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第1部 生活交通の基礎知識 ~まず、生活交通がどのようなものか知ろう~

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Page 1: 第1部 生活交通の基礎知識 - Tochigi Prefecture1 第1章 とちぎの生活交通のいま(生活交通の現状) 本県は、自動車の普及率が97.8%(全国第1位)に達するなど、全国有数の「くるま社会」

第第11部部 生生活活交交通通のの基基礎礎知知識識 ~まず、生活交通がどのようなものか知ろう~

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第1章 とちぎの生活交通のいま(生活交通の現状)

本県は、自動車の普及率が 97.8%(全国第 1 位)に達するなど、全国有数の「くるま社会」

となっている一方で、乗合バスの利用者は減少し続けており、バス事業者は、採算性の悪い

系統からの撤退や運行本数の縮減を余儀なくされています。

しかし、生活交通は、主に「高齢者」や「こども」などマイカーを利用できない人たちの

日常生活を支える重要な移動手段となっており、安定的かつ効率的に維持・充実していく

ことが求められています。

また、地球温暖化など環境問題への対応やまちづくりに与える社会的効果も期待されるこ

とから、公共交通とマイカーを賢く使いわけることも重要です。

1-1 生活交通の現状 ①バス利用者は、減少傾向が続いており、ピーク時(S44)から約 40 年間で約1/8に激減

し、最近 10 年間でも約2割の減少となっています。

図 栃木県内の鉄道・民間バスの輸送人員の推移

38

.1 39

.43

8.6

36

.63

5.8

33

.8

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.6

11

.41

1.2

11

.1

10

.71

0.3

9.6

9.3

8.8

8.3

7.7

7.2

6.8

6.4

6.2

6.1

5.8

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5.4

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.21

9.9

19

.5

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02

0.2

20

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0.7

20

.3

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.91

9.5

19

.1

18

.71

8.7

18

.6

18

.61

8.6

18

.6

19

.21

9.8

20

.5

21

.12

1.7

21

.7

21

.82

1.8

21

.82

1.9

21

.72

0.8

20

.3

19

.81

9.4

19

18

.51

8.4

18

.1

18

17

.9

18

.0

17

.8

17

.41

7.1

16

.9

5.6

5.7

5

.2

4.8

4.8

5

.1

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

30.0

35.0

40.0

45.0

S4

3S

44

S4

5S

46

S4

7S

48

S4

9S

50

S5

1S

52

S5

3S

54

S5

5S

56

S5

7S

58

S5

9S

60

S6

1S

62

S6

3H

元H

2H

3H

4H

5H

6H

7H

8H

9H

10

H1

1H

12

H1

3H

14

H1

5H

16

H1

7H

18

H1

9H

20

H2

1H

22

H2

3H

24

輸送人員(万人/日)

年 度

・ピーク時から43年間で1/8以下に激減

・この10年間で約2割の減少

・この3年間はほぼ横ばい

・ピーク時から16年間で約2割減少

鉄道の輸送人員

乗合バスの輸送人員

ピーク(S44)

ピーク(H7)

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②県内の民間バスの運行や利用の状況は、いずれも全国平均を下回っています。

◇ バス走行キロ(可住地面積あたり)

7.0 千 km/km2・年(全国第 45 位: 全国平均 24 千 km/km2・年)

◇ 輸送人員(走行キロあたり)

0.9 人/km・年 (全国第 19 位: 全国平均 1.35 人/km・年)

図 民間バスの輸送状況(都道府県別) [参考]栃木県は全国有数のくるま社会

●自動車の普及率 全国第 1 位(97.8% H21 全国消費実態調査)

●自動車免許保有率 全国第 2 位(70.1% H24 運転免許統計)

●1世帯あたり自家用車保有台数 全国第 8 位(2.17 台 (財)自動車登録情報協会(H24.3))

●自家用車利用通勤・通学率 全国第 10 位(72.2% H22 国勢調査)

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0

走行

キロ

当た

り輸

送人

員(

人/k

m)

可住地面積(1km2)あたりバス走行キロ(千km)

注)バス走行キロ(可住地面積あたり)の上位3都府県(東京都、大阪府、

神奈川県)は、値が非常に大きいため、本図には表示していない

全国平均

24.0 千 km/km2・年

全国平均

1.35 人/km・年

京都府

福岡県

兵庫県

埼玉県

茨城県 栃木県

群馬県

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③利用者の減少により民間バスの系統数は減少していますが、一方で、廃止系統を引き継ぐこと

などにより、市町村バスが増加する傾向にあります。

図 県内の乗合バスの系統数の推移

④バス路線等を維持するための公費負担も増加しており、年間 16 億円を超えています。

図 乗合バス等運行に対する公費負担の推移

※平成 24 年度の公費負担額は 1,651 百万円となっており、県内の人口1人あたり年間 830 円、1世帯あたり年間2,154 円を負担していることになります。これらの額は、年々に増加する傾向にあります。

696847 901 946

1,0451,123

1,362

239

199205

213

209165

143

38

3067

108

110 104

146

973

1,076

1,1731,267

1,364 1,392

1,651

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1,800

H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24

公費負担額(百万円)

