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官民 ITS 構想・ロードマップ 2019 官民 ITS 構想・ロードマップ 2019 2019 6 7 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・ 官民データ活用推進戦略会議

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官民 ITS 構想・ロードマップ 2019

官民 ITS 構想・ロードマップ 2019

2019 年 6 月 7 日

高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・

官民データ活用推進戦略会議

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官民 ITS 構想・ロードマップ 2019

目次

1 はじめに ........................................................ 1

(1) はじめに ...................................................... 1

(2) 道路交通を巡る社会的な課題 .................................... 3

(3) 自動運転・モビリティサービスの将来像 .......................... 3

① 課題解決に向けたアプローチ .................................. 3

② 自動運転により実現する社会像 ................................ 4

③ MaaS等の新たなモビリティサービスにより実現する社会像 ........ 6

④ 自動運転×MaaSにより実現する社会像 .......................... 8

2 自動運転 ....................................................... 11

(1) 自動運転システム等の定義 ..................................... 11

(2) 自動運転に係る戦略 ........................................... 15

① 自動運転による社会的インパクト ............................. 15

② 社会的・産業的目標 ......................................... 16

③ 基本戦略 ................................................... 18

(3) 市場化に向けた取組 ........................................... 24

① 環境整備に向けた取組(自動運転に係る制度整備大綱) ......... 24

② 自家用車の取組 ............................................. 37

③ 物流サービスの取組 ......................................... 42

④ 移動サービスの取組 ......................................... 46

⑤ 社会的受容性の確保と社会全体での連携体制整備 ............... 51

⑥ 実証実験 ................................................... 55

(4) 国際基準・国際標準の推進 ..................................... 61

3 MaaS等の新たなモビリティサービス ............................... 65

(1) 海外における新たなモビリティサービスの取組 ................... 65

① 新たなモビリティサービスの普及・拡大 ....................... 65

② 国、都市レベルでの課題解決に向けた MaaSの取組 .............. 67

(2) 日本における新たなモビリティサービスの取組 ................... 69

(3) 課題と取組の方向性 ........................................... 72

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① データ連携・利活用拡大のための基盤整備 ..................... 72

② 非モビリティサービスとの連携促進 ........................... 75

③ 制度面での課題 ............................................. 76

④ 新たな取組に挑戦する地域の後押し ........................... 77

4 共通基盤 ....................................................... 81

(1) 基盤技術・関連技術の進化の方向 ............................... 81

(2) 研究開発・実証の推進 ......................................... 88

(3) 基盤技術・関連技術開発の取組 ................................. 90

① 自動運転基盤構築への取組 ................................... 90

② 交通関連データ・自動車関連データの整備・利活用 ............. 95

③ プライバシー・セキュリティへの対応 ........................ 106

5 今後の進め方・体制 ............................................ 109

6 ロードマップ .................................................. 109

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官民 ITS 構想・ロードマップ 2019

1

1 はじめに

(1) はじめに

ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)とは、道路交通の安

全性、輸送効率、快適性の向上等を目的に、最先端の情報通信技術等を用いて、人

と道路と車両とを一体のシステムとして構築する新しい道路交通システムの総称であ

り、これまで道路交通の安全性や利便性の向上に貢献してきた。

ITSを巡っては、近年、情報通信技術(IT)の発展とデータ利活用の進展を背景に、

特に自動運転システムに関し、大きなイノベーションの中にある。特に「世界最先端 IT

国家創造宣言」(以下、「創造宣言」という。)が策定された 2013 年 6 月以降、国内外

の多くのメーカーが自動運転システムのデモや公道実証を行うとともに、世界各国に

おいても自動運転に係る政策が発表されるなど、世界的に実用化・普及に向けた競

争時代に突入している。このような中、政府においては 2014 年度から 2018 年度ま

で総合科学技術・イノベーション会議戦略的イノベーション創造プログラム(Cross-

ministerial Strategic Innovation Promotion Program。以下、「SIP」という)「自動走

行システム」の下で官民連携による研究開発推進に係る取組が進められてきた。

2018 年からは新たに開始された SIP 第 2 期 1「自動運転(システムとサービスの拡

張)」の下で、研究開発、実証実験等に取り組んでいるところである。

我が国は、これまで、世界で最も高い技術レベルであり最大の輸出産業である自

動車業界を有するとともに、国による ITS 関連のインフラについても、世界最先端レ

ベルを維持してきたといえる。しかしながら、このように ITS を巡る大きなイノベーショ

ンが世界中で進展する中、これまでの相対的な優位性を継続することは容易ではな

い。

このような中、日本として大きなイノベーションの流れに対して、社会全体として適

応し、今後とも引き続き、世界最先端の ITS を維持・構築し、世界一の道路交通社会

1 「新しい経済政策パッケージ」(2017 年 12 月閣議決定)にて、2019 年度開始予定であ

った次の SIP を前倒しで開始すること等が決定。その後、3 月 29 日の CSTI 本会議(総合

科学技術・イノベーション会議)にて、自動運転を含む 12 件の課題を正式決定。

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によるメリットを国民が享受するための戦略を官民が一体となって策定し、それを実

行することにより、

「世界一の ITS を構築・維持し、日本・世界に貢献する」

ことを目標に、2014 年 6 月以降、「官民 ITS 構想・ロードマップ」を五度にわたって策

定、改定してきたところであり、今後ともこの目標を維持する。

これまで、官民 ITS 構想・ロードマップ策定等により、ITS に関連する多くの府省庁

や民間企業等において、今後の方向性等の共有がなされ、関係府省庁間の具体的

な連携が進展するとともに、民間企業においても、互いに競争する一方で、協調に向

けた取組が動き始めてきている。特に、限定地域における無人自動運転移動サービ

スの公道実証を可能とする制度が整備され、全国各地で実証プロジェクトが動きつつ

あるとともに、2017 年度に開始し、2018 年末まで実施された SIP 自動走行システム

の高速道路等での自動運転に係る大規模実証の成果を踏まえ、民間企業の協調に

より、その基盤となるダイナミックマップのうち、静的情報となる高精度3次元地図の

整備に係る会社も創設された。2018 年には、自動運転の実用化を一般道まで拡張

するとともに、自動運転技術を活用した物流・移動サービスを事業化することを目的と

した SIP 第 2 期自動運転(システムとサービスの拡張)を開始した。

一方、自動運転システムを含む ITS(以下、自動運転を含むことを明記するため、

「ITS・自動運転」という。)を巡る技術・産業は、引き続き急速に進展し続けている。特

に、IoT(Internet of Things)の進展等に伴い、データの流通構造が変化するとともに、

そのデータを基盤として活用する人工知能(AI:Artificial Intelligence)が、自動運転

システムの認識・判断技術の開発において重要になりつつある。また、国内外の自動

車企業や IT 企業などの新興企業が、高度な自動運転の市場化に向けた取組を発表

するなど開発競争は益々激化しつつあり、そのような中、一部の国・地域においては、

高度な自動運転に係る市場化等を見据えた制度整備の検討が開始されつつある。

「官民 ITS 構想・ロードマップ 2019」(以下、「本構想・ロードマップ」という)は、この

ような状況を踏まえ、2018年 12月以降、IT 総合戦略本部新戦略推進専門調査会道

路交通ワーキンググループにおいて、SIP 自動走行システム推進委員会との合同会

議を含めて、ITS・自動運転を巡る最近の情勢変化等を踏まえて、「官民 ITS 構想・ロ

ードマップ 2018」を改定する形で策定されたものである。

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(2) 道路交通を巡る社会的な課題

現在、我が国は、少子高齢化や都市部への人口集中をはじめとした社会構造の変

化を背景に、道路交通を巡る様々な社会的な課題の深刻化が懸念される状況にある。

例えば、既に世界トップ水準にある高齢化率の更なる上昇が予想される中、高齢

者が関わる交通事故の割合はさらに増加することが見込まれる。また、特に高齢化

が進むことが予想される地方部においては、人口減少・過疎化が進むことで、公共交

通への需要縮小や、それによる地方交通事業者ならびに地方公共団体の財政逼迫、

更には運転者不足といった複合的な要因があいまって、地域公共交通ネットワーク

の維持が一層困難となり、交通空白地帯が拡大する恐れがある。それに伴い、運転

免許証返納後の高齢者をはじめとした移動弱者の移動手段確保が一層深刻な課題

として顕在化する恐れがある。

他方、三大都市圏を中心とした都市部において、経済活動や人口の更なる集中化

やインバウンド需要の増加を背景とした交通渋滞・混雑が発生すれば、経済損失や、

地球温暖化等の環境問題をもたらす要因となりうる。

また、物流分野においてはトラック運転者不足の問題が既に顕在化する中、今後

の e コマースの更なる拡大等に伴って物流需要の増大が見込まれており、加えて中

高年層運転者に依存している現状において、物流の担い手不足への対応は喫緊の

課題と考えられる。

(3) 自動運転・モビリティサービスの将来像

① 課題解決に向けたアプローチ 前述の課題解決の鍵を握るのは、新たなテクノロジーの活用である。AI・IoT 等の

活用を通じて人流・物流を含むモビリティサービスを高度化するとともに、将来的には

自動運転技術を融合することで、我が国の道路交通分野が直面する課題の解決が

本格的に進展することが期待される。そのためには、新たなモビリティサービスの活

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性化と自動運転の社会実装を別個の取組とみなすのではなく、課題解決に向けた両

輪と捉え、官民が一体となって検討を進めていくことが重要である。

② 自動運転により実現する社会像 急速に技術開発が進展している自動運転技術は、人間による運転と比べより安全

で円滑な運転を可能とすることが期待され、将来的には、我が国で生じている道路交

通に関する様々な課題を解決することが期待されている。

例えば、運転操作や安全確認を補助したり、さらには自動運転移動サービスを提

供する自動運転車の実用化が進むことで、高齢者に関わる交通事故を削減したり、

また高齢になっても安全に運転を続けやすい状況を生み出すなど、高齢者にとって

安全安心で快適な移動を実現することが期待できる。

また、高齢化が進む地方、中山間地域や高度成長期に整備され老朽化した大規

模住宅団地(オールドニュータウン)など、高齢化が進み人口が減少している地域等

では、自動運転車による新しい移動サービスが誕生することで移動手段を確保する

ことが期待できる。

さらに、物流サービス等における自動運転車の実現により、運転者の負担を軽減

したり、必要な運転者の数を減らしたりすることなどで、運転者不足の課題を解決す

ることが期待できる。

このように、自動運転技術によって、我が国が抱える道路交通に関する多くの課題

解決が期待される。加えて、自動運転車の実用化が進むことで、以下のようなことが

期待される。

i. 交通事故の削減や渋滞緩和等による、より安全かつ円滑な道路交通社会

の実現

安全で安心な移動ができること、さらにその移動が、円滑で快適なもので

あることを、多くの人々が望み続けている。交通事故の多くが運転者のミス

に起因していることを踏まえれば、自動運転車が普及することで、将来的に

は交通事故件数が大きく削減されることが期待できる。また高速道路での

交通渋滞は、上り坂などの地点において車の速度が自然に低下し、車間が

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詰まることで後続の車両がブレーキを踏むなどにより円滑な交通の流れを

作れなくなったことにより引き起こされることが多い。しかし自動運転車が普

及し、さらに車両同士が通信を行う車車間通信やインフラ・車が通信を行う

路車間通信等により、急激な速度変化のない円滑な交通流を生み出すこと

で、将来的には交通渋滞を緩和することが期待される。渋滞を緩和し、円滑

な交通を生み出すことは、運転者にとって快適な運転環境をもたらすだけで

なく、急増している物流を担うトラック等にとっても、迅速で時間に正確な輸

送を可能とする交通環境をもたらすことができる。これにより、物流の効率

化が期待されるとともに、例えば生鮮食料品等の輸送時間が品質に大きく

影響する商品の輸送にも、好影響を与えることが期待できる。

ii. きめ細かな移動サービスを提供する、新たなモビリティサービス産業の創出

自動運転車を活用することによって様々な新しいきめ細かなサービスが

普及することが期待できる。例えば、自動運転車に周辺の観光情報等を取

り込むことで、新しい観光用移動サービスを提供したり、運転免許を受けて

いない子供の送り迎えを自動運転車に任せることで保護者の負担を軽減し

たり、買い物等で駐車場を探さなくても、お店で車を降りる際にあらかじめ迎

えの時間を決めておくことで、買い物終了後に自動運転車が迎えにくるよう

なサービス等の普及や、自動運転車を活用した新しいサービスを創出し、

我々の生活における移動時間の使い方や生活スタイルを大きく変革するこ

とが期待できる。さらに、このようなサービスを提供する新しい産業は、未来

の新しい生活を作る成長産業として発展していくことが期待できる。

iii. 自動運転車による日本の地方再生

日本経済の発展において、地方の活性化は不可欠であるが、実際には、

人口の減少や産業の低迷等多くの課題を抱えている。しかし、例えば自動

運転車を使った巡回バスや、呼び出し型の自動運転タクシーのように、自動

運転車を使った新しい移動サービスが地方における生活や物流の新しい足

となることで、地方の人々の暮らしの基盤を支えていくことが考えられる。こ

れにより、地方に暮らす人々の生活の質が向上し、生活に活力や余力が生

まれれば、おのずと地方に活気が生まれ、さらに各地方が持つ自然や人々、

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特産品など、それぞれが持つ素晴らしさを活かした様々な新しい産業を生み

出す環境が生まれることも期待される。これがひいては地方の活性化を生

み出すなど、自動運転車が地方を再生させる起爆剤の役割を担っていくの

ではないかと考えられる。

iv. 世界的な自動運転車の開発競争に勝ち、日本の自動車関連産業が、引き

続き世界一を維持

我が国の自動車産業は、世界でもトップレベルの競争力を維持する我が

国を代表する産業である。また、自動車産業は裾野が広く、多くの関連産業

の核となる存在として、大きな売り上げや雇用を持ち、日本経済を牽引して

いる。現在、世界の自動車メーカー間では、いかに早く自動運転車の市場

化を実現するかが競争の主戦場になっており、その技術開発競争は年々

激化している。さらに、近年では、スタートアップ・IT 関連企業等、従来は自

動車と関わりのない企業も、自動運転の開発に積極的に参入してきている。

このような中、我が国の自動車産業及びスタートアップ・IT 関連企業等が海

外自動車メーカーとの自動運転車の開発競争に打ち勝ち、世界に先んじて

実用化を進めていくことで、日本の自動車関連産業が引き続き世界一の産

業としての地位を不動のものとしていくことは、我が国の今後の経済成長に

おいても不可欠である。

以上のように、自動運転車は、これからの日本における全ての人々にとって、新し

い生活の足や新しい移動・物流手段を生み出す「移動革命」を起こし、多くの社会課

題を解決して我々に「豊かな暮らし」をもたらすものとして、大きな期待が寄せられて

いる。

③ MaaS 等の新たなモビリティサービスにより実現する社会像 AI・IoT を活用したモビリティサービスや MaaS においては、我が国が直面する道

路交通に関する様々な課題解決への貢献が期待されている。特に、地方部で顕著な

高齢化や公共交通サービスの減便・廃線等を背景に引き起こされる移動弱者問題の

解決や、都市部で深刻な渋滞等に対する移動効率化の実現に寄与するものと考えら

れる。

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なお、本構想・ロードマップにおいて、MaaS(Mobility as a Service)とは、「出発地

から目的地まで、利用者にとっての最適経路を提示するとともに、複数の交通手段や

その他のサービスを含め、一括して提供するサービス」と定義する。また、新たなモビ

リティサービスとは、MaaS を含め、AI や IoT を活用したカーシェアやデマンド交通等

の新しい輸送サービスを総称したものとする。

i. 移動弱者問題

移動弱者問題の深刻化に対して、新たなモビリティサービスは地域によら

ず全国民が不自由なく移動できる社会を実現するための手段として寄与す

る。例えば、移動の足を持たない地方の高齢者は、交通機関へのアクセシ

ビリティに困難を抱えているケースが多いため、柔軟にルートやスケジュー

ルを選択できるドアツードアのデマンド型交通サービスや、公共交通と自宅

を結ぶラストマイル移動を担う移動体としてパーソナルモビリティ等は効果

的に機能する可能性がある。また、地域住民の生活に必要な交通の確保が

バス・タクシー事業者によることが困難な場合には、地域の関係者の合意に

より、道路運送法による登録を受け、市町村や NPO 法人等が輸送の安全

に関する措置等を講じ、自家用車を用いて有償で運送できるようにすること

により、地域交通を確保する制度の整備等が進められている。このような社

会の実現は、モビリティの枠を超えて、移動弱者の移動の活発化や経済活

動活発化、まちの賑わいの創出による地方活性化等の副次的な効果をもた

らす可能性を有しており、新たなモビリティサービスが重要な役割を担ってい

る。

ii. 物流問題への対応 物流サービス等における運転者不足の問題に加えて、特に過疎地域等

においては、人口減少による輸送需要が減少しており、物流サービスの持

続可能性の維持が深刻な課題となっている。 荷主と運転者をマッチングす

るサービス(物流 P2P マッチングサービス)や人とモノの混載サービスの普

及が、輸送効率向上に寄与し、深刻な運転者不足の解消や過疎・輸送困難

地域への配送の維持確保につながる等、物流業界にとっての助けとなるこ

とが期待される。

iii. 移動効率化

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都市部での深刻な渋滞は、生産性の低下に伴う経済損失や環境問題等

の様々な問題を引き起こしている。このような状況に対して、同方向に向か

う乗客同士をマッチングして輸送する相乗りをはじめとした新たなモビリティ

サービスやパーソナルモビリティの活用は、道路利用や輸送の効率性を高

める手段として有効である。さらに、複数の交通手段を統合・連携する

MaaS の実現は、交通モードごとに分断された交通の不便さや非効率性を

解消することで自動車の過度な利用を抑制するとともに、交通流全体の最

適化に貢献する。すなわち、将来的には、相乗り等の個別モビリティサービ

スの高度化と、MaaS による複数の移動手段を跨ぐ交通流の最適化、さらに

は人の移動だけでなく物流に関する地域全体の最適化が相乗的に効果を

発揮し、人や物の移動など全ての移動における、ニーズに応じた地域全体

の最適化が実現される。

iv. 新たに興る産業領域における競争力確保

MaaS 等の新たなモビリティサービスは、グローバルに今後一層普及・進

展していくことが想定される。加えて、業種横断でのデータ連携を通じ、モビ

リティと周辺の非モビリティ領域との融合による新たなサービスの実現や、ス

マートシティの発展にも繋がっていくことが期待される。新たなモビリティサー

ビスの産業領域としての重要性はますます高まり、その担い手の競争力を

確保・強化するためのスタートアップ支援等の事業環境整備が重要となって

くる。また、自動運転技術が発展し、モビリティサービスとの融合が進めば、

我が国の基幹産業たる自動車産業の在り方にも多大な影響を及ぼしうるこ

とから、今後の継続的な経済発展の観点からも、当該領域に対する官民一

体となった取組は極めて重要である。

④ 自動運転×MaaS により実現する社会像 将来的に自動運転の社会実装が実現すれば、モビリティの在り方は大きく変容す

る。具体的には、自動運転車による人や物の移動がサービスとして提供されることで、

誰しもが安全で便利、低コストで自由に移動可能であると同時に、MaaS のサービス

体系の下で人や物の移動など全ての移動に関して地域全体の交通流が最適化され

る究極のモビリティ社会の実現が期待される。その際、カーシェアリングやタクシー、

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バス、トラック、さらにはオーナーカー等も含む自動車を用いたモビリティ同士の垣根

は曖昧化し、交通業界の産業構造にも大きな影響を与えることが考えられる。

ただし、自動運転の技術的成熟や社会的受容性の醸成に要すると想定されるリー

ドタイムに鑑みると、このような究極の社会像の到来は長期的将来になることに留意

が必要である。とりわけオーナーカーにおいては利用用途が多様かつ地理的な移動

範囲に制限がないことから、完全自動運転の実装には相応の時間を要することが想

定される。他方、バスや物流等のサービスカーは用途や利用範囲が限定的なため、

オーナーカーに比して、自動運転の実装は早期に実現される可能性が高い。このた

め、我が国においていち早く自動運転×MaaS の社会実装を進めるためには、自動

運転の導入を必ずしも前提としない新たなモビリティサービスや MaaS の導入・実装

を着々と行いつつ、技術の成熟や社会的受容性の醸成に合わせてサービスカー領

域から徐々に自動運転の実装を進めることが重要である。また、サービスカー領域に

おいて自動運転×MaaSの基盤形成、課題検証を先行して進めることが、オーナーカ

ー領域も含む、来るべき自動運転×MaaS の本格的融合時代への備えに直結すると

考えられる。

一方で、本格的な自動運転社会の到来を待つまでもなく、高齢運転者の交通事故

防止など喫緊の課題に対しては、自動運転技術を用いた高度な安全運転支援システ

ムの早期の実用化と普及によりオーナーカーの安全性の向上を図ることが重要であ

る。これら双方のアプローチを取ることで、長期にわたる我が国産業界の競争力維

持・向上に繋がるものと期待される。

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図 1:究極の自動運転社会実現へのシナリオ 2

2 SIP 第 2 期自動運転(システムとサービスの拡張)

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2 自動運転

(1) 自動運転システム等の定義

〈運転自動化レベルの定義〉

運転には、運転者が全ての運転操作を行う状態から、自動車の運転支援システム

が一部の運転操作を行う状態、運転者の関与なしに走行する状態まで、自動車の運

転への運転者の関与度合の観点から、様々な概念が存在している。

本構想・ロードマップにおいては、運転自動化レベルの定義として、SAE

International の J30163(2016 年 9 月)及びその日本語参考訳である JASO TP

180044(2018 年 2 月)の定義を採用する。したがって、詳細は同定義を参照すること

になるが、その概要は、表 1 のとおりである。

なお、本構想・ロードマップでは、レベル 3 以上の自動運転システムを「高度自動運

転システム」5、また、レベル 4、5 の自動運転システムを「完全自動運転システム」と

呼ぶ。

表 1:運転自動化レベルの定義の概要 レベル 概要 操縦※の主体

運転者が一部又は全ての動的運転タスクを実行 レベル 0 運転自動化なし

運転者が全ての動的運転タスクを実行 運転者

レベル 1 運転支援

システムが縦方向又は横方向のいずれかの車

両運動制御のサブタスクを限定領域において

実行

運転者

3 SAE International J3016 (2016) "Taxonomy and Definitions for Terms Related to Driving Automation Systems for On-Road Motor Vehicle”. 4 JASO テクニカルペーパ「自動車用運転自動化システムのレベル分類及び定義」

(2018.2.1 発行) 5 米国 NHTSA の Federal Automated Vehicle Policy(2016 年 9 月)では、レベル 3 以上を

「高度自動運転車(HAV)」と呼んでいる。 なお、J3016 では、「自動運転システム(Automated Driving System:ADS)」とは、レ

ベル 3 以上のものを指すとしており、また、ASV 推進検討会では、レベル 1 および 2 を

「運転支援」と呼んでいるものの、レベル 3 以上の呼称等は引き続き議論中のため、本構

想・ロードマップでは、便宜上、従来通り「自動運転システム」を、運転自動化(Driving Automation)に係るシステムの一般的用語として使用する。ただし、今後の ASV 推進検

討会等の議論の状況を踏まえ、2020 年に自動運転に係る呼称を見直すこととする。

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レベル 2 部分運転自動化

システムが縦方向及び横方向両方の車両運動

制御のサブタスクを限定領域において実行 運転者

自動運転システムが(作動時は)全ての動的運転タスクを実行 レベル 3 条件付運転自動

システムが全ての動的運転タスクを限定領域

において実行 作動継続が困難な場合は、システムの介入要

求等に適切に応答

システム (作動継続が困

難な場合は運転

者) レベル 4 高度運転自動化

システムが全ての動的運転タスク及び作動継

続が困難な場合への応答を限定領域において

実行

システム

レベル 5 完全運転自動化

システムが全ての動的運転タスク及び作動継

続が困難な場合への応答を無制限に(すなわ

ち、限定領域内ではない)実行

システム

※ 認知、予測、判断及び操作の行為を行うこと

なお、J3016 における関連用語の定義は、以下のとおり

語句 定義 動的運転タスク

(DDT:Dynamic Driving Task)

道路交通において、行程計画ならびに経由地の選択などの戦

略上の機能は除いた、車両を操作する際に、リアルタイムで

行う必要がある全ての操作上及び戦術上の機能。 以下のサブタスクを含むが、これらに制限されない。

1) 操舵による横方向の車両運動の制御 2) 加速及び減速による縦方向の車両運動の制御 3) 物及び事象の検知、認識、分類、反応の準備による運転 環境の監視 4) 物及び事象に対する反応の実行 5) 運転計画 6) 照明、信号及び身ぶり手ぶりなどによる被視認性の向上

対象物・事象の検知

及び応答 (OEDR:Object and Event Detection and Response)

運転環境の監視(対象物・事象の検知、認識及び分類ならび

に必要に応じて応答する準備)及びこれらの対象物・事象に

対する適切な応答(動的運転タスク及び/又は動的運転タス

クの作動継続が困難な場合への応答を完了するために必要に

応じて)を実行することを含む動的運転タスクのサブタスク 限定領域(ODD:Operational Design Domain)

ある自動運転システム又はその機能が作動するように設計さ

れている特定の条件(運転モードを含むが、これには限定さ

れない)。 注1:限定領域は、地理的、道路面の、環境的、交通の、速度上の、及び/

又は時間的な制約を含んでもよい。 注2:限定領域は、一つ又は複数の運転モードを含んでよい。

J3016 は、自動運転技術の評価にあたって、運転自動化レベルとともに、「限定領

域(ODD)」の範囲が重要な指標になると指摘している。すなわち、 レベル1~レベル

4のいずれにおいても、その自動運転システムが機能すべく設計されている特有の条

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件である ODD が広いほど技術的な高度性が高く、言い換えれば、レベル 4 であって

も、狭い ODD のみで運転が自動化されるシステムであれば、技術的な高度性は相

対的に低い。

また、レベル 5 は、レベル 4 のうち、ODD の限定がない自動運転システムであると

定義され、技術的レベルは非常に高い。

図 2:各運転自動化レベルにおける ODD の重要性

今後とも、SAE における定義見直しの動向等を踏まえつつ、必要に応じこれらの定

義を見直すものとする。

〈遠隔型自動運転システムの定義〉

J3016 においては、自動運転システムについて、当該システムの車両内に使用者

(運転者に相当する者を含む。以下同じ)が存在する自動運転システムと、当該車両

外に使用者が存在し、その者の遠隔監視・操作等に基づく自動運転システムに分け

られるとしている。

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このうち、後者の「当該車両外に使用者が存在する自動運転システム」6を、本構

想・ロードマップでは、「遠隔型自動運転システム」とし、この遠隔型自動運転システ

ムを含め、車内に運転者がいない自動運転システムを活用した移動サービスを「無

人自動運転移動サービス」と呼ぶこととする。

図 3:自動運転システム作動中の使用者の役割

〈具体的な自動運転システムの定義〉

上記 J3016 の定義を踏まえ、本構想・ロードマップでは近い将来において市場化・

サービス実現が見込まれる具体的な自動運転システムとして、「準自動パイロット」、

「自動パイロット」を、以下のとおり定義する。

表 2:具体的な自動運転システム等とその概要 システム名 概要 該当するレベル

準自動パイロッ

ト 高速道路での自動運転モード機能(入口ランプウ

ェイから出口ランプウェイまで。合流、車線変

更、車線・車間維持、分流など)を有するシステ

ム。 自動運転モード中も運転者が安全運転に係る監

レベル2

6 この場合、使用者の役割は、その運転自動化レベルに応じ、以下のとおりとなる。 ・ レベル 2 では、「遠隔運転者(Remote Driver)」が、遠隔にて、監視・操作。 ・ レベル 3 では、遠隔に存在する「動的運転タスク作動継続が困難な場合への応答準備

