30度開先溶接施工試験 · 2020. 8. 19. · jis g 0553 硬さ試験 - - 1 jis z 2244...

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[報告] 30 度開先溶接施工試験 -平板溶接継手,コラムロボット溶接- 長 久 靖 典 永 野 ** 吉 村 忠 昭 *** 鉄骨事業本部 熊谷工場 工務課 課長 ** 鉄骨事業本部 熊谷工場 品質保証課 課長 *** 鉄骨事業本部 熊谷工場 製造部 部長 J-FaB 技報 No.2 (1) 1.はじめに 2018年1月にJASS6が改定され,その中で,開先標準と して完全溶込み溶接レ形開先の中に,開先角度30度が追 記された. このことに先立ち,30度開先とした完全溶込み溶接継 手の施工性および機械的性能を確認するため,平板溶接 継手試験およびコラムロボット溶接試験を実施した. 2.試験概要 2.1 試験体および溶接方法 表-1に試験体概要,図-1および図-2に試験体形 状を示す.平板溶接継手試験は板厚40mm(SN490B)と板厚 50mm(TMCP325B)を組合せた.コラムロボット溶接試験は 板厚32mm(SN490C)の通しダイアフラムを中心とし,両側 からコラムで挟んだ形状とした.試験対象はA側とした. コラムは□-550×550×32(BCP325)および□-500× 500×19(BCP325)の2種類を使用し,各々1体製作した. 対象接手の開先形状はレ形,開先角度30度である.なお, 実施工での精度誤差に配慮し,ルートギャップは施工条 件の不利な5mmとした. 表-1 試験体概要 種別 試験体 溶接材料 鋼材 数量 平板 PL-40+PL-50 (SN490B+TMCP325B) 1 YGW18 (YM-55C,1.2φ) コラム □-550×550×32 (BCP325) ダイアフラム32mm(SN490C) 1 YGW18 (MG-56R(N), 1.2φ) □-500×500×19 (BCP325) ダイアフラム32mm(SN490C) 1 YGW18 (MG-56R(N), 1.2φ) 表-2に溶接条件を示す.溶接は炭酸ガスシールドア ーク溶接とし,下向き姿勢で実施した.溶接入熱量・パ ス間温度は平板溶接継手試験体は40kJ/cm・350℃以下, コラム試験体は30kJ/cm・250℃以下で管理した. 図-1 試験体形状(平板) 図-2 試験体形状(コラム) なお,作業性を考慮し平板溶接継手試験にはテーパー ノズルを使用した.そのノズル形状を図-3に示す.ロ ボット溶接では通常のノズルを使用した. 日本ファブテック技報 No.2 72

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Page 1: 30度開先溶接施工試験 · 2020. 8. 19. · jis g 0553 硬さ試験 - - 1 jis z 2244 平板の み実施 溶接金属 引張試験※1 jis z 3111 溶接部 1 2241 継手

[報告] 30 度開先溶接施工試験 -平板溶接継手,コラムロボット溶接-

長 久 靖 典*

永 野 偉**

吉 村 忠 昭***

* 鉄骨事業本部 熊谷工場 工務課 課長

** 鉄骨事業本部 熊谷工場 品質保証課 課長

*** 鉄骨事業本部 熊谷工場 製造部 部長

J-FaB 技報 No.2 (1)

1.はじめに 2018年1月にJASS6が改定され,その中で,開先標準と

して完全溶込み溶接レ形開先の中に,開先角度30度が追

記された.

このことに先立ち,30度開先とした完全溶込み溶接継

手の施工性および機械的性能を確認するため,平板溶接

継手試験およびコラムロボット溶接試験を実施した.

2.試験概要 2.1 試験体および溶接方法

表-1に試験体概要,図-1および図-2に試験体形

状を示す.平板溶接継手試験は板厚40mm(SN490B)と板厚

50mm(TMCP325B)を組合せた.コラムロボット溶接試験は

板厚32mm(SN490C)の通しダイアフラムを中心とし,両側

からコラムで挟んだ形状とした.試験対象はA側とした.

コラムは□-550×550×32(BCP325)および□-500×

500×19(BCP325)の2種類を使用し,各々1体製作した.

