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  • あなた専用テレビ実現に向けた「ドコモテレビターミナル」の開発

    NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル Vol. 26 No. 4(Jan. 2019) ― 6 ―

    生活をより便利にシームレスに.未来の暮らし

    あなた専用テレビ実現に向けた 「ドコモテレビターミナル」の開発

    移動機開発部 正見まさ み 健一朗けんいちろう

    鈴木すず き 千尋ちひ ろ

    田中たな か 佑弥ゆう や 荒木

    あら き 香住かす み

    近年,映像配信を主軸としたセットトップボックスの普及が世界中で進んでいる.しかしながら,いまだユーザの視聴履歴による,ユーザの嗜好に合ったコンテンツをレコメンドする機能はあまり具備されていないのが現状である.それを実現すべく,ドコモは “あなた専用テレビ” において,dアカウント®*1を基軸としたユーザの行動履歴に基づくザッピング視聴の実現,および家族利用を想定したマルチアカウント利用機能を有した新たなホームデバイスを開発した.

    1. まえがき 近年,映像サービスを主軸としたホームデバイスの普及が進む中,ドコモは,「ドコモの映像サービスすべてを自宅のテレビで.家族それぞれのスタイルで楽しみが広がる.」[1]を商品コンセプトに,家族利用を前提にしつつも,一方で個人利用にも対応する「あなた専用テレビ」といえるセットトップボックス,「ドコモテレビターミナル®*2」を開発した. ドコモテレビターミナルの外観を写真1に,主な仕様を表1に示す.

    視聴履歴 ユーザ切替 映像配信

    写真1 外観

    ©2019 NTT DOCOMO, INC. 本誌掲載記事の無断転載を禁じます.

    *1 dアカウント®:ドコモが提供しているネットショッピングやデジタルコンテンツなどの色々なサービスをご利用いただける無料の共通ID.㈱NTTドコモの登録商標.

    *2 ドコモテレビターミナル®:㈱NTTドコモの登録商標.

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  • あなた専用テレビ実現に向けた「ドコモテレビターミナル」の開発

    NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル Vol. 26 No. 4(Jan. 2019) ― 7 ―

    表1 主な仕様

    カラー ホワイト

    サイズ 107mm(W)×107mm(D)×25.5mm(H)

    重量 209g

    OS Android TV 7.0

    CPU Quad Core 1.6GHz

    内部メモリ容量 (RAM/ROM) RAM3GB/ROM16GB

    HDR HDR10,HLG,Dolby Vision

    DLNA DMS機能のみ対応.視聴には,ドコモテレビターミナルアプリが必要 DLNA/DTCP-IP(ひかりTV for docomoのみ)/DTCP+(ひかりTV for docomoのみ)

    LTE LTE/3G/GSM非対応(UIMカードは挿入不可)

    外部接続ポート HDMI2.0a ギガビットEthernet USB2.0×1ポート,USB3.0×1ポート

    Wi-Fi IEEE802.11ac/a/b/g/n,MIMO対応

    Bluetooth Bluetooth4.2

    リモコン 音声入力マイク搭載.Bluetooth,赤外線対応

    対応サービス dTV,dアニメストア,dTVチャンネル,DAZN for docomo,ひかりTV for docomo

    DLNA :Digital Living Network Alliance HDR :High Dynamic Range DMS :Digital Media Server HLG :Hybrid Log Gamma DTCP :Digital Transmission Content Protection MIMO:Multiple Input Multiple Output

    これまでのセットトップボックスでは,サービス提供者による画一的なおすすめコンテンツを含む番組表の中から,ユーザが能動的に視聴したいコンテンツを選択するという利用形態であった.そこでドコモは,ユーザ個々に見合った受動的視聴を促すことで,新たな興味喚起を広げていくということを目的に,これまでの視聴履歴から,それぞれのユーザが今見たいと思っているコンテンツや関連番組を推測し,それをホーム画面のファーストビューで自動でザッピングできるようにした(図1). また,従来のセットトップボックスは,家族利用の際のマルチアカウント設定やリモコン操作の煩雑さ,端末操作方法に関するFAQの分かりにくさな

    ど,多くの課題があった. 本稿では,ドコモテレビターミナルの概要と,上

    記の課題を解決したdアカウントの仕組みや,ホームアプリでのユーザエクスペリエンス*4,おすすめ使い方ヒント機能についての技術内容,具体的な利用シーンについて解説する.

