帯状疱疹関連痛を残さない 治療をめざして...zoster-associated pain special...
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Zoster-Associated Pain Special Discussion
帯状疱疹の急性期の病理や痛覚過敏の仕組みが解明されつつあります。一方、
経口の抗ヘルペスウイルス薬はこれまでアシクロビルやバラシクロビル塩酸塩
のみでしたが、3年前(2008年7月)にファムシクロビルが発売となり、抗ヘルペ
スウイルス薬の選択肢も増えてきています。また近年、アセトアミノフェンの用量
拡大やプレガバリン、フェンタニル経皮吸収型製剤、アセトアミノフェンと弱オピ
オイドの配合薬の発売など帯状疱疹関連痛に対して使用できる薬剤も充実して
きています。
現在、急性期の治療は主に皮膚科医が、亜急性期以降で疼痛が残る場合は主に
麻酔科医あるいはペインクリニック医が携わっておりますが、今後、両診療科の
連携はますます重要となってきます。そこで今回、皮膚科から渡邉大輔先生と麻酔
科から山口重樹先生にご参加いただき「帯状疱疹関連痛を残さない治療をめざ
して」というテーマでお話しいただきました(2011年7月)。
●本冊子には一部、効能外の記載が含まれておりますのでご注意ください。また、薬剤の使用にあたっては製品添付文書をご参照ください。
帯状疱疹関連痛を残さない治療をめざして
Zoster-Associated PainSpecial Discussion
対 談
渡邉 大輔 先生(愛知医科大学 皮膚科 教授)
山口 重樹 先生(獨協医科大学 麻酔科 教授)
5083612001 A1011FX-MC2012年5月作成
帯状疱疹関連痛を残さない治療をめざして渡 邉 アメリカでは帯状疱疹を予防するためのワクチン
接種が進んでいます。帯状疱疹の発症率は半分程度にな
り、PHNに移行する割合も3分の1程度になったという
データが出ています4)。具体的なデータは、まだまとめら
れていませんが、ワクチン接種によって確実に軽症化して
いるようですね。ワクチンの臨床研究をみていると、高齢
者に接種しても細胞性免疫はあまり上がらないので、あ
る程度若い時期に接種して免疫を維持させたほうがいい
ようです。帯状疱疹は50歳くらいから急激に発症が増え
始めますので、アメリカでは2011年からワクチンを接種
する年齢が60歳以上から50歳に引き下げられました※。
長期的にみて帯状疱疹ワクチンがどれくらいの期間有効
かということはこれからの研究だと思います。
山 口 アメリカという国は費用対効果を重視する国です。
帯状疱疹を発症した後に使われるプレガバリンもオピオ
イドも高価な薬剤ですから、費用対効果や患者さんの
QOLを考えてアメリカではワクチンを接種するようになっ
ていると思います。文化の異なる日本が果たして帯状疱
疹ワクチンを積極的に導入するかという点についてはい
かがでしょうか。
渡 邉 現在わが国では、水痘・帯状疱疹ウイルスに対す
る細胞性免疫を増強する目的で、高齢者に水痘ワクチン
を接種できます。ただ、日本はまだ小児に対する水痘ワク
チンさえ定期接種になっていない現状ですから、一足飛
びに帯状疱疹ワクチンにはいかないと思います。阪大微
生物病研究会が小豆島で大規模疫学調査を行っています
が、その中間報告から水痘・帯状疱疹ウイルスに対する
細胞性免疫と発症時の重症度とは相関するという話が出
ています。そこからワクチンが必要だという話になればよ
いと考えております。ただし、臨床研究の結果をみるとワ
クチンを打っても帯状疱疹の発症は0にならないし、
PHNが残る方もいます。しかし、今後PHNに移行する患
者さんを減らしていくにはワクチンを打って帯状疱疹を減
らすのが一つと、帯状疱疹を発症した場合に早期に抗
ヘルペスウイルス薬治療を始めることが重要だと思いま
す。また、急性期からプレガバリンを積極的に投与すると
最終的にPHNの発症を減らせるかどうかについては調
査していく必要がありますが、早期から薬剤で介入すれば
PHNの発症を減らせる可能性はあると思います。
山 口 プレガバリンは新しい薬剤なのでエビデンスはま
だ少ないと思います。そのため、鎮痛補助薬無効例では
オピオイドの投与も早めに考慮することが重要だと思っ
ています。しかし、オピオイドを使いこなせる医師が少な
いことと、オピオイドについて国民がネガティブなイメー
ジを持っていることが障害になっています。ただ、すべて
の患者さんにオピオイドを投与するということは危険で
すので、これはある意味正しいことでもあります。神経障
害性疼痛が早期から出ている場合にはプレガバリンと同
時にオピオイドも始めて1、2ヵ月でやめるという使い方
が定着するとよいと考えています。
今後の展望
1) J Am Geriatr Soc 57(8)1331-1346:20092) Shackelford S, et al, J Pain 10(6)654-660:20093) Edward C, et al, Drug and Alcohol Dependence 69(3)233-241:20034) M.N. Oxman, et al, N Engl J Med 352(22)2271-2284:2005
※ 2011年3月に米国食品医薬品局(FDA)は帯状疱疹ワクチンの50~59歳に対する使用を承認している。
急性期の帯状疱疹に対するアセトアミノフェンの有用性
渡 邉 急性期治療の第一目標は、抗ヘルペスウイルス
薬による治療をできるだけ早期に開始し、皮膚や神経で
のウイルス増殖や炎症を最小限にとどめることです。
急性期の痛みに対しては抗ヘルペスウイルス薬に加え
て鎮痛薬を投与します。皮膚科医は非ステロイド性抗炎
症剤(NSAIDs)を使用することが多いですが、高齢者で
は胃粘膜障害や腎機能障害などの副作用が起こりやすく
なります。まず、急性期の疼痛管理薬についてお考えを
お聞かせいただきたいと思います。
山 口 急性期の帯状疱疹関連痛は侵害受容性疼痛が主
たる病態です(図1)。急性期ではプロスタグランジン(PG)
が痛みを惹起しているため、この時期の病態に合った鎮痛
薬となるとNSAIDsは間違いではないと思います。ただ
し、帯状疱疹に罹患するのは高齢者や免疫機能が低下し
ている患者さんが多いので、患者さんの状態に合わせた
鎮痛薬を選ぶことが重要です。私はアセトアミノフェンを
第一選択薬として推奨しております。2011年1月に成人
の最高投与量が1回1,000 mg、1日4,000 mg(以
前は1回500 mg、1日1,500 mg)と変更になった*
ため、全身状態が不良な患者さんでなければ1回600~
800 mg、1日3~4回で開始します。適切なアセトアミノ
フェンの投与量によって多くの症例で十分な疼痛緩和を
得ることができます。
渡 邉 アセトアミノフェンは安全に使用できる薬剤だと
思いますが、一つ懸念されるのは肝障害です。
山 口 確かに、肝障害の発生は否定できません。ただし、
国内のアセトアミノフェンによる劇症肝炎の報告をみる
と、その多くは誤用による過量摂取が原因とされてい
ます。日本では1回量2,000 mgぐらいから劇症肝炎