ができている使用者(DDT Fallback-ready User)」が、システムの介入要請時におい

て、監視・操作。 ・ レベル 4 では、遠隔に存在する「動作指令者(Dispatcher)」が、車両が故障した場合

など必要に応じ、操作。

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視・対応を行う主体となるが、走行状況等につい

て、システムからの通知機能あり。 自動パイロット 高速道路等一定条件下での自動運転モード機能を

有するシステム。 自動運転モード中はシステムが全ての運転タスク

を実施するが、システムからの要請に応じ、運転

者が対応。

レベル3

(2) 自動運転に係る戦略

① 自動運転による社会的インパクト 自動運転システムは、今後すぐに世の中に普及するわけではないものの、今後 10

~20 年の間に急速に普及していくことが予想されており、これに伴い今後社会に対し

て大きなインパクトを与える可能性がある。

具体的には、自動運転システムは、一般的に人間による運転よりもより安全かつ

円滑な運転を可能とするものであり、この結果、交通事故の削減、交通渋滞の緩和、

環境負荷の軽減など、従来の道路交通社会の抱える課題の解決に大きく資するもの

となることが考えられる。

また、自動運転システムは、それらの課題解決に加えて、運転者の運転負担の大

幅な軽減を可能とし、特に高度自動運転システムは、移動に係るこれまでの社会的

課題に対して新たな解決手段を提供する可能性がある。

更に、自動車産業は、周辺産業を含め産業規模が大きく、また、波及性が高い汎

用性の高い技術をベースにする産業である。前述のような課題を解決するような新た

な自動運転技術を基にイノベーションを進めていくことにより、自動車産業の競争力

強化や新たな産業の創出だけでなく、交通・物流業界の効率化・革新を通じた広範な

産業への影響や、自動運転技術の他分野(農業、鉱業等)への波及も考えられる。

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図 4:自動運転システムによる社会的期待(例)

② 社会的・産業的目標 今後 10 年~20 年程度先を見据えた場合、ITS を巡っては、自動運転システムを

中心とする大きなイノベーションが見込まれることを踏まえ、社会面、産業面の両方

の観点から、以下の 2 つの社会を構築することを目標とし、これらの目標の達成に取

り組むこととする。

社会面:我が国は、2020 年までに「世界一安全な道路交通社会」を構築す

るとともに、その後、自動運転システムの開発・普及及びデータ基盤の整備

を図ることにより、2030 年までに「世界一安全で円滑な道路交通社会」7を

構築・維持することを目指す。

産業面:我が国は、官民の連携により、ITS に係る車両・インフラの輸出を拡

大し、2020 年以降、自動運転システム化(データ基盤の整備を含む)に係る

イノベーションに関し、世界の中心地となることを目指す。

このような目標とする社会、産業の達成に向け、官民の施策の方向性を同じくし、

また、その目標に向けた進捗状況を把握する観点から、2020 年に向けては、交通安

全基本計画を踏まえつつ、「交通事故の削減」を念頭に、重要目標達成指標を設定

するとともに、当該指標を踏まえて、必要な施策に取り組むものとする 8。

7 ここで「世界一円滑な」とは、交通渋滞等が少なく、また、高齢者もストレスなく円滑

に移動できる状態を指す。また、渋滞が緩和され円滑な道路交通の流れが実現されること

によって、環境負荷の低減にも資するものと位置づけられる。 8 特に、当該施策の検討にあたっては、SIP 自動走行システムにおいて自動運転システム

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また、2030 年に向けた重要目標達成指標として、自動運転システムの普及も念頭

におきつつ、社会的な指標としては、「交通事故の削減」9、「交通渋滞の緩和」10、「物

流交通の効率化」11、「高齢者等の移動支援」12、また、産業的な指標としては、「自動

運転システムの普及」、「車両生産・輸出」13、「インフラ輸出」のそれぞれの観点から

関係する指標を設定する方向で検討するものとする 14。その際、具体的な目標とする

数値については、「世界一」を確保・維持するとの観点から現状の各国の数値をベン

チマークとして、目標値を設定する一方で、不断に各国の数値と比較し、必要に応じ

て見直しを行うという方針で進める。

に係る交通事故低減効果等の推計手法に関する調査を実施し、その結果を踏まえて検討す

ることとする。 9 交通事故に係る指標としては、交通事故死者数に係る指標(例えば「交通事故死者数を

ゼロに近づけることを目指す」等)に加え、交通事故による負傷者数の削減も指標として

加える方向で検討する。 10 交通渋滞状況に係る指標としては、既に創造宣言において、KPI として設定することと

されており、今後のその具体な指標としては、海外における渋滞の把握方法の調査等を含

めた現状整理を進めるとともに、プローブデータを活用した把握方法等について、今後調

査・検討する。 11 物流交通の効率化に係る指標については、今後検討する。 12 高齢者等の移動に係る指標としては、例えば、「高齢者の公共交通・自動車の利用割

合」等も含め、具体的指標及びその計測方法について、今後検討する。 13 「車両生産・輸出に係る指標」については、当面車両台数で計測することを基本とするものの、

将来的には、カーシェア等の周辺ビジネスが重要となる可能性があることについても考慮する。 14 その際、それぞれの具体的な指標及び目標とする数値の設定については、まずは算定に

必要な統計データ等について産業界等と議論するとともに、自動運転システムの社会的イ

ンパクト評価に係る調査等を踏まえて、検討をするものとする。

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図 5:本構想で目標とする社会と重要目標達成指標

③ 基本戦略 〈自動運転システムに係る基本的戦略〉

自動運転システムについては、2020 年の高速道路での準自動パイロット・自動パ

イロットの市場化及び無人自動運転移動サービスの実現を図ることにより、2020 年

までに世界最先端の ITS を構築する。その上で、完全自動運転システムを実現でき

る技術を含め更なるレベルの高度化や、海外への展開も視野に入れつつ、主として

新車としての自動運転システムの社会への導入普及を図ることにより、交通事故の

削減、交通渋滞の緩和、物流交通の効率化、高齢者の移動支援等を達成し、2030

年までに世界一安全で円滑な道路交通社会を構築することを目指す。

特に、我が国においては、高齢化が進展する中、高齢者の事故が大半を占める状

況にある一方で、高齢者等の移動弱者の移動手段を確保する必要があること、また、

今後人口減少が見込まれる中、過疎地域等地方における移動手段の確保や、運転

者不足への対応等が喫緊の課題であることを踏まえ、これらの課題解決にあたって

重要になると考えられる高度自動運転システムの開発を、ビジネスモデルを念頭に

置いた上で戦略的に取り組むことによって、世界に先駆けた自動運転システムの実

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現と世界的な産業競争力の強化などを達成することを目指すものとする 15。具体的に

は、以下の 3 項目に係る高度自動運転システム等に重点化し、これらのシステムの

2025 年目途の市場化・普及を見据えて取り組むものとする。

i. 自家用車における自動運転システムの更なる高度化 ii. 運転者不足に対応する革新的効率的な物流サービスの実現 iii. 地方、高齢者等向けの無人自動運転移動サービス実現

表 3:目指すべき社会と達成すべき自動運転システム 項目 目指す社会(例) 実現すべき自動運転システム

自家用車における自

動運転システムの高

度化

産業競争力の強化 交通事故の削減 交通渋滞の緩和

高速道路での完全自動運転(レベル 4) 高度安全運転支援システム(仮称)16

運転者不足に対応す

る革新的効率的な物

流サービスの実現

人口減少時代に対

応した物流の革新

的効率化

高速道路での隊列走行トラック(レベ

ル 2 以上) 高速道路での完全自動運転トラック

(レベル 4)

地方、高齢者等向け

の無人自動運転移動

サービスの実現

全国の各地域で高

齢者等が自由に移

動できる社会

限定地域での無人自動運転移動サービ

スの全国普及

〈安全運転支援システムに係る基本的戦略〉

安全運転支援システムについては、自動運転システムの普及が見込まれる 2020

年以降を見据えつつも、2020 年までの世界一安全な道路交通社会の構築(交通事

故死者数 2,500 人)及び世界最先端の ITS の構築に向けて取り組むものとする 17。

15 自動運転については、我が国が直面する様々な課題を解決しうる有望な技術であるも

のの、その課題を解決する上での唯一の手法ではなく、多くの手法との組み合わせによっ

て全体最適のもとに課題解決されることが社会的に求められる。 16 なお、高度安全運転支援システム(仮称)については、正式名称を今後検討するが、既

に実用化が推進されている「安全運転支援システム(Driving Safety Support Systems: DSSS)」を高度化したものという意味ではない(詳細は 2(3)②参照)。 17 なお、特に交通事故の削減を目的とする施策を進めるにあたっては、現状における交通事故

死者の状況分析(交差点等の場所、衝突事故、歩行者等の事故状況の分析等)を踏まえ、それら

の状況に対する技術的な対策の実現可能性、費用対効果も含めた普及可能性(2020 年時点で

の普及見込量等)を検討した上で、重点的に取り組むべき施策を明らかにすることが必要である。

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具体的には、近年導入が進みつつある衝突被害軽減ブレーキ等の安全運転支援

機能のついた自動車などの普及促進などに取り組む一方、新車の普及に一般的に

時間を要する 18ことを踏まえ、既存車に搭載する各種安全運転支援装置の導入普及

や、交通事故の削減・交通渋滞の緩和に資する情報提供のために必要な各種情報

システムの導入等を進めるものとする。

〈自動運転システム実現に向けたアプローチ〉

自動運転の社会実装に向けた基本アプローチ(方針)としては、自動運転のハー

ド・ソフトの「技術」と「事業化」の両面で世界最先端を目指す。そのような観点から、

技術が完全に確立してから初めて社会実装するのではなく、制度やインフラで補いな

がら、その時点の最新技術を活かした社会実装を進めていく。そのためには、車両側

の性能が走行環境の複雑性を如何に上回るかが重要であることから、走行環境の複

雑性とハード・ソフトの性能の類型化・指標化を検討し、その組合せから、地域の抽

出、必要な性能の在り方の検討を進めるものとする。この指標化を踏まえ、自動運転

システムが機能すべく設計されている特有の条件である ODD が、複雑な走行環境

を含むよう拡大させていく。

自動運転技術の進化の方向としては、多様な交通状況での完全自動運転可能な

技術の実現に向けて、大きく分けて、以下の二つのアプローチがある。

ⅰ 広い ODD(例えば、高速道路全体など多様な交通状況)に対応することを優

先し、徐々に運転自動化レベルを上げていくアプローチ:本アプローチは、主に、

時間・場所等を問わずに走行することが一般的に求められる自家用車(商用を

含む)における自動運転システムの戦略となる。これらの自動運転システムを

搭載した自家用車では、多くの場合、車両内に使用者が存在する。

ⅱ 高い運転自動化レベルを実現することを優先して、狭い ODD(狭く限定された

交通状況)から開始し、その後、その ODD を徐々に拡大していくアプローチ:本

アプローチは、主に、時間・場所等を制限してサービスを提供することが可能で

18 最近の我が国の自動車保有車両数は約 8000 万台、年間の新車販売件数は、約 500 万

台。したがって、保有車両が全て新車に交代するには、15 年以上の時間を要する。

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ある事業用(地域公共交通、貨物輸送など)自動車での自動運転システムの活

用における戦略となる。

図 6:自動運転システム実現に向けた二つのアプローチ

このようなアプローチを踏まえつつ、本構想・ロードマップでは、前述の社会的目標

を踏まえ、自家用車での自動運転システムの活用、移動サービスなど事業用での自

動運転システムの活用と、それらの物流分野での適用としての物流(トラック等)にお

ける自動運転システムの活用に分けて、それぞれの市場化に向けた戦略を明確化

する 19。

具体的には、2020 年に、①高速道路での自動運転可能な自動車(準自動パイロッ

ト・自動パイロット)の市場化、②限定地域(過疎地等 20)での無人自動運転移動サー

ビスの提供を実現するとともに、その後、2025 年目途に高速道路での完全自動運転

システムの市場化、物流での自動運転システムの導入普及、限定地域での無人自

動運転移動サービスの全国普及等を目指すこととする。

19 本構想・ロードマップでは、自家用車、物流サービス、移動サービスに分けて論ずる

が、その概念・呼称については、今後の自動運転システムやそのサービスの方向を踏まえ

つつ、更に検討を行うものとする。 20 地方における移動手段の確保という政策的な観点からは、まずは過疎地における無人自

動運転移動サービスの実現が求められるが、ビジネス的な観点等からは、都市部・都市郊

外部における導入も検討され得る。

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図 7:2025 年完全自動運転を見据えた市場化・サービス実現のシナリオ

(注)関係省庁は、上記スケジュールを踏まえつつ、民間と連携して、民間の具体的な開発状況、

ビジネスモデル(事業計画を含む)に応じて必要な施策を推進する。その際、官民で情報共

有を進め、必要に応じて、関係省庁はアドバイスや制度・インフラ面の検討を行う。

〈自動運転システムの市場化・サービス実現のシナリオと期待時期〉

これまで、世界一を目指すという観点から、それぞれのレベルの自動運転システム

について、海外における同様の市場化目標・ロードマップ等も踏まえつつ、日本にお

いても、世界と比較して遜色のない時期(最速あるいはそれとほぼ同様の時期)とし

て、市場化期待時期 21を設定してきたところであるが、近年の民間企業の技術開発

21 この「市場化期待時期」とは、官民が各種施策を取り組むにあたって共有する共通の努

力目標の時期であり、官民ともコミットメントを表す時期ではない。

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の進展等を踏まえ、以下のとおり、自家用、事業用(物流サービス、移動サービス)に

分けて、市場化期待時期、サービス実現時期として明記する。

また、これらのシステムに関し、市場化期待時期のみの観点から世界一を目指す

だけではなく、産業競争力の強化や、自動運転システムの普及の観点からも、取り組

むことが重要である。

なお、これ以外に今後の実現が見込まれる技術として、小型モビリティや高速道路

での隊列走行バス等がある。

表 4:自動運転システムの市場化・サービス実現期待時期※1 レベル 実現が見込まれる技術(例) 市場化等期待時期

自動運転技術の高度化 自家用

レベル 2 準自動パイロット 2020 年まで

レベル 3 自動パイロット 2020 年目途※3

レベル 4 高速道路での完全自動運転 2025 年目途※3

物流サービス

レベル 2 以上 高速道路でのトラックの後続

車有人隊列走行 2021 年まで

高速道路でのトラックの後続

車無人隊列走行 2022 年以降

レベル 4 高速道路でのトラックの完全

自動運転 2025 年以降※3

移動サービス レベル 4※2 限定地域での無人自動運転移

動サービス 2020 年まで

レベル 2 以上 高速道路でのバスの自動運転 2022 年以降

運転支援技術の高度化

自家用 高度安全運転支援システム

(仮称) (2020 年代前半) 今後の検討内容による

※1:遠隔型自動運転システム及びレベル 4 以上の技術については、その市場化等期待時

期において、道路交通に関する条約との整合性等が前提となる。また、市場化等期待

時期については、今後、海外等における自動運転システムの開発動向を含む国内外の

産業・技術動向を踏まえて、見直しをするものとする。 ※2:無人自動運転移動サービスはその定義上レベル 0~5 が存在するものの、レベル4の

無人自動運転移動サービスが 2020 年までに実現されることを期待するとの意。 ※3:民間企業による市場化が可能となるよう、政府が目指すべき努力目標の時期として設

定。

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(3) 市場化に向けた取組

① 環境整備に向けた取組(自動運転に係る制度整備大綱) 高度自動運転システムの実走行を可能とするためには、これまでの交通関連法規

について、見直しが必要となる。その見直しの検討の範囲は、自動運転車両・システ

ムの特定と安全基準の在り方、交通ルール等の在り方、自賠責保険を含む責任関係

の明確化など多岐にわたるとともに、それらは相互に関連することが考えられること

から、高度自動運転の実現のための制度整備に係る政府全体としての方針を明確

化する必要がある。このため、関係省庁の密接な協力のもと、高度自動運転システ

ム実現に向けた政府全体の制度整備に係る方針(「自動運転に係る制度整備大綱」)

を策定し、IT 総合戦略.本部(2018 年 4 月 17 日)で決定した。

その際、これらに向けた制度整備については、世界的な関心事項であるものの、

海外においても試行錯誤中であり、また、現時点では道路交通に関する条約に係る

国際的議論が継続中であること、また、特に、自動運転に係る技術は、現時点で確立

したものはなく、今後様々な技術が出てくることが想定される中で、国際的な技術基

準策定には時間を要すること等について考慮しつつ、法制度の項目に関して、当面

は半年に 1 回、フォローアップ会合を開催し、制度見直しの検討を継続的に進めるこ

とが必要であるとした。

その後、現在に至るまで、計 2 回のフォローアップ会合が行われ、制度見直しの検

討が継続的に進められている。以下、自動運転に係る制度整備大綱の概要及びフォ

ローアップを踏まえた現在の状況について記載する。

〈基本的考え方〉

この高度自動運転の実現のための制度整備の方針(大綱)の検討にあたっては、

我が国としては、以下の基本的な考え方(戦略)に基づいて検討を行うものとする。

中期的視点に立った制度面における国際的リーダーシップの発揮

安全性を確保しつつイノベーションが促進されるような制度枠組みの策定

社会的受容性を前提としつつイノベーションが促進されるような責任関係の

明確化

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上記の考え方を踏まえ、現在の自動運転を巡る環境は今後多様な技術が生まれ

るイノベーション・普及の初期段階であること、国際的に安全性評価や制度の前例は

少ないが、安全確保は重要であり、今後の技術進展や国際動向等を踏まえる必要が

あることから、以下の基本方針に則り、制度の検討を行うものとする。

社会的受容性や社会ニーズに基づいた事業者の創意工夫を促進するもの

とする。

安全確保を前提としつつ、さらに早期の安全課題の発見と対応を促進する

ものとする。

順次制度を見直すなど、自動運転を取り巻く環境変化に柔軟に対応するも

のとする。

〈安全性の一体的な確保〉

従来、安全性を担保するためには、「人間」「車両」「走行環境」の三要素が積み重

なって一定のレベルに達する必要がある。

自動運転技術が進展すると、人間の操作の一部を車両が代替することにより安全

性が担保されるが、自動運転の導入初期は、複雑な交通環境に対して車両のみで安

全性を担保することが難しいため、自動運転向けに新たに走行環境条件を設定し、

車両による安全性の担保との組合せにより安全性を担保する。

図 8:自動運転向け走行環境条件の設定による安全性担保の考え方

自動運転技術の進展に伴い、将来的にはより安全性が高まっていくことが期待さ

れる。

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図 9:自動運転の実用化に向けた段階的な進め方のイメージ

これらの考え方の下、安全基準を技術レベルに応じて検討し、また、自動運転向け

走行環境条件設定について関係省庁で連携して客観的な指標として検討・策定す

る。

ただし、当面は一律ではなく、地域特性等を勘案し、関係省庁の連携の下で都度条

件を確認することで安全を確保しつつ、安全基準と自動運転向け走行環境条件設定

(運行・走行環境)で一体的に安全を確保する仕組みを構築する。

2019 年 3 月末までの進捗・状況

当面の対応について、国土交通省/内閣府 SIP「道の駅等を拠点とした自動

運転サービス」・「地方部における自動運転による移動サービス実用化に向け

た環境整備」、経済産業省&国土交通省「ラストマイル自動運転」等の実証実

験の事例や交通ルールや車両安全対策及び走行空間等に係る各種検討結

果を踏まえ、必要な仕組みを検討する。また、自動運転向け走行環境条件の

範囲内で車両が運行されていることを確認・監視する方法についても、車両の

安全対策及び交通ルール等に係る各種検討結果を踏まえて、必要な方法を

検討する。

客観的な指標の検討については、国土交通省/内閣府 SIP「道の駅等を拠点

とした自動運転サービス」・「地方部における自動運転による移動サービス実

用化に向けた環境整備」、経済産業省&国土交通省「ラストマイル自動運転」

等の実証実験の事例や交通ルールや車両安全対策及び走行空間等に係る

各種検討結果を踏まえ、必要な指標を検討する。

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〈自動運転車の安全確保の考え方〉(道路運送車両法等)

安全基準の策定にあたっては、日本の世界最先端の自動車技術を世界に広げる

ため、引き続き国際的議論をリードする。

i. 自動運転車が満たすべき安全性の要件を 2018年夏頃を目途にガイドラインと

して取りまとめる。

ii. 自動運転車における保安基準を、技術開発の動向や国際的な議論を踏まえ、

段階的に策定する。

iii. 使用過程車の安全性確保策の在り方について検討する。

iv. 隊列で走行する車両に係る要件を検討する。

2019 年 3 月末までの進捗・状況

自動運転車が満たすべき安全性の要件や安全確保策について、「自動運転車

の安全技術ガイドライン」を 2018 年 9 月に策定及び公表した。

自動運転車が満たすべき安全性が確保されているかどうかを確認するための

評価手法について、国連 WP29(自動車基準調和世界フォーラム)における自

動運転車の認証手法に関する議論について、当該議論を行う専門家会議体

の議長職を務めることにより、具体的な安全性能確認手法の検討について議

論を主導している。

保安基準における国際基準の策定については、国連 WP29 において、引き続

き当該議論を行う分科会等の議長職等を務めることにより、議論を主導してい

る。2019 年 1 月に衝突被害軽減ブレーキの国際基準案が策定され、2019 年

中に採択を目指す。引き続き、サイバーセキュリティについては早ければ

2019 年前半までの、高速道路における自動車線維持機能(レベル 3)につい

ては早ければ 2019 年度までの国際基準案の策定を目指す。

段階的な保安基準の策定については、2019 年1月に公表した「自動運転等先

進技術に係る制度整備小委員会報告書」の、自動運転車の安全性を担保する

ため、「自動運転車の搭乗者及び歩行者等の周囲の交通参加者に危険を及

ぼすおそれのないものであること」といった自動運転システムの基準を策定す

べき、との結論を踏まえ、自動運行装置を保安基準対象装置に追加することと

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する「道路運送車両法の一部を改正する法律案」を第 198 回通常国会に提出

した(※2019 年 5 月 17 日に成立)。

使用過程車の安全確保策のうち、保守管理(点検整備・車検の確認事項)の

在り方について、2019 年1月に公表した自動運転等先進技術に係る制度整

備小委員会報告書の、

・ 自動運転システム等の電子装置に係る整備・改造を新たに「分解整備」の

対象とし、「特定整備」(仮称)とするとともに、これを行う事業者の認証を

行うべき

・ 先進技術の点検整備に必要な技術情報が整備事業者等へ提供されるよ

う制度・環境を整備すべき

・ 検査に必要な技術情報を一元的に管理し、検査を実施する者に提供され

る仕組みを構築すべき

との結論を踏まえ、分解整備の範囲の拡大及び点検整備に必要な技術情報

の情報提供を義務づける等の道路運送車両法の一部を改正する法律案を第

198 回通常国会に提出した(※2019 年 5 月 17 日に成立)。

使用過程車の安全確保策のうち、ソフトウェアの継続的な更新に対する審査

の在り方について、2019 年1月に公表した自動運転等先進技術に係る制度

整備小委員会報告書の、自動車の安全性に大きな影響を及ぼすソフトウェア

の配信について、国がその適切性を確認する制度を創設すべき、との結論を

踏まえ、自動運行装置等に組み込まれたプログラム改変による改造等に係る

許可制度の創設等を行うこととする道路運送車両法の一部を改正する法律案

を第 198 回通常国会に提出した(※2019 年 5 月 17 日に成立)。

いわゆる「電子牽引(仮称)」で隊列走行を行う場合の車両が満たすべき技術

的要件のガイドライン策定の検討について、先進安全自動車(ASV)推進検討

会において、隊列走行を行う場合の車両が満たすべき技術的要件に関し、隊

列走行の実証実験の動向を踏まえつつ、ガイドライン等を検討している。

単独走行車が車車間通信を使用して他車に追従走行をすることで隊列走行を

行う場合の車両が満たすべき技術的要件の検討について、段階的な保安基

準の策定の一環として、技術的動向や国際的な議論を踏まえつつ、技術の多

様性を阻害しないことに留意し、引き続き検討を進めることとしているところ。

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現在実証実験の際に活用可能な基準緩和認定制度については、2019 年1月

に公表した自動運転等先進技術に係る制度整備小委員会報告書において、

安全確保措置が担保されていることを前提に、無人自動運転移動サービス車

を対象に加える等適用対象を拡大し、事業化の際にも、認定制度の活用がで

きるようにすべき、との結論を得た。

〈交通ルールの在り方〉(道路交通法等)

2020 年の実用化等を見据えて、道路交通に関する条約(ジュネーブ条約)に係る

国際的議論に当たっては、引き続き関係国と協調してリーダーシップを発揮し、その

進展及び技術開発の進展等を踏まえ、安全性の確保を前提とした世界最先端の技

術の実用化を目指した交通ルールの検討を行う。

i. 国際的な議論と平行して国内法制度見直しの検討を進め、国際的な議論及び

自動運転に関する技術開発等の進展を踏まえ、速やかに国内法制度を整備

する。

ii. 自動運転システムが、道路交通法令の規範を遵守するものであることを担保

するために必要な措置等を検討する。

iii. トラックが現行の牽引を基準にしたいわゆる「電子牽引(仮称)」で隊列走行を

行う場合の対応方針について検討する。

iv. 限定地域での無人自動運転移動サービスについては、当面は、遠隔型自動

運転システムを使用した現在の実証実験の枠組みを事業化の際にも利用可

能とする。

2019 年 3 月末までの進捗・状況

国際的な議論については、国連欧州経済委員会内陸輸送委員会道路交通

安全グローバルフォーラム(WP1)及び WP1 に設置された自動運転に関す

る非公式専門家グループのメンバーとして、国際的な議論に積極的に参画し

ている。昨今の国際的な議論では、2019 年 3 月の WP1 会合において、「道

路交通における高度・完全自動運転車両の展開に係る道路交通安全グロー

バルフォーラム(WP1)決議」や将来的に運転者に許容され得る運転以外の

行動等について議論した。

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自動車の自動運転の技術の実用化に対応した運転者等の義務に関する規

