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生命の芽生えから 誕生まで 見て,さわって,感じる かかわりの発達心理学 第4回 51おさらい

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生命の芽生えから誕生まで

+見て,さわって,感じる

かかわりの発達心理学第4回 5月1日

おさらい

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今日のポイント

• 1.胎児はお腹の中で何をしている?

• 2.お腹の中の発達と外の世界での発達とのつながりを考えてみよう

胎児はお腹の中で何をしているのか

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Question 2‐2

•胎外へ出るまでの約9カ月間,胎児は母親の胎内で何をして過ごしているのだろうか。

•どのように身体を動かしているのだろうか。

•胎児に人の声や音は聞こえているのだろうか。聞こえているのだとすれば,どのように聞こえているのだろうか。

胎児の活動

• 在胎10週を過ぎた頃• 驚愕様運動:全身をびくっとさせるような動き

• 脳や筋肉神経系の発達と共に,手足の自発的な動き

• …胎動の始まり

• →存在を母親に知らせる…それ以前に「つわり」

• 在胎4ヶ月頃• 嚥下運動(羊水を口に入れ,飲み込む)

• 呼吸様運動(胸を膨らませたりしぼませたりする)

• 吸てつ(親指を吸う動作)

• あくびやしゃっくり など

• 自分の顔や母親の子宮壁,臍帯に触れたりする

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胎児のあくび

それぞれ何のため?

• 呼吸様運動(胸を膨らませたりしぼませたりする)• 肺で呼吸をする際に必要とされる動作

• 嚥下運動(羊水を口に入れ,飲み込む)• 栄養を摂取するために必要な動作

• 吸てつ(親指を吸う動作)• 母乳を飲む際に必要とされる動作

• 自分や子宮壁,臍帯に触れる運動• 自身の身体や周囲の環境を知るための運動

• あくびやしゃっくり

• 「つわり」をもたらすことや,胎動を行うこと• 胎内での自己主張になっている

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五感の発達

• 1.五感はどんな順番で発達するのだろう?

• 予想して順番に並べてみよう• 視覚 聴覚 嗅覚 味覚 触覚

• 2.胎教は効果があるのか?

胎児には感情がある?

• ほほえむ( )

• しかめっ面をする( )

• 泣きそうな顔をする( )

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36週

http://utukushigaoka1234.com/3d4d/

Q2‐3

• あなたを妊娠していた間,あなたの母親や父親はどのようなことを感じたり考えたりしていたのだろうか。

• またあなたが生まれた瞬間はどうだったのだろうか。

• 母親や父親に,あなたが母親のお腹にいたときや出産時のエピソードを尋ねてみよう。

• あるいは子どもをお持ちの方は,父母の立場でどうしていたかお答えください。

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2.お腹の中の発達と外の世界での発達とのつながりを考えてみよう

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赤ちゃんは何ができるのか?

•Question 3‐1

•次の中で,生後半年の赤ちゃんができることは何だろう?• (a)お母さんの顔と他の女性の顔の区別• (b)小さな数(例えば,「2」と「3」の区別)• (c)援助的行為と妨害的行為の区別

「母親の顔認知」

ヒトでは、生後4時間、遅くとも24時間で母親の顔に対する弁別が成立する

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好きなにおい,好きな声?

• 聴覚的・嗅覚的な母親の個体情報を胎内で学習することが可能。• もちろん胎児は、これらの情報を「母親のもの」として学習するわけではない。

• 成人における単純接触効果(more exposure effect)と対応しているかも知れない、familiarな情報をそれ以外の情報と区別する生理的なメカニズムを基盤に、これらの情報に対する弁別を確立すると考えられる。

• 感覚系の成立だけではなく、胎生期の学習能力についても実証的な研究が行われている。

• エリオット・ブラス:上記の学習は、胎生期の感覚系の成熟、および学習能力がその前提になっていると指摘(Blass, 1999)• 妊婦が特定の物語を音読することによって、出生後の乳児がその物語の録音提示に対する選好を見せる事を明らかにしている(DeCasper & Spence, 1986, 1989)

• Cf. ビデオチェック(読み聞かせ)• ↓• 胎生期23週頃成立したヒト乳児の聴覚系によって、骨導音を通した母親の音声パターンが学習される。

• 嗅覚に関しても、母親の体臭に関与する同じ脂肪酸が羊水に含まれる事が明らかになっている。→羊水中で母親の嗅覚的情報についての学習も可能である事が示唆されている。

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胎児期での感覚器官の発達の意義とは?

• 感覚器官の発達=情報を受信する事ができるということ

• のみならず

• 外界の刺激を弁別できるということ(記憶の発達)

• これらの意味(意義)とは一体何か?

• 自分の生命を保持するための養育者の存在を識別するということ• 外界の刺激の中から、特に、自分にとって重要な刺激を重要なものとしてとらえる

「理解」のしくみ

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「世界を理解する」?

