3)傾斜区分の設定 - maff.go.jp · 2021. 1. 25. · musle式(williams and berndt, 1977....
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3)傾斜区分の設定
DEMから自動的に計算した傾斜を任意に区分できる。今回は、傾斜(勾配率)を 0
~10、10~20、20以上の 3つに区分した(図Ⅵ-7)。
図Ⅵ-7 傾斜区分図
4)HRU 除外閾値の設定
微小な HRU を削除することで計算効率を改善することができる。本解析では土地
利用、土壌、傾斜の面積割合がそれぞれ 5%以下の HRU を削除することとし、最終的
に 708個の HRUを作成した。
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図Ⅵ-8 作成された HRU
(3)気象データの読込み 気象データは、鹿北、阿蘇乙姫、菊池の 3つの観測所のアメダスデータを用いた。支
流域ごとに最も近い観測所の気象データを使用することとし、今回、SWAT で設定した
各支流域の気象データ区分は、図Ⅵ-9に色分け表示した通りである。
図Ⅵ-9 適用される気象データと観測所位置
なお、雨量に関しては国土交通省の雨量データがさらに 15箇所で利用可能である。
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降水量は水収支の推定精度に大きく関わると考えられることから、なるべく正確なデ
ータが必要となる。そのため、雨量のみアメダスデータに加えて国土交通省の雨量測定
データを使用し、計 18箇所の観測データを用いた。各観測所の年平均雨量(2008~2016)
実測値から作成した等雨量線図(図Ⅵ-10)と、SWAT モデルによる推定年降水量(図
Ⅵ-11)を比較すると、流域の東部で降水量が多く西部で降水量が少ない傾向を SWAT
モデルにおいても再現できていることがわかる。
図Ⅵ-10 気象観測所と等雨量線図
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図Ⅵ-11 各支流域での降水量推定値
SWATモデルに必要な気象データは、観測所の緯度経度、標高(m)、最高気温、最低気
温(℃)、降水量(mm)、風速(m/s)、相対湿度、日射量(MJ/m2)である。これらのデ
ータを、あらかじめ既定のフォーマットでテキスト保存し、「Whether Data Definition」
画面で読み込み、対象流域の気象データベースを作成する。
(4)各種設定
ここでは、モデルの構築上考慮しなければならない各種設定について示す。これらの
設定については、モデル専門家との議論やシミュレーション結果からフィードバック
を受けて適宜設定および修正してきたものである。
1)雨に含まれる栄養塩
流域内の雨に含まれる栄養塩として、本事業にて実施した雨水水質分析の結果を
モデルに反映した。雨水分析は流域内 5箇所で 2016年 11月~2017年 10月の期間に
月 1回測定し、得られたデータの平均値である 1.25 (mgN/L) を RCN.bsn(流域内の
雨に含まれる窒素濃度)パラメータに与えた。
2)地下水に含まれる栄養塩
流域内の地下水に含まれる栄養塩として、本事業にて実施した湧水水質分析の結
果をモデルに反映した。湧水は地下水の水質を反映していると考え、流域内 5箇所で
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2016年 11月~2017年 10月の期間に月 1回湧水の水質を測定した。測定データ(T-
N(全窒素), T-P(全リン))はそれぞれ有機態・無機態別に区分してそれぞれ該当
するパラメータに入力した。なお、有機態・無機態の区分割合は 2017年 10月に測定
した河川の水質データにおける割合と同じと仮定して算出した。
また、湧水測定地にあたらない他の支流域における地下水に含まれる栄養塩につ
いては、それぞれの支流域から最も近い湧水測定地の値を与えて設定した。
3)土壌に含まれる栄養塩
土壌に含まれる栄養塩として、本事業にて実施した土壌分析の結果をモデルに反
映した。
2016年は流域内 5箇所、2017年は 3箇所(うち 2箇所は森林小流域の調査地であ
り、右岸と左岸でそれぞれ 2箇所ずつ測定したため、計 5箇所となる)で測定したデ