定等の整備を行う「道路交通法の一部を改正する法律案」を第 198 回通常

国会に提出した(※2019 年 5 月 28 日に成立)。

自動運転システムが道路交通法令の規範を遵守するものであることを担保

するために必要な措置の検討については、道路交通法の一部を改正する法

律案に、道路運送車両法の一部を改正する法律案において自動運行装置を

新たに保安基準の対象装置に加える規定が盛り込まれたことを受け、道路

運送車両法に規定される自動運行装置を「自動運行装置」として定義する規

定が盛り込まれている(※2019 年 5 月 28 日に成立)。

自動運転中に道路交通法令の規範を逸脱した際のペナルティの在り方につ

いては、「技術開発の方向性に即した自動運転の実現に向けた調査研究報

告書」(道路交通法の在り方関係)にて、下記内容を取りまとめている。

・ 万が一の故障・不具合等により、自動運転中に道路交通法令に反する

走行を行った場合の過失については、事案ごとに個別具体的に判断さ

れる。

既存の運転者の義務の見直しについて、道路交通法の一部を改正する法律

案に、自動運行装置を使用する運転者の義務に関して、自動運行装置が使

用される条件(国土交通大臣が付する条件)外となった場合に直ちに適切に

対処できる状態でいるなどの場合に限り、携帯電話使用等禁止(安全運転

義務への上乗せ)規定の適用を除外することが盛り込まれている(※2019

年 5 月 28 日に成立)。

運転者に新たに課すべき義務の検討について、道路交通法の一部を改正す

る法律案に、道路運送車両法に規定される自動運行装置を「自動運行装置」

として定義した上で、自動運行装置を使用する運転者の義務に関して、自動

運行装置が使用される条件(国土交通大臣が付する条件)を満たさない場合

には、同装置を使用した運転を禁止することが盛り込まれている(※2019 年

5 月 28 日に成立)。

自動運転車の走行中のデータ保存とその利用の検討については、道路交通

法の一部を改正する法律案には、道路運送車両法の一部を改正する法律

案において、自動運行装置は必要な情報を記録するための装置を備えるも

のであることが盛り込まれたことを受け、自動運行装置を備えている自動車

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で、当該情報を正確に記録することができないものを運転してはならないこと

等が盛り込まれている(※2019 年 5 月 28 日に成立)。

いわゆる「電子牽引(仮称)」で隊列走行を行う場合の、車列の全長や走行速

度、運転に必要な免許、走行車線、後続無人隊列走行で電子牽引が途切れ

た場合の扱い(他の交通に影響がないように止める等)等の対応方針の検

討について、技術開発の方向性に即した自動運転の実現に向けた調査研究

報告書(新技術・新サービス関係)にて、電子牽引による後続無人隊列走行

システムの公道実証実験に係る交通ルールの在り方について、下記内容を

とりまとめている。

・ 電子牽引が途切れた場合には、先頭車両以外の車両は自動的かつ安

全に路肩等に停止するシステムである必要がある。この場合、先頭車両

の運転者は直ちに先頭車両を停止させ、後続車両についても停止して

いるものであることを表示するなどの安全確保措置を講ずる必要がある。

・ 本線合流時の安全対策及び他の車両に容易に割り込まれないような措

置を講ずる必要がある。

・ 牽引車及び被牽引車の正面、両側面及び背面に、電子牽引による隊列

走行中である旨が走行場所や時間帯に応じた方法で周辺車両が容易に

分かるように表示されている必要がある。

・ 実施主体は実験の内容や結果等のデータを適切に管理し、必要に応じ

て速やかに警察を含む関係機関へデータを提供すべきである。

・ 少なくとも実証実験では、緊急の必要が生じた場合、現場に急行するこ

とができるよう体制を整備している必要がある。

レベル4の移動サービスにおける、「道路交通法令の規範の遵守」、「運転者

の義務」、及び「データ保存と利用」についての検討については、技術開発の

方向性に即した自動運転の実現に向けた調査研究報告書(新技術・新サー

ビス関係)にて、下記内容をとりまとめている。

・ 将来的には、各事業者において新たなビジネスモデルが創出されるだろ

う。新しいビジネスモデルの可能性を考慮しながら、柔軟に議論を進める

ことが重要である。

・ 当該移動サービスの形態は多様であり、体系的にまとめて議論を進める

のは困難である。制度整備に係る議論を進める上では、現在は、各事業

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者において実現を目指す様々なサービス形態について実証実験が行わ

れ、どのようなニーズや課題、実現の可能性があるのかを見極める時期

であろう。

・ 地域のニーズ、事業者のビジネスモデル如何が当該移動サービスの実

現に向けた鍵であり、現在は、これらをくみ上げることが重要な時期と言

えよう。実証実験から得られた様々な課題に対する解決策を検討するこ

とが、早期実現に向けた後押しともなろう。

移動サービスにおいて、当面は、遠隔型自動運転システムを使用した実証

実験の枠組みを事業化の際にも利用可能となっているが、技術開発の方向

性に即した自動運転の実現に向けた調査検討委員会においては、更なる安

全性確保のための課題等について、以下の論点等に係る議論が行われた。

・ 遠隔側の管理体制(遠隔監視・操作者に求められる役割、異常時対応

等の十分な教育・訓練)

・ 特異事案等発生時の報告

・ 走行速度の制限等(システムで認識することが困難な危険等には遠隔

監視・操作者の対応が求められることを踏まえた安全対策)

〈責任関係〉(自動車損害賠償保障法、民法、製造物責任法、自動車運転死傷

処罰法等)

万が一の事故の際にも迅速な被害者救済を実現するとともに、自動運転が社会に

受け入れられるために、事故時の責任関係の明確化及び事故原因の究明に取り組

む。そのためのデータ取得・保存・活用についても検討する。

i. 自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)において、自動運転システム

利用中の事故により生じた損害についても、従来の運行供用者責任を維持す

る。

ii. 自賠法において、自動車の保有者等が必要なセキュリティ対策を講じていない

場合等を除き、ハッキングにより引き起こされた事故の損害(自動車の保有者

が運行供用者責任を負わない場合)は、盗難車による事故と同様に政府保障

事業で対応することが妥当である。

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iii. 自動運転車を市場化する際には、交通ルール、運送事業に関する法制度等に

より、様々な関係主体に期待される役割や義務を明確化していくこと等を踏ま

えて刑事責任についての検討を行う。

iv. 2020 年を目途に、データ記録装置の設置義務化、データの記録機能、情報保

有者の事故時の記録提出の義務化の要否を検討する。

2019 年 3 月末までの進捗・状況

自賠法において、自動運転システム利用中の事故により生じた損害につい

ても、従来の運行供用者責任を維持する(自動運転に係る制度整備大綱に

反映済み)。その上で、保険会社等から自動車メーカー等に対する求償権行

使の実効性確保が必要であるところ、自動運転に係る改正法において、自

動運行装置の故障・不具合の発見や事故原因の究明等に必要なデータを記

録するための装置を備え、記録することとされた。また、保険会社と自動車メ

ーカー等の協力体制の在り方等については、記録されたデータの活用方策

も含め、関係者間で検討を進めている。

ソフトウェアの更新に係る責任の検討については、経済産業省・国土交通省

委託事業「高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事

業:自動走行の民事上の責任及び社会受容性に関する研究」において技術

的動向を踏まえ継続的に議論を行っている。

「通常有すべき安全性」と使用上の指示・警告等の関係の検討については、

技術的動向を踏まえた継続検討課題となっており、関係省庁と議論の上、進

め方を含めて検討中である。

刑事責任については、道路交通法の一部を改正する法律案(※2019 年 5

月 28 日に成立)等の関係法令の改正内容や、交通ルール、運送事業に関

する法制度等による様々な関係主体(運転者、利用者、車内安全要員、遠隔

監視・操作者、サービス事業者等)に期待される役割や義務の明確化につい

ての検討結果を踏まえて検討したい。

データ記録装置の設置義務化の検討について、2019 年 1 月に公表した自

動運転等先進技術に係る制度整備小委員会報告書の、自動運転システム

の作動状況や運転者の状況等をデータとして記録する装置を備えることが

必要である、との結論を踏まえ、作動状態の確認に必要な情報を記録するた

めの装置を含む「自動運行装置」を保安基準対象装置に追加することとする

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道路運送車両法の一部を改正する法律案を第 198 回通常国会に提出した

(※2019 年 5 月 17 日に成立)。

データの記録機能(データ要素、記録間隔/時間、保持期間等)の検討につ

いて、データ記録装置の記録内容の具体の項目については、真正性等必要

となる要件を考慮し、関係省庁・関係団体と連携して検討しつつ、国際的な

動向も踏まえ、関係者間で検討を進めていく。

情報保有者の事故時の記録提出義務化要否の検討については、検討不要

と整理された。

〈運送事業に関する法制度との関係〉

運転者が車内に不在となる自動運転車で旅客運送を行う際に必要な措置を検討

する。

2019 年 3 月末までの進捗・状況

運転者が車内に不在となる自動運転車で旅客運送を行う場合において、従

来と同等の安全性及び利便性が確保されるために必要な措置の検討につ

いて、限定地域での無人自動運転移動サービスにおいて旅客自動車運送事

業者が安全性・利便性を確保するためのガイドライン(仮称)の策定に向けた

検討を進めている。

〈その他〉

路車協調等のインフラや、消費者への説明について必要事項を検討する。

2019 年 3 月末までの進捗・状況

実用化において、自動運転中の車両であることが外見上判断できるような表

示の検討については、2019 年 1 月に公表した自動運転等先進技術に係る

制度整備小委員会報告書において、自動運転中であることを歩行者等の周

囲の交通参加者に知らせることや自動運転車と歩行者等の周囲の交通参

加者とのコミュニケーションについて、どういった場面で必要になるか等につ

いて整理を行った上で、WP29 において国際基準策定の議論を進めていく

べき、との結論を得た。また、技術開発の方向性に即した自動運転の実現に

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向けた調査研究報告書(道路交通法の在り方関係)にて、下記内容を取りま

とめている。

・ 交通全体の安全・安心の確保の観点から、自動運転中にのみ表示され

る外観表示を求めることが望ましいが、自動運転車の国際的な基準に

係る議論や周囲の交通主体に与える影響等を踏まえて検討する必要が

ある。

長距離運転者への健康面の影響についての検討(高速道路での自動運転

により、運転者の負担の軽減が期待されるため)については、隊列走行、自

動運転等が市場化され、健康データが一定数収集されてからの検討とする。

自動運転車の安全を補完するために道路に設置される設備や通信等のイン

フラ(路車協調を含む)について、必要となる事項の検討については、以下の

取組が行われている。

・ 「中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転ビジネスモデル検

討会 中間とりまとめ」(2019 年 1 月 23 日)において、自動運転に対応

した道路空間の活用に係る 2020 年以降の全国展開に向けて取り組む

べき事項として、自動走行に対応した道路空間の確保のための基準や

制度の整備、路車連携技術で活用する磁気マーカー等の法的位置づけ

等が挙げられている。

・ 中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転サービスや高速道

路におけるトラック隊列走行等の実証実験の結果を踏まえ、自動運転車

のための専用・優先の空間の在り方や、路車連携技術等を含む自動走

行に対応した道路空間の基準・制度等について検討する。

・ SIP 第 2 期自動運転(システムとサービスの拡張)では、東京臨海部に

おいてインフラ協調型の実証実験を実施するため、信号情報や合流支

援情報などを車両に提供する路側インフラを整備しているところ。

・ 自動運転向け信号情報の提供について、自動車メーカー等における検

討を踏まえ、路側インフラの高度化やクラウド等を活用した手法について

検討している。

・ インターチェンジ合流部の自動運転に必要となる合流先の車線の交通

状況など、自動運転の実現を支援する道路側からの情報提供の仕組

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み・システム構築に向けた検討を実施している。なお、本検討の成果を、

東京臨海部実証実験における環境整備に活用することとしている。

・ 技術開発の方向性に即した自動運転の実現に向けた調査研究報告書

(新技術・新サービス関係)にて、自動運転社会の実現に向けて、整備

が望ましい道路交通環境について、下記内容をとりまとめている。

既存の交通社会に自動運転車が“入れてもらう”という過渡期の構

図であることを踏まえると、従来の交通参加者にとって安全で円滑な

道路交通環境を整備することが、結果的に自動運転車にとっても走

行しやすい道路交通環境の整備につながるとの考え方を基本とす

べき。

自動運転車以外の自動車を含め、見通しの悪い交差点での他の交

通主体の存在を知らせるシステムの整備が望ましい。

無人自動運転移動サービスの定時性の確保だけでなく、システムに

よる急制動が行われないようにするなど乗客の安全を確保するため

にも、信号情報を電波等により提供するシステムの整備が望まし

い。

販売時に消費者に対して使用方法やリスクを説明する際の留意事項の検討

については、経済産業省・国土交通省委託事業「高度な自動走行システムの

社会実装に向けた研究開発・実証事業」において、2019 年 3 月には「自動

走行の民事上の責任及び社会受容性に関する研究」シンポジウムを開催す

るなど、継続的に議論を行っている。

自動運転に関する一般市民や自動運転によるサービス提供事業者等への

理解促進を図るため、2019 年 2 月には、SIP 自動走行システムに関して、

5 年間で得られた成果の集大成として、自動運転技術の実車やシミュレータ

によるデモンストレーションなどの体験型コンテンツをはじめ、動画やパネル

展示を行う「自動運転のある未来ショーケース」やシンポジウムを開催するな

ど、社会的受容性の醸成に関する活動を行っている。

〈今後の進め方・推進体制等〉

自動運転に係る技術は急速に進歩しており、その実情を踏まえながら、引き続き、

半年に 1 回、フォローアップ会合を開催し、制度見直しの検討を継続的に実施。

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② 自家用車の取組 〈2020 年に実現する自動運転像 – 高速道路での自動運転(レベル 3)〉

「2020 年目途」とする高速道路での自動運転の実現像について、最低限以下を満

たすものとして定義する。ただし、メーカー等の技術開発の努力により、より広い範囲

で実現する可能性がある。

・ 本線上で自動運転開始可能

・ 一定速度以下での車線維持、車間維持、速度調整を自動で実施

・ 本線上で自動運転終了

図 10:自家用車で 2020 年に実現する自動運転像

内閣府は、SIP 自動走行システムにおいて 2017 年 10 月から 2018年 12 月まで、

ダイナミックマップをはじめとする重要 5 課題について大規模実証実験を実施した。

SIP 第 2 期自動運転(システムとサービスの拡張)においては、東京臨海部において

インフラ協調型システムに関する実証実験に取り組むこととしている。

表 5:SIP 自動走行システム大規模実証実験の概要 試験場所 試験内容

高速道路 カーブなど様々な道路形状、走路環境や構造物等に関する高精度 3 次

元地図データの検証 渋滞情報、工事情報等の動的な情報のダイナミックマップへの紐付け

に係る検証 運転者状態の評価等の HMI の検証 等

一般道 バスの正着制御や歩行者携帯端末を使ったルート情報提供等、移動支

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援に関する使用感、効果等の検証 ART 情報センターへの運行情報の集約・蓄積と利用者等への情報提供

等の ART 技術による公共バスの利便性、速達性の検証

テストラボ

等 情報セキュリティ評価方法の検証 等

また、SIP自動走行システムでは、制度面での課題(運転者がシステムの能力を過

剰に信頼することにより事故リスクが高まるというようないわゆる「過信」問題など

HMI に係るガイドラインの必要性の検討など)、社会的受容面での課題(自動運転に

係る運転者、消費者への理解の増進等)、技術・インフラ面での課題(ダイナミックマッ

プ、情報通信インフラの整備等)についても、取り組んできた。

〈一般道での自動運転(レベル 2)〉

高速道路でのレベル 2 の自動運転システムの市場化を踏まえて、自動運転が機

能する対象地域の拡大を図ることにより、一般道路での自動運転モードでも走行可

能な自動運転システム(レベル 2)の市場化を見込む。

具体的には、2020 年頃に主要幹線道路(国道、主な地方道)において、直進運転

が可能な自動運転(レベル 2)を実現する。その後、2025 年頃には、主要幹線道路に

おける右左折やその他の道路における直進運転等、レベル 2 におけるシステムの

ODD の拡大が期待される。

〈高速道路での高度・完全自動運転〉

2020 年の準自動パイロット・自動パイロットの実現を踏まえて、その後、2025 年目

途に高速道路での自動運転システム(レベル 4)の市場化を見込む。

高速道路での自動運転システム(レベル 4)としては、高速道路の入口から出口ま

で自動運転が可能であり、運転者は必要に応じ自ら運転することも、システムに運転

を任せることも可能であり、自動運転システムが機能すべく設計されている特有の条

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件である ODD から外れる状況や異常時などにおいて自動的に路肩で停止するなど

(「リスク最少化移行技術」22等)の対応を行うことになる。

また、高速道路上の分合流部等の複雑な交通環境で自動運転を支援するため、

国土交通省では、道路側から情報提供を行う仕組み等について 2018 年 1 月より官

民共同研究を開始しており、引き続き官民が連携して検討を進めるものとする。

加えて、2018 年から始まった SIP 第 2 期自動運転(システムとサービスの拡張)で

は、本構想・ロードマップに記載されている自動運転の普及・市場化期待時期(新た

に自家用車の一般道における運転支援技術及び高速道路における自動運転技術の

さらなる高度化や物流サービス、移動サービスにも注力する予定)に沿い、産学官が

一体となり、協調領域の研究開発を推進していくとともに、これらを持続的な産学官

連携体制につなげていくものとする。自動運転技術をさらに高度化するためには、イ

ンフラからの信号情報や分合流支援情報の提供、車両プローブ情報を用いた鮮度の

高い道路交通情報の提供が必要であることから、官民連携してこれらの情報の構築

に取り組むとともに、自動運転の実用化・事業化に向けた、安全性評価技術をはじめ

とする協調領域に係る技術開発、社会的受容性の醸成、国際連携の強化等に引き

続き取り組むものとする。

〈安全運転支援システムの普及〉

上記の自動運転システムの市場化・サービス実現・普及には時間を要することを踏

まえながら、2020 年までに世界一安全な道路交通社会の構築、世界最先端の ITS

を構築する観点から、安全運転支援システムの普及施策に取り組むことが必要であ

る。

特に、高齢運転者の交通事故防止対策は喫緊の課題になっていることを踏まえ、

政府は、2017 年 4 月に「安全運転サポート車」の普及啓発に関する関係省庁副大臣

等会議中間とりまとめ」を発表した。その中で、高齢運転者向けの安全運転サポート

車(サポカーS)として表 6 に示す定義を公表したところであり、これをもとに、様々な

22 異常時等において最少リスク条件(minimal risk condition)に自動的に安全に移行する技術

のこと。完全自動運転(レベル 4)や、高度安全運転支援システム(仮称)等を実現するためには、

その開発、搭載が不可欠である。

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広報ツール等を活用しながら安全運転サポート車の普及啓発、自動車アセスメントの

拡充、先進安全技術の基準策定等に取り組むものとする。

表 6:セーフティ・サポートカーS(略称:サポカーS)の定義

ワイド 衝突被害軽減ブレーキ(対歩行者)、ペダル踏み間違い時加速抑制装置 車線逸脱警報、先進ライト

ベーシック+ 衝突被害軽減ブレーキ(対車両)、ペダル踏み間違い時加速抑制装置

ベーシック 低速衝突被害軽減ブレーキ(対車両)、ペダル踏み間違い時加速抑制装

なお、高齢者向けのサポカーS に関する上記取組と併せて、衝突被害軽減ブレー

キ等を搭載した自動車全般についても、全ての運転者の交通事故防止等に資するた

め、「セーフティ・サポートカー(略称:サポカー)」を愛称として、官民を挙げて普及啓

発に取り組むものとする。

さらに、国土交通省では、安全運転サポート車の普及啓発に関する関係省庁副大

臣等会議における中間取りまとめを踏まえ、自動車メーカー等の求めに応じ、乗用車

の衝突被害軽減ブレーキが一定の性能を有していることを国が認定する制度を

2018 年 3 月に創設し、2019 年 4 月末時点で、国内メーカー8 社から申請のあった

152 の型式について性能認定を行った。また、自動車メーカー等が衝突被害軽減ブ

レーキの普及促進のための広報活動等において活用できるロゴマークを作成し、官

民連携による衝突被害軽減ブレーキの普及促進の取組を一層推進する。

また、上記安全運転サポート車以外にも、表 7 に記載するような各種安全運転支

援システム、情報提供システム等の普及に係る取組を推進する。

表 7:安全運転支援システム等に係る取組の推進(安全運転サポート車以外)

事故発生時に車載装置・携帯電話を通じて通報することができる緊急通報システム

(HELP)や事故自動通報システム(ACN)の格段の普及と高度化 映像記録型ドライブレコーダーやイベントデータレコーダーの情報を活用した事故実態の

把握・分析の検討など各種車載器等の普及・活用 交通管制システムのインフラ等を利用して運転者に周囲の交通状況等を視覚・聴覚情報

により提供する安全運転支援システム(DSSS)及び信号交差点への到着時における信号

灯火等に関する情報を事前に提供する信号情報活用運転支援システム(TSPS)の導入

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整備 ETC2.0及び高度化光ビーコンの普及促進をはじめ、ITS技術を活用した円滑、安全、安

心な道路交通等の実現への取組を行う。また、ETC等のITS技術の、民間駐車場など高

速道路以外の施設への活用拡大を進める 高速道路での逆走対策について、産学官が連携し、逆走車両の速やかな検知、道路上・

車内での警告や、自動運転技術の活用など、さらに効果的な対策について検討を行う 歩行者事故の低減に資する歩車間通信技術の開発 など

〈高度安全運転支援システム(仮称)の実現〉

交通事故をより一層高いレベルで防止していくためには、運転自動化レベルの高

度化を図るだけではなく、運転者による運転を前提としつつも、自動車の安全性に係

る既存の技術 23の更なる高度化を図り、自動運転技術も活用することによって、事故

がほとんど起きないような高度安全運転支援システム(仮称)を搭載した自動車の開

発を目指すことが必要である。このような自動車は、交通事故の削減に寄与するだけ

でなく、運転者が安心して運転を楽しむことができる自動車として、消費者に付加価

値を与え、我が国の自動車産業の競争力強化にも寄与するものと考えられる。

この高度安全運転支援システム(仮称)の具体的な技術スペックは今後検討するこ

とになるが、より高度な被害軽減ブレーキや、ドライバー異常時対応システム 24など

のリスク最少化移行技術等の個別技術の高度化を図るとともに、人工知能(AI)やド

ライバーフレンドリーなインターフェース(HMI)を搭載することによってシステムとして

統合化することを想定する。また、協調型による情報収集技術の高度化(情報通信イ

ンフラの整備・高度化)を含む。

今後、産業界の技術開発動向を踏まえつつ、必要に応じ官民連携の下で具体的な

スペック等を明確化し、2020 年代半ば(2025 年まで)に高度安全運転支援システム

(仮称)を搭載した自動車の実現を目指す。

23 ADAS(先進運転支援システム)と呼ばれる各種技術を含む。 24 国土交通省は、2016 年 3 月に「ドライバー異常時対応システム(減速停止型)」、2018年 3 月に「ドライバー異常時対応システム(路肩退避型)」のガイドラインを世界で初め

て発表。

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表 8:高度安全運転支援システム(仮称)の具体的要素技術(イメージ)

例えば、以下のような個別自動運転技術の高度化を図るとともに、人工知能(AI)や HMI 技

術を含め、これらの技術を統合的にシステム化。 衝突被害軽減ブレーキの更なる高度化 衝突被害軽減ブレーキの対象となる障害物の範囲、速度等などの抜本的拡大 ペダル踏み間違い時加速抑制装置 25との連携によるフェールセーフ機能の抜本的強化

など ドライバー異常時対応システムの高度化(リスク最少化移行技術を含む) 押しボタン式から、自動検知型へ、また、単純/車線内停止型から、路肩停止型への開

発の推進。 その他(レーンキープアシストその他)

③ 物流サービスの取組 〈高速道路でのトラックの隊列走行の実現イメージ〉

「2021 年まで」としているトラックの後続車有人隊列走行の実現像について、以下

を想定する。

・ CACC26+LKA 技術を使用し前車に追従走行

・ 先頭車も後続車もそれぞれの車両の運転者の責任で運転

・ 後続車は、先頭車に追従し、車間維持、速度調整、車線維持を自動で行い、

後続車の運転者の運転を支援

本線上で開始(前車に追従走行)

任意のタイミングで隊列を解除できるほか、前車/自車の車線変更/

分流等で終了

25 車載のレーダー等が壁や車両を検知している状態でアクセルを踏み込んだ場合には、エ

ンジン出力を抑える等により、急加速を防止する装置。 26 CACC (Cooperative Adaptive Cruise Control:協調型車間距離維持支援システム):レー

ダーを用いて前方に走行する車両との車間距離を一定に保つ技術である ACC (Adaptive Cruise Control)に加え、車車間通信により、他車の加減速情報を共有することで、より精

密な車間距離制御を行うシステム。既に実用化済み。

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図 11:後続車有人隊列走行の実現イメージ

また、「2022 年以降」としているトラックの後続車無人隊列走行の実現像につい

て、以下を想定する。

・ 現行の牽引を基準にしたいわゆる「電子牽引(仮称)」で隊列走行

・ 先頭車も後続車も先頭車の運転者の責任で運転

・ 後続車は電子的に牽引されて、速度調整、車間維持、車線維持、車線変更

を行い、無人で走行

本線外で隊列を形成し、隊列走行開始(最大 3 台の隊列)

本線へ合流

本線からの分流

本線外で隊列を解除し、隊列走行終了

図 12:後続車無人隊列走行の実現イメージ

隊列走行トラックの実現にあたっては、技術面(電子連結の安全性、信頼性確保

等)や制度面(技術的要件、交通ルール等)のほか、周囲の交通環境、道路構造へ

の影響など解決すべき重要課題が多いことから、関係省庁を含む関係者の協力を得

ながら、実現に向けて着実なステップを踏むものとする。

経済産業省及び国土交通省では、2020 年度に高速道路での後続無人隊列走行

システムを技術的に実現するため、車両技術の開発及び事業として成立・継続する

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ために必要な要件・枠組みについて検討することを目的に取組を推進している。2018

年 1 月、新東名高速の遠州森町 PA~浜松 SA 間で世界初となる異なる事業者によ

り製造されたトラックの CACC システムを活用した公道での後続車有人隊列走行シ

ステムの実証実験を実施して以来、様々な実証実験を行っており、2019 年 1 月に

は、後続車無人隊列走行システム(後続車有人状態)の実証実験を開始した。

2019 年度には、技術開発、テストコース検証等を経て、電子牽引技術を用いた後

続車無人隊列走行システムの実証実験の開始を予定しており、故障時や悪天候時

等、様々な状況に対しても安全に走行できるかを検証する。

また、国土交通省では、過去のテストコースでの隊列走行の実証 27や、ダブル連

結トラックの運用の状況を踏まえつつ、新東名を中心に高速道路インフラの活用方策

について具体的な検討を推進するため、2018 年 12 月 21 日より新しい物流システ

ムに対応した高速道路インフラの活用に関する検討会において検討を実施している。

これらを踏まえ、2020 年度に高速道路(新東名)での後続車無人隊列走行システ

ムを技術的に実現した上で、その後、実証実験を積み重ね、走行距離、走行可能範

囲の拡大を図り、2022 年度以降に高速道路(東京大阪間)の長距離輸送等において

後続車無人の隊列走行の商業化を目指す。

図 13:電子牽引のイメージ

27 エネルギーITS 推進事業自動運転・隊列走行技術開発(2010 年 7 月~2015 年 3 月、

NEDO)

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また、後続車無人隊列走行システムの開発に資することを踏まえ、これに先立ち、

2021 年までにより現実的な後続車有人隊列走行システムの商業化を目指す。

図 14:高速道路での隊列走行実現に向けた工程表(概要)

〈高速道路での完全自動運転トラック 28の実現〉

物流業界における自動運転システムの活用としては、まずは、技術的容易性の観

点から、上記の高速道路での隊列走行トラックの実現に向けて優先的に取り組むも

のとする。

しかしながら、今後、②に示す通り、自家用車における完全自動運転の開発・実証

の進展に伴い、これらで得られた成果がトラックにも応用されることが期待されること、

また、海外においては、ベンチャー企業を含む民間企業等による完全自動運転トラッ

クの実現を目指した実証実験も多く行われていること 29、さらに、この高速道路での

完全自動運転トラックは、運転者不足等の課題解決に加え、隊列走行としての利用

により CO2 の削減、道路利用率の向上に対しより効果的となることが期待できること

28 本構想・ロードマップでは、完全自動運転システムを搭載したトラックを完全自動運転

トラックと呼ぶ。 29 海外企業では、2025 年には市場化すると発表している企業もある。なお、日本におい

ても、高速道路での完全自動運転の実現に向けた構想を検討している企業もある。

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等を踏まえると、我が国においても、その市場化・サービス化を念頭におくことが望ま

