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Post on 04-Mar-2020

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主な未侵入病害虫の解説今回は、マメ科植物の害虫であるインゲンテン

トウと、カンキツ類の病害であるElsinoe australis

について紹介する。

テントウムシは一般に捕食性であるが、インゲ

ンテントウは数少ない食植性テントウムシの一つ

で、マメ類の大害虫であり、輸入検疫に当っては、

本種を特定重要病害虫に指定して厳 しくチェック

している。本虫は植物に寄生した状態でわが国に

持ち込まれる可能性は少ないが、成虫が越冬のた

めに落ち葉や乾草の中にまぎれ込んで持ち込まれ

る可能性が高いので、発生地からのものには注意

を要する。

Elsinoe australisに よる病害は、南米のカンキツ

に広く発生していることが知られているが、ヨー

ロッパではシシリー島のレモンに発生報告がある

のみである。本病にり病した果実は、表面にかさ

ぶた状病斑を生じ、商品価値を損う。本病はわが

国に発生 しているそうか病と混同されやすいが、

寄主範囲、果実や葉に対する病原性に違いがあり、

また病斑の形状も異なるので、区別可能である。

イ ン ゲ ン テ ン ト ウ

学 名:Epilachna varivestis Mulstant

英 名:Mexican bean beetle

分布 北アメリカ、中央アメリカ。

寄主 インゲン、エンドウ、ウズラマメ、ダイズ

その他のマメ科植物。

形態 成虫の体長は5~8mmで 、体輻は約6mm。

体色は灰色、黄色、赤褐色などで変化に富んでい

る。体は軟毛が多く光沢がない。翅鞘には左右8

個ずつ黒色の斑紋があるが、前胸背には斑紋がな

い。大腮には先端に数本の大きい鋭利な歯とそれ

に続いてのこぎり状の小歯群がある。幼虫体長は

ふ化直後のもので約1mm、 成熟 したもので8~10

mmである。体色は成熟に伴い淡黄色から燈黄色に

変わる。また体には、縦に6列 の先端が黒い枝分

れしたトゲがある。蛹は燈色で、食草や他の物体

に4令 幼虫の脱皮殻によって付着 している。卵は

燈黄色で長さ約1mm。

生態 本虫は、マメ畑に近い森林、生け垣等の落

葉の下などで集団になって成虫越冬することが多

い。越冬を終えると、マメ畑に飛来 して葉を加害

し、約1か 月もすると死に絶える。加害後1週 間

から10日 で雌は産卵を始める。卵は葉裏に卵塊で

産み付け、1卵 塊中に40~60卵 が含まれる。卵のふ

化期間は、春で10日 ~14日 、夏で約5日 である。

幼虫期間は春で約5週 間、夏で約20日 である。踊

期間は夏で約7日 で、羽化して成虫になると、雌

は2週 間以内に産卵を始める。世代数はアメリカ

南部で年3~4世 代、北部では1世 代といわれて

いる。

被害 マメ科植物の中でも、インゲン類を好んで

加害する。成虫は葉裏を加害し、しばしば葉の表

面まで食い破る。幼虫も同様に葉裏を加害するが、

表皮は残す。成虫及び幼虫は葉を加害するが、葉

が無くなった場合は、新芽やつぼみ、更に茎など

も加害 し、しばしば枯死する植物もある。

被害が大きいのは、発生の多い盛夏期の7月 、

8月 である。

その他 在来種の中で近縁のものには、ジュウニ

マダラテントウ、ニジュウヤホシテントウとオオ

ニジュウヤホシテントウ、コブオオニジュウヤホ

シテントウがいる。ジュウニマダラテントウはウ

リ類の害虫で南西諸島に分布する。ニジュウヤホ

シテントウとオオニジュウヤホシテントウは、ナ

ス科植物の害虫である。

防除法 発生地ではデリス剤散布で最も効果が上

っている。他にマラソン剤も有効とされている。

植物防疫病害虫情報 第19号(1986年3月15日)

Elsinoe属 の一種

学 名:Elsinoe australis Bitancourt&Jenkins

英 名:Sweet orange fruit scab

分布 南米(ア ルゼンチン、ボリビア、ブラジル、

パラグアイ等)、 ヨーロッパ。

寄主植物 スウィートオレンジ、レモン、マンダ

リン、タンジェリン、ウンシュウミカン、ライム

等。

病原菌 子のう菌の一種。子のう殻は球状で、表

皮上または表皮下に生 じる。子のうは長だ円形で

子のう殻内上部に生じ、子のう胞子8個 を内包す

る。子のう胞子は透明で、真直ぐかわん曲 してお

り、1~3隔 膜、隔膜のところで幅が少しせまく

なる。

分生子層は肉眼観察では子のう殻と似ている。

分生胞子形成細胞は擬柔組織上部の細胞から直接

形成されるか、0~3隔 膜の分生子柄の上に形成

される。分生胞子は透明で隔膜はなく、卵形、大

きさは6~4×2~4μmで 分生胞子形成細胞か

ら生 じる。

成育適温は24.5℃ から29℃ である。

被害と病徴 主に果実にかさぶた状の病斑を散生

あるいは群生するのが特徴で、葉や枝での発生は

少いか全く無い。

果実に生じる病斑は、直径約4cmの 不均一な円

形でもり上がり、組織はコルク化する。

葉では、中肋に沿ってはじめ、ろうと状のくぼみ

を生 じ、後に直径2mmほ どのなめらかで光沢のあ

るかさぶた状病斑となる。

枝の病斑は、葉の病斑と類似している。

本菌は、若い組織のみを侵す。幼果に発生する

と奇形となる。

わが国のカンキツ類に発生 している そ うか病

(E.fawcetti)も 、かさぶた様病斑を生じるが、

病斑は一般的に小さく、スポンジ状で隆起 してい

ぼのようになる。これに較べ本病の病斑は大きく、

それほど盛り上がらず、クレーター状を呈 してい

るので区別することができる。

果実,葉 、枝に生 じた古い病斑が第一次伝染源

となり、風や雨で伝搬されて起こるようである。

防除法 生育開始前、落花後期にボルドー液ある

いはファーバム剤を散布する。病気がそれほどひ

どくないときは、生育開始前にファーバム剤を散

布する。

まだ結果したことのない若い樹に対してもファ

ーバム剤散布により予防可能である。

ブラジルでは、開花前にもジネブ剤を散布して

いる。

インゲンテントウ 成虫と被害 Elsinoe australisによ る 病徴

植物防疫病害虫情報 第19号(1986年3月15日)

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