対象接手の開先形状はレ形,開先角度30度である.なお,

実施工での精度誤差に配慮し,ルートギャップは施工条

件の不利な5mmとした.

表-1 試験体概要

種別 試験体

溶接材料 鋼材 数量

平板 PL-40+PL-50

(SN490B+TMCP325B) 1

YGW18

(YM-55C,1.2φ)

コラム

□-550×550×32

(BCP325)

ダイアフラム32mm(SN490C)

1

YGW18

(MG-56R(N),

1.2φ)

□-500×500×19

(BCP325)

ダイアフラム32mm(SN490C)

1

YGW18

(MG-56R(N),

1.2φ)

表-2に溶接条件を示す.溶接は炭酸ガスシールドア

ーク溶接とし,下向き姿勢で実施した.溶接入熱量・パ

ス間温度は平板溶接継手試験体は40kJ/cm・350℃以下,

コラム試験体は30kJ/cm・250℃以下で管理した.

図-1 試験体形状(平板)

図-2 試験体形状(コラム)

なお,作業性を考慮し平板溶接継手試験にはテーパー

ノズルを使用した.そのノズル形状を図-3に示す.ロ

ボット溶接では通常のノズルを使用した.

(2) J-FaB 技報 No.2

表-2 溶接条件

溶接

方法

電流

(A)

電圧

(V) 速度

(cm/min)

ガス

流量 (ℓ/min)

姿

ガスシール

ドアーク

溶接

40 260

~400

28

~42 20~60

25~

30

ガスシール

ドアーク

溶接

(ロボット)

32 230

~360

25

~40 15~55 25

19 230

~360

25

~40 15~55 25

図-3 ノズル形状(平板溶接)

2.2 機械試験概要 溶接施工性(溶接外観,溶込み量等)を確認するため,

非破壊検査(外観検査および超音波探傷検査)を行った.

また,溶接部力学性能(強度,靱性等)を確認するため,

機械試験(マクロ試験,硬さ試験,溶接金属引張試験,

継手引張試験,裏曲げ試験,シャルピー衝撃試験)を行

った.なお,硬さ試験は平板試験体のみ,裏曲げ試験は

コラム試験体のみ実施した.

表-3に機械試験の項目と数量を示す.なお,試験片

数量は試験体1体に対して示している.シャルピー衝撃

試験は,各採取位置から3本採取し,各々の結果の平均

値で評価した.各試験における合否判定基準を表-4お

よび表-5に示す.シャルピー衝撃試験片の採取位置を

図-4,溶接金属引張試験片の採取位置を図-5に示す.

表-3 機械試験内容

項目

試験片 試験方

法 備考

形状 採取位置 数

マクロ

試験 - 溶接部 1

JIS G

0553

硬さ試験 - - 1 JIS Z

2244

平板の

み実施

溶接金属

引張試験※1

JIS Z

3111 溶接部 1

JIS Z

2241

継手

引張試験

JIS Z

3121 溶接部 1

裏曲げ

試験

JIS Z

3122

初層溶接棒

継部 1

JIS Z

3122

コラムの

み実施

シャルピー

衝撃試験※1

JIS Z

2202

4号

HAZ(表)

(BOND+1mm) 3

JIS Z

2242

BOND(表) 3

DEPO(表) 3

DEPO(裏) 3

DEPO(角部) 3 コラムの

み実施

※1 ロボット溶接の試験片はA側で採取.

表-4 非破壊検査の合否判定基準

項 目 判 定 基 準

外観検査

溶接部の表面は均一で,割れ,ピット等

の有害と認められる欠陥があってはなら

ない.余盛の高さ,ビード幅等の許容差

は「JASS6 鉄骨工事 付則 6 鉄骨精度

検査基準」の管理許容差による.また,

アンダーカットの許容範囲は,告示

1464 号による.

超音波探傷検査

日本建築学会「鋼構造建築溶接部の超音

波探傷検査規準・同解説」の 7.2.1(1)

“溶接部に引張応力が作用する場合”に

従う.