しいと考えられる。

このため、自家用車における自動運転システムの技術面での進展や、隊列走行ト

ラックの実証実験の成果等を鑑みつつ、高速道路での完全自動運転トラックについて、

2025 年以降の実現を視野に検討を進める 30。

〈限定地域での無人自動運転配送サービスの実現〉

革新的・効率的物流の実現にあたっては、高速道路等の幹線輸送の効率化のみ

ならず、ユーザーへの配達を含む小口配送面での物流の効率化も喫緊の課題であ

る。このような中、我が国においても、民間企業による配送サービスでの自動運転の

活用に係る実証実験が開始されている。

このため、④に示す限定地域での無人自動運転移動サービスの技術を応用する

形で、2020 年以降、限定地域の無人自動配送サービスが実現することを目指す。具

体的には、例えば、過疎地域での中心地から集落拠点への往復輸送、集落内におけ

る個別宅周回配送サービス等が実現し、その後、サービス対象やその地域が拡大し

ていくことが期待される。

また、2017 年 9 月より、過疎地域において、一定の条件のもとで貨客混載を可能

としたところであり、自動運転車両による運送サービスが可能となった後には、この制

度を活用し、同一車両を用いて旅客運送と貨物運送の両方を実施することが考えら

れる。

④ 移動サービスの取組 〈2020 年に実現する自動運転像 – 実証実験の枠組みを利用した自動運転移

動サービス〉

30 実現時期については、自家用車における自動運転システムや隊列走行トラックの開発・

実証・実現の状況、事業者による検討状況等に基づき要検討とする。

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実証実験の枠組みを利用した自動運転移動サービスの実現像について、最低限

以下を満たすものとして定義する。

・ 比較的単純な ODD

・ 1 人で 1 台又は複数台の遠隔監視・操作

・ ODD を超えた場合は、車両は速やかに運行を中止し、遠隔監視・操作者又

は車両内のサービス提供者が必要な対応を実施

図 15:移動サービスで 2020 年に実現する自動運転像

限定地域での無人自動運転移動サービスの公道実証に必要な道路交通法及び

道路運送車両法に基づく制度面の取組 31は着実に行われ、これにより、現時点の道

路交通に関する条約上 32実施可能である、遠隔型自動運転システムの公道実証が

可能となった。

31 警察庁は、2017 年 6 月に「遠隔型自動運転システムの公道実証実験に係る道路使用許

可の申請に対する取扱いの基準」を策定した。また、全国の都道府県公安委員会規則が改

正されたことにより、運転者が実験車両の運転者席に乗車しない遠隔型自動運転システム

の公道実証実験が道路交通法第 77 条の道路使用許可の対象行為となり、道路使用許可を

受けて実施することが可能となった。 国土交通省は、2017 年 2 月に、道路運送車両法に基づく関係法令を改正。本改正によ

り、限定地域での無人自動運転移動サービス の公道実証実験を可能とするため、安全確

保を前提に、ハンドルやアクセルペダル等がない車両を基準緩和の対象とすることが可能

となった。 32 国連経済社会理事会の下の欧州経済委員会(UNECE)道路交通安全作業部会(通称

WP1。2017 年 2 月、道路交通安全グローバルフォーラムに名称変更。)の第 72 回会合

(2016 年 3 月開催)において、「自動運転車両の実験について、車両をコントロールする

能力を有し、かつ、それが可能な状態にある者がいれば、その者が車両内にいるかどうか

を問わず、現行条約の下で実験が可能と考えられる」との自動運転に関する非公式作業グ

ループ(現在は非公式専門家グループ)の協議結果が報告され、WP1 としても了解され

た。

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また、これまでも、国家戦略特区などにおいて、完全自動運転を目指した限定地域

における公道実証実験が行われているが、これに加え、2017 年 6 月以降において、

経済産業省・国土交通省の「端末交通システムの社会実装に向けた実証」、国土交

通省/内閣府 SIP の「中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転サービス

実証実験」・「地方部における自動運転による移動サービス実用化に向けた環境整備」

など、政府主導による限定地域における自動運転サービスの実現に向けた公道実証

事業が多数実施された。また、政府主導の事業以外にも、現在、全国各地の地域に

おいて、地方公共団体、大学主導等による地域での自動運転システムの実証実験ま

たはそのための検討が行われている。

さらに、前述のとおり制度面での整備が行われたことを踏まえ、2017 年度から遠

隔型自動運転システムに係る公道での実証実験を開始した。その際、公道実証開始

時点では、一人の遠隔監視・操作者が1台の車両を監視するいわゆる「1対1」での

実証を行ってきたところ、公道実証実験の積み重ねによる状況を踏まえ、安全性が確

保されることを前提に、一人の遠隔監視・操作者が複数の車両を監視するいわゆる

「1対 N」の公道実証を行っていくこととする 33。

また、限定地域における公道外の専用空間での無人自動運転移動サービスに係

る実証実験を推進するため、2017 年内に専用空間の要件や走行方法の具体化を図

ったところ。この専用空間での無人自動運転移動サービスでは、今後、遠隔監視・操

作者を設置せずに完全自動運転によるサービス提供を行うことも考えられる。これら

の無人自動運転移動サービスについては、2017 年度より実証実験を通じた社会的

受容性の確認等を行うとともに、ビジネスモデル構築のため、関係事業者との連携等、

事業化を視野に入れた、より長期間の実証実験を行い、2020 年以降の民間ベース

での自動運転ビジネスの展開を目指す。

これらの公道実証実験等を踏まえた上で 2020 年までに、無人自動運転移動サー

ビスの実現を目指すものとし、このため、リスク最少化移行技術等の確立を図るもの

とする。

33 これまでに、東京都、愛知県、石川県、神奈川県及び福井県(2019 年4月現在)にお

いて「1対1」での公道実証実験が行われている。また、1人の遠隔監視・操作者が2台

の自動運転車を監視して走行させる公道実証実験についても福井県(2018 年 11 月から)

及び愛知県(2019 年2月から)において実施されている。

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その後、技術レベルの向上(ODD の拡大を含む)・サービス内容の拡大を図りつつ、

当該サービスの全国展開を進め、2025 年目途に全国の各地域で高齢者等が自由に

移動できる社会を実現することを目指す。

なお、実験段階から実装段階に移行するには、持続可能なビジネスモデルを確立

することが必要である。例えば、現在行われている実証実験の類型としては、①観光

型、②中山間地域型、③市街地型、④ニュータウン(オールドニュータウン)型等⑤専

用道型、⑥既存路線バスの自動化型などが存在する。これらは、自動運転による移

動サービスだけで収益を上げることが困難な場合が多いと思われるが、今後、以下

のような検討が必要となる。

他サービスとの連携

他のサービス(観光、飲食など)と連携することにより、全体で収益を上げる

(そのために、各種サービスとモビリティのデータ連携基盤を構築)

インフラによる補完

高コストな技術投資を避けるためインフラ面により安全性を高めることで全体

の投資額を抑える(廃線跡など専用/優先の走行空間等)

地方公共団体の赤字削減

全体の収益が必ずしも黒字でなくても、赤字の公共交通機関を維持するため

の地方公共団体の負担を軽減する目的で、自動運転を公共交通機関として導

入する

これらの検討を通じて持続可能なビジネスモデル成功例を作り、全国に展開してい

くことが重要である。

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図 16:レベル 4 の無人自動運転移動サービス実現・普及に向けた工程表(概要)

〈次世代都市交通システム(ART)〉

2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会においては、交通不便地域であ

る臨海部〜都心のアクセスを確保するとともに車いすやベビーカーなど誰もが快適に

利用できるユニバーサルな道路交通インフラを整え、ストレスフリーな大会運営を実

現することが課題である。

このため、「東京の成長と高齢化社会を見据えた次世代都市交通システム(ART)

の実用化」34の工程表を踏まえ、推進するものとする。その際、2020 年東京オリンピ

ック・パラリンピック競技大会については一里塚として捉え、その後の、国内他地域へ

の展開を見据えた取組を進めるものとする。

〈自動バレーパーキング 35〉

34 2014 年度に総合科学技術・イノベーション会議の下に設置された 2020 年東京オリンピ

ック・パラリンピック競技大会に向けた科学技術イノベーションの取組に関するタスクフ

ォースにおいて検討されたもの。 35 自動バレーパーキングは、本来自家用車への適用を念頭においたシステムであるが、非

常に限定された地域での自動運転システムであること、商用車のサービスから導入を進め

るとの趣旨であることを踏まえ、「④移動サービスの取組」に記載した。

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現在、駐車場の駐車スペースに自動で移動するいわゆる「自動駐車」については、

実用化されつつある。一方、例えば店舗の入り口で運転者が降車し、その後店舗の

専用駐車場内は車両が無人で走行し、空いているスペースに自動で駐車することが

可能となる「自動バレーパーキング」については、各種駐車場保有者の経営効率の

改善、駐車場の安全性向上、顧客満足度の向上等の観点から強いニーズがある。

2020 年代頃から、観光地でのレンタカーサービスや営業用カーリースサービスへ

の展開を想定し、自動バレーパーキング対応車両について、専用駐車場(一般交通と

分離、管制センター等設置)における自動バレーパーキングが実現することを目指す。

このため、2018 年度に実施した自動バレーパーキングの実証実験を通じて、関係者

の合意形成を進めるとともに、引き続き国際標準化に向けた取組を推進する。なお、

将来的には、完全自動運転が社会実装された段階で、一般駐車場での自動バレー

パーキングへと発展することを想定する。

⑤ 社会的受容性の確保と社会全体での連携体制整備 〈社会的受容性の確保に向けた社会全体の枠組み〉

日本において、具体的な地域において世界最先端の ITS を構築し、それを日本全

体に拡げていくにあたっての前提条件として、ITS・自動運転を利用し、共存すること

となる市民が、そのメリットのほか、その導入に係る社会的コストやシステムの限界な

どを事前に把握しつつ参加することが不可欠である。特に、新たな技術である自動運

転システムの社会への導入にあたっては、制度面での整備のみならず、その社会的

受容性の確保が前提となる。

このような社会的受容性の確保は、レベル 3 以上の高度自動運転システムの場合

はもちろんのこと、既に市場化されているレベル 1~2 に相当する自動運転関連技術

においても最近問題となる事例が発生するなど課題が顕在化しつつある。

レベル 3 以上の市場化・サービス実現期待時期が迫る中、ITS・自動運転に係るス

テークホルダーを明確化し、社会的受容性の確保を図る上でそれぞれが行うべき役

割を整理する必要がある。

以下に、ステークホルダーとそれぞれのステークホルダーによる取組を示す。

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図 17:ステークホルダーごとの社会的受容性の確保に向けた取組

※1:道路、通信等のインフラやセキュリティ等については、産業界と行政のどちらか

又は双方が整備することが想定される。

ITS・自動運転に係るステークホルダーについて、表 9 に分類する。

表 9:ITS・自動運転に係るステークホルダーの分類

i. 交通参加者 道路交通へ参加する全ての主体を指す。例えば、自動運転車を所有し運

転する一般の個人、交通事業者、物流事業者などの自動運転車を用い事

業を行う主体およびその乗客等が該当する。 同様に、自動運転システム非塔載の従来型の車両(以下、「非自動運転

車」という)を所有し運転する一般の個人、非自動運転車を用い事業を

行う主体およびその乗客等が該当する。さらに、自転車や歩行者等、自

動車以外の交通参加者が該当する。 ii. 産業界

自動運転車、非自動運転車に関わらず、自動車メーカー、部品メーカー

等の自動車を製作する主体と、交通事業者、物流事業者など、製作され

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た自動車を用い事業を行う主体のほか、自動車保険等の関連する事業者

が該当する。 iii. 行政

行政に係る主体として、国や地方公共団体が該当する。 iv. 社会全体

ⅰ~ⅲの主体のほか、自動運転車に直接関与しない主体も含めた社会全

体が該当する。例えば、自動運転車を用いた物流事業者から荷物を受け

取る人等。 ※ 1 主体が複数の分類にまたがることがある。(例えば、自動車メーカーに

勤める人は、産業の枠にも交通参加者の枠にもあてはまる。)

社会的受容性の確保に向けては、これらのステークホルダーごとに次のような取

組を行うことが必要と考えられる。

i. 交通参加者 交通参加者においては、自動運転車を利用する、しないに関わらず、自動運転車

の使用に関する知識の習得、理解の向上が必要となる。自動運転車に関する正しい

知識を通じ、自動運転機能の過信や誤解による事故を防ぐことができ、社会全体の

社会的受容性の確保にもつながると期待される。

また、一般の交通参加者においても、オリンピック・パラリンピック等での自動運

転車の活用による、国内外に向けた自動運転のショーケースへの参画や、自動運

転本格導入後の社会の在り方について市民として議論、検討に参画することによ

り、自動運転導入に向けた機運の醸成に関与することが必要。

ii. 産業界 産業界においては、顧客ニーズに基づく自動運転関連商品、サービスの開発を

行うことが期待される。自動運転技術そのものの技術力向上はもちろんのこと、自

動運転車を用いた様々な魅力的なサービスの開発、自動運転車の利用者の安心

安全につながるような自動運転車向け保険商品の開発をはじめ、新たなビジネス

の創生に向け、自動運転車を用いた様々なサービスの提供を可能とするビジネス

モデルの開発等を通じ、社会的受容性の確保のほか、日本の自動車関連産業の

競争力強化が期待できる。

iii. 行政

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国は、自動運転に係る制度整備大綱で示された、交通関連法規の見直し等の

検討を含む自動運転に関連する制度整備を行う。国及び地方公共団体は、積極

的に連携し、インフラ面の環境整備の推進、自動運転の導入に対するエビデンス

に基づいたベネフィットとリスクの提示をするとともに、各地域の住民、事業者の実

証実験や事業化への積極的な参加を促進するような枠組みの検討のほか、交通

参加者、あるいは社会全体を巻き込んだ自動運転社会の将来像を見据えた取組

を加速することが期待される。また、自動運転車の安全な市場導入に向け、自動

車メーカーや販売店等と連携して、運転上の留意事項などについて、運転者等の

啓発に努める。

iv. 社会全体 社会全体においては、上記ⅲで記載したようなエビデンスに基づき、自動運転

が地域の人口減少、高齢化等の諸課題の解決策としてどれだけ有効であるかを

把握し、社会課題解決へ寄与するものであるという理解の醸成が必要である。

〈社会的受容性の確保に向けた具体的な取組〉

ITS・自動運転に係る社会的受容性向上に係る取組は、まずは、当該製品・サービ

スを提供する事業者が、その消費者等に対しその技術が有する機能や性能の限界

等についての周知を図るなど、ベネフィットや効用、新しいリスクを含めた正しい知識

を提供することが原則になるが、その製品・サービスの普及・標準化の進展を見据え

ると、企業一社で取り組むものでは必ずしもなく、また、社会システム全体の観点から

政府としての取組も必要になりうることを踏まえ、今後は、中立的な学会等の大学・研

究機関も含む産学官連携による体制整備を検討することが必要である。

このような認識の下、社会的受容性向上にあたってまずは自動運転に係る社会イ

ンパクトを客観的に評価すべきとの観点から、2016 年度より、SIP 自動走行システム

を通じて、工学、社会等の広範な分野の専門家からなる検討体制を整備するとともに、

自動運転に係る社会面・産業面の分析に係る調査を実施した。

また、SIP 自動走行システムにおいては、学生を含む市民と直接対話を行う市民ダ

イアログを開催してきている。加えて、経済産業省・国土交通省連携事業においても

2016 年度からシンポジウムを開催しており、今後とも引き続き、このような取組を推

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進する。SIP 第 2 期自動運転(システムとサービスの拡張)においては、自動運転の

社会実装を見据え、自動運転に関する社会的受容性の醸成の取組を強化していくも

のとする。

〈地域を含めた多様な主体による連携体制の整備〉

ITS・自動運転に対する関心の高まりの中、そのイノベーションを推進するには、多

様な業界・主体が情報交換を行い、現場のニーズを踏まえた新たな取組が創発され

るような場を構築し、地域、中小・ベンチャー企業を含む社会全体の底上げを図ること

が重要である。

このため、自動車業界、電機業界等の業界内のみならず、IT 業界、金融業界、中

小・ベンチャー企業など分野横断的に幅広い業界、自動運転に関連する大学・研究

機関、NPO などの公共団体、関心・ニーズを有する地域等が意見交換を行うことが

できるような場(地域協議会、フォーラムなど)を整備するものとする。

その上で、そのような体制を通じて、特に各地域における移動に係るニーズを踏ま

えて、当該地域の地方公共団体、地域の中小・ベンチャー企業が連携して、小型モビ

リティの活用を含む ITS・自動運転による課題解決に向けた具体的な取組に実際に

つながるような仕組みを含めることにより、地方創生にも資するものとしていくものと

する。

⑥ 実証実験 〈自動運転の公道実証に係る制度整備〉

日本における自動運転の公道実証・実走行環境は、自動運転と道路交通に関する

条約との関係の整理等に関する国際的議論を踏まえて整備されてきている。具体的

には、運転者席に運転者が乗車し、道路交通法を始めとする関係法令を遵守して走

行し、緊急時の対応が可能な形態であればどの運転自動化レベルであっても、特段

の許可や届出を要することなく、公道実証実験は可能である。2017 年 6 月には、道

路交通に関する条約上の整合性が確認された遠隔型自動運転システムの公道実証

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について、実施を可能とするための制度を整備しており、我が国の実証実験に係る

制度環境は世界各国と比較して最先端の環境になっている。

また、車両の安全基準についても、多様なイノベーションを推進することを念頭に、

ハンドルやアクセルペダル等のない車両について道路運送車両の保安基準の緩和

の対象とすることを可能とするため、2017 年 2 月に道路運送車両法に基づく関係告

示の改正を行った。

図 18:実証実験における安全基準・交通ルールの整備

限定地域での無人自動運転移動サービスの実現に向けては、これらの制度整備

により、公道実証が可能となった。また、2017 年 4 月には、模擬市街地等のテストコ

ースが、開所されるとともに、当該テストコースを活用し、安全確保措置を評価する事

前テストサービスが 2018 年 2 月に開始された。さらに、現在、国主導のプロジェクト

を含めて多くの公道実証実験が実施されているところであり、今後とも、これらの制

度・施設を活用しつつ、国内における積極的な公道実証実験の実施を推進する。

さらに、国家戦略特区において、地域限定型「規制のサンドボックス」として、国・

地方公共団体・事業者が一体となって作成した区域計画(サンドボックス実施計画)

が内閣総理大臣の認定を受けた場合に、規制の特例措置を受けられることとするこ

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とにより、自動運転等の高度で革新的な近未来技術に関連する実証実験の迅速か

つ円滑な実現に資する制度の創設に取り組んでいる。

また、2017 年に東京都及び愛知県、2018 年には、北九州市及び福岡市において

実証実験を実施する民間事業者に対して、各種相談や情報提供等を行う「自動走行

ワンストップセンター」を設置しており、今後更なる活用を図る。

〈官民連携体制の整備と公道実証に係るデータの共有〉

自動運転による移動サービスの早期実現と社会実装を加速するため、2017年より

国の公道実証によって得られたデータを関係者間で共有している。そのため、得られ

たデータについてデータベースを構築し関係者間で共有しており、次の実証へ反映で

きるほか事業化の検討に活用できる。データの共有は、社会受容性の確保にとって

も有用であるとともに、今後の研究開発や制度設計の検討にあたっても重要なものと

なる。

データの収集にあたっては、公道実証で得られたデータを3つのフォーマットに分け

て共有している。公道実証の前提となる走行ルート、距離・気象、時間や車両諸元、

通信方式等の「走行環境データ」、ドライバー操作や、難しい状況に対処した事例な

ど安全性向上に資する情報である「困難な状況データ」、乗客・周辺住民の属性(年

齢、性別等)、利便性の評価・ニーズ等のアンケート集計結果、地域特性(人口規模

等)、費用対効果の「事業性データ」について共有を図っている。

次の実証に向けた課題設定として料金設定や、異なる環境、他の交通主体がより

多く存在する環境での実証等を検討するために、情報の分析・活用を行い、2018 年

度、2019 年度と公道実証で得られたデータを蓄積し、共有すべきデータ項目につい

ては必要に応じて見直しを図っていく。

〈日本における官又は民による自動運転実証実験〉

前述のとおり、実証実験における安全基準や交通ルールの整備により、日本国内

各地で自動運転の実証実験が実施あるいは予定されている。

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図 19:日本における主な自動運転実証実験(2018 年度以降)

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〈実証実験の主な検証項目〉

これまでに行われてきた、またはこれから行われる予定の政府主導の自動運転実証

実験の主な検証項目を以下に示す。

表 10:実証実験の目的別分類

目的 検証項目 該当する実証実験

車両性能の検証 遠隔監視の安全性、信頼性の検証

(保安基準への適合性確認、基準緩

和措置における安全性確保の検証

等)、等

ラストマイル自動運転 ❶~❹ トラックの隊列走行 ❶ 空港制限区域内における自動

運転 ❶~❹

気候条件による

車両性能への影

響検証

降雨、降雪、積雪、濃霧によるセンサ

ー等の検知能力検証 積雪時の走行の検証、等

ラストマイル自動運転 ❶~❹ トラックの隊列走行 ❶ 地方部における自動運転によ

る移動サービス ❶~❺

自動運転を構成

する技術課題の

検証

高精度3次元地図の検証 運転者状態の評価等の HMI の検証 信号情報提供技術の検証 一般道から高速道路への合流支援情

報の検証、等

ラストマイル自動運転 ❶~❹ トラックの隊列走行 ❶ SIP 事業等 ❶、❷

道路及び周辺設

備の設定・維持

管理の検証

道路構造の要件、道路の管理水準の

検証 遠隔監視のための通信システムの検

証、等

ラストマイル自動運転 ❶~❹ トラックの隊列走行 ❶ 地方部における自動運転によ

る移動サービス ❶~❺ SIP 事業等 ❶、❷ 空港制限区域内における自動

運転 ❶~❹

サービス内容の

検証 道の駅等の地域拠点と集落の間にお

ける貨客混載等による配送実験 新たな観光客の流れの創出、等

ラストマイル自動運転 ❶~❹ 地方部における自動運転によ

る移動サービス ❶~❺ ニュータウンにおける自動運

転サービス ❶、❷ SIP 事業等 ❶、❷

サービスの運用

検証 車両の維持管理コストの確認 運営主体の在り方検討、等

ラストマイル自動運転 ❶~❹ トラックの隊列走行 ❶ 地方部における自動運転によ

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る移動サービス ❶~❺ ニュータウンにおける自動運

転サービス ❶、❷ SIP 事業等 ❶、❷ 空港制限区域内における自動

運転 ❶~❹

社会的受容性の

検証 自動運転技術への信頼性、乗り心

地、運転者不在に対する心理的影響 自動運転技術を使った公共バス、ラス

トマイルモビリティの社会的受容性調

査、等

ラストマイル自動運転 ❶~❹ トラックの隊列走行 ❶ 地方部における自動運転によ

る移動サービス ❶~❺ ニュータウンにおける自動運

転サービス ❶、❷ SIP 事業等 ❶、❷ 空港制限区域内における自動

運転 ❶~❹

〈2020 年東京オリンピック・パラリンピックをマイルストーンに置いた実証実験〉

未来投資会議での総理発言 36を踏まえ、内閣府 SIP では関係省庁と連携しつつ、

早期の自動運転に必要となる道路交通インフラ等を含む走行環境を整備し、日本自

動車工業会の協力も得つつ、国内外の自動車会社やサプライヤー、大学等の参加も

得て 2019 年秋から東京臨海地区等で実証実験を行う。2020 年には日本自動車工

業会がこれらの道路交通インフラを活用しつつデモを行い、実用化へと結実させる。

また、オリンピック・パラリンピック終了後のレガシー化を見据え、普及策を検討すると

ともに、実証実験、研究開発も継続し、日本の自動運転について国際発信や社会的

受容性の向上を図る。

〈その他の実証実験〉

36 2018 年 3 月 30 日第 14 回未来投資会議総理大臣発言「2020 年の東京オリンピック・パ

ラリンピックに向けて、我が国で自動運転社会を実現する。この大きな目標に向かって官

民で進めてきた実証は、いよいよビジネス段階に入ってきている。多様なビジネス展開を

視野に取り組みを一層加速する。」

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上記以外にも、新たな社会課題の解決に向けた様々な実証実験が予定されている。

下記にその一部を示す。

表 11:その他の主な実証実験

実証実験 実施主体 概要

自動運転を 視野に入れた 除雪車の高度化

国土交通省 除雪作業の省力化のため、運転制御・操作支援の

機能を備える高度化された除雪車の開発を段階的

に推進し、2018 年 2 月より高速道路で試行導入し、

2019 年 3 月からは一般道路での実証実験を実施

中。

都市交通におけ

る自動運転技術

の活用方策に関

する検討

国土交通省 ・ニュータウンにおける持続可能な公共交通サー ビスの実現に向けた自動運転サービスの導入に

よる効果・課題整理を踏まえ、2018年度に実証実

験を実施。 ・ガイドウェイバスや拠点内回遊型バスなど基幹 的なバスにおける実証実験準備及び情報共有の

場の開催を予定。

今後の実証実験においては、これまで検証してきた車両性能の評価、気象条件(積

雪など)による車両性能への影響評価、自動運転を構成する技術課題の評価、道路

及び周辺設備の設定・維持管理の評価、サービス内容の評価、サービスの運用評価、

社会的受容性の評価等の結果も踏まえ、実用化に向けた課題をより明確にした上で、

どのような解決が必要かを考えて実証実験を推進することが必要である。また、2020

年に向けて多様なビジネス展開を視野に取組を一層加速することが必要である。

(4) 国際基準・国際標準の推進

〈国際的な基準・標準への戦略的取組〉

我が国自動車産業が世界をリードし、交通事故の削減をはじめとする社会課題の

解決に積極的に貢献するため、協調領域の取組推進の基盤となる国際的なルール

(基準・標準)づくりに戦略的に対応する体制の整備が重要である。

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自動運転に係る国際基準の検討に関しては、国連の自動車基準調和世界フォー

