年度学生表彰者 - yamaguchi u · 2020. 8. 13. · 国際シンポジウムに参加して...

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【学長表彰】 理学部数理科学科 犬童 勝也 理学部 物理・情報科学科(情報)濵元 一平 理工学研究科地球科学専攻 中川 孝典 【理学部長表彰】 理学部 物理・情報科学科(物理) 高村 昴 理学部 生物・化学科(生物) 吉田 朋生 理学部 生物・化学科(化学) 山﨑 友香理 理学部 地球圏システム科学科 竹下 菜月 【理工学研究科長表彰(前期課程)】 理工学研究科 数理科学専攻 畑岡 寛 理工学研究科 物理・情報科学専攻(情報) 水田 淳史 理工学研究科 環境共生系専攻(生物) 田浦 花 理工学研究科 環境共生系専攻(化学) 小林 龍太朗 【医系系研究科奨励賞(前期課程)】 医学系研究科 応用分子生命科学系専攻(生物) 田中 真仁 私が情報科学の研究を始めたのは大学4年生のときです。もう35年も前のことですが、そのときも人工知能ブームで、 考えることのできる、第5世代コンピュータを作る国家プロジェクトが注目を浴びていました。そういう昔の人間から 見ると、昨今の「人工知能」のもてはやされようは、すこし奇妙な感じさえします。 35年前と今の人工知能ブームとの決定的な違いは、インターネットの存在です。IoTの意味を思い浮かべるとすぐに 分かりますが、インターネットが生活に入り込むまでになり、人の活動に係るデータの量が爆発的に増加しました。つ まり、ビッグデータ時代の到来です。35年前のときは幾ら優れた情報技術を開発しても、それを使う場がありませんで したが、ビッグデータは情報技術を応用する場を量的にも質的にも拡大し、この拡大がさらに新しい情報技術の研究開 発を呼び込むという、正の相乗効果となって、最近の人工知能ブームとなっているのです。 現在の人工知能ブームは、大学の教育研究にも大きな影響を与えています。政府は、昨年の1月に第5期科学技術基 本計画を発表しました。この中には、世界に先駆けた超スマート社会を実現する方針として「Society5.0」が掲げられ ています。この方針は、いわば仮想現実社会、つまり、我々の住む現実社会とインターネットの仮想社会を高度に融合 させる技術を開発していこうとするもので、そのためには高い能力をもつ情報科学/情報工学の研究者や技術者を多く 養成する必要があります。 そこで、文部科学省も平成28年8月に発表された「理工系人材育成に関する産学官行動計画」の中で、「成長分野を 支える数理・情報技術分野(セキュリティ、AI・ロボティクス、IoT、ビッグデータ分野等)に係る人材育成の取組を 強化する方針を明確に打ち出しました。この計画では、情報だけでなく、数学の重要性も強調されています。 山口大学には、理学部、工学部、教育学部の3学部に情報科学/情報工学の教育研究を行う学科やコースがあり、他 の国立大学には見られない特徴となっています。本学では、大学改革の一環として、この特徴を活かしつつ、学内の数 学教員との連携を図りながら、超スマート社会の進展に貢献できる人材を育成する組織づくりが進められています。こ のような世の中の要請に応え、科学と技術をより良い社会の創造に役立てるため、理学部は力強く前進してまいります ので、今後ともご支援とご協力をお願い致します。 人工知能・IoT・ビッグデータ…最近よく耳にする言葉です。これらは、コンピュータに関 する用語で、情報技術の急速な発展により日常語として我々の社会に入り込んできています。 私の専門は情報科学ですので、いまのこの状況をもたらした背景や歴史、そして大学の教 育・研究への影響について少しお話ししたいと思います。 まず、上の3つの用語の説明から入りましょう。人工知能は分かりやすいですね。プロ棋 士を負かすまでの力をもつ「アルファ碁」はその代表です。IoTはInternet of Thingsの略で、 パソコンなどの情報機器だけでなく、生活用品を含むあらゆるモノをインターネットにつな ぎ、世の中を便利にしようというコンセプトのことです。ビッグデータは、そのまま訳すと 大きなデータですが、ただ大量なだけでなく、科学的な意味や社会的な意味など、我々に とって役立つ知識が潜んでいるデータのことです。 情報技術の進展と大学改革 理学部長 松野 浩嗣 平成28年度 学生表彰者

