産科的集中治療妊娠に伴う生理学的変化と合併症 【心循環器系】 ・...

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産科的集中治療 慈恵ICU勉強会 2016.03.08 鈴木 菜穂

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  • 産科的集中治療

    慈恵ICU勉強会2016.03.08鈴木 菜穂

  • 目次

    •  基本事項確認:妊娠に伴う生理学的変化と合併症

    •  基本事項確認:世界と日本の妊産婦死亡率

    •  周産期のICU入室

    •  重症妊産婦の治療

    •  まとめ

  • 目次

    •  基本事項確認:妊娠に伴う生理学的変化と合併症

    •  基本事項確認:世界と日本の妊産婦死亡率

    •  周産期のICU入室

    •  重症妊産婦の治療

    •  まとめ

  • 妊娠に伴う生理学的変化と合併症【心循環器系】 

    ・ 心疾患の既往がなくても、心機能の代償不全が妊娠24週~分娩中・後に起こりうる(=周産期心筋症)

    ・ 特に弁疾患・冠動脈疾患を合併していると循環の変動に耐えられない。

    ・ 産後は子宮収縮と胎盤循環停止で約500ml血液が自己輸血される。

    ・ 末梢血管抵抗の更なる低下を引き起こすと、急速に循環動態が破綻する

    非妊時からの変化率

    一回拍出量  +30%心拍数  +15%心拍出量  +40~ 50%収縮期血圧  0~ -5mmHg拡張期血圧  -10~ -20mmHg平均血圧  -15mmHg末梢血管抵抗  -15%中心静脈圧  0%肺動脈楔入圧  0%大腿動脈圧  +15mmHg駆出率  0%

    【呼吸器系】 

    ・ 酸素消費量は約20%増加

    ・ 機能的残気量(FRC)が減少 → 急速に低酸素血症が進行

    ・ 上気道粘膜は毛細血管が拡張し浮腫状→ 喉頭展開の困難

    易出血性

  • <妊娠の進行による気道の変化>

    妊娠中分娩前 分娩後

    AirwayChangesduringLaborandDelivery.Anesthesiology2008;108:357–62

    MallampaNclasschangesduringpregnancy,labour,andaQerdelivery:canthesebepredicted?.Br.J.Anaesth2010;104(1):67-70.

    妊娠中・分娩中は刻々と上気道の浮腫の状況が変わっていくので、数時間経過しただけであっというまに挿管困難になる。

  • 【血液系】・ 赤血球は+15~20%に対し血漿量は+40~50% → 希釈性貧血

    ・ 凝固因子・Fbg濃度上昇、抗凝固因子活性低下 → 凝固亢進状態*凝固亢進+子宮が下大静脈を圧迫 ⇒ DVT/PEのリスク高い

    ・ 血漿アルブミン低下 → 遊離薬物の血中濃度増加*妊娠高血圧などで肺血管透過性亢進状態 ⇒ 肺水腫のリスク高い

    【消化器系】・ 子宮が胃を圧迫+プロゲステロンが食道下部括約筋弛緩 ⇒ 誤嚥のリスク高い

    ・ 胆嚢機能と胆汁排泄が障害 → 胆石、胆のう炎のリスク高い

  • 【腎泌尿器系】・ 腎血流増加による糸球体濾過率増加 → BUN8~9mg/dL、Cr0.5~0.6mg/dL

    *腎機能が“正常範囲”であれば妊婦にとっての腎機能低下である

    ・ Na再吸収増加(→血漿量増加)、糖・アミノ酸再吸収低下 → 尿糖(+)

    【代謝内分泌系】・ コルチゾール増加+胎盤性ラクトゲン増加 → 軽度耐糖能障害 

    ⇒ 妊娠糖尿病へ進行する場合あり

    ・妊娠初期はhCG増加によるFT4増加         ⇒ 甲状腺機能異常の既往がある 甲状腺ホルモン結合蛋白が増加し総T4が増加    場合、悪化する可能性あり

  • ① 妊娠高血圧症候群定義:妊娠20週以降、分娩後12週まで高血圧がみられる場合、または高血圧に蛋白尿を伴

    う場合のいずれかで、かつこれらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものではないもの

    病態:病態の主体は、全身の血管内皮傷害に伴う血管攣縮及び臓器灌流障害とされている

    分類:高血圧のみ → 妊娠高血圧300mg/day以上の蛋白尿 → 妊娠高血圧腎症 =子癇前症高血圧 and/or蛋白尿が妊娠20週より前から存在 → 加重型妊娠高血圧腎症妊娠20週以降に初めて痙攣発作 → 子癇