市町 県 国国 県 市町

70

7

44

4

41

9

42

1

41

4

41

4

37

9

33

1

29

8

27

5

25

5

25

0

24

3

25

7

26

2

25

3

26

3

25

9

27

2

26

8

26

6

26

5

26

3

25

3

23

8

24

8

24

5

23

8

24

1

25

5

96

10

7

10

9

11

7

12

3

13

7

16

4

16

2

16

2

16

7

18

1

19

2

0

100

200

300

400

500

600

700

800

S4

4

S5

9

S6

0

S6

1

S6

2

S6

3

H元

H2

H3

H4

H5

H6

H7

H8

H9

H1

0

H1

1

H1

2

H1

3

H1

4

H1

5

H1

6

H1

7

H1

8

H1

9

H2

0

H2

1

H2

2

H2

3

H2

4

系統数

年 度

運行系統数(民間バス) 運行系統数(市町村バス)

・ 民間バスの系統数は、ピーク時から42年間で64%減少

・ 一方、民間撤退路線を引き継いだ市町村バスが増加

1系統あたり輸送人員

558人/日 (S44、民間バス)

1系統あたり輸送人員

177人/日 (H24民間バス)

※H19以前は民間路線バスは県バス協会加盟分のみ集計※市町村バスはH12以前は非集計※民間バスはH24から足利中央観光バスを含む※H21からは実証運行を含む

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1-2 生活交通をとりまく環境

①県全体では約 71%の人が鉄道・路線バスのサービス圏域※内に居住しています。また、各自

治体でデマンド交通の導入を進めた結果、これを含めた場合、約 86%の人が生活交通のサー

ビス圏域※内に居住しており、生活交通を利用できない地域は、少なくなってきています。

※鉄道・バスの運行状況は、平成 25 年 4 月 1日時点

※H22 国勢調査のメッシュ人口をもとに算出

※生活交通サービス圏域は、鉄道駅 1.5km 圏域及びバス系統(運行回数6回

(3往復)/日以上)沿線 300m圏域として設定

※デマンド交通については、運行区域全体をサービス圏域として設定

図 栃木県の生活交通サービス圏域

総人口

71.0% 85.5%

70.4% 70.6%

H25H20

鉄道・バスサービス圏域人口(デマンド区域運行を除く)

2,008千人

1,716千人

2,017千人

1,431千人

1,418千人1,420千人

公共交通サービス圏域人口

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②多くの市町で区域運行型のデマンド交通が導入されたことにより、人口カバー状況が 80%以

上の市町が 6 割を超えており、生活交通が利用できない人は少なくなっています。

一方、定時定路線運行となる鉄道・路線バスの人口カバー状況は、茂木町、芳賀町、那珂川町

など 7 市町で 50%以下となっており、地域内の移動をデマンド交通に依存する市町では、通

勤通学等の時間制約のある需要に対する交通手段の確保が課題となっています。

図 公共交通の居住者カバー状況(市町村別)

図 公共交通空白地域の居住人口(市町村別)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

宇都宮市

足利市

栃木市

佐野市

鹿沼市

日光市

小山市

真岡市

大田原市

矢板市

那須塩原市

さくら市

那須烏山市

下野市

上三川町

益子町

茂木町

市貝町

芳賀町

壬生町

野木町

岩舟町

塩谷町

高根沢町

那須町

那珂川町

栃木県計

市町全域の鉄道・バス人口カバー率(デマンド区域運行を除く) 市町全域の公共交通人口カバー率市町全域の公共交通人口カバー率 市町全域の鉄道・バス人口カバー率(デマンド区域運行を除く)

81 78 79 69 73

80 71

59 63 71

61 54

60 70

40 51

32

50

28

79 66 63

48 58

44 37

71

5 21

19 7 22 41

12 20

25

30

60 49

68

50

72

21 34

42

63

15

86

78

100

69

92 87

94 100

75 71

61

74

85

100 100 100 100 100 100 100 100

63

48

100

44

100

85

70

4637 34

19 15 12 12 11 10 8 7 6 4

28

9

6 9

37

20

7

33 31

19 18 13 12 12 11 10 9 8 6

98

46

37 34

28

15 18

21

48

10

28

7 6 11

33 31

19 18 13 12 12 11 10 9 8 6

0

20

40

60

80

100

120

宇都宮市

那須塩原市

佐野市

足利市

大田原市

那須町

日光市

さくら市

小山市

矢板市

鹿沼市

岩舟町

塩谷町

那須烏山市

真岡市

栃木市

上三川町

下野市

高根沢町

益子町

那珂川町

芳賀町

茂木町

野木町

壬生町

市貝町

公共交通空白地域人口 鉄道・バス空白地域人口(デマンド区域運行を除く)(千人)

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③県内のバス系統(定時定路線型)の約半数は、平均乗車密度が2人未満と利用が少なく、採算

