2.極低温環境下での微粒子プラズマ - jspf.or.jp ·...

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2.1 はじめに 液体ヘリウムは,量子効果が巨視的なスケールで現れる ところから量子液体と呼ばれており,液体ヘリウム表面や 液体ヘリウム中での荷電粒子の振る舞いは特異な性質を示 すことが知られている.ヘリウムは大気圧(0.1 MPa)にお いては 4.2 K で気体から液体ヘリウム I (HeI)に液化し,2.17 K で超流動を示す液体ヘリウム! (HeII)に転移する[1‐ 3].それはヘリウム原子の質量が小さいために零点振動に よる運動エネルギー ! ! !" ! " &# $ " % % " " $ # " " $# " (1) が大きくなるためである.ここで,!はプランク定数,$ は質量,# は原子配列の周期を表している.零点振動によ る運動エネルギーは水素原子のほうが小さいが,水素分子 では1気圧下で20 Kで液体になり,14 Kで固体になるのに 対して,液体ヘリウムは,1気圧下で固化することはない. これはヘリウム原子が持つ対称性に起因しており,液体ヘ リウムは独特な性質を示すことになる.ヘリウム原子の電 気分極率は非常に小さく,# "2.27×10 -41 C・m 2 ・V -1 であ る.液体ヘリウム!の中に存在するイオンについてはこれ までに理論的にも実験的にも,その巨視的な性質がよく知 られているところである. Atkins モデルによると,超流動ヘリウムの中に注入され た荷電粒子は周辺のヘリウム原子と分極相互作用し,正イ オンは強い電場を周りに作り出し,周りの中性ヘリウム原 子に分極を引き起こす[4].それが電気ひずみを作り出し, 双極子相互作用により,正イオンの周りにヘリウム原子が 集まり雪合戦の雪玉のようなスノーボール(Snowball)と いわれる構造を形成する.一価の正イオンが作るスノー ボール半径は 0.6~0.7 nm で,質量はイオン質量に40から60 倍のヘリウム原子質量を加えたものである.一方,超流動 ヘリウムの中に電子がある場合は Atkins モデルでは記述 できない[5].ヘリウム原子は安定な量子構造を持ってお り,ボーア半径(0.529×10 -10 m)程度の距離では余分な電 子がそこに入り込む余地はない.そこで電子が超流動ヘリ ウムの中に注入された場合,電子は斥力を及ぼす1 eV程度 のポテンシャルを形成し,そこからヘリウム原子が排除さ れる状況を作り出す.こうしてバブル(bubble)といわれ る状態ができあがる.バブルのサイズは,電子の零点エネ ルギーと液体ヘリウムの表面エネルギーの和によって与え られるバブルのエネルギー ! !" $ " " " $ ' " & " ! $ $ " & " % + (2) が極値をとる半径として与えられる.ここで" & はバブル半 径, $ 'は電子質量, % + (=3.7×10 -4 N・m -1 )は単位面積あ たりの表面エネルギー.エネルギーの極小条件より ! " & " $ " % $ ' % + ! " ! ! $ #1.9 nm (3) と見積もられる.このとき最少エネルギーは ! ! )(* " % $ # % + $ ' # #0.21 eV (4) となる.このためバブルの中の電子のエネルギーは,液体 ヘリウムの表面のポテンシャル障壁約 1 eV より十分に小 さいことになる.バブルの半径がスノーボールの半径より 十分に大きいため,電子が周辺のヘリウム原子にもたらす 分極効果は比較的小さい.電子と同様に負イオンやアルカ リ土類金属などの正イオンもバブルを形成する. スノーボールやバブルの形成が現実にできているかを調 べるのに,移動度の測定が用いられている.液体ヘリウム 中での荷電粒子の移動度は非常に小さい.そして,0.6 K 小特集 極低温環境下でのプラズマ研究の新展開 2.極低温環境下での微粒子プラズマ 石原 横浜国立大学大学院工学研究院 (原稿受付:2009年6月19日) 液体ヘリウム中でのプラズマ生成,液体ヘリウム蒸気中でのプラズマ生成と,そのプラズマ中に微粒子が 入ったときの,帯電微粒子の挙動についての実験を紹介する.また超流動ヘリウム表面における帯電微粒子間に 働く力や微粒子群の組織形成について考察する. Keywords: complex plasma, dust, charging, liquid helium, Casimir effect, strongly coupled 2. Complex Plasmas in Cryogenic Environment ISHIHARA Osamu author’s e-mail: [email protected] J.PlasmaFusionRes.Vol.85,No.8(2009)511‐519 !2009 The Japan Society of Plasma Science and Nuclear Fusion Research 511