    合併症:肺水腫、脳出血、脳浮腫、急性腎不全、高血圧性クリーゼ、HELLP症候群、PRES

    治療:血圧コントロール(降圧)、子癇の予防/治療(マグネシウム)、妊娠の中断

    *子癇症状:痙攣、頭痛、意識レベルの低下(軽度の傾眠傾向から錯乱、興奮、昏迷、昏睡までさま

    ざま)、視覚障害など疫学・病態:分娩前、分娩時、産褥期のいかなる時期でも起こりうる。子癇発作後は高血圧を

    呈するが、発作前は正常血圧のこともある。

  • ② HELLP症候群定義:溶血(hemolysis)、肝酵素の上昇(elevatedliverenzyme)、血小板減少(lowplatelets)

    を呈する状態。3徴のうち1~2つしか満たさないものをparNalHELLP症候群という。

    病態:血管内皮細胞障害から血小板の活性化が生じ、全身の血栓性微小血管障害/血流障害に起因する赤血球分裂。ひいては全身の臓器障害を生じる。

    臓器への影響:脳出血、脳梗塞、肺水腫、ARDS、肝被膜下出血、肝破裂、腎不全、DIC

    症状:上腹部痛、嘔気、嘔吐

    鑑別診断:TTP/HUS(溶血性貧血、血小板減少が著明)AFLP(溶血性貧血なし、血小板減少軽度)

    治療:妊娠の中断

    ミシシッピー基準 テネシー基準

    溶血

    I-Bil≧1.2mg/dlor

    血液塗抹標本で分画化赤血球

    I-Bil≧1.2or

    分画化赤血球

    LDH≧600U/L LDH≧600

    クラス1 クラス2 クラス3

    肝酵素上昇[AST(IU/L)] ≧70 ≧70 ≧40 ≧70

    血小板減少(万/μl) ≦5 5~10 10~15 ≦10

  • ③ 急性妊娠脂肪肝(AFLP)定義:妊娠後期に発症する急速な肝細胞機能不全

    疫学:妊婦の1/10,000-15,000、死亡率75~85%(近年死亡率は低下傾向)

    病因:long-chain-3-hydroxyacyl-CoAdehydrogenase欠損

    病態:ミトコンドリアの代謝異常(脂肪酸のβ酸化障害/リポ蛋白合成および転送障害)

    症状:嘔気、嘔吐、腹痛、黄疸、INR・APTT延長、Fbg・AT-III低下

    診断:CT→ 肝の脂肪沈着生検 → 肝細胞内に壊死、炎症、線維化を伴わない微小顆粒状脂肪滴の沈着

    確定診断は生検が最も良いが、凝固障害を伴っていることが多いので、生検を行わず症状やその他の検査所見で診断を行う。

    合併症:腎不全、DIC

    治療:妊娠中断、対症療法

  • ④ Sepsis特徴:一部の感染症は妊娠で発症・悪化しやすい。

    妊産婦では全身血管抵抗が下がり心拍出量が増え、心臓は既に最大限のパフォーマンスを強いられているため、sepsisinducedcardiomyopathyにより心筋障害を来すと急速に循環動態が破綻し得る。

    ・腎盂腎炎増大した子宮により尿管が圧迫され、水腎・水尿管が出現しやすくなるため。右側に多い。

    ・絨毛膜羊膜炎胎児付属物である絨毛膜あるいは羊膜に感染が及んだ状態。早産や前期破水の主要な原因。起炎菌:B群溶連菌、大腸菌、腸球菌

    ・産褥期子宮内感染症帝王切開症例に発症が多い。起炎菌:子宮頸管、腟、消化管内の常在菌で、複数の細菌によることが多い

    治療:抗菌薬投与。敗血症性ショックの場合、非妊婦に対するものと同様。

  • <妊婦の使用禁止薬剤一覧>妊婦は胎盤を通過して胎児にまで届いてしまう薬剤があり、その中には催奇形性など胎児、妊娠に害となるものもある。ICUで使う抗痙攣薬や昇圧薬、降圧薬も添付文章上禁忌とされているものもあるので、要注意。

  • 目次

    •  基本事項確認:妊娠に伴う生理学的変化と合併症

    •  基本事項確認:世界と日本の妊産婦死亡率

    •  周産期のICU入室

    •  重症妊産婦の治療

    •  まとめ

  • 世界と日本の妊産婦死亡率<ミレニアム開発目標(MDGs)>2000年9月 189カ国で国連ミレニアムサミット開催→ 21世紀の国際社会の目標として国連ミレニアム宣言が採択され、

    1990年を基準にし2015年を達成基準として8項目の目標を掲げた。

    ① 極度の貧困と飢餓の撲滅② 初等教育の完全普及の達成③ ジェンダー平等推進と女性の地位向上④ 乳幼児死亡率の削減⑤ 妊産婦の健康の改善⑥ HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止⑦ 環境の持続可能性確保⑧ 開発のためのグローバルなパートナーシップの推進