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Page 1: 年度学生表彰者 - Yamaguchi U · 2020. 8. 13. · 国際シンポジウムに参加して 生物・化学科(化学コース)4年 志賀美咲 私は2016年の10月10日~14日の日程で、中国の南京にある東南大学のシンポジウムに参加してきました。研究室から先

【学長表彰】理学部数理科学科 犬童 勝也理学部 物理・情報科学科(情報)濵元 一平理工学研究科地球科学専攻 中川 孝典

【理学部長表彰】理学部 物理・情報科学科(物理) 高村 昴理学部 生物・化学科(生物) 吉田 朋生理学部 生物・化学科(化学) 山﨑 友香理理学部 地球圏システム科学科 竹下 菜月

【理工学研究科長表彰(前期課程)】理工学研究科 数理科学専攻 畑岡 寛理工学研究科 物理・情報科学専攻(情報) 水田 淳史理工学研究科 環境共生系専攻(生物) 田浦 花理工学研究科 環境共生系専攻(化学) 小林 龍太朗

【医系系研究科奨励賞(前期課程)】医学系研究科 応用分子生命科学系専攻(生物) 田中 真仁

私が情報科学の研究を始めたのは大学4年生のときです。もう35年も前のことですが、そのときも人工知能ブームで、

考えることのできる、第5世代コンピュータを作る国家プロジェクトが注目を浴びていました。そういう昔の人間から

見ると、昨今の「人工知能」のもてはやされようは、すこし奇妙な感じさえします。

35年前と今の人工知能ブームとの決定的な違いは、インターネットの存在です。IoTの意味を思い浮かべるとすぐに

分かりますが、インターネットが生活に入り込むまでになり、人の活動に係るデータの量が爆発的に増加しました。つ

まり、ビッグデータ時代の到来です。35年前のときは幾ら優れた情報技術を開発しても、それを使う場がありませんで

したが、ビッグデータは情報技術を応用する場を量的にも質的にも拡大し、この拡大がさらに新しい情報技術の研究開

発を呼び込むという、正の相乗効果となって、最近の人工知能ブームとなっているのです。

現在の人工知能ブームは、大学の教育研究にも大きな影響を与えています。政府は、昨年の1月に第5期科学技術基

本計画を発表しました。この中には、世界に先駆けた超スマート社会を実現する方針として「Society5.0」が掲げられ

ています。この方針は、いわば仮想現実社会、つまり、我々の住む現実社会とインターネットの仮想社会を高度に融合

させる技術を開発していこうとするもので、そのためには高い能力をもつ情報科学/情報工学の研究者や技術者を多く

養成する必要があります。

そこで、文部科学省も平成28年8月に発表された「理工系人材育成に関する産学官行動計画」の中で、「成長分野を

支える数理・情報技術分野(セキュリティ、AI・ロボティクス、IoT、ビッグデータ分野等)に係る人材育成の取組を

強化する方針を明確に打ち出しました。この計画では、情報だけでなく、数学の重要性も強調されています。

山口大学には、理学部、工学部、教育学部の3学部に情報科学/情報工学の教育研究を行う学科やコースがあり、他

の国立大学には見られない特徴となっています。本学では、大学改革の一環として、この特徴を活かしつつ、学内の数

学教員との連携を図りながら、超スマート社会の進展に貢献できる人材を育成する組織づくりが進められています。こ

のような世の中の要請に応え、科学と技術をより良い社会の創造に役立てるため、理学部は力強く前進してまいります

ので、今後ともご支援とご協力をお願い致します。

人工知能・IoT・ビッグデータ…最近よく耳にする言葉です。これらは、コンピュータに関

する用語で、情報技術の急速な発展により日常語として我々の社会に入り込んできています。

私の専門は情報科学ですので、いまのこの状況をもたらした背景や歴史、そして大学の教

育・研究への影響について少しお話ししたいと思います。

まず、上の3つの用語の説明から入りましょう。人工知能は分かりやすいですね。プロ棋

士を負かすまでの力をもつ「アルファ碁」はその代表です。IoTはInternet of Thingsの略で、