ータをパラメータに反映させた。なお、土壌には全部で 3つの層が存在するとして土
壌データベースを構築したが、ここで土壌の栄養塩について反映させる土壌層は最
上部の layer 1のみとした。
SWATでは土壌中の窒素は NO3-N(硝酸態窒素)、有機態窒素の 2形態、リンは可給
態リン、有機態リンの 2形態にそれぞれ分けて入力する必要があるが、ここでは以下
のように考えて割り当てた(表Ⅵ-1)。
窒素について、土壌分析の結果、無機態窒素が検出されなかったことから、検出さ
れた窒素の全量を有機態窒素とした。リンについては、有機態リンの量は測定を実施
したものの可給態の存在割合について情報を得られなかったことから、便宜上、可給
態リンは無機態リンの量と等しいと仮定して割り当てた。
また、土壌測定地に該当しない他の支流域における土壌に含まれる栄養塩につい
ては、それぞれの支流域から最も近い土壌採取地の値を与えて設定した。
表Ⅵ-1 土壌に含まれる栄養塩の対応関係
現地調査項目 無機態窒素 有機態窒素 無機態リン 有機態リン
対応 検出され
ず。
そのまま設定 便宜的に無機態リン量を
可給態リン量として設定
そのまま設定
SWAT 入力項目 NO3-N 有機態窒素 可給態リン 有機態リン
4)土砂流出に関連するパラメータ
SWATにおいて、土壌侵食は MUSLE 式(Williams and Berndt, 19772)によって推
定されている。MUSLE 式にはいくつかのパラメータが必要となるが、そのうち土壌に
2 Williams, J. R., and H. D. Berndt. "Sediment yield prediction based on watershed hydrology."Transactions of the ASAE 20.6 (1977): 1100-1104.
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関するパラメータ(USLE_K)と作物に関するパラメータ(USLE_C)については既往文
献(今井・石渡, 20073)から該当するパラメータ値を得て本モデルに反映した。
USLE_K については各土壌の平均値をパラメータとして与えた。USLE_Cについても
土壌と同じ文献を利用したが、水稲・森林についてはデータが無かったため、キャリ
ブレーションの対象とし別途調整することとした。
5)耕作シナリオ
各作物の耕作シナリオについて SWAT では任意に設定することができる。各作物に
ついて以下のように設定した。
ア 森林
森林ではシミュレーション開始時から森林が成立しているとし、シミュレーショ
ン中は主伐・間伐といった人為的な作業は特に行わないこととした。初期の森林の状
態を規定するパラメータについては SWAT のマニュアル(SWAT-IO-Documentation
20124)と石井ら(1999)5を参考に以下の表Ⅵ-1のように設定した。
表Ⅵ-2 森林の設定パラメータ
パラメータ名 設定値 説明
Initial Land Cover Forest-mixed 初期の土地利用の種類
LAI_INT 4 初期 LAI
BLAI 9 最大 LAI
BIO_INT 1000 (kg/ha) 初期バイオマス
PHU_PLT 2000 成熟するまでに必要な積算温度
CANMX 20 (mm) 最大樹冠貯留量
イ 水田
水田について、井関農機株式会社の作成した栽培暦のうち熊本県の米品種である
ヒノヒカリの栽培暦を参考に設定した。また、稲の移植時の初期 LAI(LAI_INT)は
0.1、初期バイオマス量(BIO_INT)は 20 [kg/ha] とした。耕作中は潅水状態を再現
するため Auto irrigation オプションを利用し、植物が水ストレスを感じると自動
的に近隣の河川から引水し水田に供給するように設定した。稲の収穫後は、裏作とし
3今井啓, and 石渡輝夫. "統計資料等を用いて整理した都道府県別の土壌侵食因子の地域性に
ついて."寒地土木研究所月報 645 (2007): 49-54. 4 Arnold, J. G., et al.SWAT input–output documentation, version 2012. Texas Water
Resource Institute. TR-439, 2012. 5石井孝, 梨本真, and 下垣久. "衛星データによる葉面積指数 LAI の推定."水文・水資源学会
誌 12.3 (1999): 210-220.