ラム(WP29)において、自動運転専門分科会(GRVA)やその下に設置されている自

動操舵に関する技術基準を検討する専門家会議、乗用車の衝突被害軽減ブレーキ

専門家会議、サイバーセキュリティタスクフォース、自動運転認証専門家会議におい

て共同議長や副議長に就任している。WP29 においては、有人でのレベル 3 以上の

自動運転システムも含む議論も開始されており、今後とも、自動運転分野で国際的な

議論を主導していく。

自動運転に係る国際標準の取組に関しては、重要な TC に我が国から議長が選

出される 37など、我が国は議論を主導できる立場にある。また、ISO/TC204(ITS)と T

C22(車両)の関係が複雑になってきたことも踏まえ、この分野の国内審議団体である

(公社)自動車技術会に自動運転標準化検討会を設置し、横断的な情報共有や戦略

検討の体制を整備している。一方で、自動運転への関心が高まる中、国際標準化項

目が近年顕著に増加しており、これに対応するため、標準化活動を行う専門家人材

等のリソースの確保の仕組みの強化について引き続き検討する必要がある。重要な

テーマとしては、通信、人間工学、機能安全、セキュリティ、認識技術等がある。

さらに、ルールを基盤に展開される自動運転で世界をリードするには、基準と標準

を俯瞰した国際戦略を持つことが不可欠との認識の下、基準と標準をつなぐ戦略的

検討を行う場として、2016 年 5 月に自動運転基準化研究所 38が設置されており、今

後とも、我が国としての自動運転の将来像を踏まえ、国際的な活動をリードできる戦

略づくりを進めていく。

その際、完全自動運転システムに必須であるだけでなく、高度安全運転支援シス

テム(仮称)においても不可欠となるリスク最少化移行技術に係る国際基準について

は、現在国連の場で取り組んでおり、引き続き我が国として主導的に検討していく。

37 TC22 では、情報セキュリティや機能安全等を扱う SC32(Electrical & Electronic components and general system aspects)の議長・幹事国、TC204 では、地図情報を扱う

WG3(ITS Database technology)、自動車走行制御を扱う WG14(Vehicle/Roadway warning and control systems)のコンビーナ(議長相当)が我が国から選出されている。 38 本研究所は、自動車基準認証国際化研究センター(JASIC)内に設置。(独)自動車技

術総合機構交通安全環境研究所が、同研究所の所長を担っている。

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また、自動運転やコネクテッドカーの実現・高度化のためには電波の活用や情報

通信ネットワークの安全性の確保等が不可欠であり、ITU39にて 2019 年世界無線通

信会議の議題として「ITS 用周波数の世界的あるいは地域的調和」を取り上げること

が合意されたことから、自動運転を含めた ITS 用周波数の国際的な調和に向けて、

我が国として主導的に検討していく。

〈国際的な連携/リーダーシップの発揮〉

今後、自動運転システムの開発、普及を含む世界最先端の ITS の構築を図ってい

くためには、日本国内での活動にとどまることなく、グローバルな視点での取組・連携

を進め、かつリーダーシップを発揮することが必要である。

このためには、既存の国際的枠組みや欧州、米州等における活動に積極的に参

加し、自動運転システムに係る用語や、機能・構成技術や性能基準、適合性評価等

を含む国際標準等に係る情報交換、ヒューマンファクター、社会的受容性等に係る共

同研究等をグローバルな観点から進め、そのような活動を通じて、日本がグローバル

な合意形成において主導的な役割を担うことが必要である。このため、SIP 自動走行

システムにおいて、日本における自動運転に係る国際会議を毎年開催してきたところ、

SIP 第 2 期自動運転(システムとサービスの拡張)においても、国際的に調和した自

動運転技術の導入を目指し、国際的なリーダーシップの発揮を目指す。

また、近年世界的な自動運転に係る関心の高まりの中、ハイレベルでの国際連携

が進みつつある中、我が国としても積極的に対応していく。具体的には、2017 年 6 月

には、G7 交通大臣会合がイタリア(カリアリ)で開催され、より高度(レベル 3、レベル

4)な自動運転技術の有人下での実用化に向けて、国連の WP29 における国際的な

レベルでの協力を目指すことや自動運転に関するワーキンググループにおいて自動

運転のベストプラクティス、研究活動やデータについて情報交換すること等が宣言文

に盛り込まれた。昨年 6 月・10 月は、カナダ(オタワ・モントリオール)、今年 4 月はフ

ランス(パリ)にて、政策担当者間のワーキンググループが開催され、各国の自動運

39 国際的な周波数分配の決定や通信に関する国際標準化・勧告化を行う国際機関として ITU(国際電気通信連合)がある。その中にある ITU-R(国際電気通信連合 無線通信部門)におい

て、2019 年世界無線通信会議(WRC-19)の議題として「ITS 用周波数の世界的あるいは地域的

調和」を取り上げることが合意された。

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転政策等の状況や各国共通の課題(社会的受容性、安全性の検証、実証実験、責

任関係等)について情報提供が図られた。今後も、同会合及びワーキンググループで

の成果を踏まえつつ、G7 間での連携を進めていく。また、二国間では、特にドイツと

の間では、自動運転に係るハイレベルの共同声明 40を発出しており、今後、同共同

声明に基づき取り組むとともに、必要に応じ、戦略的観点から、他の国・地域との連

携も検討する。

40 2017 年 1 月、鶴保科学技術政策担当大臣は、ドイツ教育研究大臣と「自動走行技術の

研究開発推進に関する日独共同声明」に署名。同声明では、今後、自動走行技術の研究開

発を連携して取り組むこととしている。 2017 年 3 月、世耕経済産業大臣と高市総務大臣は、ドイツ経済エネルギー大臣と「第

四次産業革命に関する日独共同声明(ハノーバー宣言)」に署名。同声明では、自動運

転・コネクテッドカーを含む自動車産業政策に関する協議を実施するとしている。

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3 MaaS 等の新たなモビリティサービス

(1) 海外における新たなモビリティサービスの取組

① 新たなモビリティサービスの普及・拡大 第 4 次産業革命の波がモビリティの世界にも到来する中、IoT や AI を活用した新

たなサービスが拡がりつつある。世界的には、複数の交通モーダルを統合し、一元的

に検索・予約・決済が可能な MaaS や、需要に応じて運行ルート等を柔軟に変更する

デマンド交通サービス、シェアリングエコノミーの潮流を反映したカーシェアや相乗り

サービス等が拡大している。

図 20:モビリティサービスの類型 41

〈B2C カーシェア〉

北米、欧州では、我が国で主流のステーション型とは異なり、決められたエリア内

であれば、借受場所とは異なる道路上や公共駐車場等に自由に乗り捨てができるフ

41 「IoT や AI が可能にする新しいモビリティサービスに関する研究会中間整理」

(2018/10/17、経済産業省)

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リーフロート型 B2C カーシェアサービスの展開が進みつつある。利用者にとっては、

移動先での駐車時間中の利用料を支払う必要がなく、また空き駐車場の探索に要す

る時間が短縮する等、便益の大きいサービスであり、この利便性の高さを背景に、北

米、欧州を中心に利用者は急速に増加している。

〈C2C カーシェア〉

C2C カーシェアとは、個人が所有する自家用車を、異なる個人が借り受けるため

のマッチング機能を提供するカーシェアサービスで、世界各地でプラットフォーム化を

狙ったベンチャー企業の登場が目立つ。借主に対しては、利用履歴等からニーズの

ある車両をレコメンドする一方、自家用車の貸主に対しては、同型の車両の価格設定

傾向等から優位性のある価格設定をレコメンドする機能を実装するなど、データを活

用したサービス高度化が進められている。

〈準自由経路型デマンド交通(マイクロトランジット)〉

マイクロトランジットとは、利用者の需要に応じて高頻度でルートを更新しながら運

行する乗合バスサービスである。スマホによる移動需要情報と運行情報の連携によ

り、従来の路線バスに比してフレキシブルにルート設定できるため、利用者の利便性

と運行事業者における輸送効率向上を両立するサービスである。また後述する自由

経路型デマンド交通が主に乗用車サイズの車両を用いるのと比べて、輸送力が大き

い車両を用いるため、利用者の利用料も比較的低額に抑えられるという点を強みとし

ている。

〈自由経路型デマンド交通〉

自由経路型デマンド交通とは、利用者の需要に応じて柔軟なルートや時間で自動

車を配車するモビリティサービスの総称である。アプリ等により、タクシー運転者と一

人の利用者をマッチングするタクシー配車や、同方向に移動する利用者のマッチング

を行い、まとめて効率的に輸送する相乗りタクシー等のサービスが該当する。他にも、

一般運転者が自家用車を用いて一人の乗客を輸送するライドヘイリング、同方向の

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移動者同士のマッチングをして輸送するカープーリングのようなサービス形態も含ま

れる。これらの様々なサービスを包括的に提供するプラットフォーマーが各国で出現

してきており、存在感が増してきている。

〈物流 P2P マッチング〉

人の移動に限らず、モノの移動に関する新たなモビリティサービスを創出する動き

が見受けられる。例えば、物流 P2P マッチングサービスは、プラットフォームを通じて

効率的に荷主と配送者をマッチングするサービスである。リアルタイムで車両と貨物

の分布をモニタリングする技術を基盤に、空車の配送車両と配送車両周辺の集荷待

ちの荷主を把握し、効率的なマッチングを実現することで需要と供給のバランスを適

正化し、モノの輸送効率向上に貢献している。

こうした新しいサービスは、消費者の利便性の向上のみならず、輸送の効率化や

運営コストの削減、新しいビジネスモデルの創出等、事業者側にもメリットがある。他

方、デマンドカーサービスの急速な成長が、都心部を中心とした交通量の急速な増加

につながり、結果的に交通渋滞や大気汚染を助長している事実が問題視されつつあ

る情勢にも注視が必要である。実際、米国ニューヨーク市街を走るアプリベースの配

車車両は 2015 年の 1 万 2600 台から 2018 年に 8 万台に増加しており、ニューヨー

ク市は、配車サービス車両への新規ライセンス発行を制限する条例を発効するに至

っている。

② 国、都市レベルでの課題解決に向けた MaaS の取組 前述のとおり、個別モーダル単位の高度化ならびに普及拡大に伴う弊害も指摘さ

れつつある中、国家や都市レベルで多様なモビリティサービスの全体最適化を図るこ

とによって、渋滞解消や移動弱者対策等、都市交通行政の課題解決を目指す動きが

顕在化しており、これを体現するサービス体系が MaaS と称される概念である。

MaaS は、交通モードごとに分断された交通体系の不便さや非効率性を解消する

だけでなく、新たな料金体系により利用者の行動を変容させる可能性を有している。

さらに、人の移動のみならず物流も含めた発展が期待されている。

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例えば、ダイナミックプライシング 42を料金体系に適用し、需要が集中している交通

モードの価格を相対的に高く設定することで、低稼働の他交通モードの利用を促進し、

移動需給の最適化に貢献することが期待されている。

表 12:MaaS 拡大への取組・・・MaaS Global、行政の取組事例

MaaS に取り組む代表的な事業者がフィンランド出自の MaaS Global である。フィ

ンランドの運輸交通省(LVM)は、ICT 活用による新産業創生の取組に注力しており、

その一環として MaaS を重点領域の一つに位置付け、国家アジェンダとしてコンセプ

トを喧伝している。この背景もあり、MaaS Global は LVM 及び技術庁のバックアップ

を受けて、MaaS Global を設立した。Whim という MaaS アプリを通じ、バス、トラム、

バイクシェア、レンタカー、タクシー、カーシェア等、各種移動手段のルート検索、予

約、決済機能を一元化するとともに、サブスクリプション型 43の料金体系を提供する

点に特徴がある。公共交通の利便性を自家用車並みもしくはそれ以上の水準に高め

ることで、自家用車から公共交通による移動へのシフトを促すことを目指している。サ

ービス提供に必要な交通事業者間のデータ連携も、交通事業者の API の開放を義

務付けた法律の発効等、行政からの後押しで前進している。実際に、Whim の利用

者に限定すると、利用前と比較して公共交通の利用が 48%から 74%に増加、自家用

車の利用が 41%から 20%に減少し、自家用車から公共交通へのシフトを実現してい

る。

図 21:MaaS Global ビジネスモデル 44

42 ダイナミックプライシングとは、需給状況に応じて価格を変動させることによって需要

の調整を図る手法 43 サブスクリプション型とは利用者が商品やサービスを所有するのではなく、商品やサー

ビスの利用権を得て、利用に応じて料金を支払う方式 44 MaaS Global 公式ホームページ

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また、世界的には行政を主体とした MaaS への取組も見受けられる。例えば、公共

交通の利用率が低く、渋滞が深刻な米国のロサンゼルス市が様々な交通手段を利

用可能なワンストップポータル GoLA45を展開する等、交通モードごとに分断された交

通体系の不便さや非効率性を解消することで、公共交通の利用を促進し、過度な自

家用車依存の交通体系からの脱却を目指した地方公共団体の取組も活発化する傾

向がうかがえる。

(2) 日本における新たなモビリティサービスの取組

我が国においても、タクシー配車やデマンド型乗合バス等、AI や IoT を活用した新

たなモビリティサービス展開は活発化しつつあり、利用者の利便性の向上、地方都市

での交通課題の解消や、高齢者等の移動弱者問題の解決、地域の活性化等、大き

なポテンシャルを有する。

i. 新たなモビリティサービスの創出・高度化

昨今我が国でも取組が盛んなタクシー配車アプリは、アプリ等を介して利用

者とタクシー運転者をマッチングするサービスである。従来の電話によるタク

シー配車と比較しても、現在地周辺のタクシーを簡便かつ迅速に配車すること

ができる点で利用者の利便性が高い。また、タクシー事業者にとっても導入に

よるメリットが見込まれる。例えば、過去のアプリ利用者の利用履歴等からタ

クシー需要を AIで予測し、運転者に経路をナビゲーションするシステムを導入

することで、経験の浅い若年の運転者でも需要に応じた最適な配車が可能と

なることから、売上の底上に繋がりうる。また、経験の違いによる収入格差の

是正が、若年層の運転離れの抑制、ひいては運転者不足問題の解消につな

がることが期待される。

また、マイクロトランジットの高度化と活用拡大は、現在の公共交通におけ

る事業者、利用者、社会が抱える課題を解決する可能性を有している。例え

ば、財政的要因等で交通ネットワークの維持が困難な地域においては、需要

45 GoLA は、ロサンゼルス市が事業者の協力を得てリリースした、公共交通、シャトルバ

ス、ライドシェア、カーシェア、バイクシェア等、様々な交通手段を利用可能なワンスト

ップポータル

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に応じて自動で配車や経路設定、乗合利用者間のマッチング等を行う AI 技術

等の活用を通じ、事業者の運行費用削減が期待できる。利用者の立場からは、

高齢者等の移動弱者における比較的低価格でのドアツードアの移動手段確

保につながり、移動の活発化による地域経済社会の活性化への効果も期待

される。

ii. データ連携基盤づくり

更に、我が国においても、各種移動手段のルート検索、予約、決済機能を

ワンストップで提供する MaaS 実装に向けた取組が活発化しつつある。現在

は、多様な事業者が都市部、郊外、観光地等の様々なエリアで実証実験を進

めている状況にあるが、利用者の目線からは、MaaS 相互の連携等による

「ユニバーサル MaaS」の仕組みを構築していくことが求められる。

例えば、バス業界では GTFS46に準拠したバス情報フォーマットの策定・公

表により、事業者間のデジタル化及びデータ連携基盤構築に向けた取組が活

発化しており、現在全国で 90 のバス事業者や自治体が時刻表等の静的情報

のデジタル化及びオープン化を実現している。将来的なユニバーサル MaaS

の実現に向けては、リアルタイムの運行情報、予約状況等の動的情報も含め、

同業者間のみでなく、MaaS システムと交通事業者間での連携に向けた各種

データのデジタル化及びデータ連携基盤の構築が求められる。

今後は、さらに、人の移動のみならず、物流も含めた発展が期待されている。

iii. 非モビリティ領域との連携

このように、我が国においても MaaS 等の新たなモビリティサービスが徐々

に発展しつつある状況だが、今後観光や飲食、不動産等の多様な非モビリテ

ィ領域と連携することで、さらなる経済や地域の活性化につながることが期待

されている。例えば、柔軟に観光スポットを結ぶことができ、観光用途の移動

と親和性が高いマイクロトランジットによるエリア内の回遊行動の促進や、

MaaS アプリを介した飲食や観光に関する施設やクーポン等の広告配信によ

46 GTFS とは、公共交通機関の時刻表とその地理的情報に使用される共通形式を定義した

もの。当初は Google 社向けに作成されていたが、現在はオープン化され誰でも使用可

能。北米・欧州を中心に海外で広く利用されている。

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る消費活発化、あるいは、モビリティサービス利用権付の不動産における駐車

場スペースの他用途転用による不動産価値の向上といった可能性が考えら

れる。それ以外にも医療・介護分野におけるモビリティ活用の高度化により、

特に移動弱者の移動性向上や社会コストの低減に寄与する可能性が想定さ

れる等、非モビリティ領域との連携に対する社会の期待は大きい。

iv. 自動運転の活用

また、将来的に自動運転技術の融合が進めば、現在のモビリティの在り方

も大きく変容していくことが見込まれる。例えば、我が国で実施されているロボ

ットタクシーやロボットシャトル、ロボット宅配等の自動運転を活用した新たな

モビリティサービスの実証事業では、より一層の利便性向上に加えて、運転者

不足や、公共交通機関の事業性、地方の過疎地域における移動弱者課題、e

コマース等の拡大により急増する需要に対応することが困難になりつつある

物流等、日本が抱える社会課題の解決への貢献可能性の検証が進められて

いる。

このように、自動運転技術の実装を含むモビリティサービスの高度化とともに、複

数の交通機関や非モビリティ領域のサービスがデータ連携基盤によりシームレスに

連携することで、様々な社会課題を解決する MaaS の取組が始まりつつある。

今後は、人流と物流の移動などすべての移動における、ニーズに応じた地域全体

の最適化を図るとともに、MaaS 相互の連携によるユニバーサル化、移動と多様なサ

ービスとの連携による高付加価値化、多様な交通モード間の交通結節点や新たなモ

ビリティサービスに対応した走行空間の確保等のインフラ整備やまちづくりとの連携

により、全ての地域、全ての人が新たなモビリティサービスを利用できる将来の

MaaS の実現を目指す。

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図 22:将来の MaaS 像 47

(3) 課題と取組の方向性

このように、日本においても MaaS 等の新たなモビリティサービスの取組は始まり

つつあるが、本格的な社会実装は緒に就いたところである。現状、ビジネス面では、

データ連携・利活用拡大のための基盤整備や非モビリティサービスとの協業、制度面

では、新サービスに対する法令の適用関係等において課題がある。

加えて、こうした新たなモビリティサービスの取組が地域における社会課題の解決

に真につながるものとするためには、地域ごとのモビリティに対するニーズや課題に

応じて、企業等と連携して新たな取組に挑戦する地域の動きを後押ししていく必要が

ある。

① データ連携・利活用拡大のための基盤整備 〈モビリティ関連データのデジタル化の促進〉

交通事業者をまたいだシームレスな移動手段を実現するにあたり、デジタル技

術の活用は必要条件であるが、例えばバスの場合、特に中小規模の事業者にお

47 第 2 回道路交通ワーキンググループ(2019/2/15、内閣官房 IT 総合戦略室)

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いては、時刻表や運賃等といった静的情報でさえデジタル化されていないケースが

散見される。各バス事業者のアナログで管理されたデータを、乗換案内サービス事

業者がデジタル化して取りまとめを行っているのが実情である。このため、まず、静

的情報や動的情報がデジタル化されていない交通事業者においては国が推奨する

データ形式によるデータ整備が進むよう、支援の充実等により推進を図るべきである。

そして、既にデジタル化され、システムに組み込まれている交通事業者についても国

が推奨する形式へのシステム改修を促進していく必要がある。

〈データ・API のオープン化・標準化〉

事業者におけるデータ整備や加工・分析には一定のコストを要しており、また独自

のデータを差別化の源泉とみなして自社サービス内に閉じた活用を望む事業者も多

く存在することから、データのオープン化や API 連携に向けた協力体制の構築は容

易ではない。データオープン化・API 連携が将来的な MaaS の高度化に貢献し、社会

レベルでは交通流最適化による渋滞解消等に資すること、事業者レベルではピーク

需要に合わせて保有する設備ならびにその維持に係る費用のスリム化に寄与しうる

こと等、社会的意義・目的や、提供者へのメリットを明らかにし、事業者の動機付けを

行うことが必要である。その際、MaaS 実現に向けて連携が必要なデータを層別して

検討し、オープン化すべきデータ(協調領域)とそれ以外のデータ(競争領域)を線引

きし、協調領域に限定したデータ共有が前提となることを明確にすることも重要と考え

られる。

また、データ・API 連携を円滑に行えるような基盤の構築も必要な要素である。交

通事業者ごとにデータの形式や API の仕様が異なる場合、MaaS オペレーター

(MaaS を提供するプレイヤ)にとって、各データの同一形式への変換・加工や複数

API の仕様ごとのシステム構築にかかる時間やコストは無視できず、結果としてサー

ビス利用者の便益を損ねる可能性がある。そのため、国が推奨する形式やガイドラ

インの作成等により、一定のルール整備を行うとともに、可能な限り円滑かつ低コ

ストでデータ連携ができるよう、適切なデータ形式・APIへの統一・標準化等の仕組

みを構築することが求められる。

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〈データプラットフォームの構築〉

また、MaaS を促進するにあたり、MaaS オペレーターが入手可能なデータの種類

等を容易に把握できるよう、できる限り早期に、必要な情報を網羅したデータプラット

フォームを構築すべきである。この場合において、競争領域のデータについても、利

用料、利用範囲等のデータ授受の条件を明示して、データプラットフォーム上で利用

できるような仕組みを目指すべきである。さらに、MaaS が新たな移動需要や高付加

価値な移動を創出するためには、小売・飲食や、宿泊・観光等の異業種サービスや

MaaS 間の相互連携を考慮したデータプラットフォームを構築することが望ましく、ユ

ニバーサルな MaaS サービスの実現を目指す MaaS 相互連携方針の明確化は前提

として対応が求められる。

〈運賃・料金の柔軟化、キャッシュレス化〉

MaaS は、利用者の利便性を最大限高めるため、出発地から目的地までの移動を

アプリ等で一つのサービスとして提供するものであり、究極的には MaaS が高度化さ

れ、利用ニーズを踏まえてプライシングされた運賃・料金が提供されることが望ましい。

一方で、交通モードごとの特性を踏まえつつ、利用者保護の観点から料金設定に上

限を設定するとともに、事業者が安全性を確保しつつ適正に運行できるよう、ダンピ

ングを生じさせない現行の運賃・料金制度のような仕組みを担保することが必要であ

る。

まず前提として、MaaS では、複数の交通手段を事前に一括して検索・予約・決済

を行うためには、各交通手段で事前に運賃が確定していることが必要で、予約時や

配車時に想定ルートを元に運賃を算定できる事前確定運賃の制度の導入を早急に

行う必要がある。加えて、MaaS の円滑な展開のためには、キャッシュレス化の推進

が重要である。現在主な決済手段となっている交通系 IC カードによるキャッシュレス

決済を実現していない交通事業者も見受けられる。これらの事業者は、キャッシュレ

スに対応した新たな決済システムの構築及び乗車時の確認手段を確立する必要が

あるが、特に赤字路線を抱える事業者の場合、データサーバの設置や車両ごとの車

載機の設置等、多大な投資を要することになるため、この負担をいかに軽減してキャ

ッシュレス化の推進を図るかが課題である。

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これらの基盤を整備したうえで、MaaS の利用を促進するための重要な機能として

料金体系にも新たな工夫が必要である。例えば、移動需要に応じて運賃・料金を変

動させるダイナミックプライシングは、価格設定等で需給マネジメントを行うことによっ

て交通流を最適化し、混雑の緩和や事業者の運行効率化による収益性向上、あるい

は利用者の待ち時間減少等に寄与する可能性がある。またサブスクリプション(定額

制サービス)は、事業者の一定の収入を確保するとともに、利用者の決済への手間

や追加費用の不安を払拭し、移動意欲の向上による公共交通を中心とした移動量の

増加やそれに伴うまちの賑わいの創出につながるものとして期待されている。しかし

ながら、こうした新しい料金体系の導入には様々な課題が想定される。

例えば、ダイナミックプライシングでは需給に応じて料金が変動するが、公共性の

高い交通サービス領域における需要過多時の価格上昇の許容度合い、あるいは利

用者が変動する運賃の適切な把握を担保する仕組み等、利用者保護の観点での課

題が多い。他方、サブスクリプションでは、複数の交通事業者間の運賃収入の配分に

関するルールの定め方等の課題が想定される。このように、柔軟性に富んだ新たな

料金体系は利用者と事業者に多くのメリットを提供する反面、前述のような課題も想

定されるため、十分な検討・検証を重ねたうえで、導入を進めていくことが求められる。

〈安全性の確保、個人情報の保護〉

データ連携基盤の構築に向けては、事業者によるデータのオープン化・API 開放を

阻害しないような信頼性のある仕組みが前提となる。すなわち、セキュリティの統一

基準を定める等のデータの安全性確保や、連携するデータの範囲によっては個人プ

ライバシーの問題が顕在化することが懸念されるため、匿名加工情報の利用に限定

する等の個人情報の保護に対応する必要がある。利用者の不利益を招かず、同時

に交通事業者のリスクを抑制するようなルールを官民連携を通じて形成していくこと

が重要である。

② 非モビリティサービスとの連携促進 モビリティサービスの収益化は、移動手段の提供に対する対価のみでは限界があ

ると考えられ、他サービスとの連携により、持続的なマネタイズが見込めるビジネスモ

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デルの確立が重要になる。例えば、買い物、医療、観光といった生活サービスの提供

価値の拡大あるいはその生産性向上に寄与する有効なソリューションとしてモビリテ

ィサービスを有効に組み合わせることが重要と考えられる。このような業を超えた連

携を促進する場の活性化に向けては、MaaS システム上で観光地や飲食店の情報

の検索、買い物や病院の予約等、MaaS が様々な非モビリティ領域のサービスとの

連携におけるデータプラットフォームの役割を担うことが望まれる。そして、最終的に

は MaaS を起点として、非モビリティ領域を超えて都市全体のデータをも統合するプ

ラットフォームが構築され、将来のスマートシティ実現に寄与することが期待されてい

る。

今後は、各種データを活用して、モビリティ領域と非モビリティ領域のサービスを融

合させた新しいサービスの創出に向けて、国としても推進してくことが必要である。

また、MaaS 等の新たなモビリティサービスがグローバルに今後普及・進展していく

中で、将来的には、新たに創出される産業領域のサービスの海外展開を推進するこ

とにより、我が国産業の競争力を確保していくことも必要である。

③ 制度面での課題 新たなモビリティサービスの事業化に際しては、既存制度上の位置づけが不明瞭

であることが制約となることがある。元来別の業の在り方を想定している既存の法制

度の枠組みの下で、解釈を交えて新しいサービス体系を適用する限りにおいては、

実現できるサービスの範囲に制約が生じる可能性がある。例えば、人口減少や少子

高齢化により地域交通の確保が難しくなる中、交通事業者の経営悪化や担い手不足

等の課題を解消するためには、現在、公共交通機関の確保が困難な地域でのみ許

可されている自家用有償旅客運送サービスについて、従来の市町村の区域を越えた

広域的な取組ができるような仕組みや、配車アプリを活用し、相乗りによる割安な運

賃やキャッシュレス化等により利用しやすい運賃サービスを提供できるようにルール

を整備するなどによるタクシーの相乗りの導入など、新しいサービスを提供しやすくす

るような環境整備を検討していくことが必要である。

このため、MaaS の適正な運用に向け、早急にこれまで想定していなかった MaaS

サービスが円滑に提供されるよう法令を含む制度の在り方について検討を行うべき

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であり、必要に応じて制度・運用の緩和、さらには必要な環境整備のための新たな仕