    2. ドコモテレビターミナルの アプリ構成

    ドコモテレビターミナルのアプリ構成を図2に示す.本アプリは,Android™*4TVOS上のアプリ層に,「ホームアプリ」,dアカウント認証/管理をし

    *3 ユーザエクスペリエンス:製品やサービスなどを使用・消費・所有した際に,ユーザが体験できる内容.

    *4 Android™:米国Google, LLC. が提唱する携帯端末を主なターゲットとしたオープンソースプラットフォーム.米国Google,LLC. の商標または登録商標.

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  • あなた専用テレビ実現に向けた「ドコモテレビターミナル」の開発

    NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル Vol. 26 No. 4(Jan. 2019) ― 8 ―

    図1 ザッピングUI

    図2 アプリ構成

    ている「dアカウント設定アプリ」,および端末操作に関するお知らせを出す「おすすめ使い方ヒント」からなる基盤機能アプリと,各映像コンテンツを出力する「dTV®*5」や「ひかりTV®*6」といった各映像サービスアプリを搭載することで構成されている.以下,「あなた専用テレビ」を実現している技術内容と具体的な利用シーンについて,解説する.

    3. dアカウントによるユーザ管理 3.1 マルチアカウント機能 ドコモが提供するさまざまなサービスは,無料の

    共通IDであるdアカウント[2]によって,ユーザごとの契約情報や利用状況が管理されている.ドコモテレビターミナルでは,dアカウント設定アプリ

    ドコモテレビターミナル本体

    dアカウント設定

    ホーム

    おすすめ使い方ヒント

    基盤機能アプリ 各映像サービスアプリ

    ひかりTVfordocomo

    dTVチャンネル

    dTV

    dアニメストア

    DAZNfordocomo

    ・・・

    ※画面ははめ込み画像.

    *5 dTV®:dTV,dTVチャンネル,dTVターミナルは㈱NTTドコモの登録商標.

    *6 ひかりTV®:㈱NTTぷららが運営する映像配信サービス.同社の登録商標.

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    図3 アカウント登録とアカウント一覧画面

    からアカウント情報を参照することにより,端末に対して一度ログインを行うことで,各提供サービスの利用都度ログイン操作が不要となる. 前述のようにdアカウント設定アプリでのアカウント管理はスマートフォンと同様だが,スマートフォンが個人アカウントであるの対し,ドコモテレビターミナルは自宅での家族利用を想定しているため,複数のアカウントを管理することになる.これをマルチアカウント機能という. 家族で使う際は,図3のように端末起動時に各自,自身のアイコンを選択すれば,自分のアカウントですべてのサービスにログインできるようになる.ドコモテレビターミナルは,このマルチアカウント機能により,各アカウントの視聴履歴に基づくおすすめコンテンツがホーム画面にザッピング再生されるようになっており,まさに起動直後から “あなた専用テレビ” を実現している.

    3.2 dアカウント設定アプリの認証処理 多くのサービスログイン情報として利用されてい

    るdアカウントはログイン時,端末上ではトークン*7

    の形でセキュアに管理されている.ドコモテレビターミナルでもこのdアカウント設定アプリのトークンを利用して,さまざまなサービスにおいて認証

    処理を行うことで端末内でのシングルサインオン*8

    を可能にしている. また,画面上にアカウント情報として,アイコン

    とユーザ名が表示され,これを切り替えることで,アクティブユーザ(現在利用しているアカウント)を切り替えることができる.