パソコンなどの情報機器だけでなく、生活用品を含むあらゆるモノをインターネットにつな

ぎ、世の中を便利にしようというコンセプトのことです。ビッグデータは、そのまま訳すと

大きなデータですが、ただ大量なだけでなく、科学的な意味や社会的な意味など、我々に

とって役立つ知識が潜んでいるデータのことです。

情報技術の進展と大学改革理学部長 松野 浩嗣

平成28年度学生表彰者

Page 2: 年度学生表彰者 - Yamaguchi U · 2020. 8. 13. · 国際シンポジウムに参加して 生物・化学科(化学コース)4年 志賀美咲 私は2016年の10月10日~14日の日程で、中国の南京にある東南大学のシンポジウムに参加してきました。研究室から先

国際シンポジウムに参加して 生物・化学科(化学コース)4年 志賀 美咲

私は2016年の10月10日~14日の日程で、中国の南京にある東南大学のシンポジウムに参加してきました。研究室から先

生を含めて4名の参加でしたが、他にも、日本国内の他大学の研究室からたくさんの先輩や先生方がいらしていました。

国際交流による研究推進を目指したもので、各自研究成果を英語で発表しなければなりませんでした。英語に対して壁

を感じていた自分が、研究内容を英語でスライドを作り伝えるということはとても大変でした。しかしながら、東南大

学の学生さんに質問しやすく話しやすい環境だったので、思いのほかうまく進み少

し自信がつきました。研究発表のみならず、食事なども共に行動しました。中でも

印象に残っているのは、カエルやカメ、ザリガニ、鳥の頭など日本ではなかなか見

られないような食材を円卓でみんなと食べたことです。私は中国でしか食べれな

い!と、変わった食材を頬張ることができてとても貴重な経験ができましたし、な

によりとても美味しかったです。また、食事中では東南大学の学生さんから中国語

もたくさん教えてもらい友人になれました。研究分野や中身が似ているのでとても

話せる仲間ですが、同時に、ライバルです。どんなところでも負けたくないので、

大学院進学してからが楽しみです。

サイエンスワールドに参加して 物理・情報科学科(物理学コース)4年 高野 学

私は山口大学の理学部に入学後、4年間で様々なイベントに積極的に参加しました。特に 毎年秋に行われる一般市民向

け公開イベント「山口大学理学部サイエンスワールド」には毎年スタッフとして参加しました。サイエンスワールドで

は、学生が実験や工作などを企画・出展します。私は他の学生とグループを作り、物理ブースのスタッフとして参加し

ました。来場される方々に科学に触れていただき、興味を持ってもらえるように当日までの企画・準備に取り組みまし

た。当日は子どもから大人までたくさんの方が来場されます。すべての方に

楽しんで理解してもらうために他のメンバとコミュニケーションを密にとり

ながらより良い出展内容になるように努めました。他のメンバーは様々な学

年の学生で構成されたため、同級生との横のつながりだけでなく、先輩後輩

といった上下のつながりを深めることができました。また、出展を通し、人

に物理を理解してもらえるように説明することと、物理現象を楽しんでもら

うことを両立させることの難しさを感じました。最終的には、来場された

方々に楽しんでいただき、さらに科学に興味を持ってもらえることに喜びを

感じ、これまでに経験のない達成感を得る貴重な機会となりました。今後も

サイエンスワールドを通して科学に興味を持ってくれる方が増え続けてほし

いと思います。

研究生活を通して 物理・情報科学科(情報科学コース)4年 佐伯 豊彦

研究室に配属されてからの1年を振り返ってみると、きついことも多くあったけど楽しかったと思います。受動的に受

けていた講義とは異なり、研究は、能動的に行う必要があります。そのため、分からない専門用語をどのように調べた

らよいか、どの手法を用いるのが妥当かなど研究の進め方に戸惑うことが多くあり苦労しました。しかしながら、研究室の先輩や教員にわからないことを質問し、積極的に行動することで、

