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東京都千代田区で 9 月 29 日、「ILC- Japan(日本国際指導者会議)2015 in 東京」(主催:UPF、平和大使協議会) が開催され、政界、学界、教育界、宗教 界など各界の有識者ら約 200 人が参加 しました。ILC-Japan 2015は、「家庭の危機と再生へのビジョ ン―少子化非常事態と日本の選択―」を共通テーマに 6 月か ら各地で開催されているもので、この日の会議はその 7 回目。 基調講演者として招いたのは、今年 6 月に連邦最高裁判所が 同性婚を合法化する判決を下した米国で、長年にわたり同性 婚問題をテーマに取材を行ってきた米紙「ワシントン・タイ ムズ」記者のシェリル・ウェツスタイン氏(=写真左上)。 同氏は、同性婚が合法となっても、米国では宗教的な信念 から結婚証明書の発行を拒否した書記官が拘束されたり、同 性婚カップルのためにウェディング・ケーキは作らないと宣 言したパン屋が訴えられたりするなど、賛成派、反対派の対 立が激しくなっていると指摘しました。また、同性婚を合法 化した連邦最高裁判決は 5 対 4 の僅差であり、反対派判事の 中には「判決は自由をはき違えている」「同性婚の合法化によっ て一夫多妻の合法化を否定するのが難しくなる」など、合法 No.7 平和大使 peaceambassador.org 2015 年 10 月 10 日発行 AMBASSADORS for PEACE Monthly Report マンスリー レポート 化に対して根強い反対意見があることを紹介しました。 さらに同氏は、同性愛カップルによって育てられた子供の 中からは成人後、「正常な子供時代や、母親と父親を持つ権利 を失った」などと、同性婚を否定する声が上がっている現状 があることを説明した後、「同性婚が有益か否かは、同性愛者 の親たちに育てられた子供が成人して明確な答えを示すだろ う」と述べ、両者が主張する賛否をめぐる「文化戦争」はそ れまで続くとの見方を示しました。 また、UPF・平和大使協議会の菊谷清 一事務総長(=写真右)が「家庭の危機 と再生へのビジョン」と題して講演。日 本で同性婚を認めれば、婚姻制度が形骸 化して人口減少に拍車がかかると危機感 を示しました。パネルディスカッションでは、区議会議員、中 学教師などがパネリストとして、それぞれ取り組んでいる活動 報告をした後、活発な討議が行われました。 最後に、閉会の辞を述べた徳野英治 UPF 日本会長は、家庭崩 壊から様々な社会問題が生じていることを指摘。こうした問題 を克服するために、あるべき結婚と家庭の価値観を標榜する家 庭再建運動を国民的レベルで推進していこうと訴えました。 また 10 月 4 日には、石川県金沢市で 「ILC-Japan2015 in 金沢」が開かれ、市 内の会場には石川、富山、福井、岐阜の 各県から元国会議員や各県の県議、市議 を始め、宗教指導者や大学教授など有識 者 210 人余が参加しました。 同会議では、元埼玉県教育委員会委員長の松居和氏(=写真左が「子育てが育む社会の絆」と題して講演しました。米国での 30 年に及ぶ生活を通して体験した家庭崩壊の実情を示しなが ら、「幸福論、人生観の崩壊が少子化を生んでいる」との持論を 展開。その上で、改めて日本の伝統的な子育てを通して、親が 親らしくなっていく「親心」を育むことが重要と言及しました。 また、真の家庭国民運動推進全国会議 事務総長の梶栗正義氏(UPF 日本事務副 総長=写真右)は、出生率が上昇したス ウェーデンやフランスの例を紹介しなが らも、そこに潜む深刻な問題点を指摘し ました。その上で「日本の進むべき方向は、家庭基盤充実型の『日 本モデル』をめざすこと」と主張、「三世代の絆強化と同居を促 す税制や経済支援の政策を進めるべきだ」と提案しました。 6月から開催された ILC-Japan2015 は、10 月 11 日の高松 会議を残すのみとなっています。 詳細は、☞平和大使協議会のウェブサイトをご覧くださいILC-Japan2015(日本国際指導者会議) 東京、金沢に各界の有識者 200 人以上が参加 今こそ結婚と家庭の価値見直す国民運動が必要

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 東京都千代田区で 9 月 29 日、「ILC-Japan(日本国際指導者会議)2015 in 東京」(主催:UPF、平和大使協議会)が開催され、政界、学界、教育界、宗教界など各界の有識者ら約 200 人が参加