    3.3 簡易なアカウント登録 アカウント登録については,自動認証になってい

    る.例えば店頭で購入する際,店舗側で端末にdアカウントを登録することにより,自宅での接続時に改めてユーザがdアカウントを登録する必要は無い(しかし,スマートフォンでの認証キー入力は必要).これにより,ユーザが端末へdアカウントを初期設定する手間を省き,購入後,電源とインターネットに接続するだけで,すぐにサービスを利用することができる. もちろん手動による端末への登録も可能であるが,

    その際にも,スマートフォンと連携し,簡易に入力できるようペアリングコード*9での登録方法を提供している.ドコモテレビターミナルに表示されているコードをスマートフォン上のdアカウント設定アプリで入力することで,スマートフォンに登録しているdアカウントがドコモテレビターミナルにも登

    テスト

    *7 トークン:情報を文字列に落とし込んだもの.dアカウントの情報を,他者にはわからない文字列情報として変換したもの.

    *8 シングルサインオン:1つのアカウントで複数サービスにログインできること.

    *9 ペアリングコード:dアカウント認証を行うための識別子.

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    図4 ペアリングコードでの登録

    図5 スマホ認証

    録される(図4).

    3.4 スマホ認証 ドコモテレビターミナルは複数のアカウントの切替えを行うユースケースを想定しており,他のユーザに自分のアカウントを使用されないよう,切替え

    時には必ずパスワードを要求することで,プライバシーにも配慮している. 実際の利用においては,パスワード入力が頻繁に

    要求されることも想定される.この場合,入力のたびに画面にパスワードが表示されるといったセキュリティ上の問題や,また,毎回リモコンによるパスワード入力操作が必要となる煩わしさを回避するために,スマートフォンでの認証機能(スマホ認証)も提供している.スマホ認証はすでにスマートフォン向けのdアカウント設定アプリにて提供されている機能であるが,PCのブラウザやドコモテレビターミナルをはじめとしたセットトップボックスなどの端末で,dアカウント認証をする際にも,画面上でパスワード入力をするのではなく,スマートフォンに通知を送信し,スマートフォンでの生体認証処理(指紋や虹彩認証など)にて代替することで,簡易かつセキュリティを高める.今回のドコモテレビターミナルでも同様の機能を提供しており,本端末上でのパスワード入力をスマホ認証にて代替することが可能である(図5).

    パスワードを入れてログインするのは面倒だし,いくつも覚えてられない

    スマホの生体認証機能で,簡単にログイン可能に

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    4. ユーザエクスペリエンスの特徴 4.1 商品コンセプトからみた提供価値 商品コンセプトを要素分解すると「ドコモの映像

    サービスすべて」「自宅のテレビ」「家族それぞれ」の3つが特徴である. ⑴ドコモの映像サービスすべて 文字通り,本商品を購入すればドコモの映像サービスをすべて楽しむことができる体験のことである.映像サービスは2018年9月現在,dTV,dアニメ®*10

    ストア,dTVチャンネル®,DAZN®*11 for docomo,ひかりTVなどがあるが,これらすべてのサービスを利用可能なデバイスが,ドコモの商品ラインナップに存在しなかった.スマートフォンでは光回線利用が前提であるひかりTVが視聴不可であり,過去に発売したdTVターミナル®はdTV,dアニメの視聴のみ対応していた.今回,ドコモテレビターミナルの開発によりすべての映像サービスが視聴可能となった. ⑵自宅のテレビ スマートフォンではなくテレビ端末を用いて映像サービスを視聴してもらうということである.テレビ端末を利用する場合,タッチパネルによる入力を前提としたスマートフォンと異なり,テレビ画面表示に対応したリモコンによる入力操作が前提となり,操作性(簡易度,自由度など)に大きな差がある.例えばカルーセル形式*12のコンテンツを選択する場合,スマートフォンのようなモバイルデバイスでは1ステップ操作であるのに対して,リモコンでは2ステップ以上の操作が必要となる.これらのことからもテレビ端末をターゲットデバイスとする場合,リモコンの操作性向上が必要となる. ⑶家族それぞれ 利用人数による違いを示している.「自宅のテレビ」は私的な所有物であるスマートフォンとは異なり,家族で共有し,リビングルームなどの共有ス

    ペースに配置されていることがイメージされる.家族全員でコンテンツを視聴する場合もあれば,1人で自身の好きなコンテンツを視聴する場合もある.利用シーンによって,ユーザニーズが変動するため,そういったさまざまなユーザの希望に応えられるような環境が必要となる.