表-5 機械試験の合否判定基準

項 目 判 定 基 準

マクロ試験

溶け込み,融合状態が良好で,著しく有害な

欠陥があってはならない.余盛は所定の寸

法,形状が確保されていること.

硬さ試験 最高硬さが Hv350 以下であること.

引張試験

(1)溶接金属引張試験

降伏点および引張強さが母材の規格値以上で

あること.

(2)継手引張試験

引張強さが母材の規格値以上であること.

裏曲げ試験

3mm 以下の割れの合計が 7mm 以下,0.2mm を

超えるブローホールおよび割れの合計個数が

10 個以下

衝撃試験

試験片1組(3本)のシャルピー吸収エネル

ギーの平均値が母材の規格値(試験温度 0℃,

27J)以上であること.

(a)平板溶接継手

(b)コラムロボット溶接

図-4 シャルピー衝撃試験片採取位置

日本ファブテック技報 No.272 日本ファブテック技報 No.2 73

Page 2: 30度開先溶接施工試験 · 2020. 8. 19. · jis g 0553 硬さ試験 - - 1 jis z 2244 平板の み実施 溶接金属 引張試験※1 jis z 3111 溶接部 1 2241 継手

[報告] 30 度開先溶接施工試験 -平板溶接継手,コラムロボット溶接-

長 久 靖 典*

永 野 偉**

吉 村 忠 昭***

* 鉄骨事業本部 熊谷工場 工務課 課長

** 鉄骨事業本部 熊谷工場 品質保証課 課長

*** 鉄骨事業本部 熊谷工場 製造部 部長

J-FaB 技報 No.2 (1)

1.はじめに 2018年1月にJASS6が改定され,その中で,開先標準と

して完全溶込み溶接レ形開先の中に,開先角度30度が追

記された.

このことに先立ち,30度開先とした完全溶込み溶接継

手の施工性および機械的性能を確認するため,平板溶接

継手試験およびコラムロボット溶接試験を実施した.

2.試験概要 2.1 試験体および溶接方法

表-1に試験体概要,図-1および図-2に試験体形

状を示す.平板溶接継手試験は板厚40mm(SN490B)と板厚

50mm(TMCP325B)を組合せた.コラムロボット溶接試験は

板厚32mm(SN490C)の通しダイアフラムを中心とし,両側

からコラムで挟んだ形状とした.試験対象はA側とした.

コラムは□-550×550×32(BCP325)および□-500×

500×19(BCP325)の2種類を使用し,各々1体製作した.

対象接手の開先形状はレ形,開先角度30度である.なお,

実施工での精度誤差に配慮し,ルートギャップは施工条

件の不利な5mmとした.

表-1 試験体概要

種別 試験体

溶接材料 鋼材 数量

平板 PL-40+PL-50

(SN490B+TMCP325B) 1

YGW18

(YM-55C,1.2φ)

コラム

□-550×550×32

(BCP325)

ダイアフラム32mm(SN490C)

1

YGW18

(MG-56R(N),

1.2φ)

□-500×500×19

(BCP325)

ダイアフラム32mm(SN490C)

1

YGW18

(MG-56R(N),

1.2φ)

表-2に溶接条件を示す.溶接は炭酸ガスシールドア

ーク溶接とし,下向き姿勢で実施した.溶接入熱量・パ

ス間温度は平板溶接継手試験体は40kJ/cm・350℃以下,

コラム試験体は30kJ/cm・250℃以下で管理した.

図-1 試験体形状(平板)

図-2 試験体形状(コラム)

なお,作業性を考慮し平板溶接継手試験にはテーパー

ノズルを使用した.そのノズル形状を図-3に示す.ロ

ボット溶接では通常のノズルを使用した.

(2) J-FaB 技報 No.2

表-2 溶接条件

溶接

方法

電流

(A)

電圧

(V) 速度

(cm/min)

ガス

流量 (ℓ/min)

姿

ガスシール

ドアーク

溶接

40 260

~400

28

~42 20~60

25~

30

ガスシール

ドアーク

溶接

(ロボット)

32 230

~360

25

~40 15~55 25

19 230

~360

25

~40 15~55 25

図-3 ノズル形状(平板溶接)

2.2 機械試験概要 溶接施工性(溶接外観,溶込み量等)を確認するため,

非破壊検査(外観検査および超音波探傷検査)を行った.