    2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の1/4に削減する。

  • MMRが

  • 2014年までの結果として最終報告→全体として目標達成

    には至らなかった

    WHOHP・外務省HPより

  • <持続可能な開発のための2030アジェンダ>2015年の9月25日~27日、「国連持続可能な開発サミット」が開催され、150を超える加盟国首脳の参加で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。ミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、人間、地球及び繁栄のための行動計画の宣言および目標をかかげた。この目標が、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」である。→目標3:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、

    福祉を推進する

    「2030年までに、世界の妊産婦死亡率を出生10万あたり70人未満に削減する」

  • 国連妊産婦死亡推計合同グループによるSDGsの妊産婦死亡に関する予測の報告

    各国の人口統計データベースを用いて、世界171カ国における1990-2015年の妊産婦死亡率(MMR)の推移を系統的解析で予測。2000-2010のMMR年間減少率を用いて、その減少が2030年まで続いた場合、どのように世界のMMRが変化するかを予測した。

    2030年までに10万出生当たり70未満を目指すという国連の持続可能な開発目標(SDGs)を達成するには、各国で年7.5%以上のMMR低下が必要と推算された。

  • 英国政府により3年ごとに行われている、妊産婦死亡を全例登録・検討評価の、第8回調査報告。(1985年から調査開始)

    ü  2006-08の3年間の妊産婦死亡数:261人

    ü  全原因のMMR:11.39  直接産科的死亡のMMRは4.67 ← 2003-05の6.24より減少

    ü  血栓症による死亡、産科出血による死亡は減少 

    ü  Sepsisによる死亡が増加(非妊婦含めUKでA群連鎖球菌感染による死亡が増加したため)⇒ 早期発見し集中治療医へのコンサルトを!!

    ü  間接産科的死亡(心疾患など)は変化がない

    ü  治療を必要とする全妊産婦をNaNonalmodifiedearlyobstetricwarningscore(MEOWS)を用いて評価する

    MEOWSについては後程…

  • 直接産科的死亡 < 間接産科的死亡  直接はsepsis、妊娠高血圧/子癇、……産科出血の順

  • <10項目の提言>① 身体的・精神的状態に関して、妊娠前からカウンセリングをするべき

    ② 英語でのコミュニケーションが難しい妊婦にはプロの通訳を頼むべき

    ③ 専門家同士のコミュニケーションをよくとり、情報共有をすべき

    ④ 妊娠前より潜在的に重篤合併症がある女性は、迅速かつ適切な専門的ケアを受けるべき

    ⑤ 全ての医療スタッフは、緊急的対応や重症患者への対応ができるよう、臨床スキルの獲得とトレーニングを怠らないべき

    ⑥ 急性重篤疾患に対して、産科医だけではなく婦人科医、麻酔科医、集中治療医に早急に連絡し、チームで管理をするべき

    ⑦ SBP150mmHg以上の収縮期高血圧は治療するべき

    ⑧ 全ての妊娠中・産褥期の女性は、生殖器感染症のリスクと症状、予防法を知らされるべき。

    周産期のsepsisの治療ガイドラインを作るべき。ガイドラインができるまでは非妊婦と同様に管理する。

    ⑨ 全ての妊産婦死亡はインシデントとして報告され、監査されるべき

    ⑩ 死亡妊産婦の解剖数を増やすべき

  • 産科危機的出血

    脳出血・梗塞

    肺疾患 心・大血管疾患

    古典的羊水塞栓症

    感染症

    肝疾患痙攣・子癇

    SavingMothers’Livesに倣い、2010年より日本でも妊産婦死亡の検討を行い、予防策を“提言”として提示している。

    <2014年度の提言>妊娠高血圧症候群を合併していた症例の多くは脳出血が死因

    日本の妊産婦管理にはまだ集中治療医が入れられていない……

    35歳以上だと出生数のわりに妊産婦死亡数が高い

  • Ø MDGs・SDGsもあり、全世界として妊産婦死亡率の低下を目指している。

    Ø このため、妊産婦死亡率を低下させるにはどのようにすればいいかを研究した報告が、産婦人科医以外からも増え、国として研究しているものもある。

    Ø 重症妊産婦の管理として集中治療の必要性が言われるようになり、集中治療を要した患者についての研究が散見されるようになった。

    Ø 日本の妊産婦死亡率は世界的に見れば低い方だが、ゼロではなく、更なる妊産婦死亡率低下を目指さなければならない。

    重症妊産婦の管理も重要な問題となる。

  • 目次

    •  基本事項確認:妊娠に伴う生理学的変化と合併症

    •  基本事項確認:世界と日本の妊産婦死亡率

    •  周産期のICU入室

    •  重症妊産婦の治療

    •  まとめ

  • 各国の妊産婦のICU入室率*と入室理由                                       *分娩1000あたり

    u アメリカ(メリーランド州/1999-2008)ICU入室率:4.2主な入室理由:妊娠高血圧関連(29.9%)

    u イギリス(2009-2012)ICU入室率:2.9

    u フランス(2006-2009)ICU入室率:3.6主な入室理由:産科出血(34.2%)

    u オランダ(2004-2006)ICU入室率:2.4主な入室理由:産科出血(47%)

    周産期のICU入室

    Pregnancy-relatedICUadmissionsinFrance:trendsinrateandseverity,2006-2009.CritCareMed.2015Jan;43(1):78-86

    EpidemiologyofObstetric-RelatedIntensiveCareUnitAdmissionsinMaryland:1999–2008.CritCareMed.2013August;41(8):1844–1852.