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Page 1: 2.極低温環境下での微粒子プラズマ - jspf.or.jp · 2.2液体ヘリウム中パルス放電によるプラズマ 生成[34‐41] 液体ヘリウム中でプラズマ状態を作るには大量のイオン

2.1 はじめに液体ヘリウムは,量子効果が巨視的なスケールで現れる

ところから量子液体と呼ばれており,液体ヘリウム表面や

液体ヘリウム中での荷電粒子の振る舞いは特異な性質を示

すことが知られている.ヘリウムは大気圧(0.1 MPa)にお

いては4.2 Kで気体から液体ヘリウムI(HeI)に液化し,2.17

K で超流動を示す液体ヘリウム�(HeII)に転移する[1‐3].それはヘリウム原子の質量が小さいために零点振動に

よる運動エネルギー

�����

�������

���

����(1)

が大きくなるためである.ここで,�はプランク定数,�は質量,�は原子配列の周期を表している.零点振動によ

る運動エネルギーは水素原子のほうが小さいが,水素分子

では1気圧下で20 Kで液体になり,14 Kで固体になるのに

対して,液体ヘリウムは,1気圧下で固化することはない.

これはヘリウム原子が持つ対称性に起因しており,液体ヘ

リウムは独特な性質を示すことになる.ヘリウム原子の電

気分極率は非常に小さく,��2.27×10-41 C・m2・V-1 であ

る.液体ヘリウム�の中に存在するイオンについてはこれまでに理論的にも実験的にも,その巨視的な性質がよく知

られているところである.

Atkins モデルによると,超流動ヘリウムの中に注入され

た荷電粒子は周辺のヘリウム原子と分極相互作用し,正イ

オンは強い電場を周りに作り出し,周りの中性ヘリウム原

子に分極を引き起こす[4].それが電気ひずみを作り出し,

双極子相互作用により,正イオンの周りにヘリウム原子が

集まり雪合戦の雪玉のようなスノーボール(Snowball)と

いわれる構造を形成する.一価の正イオンが作るスノー

ボール半径は0.6~0.7 nmで,質量はイオン質量に40から60

倍のヘリウム原子質量を加えたものである.一方,超流動

ヘリウムの中に電子がある場合はAtkins モデルでは記述

できない[5].ヘリウム原子は安定な量子構造を持ってお

り,ボーア半径(0.529×10-10 m)程度の距離では余分な電

子がそこに入り込む余地はない.そこで電子が超流動ヘリ

ウムの中に注入された場合,電子は斥力を及ぼす1 eV程度

のポテンシャルを形成し,そこからヘリウム原子が排除さ

れる状況を作り出す.こうしてバブル(bubble)といわれ

る状態ができあがる.バブルのサイズは,電子の零点エネ

ルギーと液体ヘリウムの表面エネルギーの和によって与え

られるバブルのエネルギー

����� �

�����

��������� (2)

が極値をとる半径として与えられる.ここで��はバブル半

径,��は電子質量,��(=3.7×10-4 N・m-1)は単位面積あ

たりの表面エネルギー.エネルギーの極小条件より

����

��

������ �����1.9 nm (3)

と見積もられる.このとき最少エネルギーは

���������

��� �0.21 eV (4)

となる.このためバブルの中の電子のエネルギーは,液体

ヘリウムの表面のポテンシャル障壁約 1 eVより十分に小

さいことになる.バブルの半径がスノーボールの半径より

十分に大きいため,電子が周辺のヘリウム原子にもたらす

分極効果は比較的小さい.電子と同様に負イオンやアルカ

リ土類金属などの正イオンもバブルを形成する.

スノーボールやバブルの形成が現実にできているかを調

べるのに,移動度の測定が用いられている.液体ヘリウム

中での荷電粒子の移動度は非常に小さい.そして,0.6 K

小特集 極低温環境下でのプラズマ研究の新展開

2.極低温環境下での微粒子プラズマ

石原 修横浜国立大学大学院工学研究院

(原稿受付:2009年6月19日)

液体ヘリウム中でのプラズマ生成,液体ヘリウム蒸気中でのプラズマ生成と,そのプラズマ中に微粒子が入ったときの,帯電微粒子の挙動についての実験を紹介する.また超流動ヘリウム表面における帯電微粒子間に働く力や微粒子群の組織形成について考察する.