の厳しい系統となっています。

また、民間バスでは乗車密度と収入に一定の相関がみられますが、市町村バスでは、乗車密度

が高いにもかかわらず収入が少ないなど、利用と収入がアンバランスな系統が多く存在します。

図 県内バス系統の平均乗車密度と走行キロあたり収入

④県内の市町村バスでは、系統 1km あたりの沿線人口※が、500 人(約 4.3 人/ha)を下回る

ような需要の小さい地域でもサービスが提供されています。

また、沿線人口と運行本数のバランスがとれていない系統もみられます。

図 市町村バスの運行回数と 1km あたり沿線人口

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

0 10 20 30 40 50

1kmあたり沿線人口(人)

運行回数(回/日)

市町村バス

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0

0.0 100.0 200.0 300.0 400.0 500.0

平均乗車密度(人)

キロ当たり運送収入(円/km)

民間バス(非採算) 市町バス(非採算) 民間バス(採算) 市町バス(採算)

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

0.0 500.0 1000.0 1500.0 2000.0

平均乗車密度(人)

キロ当たり運送収入(円/km)民間バス(非採算) 市町バス(非採算) 民間バス(採算) 市町バス(採算)

※参考

・沿線人口は、H22 国勢調査の

500mメッシュ人口をベース

に、バス系統の両側 300mの

範囲に含まれるメッシュの人

口をカバー率に応じて面積案

分して積算

沿線人口が少ないが 運行回数が多い

民間バス

採算系統

市町村バス

民間バス

非採算系統

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7

⑤県内の市町村バスの収支状況についてみると、多くの系統が非採算(収入<支出)であり、

半数以上の収入は、年間 5 百万円以下となっている一方で、年間 10 百万円以上の費用をか

けて運行している系統も多くみられます。

図 平成 24 年度 市町村バスの収入と費用(系統別)

⑥市町村バスでは、利用者1人1回あたりの公費負担額※は約 415 円となっています。

また、利用者1人1回あたり 2,000 円以上の負担となっている市町もあります。

※利用者1人1回あたりの公費負担=(年間の総運送費用-年間の総運賃収入)/年間の総利用者数

図 1回利用あたり費用と収入(市町別) 図 1回利用あたり公費負担額(市町別)

0 1,000 2,000 3,000 4,000

上三川町

真岡市

さくら市

栃木市

日光市

足利市

那須烏山市

鹿沼市

矢板市

宇都宮市

那須町

佐野市

那須塩原市

那珂川町

小山市

大田原市

1回利用あたり公費負担額(円/回)

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0

運送経費(百万円

/年)

運送収入(百万円人/年)

非採算系統(142系統) 補助系統(55系統) 採算系統(7系統)

収支率 1.0

平均 415 円

※さくら市、上三川町はデマンド交通に移行し、現在市町

村バスは廃止されている。

※さくら市、上三川町はデマンド交通に移行し、現在市町

村バスは廃止されている。

採算系統

非採算系統

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

0 1,000 2,000 3,000 4,000

1回利用あたり収入(円/回)

1回利用あたり費用(円/回)

さくら市

上三川町真岡市

那須烏山市那珂川町

日光市矢板市

那須町

佐野市

栃木市

鹿沼市

那須塩原市

足利市宇都宮市

小山市

大田原市

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8

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000

輸送費用(千円)

輸送収入(千円)

収支率10%以下

収支率10-20%未満

収支率20%以上

⑦区域運行型のデマンド交通の平均収支率は 14%と低くなっています。

利用者が多く輸送収入が多い地域では、需要のある地域を巡回する距離が長くなり、輸送費用

も増加する傾向にあるため、必ずしも収支率は向上していません。

これは、多くの自治体で利用距離によらない均一運賃を採用していることも要因です。

図 デマンド交通の収入と費用(系統別)

⑧区域運行型のデマンド交通では、利用者1人1回あたりの公費負担額※は約 1,280 円となって

おり、市町村バスと比較して、1人1回あたりの公費負担額は約3倍となっています。

これは、人口密度の低い地域にサービスを提供しており利用者数が確保しにくいことや、予約

がなく運行されない便の運行経費(待機費用)を事業者に支払っているなどの契約形態の課題

も考えられます。

※利用者1人1回あたりの公費負担=(年間の総運送費用-年間の総運賃収入)/年間の総利用者数

図 1回利用あたり費用と収入(市町別) 図 1回利用あたり公費負担額(市町別)

0

50

100

150

200

250

300

350

0 5,000 10,000 15,000

1回利用あたり収入(円/回)

1回利用あたり費用(円/回)

さくら市

上三川町

那須烏山市

那珂川町

日光市

高根沢町

茂木町栃木市

鹿沼市

宇都宮市

小山市

益子町

真岡町壬生町

市貝町

野木町芳賀町

下野市

0 5,000 10,000 15,000

日光市

小山市

那須烏山市

上三川町

益子町

市貝町

真岡市

野木町

さくら市

壬生町

鹿沼市

宇都宮市

下野市

栃木市

茂木町

那珂川町

芳賀町

高根沢町

1回利用あたり公費負担額(円/回)

平均 1,280 円

収支率 1.0

収支率 0.2