    以上,「ドコモテレビターミナル」がめざす提供価値は「家族のなかの私が」「いま楽しみたいドコモの映像サービスを」「テレビ画面で快適に楽しめる」であり,これらを実現できるUI*13を設計した.

    4.2 ホーム画面におけるUIデザイン 「ドコモテレビターミナル」では2つのUIデザインを提案した.「マルチユーザへのパーソナライズ」と「ザッピングUI」である. ⑴マルチユーザへのパーソナライズ 例えば,家庭に置き換えた場合,お父さんにはお

    父さんの,お母さんにはお母さんの,お子さんにはお子さんの必要な情報がそれぞれ最適化されている状態を指す.家族みんなで楽しむ場合に加え,操作するユーザ自身の嗜好を満足させるようパーソナライズした情報を提供する.パーソナライズの切り口としては「契約中サービスを基にしたレコメンド*14コンテンツ」「視聴ログなどを基にしたレコメンド*15コンテンツ」を提供することだと考える.その際に,必要とされるUI要素は以下となる. ・端末起動時にログインしたいユーザ(必要とするパーソナライズ情報)が簡単に選択できること

    ・ログイン後はすべてのサービスで同じユーザとして扱われること

    ・ログインしていないユーザの情報は表示されないこと

    専用デバイスであれば,起動シーケンス内で必ず

    *10 dアニメ®:㈱NTTドコモの登録商標. *11 DAZN:Performの商標または登録商標. *12 カルーセル形式:複数のオブジェクトを数珠つなぎで表示し,

    オブジェクトをスライドさせて対象物を選択させる方式のこと.

    *13 UI:ユーザとコンピュータとの間で情報をやり取りする際の操

    作画面や操作方法. *14 契約中サービスを基にしたレコメンド:ドコモが提供している

    映像サービスのうち,契約しているサービスを優先してレコメンドすること.

    *15 視聴ログなどを基にしたレコメンド:視聴ログから次にユーザが視聴したくなるコンテンツを推定してレコメンドすること.

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    図6 端末起動シーケンス

    通過する位置でユーザ認証を行うことで簡易に実現可能であるが,Android環境では非同期にすべてのアプリが動作可能なため,ユーザの認証が終わるまでの間,他のアプリの起動を抑止するなどの機能の実装が難しい.その解決のために本製品では,ユーザ操作の起点となるホームアプリにログインする機能を用意し,未ログイン時は他のアプリを利用できないよう設計した.ドコモテレビターミナルの起動シーケンスを図6①~③に示す. ①スマートフォンにおけるSLEEPからの復帰時に該当するが,意図せず他アプリの画面が前面に出現することがないように電源ボタンが押された場合は必ずフレームワーク*16層にてホームアプリ起動を行っている.また,複数の起動モードが存在し,端末起動が,ホームアプリのプロセス起動とはイコールではない場合があるため,端末起動であることが分かるextra情報を付与している.これらによりどのような場合でも必ずホームアプリが最前面で起動する機能

    を実現した. ②ユーザ認証中に他のアプリが割込みでユーザ情報を取得した場合に備え,アクティブなユーザ情報を0にする処理となる.これは,例えば今お父さんがログインしようとしている瞬間に,とあるサービスアプリがお母さんのユーザ情報を使ってしまうことを防止することを目的としている.

    ③前述したアカウントのログイン処理となる.この処理により再びアクティブなユーザ情報が設定されるため各サービスアプリはユーザ情報が利用可能となる.