Keywords:complex plasma, dust, charging, liquid helium, Casimir effect, strongly coupled

2. Complex Plasmas in Cryogenic Environment

ISHIHARA Osamu author’s e-mail: [email protected]

J. Plasma Fusion Res. Vol.85, No.8 (2009)511‐519

�2009 The Japan Society of PlasmaScience and Nuclear Fusion Research

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Page 2: 2.極低温環境下での微粒子プラズマ - jspf.or.jp · 2.2液体ヘリウム中パルス放電によるプラズマ 生成[34‐41] 液体ヘリウム中でプラズマ状態を作るには大量のイオン

以下ではスノーボールとバブルの移動度はフォノンとの衝

突により支配され,0.8 K以上になるとスノーボール-ロト

ン相互作用,バブル-ロトン相互作用が移動度に効いてく

る[6,7].ここでフォノンとロトンは超流動ヘリウムの分

散関係����で現れる準粒子で,フォノンは長波長領域に

属し,ロトンは短波長領域で����が極小値を示す領域に

属する.Schwarz は 0.37 Kという極低温において飽和蒸気

圧下でイオンの移動度を測定し,液体ヘリウム中でのイオ

ン移動度は低圧気体放電中の移動度に近くなることを見出

している[8].0.3 K,24気圧下においてはロトンの発生も

なくイオンは摩擦なしで移動することができるようにな

る.Bauer 達はアルカリ土類金属イオンを液体ヘリウム中

に入れて,レーザー誘起蛍光法により不純物イオンについ

て調べている[9].またレーザーアブレーション技術が開発さ

れ,アルカリ金属イオンを液体ヘリウム中に溶融して,レー

ザー誘起蛍光が使われるようになっている[10].一方,

Shikinは液体ヘリウム�におけるイオンの状態について理論的な考察を加えている[11].これまでの実験ではイオン

は主に放射性イオン源または冷陰極(電界放出陰極)に 10

A以下の電流を流すことにより生成されている[12‐15].

液体ヘリウム表面上の電子は臨界密度に達すると不安定

になり,多電子の泡(MEBs,multielectron bubbles)を形

成することが知られている[16].多電子泡の構造について

は密度関数を使って解析がなされており[17],多電子泡の

電子は泡の表面でナノメータの薄い球殻状の表面層を形成

していることが知られている.多電子泡の半径が1ミクロ

ンで電子数は104,その半径は電子数の2/3乗に比例して増

加している.電子泡の研究は現在も活発に続けられてお

り,一つ一つの電子が作るバブルは 1.9 nmであるが,音波

による負の圧力を使うことにより,バブル半径が 10 μmにもなることが実験的に報告されている[18].

液体ヘリウム表面は理想的な平面を提供し,2次元電子

系[19‐22],1次元や0次元[23]の電子系の研究にも使わ

れてきた.負イオンや正イオンが液体ヘリウム表面下に捕

捉されるという報告もされている[24,25].液体ヘリウム

表面に形成される2次元電子系は今もなお活発な研究対象

になっている[26,27].

液体ヘリウムという媒体の中に電子やイオンが入ってく

ると,バブルやスノーボールが形成されるが,プラズマと

いう媒体の中に微粒子(ダスト)が入ってくると,微粒子

は帯電する.プラズマの系と帯電微粒子の系が相互作用し

て,複合体としての特徴をもつことが知られており,コン

プレックスプラズマと呼ばれ,1990年代後半から活発な研

究対象となっている[28‐32].表面電荷は直径 1~10 μmの微粒子に対しては電子数が 103~104 になる.こうした微

粒子は多電子泡を想起させるものであり,液体ヘリウムと

帯電微粒子の相互作用は興味深いものがある.微粒子の帯

電現象は,宇宙空間で紫外線照射の光電効果による正電

荷,プラズマ中での電子とイオンの流入量の釣り合いから

来る負電荷,またナノからサブミクロンサイズの微粒子が

シース中で観測される正電荷と,状況によって異なること

が知られている.液体ヘリウム蒸気中のような中性粒子が

多く存在して,衝突が多い中でのプラズマ中の微粒子の帯

電現象や,帯電微粒子と液体ヘリウム表面の相互作用につ

いては研究がまだ始まったばかりである[33].

第2節では液体ヘリウム中パルス放電によるプラズマ生

成,第3節では液体ヘリウムで冷やしたヘリウムガス中の

プラズマ生成,第4節では液体ヘリウム蒸気中のプラズマ

生成実験を紹介する.第5節で液体ヘリウム表面上の微粒

子の挙動について理論的な解析を行い,第6節で微粒子に

おけるカシミール効果について議論し,第7節で締めくくる.