の報告があるようですが、1回量1,000 mg未満では肝
障害などの報告はほとんどないと思います。それでも、肝
逸脱酵素の上昇を認めるような軽度の肝障害はある程度
起こります。ただそれはアセトアミノフェン特有の副作用
というわけではありません。例えば、ロキソプロフェンナト
リウム水和物などのNSAIDsでも肝障害は起こるので、
鎮痛薬全般で起こりうる副作用と考えたほうがよいと
考えます。肝障害を危惧して用量を少なくするほうが患
者さんに対するアセトアミノフェンの恩恵が少なくなって
しまうと考えています。
COX-2選択的阻害薬の可能性
渡 邉 COX-2選択的阻害薬は海外の報告1)によると高
用量で心血管系イベントが増加しているため、高齢者で
は注意を要すると思いますがいかがでしょうか。
山 口 ロフェコキシブという最初のCOX-2選択的阻害
薬は明らかに心血管系イベントを増加させるという報告
が問題になりましたが、幸いにも日本で承認されている
セレコキシブは比較的心血管系イベントが少ないとい
われています。また、日本とアメリカの用量設定は明らか
に異なります。アメリカでは高用量が標準化されていま
すが、日本では腰痛症、変形性関節症には1回100 mg
1日2回程度で使用されています。1日200 mg程度を
1週間~1ヵ月程度の短期間に使用するのであれば、ま
ず問題ないと思います。ただし、COX-2選択的阻害薬は
帯状疱疹の効能がありませんので注意が必要です。
渡 邉 アセトアミノフェンとCOX-2選択的阻害薬は安
心して使用できる薬剤と理解してよろしいでしょうか。
山 口 私はそう考えております。COX-2選択的阻害薬
に対する患者さんの鎮痛効果の満足度はどちらかという
と低いかもしれません。しかし、急性期帯状疱疹において
PGが末梢神経における侵害受容、脊髄における中枢感
作に重要な働きをしており、COX-2選択的阻害薬はPG
の産生抑制という意味で重要な働きをするものと考えら
れます。つまり、神経障害性疼痛の予防、ひいては痛みを
残さないということにも有用な可能性があります。それ
を示すエビデンスはまだありませんが、海外の報告では、
現在、臨床使用されていないCOX-2選択的阻害薬の中
にはその可能性を示唆するものがあるようです2)。
ペインクリニック・麻酔科への紹介のタイミング
渡 邉 ペインクリニックや麻酔科にはどのようなタイミ
ングで紹介すればよろしいでしょうか。
山 口 やはり患者さんの生活が妨げられるような痛みの
場合です。例えば「夜間眠れない」、「入院したいと思うほ
ど痛い」、「痛くて何もできない」という痛みが出てきたと
きが専門医への紹介のタイミングかと思います。
渡 邉 皮疹がまだ残っている時期でも痛みが強ければ
紹介すべきでしょうか。
山 口 アセトアミノフェンで痛みがコントロールできない
場合には積極的に紹介していただければと思います。麻
酔科医、ペインクリニック医が使い慣れた薬剤もあります
し、神経ブロック療法も非常に有用な治療法です。
渡 邉 一般的に、「急性期において皮疹の範囲が広い」、
「皮疹が重症である」、「痛みが強い」といった症例では将
来的に帯状疱疹後神経痛(PHN)になりやすいといわれ
ています。愛知医科大学で行った臨床研究でも、PHN
に移行した群ではしなかった群に比べ急性期の血中ウイ
ルスDNA量が有意に多いという結果でした。麻酔科の
先生はどのような急性期の痛みがPHNに移行する可能
性が高いと考えていますか。
山 口 急性期から神経障害性疼痛の所見が顕著な症例
では注意が必要です。神経障害性疼痛はかなり強い痛み
です。また、ピリピリとした感じや、触覚刺激が痛みとして
伝わるアロディニア(異痛症)が出てくることがあります。
渡 邉 外来で軽く触ってみれば、アロディニアを簡便に
見つけることができますね。
山 口 麻酔科医がよく使うのは筆で、患部をさっとなで
るだけで患者さんは痛みを感じて避けたり、顔を歪めたり
します。問診でも、アロディニアのために脱衣やお風呂に
入るのが嫌だという話から判断できます。また、これらの
触覚刺激を避けるために罹患部にガーゼなどをあててい
る患者さんもよくみられます。
痛みが皮疹より先行したときの対応
山 口 皮疹がなくても、明らかに帯状疱疹による神経障
害が疑われるような痛みがある場合があります。そのと
きは抗ヘルペスウイルス薬を使うべきではないかと思っ
ていますがいかがでしょうか。
渡 邉 皮膚科にもそういう方が紹介されてきますが、判
断に迷います。確かに、アロディニアのような状態の患者
さんが来たときには状況によっては投与していいと思い
ます。痛みのみで皮疹がないというときは、細胞性免疫が
ある程度維持されているため、ウイルスが皮膚まで到達
しないで神経周囲の炎症にとどまっているとも考えられ、
その時点で治療すると軽症で済む可能性があります。し
かし、今のところ、皮疹が出ていない状態で帯状疱疹だと
正確に判断できる手段はありません。一般的には、痛みが
先行しても3、4日後には皮疹が出てくるので、「皮疹が出
図1 帯状疱疹関連痛
急性期治療
Zoster-Associated Pain Special Discussion帯状疱疹関連痛を残さない治療をめざして
1 2
* 同製剤の中には最高投与量を変更していない製剤もあります。
急性期 亜急性期
帯状疱疹関連痛
皮 疹前駆痛
皮疹出現後日数 0 28(日) 6(月) (年)
比嘉 和夫:治療 90(7):2147, 2008より改変
侵害受容性疼痛神経障害性疼痛
帯状疱疹後神経痛(PHN)
痛みの強さ
強い
弱い
急性期の帯状疱疹に対するアセトアミノフェンの有用性
渡 邉 急性期治療の第一目標は、抗ヘルペスウイルス
薬による治療をできるだけ早期に開始し、皮膚や神経で
のウイルス増殖や炎症を最小限にとどめることです。
急性期の痛みに対しては抗ヘルペスウイルス薬に加え
て鎮痛薬を投与します。皮膚科医は非ステロイド性抗炎
症剤(NSAIDs)を使用することが多いですが、高齢者で
は胃粘膜障害や腎機能障害などの副作用が起こりやすく
なります。まず、急性期の疼痛管理薬についてお考えを
お聞かせいただきたいと思います。
山 口 急性期の帯状疱疹関連痛は侵害受容性疼痛が主
たる病態です(図1)。急性期ではプロスタグランジン(PG)
が痛みを惹起しているため、この時期の病態に合った鎮痛
薬となるとNSAIDsは間違いではないと思います。ただ
し、帯状疱疹に罹患するのは高齢者や免疫機能が低下し
ている患者さんが多いので、患者さんの状態に合わせた
鎮痛薬を選ぶことが重要です。私はアセトアミノフェンを
第一選択薬として推奨しております。2011年1月に成人
の最高投与量が1回1,000 mg、1日4,000 mg(以
前は1回500 mg、1日1,500 mg)と変更になった*
ため、全身状態が不良な患者さんでなければ1回600~
800 mg、1日3~4回で開始します。適切なアセトアミノ
フェンの投与量によって多くの症例で十分な疼痛緩和を
得ることができます。
渡 邉 アセトアミノフェンは安全に使用できる薬剤だと
思いますが、一つ懸念されるのは肝障害です。
山 口 確かに、肝障害の発生は否定できません。ただし、