組み作りも視野に入れて取り組むことが必要である。これにより、MaaS オペレーター

の負担が減少し、参入が容易になることで、より利便性の高いサービスの実現に向

けた競争が活性化することも期待される。併せて、MaaSオペレーターのリスクを低減

させ、MaaS 市場への参入を促進する観点からは、中長期的に保険制度や公的支援

の在り方を研究していく必要がある。

④ 新たな取組に挑戦する地域の後押し 〈地域におけるニーズや課題の明確化〉

交通ネットワークの在り方は、その地域の地理的特性、社会的・歴史的な成り立ち、

産業構造・就労構造、人口動態、周辺地域との関係性等、様々な要因によって規定

される。このため、モビリティの方向性を検討する上では、地域ごとのニーズ・課題を

明確にした上で、各地域事情に適した解決策を導入し、地域全体の最適化を図ること

が必要である。その際、国、地方公共団体、民間、大学研究機関等の様々なステーク

ホルダーによる連携が想定されるが、地域住民を巻き込み、今後の方向性に関する

理解や受容性を十分に醸成していくことが重要となる。

なお、国土交通省が主催する都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会にお

いては、地域ごとの特性の違いを考慮し、「大都市型」「大都市近郊型」「地方都市型」

「地方郊外・過疎地型」「観光地型」という 5 つの地域類型を設定の上、それぞれの地

域類型における典型的な課題や今取組方向性が検討されている。

〈地域の総合コーディネーターとしての役割を果たせる地方公共団体の支援〉

域内マルチ・ステークホルダーの総合コーディネーターとしての役割を果たせる地

方公共団体の主導性や積極性が、交通課題解決への鍵となる場合が多い。このた

め、地域の課題解決と価値向上に向け、柔軟な発想と強いイニシアチブを持って取り

組む地方公共団体に対しては、多様な事業者のソリューション提供等を重点的に後

押ししていくことが重要である。例えば、2015 年 12 月に米国では Smart City

Challenge と呼ばれる都市内移動の最適化に向けた企画提案コンペを実施し、優勝

都市のオハイオ州コロンバスでは提案内容に基づく実証実験を実施しており、地方公

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共団体への資金面での補助だけでなく、民間事業者の技術提供も含む統合的な支

援体制を構築している。

〈まちづくり、インフラ整備との連携〉

都市と交通は互いに影響を及ぼし合う関係にある。そのため、MaaS 等の新たなモ

ビリティサービスが将来の都市に与える影響を見定めつつ、都市の目指すべきビジョ

ンと既存の都市・交通政策との整合性を検証しながら、両者が一体となった検討なら

びに計画の推進が重要と考えられる。

例えば、複数の交通モードにまたがる移動サービスの利便性を高めるためには、

MaaS によるサイバー空間での交通モード間のシームレス化に加えて、インフラ整備

等のフィジカル空間でのシームレス化も推進していくことが求められる。このため、既

存の交通モードの利用を想定して整備されている従来の交通結節点は、新たなモビ

リティサービスの導入に伴う交通結節点の使い方の変化を踏まえて、それらの整備

の在り方を見直していく必要がある。

前述のような取組を推進する際には、移動に係るデータを活用することで、人や物

の動きをシミュレーションし、施策実施の効果を予測することで、施設配置や空間形

成、交通施策等のまちづくりの計画の効果を高めるスマートプランニングの手法が有

効である。特に、複数交通モードにまたがる人の移動をドアツードアで把握できる

MaaS は、移動データを収集する最適なツールとしての可能性を秘めている。このた

め、中長期的な取組の広域展開を見据えて、これらのデータ活用方法を考慮した実

務レベルでの都市計画プロセスの刷新も併せて取り組んでいく必要がある

このようなデータに基づくまちづくりならびにモビリティ計画に基づき、社会にとって

最適な交通流を創出していくためには、個人の行動変容を促す仕掛けが重要となる。

前述のMaaSにおける料金体系の工夫等によるインセンティブの付与の他、MaaSと

周辺サービスの連携(クーポンの発行等)による移動時間帯・移動量のコントロール

等、個人の行動誘発への方法論は検討に値するものと考えられる。特に、災害時に

おいては、MaaSアプリ等を用いてリアルタイムの移動データと交通情報を融合し、利

用者とのタッチポイントを担う強みを活かして、人の流れを最適にコントロールする機

能を果たし、まちのレジリエンス向上に寄与することが期待される。

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但し、従来の交通結節点には既存の交通モードの利用を想定して整備されている

ものが大半であり、MaaS 等の新たなモビリティサービスを導入するにあたり、現実空

間におけるハード整備には長時間を要する。そのため、短期的には新たなモビリティ

サービスの実証実験に合わせてシームレス化に必要な交通結節点の整備を官民連

携で進めながらも、中長期的には、都市計画・マスタープランやインフラ整備等、各種

計画を踏まえた上で、新たなモビリティサービスを望ましい都市・交通の実現に資す

るような態様で位置付け、持続的な取組を推進できるかについて整理しておくべきで

ある。具体的には、新たなモビリティサービスに対応した交通結節点や走行空間の整

備に係る制度検討や、新たなモビリティサービスを都市計画マスタープランやインフラ

整備等の統合的な計画に組み込むためのガイドラインを作成し、地方公共団体向け

に展開していくことが重要である。

こうした新たなモビリティサービスの普及拡大に向けた横断的な課題を踏まえつつ、

地域ごとのモビリティに対するニーズや課題に応じて、企業等と連携して新たな取組

に挑戦する地域の動きを後押ししていくため、経済産業省と国土交通省で、本年 4 月

より新しいモビリティサービスの社会実装を通じた移動課題の解決及び地域活性化

に挑戦する地域や企業を応援する新プロジェクト「スマートモビリティチャレンジ」を開

始した。新たなモビリティサービスを推進する組織として、自らの取組状況や課題認

識等について積極的に情報共有する地方自治体や企業等が参加する「スマートモビ

リティ推進協議会」を設置し、地域毎にシンポジウムを開催するなど、地域や企業等

の取組に関する情報共有を促進し、異業種との連携を促進していく。経済産業省で

は、先駆的に新しいモビリティサービスの社会実装に取り組む地域とともに、事業計

画策定や効果分析等(「パイロット地域分析事業」)を行う。国土交通省では、地域の

交通サービスの課題解決に向けたモデル構築を行うため、全国各地のMaaS等新た

なモビリティサービスの実証実験を支援(「新モビリティサービス推進事業」)していく。

こうした取組を通じて、新しいモビリティサービスの地域における事業性・社会受容性

向上のポイント、地域経済への影響、制度的課題等を整理し、ビジネス環境整備につ

なげていく。

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図 23:スマートモビリティ推進協議会 48

48 IoT・AI が可能とする新しいモビリティサービスに関する研究会(第 4 回)

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4 共通基盤

(1) 基盤技術・関連技術の進化の方向

〈データ・アーキテクチャーの今後の方向〉

自動運転システムのビジネスモデルの変化においては、その背景として自動運転

システムに係るデータ・アーキテクチャー49の変化がある。

これまで、自動車の IT 化に関しては、自動車(車両)の内部の機器・システムの IT

化が進展するとともに、各種のセンサーが取り付けられ、それらのデータに基づいて、

自動車内の各種制御が電子的に行われる、いわゆる組込み型のアーキテクチャー50

として進化してきた。

このような中、IoT、ビッグデータ、AI 化の代表とされる自動運転システムの進展に

向けて、これらのデータ・アーキテクチャーにおいては、これらの制御が、個別車両内

のデータ・知識基盤に基づく判断も含めて、更に高度化するだけではなく、

i. 各車両において収集されたプローブデータ 51、映像データを含む走行知識データ

の一部が、ネットワークを通じて、外部のクラウド等のデータ・知識基盤に移転・蓄

積され、それらのデータは、ダイナミックマップ 52、人工知能の基盤データに加え、

各種ビッグデータ解析等の様々な分野に活用される 53。

49 製品に係る構成部品等を、その製品の個々の機能等の観点から分割・配分し、また、それらの

部品等のインターフェースをいかに設計・調整するかに係る基本的な設計構想。

50 特定の機能を実現するために、ハードウェアとソフトウェアを組み込んで作り込むタイ

プのアーキテクチャー(設計構想)。一般的に、車種間、メーカー間において互換性はな

い。 51 プローブ:もともとは探針、センサーのこと。あるいは、遠隔監視装置のこと。 近年の自動車には、速度計、ブレーキ、ワイパー等の動きを計測する各種センサー・計

測装置が搭載されている。このような中、ITS の分野では、自動車をセンサーあるいは遠

隔監視装置として見立てて、多数の自動車から携帯ネットワーク等を通じて遠隔で収集さ

れるこれらのセンサー・計測装置の情報を、プローブ情報(データ)という。 52 ダイナミックマップとは、時間とともに変化する動的データ(動的情報、準動的情報、

準静的情報)を高精度3次元地図(自動走行用地図)に紐づけしたもの。このうち高精度

3次元地図については、民間企業の出資による基盤整備会社により協調領域として整備が

進んでいる。 53 このように収集・蓄積・ビッグデータ解析される情報としては、自動車がブレーキを

かけた場所、ワイパーを動かし始めた場所・時間等の他、自動運転システムに装備された

カメラ・レーダーによって収集される情報等への発展も期待され、それらによって高精度

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ii. また、このような多数の各車両から得られたデータに加え、ダイナミックマップに係

る高精度3次元地図や走行映像データベース等も含めた外部からのデータ等に

よって生成される人工知能(AI)などのデータ・知識基盤等の一部が、再びネット

ワークを通じて各車両に提供され、当該車両における自動運転の判断に必要な

データ・知識等として活用される。 iii. その際、ネットワークの構造としては、エッジ/フォグコンピューティングなどのア

ーキテクチャーが利用される。 といった方向に進化していくこととなり、その結果、自動運転技術とデータ基盤を通じ

た交通データ等の利活用は、相乗的に発展していくことが想定される。その結果、自

動運転システムは、車両の自律制御を基本としつつも、補完的ではあるものの、今後

益々交通データ等をデータ基盤(プラットフォーム)から得て駆動するようになり、その

データを活用するためのコア技術は、従来の車両技術から、人工知能(AI)を含むソ

フトウェア技術とデータ基盤に移行していく。また、そのデータ基盤の一部としての、ダ

イナミックマップ等やそれらを保存・処理・提供等をするためのクラウド・サービス、通

信回線等の役割が重要になっていくものと考えられる。

図 24:自動運転システムを巡るデータ・アーキテクチャー(イメージ)

その際、現在、実証等に利用されている自動運転システムの多くは、外界認識に

おける画像認識等の一部を除き、多くは従来型のソフトウェアによる制御(ルールベー

3次元地図等も生成されるように進化することが想定される

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ス制御)が中心となっているが、今後、市街地などを含め、より複雑な環境での走行を

実現すべく、シーン理解・予測、行動計画なども含めて、人工知能(AI)とルールベー

ス制御の組み合わせが進んでいくものと考えられる。

図 25:将来の自動運転システムにおける人工知能(AI)の位置付け

さらに、自動運転システムのアーキテクチャーにおいては、今後、車両におけるイ

ンターフェースとしての役割が重要になっていくものと考えられる。具体的には、まず

は、運転者とのインターフェース 54としては、運転者の状況等をモニタリングしつつ、

運転者と車両がコミュニケーションをとるようなインターフェースが進化していくことが

想定される(特に、レベル2~3)。また、周辺環境のインターフェースとしては、前述

の自動車の各種機器やセンサー等による情報収集に加え、将来的には、車両周辺

の歩行者、他の移動体等に対する情報の提供、コミュニケーションなどが進化してい

くことが想定される。

その際、これらの車両と運転者や車両周辺の歩行者、他の移動体とのインターフェ

ースにおいても、今後益々人工知能(AI)が活用されるようになることが想定される。

〈自律型、協調型のアーキテクチャーと安全性の確保〉

54 特に HMI(Human Machine Interface)と言われる。

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このような自動運転システムにおいては、自動車の周辺情報等に係る多数のデータ

を様々な方法により収集することによって、自動車の操作等に活用することとなる。

その際、周辺情報の収集方法としては、車両に設置したレーダー等を通じて情報を

収集する方法(自律型)に加え、ネットワーク(携帯電話網等)を通じて、クラウド上の

情報基盤にある情報を活用する手法(モバイル型)、また、更に、道路インフラに設置

した機器や、他の車に設置した機器との通信を通じて情報を収集する方法(狭義協

調型。前者は、路車協調型であり、後者は車車協調型。)に大別することができる。

これらの技術は、互いに相反するものではなく、複数の技術を導入することにより、

多様な情報に基づく、より高度な安全運転支援システム・自動運転システムを可能と

するものであり、特に、「自律型」によるセンサー等の情報に加え、「モバイル型」を通

じたクラウド上のダイナミックマップ等の情報を用いて制御を行うような自動運転シス

テムが開発されつつある 55。

表 13:安全運転支援システム・自動運転システムの情報収集技術の種類

情報収集技術の種類 技術の内容(情報入力の手法)

自律型 自動車に設置したレーダー、カメラ等を通じて障害物等の

情報を認識

協調型 (広義)56

モバイル型 GPS を通じた位置情報の収集、携帯ネットワーク網を通じ

てクラウド上にある各種情報(地図情報を含む)を収集

路車間通信型 路側インフラに設置された機器との通信により、道路交通

に係る周辺情報等を収集

車車間通信型 他の自動車に設置された機器との通信により、当該自動車

55 ダイナミックマップで収集・提供される情報は、広義での「協調型」として位置付けら

れ、自動運転の観点からは、レーダー、カメラなどの「自律型」で収集した情報を補完

し、その信頼性の向上を図るものとして位置付けられる。 その収集・配信方法については、一般的にモバイル型による通信の活用が有力視される

が、今後、技術の進展等を踏まえつつ、路車間通信型、車車間通信型との役割分担等を考

慮しながら、具体的に検討していく必要がある。 56 本分類においては、情報収集に係る技術の種類の観点から、「モバイル型」について

も、広義の「協調型」に含めた。(なお、明確な定義はないものの、「モバイル型」に加え

て、「路車間通信型」、「車車間通信型」を活用する自動車を、「コネクテッドカー」と呼ぶ

場合もある。) 一方、「モバイル型」と、「路車間通信型」、「車車間通信型」については、そのリアルタ

イム性に加え、普及戦略の在り方が全く異なることから、本文章においては、以下、「協

調型」とは、原則、「モバイル型」を除き、「路車間通信型」、「車車間通信型」を指す。

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の位置・速度情報等を収集

特に、今後、安全運転支援システムから高度自動運転システムへ発展するにつれ、

これらの自律型と協調型の統合に向けた戦略が求められる。その際、自動運転シス

テムは、自律型の情報に基づくシステムをベースとしつつ、協調型の自動走行装置を

モジュールとして加えていくことが考えられる 57。

〈交通環境情報基盤、道路交通インフラの整備〉

自律型、協調型を含め、様々なプレイヤが自動運転の社会実装に向けた取組を進

めているが、車両単体のみではなく、車車間や路車間通信等、他車両や道路交通イ

ンフラから情報を入手・活用できるよう整備を進め、自動運転の基盤となるダイナミッ

クマップや交通流の最適化に寄与する交通管制システム等の交通環境情報基盤を

確立することは重要であり、今後も検討を進めていく必要がある。

57 自律型と協調型(路車協調型、車車協調型等)の統合に係る詳細な戦略は、官民 ITS 構

想・ロードマップ 2015 を参照。 なお、特に、自動運転システムを実現する上で不可欠となる信号情報等については、自

律型では確実な認識・処理が困難であると考えられるため、協調型の機能を付加すること

によって車両が路側インフラから提供されたデータも基にしつつ確実に認識・処理するこ

とが重要となる。

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図 26:交通環境情報利活用のロードマップ 58

ある車両の車載センサー等から得られるデータを、クラウドを介して他の車両へ情

報として送信する車両プローブ情報活用の実現に向けた取組事例は、我が国を含む

各国で見受けられる。このような取組は、自車の車載センサーでは捕捉しきれない周

辺環境の認識範囲を広げ、より高度な自動運転システムの実現に加え、運転者への

危険通知等、安全運転支援システムの性能向上に資する取組である。

また、信号、標識、路側機、駐車場等の道路交通インフラにレーダーやカメラ等の

センサー類を装備し、通信機能を持たせることで、情報ソースとして進化させる取組も

見受けられる。特に交通量の多い道路においては、対向車や停車中の車両等が障

害となり、車載センサー等による「自律型」システムでは周辺環境を認識することが難

しいケースが存在する。このような場面に対して、道路交通インフラを活用した交通環

境情報を整備・構築することは、早期の自動運転社会の実現に資する取組といえる。

58 SIP 第 2 期自動運転(システムとサービスの拡張)

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さらに、前述のような車載センサーや道路交通インフラ等から得られた情報を用い、

交通量に応じ信号制御を行うことで渋滞を削減する取組や、交通事故への早期対応

等に活用する研究もなされている。今後 AI・IoT の進化に伴い、画像データ等のビッ

グデータを用いて一層効率的な信号制御を行うことも可能になることから、深刻な渋

滞問題を抱える国を中心に導入が一層加速していくと想定される。

このような中、車載センサーや道路交通インフラ等からの情報を収集し、交通環境

情報として提供していくための交通環境情報基盤の重要性は増していくものと想定さ

れる。

自動運転システムの高度化に伴い、データ依存性が高まる中、安全性を確保した

データ・アーキテクチャーに係る設計を行う必要がある。そのために、冗長性の確保、

フェールセーフ等の多重の安全設計、セキュリティ対策(必要なデバイスや運用管理

システムを含む)を自動運転システムに織り込むとともに、当該対策を評価する技術

や評価環境(テストベッド)の整備等が必要である。

特に、「モバイル型」や「路車間通信型」等の「協調型」で得られるデータについては、

誤謬、遮断等のリスクがあり得ることを考慮して、原則、当該データを利用する自動

運転車両側の責任において対応することが必要となる 59。

〈交通関連データの流通基盤とその活用に係る将来の方向〉

ビッグデータ時代においてデータの重要性が高まる中、前述のような様々なソース

から取得されるデータの利活用は、交通関連対策の立案、安全運転支援システム・

自動運転システムへの活用だけでなく、観光産業、保険産業等に係る新たなサービ

スの創出にも寄与するものとしても期待されている。

今後、自動運転システムの進化に伴い、車載センサーから得られるデータも増加し

ていくことから、これらのデータを用いてダイナミックマップの効率的な維持・管理が実

現されていく方向性が検討されている。

これまで、これらの官民が保有するシステムは、それぞれの目的を達成するために、

垂直統合体制で個別に整備されてきた。これに対して、ビッグデータの時代において

59 なお、自律型で得られるデータについても、リスクを踏まえた安全設計・対策が必要

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は、これらのアーキテクチャーは、今後水平分業化に移行し、各分野内はもちろんの

こと、分野間を超えてデータが流通され、交通分野以外にも利用されることが期待さ

れる。

図 27:交通関連データ基盤の位置付け(イメージ)

このような構造的な変化の流れの中で、これらの大量に生成されるデータについて、

官民協力によるデータの共有・流通を可能とするための標準・ルール等の整備や、オ

ープン化等の在り方について検討していくための体制整備に向けた検討を進める必

要がある。

その際、各データは、利用目的やデータの取り扱いルールを決め、その範囲にお

いて個人からデータを収集している場合が多いことや民間企業の保有するデータに

ついては、夫々の事業・ビジネスの観点から収集されていること、また、官の保有する

データについては、新たに公開するためのシステムやデータベースを構築するための

追加費用を要すること等を十分に考慮することが必要である。

(2) 研究開発・実証の推進

〈実用化に向けた自動運転システムの研究開発・実証戦略〉

自動運転システムの実現にあたっては、センシング技術、制御技術、通信技術、AI

技術、セキュリティ技術等多様かつ広範囲な技術に係るハード面、ソフト面での研究

開発を進めていく必要がある。

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そのような中、政府においては、官民 ITS 構想・ロードマップを踏まえ、SIP や各省

庁の施策を通じて、民間の競争領域に関わらない共通基盤の技術などのいわゆる協

調領域を中心に、個別要素技術の開発やダイナミックマップ、情報セキュリティ、機能

安全 60、管制、ヒューマンファクター61などの技術を、官民連携で研究開発・実証を推

進してきたところである。

今後は、より高度な自動運転システムの実現に向けて、民間が協調して進める研

究・開発領域の拡大を図りつつ、各技術の実証(技術面、制度面、社会的効用面の

検証)及び標準化に重点をおいて取り組むとともに、ベンチャー企業等による実証事

業も含めた新たな取組等に対する支援を進めるものとする 62。なお、実証段階から実

用段階への移行には、生産性や耐久性などさらなる技術開発が必要であることに留

意する。

なお、自動運転システムの基盤となる情報通信インフラや協調型システムの研究

開発を進めるにあたっては、様々な関係者の取組の統合化が必要となることに留意

する。また、産学官連携での研究をより一層推進する。さらに、自動運転システムの

実現に向けては、日本が強みを持つ、準天頂衛星を活用した高精度測位の活用を検

討していく。

〈将来の自動運転システムに向けた基盤的研究と人材育成〉

また、今後、自動運転システムに必要な技術が、従来の自動車技術の IT 化という

域を超えて、人工知能(AI)などの高度で革新的な技術が必要になるとともに、人間

工学(HMI など)やセキュリティなど学際的領域に広がりつつある。

60 機能安全に加え、フェールオペレーショナル(機能縮退を含む)、性能限界時、誤操

作・誤使用時の安全確保要件の検討も合わせて行う必要がある。 61 ドライバーモニタリングや、セカンダリアクティビティの許容範囲等の検討について、

開発の効率化や加速化、安全性の最低限の確保等の観点から、ドライバーの認知・行動・

生理状態に関する人間工学の基礎・基盤研究とその成果に基づく要件等の標準化が必要で

ある。 62 更に、自動運転システムや要素技術の開発にあたっては、先端性や、多様な能力を有す

るチーム、アイデアを結集する必要があることを踏まえ、挑戦的なアイデアに対し多数の

主体の競争の場(コンテスト)を設けるアワード型の手法の導入を検討する。

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このためには、AI 等に知見を有するソフトウェア人材の育成・確保が重要であるこ

とから、2018 年度中に自動運転に係る自動車ソフトウェアに関するスキル標準を策

定した。更に、2019 年度中にスキル標準を活用した人材育成講座を開始する。加え

て、自動運転システムの研究開発・実証の推進にあたっては、国内において、複数の

既存の研究機関に加えて、大学の能力を積極的に活用し、産学官の連携体制を整

備するものとする 63。

その際、海外の人材の活用、海外企業の参加といった国際的な観点を含め国際的

に開かれた中核拠点となるよう整備を進めるものとする。また、それらの体制を通じ

て、新たなベンチャー・産業が創出されるようなエコシステムが構築されるように取り

組むものとする。

(3) 基盤技術・関連技術開発の取組

① 自動運転基盤構築への取組 〈人工知能(AI)能力向上に向けた走行映像データベースの整備、安全性評価

技術の強化に向けたシナリオの策定及び仮想空間での評価環境の構築〉

ディープラーニングを契機とする近年の人工知能(AI)への関心の高まりの中、自

動運転は、人工知能(AI)の最も重要な応用分野の一つと理解されている。

自動運転システムにおいては、画像認識などの一部を除き、主にルールベースで

の制御が中心となっており、全てが人工知能(AI)技術によって駆動されているわけで

はない。しかしながら、今後、市街地などを含め、より複雑な環境での走行を実現す

るためには、人工知能(AI)の活用拡大が不可欠との認識のもと、将来の自動運転の

競争力強化の源泉になると認識され、その活用に向けた研究が積極的に進められて

いる。

63 人工知能(AI)については、2016 年度から、文科省(理研)、経産省(産総研)、総務

省(NICT)の連携により、研究開発体制の整備を図っており、必要に応じてこのような体

制との連携も視野に入れ、検討を進める。 また、HMI に関しては、産総研は、2015 年 4 月、安全で楽しい運転の実現に向けて、

ドライバーとしての人間の特性を研究すべく、「自動車ヒューマンファクター研究センタ

ー」を設立。

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そのディープラーニングを含む機械学習等の人工知能(AI)の能力向上のために

は、可能な限りの多くの走行シーンを人工知能(AI)に学習させることが必要であり、

この観点からは、走行映像データや事故データが重要な役割を果たす。これまで、我

が国においては、主に、車載センサーの評価用として収集されてきた 64。

また、高度な自動運転車を市場に導入するにあたり、安全性評価技術の開発が急

務となっている。安全性評価にあたっては、これまでの実車走行による評価だけでな

く、シミュレーション上での走行評価を行うべきとの考え方が国際的に示されている 65。

我が国においても 2016 年度以降日本自動車工業会が整理してきたユースケースを

ベースとして、2018 年度から日本自動車研究所が経済産業省委託事業として安全

性評価を行うためのシナリオ作成手法等の開発に取り組み始めたところである。安全

性評価技術の開発・検討におけるシナリオ作成を行うにあたり、日本自動車研究所

が事故データや、走行映像データを活用する。その際、新たな目的のために新たな

走行映像データが必要な場合には、具体的な活用方法や、必要な画素数等の要件、

データ管理方法などを検討した上で収集するとしている。なお、走行映像データにつ

いては、ダイナミックマップにおける高精度3次元地図データの更新への活用や、自

動運転以外の分野への応用も期待されている 66。SIP 第 2 期自動運転(システムと

サービスの拡張)においては、自動運転車の安全性能を評価するためのセンサー性

能評価を中心としたヴァーチャルな安全性評価・実証シミュレーションのツール開発

に取り組み、評価環境の構築を行うこととしている。

今後は、自動走行ビジネス検討会 67「自動走行の実現に向けた取組方針

(Version2.0)」(2018 年 3 月 30 日)68において取りまとめられている「走行映像デー

64 我が国では、「認識・判断データベース」を協調領域と位置づけ、SIP-Adus、経産省委

託事業により、走行映像とセンシングデータや運転行動データのデータベースを構築して

きた。事業実施主体は、日本自動車研究所(JARI)ほか。 65ドイツにおける PEGASUS プロジェクトなど 66 自動車のカメラから得られた画像データは、ダイナミックマップにおける高精度3次元

地図データの更新に加え、道路周辺環境の見える化、緊急時における警察・消防・病院等

の情報共有にも使えるとの指摘あり(IT 総合戦略本部 IT 利活用に関する制度整備検討会

資料 2015 年 11 月)。 67 自動走行分野において世界をリードし、社会課題の解決に貢献するため、経済産業省製

造産業局長と国土交通省自動車局長の検討会として 2015 年 2 月に設置。 68 http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/data/20180330002.html

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タ・事故データ等の戦略的収集・利活用の基本方針」に沿って、データ収集と利活用

