人口減少時代のまちづくり - city.kobe.lg.jp · 人口減少と高齢化 人口予測...
TRANSCRIPT
人口減少時代のまちづくり
奈良女子大学
中山 徹
1.国土と地域の再編
人口減少と高齢化
人口予測
1900年:4400万人
2008年:1億2800万人
2110年:4300万人
100年後には100年前の人口に戻る
20世紀:人口増加率世界1位
21世紀:人口減少率世界1位
3
高齢化
ピーク時の高齢化率:41%
その後も40%程度で推移
年少人口比率:8%
21世紀:高齢化率世界1位
21世紀:年少人口比率世界最下位
4
国際化
• 人口増の最大はアジア
• 国際化も急速に進むアジア
• 20世紀とは比較にならないグローバル化の進展
• 国土と地域の再編
→国際競争の中で人口が大きく減少する日本が生き残る方策
5
再編の目的と内容
(1)国土の再編成
・首都圏の国際競争力強化
・スーパーメガリージョンの形成
国全体で人口が減っても、首都圏の国際競争
力を強化する
1960年代:太平洋ベルト地帯
新幹線、高速道路
6
(2)地方の再編成
・人口減少の中で首都圏の一極集中を進める
→地方は崩壊に瀕する
・人口が大幅に減少しても生き残れるための再
編
7
地点別、人口増減予測
• 地方再編の内容
①コンパクト:人口減少に対応してまちを縮小
立地適正化
②ネットワーク:交通、通信
③連携:地域の連携で生き残る
連携中枢都市圏、定住自立圏
9
(3)コミュニティの再編
・税収の減少、高齢化→公費負担の上昇
→介護、市民向け予算の仕組みを変える
→社会保障基礎構造改革
・地域の再編はその一環
10
• コミュニティ再編の内容
①介護の受け皿づくり:介護保険→地域:互助
コミュニティ組織の再編
町内会→NPO、企業:まちづくり協議会
財政的自立(コミュニティビジネス)
②市民向け予算の見直し
公共施設の再編
11
2.地方創生
12
地方創生とは何か
・政府の意向に沿って自治体が再編を進める
仕組み
・地方創生の大枠は政府が決定
・交付金の上乗せは政府が決定
・計画の進捗状況を自治体が検証
13
政府の長期的見通し
1.出生率
現在:1.42
2030年:1.8(希望出生率)
→一億総活躍プラン(2025年:1.8)
2040年:2.07
2.人口の見通し
2060年:1億人(対策をとらなければ8600万人)
21世紀後半:9000万人で安定
14
将来人口の見通し
15
3.高齢化率
ピークで35%(対策をとらなければ41%)
21世紀後半には27%程度で安定
4.東京一極集中の是正
2020年:首都圏-地方圏の転出入につい
て均衡を図る
16
人口構造の見通し
17
都道府県人口ビジョンの目標値
1.大半は政府の人口ビジョンにそろえている
出生率、2040年に2.07としたのは29府県
国より低いのは4県
秋田(2050年に2.07)、 東京(2060年に1.76)
滋賀(2040年に1.94)、兵庫(2040年に1.8)
国より高いのは
沖縄(2050年に2.43)、大分(2040年に2.3)
後は2.07の達成時期が政府目標より早い
18
2.社会増減も均衡を想定している県が多い
社会減:2県(和歌山、鹿児島)
社会増:15県
(茨城、埼玉、千葉、神奈川、石川、山梨、愛知、滋賀、京都、大阪、徳島、香川、高知、大分、沖縄)
均衡:残りすべて
(東京は明確な数値を示さず)
19
2060年の目標(2010年を100)
平均:79.6
・100以上:沖縄(116.3)
・90~100:埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、
愛知、滋賀
・80~90:茨城、山梨、静岡、京都、大阪、兵庫
広島、徳島、福岡、大分
20
・70~80:北海道、宮城、福島、栃木、群馬、富山
石川、福井、長野、岐阜、三重、奈良
和歌山、鳥取、岡山、香川、愛媛、高知
佐賀、長崎、熊本、宮崎
・60~70:青森、岩手、山形、島根、山口、鹿児島
・50~60:秋田(56.3)
21
目標が達成されると 首都圏一極集中が進む
人口比率(全国に対する割合)
2010年:首都圏(27.9)
東京(10.3)、神奈川(7.1)、埼玉(5.6)、千葉(4.9)
2060年:首都圏(30.9)
東京(11.4)、神奈川(7.8)、埼玉(6.3)、千葉(5.4)
22
人口ビジョン達成の条件 その1.出生率のV字回復
0
0.5
1
1.5
2
2.5
1960 70 80 90 2000 10 20 30 40
出生率
23
人口ビジョン達成の条件 その2.東京への転入削減
-50000
0
50000
100000
150000
200000
250000
300000
1970 1980 1990 2000 2010 2020 2030 2040
人数
24
3.総合戦略
25
地方版総合戦略の位置づけ
1.人口ビジョンを実現するための戦略
2.対象期間:5カ年計画、H27年度~H31年度
3.記載事項
・基本目標
・基本目標を達成するための基本的方向
・客観的な重要業績指標(KPI)
・客観的な効果検証の実施
(PDCAサイクル、検証機関の設置)
26
マニュアルで示された 地方版総合戦略の構成
国の総合戦略が定める政策分野
①地方における安定した雇用を創出する
②地方への若い人の流れを作る
③若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかな
える
④時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守