    Severematernalmorbidityduringpregnancy,deliveryandpuerperiumintheNetherlands:anaNonwidepopulaNon-basedstudyof371000pregnancies.BJOG.2008June;115(7):842-850

    ObstetricadmissionstocriNcalcare2009-2012-FINAL.ICNARC.2013

  • 妊娠中・産後にICU入室した患者の、入室理由とその病態の特性に関するsystemaNcreview

    【対象・方法】2008年11月~1990年1月のMedline、PubMed、EMBASE、CINAHLのデータベースで以下のキーワードを組み合わせて検索obstetrics、pregnancycomplicaNons、intensivecare、criNcalcare

    更にsevereobstetricmorbidity、severeacutematernalmorbidity、postnatalmorbidity、nearmiss、severematernalmorbidity、postpartummorbidity

    でも検索し、抽出された研究のうち英語で執筆されたもののみ。

  • <Inclusioncriteria>妊娠中~産後6週でICUに入室した患者について研究したもの

    <exclusioncriteria>(1)研究期間中、以下のどちらかの報告がないもの

    (a)出産数 (b)全ICU入室患者数(2)産科専門施設内のICUの報告(3)lepers、reviews、casestudies、editorial

    <ICU入室の理由を6項目に分類して評価>(1)妊娠高血圧関連(妊娠高血圧、子癇前症、子癇、HELLP)(2)産科出血 (3)sepsis (4)その他産科合併症

    (PE、肺水腫、羊水塞栓、癒着胎盤、周産期心筋症、急性妊娠脂肪肝など)(5)非産科合併症(6)麻酔合併症

  • ほとんどがNICUについての研究だったので、まず除外

    対象期間の研究をキーワードで検索して、英語で執筆されてものに限定して抽出された結果

    抽出された研究の参考文献から、条件に合いそうなものを見つけて加えた

    【結果】

    ICU入室した妊産婦 7887人

  • 出生1000件中のICUの入室数は35の研究で報告されており、中央値2.7

    ICU入室件数中の妊産婦の割合は21の研究で報告されており、中央値2.2%

    重症度が評価されたのは21の研究であり、多くはAPACHE2scoreでの評価

    *研究を行った国は、先進国から発展途上国まで様々

  • 妊娠高血圧関連中央値0.9

    産科出血関連中央値0.7

    sepsis中央値0.2

    その他妊娠関連中央値0.1

    妊娠に関連した原因が 1.9/出生1000

    非産科合併症中央値0.9

  • 平均年齢は30歳であり、高齢妊娠とICU入室は関連付けられない。

    初産婦が多いのは、妊娠高血圧などの合併症のリスク因子だから。

    帝王切開の割合が多いのは、重症合併症があるから帝王切開をした可能性がある。

    先進国と発展途上国の比較をすると・ 死亡率は発展途上国が高い・ その他、ICU入室割合や人工呼吸器の使用、入室理由の割合には有意差がない

  • 【考察】・ICUのベッド数は、人口10万人あたりペルー 2、アメリカ 30.5、オーストラリア 7.5、

    ドイツ 28.6と国の間でも違うが特に先進国と発展途上国でも差があるというデータが示されている。それなのに、今回の研究では妊産婦のICU入室率に先進国と発展途上国で差がないのは、何故なのかが不明である。

    ・各国、各施設のICUの入室基準が明記されておらず、この入室基準の違いがICU入室率に影響を与えている可能性はある。

    ・抽出したreviewは、対象の妊産婦の妊娠/産後期間が一定ではなく、妊娠16週未満は除外した研究などもあった。妊娠後期の方が重篤な合併症を起こしやすいと言われているので、全妊娠期間~産後6週と共通にして研究すべき。

    ・いくつかのreviewでは、既往のある妊産婦は対象から除外した研究であった。

    ・ICU入室となった妊産婦には帝王切開率が70%と高い、という結果になったのは、帝王切開になるのはそもそも母体に重症合併症があるからだという可能性もある。

  • 妊婦に対する従来の重症度スコアの有用性の研究【対象】1994年~1998年に、オーストラリア、アメリカ、ベルギー、カナダ、南

    アフリカの5カ国6施設のICUに入室した、妊娠12週~産後48時間の妊産婦332人。

    【方法】APACHE-IIとSAPS-IIのスコアリングと死亡率の相関性を評価。ただし、妊娠による生理学的変化を考慮して、妊産婦用にAPACHEとSAPSの基準値を修正したものを用いる。