を推進していく。

〈ダイナミックマップの実用化・高度化〉

自動運転におけるダイナミックマップとは、時間とともに変化する動的データ(動的

情報、準動的情報、準静的情報)を高精度3次元地図データに紐づけしたものを指す。

このダイナミックマップは、主に自己位置推定、走行経路特定のための補完情報とし

て用いられる。

その際、ダイナミックマップの基盤となる高精度3次元地図データなどの構築には、

多大なコストを要することから、仕様や地図の整備等について企業が連携し、官民連

携の下で進めていくべく、2016 年 6 月に、民間企業の出資による基盤整備会社 69が

設立された。2017年 6月に事業会社化され、2018年度には我が国の自動車専用道

路全線の高精度3次元地図の整備が完了し、商用化された。加えて、INCJ 等からの

増資を得て 2019 年 2 月 13 日には米国で同様の高精度3次元地図を整備・保有す

る企業の買収手続に入ったことを発表し、国際的な取組を強化している。

現在、このような民間企業における取組とともに、SIPを中心としつつ各省施策との

連携の下で、信号情報提供技術、合流支援等技術、車両プローブ情報の収集・活用

技術、交通情報の多用途展開のための技術等の技術開発等が進められている。ま

た、SIPで検討されたダイナミックマップの仕様等については、現在、逐次 ISO等での

国際標準化を進めるとともに、海外の関連業界標準化団体に対して仕様の統一につ

いて働きかけを行っているところである。今後とも、ダイナミックマップが国内外でスム

69 ダイナミックマップ基盤株式会社(DMP)は、SIP 自動走行システムでダイナミックマ

ップの仕様等を検討してきたダイナミックマップ構築検討コンソーシアムの 6 社と、自動

車メーカーにより、2016 年 6 月に企画会社として設立し、2017 年 6 月に事業会社化し

た。自動運転・安全運転支援システムの実現に必要となる高精度3次元地図データ(ダイ

ナミックマップの協調領域である共通基盤部分)の生成・維持・提供をすることが目的。

自動運転・安全運転支援分野のみならず、防災・減災、社会インフラ維持管理など幅広い

分野への展開を目指し検討。 ※もともと、自動運転の実現にあたって、自律型の情報に加え、道路及びその周辺の高精度3次

元地図データは、自己位置推定、走行経路特定にあたって重要であるものの、個々の企業で整

備するには多くのコストを要すること等を踏まえ、各企業が協調して取り組むべき領域として位置

付けられ、その考え方の下、同社が設立された。

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ーズに使うことができるよう、その仕様に係る国際標準化を強力に推進していくことが

必要である。

また、ダイナミックマップに係る高度な地図情報基盤は、自動運転システムだけで

なく、歩行者移動支援、さらには交通分野以外の防災、観光、道路管理等の分野でも

活用される基盤となりうるものであることを念頭に、システム間連携協調に取り組んで

おり、具体的には、

高精度3次元地図データが他分野でも利用されるためのデータ流通基盤を構築 国際標準化の推進等による海外におけるマップとの相互運用可能性の確保 といったダイナミックマップに係る情報流通体制の整備及びダイナミックマップに係る

高度化を推進するとともに、国際標準化を推進する。

図 28:現在検討中のダイナミックマップに係る情報流通体制(イメージ)70

また、官・民それぞれにおいて、それぞれの保有する自動車関連情報に係るデー

タのダイナミックマップへの活用方法(オープンデータ化を含む)について検討を進め、

2018年度に、ダイナミックマップサービスプラットフォームの実用化に向けた検討を行

い、報告書をとりまとめた。

表 14:官民連携によるダイナミックマップに係る情報活用の今後の進め方(イメージ) 官の保有する自動車関連情報に係るデータの提供の検討(オープンデータ化など) 特に、自動運転に必要なデータ(高精度3次元地図情報を含む)であって、現状民間が

入手困難なのかも含め、民間ニーズを明確化した上で対象データを特定。

70 図は、現在検討中の体制のイメージであり、今後その内容は変更される可能性がある。

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(以下は、例。今後具体的に議論することになる。) 道路の変更等の3次元地図情報の更新情報 その他、自動運転に必要であるとして民間ニーズのあるデータなど

その上で、それぞれの各種データの官における収集・保有方法の現状、効率的な情報

提供体制の在り方を踏まえて、今後スケジュールの明確化も含めて検討。 また、上記以外のデータであっても、可能なものについては、その提供、オープン化を推

進する。 民(自動車会社、各事業者等)の保有する自動車関連情報も含めた活用(プローブデータ

等) ダイナミックマップ活用の仕様や仕組み(協調領域)を早急に明確化し、民間におけるビ

ジネスモデルの構築に繋げる。 その上で、各種データの収集・保有方法の現状を整理するとともに、過去における取組

を参考にしつつ、官民連携で取組を進める。 また、走行映像データのダイナミックマップへの活用について、その可能性を検討する。

今後、MaaS 等の新たなモビリティサービスの課題と取組の方向性も踏まえ、SIP

第 2 期自動運転(システムとサービスの拡張)においては、各省施策との連携の下で、

地理系データを活用した他分野連携、国際標準化等に関する取組を推進する。

〈先進安全自動車(ASV)プロジェクトの推進〉

1991 年度から産・学・官の連携の下、国土交通省では、先進安全自動車(ASV:

Advanced Safety Vehicle)の開発・実用化・普及の促進を行ってきた。2018 年度は、

第 6 期先進安全自動車(ASV)推進計画に基づき、自動運転の実現に必要な先進安

全技術について、①実用化された ASV 技術の本格的な普及戦略、及び ②「路肩退

避型等発展型ドライバー異常時対応システム」の技術要件等の検討を進めた。また、

ユーザーの誤解防止のための方策として、現在市販されている「レベル 1 及び2」の

「運転操作を部分的に自動化する技術を搭載した車両」については、「自動運転車」

ではなく「運転支援車」と呼ぶことを、ASV推進検討会(産学官で構成される検討会)

にて決定した。

引き続き、自動運転の実現に向けた ASV の推進に取り組むこととする。

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図 29:ASV 推進計画

② 交通関連データ・自動車関連データの整備・利活用 〈プローブデータの利活用に向けた取組〉

近年、移動体(自動車)及びそこから収集される各種のデータについては、IoT 化

の進展の中で、プローブデータとして、自動車の位置・速度情報から、センサー・映像

情報、自動車の内部動作情報などに拡充されつつあるものの、官民それぞれがデー

タを保有 71するとともに、システムとしては災害時などを除き、各主体が独自に作り込

んでおり、相互接続性が確保されていない状況にある。

71 例えば、民間企業では、自動車メーカー、公共交通機関、運送会社だけではなく、自動

車関連機器(カーナビなど)メーカー、スマホ・タブレットに係る OS 系企業、アプリ企

業、保険会社などを含む多様な民間企業によって、各社の独自のシステム上にデータが収

集・集積しつつある。また、交通管理者・道路管理者においても、車両感知器、光ビーコ

ン(高度化光ビーコンを含む。)、ETC2.0 等の道路インフラに整備したセンサー等を通じ

て、自動車の通行情報などを収集しているほか、国、自動車ディーラー、整備事業者等に

おいては、検査登録情報や整備情報等を保有している。

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これらのデータは、民においては、自動車ユーザーに対する各種情報提供だけで

なく、運送会社における物流システムの高度化を含む新ビジネスの創出・既存ビジネ

スの高度化等にも寄与するほか、官においても、道路交通マネジメントや道路に関す

る調査・研究、道路管理等への活用に加え、物流、防災、観光などの政策的な取組

にとって非常に有用な情報となるものであることから、今後、これらのデータの共有に

よる有効活用が期待される。このため、ETC2.0 データも活用し、トラック等の運行管

理支援サービスや高速バスロケーションシステム等の導入、災害時の自動車の通行

実績情報に基づくマップ等の提供、エリア観光渋滞対策の検討などに取り組むととも

に、ETC2.0 データを官民連携で活用することで、民間での新たなサービスの創出を

促進し、地域のモビリティサービスを強化することにも取り組んでおり、公募を経て選

出された民間サービス提案者と連携しながら、実用化にあたっての制度的・技術的課

題を検討した上で、実験・実装を行うこととしている。

今後、これらの官民の保有するデータの情報連携を通じた利活用を促進するため

に、前述のダイナミックマップの高精度3次元地図に多様な動的データを紐づけること

を通じて情報流通を促進することも含めて、流通にあたって共通利用に必要な標準

やルール、方法等の検討を行う 72。

なお、このようなプローブデータの情報連携に係る取組を進めるにあたっては、デ

ファクトを含む国際標準化動向に留意するとともに、これらの国際標準に対して、積

極的に関与することが必要である。

〈自動車関連情報の利活用に向けた取組〉

また、自動車の検査登録情報、点検整備情報、運転特性情報等の自動車関連情

報の利活用により、自動車の使用に関する安全・安心の向上や新たなサービスの創

出等が期待されることを踏まえ、2015 年 1 月に国土交通省が策定した「自動車関連

情報の利活用に関する将来ビジョン」に盛り込まれた4つのサービス・メニューの実現

72 その際、情報連携を行う方法やそのための課題、共通化すべきデータ等は、利用目的そ

の他によって大きく異なることから、まずは防災や観光なども含む官民のニーズを十分に

考慮した上で、共有すべきデータの範囲を明確化することが必要である。その上で、それ

らに係る各種データの収集・保有方法の現状を整理するとともに、過去における情報連携

に係る取組を参考に、今後、当該情報連携に知見を有する民間団体を含め、官民連携の下

で、取組を進めるものとする

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に取り組む。具体的には、安全関連の車両装置の外部故障診断装置の標準仕様案

の策定、急加速、急ブレーキ等の運転特性情報を活用してドライバーの安全運転を

促す自動車保険の普及啓発、自動車の点検整備情報や走行距離等の車両履歴情

報を集約・提供するサービスの事業スキームの検討、検査と整備の相関分析等を通

じた検査・整備の高度化・効率化等に取り組む。

〈車車間・路車間・歩車間連携の推進〉

他にも、自動運転の社会実装や、運行管理の効率化、運転者の安全確保等を目

的に、路車間通信等の道路交通インフラの利活用を試みる取組が各省庁を中心に進

められている。

車両同士の通信に加え、路車間通信を活用した取組も各省庁で推進されており、

国土交通省では、ETC2.0として、従来の料金収受機能に加え、高速道路等に設置さ

れた路側機(通信アンテナ)と ETC2.0 車載器との間で双方向通信を行うことにより渋

滞情報、安全運転支援情報、災害時支援情報等の情報提供を行っている。また、路

側機から収集された車両の位置情報等のデータを事業者へ提供する車両運行管理

支援サービスを 2018 年 8 月から本格導入している。現在、我が国ではトラック運転

者の約半数で 1 時間以上の荷待ち時間 73が発生しており、トラック運転者の長時間

労働の要因の一つとなっている。この状況に対して、ETC2.0 を搭載した、特定の車

両の走行位置や急ブレーキ等のデータ(特定プローブデータ 74)を抽出し、配信事業

者を介してサービス事業者や物流事業者に提供することで、リアルタイムな位置情報

把握による正確な到着時刻の予測や、急ブレーキ情報等による運転の危険箇所の

特定等を可能にし、荷待ち時間の短縮や運転者の安全確保といった生産性を向上さ

せる効果が期待される。

73 主要産業の配送センターにおける到着から荷役開始までの時間 74 事業者等の申請により、車両を特定して抽出したもの

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図 30:ETC2.0 車両運行管理支援サービス

他にも国土交通省道路局では、インターチェンジ合流部の自動運転に必要となる

合流先の車線の交通状況の情報提供等、自動運転の実現を支援する路側機からの

情報提供の仕組みについて共同研究を実施している。自動運転においては、インタ

ーチェンジ等の合流地点での本線上の交通状況がわからないため、安全で円滑な合

流ができないケースや、事故車両等を直前でしか発見できず、自動で車線変更する

余裕がないケースがある。この状況に対して、路側機側から情報を提供することで、

これらの課題に対応するための仕組み・システム構築に向けた検討を進めている。

SIP 第 2 期自動運転(システムとサービスの拡張)では、東京臨海部において、インタ

ーチェンジ合流部や ETC ゲート通過支援等に必要な技術の検討等を実施することと

している。

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図 31:自動運転車への情報提供のイメージ(合流部の例)

警察庁/内閣府 SIP では、自動運転の実現に向けた信号情報提供技術の高度化

として、路側インフラやクラウド等を活用した信号情報提供について研究開発を実施

している。一般道路を自動運転車が走行するためには、交差点に設置されている信

号灯器を認識し、信号灯器に従って安全に走行することが求められるが、現状の車

両自律センシング技術において、信号灯器を認識できるのはカメラのみである。本研

究開発により、路側インフラ等の無線通信を活用した信号情報の提供によってカメラ

の情報を補完したり、カメラでは取得できない信号残秒数等の先読み情報を路側イン

フラ等から提供したりすることで、より高度な自動運転の実現が期待される。

<自動運転車への情報提供のイメージ(合流部の例)>加速車線長が短いことなどにより本線への進入の速度やタイミングの調整が難しく合流が困難

情報提供用アンテナ本線の交通状況の情報を道路側から情報提供

自動運転車本線への進入の速度やタイミングを自動で調整し、安全に合流 本線交通状況把握

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図 32:路側インフラ(ITS 無線路側機)による信号情報提供

図 33:クラウド等を活用した信号情報提供

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また、信号機付近にセンサー付きの路側インフラを設置することで、信号情報の車

両への配信に加え、右・左折先の車両・歩行者情報を検知し、運転者に対して注意喚

起する道路交通インフラを活用した安全運転支援をし、自動運転車両と一般車の混

在交通下における安全性の確保を試みている。

図 34:路側インフラ(ITS 無線路側機)を活用した安全運転支援

加えて、事前に登録されている公共車両の接近を、この路側インフラが感知して、

信号制御することで優先的に走行できるようにする取組も検討しており、公共性の高

い車両による円滑な移動手段の提供が期待される。

②検知情報等の送信③運転者に対する

注意喚起

①車両・歩行者の検知

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図 35:路側インフラ(ITS 無線路側機)を活用した公共車両優先の信号制御

SIP 第 2 期自動運転(システムとサービスの拡張)では関係省庁と連携し、これら

の道路交通インフラを東京臨海部に設置し、東京 2020 オリンピック・パラリンピックの

前後に国内外の自動車メーカー、自動車部品メーカー、大学等の参画を得て公道実

証実験を開催し、こうした道路交通インフラの必要な機能や設置すべき要件などにつ

いて検証し、国際的な標準化の議論などをリードしていく。

〈情報通信インフラの高度化〉

このように、クルマや道路交通インフラから取得されたデータを活用した様々な検

討が進んでいるが、前提として必要となるのが通信インフラである。

本格化する第 5 世代移動通信システム(5G)等によるモバイルネットワークの高

速・大容量化や、IoT、ビッグデータ、AI 等の進展により、世界的に「コネクテッドカー」

(ネットワークにつながる車)が、急速に増大すると見込まれており、自動運転関連、

安全性向上に係るセーフティ分野をはじめ、カーライフサポート分野、インフォテインメ

ント分野、エージェント分野といった多岐にわたる新たなサービスやビジネスの創出

が進むと考えられている 75。

75 そのような状況を踏まえて、総務省は 2016 年 12 月から 2017 年 7 月にかけて

Connected Car 社会の実現に向けた研究会を開催し、報告書をとりまとめた。

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図 36:サービスの分類(例)

また、2020 年の 5G の実現に向けて、我が国のみならず、諸外国においても、実

用化推進のための検討が進められている。5G時代では、スマートフォンといった従来

型の端末をベースとしたビジネスだけでなく、IoTや自動車、産業機器、スマートメータ

ーといった新しい分野の利用が期待されており、ITS 分野においても、5G 等の無線

システムを活用した自動運転の実用化、普及に向けた検討が国内外で本格化してい

る。

特に自動運転の実現にあたっては、自律的な周辺情報の収集のほか、今後、ネッ

トワークを通じたクラウド等の外部データ基盤との間で、ダイナミックマップ関連情報

を含む多量かつリアルタイムのデータ転送、交換が必要になると見込まれることから、

情報通信インフラの高度化が不可欠となる。

今後、自動運転やコネクテッドカーで必要とされるデータ転送量、リアルタイム性等

の要求条件やそれらの実現時期等を見据えつつ、エッジコンピューティングを含むア

ーキテクチャーの在り方や5Gの本格活用も含めた情報通信インフラ等について検討

していくことが必要となる。このため、新たな通信技術(V2X 技術を含む)を活用した

高度な自動運転及び自動運転技術を活用した移動・物流サービスの早期実現に向

けて、自動運転制御の高信頼化・高精度化、ダイナミックマップに関係する情報やプ

ローブ情報等の高効率なリアルタイム更新技術、各車両への情報配信技術・方式等

の調査検討、研究開発及び実証実験を推進する。

④エージェント分野(ドライバーサポートサービス群)緊急通報、ロードアシスタント、

コンシェルジュサービス

①セーフティ分野(運転サポートサービス群)

安全運転支援、自動運転支援、ドライバモニター、最適交通流実現

②カーライフサポート分野(データ駆動型サービス群)

車輌管理、運行管理、自動車保険、カーシェア、決済、地域見守り

③インフォテインメント分野(エンタメ的サービス群)

動画等エンタメサービス、仮想同乗VR

インフラ・車両由来データ活用型

外部リソース活用型(ネットワーク経由)

便利・快適系 安全系

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また、現在、携帯電話技術 76の自動運転やコネクテッドカーへの活用に係る民間

企業の動きも活発化しており、従来の ITS 用周波数の活用だけではなく、世界的に

LTE や 5G を活用した自動運転システムの実現に向けた研究・実証が行われている

ことを踏まえ、自動運転、コネクテッドカーのニーズ等に対応すべく、5G を含む情報

通信インフラの整備を進めていくことが必要である。また、コネクテッドカーの増大に

伴い、セキュリティ・プライバシー確保の重要性が高まっていくことにも留意が必要で

ある。

情報通信インフラの高度化に関しては、総務省を中心として通信基盤の確立に関

する検討が進められている。例えば、V2X システムの実現を見据え、狭域通信

(DSRC)や LTE-V2X、ミリ波通信等を活用した既存 ITS の高度化や、各種 ITS 用無

線システムに関連するデータプラットフォーム及びセキュリティ技術の導入についての

検討を実施している。また、将来的に、我が国の ITS 無線システムが国際標準に準

拠したシステムとして各国で採用されるよう、国際展開も推進する。

76 世界的に、LTE V2X の活用や 5GAA 設立等の動きがみられる。 LTE V2X:LTE をベースとし、自動運転やコネクテッドカー(車車間・路車間通信等)を

想定した通信技術。2015 年末クアルコム、ファーウェイ、エリクソン、ノキア等が提唱。

2016 年 9 月に初期仕様策定。 5GAA:5G Automotive Association。アウディ、BMW、ダイムラーや、通信機器・半導体

メーカーが、5G を使ったコネクテッドカーのサービス開発で連携することを目的とし

て、2016 年 9 月に設立。

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図 37:各種 ITS 用無線システムの制度整備

〈交通データを含むビッグデータの各種政策等への活用〉

上記地図データの重ね合わせの推進・高度化や、プローブデータ等の利活用の促

進等に係る取組と並行して、これらの交通関連データやその他のビッグデータを活用

することにより、交通分野を含む各種課題解決に向けた取組を進めるものとする。

具体的には、ETC2.0 及び高度化光ビーコンの速度や挙動データ等を含め、多種

多様できめ細かいビッグデータを統合的に活用し、道路を賢く使う取組を展開するこ

とに加えて、公共交通機関の活性化、歩行者の移動支援等の交通政策への適用に

向けた取組を推進する。また、地方や過疎地域等における効率的な移動手段確保の

観点から、IT を活用した地域を運行する自動車(各種公共交通機関等)等の連携に

よる各デマンド型の配車システム等の普及に向けた検討を行う。さらに、大雪に対す

る道路交通への障害を減らすため、ETC2.0、日本道路交通情報センター(JARTIC)、

VICS 情報、SNS 等も活用して、大雪に関する緊急発表、通行状況や通行止めに関

する情報、降雪状況が確認できるカメラ動画等が道路利用者に確実に伝わるよう工

夫するとともに、情報収集・提供の効率化を図るため、カメラや AI を活用した交通障

害の自動検知・予測システムの導入など、ICT 等の新技術を活用した取組を進める。

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なお、これらの取組を推進するにあたっては、必要に応じて、それらの取組にあた

り利用する各種データ(交通データ以外を含む)のオープンデータ等を働きかけるとと

もに、また、その地方等への普及展開にあたって非効率にならないよう、標準的シス

テムの共同利用、クラウドの活用などについて考慮する。

③ プライバシー・セキュリティへの対応 〈個人情報保護及びプライバシーに係る検討体制の整備〉

ITS・自動運転におけるデータ利活用が進展する中、そのデータの利活用にあたっ

ては、そこに含まれる個人情報の保護やプライバシーの権利について考慮する必要

がある。特に自動運転システムに各種のデータを利用するにあたっては、自動車業

界からは、個人の位置情報取得に係る同意やカメラデータ等に含まれる周辺車両、

歩行者等の情報の扱いが課題との指摘もある。

このような中、2015 年 9 月に改正・公布され、2017 年 5 月に施行された改正個人

情報保護法 77においては、誰の情報か分からないように加工された「匿名加工情報」

について、企業の自由な利活用を認めており、特にプローブデータの加工方法につ

いては、2017 年 2 月に個人情報保護委員会が発表した報告書 78において例を示し

ている。

また、カメラ画像に係るプライバシー保護については、2017 年 1 月、カメラ画像に

ついてその特徴を踏まえつつ利活用の促進を図るため、事業者が、生活者とそのプ

ライバシーを保護し、適切なコミュニケーションをとるにあたっての配慮事項を整理し

たガイドブック 79を公表しており、2018 年 3 月に改定した 80。

今後、このような事例を参考にしつつ、プローブデータや走行映像データ等の利活

用を図っていくことが必要となる。その際、データの利活用に関しては、法制面での整

77 2015 年 9 月、改正個人情報保護法が公布。2016 年 1 月、同法に基づき、個人情報保護

委員会が設置。(全面施行は、2017 年 5 月) 78 「匿名加工情報:パーソナルデータの利活用促進と消費者の信頼性確保の両立に向け

て」(2017 年 2 月:個人情報保護委員会事務局レポート) 79 「カメラ画像利活用ガイドブック ver1.0」(2017 年 1 月、IoT 推進コンソーシアム、総務省及び

経済産業省) 80 「カメラ画像利活用ガイドブック ver2.0」(2018 年 3 月、IoT 推進コンソーシアム、総務省及び

経済産業省)

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合性のみではなく、当該データに係る個人にとっても有用なサービスを提供すること

を明確化することが鍵であることに留意しつつ、取り組むものとする。

〈セキュリティに係る体制の整備〉

今後、自動車の制御システムの電子化が進むとともに、特にモバイル型を含む協

調型システムを通じた自動運転技術が進展するにつれ、セキュリティのリスクが上が

るとともに、車両外部からのサイバー攻撃等による道路交通社会への影響も大きくな

ると考えられる。このため、ハッキングを含む自動車に係るセキュリティ対策への関心

が高まってきている。特に、自動車のセキュリティは、所有者・運転者などが被害を受

けるだけでなく、むしろ加害者側になる可能性もあることを踏まえると、その対策は重

要な課題である。

このような中、我が国では国際標準に先行して自動車のセキュリティ対策に係る業

界ガイドラインの策定を進めている 81。国際基準については、WP29 傘下のサイバー

セキュリティタスクフォースにおいて、我が国は英国との共同議長として議論を進めて

いる。研究開発では、SIP、経済産業省、総務省と多岐に渡って行われている。特に、

SIP 自動走行システムでは自動車のサイバーセキュリティに係る大規模実証実験に

て、ハッカー目線でのペネトレーションテストを実施し、2018 年度には、セキュリティ

評価ガイドラインを策定した。併せて、経済産業省委託事業により日本自動車研究所

において、2018 年度に評価環境(テストベッド)82を整備した。2019 年度以降、人材

育成等への活用を含め実用化を推進する。また、情報通信の観点からコネクテッドカ

ーに係るセキュリティの在り方についても検討を進める。また、自動運転車等に対す

るソフトウェア更新を通信により行うため、許可制度が検討されているが、セキュリテ

ィ対策については、外部状況に応じた継続的な研究開発により、常時強化していく必

要があることに留意する。

また、セキュリティ対策を強化するためには、各企業間でのインシデント対応に係る

情報共有体制を構築することが重要である。このため、日本自動車工業会に確立し

81 JASPAR において、OEM、サプライヤーが実施する評価ガイドラインを順次策定中。 82高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業(経済産業省・国土交

通省)として構築。

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た情報共有体制 83について、今後は US-Auto-ISAC 等 84との連携を進め、迅速な

情報共有・分析に向けた取組を推進していくことが必要。

加えて、我が国において圧倒的に不足している、サイバーセキュリティ人材の育成

推進が急務であり、現在、産学官が連携した人材育成講座や人材育成プログラムを

実施している 85。海外人材の発掘・中途採用を含めてサイバーセキュリティ人材拡充

に向けた積極的な取組を行うことが必要。

なお、これら取組状況や国際的に共通な開発プロセス、安全性評価の仕組み作り

を進めるための工程表については、自動走行ビジネス検討会において、「自動走行シ

ステムにおけるサイバーセキュリティ対策」86として取りまとめられている。

83 J-Auto-ISAC WG を設置、2017 年 4 月より活動開始。 84 米国においては、2015 年 7 月に、米国自動車業界(Auto Alliance:米国自動車製造者

連盟)等は、Auto-ISAC の創設を発表。(ISAC: Information Sharing and Analysis Centers:セキュリティの脅威に係る情報を収集、分析、共有することによって、リスク

を軽減し、強靭性を高めるための組織。) その後、米国運輸省 NHTSA と自動車会社 18 社は、自動車のサイバーセキュリティ等

を含む「積極的安全原則 2016」について合意。同原則における自動車のサイバーセキュリ

ティ対策としては、Auto-ISAC の支援と発展などを含む。 85 IPA の産業サイバーセキュリティセンター人材育成事業や、自動車技術会の人材育成事

業における自動車サイバーセキュリティ講座など。 86 http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/jido_soukou/pdf/sankou_002.pdf

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5 今後の進め方・体制

今後、本構想・ロードマップに記載されたこのような課題等について官民連携で詳

細な検討を行い、ITS・自動運転関連施策の推進を図るため、官民連携推進体制とし

て、引き続き、SIP 第 2 期自動運転(システムとサービスの拡張)推進委員会と道路

交通ワーキンググループとの合同会議を、年2回程度開催し、研究開発の進捗状況

を踏まえ、その後の方向性の検討や、ロードマップの見直し等の議論を行う。本合同

会議は、関係府省及び産業界等から構成するものとし、内閣官房と内閣府が事務局

を務める。

また、IT 総合戦略本部のもとに、専門家会合を設置して策定された自動運転に係

る制度整備大綱について、自動運転に係る技術の進歩の実情等を踏まえながら、引

き続き検討を行うとした項目も含め、当面は半年に1回、フォローアップ会合を開催し、

制度見直しの検討を継続的に実施する。加えて、国内外の制度を巡る議論や技術の

発展動向を踏まえ、制度整備大綱の目標についても定期的に見直しを行う。

このような官民連携推進体制での検討を通じ、本構想・ロードマップに係る詳細検

討だけではなく、ITS を巡る国内外での新たな産業・技術動向等の進展等を踏まえつ

つ、本構想・ロードマップに係る毎年 PDCA サイクルを推進し、必要に応じて、再度本

構想・ロードマップを修正するものとする。

6 ロードマップ

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年度

短期

中期

長期

2019

2020

2021

2022

2023

2024~

2520

26 ~

30

市場化に向けた開発

官民

ITS構

想・ロードマップ

2019(ロードマップ全体像)

世 界 一 安 全 で 円 滑 な 道 路 交 通 社 会

高速道路での自動運転

・準自動パイロット(レベル2)

・自動パイロット

(レベル3)

・完全自動運転

(レベル4)

世 界 最 先 端 の I T S

市 場 化 等 に 係 る 取 組 イ ノ ベ ー シ ョ ン 推 進 に 係 る 取 組

次世代都市交通システム(

ART)