    ドコモテレビターミナルのログイン画面におけるユーザ体験イメージは図7となる.各自のアイコンを選択すれば,ドコモの映像サービスを利用でき,ユーザの趣向に応じたコンテンツがレコメンドされるようになる.また,プライバシーを重んじて利用するユーザを想定し,非公開を望んだアカウントに

    端末側の処理 ホームアプリの処理

    端末起動であることの把握Intent発行

    電源On

    電源状態通知処理

    起動準備処理

    起動準備完了ホーム起動要求

    Intent発行

    dアカウント設定アプリの処理

    アクティブユーザ情報を消去

    ログイン要求アクティブユーザ情報を設定

    ① ②

    ユーザ情報リセット要求

    ログイン画面表示(バック)

    ログイン画面表示(フォア)

    ログイン操作

    ホーム画面表示

    *16 フレームワーク:ある領域のソフトウェアに必要とされる汎用的な機能や基本的な制御構造をまとめたもの.ライブラリでは,開発者が個別の機能を呼び出す形となるが,フレームワークでは,全体を制御するのはフレームワーク側のコードで,そこから開発者が個別に追加した機能を呼び出す形となる.

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    図7 ログイン画面

    ログインする場合はパスワード入力が必要な仕様とした. ⑵「ザッピングUI」 ユーザが次に利用したいコンテンツを実際に視聴しながら選択できる操作を指す. テレビ放送において,リモコンの数字ボタンを押せば,番組の切替えが可能になることと比較すると,映像サービスは視聴を開始するまでに必要な操作数が多い.一般的には「A:気になるワードで検索する」「B:検索結果の中から興味のあるコンテンツを選択する」「C:選択したコンテンツの視聴を継続するか判断する」の3ステップを煩雑に感じる可能性が高いと考える. その解決として,本製品ではホーム画面上で映像コンテンツを再生する体験を提案した. ドコモテレビターミナルのザッピングUIにおけるユーザ体験イメージは図1となる.ホームアプリ起動後の1stフォーカス*17にユーザが関心のありそうなコンテンツをレコメンドコンテンツとして表示し再生を始めることで,ユーザに対して視聴継続の判断を促す.コンテンツの再生が終了したら次のコン

    テンツへ自動的に進み,また再生が始まることでユーザは受動的にコンテンツの視聴継続判断が可能となる.また,能動的に操作を行いたいユーザを阻害しないよう,2ndフォーカスが可能な位置にドコモの各サービスアプリの起動アイコンを配置し,1ステップで目的のサービスが起動できるようレイアウトした. ザッピングUIは精度の高いレコメンドが必要と

    なるが,Android標準で用意されているレコメンド機能はホームアプリで制御ができないため精度の担保が難しい.そこで,本商品では,ユーザ情報を一元的に分析してレコメンド情報を作成するサーバを用意した.機能構成を図8に示す.ホームアプリからサーバにはdアカウントの識別情報のみを引数で渡し,サーバは識別情報を使って,ユーザのサービス契約状態や視聴ログなどを基に最適なレコメンド情報を返却する. これら「マルチユーザへのパーソナライズ」と

    「ザッピングUI」をホームアプリに搭載することで製品コンセプトを満たすUIを実現した.

    *17 フォーカス:ボタンなどが選択され入力や決定がされる状態.

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    図9 お知らせ一覧

    図8 機能構成図

    5. おすすめ使い方ヒント 5.1 おすすめ使い方ヒント概要 ドコモテレビターミナルでは,2016年夏シーズンのスマートフォンから搭載がスタートした,「おすすめ使い方ヒント」[3]の機能を搭載している.このサービスはお客様1人ひとりの使い方や状況に応

    じて,端末をより快適に使用してもらうためにお知らせ表示をするという機能である.ドコモテレビターミナルでは,「ヒント」という名前ではなく「お知らせ」と名前を変えて表示しており,今後このお知らせの一覧の中に,端末操作のヒント以外にも各サービスからの「お知らせ」も表示をさせる予定である(図9).