2.2 液体ヘリウム中パルス放電によるプラズマ生成[34‐41]

液体ヘリウム中でプラズマ状態を作るには大量のイオン

を注入する必要がある.そこで1980年代半ばから90年代後

半まで新潟大学で,2重のDewar 瓶(図1)を使い液体ヘ

リウム中で,高電圧パルス放電(20 kV,50 A,1 μsec)によりイオン注入が試みられた.放電を行うタングステン針

電極の間に大きな気体泡が発生し,高密度のプラズマが形

成された.しかし,放電終了後は周辺の液体ヘリウムに冷

やされて泡はたちまちにして消滅している.イオンは液体

ヘリウム中に注入されるが,すぐに再結合により中性原子

の状態となっている.プラズマ状態として存在が確認され

たのは数秒間であった.それは低温下のイオンの再結合が

ゆっくりと起こるからである.観測ではパルス放電の後,

一秒間の残光が認められ,中心部に電離度の高いプラズマ

があり,周辺部分は弱電離プラズマが形成されたものと考

えられる.図2はプラズマ密度(電子密度��)を放電中心

からの距離の関数として表したものである.放電開始後

0.4 μ秒後には,中心で1018 cm-3あり,直径1 mmの広がりを見せるが,1.6 μ秒後にはプラズマ密度は中心でも1017 cm-3 以下になっているのがわかる.密度はシュタル

ク広がりを利用して決定されている[40].

図1 極低温装置.内側のデュワー瓶に液体ヘリウムを蓄える.二重構造の外側のデュワー瓶に液体窒素を入れて,冷却効果を高める.

Journal of Plasma and Fusion Research Vol.85, No.8 August 2009

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次に,円筒形導波管を使った実験が行われた.共振器を

液体窒素または液体ヘリウムに浸すことにより実験が行わ

れている(図3).共振器はステンレスの金網で区切られて

おり,下部に設けられた二本のタングステン針電極の間に

高電圧を加えてプラズマを発生させ,金網を越えて上部に

プラズマが広がる.典型的なパルス電圧は 24 kV,電流は

400 Aでパルス幅 6 μ秒である.共振器の中には 10 Torr(1 Torr=133 Pa)以下で気体ヘリウムを満たしておく.マ

イクロ波干渉計(2.85 GHz)測定により,金網を越えて広

がってきたプラズマ密度が測定されている.図4はプラズ

マ密度の時間発展を示している.ヘリウムガス圧の変化に

伴って,プラズマ密度が変化するのが見てとれる.室温ヘ

リウムガスの場合にはパルス電圧印加が終わった後も,プ

ラズマは数m秒持続している.液体窒素温度(77 K)では

100 m秒,また4.2 Kではプラズマの持続は1秒を超えるよ

うになる.4.2 K,1.1 Torr の圧力下では密度の低い

(106 cm-3)アフターグローが2秒にわたって観測されて

いる.これは裸眼でも見える残像現象である.この現象は

両極性拡散によって理解されるだろう.考えている系がデ

バイ長より短い時は荷電粒子 s(s=e(電子),s=i(イオ

ン))の拡散係数は

������������ (5)

で与えられる.ここで��はボルツマン定数,��は温度,

��は質量,�������������� は荷電粒子が中性粒子によっ

図2 放電開始からのプラズマ密度の空間変化.密度はプラズマ粒子と原子の相互作用の結果生じる微視的な電場によるシュタルク広がりを利用して測定される(参考文献[40]).

図3 円筒状空洞共振器.パルス電圧を針電極の間に印加する. 図4 プラズマ密度の時間発展を 300 K,77 K,4.2 Kの3つの条件下でヘリウムガス圧を変化させて測定(参考文献[39]).

Special Topic Article 2. Complex Plasma in Cryogenic Environment O. Ishihara

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て散乱されるときの衝突周波数を表している.��は中性粒

子密度,�は衝突断面積(典型的な値は温度によらず�~5

×10-19 m2).ところが,系の長さがデバイ長よりも十分

長くなると,粒子の拡散は両極性拡散によって支配される

ようになる.両極性拡散係数は

�����������������

(6)

で与えられる.ここで����������は移動度を表す.電子

移動度は負の値をとる.また両極性拡散係数は圧力�

(Torr)と中性粒子温度��を使って

���������

��� �

(7)

で表される[42].ここで��の単位は cm2s-1,圧力�の単

位はTorr,中性粒子温度��の単位はKである.気圧が低

いと(��0.5 Torr)電子と中性粒子の衝突は無視できて,

電子温度が高いまま管壁に到達するが,十分気圧が高く

なって(��0.5 Torr)中性粒子との衝突が無視できなくな

ると,電子は中性粒子との衝突により冷却されることが期

待される.また両極性拡散係数は拡散長�,拡散(減衰)時

間を�とすると,

�����

�(8)

で与えられ,実験的に �は数 cm,�は 300 Kで数ms,77

Kで 100 ms,4.2 Kで 2 s程度となり,極低温になるにつれ

て,両極性拡散係数の値が小さくなることがわかる.