国内のアセトアミノフェンによる劇症肝炎の報告をみる
と、その多くは誤用による過量摂取が原因とされてい
ます。日本では1回量2,000 mgぐらいから劇症肝炎
の報告があるようですが、1回量1,000 mg未満では肝
障害などの報告はほとんどないと思います。それでも、肝
逸脱酵素の上昇を認めるような軽度の肝障害はある程度
起こります。ただそれはアセトアミノフェン特有の副作用
というわけではありません。例えば、ロキソプロフェンナト
リウム水和物などのNSAIDsでも肝障害は起こるので、
鎮痛薬全般で起こりうる副作用と考えたほうがよいと
考えます。肝障害を危惧して用量を少なくするほうが患
者さんに対するアセトアミノフェンの恩恵が少なくなって
しまうと考えています。
COX-2選択的阻害薬の可能性
渡 邉 COX-2選択的阻害薬は海外の報告1)によると高
用量で心血管系イベントが増加しているため、高齢者で
は注意を要すると思いますがいかがでしょうか。
山 口 ロフェコキシブという最初のCOX-2選択的阻害
薬は明らかに心血管系イベントを増加させるという報告
が問題になりましたが、幸いにも日本で承認されている
セレコキシブは比較的心血管系イベントが少ないとい
われています。また、日本とアメリカの用量設定は明らか
に異なります。アメリカでは高用量が標準化されていま
すが、日本では腰痛症、変形性関節症には1回100 mg
1日2回程度で使用されています。1日200 mg程度を
1週間~1ヵ月程度の短期間に使用するのであれば、ま
ず問題ないと思います。ただし、COX-2選択的阻害薬は
帯状疱疹の効能がありませんので注意が必要です。
渡 邉 アセトアミノフェンとCOX-2選択的阻害薬は安
心して使用できる薬剤と理解してよろしいでしょうか。
山 口 私はそう考えております。COX-2選択的阻害薬
に対する患者さんの鎮痛効果の満足度はどちらかという
と低いかもしれません。しかし、急性期帯状疱疹において
PGが末梢神経における侵害受容、脊髄における中枢感
作に重要な働きをしており、COX-2選択的阻害薬はPG
の産生抑制という意味で重要な働きをするものと考えら
れます。つまり、神経障害性疼痛の予防、ひいては痛みを
残さないということにも有用な可能性があります。それ
を示すエビデンスはまだありませんが、海外の報告では、
現在、臨床使用されていないCOX-2選択的阻害薬の中
にはその可能性を示唆するものがあるようです2)。
ペインクリニック・麻酔科への紹介のタイミング
渡 邉 ペインクリニックや麻酔科にはどのようなタイミ
ングで紹介すればよろしいでしょうか。
山 口 やはり患者さんの生活が妨げられるような痛みの
場合です。例えば「夜間眠れない」、「入院したいと思うほ
ど痛い」、「痛くて何もできない」という痛みが出てきたと
きが専門医への紹介のタイミングかと思います。
渡 邉 皮疹がまだ残っている時期でも痛みが強ければ
紹介すべきでしょうか。
山 口 アセトアミノフェンで痛みがコントロールできない
場合には積極的に紹介していただければと思います。麻
酔科医、ペインクリニック医が使い慣れた薬剤もあります
し、神経ブロック療法も非常に有用な治療法です。
渡 邉 一般的に、「急性期において皮疹の範囲が広い」、
「皮疹が重症である」、「痛みが強い」といった症例では将
来的に帯状疱疹後神経痛(PHN)になりやすいといわれ
ています。愛知医科大学で行った臨床研究でも、PHN
に移行した群ではしなかった群に比べ急性期の血中ウイ
ルスDNA量が有意に多いという結果でした。麻酔科の
先生はどのような急性期の痛みがPHNに移行する可能
性が高いと考えていますか。
山 口 急性期から神経障害性疼痛の所見が顕著な症例
では注意が必要です。神経障害性疼痛はかなり強い痛み
です。また、ピリピリとした感じや、触覚刺激が痛みとして
伝わるアロディニア(異痛症)が出てくることがあります。
渡 邉 外来で軽く触ってみれば、アロディニアを簡便に
見つけることができますね。
山 口 麻酔科医がよく使うのは筆で、患部をさっとなで
るだけで患者さんは痛みを感じて避けたり、顔を歪めたり
します。問診でも、アロディニアのために脱衣やお風呂に
入るのが嫌だという話から判断できます。また、これらの
触覚刺激を避けるために罹患部にガーゼなどをあててい
る患者さんもよくみられます。
痛みが皮疹より先行したときの対応
山 口 皮疹がなくても、明らかに帯状疱疹による神経障
害が疑われるような痛みがある場合があります。そのと
きは抗ヘルペスウイルス薬を使うべきではないかと思っ
ていますがいかがでしょうか。
渡 邉 皮膚科にもそういう方が紹介されてきますが、判
断に迷います。確かに、アロディニアのような状態の患者
さんが来たときには状況によっては投与していいと思い
ます。痛みのみで皮疹がないというときは、細胞性免疫が
ある程度維持されているため、ウイルスが皮膚まで到達
しないで神経周囲の炎症にとどまっているとも考えられ、
その時点で治療すると軽症で済む可能性があります。し
かし、今のところ、皮疹が出ていない状態で帯状疱疹だと
正確に判断できる手段はありません。一般的には、痛みが
先行しても3、4日後には皮疹が出てくるので、「皮疹が出
図1 帯状疱疹関連痛
急性期治療
Zoster-Associated Pain Special Discussion帯状疱疹関連痛を残さない治療をめざして
1 2
* 同製剤の中には最高投与量を変更していない製剤もあります。
急性期 亜急性期
帯状疱疹関連痛
皮 疹前駆痛
皮疹出現後日数 0 28(日) 6(月) (年)
比嘉 和夫:治療 90(7):2147, 2008より改変
侵害受容性疼痛神経障害性疼痛
帯状疱疹後神経痛(PHN)
痛みの強さ
強い
弱い
たらすぐに来てください」と患者さんに伝えることが現実
的だと思います。最近ではメディアで帯状疱疹が取り上
げられる機会があるせいか、72時間以内の早期受診の
傾向が高まってきています。今後は一般の方に帯状疱疹
について啓発していくことが重要だと思います。
山 口 そうですね。確立したPHNの治療は非常に難し
いので、急性期にできるだけ早く抗ヘルペスウイルス薬
を投与することが重要です。
亜急性期に痛みが再発する症例の対策
渡 邉 皮疹がある程度治まってから完成されたPHNに
なるまでの間、時期的にいうと発症2週間目~3ヵ月目
くらいを亜急性期とします。この時期に、帯状疱疹が発症
してから、抗ヘルペスウイルス薬とアセトアミノフェンを
1週間投与して痛みが消えたのに、1ヵ月後に再び痛く
なってきたという患者さんがときどきいます。こういった
現象をどのように理解したらよいでしょうか。
山 口 帯状疱疹でPHNに移行するのは中枢性の感作が
原因であるといわれています。PGは帯状疱疹の発症初
期において、ウイルス病変のある末梢神経の痛み刺激を
中枢に伝えるという役割をしています。また、脊髄後角の
シナプス終末端における中枢感作に重要な役割を果た
しています。推測ですが、末梢神経での炎症が治まった後
に、末梢神経の刺激がじわじわと脊髄に伝わってPGが増
幅するため、亜急性期に再び痛みが出現するのではない
でしょうか。
渡 邉 そういう症例を経験すると、急性期の疼痛管理を