しました。ILC-Japan 2015 は、「家庭の危機と再生へのビジョン―少子化非常事態と日本の選択―」を共通テーマに 6 月から各地で開催されているもので、この日の会議はその 7 回目。基調講演者として招いたのは、今年 6 月に連邦最高裁判所が同性婚を合法化する判決を下した米国で、長年にわたり同性婚問題をテーマに取材を行ってきた米紙「ワシントン・タイムズ」記者のシェリル・ウェツスタイン氏(=写真左上)。 同氏は、同性婚が合法となっても、米国では宗教的な信念から結婚証明書の発行を拒否した書記官が拘束されたり、同性婚カップルのためにウェディング・ケーキは作らないと宣言したパン屋が訴えられたりするなど、賛成派、反対派の対立が激しくなっていると指摘しました。また、同性婚を合法化した連邦最高裁判決は 5 対 4 の僅差であり、反対派判事の中には「判決は自由をはき違えている」「同性婚の合法化によって一夫多妻の合法化を否定するのが難しくなる」など、合法

No.7

平和大使peaceambassador.org2015年 10月 10日発行

AMBASSADORS for PEACE Monthly Report

マンスリーレ ポ ー ト

化に対して根強い反対意見があることを紹介しました。 さらに同氏は、同性愛カップルによって育てられた子供の中からは成人後、「正常な子供時代や、母親と父親を持つ権利を失った」などと、同性婚を否定する声が上がっている現状があることを説明した後、「同性婚が有益か否かは、同性愛者の親たちに育てられた子供が成人して明確な答えを示すだろう」と述べ、両者が主張する賛否をめぐる「文化戦争」はそれまで続くとの見方を示しました。 また、UPF・平和大使協議会の菊谷清

一事務総長(=写真右)が「家庭の危機

と再生へのビジョン」と題して講演。日

本で同性婚を認めれば、婚姻制度が形骸

化して人口減少に拍車がかかると危機感

を示しました。パネルディスカッションでは、区議会議員、中

学教師などがパネリストとして、それぞれ取り組んでいる活動

報告をした後、活発な討議が行われました。

 最後に、閉会の辞を述べた徳野英治 UPF 日本会長は、家庭崩

壊から様々な社会問題が生じていることを指摘。こうした問題

を克服するために、あるべき結婚と家庭の価値観を標榜する家

庭再建運動を国民的レベルで推進していこうと訴えました。

 また 10 月 4 日には、石川県金沢市で

「ILC-Japan2015 in 金沢」が開かれ、市

内の会場には石川、富山、福井、岐阜の

各県から元国会議員や各県の県議、市議

を始め、宗教指導者や大学教授など有識

者 210 人余が参加しました。

 同会議では、元埼玉県教育委員会委員長の松居和氏(=写真左)

が「子育てが育む社会の絆」と題して講演しました。米国での

30 年に及ぶ生活を通して体験した家庭崩壊の実情を示しなが

ら、「幸福論、人生観の崩壊が少子化を生んでいる」との持論を

展開。その上で、改めて日本の伝統的な子育てを通して、親が

親らしくなっていく「親心」を育むことが重要と言及しました。

 また、真の家庭国民運動推進全国会議

事務総長の梶栗正義氏(UPF 日本事務副

総長=写真右)は、出生率が上昇したス

ウェーデンやフランスの例を紹介しなが

らも、そこに潜む深刻な問題点を指摘し

ました。その上で「日本の進むべき方向は、家庭基盤充実型の『日

本モデル』をめざすこと」と主張、「三世代の絆強化と同居を促

す税制や経済支援の政策を進めるべきだ」と提案しました。

 6月から開催された ILC-Japan2015 は、10 月 11 日の高松

会議を残すのみとなっています。

(詳細は、☞平和大使協議会のウェブサイトをご覧ください)

ILC-Japan2015(日本国際指導者会議)

東京、金沢に各界の有識者 200 人以上が参加今こそ結婚と家庭の価値見直す国民運動が必要

 6月から全国で開催されてきた「ILC-Japan2015」も 10 月11 日の高松会議で最終回となります。「家庭の危機と再生へのビジョン~少子化非常事態と日本の選択」をテーマに行われた同会議には、毎回 150 ~ 200 名規模の有識者・専門家が参加。結婚や家庭の価値についての本質的な内容から、国、地方自治体における家族政策や法律のあり方などが幅広く、かつ熱心に議論されました。また、おもて面でもご紹介したとおり、東京