2.3 極低温下ヘリウムガス中のプラズマ生成[43‐45]前節ではパルス放電によりプラズマの生成を試みた.次

に定常的な極低温環境のプラズマを生成するために,ガラ

ス管を低温液体の中に入れてガラス管の中で,RFヘリウ

ム放電を行った.YD-1(Yokohama Dewar 1)装置は図1

で示された2重のDewar瓶を使った放電装置である(図5

参照).内部のDewar 瓶は直径 10 cmあり,その中にガラ

ス管を入れて,その周りを液体窒素または液体ヘリウムで

冷却する.2重のDewar 瓶は冷却効果をあげるため,銀

メッキが施されており,観測用に1 cm幅のスリットが鉛直

方向に設けられている.スリットは側面に対しては180度

の角度で両面についており,一方から,レーザー,他方か

らCCDカメラでの観測を可能にしている(図5および図6

参照).またスリットはDewar 瓶底部にもあるため,下か

らの観測もプリズムを通して可能となっている.ガラス管

の中に挿入されたヘリウムガスの中性粒子の温度は周りの

液体によって制御される.室温実験の場合には液体を抜い

て行う.ガラス管下方部でガラス管周りに巻かれたリング

状の電極を使って,RF放電によりプラズマを定常的に生

成する.こうしてプラズマ生成部には電極がない無電極プ

ラズマが生成される.周りの液体として液体ヘリウムを

使った場合には,ガラス管内の圧力を下げることにより,

ヘリウムガスが液化しガラス管の底に液体ヘリウムがたま

り,液体ヘリウム蒸気中でも放電が成功し,プラズマ生成

を確認している.次に,生成されたプラズマ中にガラス管

上部よりアクリル樹脂の微粒子を注入する.微粒子の大き

さは直径1から 10 μmのものを使用する.微粒子はプラズマ中で負に帯電し,微粒子を含むプラズマはコンプレック

スプラズマと呼ばれている[32].プラズマ中の微粒子は

シース電場により上向きの力を受け,重力と釣り合って浮

上し,Dewar瓶の側面に観測用に設けられたスリットを通

して,赤(波長 671 nm)または緑(波長 532.8 nm)のレー

ザーを照射すると,微粒子はひとつずつが光を散乱して,

肉眼で見えるほどに点状に見えてくる.観測用スリットが

180度離れて2個所しかなく,記録用のCCDカメラと,

レーザー光の干渉を防ぐために,CCDカメラの位置をレー

ザー光線が直接入らないように,光路から外したり,ある

いはガラス管底部にプリズムを置き,CCDカメラの像はプ

リズムを通して記録される.ここではより鮮明な映像のた

め常温で撮影された微粒子の映像を示しておく(図7).

シース中の微粒子はイオン流に沿って並ぶことが知られて

おり[46,47],図8では上部から投入された3つの微粒子

がシース深く侵入し,シース電場からの力を受けて,鉛直

図5 YD-1装置.デュワー瓶の側面は放射を防ぐために銀メッキが施されており,観測用に鉛直方向に1 cm幅のスリットが設けられている.スリットを通してレーザーで微粒子を照射し,CCDカメラで観測する.

図6 YD‐1の構造を模式的に示す.デュワー瓶の中に入れるガラス管の外側に二つの電極を配置する.

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方向下向きに流れるイオン流の中を流れに逆らって上昇

し,最上部の微粒子が作るポテンシャルに捕捉される様子

を示している.微粒子の帯電量は微粒子に入り込むプラズ

マ中のイオンと電子の流束が釣り合うことによって決定さ

れる.極低温環境下での微粒子の帯電量については過去に

調べられたことがなく,我々は微粒子の帯電量を鉛直方向

の振動運動を観測することにより決定した.図9では,微

粒子の帯電数が背景温度により変化する様子を表してい

る.室温で電荷量������-1500 eに対し,温度の下降と

ともに帯電量の絶対値����が減少することが見てとれる.