徐々に研究に慣れていきました。また、線形代数や確率論などの講義で

学んだことが研究の理解に役立ちました。他には、研究内容をプレゼン

するときは用いる手法や成果をわかりやすく、簡潔に伝える必要があ

り、最初は難しく感じました。しかし、ゼミや教員と議論を重ねたこと

で、自分の考えを整理でき、プレゼンも上達しました。その結果、1年間

のまとめとして、3月に宮古島で開催されたマルチメディア情報ハイディ

ング・エンリッチメント研究会で、研究発表を行うことができました。

研究会の原稿を論理的に書いたり、わかりやすく発表する練習は、初め

てのことでとても大変でしたが、研究会で他大学の先生方に理解しても

らえ、褒められたことは大変嬉しく、貴重な体験となりました。これか

ら研究を始めるにあたり、わからないことや辛いことに出会う方も多い

と思いますが、くじけることなく、粘り強く積極的に行動することで、

道が開けてくると思います。研究会で行った宮古島でのシュノーケリング

Page 3: 年度学生表彰者 - Yamaguchi U · 2020. 8. 13. · 国際シンポジウムに参加して 生物・化学科(化学コース)4年 志賀美咲 私は2016年の10月10日~14日の日程で、中国の南京にある東南大学のシンポジウムに参加してきました。研究室から先