  • 【結果】

    ROC曲線はAPACHE-IIでは0.82、SAPS-IIでは0.78となった。

    死亡率予測に関しては、実際死亡率/予測死亡率(standardizedmortalityraNo,SMR)がAPACHE-IIで0.43、SAPS-IIで0.89と、APACHEⅡは過大評価の傾向があった。

    *SMR算出の際、産科疾患は予測死亡率の原疾患の重みづけに含まれていないので、臓器ベースの各原疾患で算出したものを使用した

    APACHE-IIが妊産婦の重症度スコアとしては有用性が低くなったのは、APACHE-IIが有用とされた患者背景(既往あり、高齢)とは妊産婦が異なるからと考えられる。

  • MEOWSの妥当性の研究【対象】イギリスのsinglecenter。

    2カ月間で産科施設に入院した、妊娠20週~産後6週妊産婦676人。【方法】MEOWSチャートを12時間ごとにつけ、redtrigger1個またはyellowtrigger

    2個がついたらMEOWSのNgger対象と判断した。trigger対象患者の、妊娠高血圧などの妊娠関連合併症発生を調査。

    【結果】MEOWSのtriggerの対象患者は200人。MEOWSは妊娠関連合併症の、陽性予測値39%(95%CI32-46%)と陰性予測値98%(95%CI96-99%)で、感度89% (95%CI81-95%)、特異度79%(95%CI76-82%) だった。最も多い妊娠関連合併症は、妊娠高血圧、次に感染症だった。この研究は、MEOWSが有用であることを示唆している。

  • MEOWSは①体温、②収縮期血圧、③拡張期血圧、④心拍数、⑤呼吸数、⑥SpO2、⑦疼痛、⑧意識レベル

    で閾値を設定し、その危険度からredtrigger、yellowtriggerとしている。

    *redtrigger、yellowtriggerの数による判断方法などは決まっていない。

  • MEOWSチャートとは

    このように、MEOWSでredtrigger、yellowtrigerと決めた閾値を色づけしたチャートで、測定値をグラフに書き込むことでtriggerに引っかかるかが一目で判断できるもの

  • 目次

    •  基本事項確認:妊娠に伴う生理学的変化と合併症

    •  基本事項確認:世界と日本の妊産婦死亡率

    •  周産期のICU入室

    •  重症妊産婦の治療

    •  まとめ

  • 各疾患の治療各論に入る前に…

    <バソプレシンの使用について>u バソプレシンの受容体分布と作用

    u 非妊婦女性へのバソプレシンの経静脈投与(ボーラス投与)により子宮内圧の上昇(子宮収縮)が起こる。

    重症妊産婦の治療

    受容体 体内分布 作用

    V1a 心筋、血管平滑筋、腸管平滑筋、子宮平滑筋など

    血管収縮、血圧上昇、腸蠕動運動促進、子宮収縮など

    V1b 下垂体前葉 CRHによるACTH分泌増加

    V2 腎集合管 水の再吸収(抗利尿作用)

    SepNcshockなどの妊産婦への持続静脈投与は安全なのか?胎児への影響はないのか?

    ValidaNonofatestmodelofinduceddysmenorrhea.ActaObstetGynecolScand.2006;85(4):451-7.

  • Invitroでのバソプレシン投与による妊娠子宮の収縮などは報告があるが、妊産婦に対する持続バソプレシン投与による子宮収縮、早産、常位胎盤早期剥離、胎児予後などの影響についての研究・報告はまだない。

  • ここから治療各論…特に集中治療を要する可能性のある疾患についてのreview

    ・中枢神経系へ影響を及ぼす妊娠合併症

    ・産科出血

    ・妊娠中の心停止

    ・血栓症(sepsisは非妊婦と同様のガイドラインにのっとるため、割愛)

  • <画像診断について>p  胎児への被ばくを考慮して、検査のメリットとタイミングをよく考えて行い、母親

    に十分説明を行う。

    p  胎児が高線量の放射線被ばくをすると、成長制限、精神発達遅滞、小頭症のリスクがあると報告されている。

    p  8週~15週が最も胎児被ばくがリスクとなる。

    p  5rad(=50mGy)未満の被ばくでは健康被害の報告がされておらず、CTでの被ばくは1rad(=10mGy)未満である。

    p  CT:造影剤はヨウ素誘導体を含み、胎児の甲状腺機能に影響する。

    p  MRI:胎児への有害報告はされていない。

    p  血管造影:脳動脈瘤・AVM・産後の骨盤内血流などを確認するには不可欠なので、注意して行う。

  • <各論>①子癇前症/子癇p  疫学・診断

    ・世界的には妊娠の7.5%の発生率。妊産婦死亡の10~15%。・子癇前症の既往は、その後数十年の脳血管障害や高血圧のリスクを高くする。・子癇前症から子癇への移行は、重症:1/50、軽症:1/400