また,溶接部力学性能(強度,靱性等)を確認するため,

機械試験(マクロ試験,硬さ試験,溶接金属引張試験,

継手引張試験,裏曲げ試験,シャルピー衝撃試験)を行

った.なお,硬さ試験は平板試験体のみ,裏曲げ試験は

コラム試験体のみ実施した.

表-3に機械試験の項目と数量を示す.なお,試験片

数量は試験体1体に対して示している.シャルピー衝撃

試験は,各採取位置から3本採取し,各々の結果の平均

値で評価した.各試験における合否判定基準を表-4お

よび表-5に示す.シャルピー衝撃試験片の採取位置を

図-4,溶接金属引張試験片の採取位置を図-5に示す.

表-3 機械試験内容

項目

試験片 試験方

法 備考

形状 採取位置 数

マクロ

試験 - 溶接部 1

JIS G

0553

硬さ試験 - - 1 JIS Z

2244

平板の

み実施

溶接金属

引張試験※1

JIS Z

3111 溶接部 1

JIS Z

2241

継手

引張試験

JIS Z

3121 溶接部 1

裏曲げ

試験

JIS Z

3122

初層溶接棒

継部 1

JIS Z

3122

コラムの

み実施

シャルピー

衝撃試験※1

JIS Z

2202

4号

HAZ(表)

(BOND+1mm) 3

JIS Z

2242

BOND(表) 3

DEPO(表) 3

DEPO(裏) 3

DEPO(角部) 3 コラムの

み実施

※1 ロボット溶接の試験片はA側で採取.

表-4 非破壊検査の合否判定基準

項 目 判 定 基 準

外観検査

溶接部の表面は均一で,割れ,ピット等

の有害と認められる欠陥があってはなら

ない.余盛の高さ,ビード幅等の許容差

は「JASS6 鉄骨工事 付則 6 鉄骨精度

検査基準」の管理許容差による.また,

アンダーカットの許容範囲は,告示

1464 号による.

超音波探傷検査

日本建築学会「鋼構造建築溶接部の超音

波探傷検査規準・同解説」の 7.2.1(1)

“溶接部に引張応力が作用する場合”に

従う.

表-5 機械試験の合否判定基準

項 目 判 定 基 準

マクロ試験

溶け込み,融合状態が良好で,著しく有害な

欠陥があってはならない.余盛は所定の寸

法,形状が確保されていること.

硬さ試験 最高硬さが Hv350 以下であること.

引張試験

(1)溶接金属引張試験

降伏点および引張強さが母材の規格値以上で

あること.

(2)継手引張試験

引張強さが母材の規格値以上であること.

裏曲げ試験

3mm 以下の割れの合計が 7mm 以下,0.2mm を

超えるブローホールおよび割れの合計個数が

10 個以下

衝撃試験

試験片1組(3本)のシャルピー吸収エネル

ギーの平均値が母材の規格値(試験温度 0℃,

27J)以上であること.

(a)平板溶接継手

(b)コラムロボット溶接

図-4 シャルピー衝撃試験片採取位置

日本ファブテック技報 No.272 日本ファブテック技報 No.2 73

Page 3: 30度開先溶接施工試験 · 2020. 8. 19. · jis g 0553 硬さ試験 - - 1 jis z 2244 平板の み実施 溶接金属 引張試験※1 jis z 3111 溶接部 1 2241 継手

(3) J-FaB 技報 No.2

(a)平板溶接継手

(b)コラムロボット溶接

図-5 溶接金属引張試験片採取位置

3.試験結果 3.1 非破壊検査

溶接完了後,溶接ビードの外観検査および超音波探傷

検査を行った.ビード外観にはビード不整,割れ,アン

ダーカット等の欠陥は認められず,良好なビード形状を

示した.また,余盛の高さ,ビード幅についても,規定

値を満足した.超音波探傷検査においても,有害な傷は

検出されなかった.