2.4 液体ヘリウム蒸気中のプラズマ生成[48,49]極低温環境下でのコンプレックスプラズマの研究を行うた

めに,異なる放電方式によりプラズマを生成することをめ

ざしてYD-2装置を作った(図10).内部のDewar瓶の直径

は 16 cmと YD-1 に対して大きめで,高さは約 1 mとして

ある.そこでは液体ヘリウム蒸気中での放電を試みた.放

電ユニットは瓶の底近くで,かつ,液体ヘリウムの上部に

来るように,可動式にしてある.また上部はフランジで蓋

をしているため熱の流入を防ぐために反射板を多数取り付

けている(図11).放電はタングステン針電極間に電圧をか

けて行った.微粒子は上部から注入されて,プラズマ領域

に落下するようにした.微粒子の様子は2台のCCDカメラ

で記録し,PIV(Particle Image Velocimetry)法で解析し

た[50,51].図12は局所的に生成されたプラズマを突き抜

けて,中性ヘリウムガスの中に入る微粒子の軌跡を示した

ものである.プラズマから飛び出た微粒子は二つの平行平板

の間に加えられた電場の影響でその軌跡が鉛直方向から,

落下するにつれて水平方向に移動する.その移動方向と軌

跡を解析することにより,ダストの帯電量を決定した[49].

図9 背景温度の違いによる微粒子の帯電量変化(1)300 K(2)77K(3)4.2K.(参考文献[45]).

図7 YD-1の中のプラズマ中に浮遊する微粒子.ヘリウムガス300 K,10~100 Pa.

図8 シース中に浮遊する3つの微粒子.ガス圧は 25 Paで rfパワーは 25 W.上に位置する微粒子はガラス管底から16.8 mm(U)のところで重力とシース電場による静電力のつりあいの位置でとどまる.あとから注入された微粒子は落下して管底に近くまで到達した後,上昇し z � 16.2 mm

(M)で,また次に注入された微粒子は z � 15.2 mm(L)のところまで上昇して止まる(参考文献[43]) 図10 ステンレス箱(16 × 100 cm)に収容された YD-2.

Special Topic Article 2. Complex Plasma in Cryogenic Environment O. Ishihara

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Page 6: 2.極低温環境下での微粒子プラズマ - jspf.or.jp · 2.2液体ヘリウム中パルス放電によるプラズマ 生成[34‐41] 液体ヘリウム中でプラズマ状態を作るには大量のイオン

2.5 液体ヘリウム表面上の微粒子我々の実験では帯電微粒子を液体ヘリウム表面に持って

くることをめざしているが,現在までのところは明確に表

面に浮上していることの確認はできていない.ここでは,

帯電微粒子が液体ヘリウム表面近傍にあるときのポテン

シャルについて考えてみよう.液体ヘリウム表面を���,

�-�平面にあるとして,液体ヘリウムが���に存在して,電

荷�を持った微粒子がヘリウム蒸気中(���)で,���

にある場合を考える(図13参照).このとき電荷密度は

�������������������� (9)

とおくことができる.微粒子の電荷量����は位置の関数

である.ヘリウム蒸気の比誘電率を��(=1.0),液体ヘリウ

ムの誘電率を��(=1.057)とする.電荷を持つ微粒子が作

る電場�についての方程式は

�������(���),�������(���),�����(全領域) (10)

そして電場の各成分は���で境界条件

������������������

��,

��������������

��, (11)

��������������

��

を満たさなければならない.�����の条件により

����� (12)

とおける.いま円筒座標������を考える.���の領域に

おける任意の点 P(�����,���)におけるポテンシャ

ルは,鏡像電荷�(�����,����)を考え,全空間が

��で満たされていると考えることにより

��������

�����

��

�� � (13)

で与えられる.ここで�� ��������� ,�� ������

��で,このポテンシャルは電荷�の位置で特異点を持ち,そ

れ以外では����������となる.���の領域における任

意の点におけるポテンシャルは,電荷������������

を考え,全空間が��で満たされていると考えることにより

��������

������

�(14)

で与えられる.これは特異点を持たず����������を満

たすことが確認できる.電荷�,�の値は境界条件から

������������

�,�� �������

� (15)

と決定できる.境界面の表面電荷は

�������������������

���

���������

��������(16)

図12 水平方向(x方向)に印加した電場により軌道を変える微粒子.微粒子は局所的なプラズマの中で帯電し,重力によりプラズマを飛び出し,飛び出した微粒子は二つの電極の間に入っていく.電極間隔は 40 mm.軌道変化から微粒子の帯電量を読み取る(参考文献[49]).

図13 超流動ヘリウム‐蒸気境界面近傍での微粒子Qと鏡像電荷Q´.図11 YD-2の内部構造.