研究室合同合宿に参加して 生物・化学科(生物学コース)3年 芦馬 匠海

私は物理・情報科学科の研究室との合同で行われた研究室の合宿に、学部3年生と

して参加しました。山口県由宇青少年自然の家ふれあいパークでの合宿で、異分野

の研究室同士の研究の議論をとことん行うことで、科学的好奇心を刺激し、異なる

観点からの新たな発見の可能性を探ったり、新たな研究をスタートさせること目的

としています。さらに、合宿による研究の議論だけではなく、岩国市立ミクロ生物

館では、ミクロな生物の観察実習をミクロ生物館のスタッフの皆さんのご協力のも

とさせていただきました。私は3年生でまだ卒業研究に着手しておらず、先輩方の

発表を聞く立場での参加でした。生命現象を対象とした研究は、生物学的な研究だ

けではなく、物理的、情報科学的な研究アプローチや興味の持ち方があることを知

りました。また、生命現象の仕組みを知るという目的だけでなく、例えば、生き物

の運動の仕組みを機械制御に応用しようというような応用面での研究も非常に有意

義だということを知り、大変刺激的でした。生物学コースの学生といえども、最近

は、本当の生き物に触れることはそれほど多くはありません。生物の観察実習では、

海水を目の細かい網(プランクトンネット)で掬い、その海水を顕微鏡で観察しま

した。様々な微生物が海水の中にいるという多様性にたいそう驚かされました。同

時に、生き物に触れるということが生命現象に対する知的好奇心を大きく刺激する

ものだと実感できました。

博物館実習をとおして 地球圏システム科学科 4年 福島 佑一

博物館学芸員資格取得を志して以来、私はこの実習を心待ちにしていました。博物館

と学芸員の仕事に魅力を感じ、ぜひ経験したいと考えていたからです。実習させてい

ただいたのは、私の地元にある化石や岩石の研究・展示を行う自然史博物館です。私

がおもに担当した作業は、寄贈された化石標本のリスト作成と整理でした。どんな化

石であるのか、いつ・誰に寄贈されたのか、収蔵庫や展示室のどこにあるのか……。

チェック漏れが無いよう、細心の注意を払って丁寧に作業を行いました。貴重な化石

標本を手に取って学べる機会でもあり、とても充実した作業でした。また、開閉館時

の清掃や運営に関する事務処理など、ふだんは目にすることのない学芸員の仕事を経

験することができました。指導してくださった学芸員から、貴重な標本を次世代へと

継承することが博物館と学芸員の使命のひとつであると学びました。私が経験したひ

とつひとつの地道な作業が、その使命の一助となっていることを自覚し、この仕事の

やりがいを感じることができました。この経験を活かして、学芸員になるという夢に

向かい、努力を続けようと思います。

部活動を通して 数理科学科 4年 青木 友美

私は体育会ソフトテニス部に所属していました。大学ではサークルも

ありますが、私はやるならとことんやりたいと思い部活を選びました。

高校までは指導者がいる中での活動ですが、大学では自分たちが主体

となり活動します。そのため、みなが協力し合い部活を作っていかな

ければなりません。私は主将を務めさせていただきました。たくさん

のはじめての経験、新たな出会い、大きな責任を感じながら日々過ご

していきました。内気な

性格な私でしたが、テニ

ス部で過ごしていく中で

自分を変えることが出来

ました。大変なこともた

くさんありましたが、す

べてが私のかけがえのな

い財産です。これから社

会に出ていく上で、自分

の強みになるのではない

かと思います。

大学院進学者43%

情報処理関連6%

製造業7%

教育関連7%

公務員7%

卸売小売5%

サービス10%

金融・保険3%

その他職種2%

理学部卒業後の進路(平成29年3月時点)

その他10%

「サイエンスワンダーランド in 理学部」は、保護者の皆様と

理学部をつなぐ広報誌です。本誌についてのご意見、ご感

想、ご要望などありましたら下記までお知らせください。

山口大学理学部学務係

〒753-8512 山口市吉田1677-1

Tel: 083-933-5210

E-mail: [email protected]

Page 4: 年度学生表彰者 - Yamaguchi U · 2020. 8. 13. · 国際シンポジウムに参加して 生物・化学科(化学コース)4年 志賀美咲 私は2016年の10月10日~14日の日程で、中国の南京にある東南大学のシンポジウムに参加してきました。研究室から先

平成28年度新任教員紹介

2016年10月に物理・情報科学科の助教として着任しました。研究テーマは太陽のような恒星がどのように作られるのか、一般に

星形成と呼ばれる研究分野です。その中でも特に太陽の10倍以上重くて明るい星の生まれ方について観測的研究をしています。

星は宇宙に浮いている星間ガス雲の中で生まれますが、地球の雲が太陽の光を遮るように宇宙の雲も星の光を遮ってしまいます

から、我々は透過性の高い電波を使って赤ちゃん星を観測し、研究を進めています。星の話なんてどこか遠くの他人事...と思

うかもしれませんが、この世界を形作っているほぼ全ての元素はそうした重たい星の中心で起こる核融合と、死に際に起こる超

新星爆発によって作られてきたことが知られています。つまり今あなたの体を作っているほぼ全ての元素も星の中を1度通過し

ている事になり、我々はまさに「星の子」であるという壮大な言い方もできる訳です。どうでしょう?これなら少しはお星様を

身近に思えたでしょうか?近年の天文学は大型望遠鏡を世界中でシェアして研究を進めるスタイルが主流ですが、競争率が高い

分だけ「リスクはあっても独創的で新しい研究」というものは制限されがちです。30m級の電波望遠鏡を2台も自由に使える山口

大学の恵まれた環境を最大限に生かして、どんどん新しい研究を進めていきたいと考えています。

元木 業人 助教(物理・情報科学科 物理学コース)

私は、2017年3月に物理・情報科学科に着任しました。私の専門は機械学習や画像認識・理解などの人工知能の基礎・応用

技術の開発です。機械(計算機)に高い知能(人間のような学習能力・適応能力)を持たせ、人間の視覚や脳を工学的に模

倣する高い人工知能システムの創出を目指しています。例えば、センサーで得られた低解像度の画像から機械学習技術を用

いて、高解像度(高精細)画像を生成し、より有用な情報を提供するシステムを開発しています。もう一つの例は、人工知

能技術を医療分野に応用し、知能化医療診断・治療支援システムを開発しています。多種多様な情報センサーから得られる

膨大なデータから、信頼性の高いデータを抽出するためには、人間のような柔軟な処理や認識・理解できるシステムが必要

です。このような人工知能分野における基礎・応用研究を通して機械の知能化・人間生活の利便性に貢献できるように研究

を進めています。この写真は、学会で研究者達と交流している時に、学会主催者の方が撮ってくれた近影です。グローバル

化が進んでいる情報科学分野において、国際的な研究の発信や交流に重要な役割を果たしていきます。

韓 先花 准教授(物理・情報科学科 情報科学コース)