3.2 マクロおよび硬さ試験

マクロ試験片を写真-1に示す.溶接欠陥等は認めら

れず,溶け込み,融合状態は良好であった.平板の硬さ

試験の測定位置を図-6に示す.最高硬さは表面では

HAZ部でHv212,裏面では溶接金属部でHv218であり,他

は概ねHv150~200と,各測定点でいずれも規定値内

(Hv350以下)の結果が得られた.

(a)平板溶接継手(板厚40mm+50mm)

(b)コラムロボット溶接(板厚32mm)

(c)コラムロボット溶接(板厚19mm)

写真-1 マクロ試験片

図-6 硬さ測定位置

3.3 引張試験

溶接金属引張試験の結果を表-6,破断例を写真-2

に示す.いずれも基準値を十分に満足した.

表-6 溶接金属引張試験結果

種別 板厚

(mm)

降伏点

(N/mm2)

引張強さ

(N/mm2)

平板 40 552 610

コラム 32 580 613

19 560 618

判定値 325 以上 490 以上

写真-2 溶接金属引張試験破断状況

(4) J-FaB 技報 No.2

継手引張試験の結果を表-6に,試験片を写真-3に

示す.いずれも母材で破断し,その強度も基準値を十分

に満足した.

表-6 継手引張試験結果

種別 板厚

(mm)

引張強さ

(N/mm2) 破断位置

平板 40 541 母材(t=40mm 側)

コラム 32 574 母材

19 534 母材

判定値 490 以上

(a)平板溶接継手

(b)コラムロボット溶接(板厚 32mm)

(c)コラムロボット溶接(板厚 19mm)

写真-3 継手引張試験片

3.4 裏曲げ試験

裏曲げ試験片を写真-4に示す.いずれも割れやブロ

ーホールは認められなかった.

(a)板厚 32mm (b) 板厚 19mm

写真-4 裏曲げ試験片(コラムロボット溶接)

3.5 衝撃試験

シャルピー衝撃試験の結果を図-7および図-8に示

す.いずれも基準値 27J を満たす結果が得られた.コラ

ム(板厚 32mm)の裏面溶接金属部では,平均 84J と他

と比べてやや低めの数値となっているが,他は概ね 120J

以上と良好な結果が得られた.

図-7 衝撃試験結果(平板溶接継手)

4.まとめ 本試験により,完全溶込み溶接部を30度開先とした平

板溶接継手のガスシールドアーク溶接,およびコラムロ

ボット溶接は,施工上の問題もなく,強度および靱性と

もに母材の規格値以上の性能を有していることが確認で

きた。

図-8 衝撃試験結果(コラムロボット溶接)

謝辞:本溶接施工試験の計画・実施にあたりご指導・ご

協力を頂いた清水建設㈱の関係各位に御礼申し上げます.

参考文献 1)日本建築学会:建築工事標準仕様書 JASS 6 鉄骨工事,

2018.

2)日本建築学会:鋼構造建築溶接部の超音波探傷検査規

準・同解説,2008.

BOND

吸収

エネル

ギー(J)

300

280

80

60

40

20

260

120

100

採取位置

140

160

180

200

平均27J以上判定値

種別

表面 裏面

DEPO

表面 表面

平板

HAZ

220

240

凡例:個値:平均値

判定値

表面

BOND

表面 表面 表面 裏面 表面

HAZ

表面

HAZ

裏面

DEPO DEPODEPO

角部

DEPO

角部

60

種別 コラム(板厚19mm)

BOND

コラム(板厚32mm)

40

20

採取位置表面 表面

180

160

140

120

100

80

吸収エネルギー(J)

300

280

260

240

220

200

平均27J以上

凡例:個値:平均値

日本ファブテック技報 No.274 日本ファブテック技報 No.2 75

Page 4: 30度開先溶接施工試験 · 2020. 8. 19. · jis g 0553 硬さ試験 - - 1 jis z 2244 平板の み実施 溶接金属 引張試験※1 jis z 3111 溶接部 1 2241 継手

(3) J-FaB 技報 No.2

(a)平板溶接継手

(b)コラムロボット溶接

図-5 溶接金属引張試験片採取位置

3.試験結果 3.1 非破壊検査

溶接完了後,溶接ビードの外観検査および超音波探傷

検査を行った.ビード外観にはビード不整,割れ,アン

ダーカット等の欠陥は認められず,良好なビード形状を

示した.また,余盛の高さ,ビード幅についても,規定

値を満足した.超音波探傷検査においても,有害な傷は

検出されなかった.