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て冬コムギを栽培する計画とした。また、田んぼの畦道による土砂補捉効果を再現す
る FILTERWオプションを利用し、畦道の距離を 2.6mと設定した。
表Ⅵ-3 水田の耕作シナリオ
実施日 種類 実施内容 詳細
6/1
稲作
耕起
6/18 潅水開始
6/18 潅水 Auto irrigation(自動潅水処理)
6/19 耕起、施肥(有機堆肥) 10000 kg/ha (N 3%, P 0.7%)
6/21 移植、施肥(元肥) 施肥量 400 kg/ha (N 11%, P 23%)
8/7 施肥(追肥) 施肥量 200 kg/ha (N 15%, P 7%)
10/14 排水
10/15 収穫 全量収穫
10/30
麦作(
裏作)
施肥 施肥量 400 kg/ha (N 1%, P 15%)
11/15 耕起
11/30 播種
1/15 施肥(追肥) 施肥量 200 kg/ha (N 25%, P 1%)
2/15 施肥(追肥) 施肥量 100 kg/ha (N 25%, P 1%)
5/30 収穫 全量収穫
ウ 畑(平地)
平地の畑については、春から初夏にかけては菊池川流域で栽培面積の多いスイカ
の栽培をし、秋から冬にかけてはキャベツを栽培することを想定した。耕作のシナリ
オは、「熊本の野菜耕種基準」(2012 (社)熊本県野菜振興協会)を参考に表Ⅵ-3
のように設定した。水田と同じく FILTERW オプションを利用し、畦道の距離を 2.6m
と設定した。なお、熊本県でのスイカ栽培はハウス内で植えて育てる方法が一般的で
ある。ハウスを想定した設定は SWAT 内に存在しないため、パラメータの設定変更で
対応した。具体的には、作物データベース内の最低気温パラメータ(T_BASE)をデフ
ォルトでは 18℃のところを 0℃に、最適気温パラメータ(T_OPT)を 35℃から 25℃に
変更した。
表Ⅵ-4 畑(平地)の耕作シナリオ
実施日 実施内容 詳細
1/24 耕起、施肥(有機堆肥) 20000 kg/ha (N 3%, P 0.7%)
1/25 施肥(元肥) 施肥量 100kg/ha (N 11%, P 8.8%)
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2/1 播種 スイカ(WMEL)
6/25 収穫 全量収穫
7/20 耕起、施肥(有機堆肥) 20000 kg/ha (N 3%, P 0.7%)
7/21 施肥(元肥) 施肥量 75kg/ha (N 10%, P 4.4%)
8/1 播種 キャベツ(CABG)
10/1 施肥(追肥) 施肥量 25kg/ha (N 10%, P 4.4%)
12/1 収穫 全量収穫
エ 畑(傾斜地)
傾斜が 20%以上あるような土地では通常の野菜が栽培されているとは考えづらく、
果樹や茶が栽培されていると考えられる。実際に、農林業統計センサス 2015によれ
ば菊池市と山鹿市の経営耕地総面積のうち樹園地(果樹、茶、桑)の面積は全体の約
16%を占め、SWAT により傾斜 20%以上の農地とされた面積割合(約 19%)とほぼ一
致する。
このことから、傾斜地(傾斜 20%以上)では果樹・茶を栽培することを想定し耕作
シナリオを設定した。水田と同じく FILTERWオプションを利用し、畦道の距離を 2.6m
と設定した。茶に該当する作物データは SWAT データベース上に存在しないため、
Orchard(果樹園)として設定した。木本性植物であるため、シミュレーション当初
から存在し、期間中に植物バイオマスのうち一部の収穫を年一度行うこととした。
施肥については、茶生産技術指針(第 2版)(平成 13年 熊本県)を参考に設定し
た。なお、傾斜地すべてで茶が生産されているわけではないため、茶の生産面積を考
慮して施肥量を調節した。
表Ⅵ-5 畑(傾斜地)の設定パラメータ
パラメータ名 設定値 説明
Initial Land Cover Orchard 初期の土地利用の種類
LAI_INT 1 初期 LAI
BLAI 4 最大 LAI
BIO_INT 50 (kg/ha) 初期バイオマス
PHU_PLT 1700 成熟するまでに必要な積算温度
CANMX 5 (mm) 最大樹冠貯留量
表Ⅵ-6 畑(傾斜地)の耕作シナリオ
実施日 実施内容 詳細
2/1~9/1 施肥(追肥) 施肥量 80 kg/ha (N 30%, P 7%)