平成28年4月に生物・化学科に着任しました武宮淳史と申します。私は学生時代に砂漠化などの環境問題に興味をもち、植物科

学を通じてこれらの諸問題にアプローチできないかと考え、学部・大学院修士課程では樹木を対象としたストレス耐性機構につ

いて研究を行いました。しかし研究を進める中で、その現象がどのようなメカニズムにより制御されているかなど、分子レベル

で植物の仕組みを理解したいと考えるようになりました。そこで博士課程からは分野を変え、植物の光応答の仕組みについて研

究を開始し、現在もこの研究に魅了されています。フォトトロピンは植物に特有な青色光受容体であり、光屈性や葉緑体運動、

気孔開口など、光合成機能の最適化に関わる多様な光応答を制御します。しかし、そのシグナル伝達の仕組みについては不明な

点が多く残されています。私はこれまで気孔開口のシグナル伝達機構の解明に取り組み、フォトトロピンのリン酸化基質をはじ

めとして、シグナル伝達に関わる主要成分の同定を進めてきました。今後も引き続き多角的な研究アプローチを用いてフォトト

ロピン応答を多面的に解き明かし、山口から世界に向けてオリジナリティの高いサイエンスを発信するとともに、世界で活躍す

る後進の育成に励みたいと思っています。どうぞ宜しくお願いいたします。

2016年4月に生物・化学科化学コースの助教として着任しました。修士課程までは山口大学に在籍しており、この度このようなかた

ちで母校に戻って来ることができ嬉しく思います。数年間の間、山口を離れていましたが、現在の街並みは学生時代とほとんど変

わっていません。私は大分県の山奥で育ちましたので、田んぼや山などの自然が身近にある山口市は第二の故郷という気がします。

研究テーマは、プラズマを用いた機能性炭素材料の開発です。黒鉛からダイヤモンドまで、様々な状態を持つ炭素材料の組成や構

造を制御して、高い機能性を付与するのが主な仕事です。具体的には、これまでアモルファスカーボン(非晶質炭素)やナノダイヤ

モンドを用いた電気化学センサー用材料やハードコーティング材料などの開発を行ってきました。振り返ってみると、学部3年生の

研究室を決める時に「ダイヤモンドとかプラズマってカッコいいな!」と思ったのが、この道に進んだきっかけでした。私も、学生

さんや周りの方々に興味を持ってもらえるような研究を目指しています。これから、新しい材料の研究にもどんどん挑戦し、研

究・教育を通して山口大学理学部の発展に貢献したいと考えています。

武宮 淳史 准教授(生物・化学科 生物学コース)

楢木野 宏 助教(生物・化学科 化学コース)

2016年6月に着任いたしました。これまでは鉄道総合技術研究所というJRグループの公益財団法人に勤務し、鉄道建設や防災、

環境問題について地質学的側面から研究、実務を行っていました。ということで、私の現在の専門は“応用”地質学あるいは

“環境”地質学という分野になります。応用地質学は理学(地質学)と工学(土木工学)の間にたち、理学的に明らかになって

いること(なっていないこと)を工学に反映させる役割を担っていますが、同じ地球表層を扱っているにもかかわらず、地質学

と土木工学とで物事の捉え方や考え方に大きなギャップがあり、その差に悩み戸惑いながら仕事をしています。一方、環境地質

学は地質学的事象を人間活動とのreactionとして捉える分野とされています。このreactionは人間活動に恩恵を与える場合もあ

りますが、一方で大きな損害をもたらす場合もあります。例えば、我々は火山から温泉や地熱エネルギーなどの恩恵と噴火災害

による損害をうけます。様々な地質事象を人類の営みとの関わりといった観点から見つめ、正しい地質現象の理解に基づいた開

発、防災、環境保全のあり方を求めていきたいと思います。

太田 岳洋 准教授(地球圏システム科学科)