  • <各論>①子癇前症/子癇p  合併症

    ・PRES:高血圧、頭痛、視覚障害などが症状。MRIでFLAIR/T2で後頭葉に高信号領域。   

    p  治療・血圧管理:少なくとも15分以内に、sBP160mmHg以下 and/ordBP110mmHg以

    下に下げる。180/120mmHg以上の異常高血圧では、2~6時間でdBP100~105

    mmHgへ下げる。

    ・降圧薬:第一選択薬はlabetolol(代替としてhydralazine)、長期的な管理の降圧薬にはmethyldopa、labetolol、nifedipine、hydralazineを用いる。

    *ARB、ACE-Iなどは胎児の腎機能などに影響を与えるので禁忌*α作用のないβ遮断薬(atenololなど)は胎盤や胎児体重の低下に関係している

    ・子癇発作治療:硫酸マグネシウム*diazepamやphenytoinよりマグネシウム投与の方が、痙攣再発が少ないとの報告が

    ある。

  • <各論>①子癇前症/子癇p  予防:アメリカのガイドラインでの推奨

    ・妊娠中期(12週)からの低用量アスピリン内服← 子癇前症のハイリスク患者(35歳以上、高血圧、糖尿病、腎臓病、肥満、

    子癇前症/子癇の既往)に対して・カルシウム摂取(≧1g/d)

    p  予後・世界の妊産婦死亡原因の10~15%は子癇前症/子癇・先進国においては妊産婦死亡の1%未満。・再発は、その後の妊娠において約2%。

  • <各論>②HELLP症候群p  疫学

    ・全妊婦の0.1~0.8%、重症子癇前症/子癇の妊婦の10~20%に発症する。  

    p  診断・(前述の基本事項の確認と同様)・単純頭部CTで脳出血、硬膜下血腫、SAHなどの合併の有無を確認する

    p  治療・34週以上なら分娩。34週未満で安定しているなら、コルチコステロイドを胎児肺

    成熟のために投与し、48時間以内に分娩。・血小板は2万以下で活動性出血があるときに輸血を行う。・ステロイドは母体の予後を改善しない。

    p  予後・妊娠の中断を行うと、ほとんどの場合48時間以内に回復。・死亡率は1%。次回以降の妊娠における再発率は低い。

  • <各論>③TTP-HUSp  疫学

    ・1/25,000と頻度はかなり低いが、死亡率は高い・TTP-HUSのうち、10~25%は周産期に発生したとの報告もある・子癇と同様、妊娠20週前後に発生するが、高血圧は重症にならない

    p  診断・5徴:血小板減少、微小血管溶血性貧血、神経所見(意識障害など)、腎機能

    障害、発熱・5徴全てが現れることは少なく、血小板減少+微小血管溶血性貧血があればTTPと考える。

    ・血液検査 → LDH上昇、I-Bil上昇、ハプトグロビン低下を伴う溶血性貧血網状赤血球増加

    血液塗抹 → 破砕赤血球(ヘルメット細胞、分裂赤血球)・凝固機能は正常・ADAMTS13(vWF多量体を切断する酵素)の欠損、機能低下で診断・妊娠は先天的/後天的なADAMTS13の欠損を誘発する

  • <各論>③TTP-HUSp  治療

    ・臨床的にTTPが疑われたら、速やかに血漿交換*ADAMTS13やvWFへの自己抗体を除去する目的

    ・血漿交換を行う前にADAMTS13の値を検査すべきだが、検査結果が出るまで血漿交換を待ってはいけない

    ・ADAMTS13が極めて低値(<10%)だった場合、コルチコステロイドかrituximabを加えることを考慮する

    ・血小板輸血は神経所見の悪化と関係ある?(研究的裏付けはない)・血小板輸血は血小板2万以下か、5万以下で出血を伴う場合に行う。・TTPかHELLPか診断が難しい場合は分娩を行うべきである

    p  予防・TTP既往のある女性は次の妊娠のために血球や血小板数をフォローするべき・予防的血漿交換は推奨されない

    p  予後・未治療なら死亡率90%、血漿交換をすると死亡率が25%に低下する。

  • <各論>④てんかんp  疫学

    ・てんかんの既往がある女性の90%は妊娠に問題がないが、5%は妊娠や分娩中に発作を起こす。

    ・妊娠/分娩中の発作の有無は、妊娠前の発作状況やてんかんの局在性、抗てんかん薬のコントロール状況による。(妊娠前9カ月以内に発作がなければ84~92%は妊娠中に発作がない)

    p  診断・抗てんかん薬の遊離型の血中濃度を測るのが正確な評価。・てんかんの他にも妊娠に関連してけいれん発作を起こすものがあるので、鑑別

    が重要。

  • <各論>④てんかん

    p  治療・発作の治療は非妊娠患者と同様。・発作中は左側臥位にして子宮血流を確保する。・妊娠中の第一選択薬はlorazepam、次にfosphenytoinかleveNracetamとする。・benzodiazepine、phenobarbital、primidoneは数日間新生児の血中に残ってい