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(月 1回、4月と 7月を除く)
6)下水道、その他の生活排水、畜産由来排水
陸域から河川に流入する負荷として、農地や森林などの面的な部分からの負荷(面
源負荷)に加え、下水道や畜産施設からのポイント的な負荷(点源負荷)も考慮しな
くてはならない。点源負荷からは SS(Suspended Solid; 浮遊物質)、リン、窒素が
排出されており、流域全体での土砂・栄養塩流出量に影響を与える。なお、SS は厳
密には土砂だけでなく植物プランクトン等も含まれるが、洪水時の SS負荷量の増加
と土砂流出量の増加には関連性があると考えられ SSを土砂流出量とみなすことがで
きる場合がある(清水、小野寺 20126)。よって、本事業でも SSを土砂流出量実測値
として扱った。
工場などの産業排水については下水道の処理水に含まれると考え、下水道、生活由
来排水(下水道以外)、畜産由来排水の 3種類からの負荷を反映させた。
ア 下水道
対象流域内に存在する 5ヶ所の下水処理場から 2006年~2017年までの月別の処理
水質データを入手し、モデル上に反映した。
イ 生活由来排水
下水道以外からの生活排水処理施設には、農業集落排水施設、合併処理浄化槽、単
独処理浄化層がある。これらは都市から離れた山村等で多い処理方式であり、各処理
施設からの正確な排水データを得ることは難しい。そこで、一人・一日あたりの負荷
量を示した原単位法を用いて、各支流域に一定の負荷を割り当てることとした。原単
位は「流域別下水道整備総合計画調査 指針と解説」(平成 27 年 国土交通省水管
理・国土保全局下水道部)から表Ⅵ-6のように情報を得た。市町村別・処理種別の
人口については「くまもと生活排水処理構想 2016」(平成 29 年 熊本県)からデー
タを収集し、各支流域に人口に応じて排出を行うよう設定した。
表Ⅵ-7 生活排水の原単位
処理施設 SS (g/人・日) T-N (g/人・日) T-P (g/人・日)
農業集落排水施設 2.4 6.1 0.63
合併処理浄化槽 10.8 6.5 0.75
単独処理浄化槽 3.1-3.9 5.2-6.6 0.56-0.70
6清水裕太, 小野寺真一. "郊外農業流域での栄養塩流出に及ぼす気候変動の影響."陸水学雑誌 73.3 (2012): 235-254.
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ウ 畜産由来排水
畜産由来の排水について、生活由来排水と同じく原単位法を用いた。原単位は生活
排水と同じ資料から以下の表Ⅵ-7 のようにデータを得た。市町村別の家畜頭数は
「熊本県畜産統計」(平成 29年 熊本県)から収集し、各支流域に頭数に応じて排出
を行うよう設定した。なお、家畜の排泄物については各施設で浄化処理を行ってから
河川に排出するところがほとんどである。処理の方法については網羅的な資料が存
在せず、浄化による物質の除去率は排水システムによって様々である。今回は、高効
率の排水システムによって排出されると仮定し、SSの除去率を 99.8%、T-Nおよび T-
Pの処理による除去率を 99%として設定した。
表Ⅵ-8 畜産排水原単位
家畜種類 SS (g/頭・日) T-N (g/頭・日) T-P (g/頭・日)
牛 3000 290 50
豚 700 40 25
馬 5000 170 40
7)ダムの設定
ダムの存在によって水の流れが大きく変化する可能性があるため、現実に即した
モデルを構築するためにはダムの影響も考慮する必要がある。既存資料 7の情報から、
菊池川流域内に存在する竜門ダムについて、次のように設定した。
表Ⅵ-9 ダムの設定パラメータ
パラメータ名 設定値 説明
RES_ESA 130 (ha) 湛水面積
RES_EVOL 4250 (104 m3) 最大貯水量
RES_PSA 100 (ha) 通常時の表面積
RES_PVOL 3350 (104 m3) 通常時の貯水量
RES_VOL 3000 (104 m3) 開始時の貯水量
RES_RR 1 (m3/s) 日平均放出量
IFLOD1R, IFLOD2R Oct- May 非洪水期
RES_SED 1 (mg/L) 初期土砂濃度
RES_NSED 1 (mg/L) 平衡時の土砂濃度
7 「平成 24年度 竜門ダムフォローアップ報告書(概要版)」国土交通省菊池川河川事務所竜門ダム管理支所、国土交通省水文水質データベース