いつまで続けるべきかを考えてしまいます。多くの症例
では、皮疹がなくなって本人が痛みは消えたといえば、
皮膚科医の疼痛管理はそこで終わってしまいます。もう
少し長くアセトアミノフェンで治療したほうがよいのでしょ
うか。
山 口 やはりそれも難しいところです。脊髄での中枢感
作が始まり、神経障害性疼痛へ移行してしまった状態で
は、アセトアミノフェンは有効な鎮痛薬とはいえないか
もしれません。この時期に少量のCOX-2選択的阻害薬
やその他のNSAIDsを継続することは、脊髄における中
枢感作の原因であるPGの産生を抑制するということで、
PHNへの予防に有効かもしれません。ただし、NSAIDs
の長期投与は副作用の出現に注意しなければなりません。
通常は痛みが緩和されれば徐々に薬を減量、中止します
が、患者さんに帯状疱疹には時期の異なる痛みが存在す
ることをきちんと伝えておく必要があります。特に後に
なって出てくる神経障害性の痛みは、痛みや感覚がおか
しいことからわかることがあるので、そのサインを見逃さ
ないように患者さんを指導して再受診させることが重要
だと思います。
ペインクリニックでの亜急性期の治療
渡 邉 ペインクリニックで実際に行われている亜急性期
の治療について教えていただけますか。
山 口 抗血小板薬を服用している患者さんや全身状態が
悪い患者さんでなければ、末梢神経を局所麻酔薬で遮断
して痛み刺激の感作を抑えます。特に末梢神経ブロック、
胸であれば肋間神経ブロック、三叉神経の第1枝領域で
あれば眼窩上神経ブロックを行います。これらのブロック
は外来で簡単にできますので積極的に実施しています。
ただし、神経ブロックというのは病院での治療ですの
で、毎日来院するのは患者さんの生活の質(Quality of
life;QOL)が非常に下がります。そのため、同時に何らか
の鎮痛薬を投与し来院間隔を延長できるようにしてい
ます。
渡 邉 神経ブロックのベストの時期は亜急性期ですか。
山 口 そうですね。皮疹治癒後から3ヵ月までと思って
います。それを超えるとあまり効果はないと思います。ま
た、プレガバリンは亜急性期から使うべきだと思います。
発売時は「帯状疱疹後神経痛」という適応症でしたが、
2010年10月に「末梢性神経障害性疼痛」に変わりまし
た。PHNは、おおよその定義では帯状疱疹発症後から
3ヵ月以上持続する痛みとされています。それを基準に
考えると、プレガバリンをPHNに帯状疱疹発症後3ヵ月
以内に投与することは非常に難しかったと思います。しか
し現在では、末梢性神経障害に伴う痛みと考えると、抗ヘ
ルペスウイルス薬を投与し終わった時期に神経障害性疼
痛を思わせるような痛みが存在していれば、それが投与
開始時期だと考えられます。
渡 邉 我々も最近では、抗ヘルペスウイルス薬を投与し
終わった時期に知覚異常があれば早めに使用するように
しています。それでも対応できないときには麻酔科の先
生にお願いしています。
プレガバリンの投与のポイント
渡 邉 ここ2年の間で、PHNを含めた慢性疼痛に使用
できる薬剤が増えてきました。特に皮膚科領域ではプレ
ガバリンを使用することが多く、私自身も何例かに使用
していますが、必ず少量から投与するようにしています。
先生の初期投与量はどれくらいでしょうか。
山 口 初期投与量は高齢者であれば、まず就寝前の
25 mg(プレガバリンの最小規格は25 mg、1カプセル)
から始めています。25 mgの就寝前投与を2~3日間
続けて日中にふらつき、めまい、眠気などが観察されない
場合、1回25 mg 1日2回、あるいは1日3回に増量し
ながら投与するのが一番安全かと思います。高齢者の場
合、ふらつきやめまいは転倒につながりかねません。やは
り少量から始めることが重要だと思っています。
渡 邉 少量から始めるとなかなか効かない方がいます。
「最初のうちは効かないけども、だんだん増やしていくと
効いてくる」ということと、「ふらつきやめまいが出たらな
るべく早く教えてください」と伝えています。
山 口 高齢者の場合、そのことを家族にも伝えておくこ
とが重要だと思います。また、最初の25 mg、50 mg
の用量を投与する期間はあくまでも副作用を忍容でき
るかどうかを確かめる期間だということをきちんと伝え
ています。プレガバリンの効果判定に関しては、2010年
に開催された世界疼痛学会のNeuropathic painという
分科会で、150 mg/日の時点で行うのが一番よいだろう
といわれていました。まず副作用の忍容ができ、150 mg/
日に増量できた時点で効果判定して効果のある患者さん
には使用すべきですが、効果がなければ中止すべきです。
300 mg/日まで増量する患者さんは150 mg/日で一
定の効果を認めたものの効果不十分だと感じた患者さん
に限られるべきです。ただし、日本人に300 mg/日を投
与するとかなり副作用が出てきます。
渡 邉 私の患者さんでも150 mgで効く方が多く、夜
に75 mgで十分だという方もいます。また、患者さんに
よって昼間は飲まずに、夜に2カプセル(150 mg)飲み
たいという方がいます。
山 口 痛みの治療の基本は普段の生活を妨げないこと
が重要だと思います。昼にめまい、ふらつき、眠気がくる
方は夜だけの投与でもよいと思います。
渡 邉 用量を調節している間は週1回の通院で、安定
してきたら通院間隔を延ばしています。
山 口 私も急性期や亜急性期のうちにできるだけ痛み
を緩和しておきたい場合には頻回の受診を勧めますが、
すでに慢性期でありPHNに移行してから3ヵ月、4ヵ月と
経過している場合は先生がおっしゃられましたように1~
2週間ごとの通院にしてよいと思います。
三環系抗うつ薬の投与のポイント
渡 邉 プレガバリン150 mgを使用して効果がない場
合、次の選択薬は三環系抗うつ薬でしょうか。
山 口 選択肢の一つだと思います。慢性期、PHNの時
期になると痛みがかなり遷延して、下行性疼痛抑制系、
つまり痛みを止めようとする力が低下してきます。三環系
Zoster-Associated Pain Special Discussion帯状疱疹関連痛を残さない治療をめざして
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慢性期、PHNを残した場合の治療
亜急性期治療
たらすぐに来てください」と患者さんに伝えることが現実
的だと思います。最近ではメディアで帯状疱疹が取り上
げられる機会があるせいか、72時間以内の早期受診の
傾向が高まってきています。今後は一般の方に帯状疱疹
について啓発していくことが重要だと思います。
山 口 そうですね。確立したPHNの治療は非常に難し
いので、急性期にできるだけ早く抗ヘルペスウイルス薬
を投与することが重要です。
亜急性期に痛みが再発する症例の対策
渡 邉 皮疹がある程度治まってから完成されたPHNに
なるまでの間、時期的にいうと発症2週間目~3ヵ月目
くらいを亜急性期とします。この時期に、帯状疱疹が発症
してから、抗ヘルペスウイルス薬とアセトアミノフェンを
1週間投与して痛みが消えたのに、1ヵ月後に再び痛く
なってきたという患者さんがときどきいます。こういった
