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連載:現代曹情報シリーズ TUNG-SOL 1 2AX7復刻版 都来往人 はじめに 2月下旬になって,米国よりTUNGSOL12AX 7 の復亥版が日本に上陸したというニュースが届きまし た. 今回復刻されたTUNG-SOL 12AX7 ij:, TUNG- SOLブランドの現在のオーナーである米国のNew Sensor社(Sovtek球やElectro-Harmonix球のサプライ ヤーとして有名)がロシアのReHector社に遣らせた製 品で 2月号でご紹介した6550復刻版(11月下旬に日 本に上陸)に続くTUNGSOLオリジナル復刻計画の 第二弾となります.米国での発表は2月中旬で発売 は2月下旬頃のようです. 今回はサンプルが入手できましたので・,きっそくご 紹介したいと思います. TUNG-SOLについて 真空管製造会社として知られるTUNGSOLは, 米国ニュージャージー州のNewarkに所在した中規 模のメーカーです. 電球の製造からスタートした同社は, 1930年頃から は真空管の製造を始め,第二次世界大戦中は軍用球を 量産し,この頃WEとも技術提携して6AR6や316 Aなどを製造しています.軍用や工業用の高信頼管を 得意とした同社は, 1950年代初頭には5881を「究瞳 の信頼性を持つ6L6」として発表し, 1955年には2 球PP動作で100 Wの大出力が得られる画期的な大 型ビーム出力管: 6550を開発しています. 同社はその後も真空管を製造し続けましたが,やが 80 て半導体が電子機器の主流になると, 1970年代後半に は真空管の製造から撤退し,会社そのものも終結した 模様です. これは推測になりますが, TUNG-SOLのブランド 名は,電球メーカーとして創業した同社が,太陽のご とく煙々と世の中を照らすタングステン・フィラメン トをイメージして,タングステン(エ聖堂Sten)と太陽 (塾)の二つの言葉を組み合わせてつけたのではない かと思います. 12AX7について 12AX7は1948年頃にRCAから発表されま た.各社の真空管マニュアルでは12AX7は「9ピ ンMT型の高増幅率双三極管で各ユニットはヒ一夕 が共通である以外は別々に電極を引き出してあるので 独立して使用できる.非常に多くの用途を持ち, Hi-Fi 脚醗嵩やテープレコーダー,その他工業用の低周波増 幅器位相反転,音質補償回路,マルチ・バイプレー タ,あるいは高利得に設計した多種類の工業用制御回 路に応用される」と紹介されています. 12AX7は6SL7-GTなどのGT管に比べ 極が小型化されたため,マイクロフォニック雑音が激 減しました. そのため業務用途やマイクロフォンやフォノ・プリ アンプなどの微小信号増幅用途の初段管としての適陸 が増したことにより,その後,業務用や民生用を含め て一般に広く使われることとなり,また12AX7A やECC83, 7025をはじめとする数多くのバリエーシ ョンを生んで発展しました. ジオ技術

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  • 連載:現代曹情報シリーズ

    TUNG-SOL

    1 2AX7復刻版

    都来往人

    はじめに

    2月下旬になって,米国よりTUNGSOL12AX 7

    の復亥版が日本に上陸したというニュースが届きまし

    た.

    今回復刻されたTUNG-SOL 12AX7 ij:, TUNG-

    SOLブランドの現在のオーナーである米国のNew

    Sensor社(Sovtek球やElectro-Harmonix球のサプライ

    ヤーとして有名)がロシアのReHector社に遣らせた製

    品で 2月号でご紹介した6550復刻版(11月下旬に日

    本に上陸)に続くTUNGSOLオリジナル復刻計画の

    第二弾となります.米国での発表は2月中旬で発売

    は2月下旬頃のようです.

    今回はサンプルが入手できましたので・,きっそくご

    紹介したいと思います.

    TUNG-SOLについて

    真空管製造会社として知られるTUNGSOLは,

    米国ニュージャージー州のNewarkに所在した中規

    模のメーカーです.