•私たちの世界の理解の仕方•言葉を用いて理解することが多い

•乳児の世界の理解の仕方•身体,運動を用いて理解する

これらはつながっている

ピアジェの説明の仕方

•シェム/シェマ:主体内に形づくられる,繰り返しの行動を可能にする基礎的な構造・枠組みを表す単位。• シェム(schéme)行為や操作が繰り返し行われ,分化や協応によって一般化された認知の作用的(opératif)側面を言う。

• シェマ(schéma)イメージ,知覚,記憶など,その形象的(figuratif)側面を指す。

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• 同化:主体がすでにもっているシェム/シェマに,外的な対象を取り込み構造化するはたらき。• 主体が外的刺激を感じうるのはすでに構成された構造にその刺激を同化しうるかぎりにおいてのみだからであり,またそのかぎりで刺激は,新しく同化されるにつれて,すでに構成済みの構造を修正し,豊かにしていく。

• 調節:主体がすでにもっているシェム/シェマに,外的な対象を取り込めなくなったとき,逆に既存のシェム/シェマを変形してその対象に適合させていくはたらき。

• 均衡化:同化と調節のバランスをとる作用。環境内で新しい要素に直面した主体は,外的な対象を取り込みつつ(同化),同時に自分のシェムを修正させていく(調節)。

• ピアジェは認識発達を,この「均衡化」が漸進的に生じる過程としてとらえ,感覚運動期の各段階でもその過程が見いだせると考えた。

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ピアジェの観点

• 知能の獲得=生物学的適応の過程

• 知能は、精神発達のある時期に突然、先行のものとまったく異なる完備したメカニズムとして登場するのではない。

• 知能は、習慣的連合に属する獲得的過程、あるいは反射に属する生得的過程とさえ著しい連続性をもっている。

• 適応的な生体の変化=知能の獲得

「操作」の質的変化

• 操作:行為が内在化されたもののこと。実際の動作的な行為が表象(イメージ)として内化され,実際の動作を伴わずに実行可能となること。• ある行為を,頭の中でその行為をイメージとして思い描き,それを再生してその行為の結果がどのようになるかを想像できるようになること。

• 実際に身体感覚を通して外界を認識する段階

• 表象(イメージ)を用いて外界を認識する段階

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4つの発達段階

• 「操作」(行為が内化されて表象されたもの)の水準をもとに

• 「感覚運動期」(0~2歳頃)

• 「前操作期」(2~7歳頃)

• 「具体的操作期」(7~11歳頃)

• 「形式的操作期」(11~15歳頃)

感覚運動的段階

表象的思考段階

• 表象を用いた思考が可能となるおよそ2歳ごろからの段階

• 前操作段階,具体的操作段階,形式的操作段階 を含む

• 感覚運動期

• 前操作期

• 具体的操作期

• 抽象的操作期

表象の操作

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• 感覚運動期は,感覚や運動動作によって直感的に対象を認識する時期であるが,しだいに表象が成立していき,物理的世界の理解が深まっていく時期でもある。

• 表象とは,頭の中のイメージのようなものと考えるとわかりやすい。

• 表象の発達によって,対象が目の前に存在しなくても,心の中で思い浮かべられるようになる。

• つまり,「いま」「ここ」の現在かつ実在の世界だけでなく,未来や過去,現実ではありえない空想も可能になるという点で,表象の発達は重要である(→第5章)。

感覚運動期の発達

• 乳児期は,ピアジェのいう感覚や運動動作によって直観的に対象を認識する時期(感覚運動期)であり,外界の認識には,特定の刺激に対して身体の一部が即応する反射(reflex)が重要な役割を果たす。

• 特に,吸てつ反射(口に入ったものをリズミカルに数),歩行反射(脇の下を支えると,歩くように足を交互に踏み出す),把握反射(手のひらに触れたものを握ろうとする)などが見られる。

• 発達とともに,徐々に動く人や物の追試が明確になり,目と手の協応(視覚的にとらえた対象へ手をのばすこと)が成立する。

• さらに目の前の対象に手を伸ばすリーチングが発達することで,意図的な把握行動が可能になる。

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感覚-運動期の発達

• 第1段階(0‐1ヶ月)• 反射

• 第2段階(1‐3ヶ月)• 第1次循環反応

• 第3段階(3‐8ヶ月)• 第2次循環反応

• 第4段階(8‐12ヶ月)• 2次的シェマの協応と新しい状況への適応。目的的,意図的な行為が増加する。

• 第5段階(12‐18ヶ月)• 第3次循環反応

• 第6段階(18‐24ヶ月)• 新しい手段の発明

6ヶ月ごろから,リーチングが出現

=対象操作の発達

10ヶ月ごろ,物の永続性が成立

=表象形成の萌芽

表象の獲得

• 感覚・運動を通して,次第に,表象の獲得が見られるようになる。

• 表象:現前しないものを心内にイメージすること。

• 感覚運動期の第6段階であり1歳後半以降に発生するとされる。大人からの言葉かけによって見通しをもって行動できるようになるなど,表象の発生は子どもの行動に大きな変化をもたらす。

• モノの永続性

• 因果性

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対象の永続性の成立:いないいないばあ• 段階1(4‐6ヶ月):大人があやしてくれること自体が楽しい時期

• 段階2(7‐9ヶ月):対象の永続性が成立• 人の顔が完全に隠れても再現されることが期待でき,その通りに顔が出てくることを楽しめる

• 段階3(10ヶ月以後):遊びのルールが分かり,乳児自身が行うようになる• 交替遊びの成立

Question 3‐3

• 表象が十分に発達していない世界を考えてみよう。もし,表象能力がなければ,どうやって世の中を理解できるだろうか。

• 今,楽しめていることで楽しめないことはどんなこと?

• 今,当たり前のように前提となっているのに成り立たなくなるのはどんなこと?

• それがなくてもできることはどんなこと?