現象をどのように理解したらよいでしょうか。
山 口 帯状疱疹でPHNに移行するのは中枢性の感作が
原因であるといわれています。PGは帯状疱疹の発症初
期において、ウイルス病変のある末梢神経の痛み刺激を
中枢に伝えるという役割をしています。また、脊髄後角の
シナプス終末端における中枢感作に重要な役割を果た
しています。推測ですが、末梢神経での炎症が治まった後
に、末梢神経の刺激がじわじわと脊髄に伝わってPGが増
幅するため、亜急性期に再び痛みが出現するのではない
でしょうか。
渡 邉 そういう症例を経験すると、急性期の疼痛管理を
いつまで続けるべきかを考えてしまいます。多くの症例
では、皮疹がなくなって本人が痛みは消えたといえば、
皮膚科医の疼痛管理はそこで終わってしまいます。もう
少し長くアセトアミノフェンで治療したほうがよいのでしょ
うか。
山 口 やはりそれも難しいところです。脊髄での中枢感
作が始まり、神経障害性疼痛へ移行してしまった状態で
は、アセトアミノフェンは有効な鎮痛薬とはいえないか
もしれません。この時期に少量のCOX-2選択的阻害薬
やその他のNSAIDsを継続することは、脊髄における中
枢感作の原因であるPGの産生を抑制するということで、
PHNへの予防に有効かもしれません。ただし、NSAIDs
の長期投与は副作用の出現に注意しなければなりません。
通常は痛みが緩和されれば徐々に薬を減量、中止します
が、患者さんに帯状疱疹には時期の異なる痛みが存在す
ることをきちんと伝えておく必要があります。特に後に
なって出てくる神経障害性の痛みは、痛みや感覚がおか
しいことからわかることがあるので、そのサインを見逃さ
ないように患者さんを指導して再受診させることが重要
だと思います。
ペインクリニックでの亜急性期の治療
渡 邉 ペインクリニックで実際に行われている亜急性期
の治療について教えていただけますか。
山 口 抗血小板薬を服用している患者さんや全身状態が
悪い患者さんでなければ、末梢神経を局所麻酔薬で遮断
して痛み刺激の感作を抑えます。特に末梢神経ブロック、
胸であれば肋間神経ブロック、三叉神経の第1枝領域で
あれば眼窩上神経ブロックを行います。これらのブロック
は外来で簡単にできますので積極的に実施しています。
ただし、神経ブロックというのは病院での治療ですの
で、毎日来院するのは患者さんの生活の質(Quality of
life;QOL)が非常に下がります。そのため、同時に何らか
の鎮痛薬を投与し来院間隔を延長できるようにしてい
ます。
渡 邉 神経ブロックのベストの時期は亜急性期ですか。
山 口 そうですね。皮疹治癒後から3ヵ月までと思って
います。それを超えるとあまり効果はないと思います。ま
た、プレガバリンは亜急性期から使うべきだと思います。
発売時は「帯状疱疹後神経痛」という適応症でしたが、
2010年10月に「末梢性神経障害性疼痛」に変わりまし
た。PHNは、おおよその定義では帯状疱疹発症後から
3ヵ月以上持続する痛みとされています。それを基準に
考えると、プレガバリンをPHNに帯状疱疹発症後3ヵ月
以内に投与することは非常に難しかったと思います。しか
し現在では、末梢性神経障害に伴う痛みと考えると、抗ヘ
ルペスウイルス薬を投与し終わった時期に神経障害性疼
痛を思わせるような痛みが存在していれば、それが投与
開始時期だと考えられます。
渡 邉 我々も最近では、抗ヘルペスウイルス薬を投与し
終わった時期に知覚異常があれば早めに使用するように
しています。それでも対応できないときには麻酔科の先
生にお願いしています。
プレガバリンの投与のポイント
渡 邉 ここ2年の間で、PHNを含めた慢性疼痛に使用
できる薬剤が増えてきました。特に皮膚科領域ではプレ
ガバリンを使用することが多く、私自身も何例かに使用
していますが、必ず少量から投与するようにしています。
先生の初期投与量はどれくらいでしょうか。
山 口 初期投与量は高齢者であれば、まず就寝前の
25 mg(プレガバリンの最小規格は25 mg、1カプセル)
から始めています。25 mgの就寝前投与を2~3日間
続けて日中にふらつき、めまい、眠気などが観察されない
場合、1回25 mg 1日2回、あるいは1日3回に増量し
ながら投与するのが一番安全かと思います。高齢者の場
合、ふらつきやめまいは転倒につながりかねません。やは
り少量から始めることが重要だと思っています。
渡 邉 少量から始めるとなかなか効かない方がいます。
「最初のうちは効かないけども、だんだん増やしていくと
効いてくる」ということと、「ふらつきやめまいが出たらな
るべく早く教えてください」と伝えています。
山 口 高齢者の場合、そのことを家族にも伝えておくこ
とが重要だと思います。また、最初の25 mg、50 mg
の用量を投与する期間はあくまでも副作用を忍容でき
るかどうかを確かめる期間だということをきちんと伝え
ています。プレガバリンの効果判定に関しては、2010年
に開催された世界疼痛学会のNeuropathic painという
分科会で、150 mg/日の時点で行うのが一番よいだろう
といわれていました。まず副作用の忍容ができ、150 mg/
日に増量できた時点で効果判定して効果のある患者さん
には使用すべきですが、効果がなければ中止すべきです。
300 mg/日まで増量する患者さんは150 mg/日で一
定の効果を認めたものの効果不十分だと感じた患者さん
に限られるべきです。ただし、日本人に300 mg/日を投
与するとかなり副作用が出てきます。
渡 邉 私の患者さんでも150 mgで効く方が多く、夜
に75 mgで十分だという方もいます。また、患者さんに
よって昼間は飲まずに、夜に2カプセル(150 mg)飲み
たいという方がいます。
山 口 痛みの治療の基本は普段の生活を妨げないこと
が重要だと思います。昼にめまい、ふらつき、眠気がくる
方は夜だけの投与でもよいと思います。
渡 邉 用量を調節している間は週1回の通院で、安定
してきたら通院間隔を延ばしています。
山 口 私も急性期や亜急性期のうちにできるだけ痛み
を緩和しておきたい場合には頻回の受診を勧めますが、
すでに慢性期でありPHNに移行してから3ヵ月、4ヵ月と
経過している場合は先生がおっしゃられましたように1~
2週間ごとの通院にしてよいと思います。
三環系抗うつ薬の投与のポイント
渡 邉 プレガバリン150 mgを使用して効果がない場
合、次の選択薬は三環系抗うつ薬でしょうか。
山 口 選択肢の一つだと思います。慢性期、PHNの時
期になると痛みがかなり遷延して、下行性疼痛抑制系、
つまり痛みを止めようとする力が低下してきます。三環系
Zoster-Associated Pain Special Discussion帯状疱疹関連痛を残さない治療をめざして
3 4
慢性期、PHNを残した場合の治療
亜急性期治療
抗うつ薬は低下した下行性疼痛抑制系の働きを回復さ
せる作用があるため、PHNに移行してきた時期に投与す
べきだと思います。時間経過でいうと亜急性期にはまず
プレガバリンを投与し、痛みが遷延することで生じる抑う
つなどの心因性の要因が強くなるようなときからは三環
系抗うつ薬に切り替えてよいと思います。ただし、三環系