 韓国の朴槿恵大統領が今年 7 月、大統領府で開かれた非公式会合で「統一は来年にも実現するかもしれない」と述べたと韓国紙ハンギョレ新聞が報じました。朴大統領は 9 月の国連総会の一般討論演説でも、国際社会に南北の平和統一への努力を呼びかけるなど、統一外交を活発化させています。 朴大統領は、統一をどのように実現するかについて具体的な構想を明らかにしていません。しかし、9 月に北京で行われた「抗日戦争勝利 70 周年記念式典」のあと、「朝鮮半島の平和統一のために中国と共に協力していく」と述べるなど、韓国国内からも過度な「中国傾斜」を懸念する声が上がっています。また、南北統一に関して日本への言及はほとんどありません。 こうした中、米保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の朝鮮半島情勢の専門家であるブルース・クリングナー上席研究員が、南北統一のプロセスには米国だけでなく日本も関与するべきだとする報告書を発表しました。 クリングナー氏は、統一は北朝鮮が主張する「一国二制度」ではなく、韓国による北朝鮮の併合によってのみ実現可能だと述べた上で、そのプロセスには早期から日本の関与が不可欠だとしています。 その理由として、まず北朝鮮の崩壊過程で南北間に武力衝突が生じれば在日米軍の介入と日本の後方支援が必要となる点を

 家庭の問題を考える上で、制度や法律などの専門的な観点から議論を深めることはとても重要だと思います。しかし、より本質的な意味で私たちが忘れてならないもの、それは人間として何をめざして、どのように生きるかという問いです。一昔前には、人として生きる上で何が大切かということをいつも考えていたので、かえって抽象的になりがちでしたが、逆に現在は、喫緊の具体的な課題を解決することを急ぐあまり、目先の議論に終始してしまう傾向があるのではないでしょうか。私は、日本の明治期以降の発展の背景には、こうした「人がいかに生くべきか」という本質的な問いがあったと思います。その意味で、私たちの運動の根底に人の心

や生き方に対する問いを持ちながら、それが社会や国家として進むべき針路につながっていくようにしていきたいものです。                (2015 年 9 月 29 日、ILC-Japan2015 in 東京での発言から)

運動の根本に必要な

本質的な問いかけ

平和大使マンスリー・レポート No. 7[ 発行日 ]2015 年 10 月 10 日  [ 編集・発行 ] UPF-Japan /平和大使協議会 

Message ~メッセージ~

政策オピニオン

鈴木博雄・平和大使協議会共同会長(筑波大学名誉教授)

挙げています。米国は、日本の協力がなければ韓国を防衛することができません。 また、再統一後には国家建設のために数兆ドルともいわれる莫大な費用がかかるといわれています。韓国が単独で負担するのは明らかに困難であり、諸外国や国際機関、そして日本にも経済支援や投資を求めることになるでしょう。 日本としても、韓国主導による統一国家が米国との同盟関係を維持しつつ、自由、民主主義、法の支配、人権などの基本的価値を共有する友好的な隣国となることが国益につながります。また、北朝鮮による拉致問題や核問題解決の好機ともなります。統一国家は人口が合計 7500 万人程度になりますが、経済的な競争相手であると同時に、日本企業にとって魅力的な市場ともなります。日本にとっての最悪のシナリオは、価値観の異なる敵対的な核保有国が誕生し、常に隣国からの脅威にさらされることです。 米国では、南北統一にいたるさまざまなシナリオを想定した研究が継続的に行われていますが、日本では日韓関係の悪化も影響し、ほとんど議論が進んでいません。しかし東アジアの中長期的な平和と安定のために日本も南北統一により関心を持ち、近い将来にも予測される情勢の変化に確実な準備をしておくべきでしょう。                          (M)

南北統一には日本の関与が不可欠 米専門家が指摘

 ※「平和大使マンスリー・レポート」は、平和大使の皆様と、当運動にご賛同いただいている皆様にお届けする月刊活動レポートです。

お知らせ ● ILC-Japan2015各界の有識者・専門家が熱心に議論

会議では米ジャーナリストを招聘し、同性婚合法化に揺れる同国の状況について理解を深め、今後、日本が取るべき針路について考える有意義な機会となりました。UPF・平和大使協議会では、今後とも同様のイベントやセミナーを企画してまいります。。