    ることがあるので、新生児のモニタリングも必要。

    p  予防・てんかん既往の妊婦の多くは、誤った情報により抗てんかん薬を中止している。

    しかし、2年以上発作がない患者以外は、妊娠中全期間抗てんかん薬を継続するべきである。

    ・抗てんかん薬内服による胎児の影響としての先天性奇形は、4~6%しかない。・しかし、バルプロ酸は髄膜瘤、心血管奇形、非尿生殖器奇形、神経管欠損など

    の奇形に強く関連が示されているため、バルプロ酸は使用しない。・多くの抗てんかん薬は胎盤通過性や母乳移行性が高い。

  • <各論>⑤脳血管障害p  疫学

    ・妊娠/産後の虚血性または出血性脳卒中の頻度は34.2/100,000。・産後6週以内が虚血性、出血性共に最もリスクが高い・脳血管障害の約10%が分娩前、40%が分娩中、50%が産後に発生する。・動脈瘤破裂は妊娠後期がリスクが高く、AVM破裂は妊娠女性は非妊娠女性に

    対しリスクが高くなるが妊娠期間の変化でのリスクの変化はない。・虚血性、出血性共に脳血管障害の最大のリスク因子は妊娠高血圧症候群であ

    る。・産後の血管障害として可逆性脳血管収縮症候群(RCVS)がある。

    p  診断・胎児への影響が少ないMRIがよい・TTE/TEEは心原性脳梗塞の原因を検査できる。

    (左心耳血栓、心内膜炎、卵円孔開存など)・AT-IIIやプロテインC、プロテインSなどの凝固線溶異常の検査も行ってよい。

  • <各論>⑤脳血管障害p  治療【虚血性脳梗塞】

    ・妊娠中の脳梗塞の管理は非妊婦患者と同様である。・AHAのガイドラインでは、他にt-PAの禁忌がなければ妊娠中でもt-PAを使用する

    こと、としている。(t-PAは母体、胎児への有害報告はなく、組織プラスミノーゲン活性因子は胎盤を通過しない。母児共に有害報告はない)

    【ICH/SAH】・ICH/SAHの原因で一般的なのは、脳動脈瘤破裂、AVM破裂、子癇である。・SAHの遅発性脳虚血予防のために使用されるnimodipineは胎児催奇形性があ

    るので禁忌だが、それ以外は非妊婦患者と同様の管理とする。・マンニトールは胎児の低酸素血症と酸塩基障害に関連しており、代替として生

    理食塩水を投与する。・被ばくのリスクはあるが、クリッピングより低侵襲なコイリングが良い。

    p  予防・脳梗塞の二次予防にアスピリン投与、ICH/SAHの再発予防に血圧コントロール

  • <各論>⑥脳静脈血栓症p  疫学

    ・11.6/10,000、妊娠関連脳血管障害の2%・リスク因子:血栓症、帝王切開、高血圧、血縁者の既往・横静脈洞に起こることが多く、妊娠後期~産後に発症する・頭痛、嘔吐、意識障害、視力障害、局所神経障害が症状

    p  診断・造影CT、MRI、血管造影 (胎児被ばくを考えるとMRIがよい)

