

制震ブレース

耐震ブレース

トラス架構

S造柱

工事名称 (仮称)新大阪阪急ビル新築工事

工事場所 大阪市淀川区宮原1丁目1番4号

発 注 阪急電鉄株式会社

設計・監理 株式会社日建設計

施 工 株式会社鴻池組

工 期 平成22年5月~平成24年7月

建築面積 3,167.53m2

延床面積 35,605.66m2

用 途事務所、ホテル、店舗、自動車車庫(バス停留所、タワーパーキング)

構造・規模 S造(CFT造-鉄筋内蔵)地上17階、塔屋2階

最高高さ 74.13m

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CFT充填コンクリートの施工管理

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3.1.2 CFT-R造の施工手順

CFT-R 造の内蔵鉄筋は第 3 節の鉄骨建て方終了後に、鋼

管上部より鋼管内に挿入することとした。CFT-R 造の施工

手順を図 8、写真 3~5 に示す。

3.1.3 CFT-R造における圧入施工管理

CFT-R 造における圧入施工は、鋼管上部から CCD カメラ

を用いて内部の充填状況を確認し、検尺テープにより打ち

上がり高さを 1m/分として行った。充填コンクリートは、

低熱ポルトランドセメントを用いた大臣認定品である。充

填コンクリートの調合を表 2 に示す。充填状況(写真 6)

は良好であり、通常の CFT 造柱の圧入施工と同様の品質管

理を行うことで密実な充填施工が可能であることが確認さ

れた。

写真 3 内蔵鉄筋吊込み状況(STEP1)

写真 4 内蔵鉄筋継手部処理状況(STEP2)

写真 5 圧入施工状況(STEP5)

写真 6 充填状況

図 8 CFT-R 造の施工手順

表 2 充填コンクリートの調合

2,700

3,300

4,500

6,500

4,050

4,050

4,0

504,0

50

▼6FL

▼5FL

▼4FL

▼7FL

▼8FL

▼3FL

▼2FL

▼1FL

3節鉄骨

2節鉄骨

1節鉄骨

0節鉄骨

3節鉄骨完了

STEP1

内蔵鉄筋第1ユニット

にて吊込

STEP2 STEP3

(STEP2~3

かんざし機械式

STEP4

内蔵鉄筋

セット

内蔵鉄筋第2ユニットセット

内蔵鉄筋挿入

金物継手かんざし

金物

クレーン

にて吊込クレーン

にて吊込クレーン

にて吊込クレーン

繰返し)

挿入完了

STEP5

コンクリート圧入

コンクリート圧入

W C S G

A 34.0 50.7 0.529 175 515 848 838 1.10

B 34.5 50.1 0.550 175 507 851 839 1.32

いずれもセメントは低熱ポルトランドセメント、スランプフロー60cm 空気量3.0%

S/a(%)

Gかさ

容積

(m3/m

3)

単位量(kg/m3) Ad

C×%

60

工場Fc

(N/mm2)

W/C(%)

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鴻池組技術研究報告 2013

― 54 ―

表 3 工事概要

写真 7 建物外観

図 9 CFT 造柱配置図

圧入柱 79本

落し込み柱 14本

輸入車ショールーム

3.2 事例Ⅱ ジョイント式トレミー管による落し込み充

填施工

3.2.1 工事概要とCFT造柱への充填施工計画

工事概要を表 3 に、建物外観を写真 7 に示す。本建物は

1 階(一部吹抜け)が店舗(輸入車ショールーム)、2~6

階は自動車整備工場、5 階では本社事務部門が隣接してい

る。また、6 階~屋上階は駐車場となっており、各階はス

ロープにより車両の乗り入れが可能となっている。

本建物の CFT 造柱 93 本のうち、14 本は店舗部分に該当

し、意匠上 1 階部分に圧入口が取り付けられないため、柱

頭部からの落し込み充填工法を採用する必要があった(図

9)。しかしながら、敷地条件などから大型揚重機による落

し込み充填工法が採用できなかったため、最上階に小型の

移動式クレーンを設置して、小径のジョイント式トレミー

管(φ139.8mm×3000mm)と小型バケットを吊り下げ、ポン

プ車により圧送した充填コンクリートをバケットから落し

込む工法とした。ジョイント式トレミー管の形状を図 10

に充填施工状況を写真 8 に示す。

3.2.2 ジョイント式トレミー管による落し込み充填工法

の施工手順

ジョイント式トレミー管による落し込み充填工法の施工

手順を図 11 に示す。

3.2.3 ジョイント式トレミー管による落し込み充填施工

管理

ジョイント式トレミー管による落し込み充填施工では、

検尺テープやレーザー距離計などによる打ち上がり高さの

管理ができない。このため、蒸気抜き孔からのモルタル流

出と、ポンプ車のストローク数を管理することにより、打

ち上がり高さを管理することとした。本工事では、事前の

圧入施工時の吐出量から、6 ストローク/分とし、トレミー

管の引き上げもこれに応じて 1m/分として施工を実施した。

写真 8 充填状況 図 10 ジョイント式

トレミー管の形状

工事名称 株式会社ヤナセ新社屋新築工事

工事場所 東京都港区芝浦1丁目6番38号

発 注 株式会社ヤナセ

設計・監理 株式会社鴻池組

施 工 株式会社鴻池組

工 期 平成23年10月~平成24年10月

建築面積 5,427.51m2

延床面積 23,975.60m2

用 途 店舗、自動車整備工場、事務所、駐車場

構造・規模 S造(CFT造)地上7階、塔屋1階

最高高さ 29.25m

2,000(

下部

)539

φ500

5Bホッパー

5Bハンガー

φ139.84.5t

メスねじ

オスねじ

STK-5B

8@3,000=

24,000(

中間

部)