抗うつ薬は鎮痛薬として承認を得ていないことに注意が
必要です。
渡 邉 三環系抗うつ薬のうち、ノルトリプチリン塩酸塩
とアミトリプチリン塩酸塩がよく使われていますが、高齢
者には抗コリン作用の少ないノルトリプチリン塩酸塩を
使用するようにしています。
山 口 私がワーキンググループのメンバーを務めました
日本ペインクリニック学会の神経障害性疼痛薬物療法
ガイドラインでも、ノルトリプチリン塩酸塩が第一選択薬
になっています(図2)。アミトリプチリン塩酸塩は抗コ
リン作用が強く、高齢の患者さんの多くに口渇やめまい、
ふらつき、動悸、排尿障害等の副作用が発生しやすいので
注意が必要です。
渡 邉 三環系抗うつ薬はどのように投与すればよろしい
でしょうか。
山 口 就寝前に25 mgか50 mgを投与し効果判定を
していただければと思っています。高齢者では、副作用の
発生を危惧して10 mgの就寝前投与から始めることも
あります。
渡 邉 それで効かない場合、プレガバリンと三環系抗
うつ薬を併せて投与することはありますか。
山 口 作用機序が違うので理に適っていると思いますが、
三環系抗うつ薬の開始前に、プレガバリンが本当に効い
ているかどうかを確認していただきたいと思います。効い
ていない場合は投与を中止すべきです。両剤とも同じよ
うに眠気やめまいの副作用があり、併用することで増強さ
れてしまいます。鎮痛補助薬使用のポイントは、それぞれ
の鎮痛補助薬の効果を見極めることが重要だと思いま
す。鎮痛補助薬に効果を認めない、あるいは効果が不十
分な場合は、オピオイドの使用を考えたほうがよいかも
しれません。
オピオイドの投与方法のポイント
渡 邉 帯状疱疹関連痛に使用できるオピオイドには貼付
剤のフェンタニル経皮吸収型製剤がありますが、2011年
7月からはトラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合
錠が発売になりました。この2剤の位置づけに関してい
かがでしょうか。
山 口 フェンタニル経皮吸収型製剤は強オピオイドであ
り、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠は弱オ
ピオイドです。強オピオイドと弱オピオイドでは副作用の
発現頻度とその程度がかなり異なります。一般の先生方
が比較的簡単に使えるのはトラマドール塩酸塩/アセトア
ミノフェン配合錠だと思います。また、貼付剤は用量調節
が難しいので、これらの点からもトラマドール塩酸塩/アセ
トアミノフェン配合錠のほうが使いやすいでしょう。気を
つけなければならないのは、トラマドール塩酸塩単体の薬
剤はがん疼痛に対する承認を得ていますが、トラマドール
塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠は慢性疼痛(非がん)に
対する承認を得ている点です。
渡 邉 トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠の
注意すべき点を教えていただけますか。
山 口 プレガバリンと同じように、就寝前の1錠から始め
て徐々に増量することです。また、オピオイドの嘔気・嘔
吐は数日で改善するといわれていますが、投与開始時に
はメトクロプラミドやドンペリドンなどの制吐剤を必ず併
用してください。さらに、オピオイドには便秘の副作用が
ありますので、増量したときに便秘になるようなら、酸化
マグネシウムやセンノシドなどを併用します。眠気は他の
鎮痛補助薬と同様に少量から始めることによって起こり
にくくなります。
渡 邉 プレガバリンのように患者さんごとに用量を調節
するのですね。
山 口 そうです。トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェ
ン配合錠は薬物動態から1日4回がベストですから、就
寝前の1錠から始めて1日4錠まで増やしたところで、
副作用が忍容できているかどうか、痛みが治まっているか
どうかを評価します。実際には1日8錠まで増量できま
すが、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠4錠
はモルヒネ換算で30 mgとなります。モルヒネ30 mgは
フェンタニル経皮吸収型製剤の2.1 mg(最小規格)に匹
敵する量です。トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配
合錠を増量する場合、1日4錠にて疼痛管理が不十分で、
さらなる増量が必要な場合には強オピオイドの投与を考
慮しています。一般の先生方が1日4錠以上への増量を
必要と感じた際には、早い時期に専門医に強オピオイドの
使用の可否を相談していただければと思います。
渡 邉 安全に使用できる薬剤ですが、気をつけながら使
用することが肝要ですね。
山 口 そうですね。他にも強オピオイドでは突然の休薬
による退薬症候が問題になります。例えばフェンタニル経
皮吸収型製剤2.1 mgでも、1~2ヵ月使用した後、突然
使用をやめると必ず退薬症候が出てきます。主に風邪様
の症状で、鼻水が出たり、イライラしたり、疼痛が悪化した
り、汗が出たり、震えたりしてきますが患者さんは退薬症
候と理解できないことが多いです。一方、トラマドール
塩酸塩は徐々に減量していけば退薬症候の出現率は
0.001%以下と少ない3)ため、トラマドール塩酸塩/アセ
トアミノフェン配合錠も一般の先生方が試しに始めて、そ
の後に効果を認めなかったとしても容易に中止することが
できます。
渡 邉 プレガバリンやトラマドール塩酸塩/アセトアミノ
フェン配合錠の効果があり、持続的に使っている中で、
減量や投与をやめるときの判断基準はありますか。
山 口 患者さんの生活が改善されてきたときだと思い
ます。痛みを訴える患者さんの多くは「眠れない」、「仕事
ができない」、「外出が少なくなった」など生活が障害され
ています。痛みがある程度鎮静化してくると生活が改善
してくるので、その時点で患者さんと減量の話を具体的
にしていきます。減量して痛みが強くなっても投与量を元
に戻せるという安心感の中で、減量を進めることが重要
だと思います。また、痛みの治療を始めたときから、患者
さんには常に「薬には副作用があるので長期間続けるよ
りも、減量ややめることを考えていきましょう」と話をして
おくことが重要で、受診時には痛みの軽減と生活の改善
について必ず話題に出すようにしています。
渡 邉 長期使用中の患者さんから、「今朝飲むのを忘れ
たけど痛みはなかった」という話を聞くと、夜だけにしよう
か、逆に「忘れたら調子が悪い」と言えば、もう少し続けよ
うかという話になります。患者さんと相談しながら投与す
ることが大切ですね。
山 口 そうですね。他の神経障害性疼痛とPHNの違い
は、PHNでは薬物治療をやめられる患者さんの割合が非
常に多いということです。ですので、きちんと患者さんと
話し合っていただきたいです。患者さん自身も薬剤に対し
て、やめられなくなる、効かなくなるという非常にネガティ
ブなイメージを持っていると思います。しかし、ほとんどの
患者さんが半年で、長いときは1年かかるかもしれませ