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8)河川形状の設定
河川の形状は、河川における水の流速に影響を与えるため、それに応じて土砂・栄
養塩の流出量も変化する。そのため、各河川には実態にあった適切な形状(河川の幅・
深さ)をパラメータとして与える必要がある。そこで、「国土交通省 川の防災情報
(https://www.river.go.jp/kawabou/ipGaikyoMap.do?areaCd=89&prefCd=4301&town
Cd=&gamenId=01-0704&fldCtlParty=no ) H30年 3月参照」および「菊池川水系河
川整備基本方針 (国土交通省 平成 23年)」から CH_W2(堤防上部の平均幅)、CH_D
(堤防上部の平均高さ)のパラメータに相当するデータを取得し該当河川に与えた。
上流部などのデータの得られなかった河川については、衛星画像から大まかな川幅
を測定した。
(5)シミュレーション条件の設定
シミュレーションの対象期間は 2005 年 1月 1日から 2018 年 12月 31日とした。SWAT
では、シミュレーション結果が安定しない初期の期間を、ウォームアップ期間として実
際のシミュレーションから外し、シミュレーション精度を高めることができる。今回は、
最初の 3年間(2005年~2007 年)をスキップし、実質的には 2008年から 2018年までの
推定結果を得ることとした。なお、シミュレーションは日単位で実施した。
https://www.river.go.jp/kawabou/ipGaikyoMap.do?areaCd=89&prefCd=4301&townCd=&gamenId=01-0704&fldCtlParty=no%20%EF%BC%89%E3%80%80H30%E5%B9%B43https://www.river.go.jp/kawabou/ipGaikyoMap.do?areaCd=89&prefCd=4301&townCd=&gamenId=01-0704&fldCtlParty=no%20%EF%BC%89%E3%80%80H30%E5%B9%B43
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5.キャリブレーションとバリデーション (1)概要
SWAT モデルの強みの1つとして、通常は実測値を得られないようなパラメータに対
して、流量など実測値の得られる出力結果を利用して校正(キャリブレーション)する
ことで現実に近いと想定される値を得られる、という点がある。キャリブレーションの
対象としたパラメータを自動的に変化させながらシミュレーションを繰り返し、最も
モデルの推測値と実測値が適合していたときのパラメータの組み合わせを採用する。
こうして得られたパラメータ値を使用して再度シミュレーションを行うことで、実測
値と近い出力結果を得ることができる。
モデルの信頼性・再現性は、キャリブレーションに用いられていない期間において、
調整後のパラメータ値を用いた計算値と実測データとを比較することで検証する(バ
リデーション)。評価の指標としては決定係数や Nash Sutcliffe Efficiency (NSE)な
ど各種存在し、一定の基準値以下の場合、再現精度が悪いと評価され、再度パラメータ
の調整を行う必要がある。
キャリブレーション・バリデーションにおける作業フローを次の図Ⅵ-12 に示す。
再現精度が十分でなかった場合、パラメータを調整し再度キャリブレーション・バリデ
ーションを行い、十分な精度が得られるまで作業を繰り返す。
図Ⅵ-12 キャリブレーション・バリデーションの作業フロー
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実際の作業には、キャリブレーション専用ソフトウェアである SWAT-CUP8を利用し、
SUFI2というプログラムによりパラメータの最適な組み合わせを選択した。シミュレー
ション回数は 400 回とした。
図Ⅵ-13 SWAT-CUPでのパラメータの選択画面
図Ⅵ-14 流量実測値と推測値の比較
8 Abbaspour, Karim C. "SWAT-CUP 2012." SWAT Calibration and Uncertainty Program—A User Manual (2013).
Ⅵ.SWATモデルの概要と設定(3)気象データの読込み(4)各種設定(5)シミュレーション条件の設定5.キャリブレーションとバリデーション(1)概要