26,000

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CFT充填コンクリートの施工管理

― 55 ―

充填コンクリートは、設計基準強度 42N/mm2 であり、普通

ポルトランドセメントを用いた大臣認定品である。充填コ

ンクリートの調合を表 4 に示す。充填状況は良好であり、

蒸気抜き孔からのモルタル流出とともに、ポンプ車のスト

ローク数により打ち上がり速度を管理することで、密実な

コンクリートが充填することができた。

3.3 事例Ⅲ 斜め柱への圧入施工

3.3.1 工事概要とCFT造柱への充填施工計画

工事概要を表 5 に、建物外観を写真 9 に示す。本建物は

武蔵小杉駅の再開発にあわせて計画された地上 11 階の事

務所ビルで、CFT 造が採用されている。再開発計画の公開

空地面積を確保するため、道路に面した Y2 通り柱の一部が

図 12に示すように 1階床~3階梁までセットバックした形

状となっている。このため CFT 充填コンクリートの施工計

画では、柱頭からのレーザー距離計や検尺テープ、充填監

視カメラによる打ち上がり高さの確認ができないため、ポ

ンプ車のストローク管理と蒸気抜き孔からのモルタル流出

により打ち上がり高さを管理することとした。

表 5 工事概要

写真 9 建物外観

図 12 Y2 通り鉄骨詳細図

図 11 トレミー管による落し込み充填施工手順

表 4 充填コンクリートの調合

充填速度はストローク管理とし6ストローク/分

として打ち上がり高さ1m/分以下を管理する。

所定回数繰り返しトレミー管切断作業

6ストローク打込み → 1m引き上げ × 3回繰り返し

小型移動式クレーンを用いてジョイント式トレミー管とバケットを吊り込む

ポンプ車により所定階まで圧送した充填コンクリートをバケットに流し込む

小型移動式クレーン

工事名称 (仮称)武蔵小杉F地区西街区ビル新築工事

工事場所 神奈川県川崎市中原区新丸子東3-1200

発 注 株式会社東京機械製作所

設計・監理 株式会社東急設計コンサルタント

施 工 株式会社鴻池組

工 期 平成24年2月~平成25年5月

建築面積 5,427.51m2

延床面積 23,975.60m2

用 途 事務所、店舗

構造・規模 S造(CFT造)地上11階、地下1階、塔屋1階

最高高さ 59.95m

W C S G

A 36.5 51.2 0.530 170 466 864 855 1.65

B 35.5 49.2 0.540 170 479 826 892 1.60

C 37.0 47.4 0.557 170 459 806 929 1.33

いずれもセメントは普通ポルトランドセメント、スランプフロー60cm 空気量3.0%

W/C(%)

S/a(%)

Gかさ容積

(m3/m

3)

単位量(kg/m3) AdC×%

42

工場Fc

(N/mm2)

5250

4500

4100

4100

4100

Page 8: CFT充填コンクリートの施工管理 - konoike.co.jp · では、鉄筋コンクリート造(rc 造)、鉄骨鉄筋コンクリー ト造(src造)、鉄骨造(s造)に続く第4の構造として確

鴻池組技術研究報告 2013

― 56 ―

3.3.2 ポンプ車のストロークによる充填施工管理

充填コンクリートの調合を表 6 に示す。充填コンクリー

トは、設計基準強度 48N/mm2 であり、普通ポルトランドセ

メントを用いた大臣認定品である。

ポンプ車のストロークによる充填施工管理では、ポンプ

車の 1 ストロークあたりの吐出量を把握する必要がある。

本工事では選定したポンプ車のシリンダサイズと容積効率

を考慮した上で、9~10 ストローク/分とした場合に 1m/分

以下の充填速度管理が可能と判断された。また、写真 10

に示すような当社の CFT 造施工管理システムを用いてポン

プ車のストローク管理を行い、充填速度を制御して施工に

あたるとともに、蒸気抜き孔からのモルタル流出確認を行

うことで、上部からの打ち上がり高さ管理ができない状況

においても 1m/分以下の打ち上がり速度とすることができ

た。

4.おわりに

CFT 造の施工品質を確保するためには、鋼管とコンクリ

ートの一体性を確保することが重要であり、そのためには

入念な施工計画を立案し、徹底した品質管理が必要となる。

当社では、これまでの施工実績、協会指針を元に、CFT 充

填コンクリートの施工に関する手引き書をとりまとめて、

施工現場への指導を行っている。また、協会主催の CFT 造

施工管理技術者制度や施工計画技術指導なども活用した施

工技術の水平展開により、一層の品質確保に努めたい。

参考文献

1) 一般社団法人新都市ハウジング協会:コンクリート充填鋼管

(CFT)造技術基準・同解説の運用及び計算例等、2012.8

表 6 充填コンクリートの調合

写真 10 CFT 造施工管理システム

W C S G

A 32.6 49.9 0.532 170 521 837 852 1.65

32.5 46.6 0.556 170 523 770 912 2.00

34.0 46.6 0.556 170 500 788 912 1.95

33.5 47.0 0.556 170 508 783 912 1.96

いずれもセメントは普通ポルトランドセメント、スランプフロー60cm 空気量3.0%

S/a(%)

Gかさ

容積

(m3/m

3)

単位量(kg/m3) Ad

C×%

48B

工場Fc

(N/mm2)

W/C(%)