3.2 マクロおよび硬さ試験

マクロ試験片を写真-1に示す.溶接欠陥等は認めら

れず,溶け込み,融合状態は良好であった.平板の硬さ

試験の測定位置を図-6に示す.最高硬さは表面では

HAZ部でHv212,裏面では溶接金属部でHv218であり,他

は概ねHv150~200と,各測定点でいずれも規定値内

(Hv350以下)の結果が得られた.

(a)平板溶接継手(板厚40mm+50mm)

(b)コラムロボット溶接(板厚32mm)

(c)コラムロボット溶接(板厚19mm)

写真-1 マクロ試験片

図-6 硬さ測定位置

3.3 引張試験

溶接金属引張試験の結果を表-6,破断例を写真-2

に示す.いずれも基準値を十分に満足した.

表-6 溶接金属引張試験結果

種別 板厚

(mm)

降伏点

(N/mm2)

引張強さ

(N/mm2)

平板 40 552 610

コラム 32 580 613

19 560 618

判定値 325 以上 490 以上

写真-2 溶接金属引張試験破断状況

(4) J-FaB 技報 No.2

継手引張試験の結果を表-6に,試験片を写真-3に

示す.いずれも母材で破断し,その強度も基準値を十分

に満足した.

表-6 継手引張試験結果

種別 板厚

(mm)

引張強さ

(N/mm2) 破断位置

平板 40 541 母材(t=40mm 側)

コラム 32 574 母材

19 534 母材

判定値 490 以上

(a)平板溶接継手

(b)コラムロボット溶接(板厚 32mm)

(c)コラムロボット溶接(板厚 19mm)

写真-3 継手引張試験片

3.4 裏曲げ試験

裏曲げ試験片を写真-4に示す.いずれも割れやブロ

ーホールは認められなかった.

(a)板厚 32mm (b) 板厚 19mm

写真-4 裏曲げ試験片(コラムロボット溶接)

3.5 衝撃試験

シャルピー衝撃試験の結果を図-7および図-8に示

す.いずれも基準値 27J を満たす結果が得られた.コラ

ム(板厚 32mm)の裏面溶接金属部では,平均 84J と他

と比べてやや低めの数値となっているが,他は概ね 120J

以上と良好な結果が得られた.

図-7 衝撃試験結果(平板溶接継手)

4.まとめ 本試験により,完全溶込み溶接部を30度開先とした平

板溶接継手のガスシールドアーク溶接,およびコラムロ

ボット溶接は,施工上の問題もなく,強度および靱性と

もに母材の規格値以上の性能を有していることが確認で

きた。

図-8 衝撃試験結果(コラムロボット溶接)

謝辞:本溶接施工試験の計画・実施にあたりご指導・ご

協力を頂いた清水建設㈱の関係各位に御礼申し上げます.

参考文献 1)日本建築学会:建築工事標準仕様書 JASS 6 鉄骨工事,

2018.

2)日本建築学会:鋼構造建築溶接部の超音波探傷検査規

準・同解説,2008.

BOND

吸収

エネル

ギー(J)

300

280

80

60

40

20

260

120

100

採取位置

140

160

180

200

平均27J以上判定値

種別

表面 裏面

DEPO

表面 表面

平板

HAZ

220

240

凡例:個値:平均値

判定値

表面

BOND

表面 表面 表面 裏面 表面

HAZ

表面

HAZ

裏面

DEPO DEPODEPO

角部

DEPO

角部

60

種別 コラム(板厚19mm)

BOND

コラム(板厚32mm)

40

20

採取位置表面 表面

180

160

140

120

100

80

吸収エネルギー(J)

300

280

260

240

220

200

平均27J以上

凡例:個値:平均値

日本ファブテック技報 No.274 日本ファブテック技報 No.2 75