    ホームアプリ

    ID管理アプリ

    mediaSDK

    レコメンドサーバ

    ユーザ情報

    レコメンド情報

    端 末メディアプレーヤ

    端末起動関連通知

    コンテンツサーバ

    コンテンツリクエスト

    コンテンツレスポンス

    映像データ

    認証処理

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    NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル Vol. 26 No. 4(Jan. 2019) ― 15 ―

    図10 おすすめ使い方ヒントの利用導線

    また,Android TV OSとして,お客様に適した端末の操作・利用を促すアプリはこのアプリしか存在せず,ドコモ独自機能と言える.

    5.2 お知らせ表示方法 ユーザが「お知らせ」を閲覧するために2つの導

    線を設けた.1つがレコメンデーションに表示されたお知らせを押下する方法,もう1つが,リモコンにある「お知らせボタン」を押下し,見たいお知らせを選択する方法である(図10).選択された利用方法は動画で再生され,その動画の通りにお客様に操作をしてもらうことで,より直観的にわかりやすいお知らせ表示となるよう工夫した.また,動画に関しては,YouTube™*18に動画をアップロードしておき,おすすめ使い方ヒントアプリの画面からWebView*19にてYouTube再生を行っている.ただし,動画を見ながら画面を同時操作することができないことから,スマートフォン上でも動画を視聴で

    きるQRコード®*20を設け,利便性を向上させている.

    5.3 お知らせ更新 「お知らせ」は,端末OSバージョンの変更時や,ユーザの利用方法が変わった際にも,その内容を最適化するため,定期的にサーバへ最新ルールセットデータベースの有無を確認する.最新情報でアプリのデータベースを更新することで,端末では常に最新のお知らせを表示することができる.また,お知らせの内容に関しては,各ユーザの利用履歴に合わせて配信しているため,複数のdアカウントが登録されている状態では,アカウントを切り替えると,各アカウントに最適なお知らせを表示している.

    5.4 お知らせボタン搭載 ドコモテレビターミナルでは,過去に表示をした

    お知らせをいつでも見やすくするために,リモコン

    ① ②

    *18 YouTube™:Google, LLC. の商標. *19 WebView:アプリ内でWebページを表示できる機能のこと.

    *20 QRコード®:2次元バーコードの一種.㈱デンソーウェーブの登録商標.

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    図11 お知らせLED

    に「お知らせボタン」を搭載した.この「お知らせボタン」を押下すると,最新の「お知らせ」に加えて,過去に表示した「お知らせの履歴一覧」も閲覧できる. ドコモテレビターミナルの最新アップデートでは,

    「重要なお知らせ」が表示されたタイミングで,「お知らせボタン」横のLEDが光る機能を追加している(図11).その対象となるのは,ドコモとしてすぐにお客様に把握していただきたい内容であり,ユーザに気づいてもらえるよう工夫した.このLED機能もデータベース上でハンドリングが可能である.また,「重要なお知らせ」をリアルタイムで確認できなかったユーザのために,リマインドでLED点灯する仕組みも設け,その見逃しを防止している.今後も「お知らせ」で表示される内容については,端末の操作ヒントだけでなく,各ドコモサービスからのお知らせあるいはインフォメーションや告知を表示することにより,さらなる利便性向上を図っていく.

    6. あとがき 本稿では,ドコモテレビターミナルのコンセプトの1つである,「あなた専用テレビ」を実現する工夫・技術について,その詳細を解説した.スマートフォンのみならず,ホームデバイスという新たなユーザ接点において,今後も搭載サービスを拡張し

    つつ,それぞれのユーザニーズに沿った新たな視聴体験を提供できる仕組みを検討していきたい.

    文 献 [1] NTTドコモ:“ドコモテレビターミナル.”

    https://www.nttdocomo.co.jp/product/docomo_select/tt01/index.html

    [2] NTTドコモ:“dアカウント.” https://id.smt.docomo.ne.jp/

    [3] NTTドコモ:“おすすめ使い方ヒント.” https://www.nttdocomo.co.jp/service/osusume_hint/

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