    電球の製造からスタートした同社は, 1930年頃から

    は真空管の製造を始め,第二次世界大戦中は軍用球を

    量産し,この頃WEとも技術提携して6AR6や316

    Aなどを製造しています.軍用や工業用の高信頼管を

    得意とした同社は, 1950年代初頭には5881を「究瞳

    の信頼性を持つ6L6」として発表し, 1955年には2

    球PP動作で100 Wの大出力が得られる画期的な大

    型ビーム出力管: 6550を開発しています.

    同社はその後も真空管を製造し続けましたが,やが

    80

    て半導体が電子機器の主流になると, 1970年代後半に

    は真空管の製造から撤退し,会社そのものも終結した

    模様です.

    これは推測になりますが, TUNG-SOLのブランド

    名は,電球メーカーとして創業した同社が,太陽のご

    とく煙々と世の中を照らすタングステン・フィラメン

    トをイメージして,タングステン(エ聖堂Sten)と太陽

    (塾)の二つの言葉を組み合わせてつけたのではない

    かと思います.

    12AX7について

    12AX7は1948年頃にRCAから発表されまし

    た.各社の真空管マニュアルでは12AX7は「9ピ

    ンMT型の高増幅率双三極管で各ユニットはヒ一夕

    が共通である以外は別々に電極を引き出してあるので

    独立して使用できる.非常に多くの用途を持ち, Hi-Fi

    脚醗嵩やテープレコーダー,その他工業用の低周波増

    幅器位相反転,音質補償回路,マルチ・バイプレー

    タ,あるいは高利得に設計した多種類の工業用制御回

    路に応用される」と紹介されています.

    12AX7は6SL7-GTなどのGT管に比べて電

    極が小型化されたため,マイクロフォニック雑音が激

    減しました.

    そのため業務用途やマイクロフォンやフォノ・プリ

    アンプなどの微小信号増幅用途の初段管としての適陸

    が増したことにより,その後,業務用や民生用を含め

    て一般に広く使われることとなり,また12AX7A

    やECC83, 7025をはじめとする数多くのバリエーシ

    ョンを生んで発展しました.

    ラ ジオ技術

  • No ��87b�具体例

    1 �

    2 �

    現代管ではElectr0-marm°nixの12AX7-蘭やTung-SOL12^X7復刻版

    3 �

    (BoxPlate) 凉ル�8ャx,X,ユ4TB�fWFニ��ユ7B�WFW'6'W&r�テ�$�ビ�

    4 �主に1960年代以降のGEやSylvania製に多く見られる

    5 �

    6 �h8ネ�ク6x,ノ�hリx*"�大半の12AX7のプレートは灰色だが1950年代初期頃のRCA等の現品には黒色 プレートも存在するoまた仏MazdaやRT、Siemens等は1960年代初期に銀色のニツル

    7 �多くの12AX7のプレートには縦や俄に補強リブが入っているが、Telefunkenの1960年代

    〈第1表〉 12 AX 7の構造的分類

    タイプ �X8�86�品名 儖Xヨツ�

    を持つグループ ��FVイ�12AX7WA �

    SoVtek �$�ブt"�

    Sovtek �$�ブt2�

    Sovtek �$�ブu��

    Sovtek �$�ブu�イ�

    SoVtek �

    SoVtek �$�フナ��90年代後半登場のロングプレ「ト型

    Sovtek �$�フナ�2�99年登場、スパイラル.ヒ一夕採用の低雑音対筑智

    12AX7-EH �

    rung-Sol �$�ペYネリ�R�

    (第2表)ロシア製12AX7の分類

    RCAから1948年頃に発表された12AX7は,

    1960年頃には同じくRCAから民生用・家庭用・ Hi-

    Fi用として雑音やハムを減らした改良型の12AX 7

    Aにバージョンアップされ,またPhilips/Mullard

    からはHi-Fi用のECC 83が発表されています.

    1960年頃にRCAから発表された12AX7Aの

    型番の末尾(サフィックス)の"A''は,トランスレス

    管のヒ一夕起動時問の管理の意味とは異なり,低ハム,

    低マイクロフォニック特性のオーディオ用という意味

    で雑音とハムがグリッド入力換算値で平均1.8FLV

    に規定されています.

    また, 12AX7Aになって最大定格もEpmax300

    Vから330Vに,プレート損失も(Pd)1.OWから1.2

    Wに, Egmaxは-50Vから-55Vに若干アップし

    ています.