自動運転に係るデータ戦

プライバシー、セキュリティ

交通関連データの利活用

・研究開発・実証の推進

・国際的な基準・標準とリーダーシップ

社会的受容性、連

携体制

データ整備等

順次オープン化

プライバシー、セキュリティの産学官体制整備、推

進の検討

基準、標

準に係る国際的リーダーシップ

協調領域の拡大検討、実

用化へ向けた実証の推進

社会全体の連携体制、地

域IT

Sの推進

社会的受容性の調査、普

及体制の整備

高速道路での後続車無人

隊列走行システムの商業化

高速道路での

完全自動運転

トラック実現※

全国各地域で

無人自動運転

移動サービス実現

後続車無人隊列走行システム

の実証

高速道路でのトラックの隊列走行

高速道路での完全自動運転トラック

(レベル4)

限定地域での無人自動運転

配送サービス(レベル4)

限定地域での無人自動運転

移動サービス(レベル4)

安全運転支援システム

高度な安全運転支援システム

市場化

市場化に向けた開発

市場化に向けた取組

赤字:

SIP1関連研究開発を含む項目

※民間企業による市場化が可能となるよう、政府が目指すべき努力目標の時期として設定。

1 SI

P:総合科学技術・イノベーション会議

戦略的イノベーション創造プログラム

制度詳細検討、必

要な制度見直し等

自動運転に係る制度整備大綱

一般道路自動

運転市場化

一般道路での自動運転(レベル2)

市場化に向けた開発

市場展開

市場展開、更

なる高度化

市場展開、更

なる高度化

市場展開、更

なる高度化

高速道路での

完全自動運転

市場化※

サービス展開、更

なる高度化

対象地域の拡大、海

外への展開

走行距離、範

囲の拡大

高速道路での

後続車無人隊列

走行技術の実現

社会実装に向けた実証

民間での事業化準備

限定地域での無人自動運転配送サービス実現

技術の応用

限定地域での

無人自動運転

移動サービス実現

110

高速道路での

後続車有人隊列走

行システムの商業化

サービス展開

後続車有人隊列走行システムの実証

民間での事業化準備

高速道路でのバスの自動運転

(レベル

2以上)

高速道路でのバス自動運転市場化

市場

展開

【 自 家 用 車 】 【 物 流 サ ー ビ ス 】 【 移 動 サ ー ビ ス 】

サービス

展開

サービス

展開

運行開始

【制度整備と

社会的受容性

向上】

【データ戦略

と交通デー

タ利活用】

【研究開発・

実証と国

際標準・基準

の推進】

【官民】(

SIP1

)東京臨海部

での実証実験

高速道路での自動運転

・準自動パイロット(レベル2)

・自動パイロット

(レベル3)

・完全自動運転

(レベル4)

実証のための

交通インフラ整備

市場化に向けた開発

準自動パイロット

市場化

自動パイロット

市場化※

【官民】(

SIP1

)信号情報、路

車連携情報、

車両プローブ情報等の活用

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年度

短期

中期

長期

2019

2020

2021

2022

2023

2024~

2520

26 ~

30

1 SI

P:総合科学技術・イノベーション会議

戦略的イノベーション創造プログラム

自動運転システムに係るロードマップ①:自家用自動運転車(1)

交 通 事 故 死 大 幅 削 減 、 交 通 渋 滞 の 緩 和 、 物 流 交 通 の 効 率 化 、 高 齢 者 等 の 移 動 支 援

【自家用車】

【民間】研究開発・実用化の

推進

【民間】研究開発・

実用化の推進

【関係各省】制度の詳細検討、

必要な制度見直し等

高速道での自動運転

・準自動パイロット(レベル2)

・自動パイロット

(レベル3)

・完全自動運転

(レベル4)

一般道での自動運転(レベル2)

【民間】研究開発・実用化の推進

【関係各省】安全運転サポート車

(サポカーS、サポカー)の普及啓発

【民間】研究開発・実用化の

推進

高度な安全運転支援システ

ム市場化

安全運転支援システム

【民間】研究開発・実用化の推進

【民間】市場展開、更

なる高度化

安全運転サポート車

世 界 一 安 全 で 円 滑 な 道 路 交 通 社 会

準自動パイロット

市場化

【民間】市場展開、更

なる高度化

【民間】市場展開、更

なる高度化

【民間】市場展開、更

なる高度化

111

【国土交通省】高速道路上の合流部等

における道路側から情

報提供を行う仕

組み等の検討

世 界 最 先 端 の I T S

一般道路自動運転市場化

自動パイロット

市場化※

高速道路での

完全自動運転

市場化※

※民間企業による市場化が可能となるよう、政府が目指すべき努力目標の時期として設定。

【官民】(

SIP1

)東京臨海部での実証実験

(信号情報、民

間プローブ情報等の活用)

実証のためのインフラ整備

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年度

短期

中期

長期

2019

2020

2021

2022

2023

2024~

2520

26 ~

30

自動運転システムに係るロードマップ①:自家用自動運転車(2)

・安全運転支援システム(

DSS

S)・E

TC2.

0・高速道路での逆走対策

・ドライバー異常時対応システム

等、その他の取組

【安全運転支援システムの普及推進】

【官民】D

SSS、

ETC2

.0対応車載機器の普及促進

【警察庁(

SIP1)】

交通規制情報の収集・提供の高度化

【国土交通省】自動車アセスメントによる先進安全技術搭

載車両の評価

衝突被害軽減ブレーキ(対車両、対

歩行者)評価

【国土交通省】市場化された先進安全技術に関する保安

基準等の拡充・強化検討

【国土交通省】路肩停止型ドライバー異常時対応システムの

技術指針の策定等

1SI

P:総合科学技術・イノベーション会議

戦略的イノベーション創造プログラム

2安全運転支援・自動運転システムに係る施策

・緊急通報システム・事故自動通報

システム(

ACN

)・ドライブレコーダー・イベントデータレコー

ダー

【官民】緊急通報システム・事故自動通報システム(ACN)

の普及促進

【国土交通省】ドライブレコーダー、イベントデータレコーダー等を活

用した事故実態把握・情報分析

【民間】センサー、端末の市場展開

世 界 一 安 全 で 円 滑 な 道 路 交 通 社 会

交 通 事 故 死 大 幅 削 減 、 交 通 渋 滞 の 緩 和 、 物 流 交 通 の 効 率 化 、 高 齢 者 等 の 移 動 支 援

112

【国土交通省】I

TS技術を活用した円滑、安

全・安心な

道路交通等の実現への取組。E

TC等の

ITS技

術の民間

駐車場など高

速道路以外の施設への利用拡大

【国土交通省】高速道路での逆走対策について、産

官学が連携し、

逆走車両の速やかな検知、道

路上・車内での警告や、自

動運転

技術の活用など、さらに効果的な対策について検討

世 界 一 安 全 な 道 路 交 通 社 会※2018年度終了

【官民】(

SIP1)での開

発・実証における歩車間通

信を活用したシステム、インフラ

レーダー及び無線通信を活

用したシステム、交

通制約者

及び歩行者の移動支援シス

テム等の実証実験

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年度

短期

中期

長期

2019

2020

2021

2022

2023

2024~

2520

26 ~

30

自動運転システムに係るロードマップ①:物流サービス 高

速道路完全自動

運転トラック実現※

【国交省】隊列走行に用い

る技術や実証実験の成果、

運用ルール等に応じてインフラ

面等の事業環境の検討(ダ

ブル連結トラックの実験の状況

も踏まえ必要な協力等につい

て検討)

高速道路での完全自動運転トラック

(レベル4)

限定地域での無人自動運転配送サー

ビス(レベル4)

【民間】量産向け車両設計・

量産化等

走行可能範囲の

拡大等

【官民】後続無人実証実験

【関係各省】制度の詳細検討、

必要な制度見直し等

【民間】自家用自動運転車(完全自動運転)

の技術の応用等

※民間企業による市場化が可能となるよう、政府が目指すべき努力目標の時期として設定。

【物流サービス】

高速道路でのトラックの隊列走行

(レベル

2以上)

交 通 事 故 死 大 幅 削 減 、 交 通 渋 滞 の 緩 和 、 物 流 交 通 の 効 率 化 、 高 齢 者 等 の 移 動 支 援

世 界 一 安 全 で 円 滑 な 道 路 交 通 社 会

世 界 最 先 端 の I T S

新 東 名 ( 一 部 ) で の 後 続 車 無 人 隊 列 走 行 技 術

の 実 現

【国交省】必要に応じてインフラ面等の事業環境の整備

113

高 速 道 路 で の

後 続 車 有 人 隊 列 走 行

シ ス テ ム の 商 業 化

高 速 道 路 ( 東 京 ~ 大 阪 間 ) で の

後 続 車 無 人 隊 列 走 行 シ ス テ ム の 商 業 化

【民間】

サービス

展開

【民間】

サービス

展開

限定地域での無人自動運転配送サービス実現

【民間】無人自動運転移動

サービスの技術の応用等

【民間】

サービス

展開

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年度

短期

中期

長期

2019

2020

2021

2022

2023

2024~

2520

26 ~

30

自動運転システムに係るロードマップ①:移動サービス

次世代都市交通システム(

ART)

1SI

P:総合科学技術・イノベーション会議

戦略的イノベーション創造プログラム

自動バレーパーキング※1

【民間】実用化に向

けた実証試験

限定地域での無人自動運転移動サー

ビス(レベル4等)

・遠隔型自動走行システム

・ラストマイル自動走行(専用空間)※1

・地方部

(中山間地域の道の駅等

)

【民間】地域にあわせたシステム拡

張・改善、自

治体との協力体制の

構築

【民間】地域にあわせた車両の製造

【民間】モデル地域での実証

【経産省、国

交省】モデル地域で

の実証、社

会的受容性の確認

全 国 各 地 域 で の 無 人 自 動 運 転 移 動 サ ー ビ ス 実 現

【民間】サービス展開、更

なる高度

化(サービス地域の拡大、サービ

ス内容の拡充等)

【民間】サービス展開

【関係各省】制度の詳細検

討、必

要な制度見直し等

※1:制度・インフラ側からの検討は別途必要。

【移動サービス】

交 通 事 故 死 大 幅 削 減 、 交 通 渋 滞 の 緩 和 、 物 流 交 通 の 効 率 化 、 高 齢 者 等 の 移 動 支 援

世 界 一 安 全 で 円 滑 な 道 路 交 通 社 会

世 界 最 先 端 の I T S

限 定 地 域 で の 無 人 自 動 運 転 移 動 サ ー ビ ス 実 現

東京

BRT

運行開始2

【民間】専用駐車場の整備等

※民間企業による市場化が可能となるよう、政府が目指すべき努力目標の時期として設定。

114

※2:環状第2号線の整備状況に合わせて、順

次運行開始。

高速道路でのバス自動運転市場化

【民間】研究開発・実用化の推進

高速道路でのバスの自動運転

(レベル

2以上)

【民間】

市場

展開

【国交省(

SIP1含む)】

地方部(道の駅など)

社会実

装に向けた実証実験、

地域特性を活かした多様なビジ

ネスモデルの検討

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年度

短期

中期

長期

2019

2020

2021

2022

2023

2024~

2520

26 ~

30

イノベーション推進に係るロードマップ①:自動運転の普及に向けた制度整備と社

会的受容性の向上

高度自動運転システム実現に向け

た制度整備

社会全体・地域の連携体制

社会的受容性

・市民ダイアログ

・交通事故死者低減効果の見積

り手法

【官民】社会全体の連携体制、地

域IT

Sの推進等

【社会的受容性、連携体制整備】

【制度整備】

世 界 一 安 全 で 円 滑 な 道 路 交 通 社 会

世 界 一 安 全 な 道 路 交 通 社 会

交 通 事 故 死 大 幅 削 減 、 交 通 渋 滞 の 緩 和 、 物 流 交 通 の 効 率 化 、 高 齢 者 等 の 移 動 支 援

115 1SI

P:総合科学技術・イノベーション会議

戦略的イノベーション創造プログラム

【国交省】保安基準(衝突被害

軽減ブレーキ)における国際基準

の策定・採択

【国交省】保安基準(サイ

バーセキュリティ)における

国際基準案の策定

【国交省】保安基準(高速道路における

自動車線維持機能(レベル3))におけ

る国際基準案の策定

【国交省】

「道路運送

車両法の一

部を改正す

る法律案」の

国会提出

【警察庁】

「道路交通

法の一部を

改正する法

律案」の国

会提出

【国交省】運転者不在時

のガイドライン(仮)の策

定【警察庁、外

務省】道路交通に関する条約(ジュネーブ条約)との関係の整理

【官民】(

SIP1

)社会的受容性の向上

・市民ダイアログの開催

・交通事故低減等へのインパクト評価

・交通制約者に対する高度運転支援システムの研究

成 立 成 立【警察庁】

施行準備

施 行

【国交省】

施行準備

施 行※

※道路運送車両法については、保

安基準に自動運行装置を追加する等の内容が施行。

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年度

短期

中期

長期

2019

2020

2021

2022

2023

2024~

2520

26 ~

30

イノベーション推進に係るロードマップ②:自動運転のデータ戦

略と交

通データ活

1SI

P:総合科学技術・イノベーション会議

戦略的イノベーション創造プログラム

2 安全運転支援・自動運転システム、交

通関連データ利

活用のいずれにも係る施策

・交通データの活用検討

(プローブ情報、危

険箇所等)

・官民データの共通利用に関する検討

・官の情報システムの高度化

・官のデータの有効活用、オープン化の検

討 ・自動車関連情報等

・歩行者支援、公

共交通機関との連携

等【ダイナミック・マップ】

交通データオープン化

(民間ニーズを踏まえ、可

能なデータより順

次オープン化)

新たなサービス実現

【国土交通省】自動車関連情報の利活用の

ための環境整備等

【警察庁、総

務省、国

土交通省】交通安全対

策・渋滞対策・災害対策等に有効となるデータ

の集約・配信の検討

【国土交通省】ETC2.0の速度や経路、時

間データ等

を含め、多

種多様できめ細かい

ビッグデータを統合的に活用し、道路を賢く使う取

組を展開

【内閣官房、関

係府省庁、民

間】民間データ

の活用、官

民データの共通利用に関する検討

渋 滞 緩 和 等

活用可能な一部データを

安全運転支援・自動運転に順次活用

ダイナミック・マップの実用化・高度化

【国土交通省】人の移動(歩行、公

共交通)

に関する情報の活用検討・普及促進

【民間】ダイナミック・マップの対象エリア拡大、地

図更新等

【交通関連データ・自動車関連

データの整備・利活用】

【情報通信インフラの高度化】

・第5世代移動通信システム

(5G)の実用化

・コネクテッドカー社会を支える無線通信システ

ム 【プライバシー・セキュリティ体

制】

・パーソナル・データに係る検討体制の

整備

・セキュリテイに係る体制整備、研

究開

発、実証

【内閣府、総

務省、経

済産業省(

SIP1)】通信や車両システム等のセキュリティの信頼性確保のための

研究開発、実

証試験、国

際標準化

【官民】プライバシー・セキュリティの体制整備、推

進の検討

・走行映像等のセンシングデータ

・事故データ

・安全性評価シナリオ

【民間】公開・運営(走行映像等のセンシングデータ)

【民間】運営

【民間】認識技術を評価する環境整備

5Gの社会実装

【総務省】5G周波数確保に向けた基本戦略策定、

技術的条件検討、交

通分野等での具体的な利活

用を想定した総合的な実証試験実施、国

際標準

化活動への参画、電

波利用環境整備等

更なる普及・高度化

【総務省】コネクテッドカー社会を支える無線通

信システムの開発・実証等

【民間】公開・運営(事故データ)

【映像データベース等の構築】

新たなサービス実現

世 界 一 安 全 で 円 滑 な 道 路 交 通 社 会

交 通 事 故 死 大 幅 削 減 、 交 通 渋 滞 の 緩 和 、 物 流 交 通 の 効 率 化 、 高 齢 者 等 の 移 動 支 援【民間】

J-Au

to-I

SAC体

制拡大

【経産省・国交省】シナリオ作成

【経産省・国交省】シナリオに関する事故・イン

シデントのデータ共

有の在り方

の検討

【国土交通省】ETC2.0データも活用し、トラック等の運行管理支援サービスや高速バス

ロケーションシステム等の導入、災

害時の通行可否情報の提供、エリア観光渋滞対策の検討

準自動パイロット

市場化

【民間】ダイナミック・マップの対象エリ

ア拡大、地

図更新等

【官民】(

SIP1

)高精細

3次元地図

更新技術、アーキテクチャ構

築等

【官民】(

SIP1

)信号情報提供技術の開発・実証実験、プローブ情報を活用した車線レベル

道路交通情報の生成、提

供等に関する検討

116

【官民】(

SIP1

) V2

X通信等の新たな技術開発

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年度

短期

中期

長期

2019

2020

2021

2022

2023

2024~

2520

26 ~

30

イノベーション推進に係るロードマップ③:自動運転システムの研究開発と国

際基準・標準の推進

1SI

P:総合科学技術・イノベーション会議

戦略的イノベーション創造プログラム

基準、標

準への取組

【基準・標準・国際的な連携

/リーダーシップの発揮】

【警察庁、総

務省、経

済産業省、国

土交通省】

自動運転に係る国際基準・標準化の推進

国際的リーダーシップの発揮

【内閣府(

SIP1)】

国際会議の開催

自動運転システムに係る研究開

発・実証

車車間通信・路車間通信を活用

した注意喚起端末の開発と普

安全性評価

【官民連携】官民連携体制の構築

【官民連携】各種公道実証の推進

【内閣府、関

係省庁(

SIP1)】

SIP1による研究開発・

東京臨海部等における実証

【警察庁】全国主要交差点等へのインフラ配備

【警察庁】緊急自動車や路線バスの

交差点優先通行システムの順次導入

【民間】路車間通信を活用したシステムの市場展開

【研究開発・実証の推進】

世 界 一 安 全 で 円 滑 な 道 路 交 通 社 会

世 界 一 安 全 な 道 路 交 通 社 会

交 通 事 故 死 大 幅 削 減 、 交 通 渋 滞 の 緩 和 、 物 流 交 通 の 効 率 化 、 高 齢 者 等 の 移 動 支 援

117

【経済産業省】自動運転評価拠点における評価手法の確

立 【官民】(

SIP1

) 仮想空間における安全性評価環境の構築

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2020年自動運転実現に向けた課題①:高速道路での自動運転

①20

20年に実現する高速道路での自動運転※1※

2

本線上で自動運転開始可能

一定速度以下での車線維持、車

間維持、速

度調整を自動で実施

本線上で自動運転終了

※1 現状を加味した仮置きであり、メーカー等の技術開発の努力により、広い範囲で実現する可能性もある。

※2 自動運転とは、運

転者が「自動運行装置」を使用して運転すること。

自動運行装置:一定の走行環境条件内において、センサー類やコンピューターを用いて、自

動車の操縦に必要な「認知・予測・判断・操作」を行う

機能を有し、かつ、作

動状態記録装置を備えるもの。

118

自動運転開始

自動運転終了

一定速度以下での

車線維持、

車間維持、

速度調整

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①高速道路での自動運転の市場化

–1/

3【法律等の課題】

道路運送車両法の改正法の施行

自動運行装置の保安基準(作動状態の確認に必要な情報を記録するための装置を含む。)の策定

「自動運転車の安全技術ガイドライン」 (

平成

30年9月国土交通省自動車局)及び「交通政策審議

会陸上交通分科会自動車部会自動運転等先進技術に係る制度整備小委員会報告書」

(平成

31年

1月)を踏まえて検討する。

•自動運転車の搭乗者及び歩行者等の周囲の交通参加者に危険を及ぼすおそれのないもの

であることや走行環境条件以外で自動運転システムが作動しないこと等を担保する安全基

準を定める。なお、具

体の基準の策定については、新

技術の開発動向や

WP2

9において我

が国が主導することとしている国際基準策定の議論、我

が国の交通環境等を踏まえ、機

動性・柔軟性をもって対応する。

〈短期的な取組〉

①自動運転中であること等を車外へ知らせることについては、歩

行者等の周囲の交通参加者の安全・安心を確保

するために必要である。一

方、自

家用車等は国際的に流通する商品であるため、自

動運転中であることを表示

させる装置を自動車に義務づける場合には、国

際基準策定の動向等を踏まえる必要もある。従

って、国

際基準

が策定されるまでの間、自

動車の装置以外による手法も含め、その適切な方法について関係者間で検討する。

②W

P29サイバーセキュリティタスクフォースにおいて、自

動車製作者に対し、サイバーセキュリティに関するリスク評

価の実施、当

該評価に基づくリスク軽

減策の導入等を義務づける国際基準の策定に向けた議論が行われており、

我が国は、2

019年

前半までの国際基準案の策定を目指し、サイバーセキュリティに係る国際的議論を主導する。

自動運行装置等に組み込まれたプログラムの改変による改造等に係る許可制度の創設

道路交通法の改正法の施行

119

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①高速道路での自動運転の市場化

–2/

3【法律運用面で検討が必要な事項】

安全基準関係

国土交通大臣による走行環境条件の付与

走行環境条件は走行空間の状況や地域特性等を踏まえ自動車製作者や移動サービス提供

事業者等の申請者が設定した上で、国

がその妥当性を確認することが必要。

〈短期的な取組〉

①走行環境条件の妥当性の確認にあたっては、審

査を円滑に実施する観点から、走行環境条件の設定に関する書類

や自動運行システムが走行環境条件内で安全に作動することや当該条件の内か外かを確実に検知できることを証す

る書類等を申請者が提出する仕組みを構築する。

②使用者等が走行環境条件や、その走行環境条件内にある場合のみ自動運転システムを使用できること等を確実に把

握できる仕組み(オーナーズマニュアルへの記載等)を検討する。

自動車の電子的な検査の導入に伴う必

要な検討

自動運行装置等の先進技術に関する整備等に必要な検討

交通ルール関連

作動状態記録装置の記録の保存期間

刑事責任関係

自動運転中の事故における責任の検討

【インフラ面で検討が必要な事項】

白線の整備、路

面整備(穴、ひび割れ等修復)

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①高速道路での自動運転の市場化

–3/

3【普及に向けての施策】

社会的受容性の醸成

インセンティブ(購入補助金等)の検討

自動運転車の使用者への情報提供(販売時の消費者への説明方法等)

「自動運転車の安全技術ガイドライン」 (

平成

30年9月国土交通省自動車局)で示された要件等を踏ま

えて検討する。

自動車製作者等(ディーラーを含む)又は自動運転車を用いた移動サービスのシステム提供者

は、自

動運転車の使用者に対し、平易な資料等を用いて次の点を周知し、使用者が理解するこ

とができる措置を講じること。

•システムの作動条件、O

DDの範囲、機

能限界

•運転者のタスク(

システムによる運転制御の継続が困難になった場合に運転操作を引き継がなければ

ならないこと等)

•H

MIの表示(自動運転システムが作動中であるか否か等)に係る情報

•走行環境条件外となった場合やシステムに異常が発生した場合の車両の挙動

•使用過程の自動運転車の保守管理(点検整備)やソフトウェアのアップデートを適切に行うこと

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2020年自動運転実現に向けた課題②:実証実験の枠組を利用した自動運転移動サービス

②20

20年に実現する実証実験の枠組を利用した自動運転移動サービス

比較的単純な限定領域(

OD

D)※4

1人

で1台

または複数台の遠隔監視・操作

O

DDを超えた場合※5 は、車

両は速やかに運行を中止し、遠隔監視・操作者又は車両

内のサービス提供者等が必要な対応を実施

※4

OD

Dの設定の例:

廃線跡や過疎地等の他の交通参加者との接点の少ないエリア/道路

低速かつ特定のルートのみで運行、特

定の場所での乗降

※5

OD

Dを超えた場合の例:

違法駐車車両がおり、車線をはみ出さないとよけられない場合

雪により、走行車線がわからない場合

122

遠隔監視・操作

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②実証実験の枠組を利用した自動運転移動サービスの市場化

–1/

4【法律等の課題】

保安基準の基準緩和認定制度の事業化への適用

技術の進展を前提とした道路使用許可基準の見直し

以下の観点を踏まえて、事

業化を見据えた基準の見直しを行う

より長

期のものを可能とする

遠隔側の管理体制

•遠隔側の管理体制の適否を、保

安要員の配置等他の安全確保措置に応じて、個

別柔軟に判断

•遠隔監視・操作者に求められる役割

•運行管理者に行う異

常時対応等の十分な教育・訓練

第二種運転免許の要否

特異事案等発生時の報告の徹底

•特異事案発生時の再発防止対策を含めた警察への報告を明示

通信遅延時間や走行速度の制限等

•システムで認識することが困難な危険等には遠隔監視・操作者の対応が求められることを踏まえた安全

対策の検討

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②実証実験の枠組を利用した自動運転移動サービスの市場化

–2/

4【法律等の課題】(つづき)

車内に運転者が存在しない移動サービスにおける、旅

客自動車運送事業の以下を含む課題について

ガイドライン等のとりまとめ

バス・タクシー事業者が実施すべき事項(道路運送法第

27条第

3項関係)

•安全に関する措置を講ずるため運転者と電

話等により対

話し、指示できる体制整備

•運転者から道

路及び運行の状況について確認

•運転者に対する指導監督

-運行する路線等に対処する運転技術

-地理及び公衆に対する応接

運転者の制限(道路運送法第

25条関係)

•第二種自動車運転免許保持者

運転者が実施すべき安全確保等のための措置(道路運送法第

27条第

5項関係)

•旅客が死傷したときの旅客の保護等

•旅客が公の秩序に反する行為をするときの制止等

•天災等により安

全運転ができない場合の報告

•運行中重大な事故を発見したときの運行の中止

•踏切内で運行不能時の旅客誘導、列

車への防護措置

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②実証実験の枠組を利用した自動運転移動サービスの市場化

–3/

4【インフラ面で検討が必要な事項】

自動運転車の機能・性能及び走行環境に応じて以下の対応を検討

自動運転車両や地域特性に応じた、植

栽剪定、除

雪等の維持管理内容に係る道路管理者との調

整無線通信による信号情報の通知、交

差点通過支援のための信号制御

交差点通過支援のための標識・信号機等の設置等

交差点での見通し外

情報の提供

【普及に向けての施策】

社会的受容性の醸成・地域の合意に基づくルール作り

インセンティブ(購入補助金、優

先レーン等)の検討

ユーザーへの説明方法等の検討

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②実証実験の枠組を利用した自動運転移動サービスの市場化

–4/

4【普及に向けての施策】(つづき)

持続可能なビジネスモデルの検討

自動運転の実験段階から実

装段階に移行するには、持

続可能なビジネスモデルを確立することが必

要 現在行われている実証実験の類型

①観光型、②

中山間地域型、③

市街地型、④

オールドニュータウン型、

⑤専用道型、⑥

既存バス自動化型

検討の観点

自動運転による移動サービスだけで収益を上げることは困難な場合が多いと思

われるが、

今後は以下のような検討が必要ではないか

•他サービスとの連携

他のサービス(観光、飲

食など)

と連携することにより、全体で収益を上げる

(そのためには、各

種サービスとモビリティのデータ連

携基盤を構築)

•インフラによる補完

高コストな技術投資を避けるためインフラ面により安

全性を高めることで全体の投資額を抑える

(専用/優先の走行空間等)

•自治体の赤字削減

全体の収益が必ずしも黒字でなくても、赤

字の公共交通機関を維持するための自治体の負担を軽減す

る目的で、自

動運転を公共交通機関として導入する

持続可能なビジネスモデル成功例を作り、全国に横展開

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