んが最終的にやめられると思います。
Zoster-Associated Pain Special Discussion帯状疱疹関連痛を残さない治療をめざして
5 6
図2 PHNの薬物療法アルゴリズム
● ノルトリプチリン塩酸塩● アミトリプチリン塩酸塩● イミプラミン塩酸塩
● デュロキセチン塩酸塩● メキシレチン塩酸塩
● 麻薬性鎮痛薬
第一選択薬
第二選択薬
第三選択薬
フェンタニル、モルヒネ塩酸塩水和物、オキシコドン塩酸塩水和物、トラマドール塩酸塩、ブプレノルフィン塩酸塩
神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン(2011年)一部改変
● ワクシニアウイルス 接種家兎炎症皮膚抽出液
● プレガバリン
抗うつ薬は低下した下行性疼痛抑制系の働きを回復さ
せる作用があるため、PHNに移行してきた時期に投与す
べきだと思います。時間経過でいうと亜急性期にはまず
プレガバリンを投与し、痛みが遷延することで生じる抑う
つなどの心因性の要因が強くなるようなときからは三環
系抗うつ薬に切り替えてよいと思います。ただし、三環系
抗うつ薬は鎮痛薬として承認を得ていないことに注意が
必要です。
渡 邉 三環系抗うつ薬のうち、ノルトリプチリン塩酸塩
とアミトリプチリン塩酸塩がよく使われていますが、高齢
者には抗コリン作用の少ないノルトリプチリン塩酸塩を
使用するようにしています。
山 口 私がワーキンググループのメンバーを務めました
日本ペインクリニック学会の神経障害性疼痛薬物療法
ガイドラインでも、ノルトリプチリン塩酸塩が第一選択薬
になっています(図2)。アミトリプチリン塩酸塩は抗コ
リン作用が強く、高齢の患者さんの多くに口渇やめまい、
ふらつき、動悸、排尿障害等の副作用が発生しやすいので
注意が必要です。
渡 邉 三環系抗うつ薬はどのように投与すればよろしい
でしょうか。
山 口 就寝前に25 mgか50 mgを投与し効果判定を
していただければと思っています。高齢者では、副作用の
発生を危惧して10 mgの就寝前投与から始めることも
あります。
渡 邉 それで効かない場合、プレガバリンと三環系抗
うつ薬を併せて投与することはありますか。
山 口 作用機序が違うので理に適っていると思いますが、
三環系抗うつ薬の開始前に、プレガバリンが本当に効い
ているかどうかを確認していただきたいと思います。効い
ていない場合は投与を中止すべきです。両剤とも同じよ
うに眠気やめまいの副作用があり、併用することで増強さ
れてしまいます。鎮痛補助薬使用のポイントは、それぞれ
の鎮痛補助薬の効果を見極めることが重要だと思いま
す。鎮痛補助薬に効果を認めない、あるいは効果が不十
分な場合は、オピオイドの使用を考えたほうがよいかも
しれません。
オピオイドの投与方法のポイント
渡 邉 帯状疱疹関連痛に使用できるオピオイドには貼付
剤のフェンタニル経皮吸収型製剤がありますが、2011年
7月からはトラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合
錠が発売になりました。この2剤の位置づけに関してい
かがでしょうか。
山 口 フェンタニル経皮吸収型製剤は強オピオイドであ
り、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠は弱オ
ピオイドです。強オピオイドと弱オピオイドでは副作用の
発現頻度とその程度がかなり異なります。一般の先生方
が比較的簡単に使えるのはトラマドール塩酸塩/アセトア
ミノフェン配合錠だと思います。また、貼付剤は用量調節
が難しいので、これらの点からもトラマドール塩酸塩/アセ
トアミノフェン配合錠のほうが使いやすいでしょう。気を
つけなければならないのは、トラマドール塩酸塩単体の薬
剤はがん疼痛に対する承認を得ていますが、トラマドール
塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠は慢性疼痛(非がん)に
対する承認を得ている点です。
渡 邉 トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠の
注意すべき点を教えていただけますか。
山 口 プレガバリンと同じように、就寝前の1錠から始め
て徐々に増量することです。また、オピオイドの嘔気・嘔
吐は数日で改善するといわれていますが、投与開始時に
はメトクロプラミドやドンペリドンなどの制吐剤を必ず併
用してください。さらに、オピオイドには便秘の副作用が
ありますので、増量したときに便秘になるようなら、酸化
マグネシウムやセンノシドなどを併用します。眠気は他の
鎮痛補助薬と同様に少量から始めることによって起こり
にくくなります。
渡 邉 プレガバリンのように患者さんごとに用量を調節
するのですね。
山 口 そうです。トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェ
ン配合錠は薬物動態から1日4回がベストですから、就
寝前の1錠から始めて1日4錠まで増やしたところで、
副作用が忍容できているかどうか、痛みが治まっているか
どうかを評価します。実際には1日8錠まで増量できま
すが、トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠4錠
はモルヒネ換算で30 mgとなります。モルヒネ30 mgは
フェンタニル経皮吸収型製剤の2.1 mg(最小規格)に匹
敵する量です。トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配
合錠を増量する場合、1日4錠にて疼痛管理が不十分で、
さらなる増量が必要な場合には強オピオイドの投与を考
慮しています。一般の先生方が1日4錠以上への増量を
必要と感じた際には、早い時期に専門医に強オピオイドの
使用の可否を相談していただければと思います。
渡 邉 安全に使用できる薬剤ですが、気をつけながら使
用することが肝要ですね。
山 口 そうですね。他にも強オピオイドでは突然の休薬
による退薬症候が問題になります。例えばフェンタニル経
皮吸収型製剤2.1 mgでも、1~2ヵ月使用した後、突然
使用をやめると必ず退薬症候が出てきます。主に風邪様
の症状で、鼻水が出たり、イライラしたり、疼痛が悪化した
り、汗が出たり、震えたりしてきますが患者さんは退薬症
候と理解できないことが多いです。一方、トラマドール
塩酸塩は徐々に減量していけば退薬症候の出現率は
0.001%以下と少ない3)ため、トラマドール塩酸塩/アセ
トアミノフェン配合錠も一般の先生方が試しに始めて、そ
の後に効果を認めなかったとしても容易に中止することが
できます。
渡 邉 プレガバリンやトラマドール塩酸塩/アセトアミノ
フェン配合錠の効果があり、持続的に使っている中で、
減量や投与をやめるときの判断基準はありますか。
山 口 患者さんの生活が改善されてきたときだと思い
ます。痛みを訴える患者さんの多くは「眠れない」、「仕事
ができない」、「外出が少なくなった」など生活が障害され
ています。痛みがある程度鎮静化してくると生活が改善
してくるので、その時点で患者さんと減量の話を具体的