Journal of Plasma and Fusion Research Vol.85, No.8 August 2009

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で与えられる.微粒子の位置におけるポテンシャルは

��������

������

��

���

������

����������

��(17)

で与えられるために,微粒子と鏡像電荷の間に働く引力の

大きさは

����

������

���

������

������

����������

��

�����

(18)

となる.ここで注意しておくことは微粒子と鏡像電荷の間

に働く力が,斥力になるか引力になるかは,微粒子の電荷

の正負にかかわらず,誘電率の違いによることである.微

粒子が誘電率の低い方にあれば引力となり,高い誘電率の

中にあれば斥力となる.したがって,微粒子がヘリウム蒸

気中にあれば,ヘリウム界面に向かう引力が働くことにな

る.微粒子の鏡像ポテンシャルエネルギーは,(18)式を�

で積分することにより求められ,符号を考慮すると

���

������

���

���

������

����������

��

��(19)

と書くことができる.これは(17)式を使って書くと,

���

�������� (20)

となり,鏡像ポテンシャルエネルギーは,�,��という二

つの実電荷が��離れて存在する系のポテンシャルエネル

ギーの半分となる.これは鏡像を無限遠から持ってくるの

に仕事はいらないことによっている.引力の効果とともに

重力が微粒子に働いて,微粒子は界面に向かうことにな

る.そこで外部から図13で示されるように電場をかけるこ

とによって,負に帯電した微粒子の釣り合う位置を制御す

ることができるであろう.

(19)式では�が0に近づくとき,発散することになる.こ

れは液体ヘリウムとヘリウム蒸気の界面で誘電率が不連続

に変わると仮定したために起こる現象である.現実には原

子数個分の厚さで,誘電率は滑らかに変化している.図14

はヘリウム蒸気(���)から,液体へリウム(���)の界

面近傍1.6 nmでの,誘電率変化を示している[52,53].ここ

で,理論的には誘電率を

�������������������

�����������,�������������,��������

と近似するのが適当であろう.さらに Stern[52]は���,

�����近傍でスムーズな関数を使っている.図15ではこ

うしたモデルで���0.68 nmとして,鏡像ポテンシャルエ

ネルギーを示している.

ここで帯電量����,半径の球状微粒子が液体ヘリ

ウム表面に沈み込むことなく浮かんでいるような場合に

は,鏡像電荷との間に働く引力は����(ヘリウム蒸気),

�����(液体ヘリウム)とおくと

���

����

��������

��

��

����

(21)

で与えられる.数値的には

��������

��

��. (22)

として,典型的な実験室条件を考えてみる.半径�1 μm,密度��1 g・cm-3,表面ポテンシャル��-1 Vの微粒子

鏡像がもたらす力は��10-12 Nとなる.これに対し重力は

��10-14 N で,鏡像による力が非常に大きいことがわか

る.もし微粒子が液体ヘリウム中に入っていく場合を考え

ると,浮力が発生し,液体ヘリウムの密度が��0.125 g・cm-3

であることを考えると,��10-16 Nと見積もることができ

る.ちなみに微粒子が液体ヘリウム表面にへこみを作り,

超流動液体が微粒子表面を覆う効果を無視して,液体ヘリ

ウムから受ける張力を考えると,液体ヘリウムの張力が

�3.44×10-4 N・m-1であるので,張力から受ける力は

10-9 N となる.実験条件下では,超流動により微粒子表面

がおおわれるために張力の効果についてはさらに考察が必

要となるであろう.液体表面近傍で微粒子に働く力につい

ては,今後も詳細な検討が必要になってくるだろう[54].

2.6 微粒子におけるカシミール効果極低温環境下で,期待できる効果として量子力学におけ

る零点エネルギーの問題がある.周波数を持つ調和振動

子の零点エネルギーは不確定性原理の結果として出てくる

もので,基底状態においても

���

�� (23)

で与えられるエネルギーを持つ.この零点エネルギーが真

空中におかれた二つの金属板の間に引力をもたらし,カシ

ミール力と呼ばれている[55,56].いま二つの微粒子がプ

ラズマ振動で代表されるようなプラズマの揺らぎの下に置

かれた時に,二つの微粒子の間に働く量子力学的な力を考

図14 二つの誘電体(�1 = 1,�2 = 1.057)の間の誘電率の空間変化.理論曲線は緩やかな遷移モデルに基づくものでzt = 0.68 nmを仮定(参考文献[52]).