    p  治療・低分子ヘパリンを妊娠中に投与し、6カ月間は低分子ヘパリンかビタミンK拮抗

    薬を使用し、INR2.0~3.0とする

    p  予防・既往のある女性は産後から、今後の妊娠中も低分子ヘパリンを使用する

  • <各論>⑦羊水塞栓症p  疫学

    ・1~12/10,000と稀だが、母児共に死亡率が高い・医原性または特発性に子宮に傷ができた部分(胎盤接合部など)から羊水が入

    り込み羊水塞栓が起こる・全身性炎症反応を起こすことで、肺血管収縮、低酸素、非心源性肺水腫、心原

    性ショック、呼吸不全、DIC、意識障害を起こす・リスク因子:20歳未満または35歳以上の妊娠、鉗子/吸引分娩、帝王切開、前

    置胎盤、胎盤早期剥離、子癇、子宮頚部裂傷、胎児仮死など

    p  診断・胎児成分の存在を確認すれば確定だが、難しいので臨床所見で診断。

    p  治療・対症療法

    p  予後・死亡率20%。生存したもののうち85%が低酸素による神経障害を有する

  • <各論>⑧急性妊娠脂肪肝p  疫学

    ・5/100,000程度。多胎妊娠でより頻度が上がる。・低血糖、急性腎不全を伴う劇症肝不全に進行する。

    p  診断・AST/ALT/Bilの上昇、低血糖、DIC、血小板減少、腎機能障害・肝生検で肝細胞の微小顆粒状脂肪滴の沈着

    p  治療・妊娠の中断・凝固障害に対する治療は分娩前に必要となることあり

    p  予後・死亡率は2~12%。ほとんどの患者は後遺症なく回復・肝移植を必要とする場合も少数ある

  • <検査について>Ø  ある程度の大量出血をしても、凝固因子などの異常値が現れにくい

    Ø  フィブリノーゲン値が最も早く表れる変化であり、フィブリノゲン低下が中程度から重度の産科出血に進行しているというマーカーになる

    Ø  PT/APTTは産科出血による凝固障害を正確に表さない

    Ø  凝固検査は必要だが、中央検査は結果が出るのに時間がかかりすぎる。このため、Pointofcare、特にROTEM®やTEG®を使用するといい。FIBTEM<12mmand/orFbg2.2g/Lのとき介入が必要。

    Ø  ROTEM®のFIBTEMA5の値で産科出血に対する治療介入を決める研究がすすんでいる。

  • <治療について>Ø  PPHの凝固障害にFFPを使用するといいという報告があり、産科出血の時は

    RCC:FFPを1:1で投与することをプロトコールとして決めている施設もある。

    Ø  WHOやNICEの産科出血に対するガイドラインでは、フィブリノゲンを維持するためにクリオプレシピテートの投与を推奨している。

    Ø  ガイドラインでは、産科出血の際は血小板数は5万以上を保つようにし、7.5万を下回ってきたら十分注意するよう言っている。

    Ø  トラネキサム酸の産科出血に対する有効性は証明されていないが、現在研究が進んでいる。WHOでは止血に難渋し続けた場合、NICEでは追加オプション的にトラネキサム酸の投与を推奨している。

    Ø  組み換え型第VIIa因子製剤はフィブリノゲン値と血小板数がある程度維持されている状態で投与するべき製剤。WHOでは投与推奨の根拠となる文献はないと言っている。

  • Ø  POCであるTEG®やROTEM®がPPHの際の凝固障害を知るのに有効である。

    Ø  正常な妊婦のROTEM®の結果は凝固亢進状態を表し、凝固時間(CT、CFT)が短縮し、血餅の固さ(MCF)は増加した。

    Ø  TEG®/ROTEM®では線溶亢進も調べることができ、特にROTEM®のAPTEMでは羊水塞栓における過度な線溶亢進状態を診断できるとの報告がある。

  • 2015.12.15ICU勉強会より

  • 2015.12.15ICU勉強会より

  • 2015.12.15ICU勉強会より

  • 妊娠により、呼吸・循環・血液など全身に多様な変化をもたらしている。このため、妊婦のACLSの方法も非妊婦とは変えなければならない。

  • 妊婦のACLSの特徴・誤嚥のリスクが高く、気道浮腫で挿管困難と考えていいので、マスク換気を

    長くせず、早急に輪状軟骨圧迫をして細い挿管チューブを挿管する。・CPR時は子宮左方転移を行う(約30度左に体を傾ける)・除細動は子宮を挟まないようにすれば使用できる・死戦期帝王切開の考慮

    *子宮底が臍に達しており(およそ妊娠20週以上)、児の娩出で子宮による大血管の圧迫が解除され、母体の救命に有効であると考えられる場合に行う。4分以内に児を娩出する。

  • 死戦期帝王切開では、母体の心肺停止から5分以内に児が娩出されると、児の神経学的予後が良いと考えられる。

    8/12

    1/4

    1/2

    4/7

    *各時間の、神経学的異常のない児の割合

  • Ø  正常妊娠でも過凝固状態であり、血栓症のリスクは3~4倍になる。

    Ø  妊娠にプラスしてこれらの因子が加わると、更に血栓症のリスクが上がる。

    Ø  ワーファリンは胎児出血や死産を起こすと言われており、より副作用の少ない低分子ヘパリンの使用が推奨される。

  • ただし、日本では

    に書かれているように

    妊娠中の血栓症の治療・予防に低分子ヘパリンが使用できない理由は

    日本では低分子ヘパリンは基本的に妊婦に使用できないので注意

  • 目次

    •  基本事項確認:妊娠に伴う生理学的変化と合併症

    •  基本事項確認:世界と日本の妊産婦死亡率

    •  周産期のICU入室

    •  重症妊産婦の治療

    •  まとめ

  • 結語Ø  集中治療室入室人数が少ないからこそ、普段から知識整理や治療

    方針などの備えが重要である。

    Ø  重症妊産婦の治療は産婦人科だけではなく、麻酔科、集中治療医とチームで行うべきであると国として提言しているものもある。

    Ø  妊産婦死亡の原因と、集中治療室入室理由では差がある。もしかしたら重症度の判断が不正確となることが多いために、集中治療を行う前に死亡に至り、死亡原因には多いが入室理由としては少ないのかもしれない。

    Ø  重症度を正確に判断し、RRSの活用を活発化することで、更に妊産婦死亡数を低下させ、予後も良くすることができるかもしれない。