にしていきます。減量して痛みが強くなっても投与量を元
に戻せるという安心感の中で、減量を進めることが重要
だと思います。また、痛みの治療を始めたときから、患者
さんには常に「薬には副作用があるので長期間続けるよ
りも、減量ややめることを考えていきましょう」と話をして
おくことが重要で、受診時には痛みの軽減と生活の改善
について必ず話題に出すようにしています。
渡 邉 長期使用中の患者さんから、「今朝飲むのを忘れ
たけど痛みはなかった」という話を聞くと、夜だけにしよう
か、逆に「忘れたら調子が悪い」と言えば、もう少し続けよ
うかという話になります。患者さんと相談しながら投与す
ることが大切ですね。
山 口 そうですね。他の神経障害性疼痛とPHNの違い
は、PHNでは薬物治療をやめられる患者さんの割合が非
常に多いということです。ですので、きちんと患者さんと
話し合っていただきたいです。患者さん自身も薬剤に対し
て、やめられなくなる、効かなくなるという非常にネガティ
ブなイメージを持っていると思います。しかし、ほとんどの
患者さんが半年で、長いときは1年かかるかもしれませ
んが最終的にやめられると思います。
Zoster-Associated Pain Special Discussion帯状疱疹関連痛を残さない治療をめざして
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図2 PHNの薬物療法アルゴリズム
● ノルトリプチリン塩酸塩● アミトリプチリン塩酸塩● イミプラミン塩酸塩
● デュロキセチン塩酸塩● メキシレチン塩酸塩
● 麻薬性鎮痛薬
第一選択薬
第二選択薬
第三選択薬
フェンタニル、モルヒネ塩酸塩水和物、オキシコドン塩酸塩水和物、トラマドール塩酸塩、ブプレノルフィン塩酸塩
神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン(2011年)一部改変
● ワクシニアウイルス 接種家兎炎症皮膚抽出液
● プレガバリン
Zoster-Associated Pain Special Discussion
帯状疱疹の急性期の病理や痛覚過敏の仕組みが解明されつつあります。一方、
経口の抗ヘルペスウイルス薬はこれまでアシクロビルやバラシクロビル塩酸塩
のみでしたが、3年前(2008年7月)にファムシクロビルが発売となり、抗ヘルペ
スウイルス薬の選択肢も増えてきています。また近年、アセトアミノフェンの用量
拡大やプレガバリン、フェンタニル経皮吸収型製剤、アセトアミノフェンと弱オピ
オイドの配合薬の発売など帯状疱疹関連痛に対して使用できる薬剤も充実して
きています。
現在、急性期の治療は主に皮膚科医が、亜急性期以降で疼痛が残る場合は主に
麻酔科医あるいはペインクリニック医が携わっておりますが、今後、両診療科の
連携はますます重要となってきます。そこで今回、皮膚科から渡邉大輔先生と麻酔
科から山口重樹先生にご参加いただき「帯状疱疹関連痛を残さない治療をめざ
して」というテーマでお話しいただきました(2011年7月)。
●本冊子には一部、効能外の記載が含まれておりますのでご注意ください。また、薬剤の使用にあたっては製品添付文書をご参照ください。
帯状疱疹関連痛を残さない治療をめざして
Zoster-Associated PainSpecial Discussion
対 談
渡邉 大輔 先生(愛知医科大学 皮膚科 教授)
山口 重樹 先生(獨協医科大学 麻酔科 教授)
5083612001 A1011FX-MC2012年5月作成
帯状疱疹関連痛を残さない治療をめざして渡 邉 アメリカでは帯状疱疹を予防するためのワクチン
接種が進んでいます。帯状疱疹の発症率は半分程度にな
り、PHNに移行する割合も3分の1程度になったという
データが出ています4)。具体的なデータは、まだまとめら
れていませんが、ワクチン接種によって確実に軽症化して
いるようですね。ワクチンの臨床研究をみていると、高齢
者に接種しても細胞性免疫はあまり上がらないので、あ
る程度若い時期に接種して免疫を維持させたほうがいい
ようです。帯状疱疹は50歳くらいから急激に発症が増え
始めますので、アメリカでは2011年からワクチンを接種
する年齢が60歳以上から50歳に引き下げられました※。
長期的にみて帯状疱疹ワクチンがどれくらいの期間有効
かということはこれからの研究だと思います。
山 口 アメリカという国は費用対効果を重視する国です。
帯状疱疹を発症した後に使われるプレガバリンもオピオ
イドも高価な薬剤ですから、費用対効果や患者さんの
QOLを考えてアメリカではワクチンを接種するようになっ
ていると思います。文化の異なる日本が果たして帯状疱
疹ワクチンを積極的に導入するかという点についてはい
かがでしょうか。
渡 邉 現在わが国では、水痘・帯状疱疹ウイルスに対す
る細胞性免疫を増強する目的で、高齢者に水痘ワクチン
を接種できます。ただ、日本はまだ小児に対する水痘ワク
チンさえ定期接種になっていない現状ですから、一足飛
びに帯状疱疹ワクチンにはいかないと思います。阪大微
生物病研究会が小豆島で大規模疫学調査を行っています
が、その中間報告から水痘・帯状疱疹ウイルスに対する
細胞性免疫と発症時の重症度とは相関するという話が出
ています。そこからワクチンが必要だという話になればよ
いと考えております。ただし、臨床研究の結果をみるとワ
クチンを打っても帯状疱疹の発症は0にならないし、
PHNが残る方もいます。しかし、今後PHNに移行する患
者さんを減らしていくにはワクチンを打って帯状疱疹を減
らすのが一つと、帯状疱疹を発症した場合に早期に抗
ヘルペスウイルス薬治療を始めることが重要だと思いま
す。また、急性期からプレガバリンを積極的に投与すると
最終的にPHNの発症を減らせるかどうかについては調
査していく必要がありますが、早期から薬剤で介入すれば
PHNの発症を減らせる可能性はあると思います。
山 口 プレガバリンは新しい薬剤なのでエビデンスはま
だ少ないと思います。そのため、鎮痛補助薬無効例では
オピオイドの投与も早めに考慮することが重要だと思っ
ています。しかし、オピオイドを使いこなせる医師が少な
いことと、オピオイドについて国民がネガティブなイメー
ジを持っていることが障害になっています。ただ、すべて
の患者さんにオピオイドを投与するということは危険で
すので、これはある意味正しいことでもあります。神経障
害性疼痛が早期から出ている場合にはプレガバリンと同
時にオピオイドも始めて1、2ヵ月でやめるという使い方
が定着するとよいと考えています。
今後の展望
1) J Am Geriatr Soc 57(8)1331-1346:20092) Shackelford S, et al, J Pain 10(6)654-660:20093) Edward C, et al, Drug and Alcohol Dependence 69(3)233-241:20034) M.N. Oxman, et al, N Engl J Med 352(22)2271-2284:2005
※ 2011年3月に米国食品医薬品局(FDA)は帯状疱疹ワクチンの50~59歳に対する使用を承認している。