主な未侵入病害虫の解説...主な未侵入病害虫の解説...
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主な未侵入病害虫の解説今回は、マメ科植物の害虫であるインゲンテン
トウと、カンキツ類の病害であるElsinoe australis
について紹介する。
テントウムシは一般に捕食性であるが、インゲ
ンテントウは数少ない食植性テントウムシの一つ
で、マメ類の大害虫であり、輸入検疫に当っては、
本種を特定重要病害虫に指定して厳 しくチェック
している。本虫は植物に寄生した状態でわが国に
持ち込まれる可能性は少ないが、成虫が越冬のた
めに落ち葉や乾草の中にまぎれ込んで持ち込まれ
る可能性が高いので、発生地からのものには注意
を要する。
Elsinoe australisに よる病害は、南米のカンキツ
に広く発生していることが知られているが、ヨー
ロッパではシシリー島のレモンに発生報告がある
のみである。本病にり病した果実は、表面にかさ
ぶた状病斑を生じ、商品価値を損う。本病はわが
国に発生 しているそうか病と混同されやすいが、
寄主範囲、果実や葉に対する病原性に違いがあり、
また病斑の形状も異なるので、区別可能である。
イ ン ゲ ン テ ン ト ウ
学 名:Epilachna varivestis Mulstant
英 名:Mexican bean beetle
分布 北アメリカ、中央アメリカ。
寄主 インゲン、エンドウ、ウズラマメ、ダイズ
その他のマメ科植物。
形態 成虫の体長は5~8mmで 、体輻は約6mm。
体色は灰色、黄色、赤褐色などで変化に富んでい
る。体は軟毛が多く光沢がない。翅鞘には左右8
個ずつ黒色の斑紋があるが、前胸背には斑紋がな
い。大腮には先端に数本の大きい鋭利な歯とそれ
に続いてのこぎり状の小歯群がある。幼虫体長は
ふ化直後のもので約1mm、 成熟 したもので8~10
mmである。体色は成熟に伴い淡黄色から燈黄色に
変わる。また体には、縦に6列 の先端が黒い枝分
れしたトゲがある。蛹は燈色で、食草や他の物体
に4令 幼虫の脱皮殻によって付着 している。卵は
燈黄色で長さ約1mm。
生態 本虫は、マメ畑に近い森林、生け垣等の落
葉の下などで集団になって成虫越冬することが多
い。越冬を終えると、マメ畑に飛来 して葉を加害
し、約1か 月もすると死に絶える。加害後1週 間
から10日 で雌は産卵を始める。卵は葉裏に卵塊で
産み付け、1卵 塊中に40~60卵 が含まれる。卵のふ
化期間は、春で10日 ~14日 、夏で約5日 である。
幼虫期間は春で約5週 間、夏で約20日 である。踊
期間は夏で約7日 で、羽化して成虫になると、雌
は2週 間以内に産卵を始める。世代数はアメリカ
南部で年3~4世 代、北部では1世 代といわれて
いる。
被害 マメ科植物の中でも、インゲン類を好んで
加害する。成虫は葉裏を加害し、しばしば葉の表
面まで食い破る。幼虫も同様に葉裏を加害するが、
表皮は残す。成虫及び幼虫は葉を加害するが、葉
が無くなった場合は、新芽やつぼみ、更に茎など
も加害 し、しばしば枯死する植物もある。
被害が大きいのは、発生の多い盛夏期の7月 、
8月 である。
その他 在来種の中で近縁のものには、ジュウニ
マダラテントウ、ニジュウヤホシテントウとオオ
ニジュウヤホシテントウ、コブオオニジュウヤホ
シテントウがいる。ジュウニマダラテントウはウ
リ類の害虫で南西諸島に分布する。ニジュウヤホ
シテントウとオオニジュウヤホシテントウは、ナ
ス科植物の害虫である。
防除法 発生地ではデリス剤散布で最も効果が上
っている。他にマラソン剤も有効とされている。
植物防疫病害虫情報 第19号(1986年3月15日)
Elsinoe属 の一種
学 名:Elsinoe australis Bitancourt&Jenkins
英 名:Sweet orange fruit scab
分布 南米(ア ルゼンチン、ボリビア、ブラジル、
パラグアイ等)、 ヨーロッパ。
寄主植物 スウィートオレンジ、レモン、マンダ
リン、タンジェリン、ウンシュウミカン、ライム
等。
病原菌 子のう菌の一種。子のう殻は球状で、表
皮上または表皮下に生 じる。子のうは長だ円形で
子のう殻内上部に生じ、子のう胞子8個 を内包す
る。子のう胞子は透明で、真直ぐかわん曲 してお
り、1~3隔 膜、隔膜のところで幅が少しせまく
なる。
分生子層は肉眼観察では子のう殻と似ている。
分生胞子形成細胞は擬柔組織上部の細胞から直接
形成されるか、0~3隔 膜の分生子柄の上に形成
される。分生胞子は透明で隔膜はなく、卵形、大
きさは6~4×2~4μmで 分生胞子形成細胞か
ら生 じる。
成育適温は24.5℃ から29℃ である。
被害と病徴 主に果実にかさぶた状の病斑を散生
あるいは群生するのが特徴で、葉や枝での発生は
少いか全く無い。
果実に生じる病斑は、直径約4cmの 不均一な円
形でもり上がり、組織はコルク化する。
葉では、中肋に沿ってはじめ、ろうと状のくぼみ
を生 じ、後に直径2mmほ どのなめらかで光沢のあ
るかさぶた状病斑となる。
枝の病斑は、葉の病斑と類似している。
本菌は、若い組織のみを侵す。幼果に発生する
と奇形となる。
わが国のカンキツ類に発生 している そ うか病
(E.fawcetti)も 、かさぶた様病斑を生じるが、
病斑は一般的に小さく、スポンジ状で隆起 してい
ぼのようになる。これに較べ本病の病斑は大きく、
それほど盛り上がらず、クレーター状を呈 してい
るので区別することができる。
果実,葉 、枝に生 じた古い病斑が第一次伝染源
となり、風や雨で伝搬されて起こるようである。
防除法 生育開始前、落花後期にボルドー液ある
いはファーバム剤を散布する。病気がそれほどひ
どくないときは、生育開始前にファーバム剤を散
布する。
まだ結果したことのない若い樹に対してもファ
ーバム剤散布により予防可能である。
ブラジルでは、開花前にもジネブ剤を散布して
いる。
インゲンテントウ 成虫と被害 Elsinoe australisによ る 病徴
植物防疫病害虫情報 第19号(1986年3月15日)