るとともに、地域と地域を連携する
27
安定した雇用の創出
1.大半の都道府県が上げている項目
・農業の振興(46/47)
・観光の振興(45/47)
・企業誘致(42/47)
・林業の振興(37/47)
・漁業の振興(35/47)
・創業支援(34/47)
・再生可能エネルギー(31/47)
28
新しい人の流れ
・県内就職率の向上(31/47)
・移住相談(23/47)
・Uターン就職支援(22/47)
・県内でのインターンシップ(21/47)
29
結婚・出産・子育て支援
・職場環境の改善(36/47)
・保育の充実(36/47)
・婚活(32/47)
・地域子育て支援(27/47)
・学童保育(26/47)
・育児休暇取得率向上(23/47)
30
地域・安全・連携
・介護の充実(31/47)
・自主防災、避難(30/47)
・地域活動支援(28/47)
・医療の充実(28/47)
・学校教育の充実(28/47)
・スポーツの振興(26/47)
31
全体的な評価
(1)枠組みとしては既存施策の延長
興味深い発想はあるが、「安定した雇用の創
出」「子育て支援」は特に既存施策の延長が強
く、この展開で人口ビジョンが実現できるとかど
うか疑問。
32
(2)安定した雇用の創出
第一次産業、観光、企業誘致、創業支援、再生可能エネルギー
(3)子育て支援
職場環境の改善、保育、婚活
33
(4)新たな人の動き
地方では、県内就職率の向上、移住相談が中
心。ただし、具体的な施策は模索中。
(5)「地域・安全・連携」
政府の中心は連携中枢都市圏、立地適正化な
ど、人口減少に対応した自治体、地域の再編
成。自治体の中心は、高齢者介護、防災など。
34
4.立地適正化計画
・目的
人口減少に応じて市街地の範囲を縮小し、効
率的に施策を展開し、新たな活性化に繋げる
・進捗状況
策定済み:大阪府箕面市、熊本市、札幌市
4市町がパブリックコメント
埼玉県毛呂山町、青森県弘前市、岩手県花巻市、神奈川県藤沢市
内容
・居住誘導区域の設定
誘導施策
・都市機能誘導区域の設定
誘導施設
誘導施策
特徴
(1)中心は都市機能誘導区域
誘導機能を集積、地域の再編成
誘導施設の例(箕面市)
④教育・文化施設、通所型障害者福祉施設、
③子育て支援施設、介護予防・健康増進施設、
②病院・診療所、食料・日用品店舗
①大規模病院、地産地消型商業施設、複合
商業施設
(2)誘導方策の整備
居住誘導区域については誘導が具体化されず
都市機能誘導区域については、税制、財政、規
制緩和などの措置が明確化
都市機能誘導区域が機能するかどうかはネット
ワークの整備にかかっている
→未知数
(3)居住誘導区域はコンパクト化とは限らない
箕面市
居住誘導区域:市街化区域の85%
全人口:12万2502人
居住誘導区域外:1万2558人
居住誘導区域外の多くは災害ハザード
5.公共施設等総合管理計画
公共施設の動向
(1)子どもに関する施設の統廃合
・少子化の影響
・保育所、幼稚園、学校、児童館etc
(2)文化施設等の民営化、指定管理者
・図書館、公民館etc
(3)公共施設を巡る新たな動き
→地域の再編成を公共施設が先導
公共施設とインフラを分けて計画しているかどうか
• ハコモノ三原則(さいたま市)、「新規整備は原則として行わない」「施設の更新は複合施設とする」「施設総量を縮減する」
• 「インフラ三原則」は、「現状の投資額を維持する」「ライフサイクルコストを縮減する」「効率的に新たなニーズに対応する」
問題点
①人口予測
・人口ビジョンではなく、社人研の予測値を利用
・人口ビジョンの予測値を使うと大幅な削減は
不要
<伊丹市>
社人研、2010年:19万6127人→2030年:19万249人
人口ビジョン、→2040年:19万7139人
②以前の水準に戻す予定
・人口減が生じても元の水準に戻す必要は無
い
<伊丹市>
公共施設面積、59.6万㎡
社人研予測、1996年の人口と同じ
1996年の面積、54.6万㎡
約10%の削減
③インフラは対象から除外
・公共施設のみで財政予測
・インフラも含めて考えるべき
④公共施設の耐用年数を長くすべき
・50年~60年ではなく90年~100年で計算すべ
き
〇結局、公共施設の削減計画になっている
6.国土と地域のあり方
(1)人口減少は不可避
ただし東京一極集中は避けられる
地方の位置づけ
①食糧供給
②エネルギー供給
③観光
首都圏への人口集中割合
富の集中が日本経済の足かせ
・所得
・地域
東京への富の集中
・東京での地価高騰
・投資先が海外もしくは投機に
地方を含めた経済循環
(2)大都市(首都圏を除く)郊外が崩壊に直面
・関西圏で15~25%の人口減
・中心部に投資を集中させ、規制緩和を進める
と、郊外は30%以上の人口減
・広域調整の必要性
・長期的視点に立った土地利用計画
(3)都心部の開発
人口減少を逆手に取った将来展望
防災、自然と歴史の再生、ゆとりの確保を通じ
た都市格(クオリティー)、独自性の向上
→都市間競争力の強化
→東京、大阪とは異なる都市ブランド
(4)コミュニティの維持
・基本的な施設は小学校区内に設置
・保育所、学童保育、デイサービスetc
・基本的なサービスが小学校区から消滅すると
地域が衰退する
・小学校区を変えるのは最終手段
(5)小学校区を基礎とした行政機構の再編
・小学校区単位に行政の出張所を設置
・高齢者介護、子育て支援、社会教育、防犯、
防災等の施策を出張所が担当
・民営化ではなく、地域化で無駄を省き、市民
ニーズに応える
・小学校区を単位とした住民組織
・住民組織と行政機構は一体