Special Topic Article 2. Complex Plasma in Cryogenic Environment O. Ishihara

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えてみよう.プラズマのゆらぎに伴う静電エネルギーは

����

�������

� �������� (24)

で与えられる.ここで,�����0,1,2,3,…はプラズマ準粒

子であるプラズモンの粒子数で,����������������������������������は波のエネルギーの符号を表し,周波数

����は���������の解として与えられる.ここで

�������は誘電応答関数の実部を表している.今,十分大

きな体積�を持つ系を考えると,波数ベクトルの和は

���������� ���

����� (25)

で与えられるため,零点エネルギーとしての静電エネルギーは

����� �������

���������� (26)

となる.二つの微粒子が存在すれば,この零点静電エネル

ギーに変化をもたらすことが考えられる.Niels Bohr の学

生だったCasimir は1948年に零点電磁エネルギーが二つの

金属板の存在により,変化することを示し,その結果二つ

の金属板の間に引力が働くことを見出した[55‐57].二つ

の微粒子の間に働く力はプラズマの静電ゆらぎによることが期待

される[58].半径�の導体球状微粒子が中心間距離�離れて

プラズマ中に存在するとき,微粒子間の最小距離は

�����で与えられる.二つの球状微粒子の作る周辺の等電

位面は双曲座標�����を使うと,�constant に対して,

���� ���������� ���

�で表され,電気力線は�

constantに対して������� ������ ���であらわさ

れる.ここで,二つの微粒子を 軸に置き,微粒子間の中心を

原点に取ると,������������,���� ���������

���, ���� �� ����������, ��� ���

��������となる.�は原点から,電気力線を微粒子

の中にまで延ばしたときに z軸と交わる点までの距離であ

る.微粒子表面が等電位面になっていることから,

��������,���� ��������� .という制約がある.零

点エネルギーに伴うプラズマの揺らぎは二つの微粒子の存

在により局在化すると考えられる.�-�方向にはモードは

2つの自由度を持つが, 軸に沿ってはモードは離散的な

値しか許されないだろう.したがって,零点エネルギーは

微粒子の存在によって,変化が起こることになる.このエ

ネルギーの変化が二つの微粒子の間に引力をもたらすこと

が考えられ

��

���� ��� (27)

と見積もることができる.ここで��はプラズマ周波数を表

している.カシミール効果による引力は,プラズマ中に置

かれた帯電微粒子が運動エネルギーを失い,零点エネル

ギーに伴うプラズマの揺らぎのみを感じるとき,測定可能

となるだろう.

2.7 おわりにコンプレックスプラズマの研究は1990年代後半から爆発

的な広がりを見せている[32].その理由は,プラズマ中の

1ミクロン程度の微粒子が波長 0.5~0.7 ミクロンを持つ

レーザー光を散乱し,個々の微粒子が肉眼で見えること.

また微粒子が大きな電荷を持ち,プラズマによって閉じ込

められるために,微粒子クラスターが強結合としての性格

を持ち,クーロン結晶を作ることが見出されたことがあげ

られるであろう.研究対象になっている微粒子の大きさは

サブミクロンから,数十ミクロンにも及び,微粒子の生成,

成長過程はプロセスプラズマ中だけでなく,惑星形成や,

星の形成とも結びついて議論されている.微粒子群は比較

的制御がしやすく,状態方程式の研究にも使われている.

また細菌などの微生物を微粒子と見て,医療応用の研究も

盛んである.一方,液体ヘリウムを使った極低温環境下に

おけるコンプレックスプラズマの研究はまだ始まったばか

りである[33].液体ヘリウム表面や,液体ヘリウム中にお

ける,電子やイオンの振る舞いは,物理現象としてこれま

で興味の対象になってきたが,プラズマ中で帯電した微粒

子と液体ヘリウムとの相互作用の物理については,今後の

展開が待たれるところであろう.

謝 辞実験は,横浜国立大学大学院のコンプレックスプラズマ

研究室の真銅雅子特別研究教員はじめ,多くの大学院生等

(小島力,久保田潤平,田島祐輝,魚谷夏子,久々江実生,

前澤孝彰,福田雄介,三田克敏,品川裕貴,細井信宏等)の

協力によりなされたものである.YD‐1装置に使われるデ

ユワー瓶は南一男先生の新潟大学退職にあたり,新潟大学

より移設したものである.また,中村良治先生,南一男先

生からは実験遂行にあたり,貴重なアドバイスをいただい

た.本研究はAOARD(AsianOffice ofAerospaceResearch

図15 液体ヘリウムと蒸気界面近傍での緩やかな誘電率変化を考慮したポテンシャル分布(参考文献[52]).

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and Development)および JSPS(Japan Society for the Pro-

motion of Sciences)Grant-in-Aid for Scientific Research

からの研究支援を得て行われており,ここに記して謝意を

表したい.

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