    12AX7は欧米や日本を始め,世界中でさまざまな

    タイプのものが製造されましたが,海外では,プレー

    JUN 2005

    トの形状や色などにより,第1表のとおり都合7種類

    に分類されているようです.

    ところで,ミュージシャンの間では,米国製の12

    AX7はRCAやTung-Solの平型プレート・タイプ

    の製品が音が良いといって人気があるようです.

    このうち, Tung-Sol製の12 AX 7は, 1950年代の

    黒色の長い平型プレート・タイプ(Long Black P一ate)

    と1950年代後半から1960年代の灰色の長い平型プ

    レート・タイプ(LongGrayPlate)がよく知られてい

    ます.

    1950年代の黒色の長い平型プレート・タイプは,辛

    ター・アンプではTweedのアンプに純正品(Original

    Equipment)として装備され,灰色の長い平型プレー

    ト・タイプは, 1960年代のFenderやGibson,

    Magnatoneをはじめとする多くの米国製ギター・ア

    ンプに純正品として装備されていました.

    米国のミュージシャンの間では, 1950年代後半から

    81、

  • 12 AX 7-EHも同様です.

    スプリング・マイカ採用の目的は,カソード・スリ

    ープの熱による移動や振動を抑えてマイクロフォニッ

    タ雑音を低減させることと,カソード上端部にふたを

    することでヒ-タからの熱電子の放出やカソードやヒ

    一夕からの金属物質の蒸発を抑えるためです.

    グリッド支柱の上下やプレート支柱の上下は,マイ

    クロフォニッタ低減策の一三環として,金属スリープを

    介してマイカにしっかりと固定されています.

    ヒ一夕はハム低減効果のあるスパイラル型で これ

    は12AX7ゼHと同じ仕様です.続いて電極とステ

    ム・リードの接続法を見てみると,オリジナルTung-

    SOl 12AX7がステム・リードをプレートのタブに

    直接溶接しているのに対して, TS-12AX7RIや12

    AX 7-EHのプレート支柱の下部は,金属スリープを

    介してステム・リードと接続しています.

    84

    また,グリッド支柱とステム・リードの間も,オリ

    ジナルはグリッド支柱にステム・リードを直接溶接し

    ているのに対して, TS-12AX7RIや12AX7-EH

    はリボンで接続しているといった違いがあります.

    TS-12AX7RIや12AX7EHのマグネシア処

    理された白い上下マイカは,欧米製品よりも厚手です.

    マイカの形状は欧米製品とは異なるロシア製MT

    管独特のふくらみを持った菱形で,角を管壁に食い込

    ませることで電極をしっかりと支持しています.また,

    上部マイカには透明なスプリング・マイカを重ねてい

    ます.

    一方,オリジナルTung-SOl12AX7は,白くマグ

    ネシア処理された薄手で円形のマイカのへりに放射状

    に16本の爪をセットしたタイプです.

    上部マイカには透明なスプリング・マイカがセット

    されていますbi,ロシア製とはデザインが異なります.

    ラ ジオ技術

  • ●左より:タンクゾル12AX7復刻, EH 12AX7EHタンクソル12AX7 (1960年代)

    肝腎の音質については,米国からの情報によると,

    TS-12AX7RIは雑音特性,リニアリティともに問題

    なく,音質的にも温かみがあり,ダイナミックで立体

    的なサウンド(Dynamic 3 -Dsound)が特徴であると,

    かなり高く評価されているようです.

    実際に我が家のパワーアンプ(6AC5シングル,初段

    は12AX7SRPP)でテストしたところ, 12AX7-EH

    はクリアで音の粒立ちがよく,低域~高域までのバラ

    ンスが良い音といった印象で TS-12AX7RIは12

    AX 7-EHのこのような印象にさらに甘い響きやまろ

    やかさといったニュアンスカ油日わり,楽器やヴォーカ

    ルがより生めかしく際立ち,細かな表現もよく再現さ

    れているといった印象を持ちました.

    TS-12AX7RIの手本となったと思われる1960

    年代製のTung-Solオリジナルの12AX7 (Long

    Gray Plate)と上疇交すると,両者の間に音質差はあまり

    感じられませんでしたが,よく聴きこんでみると,オ

    リジナルにはヴィンテージ球に共通する若干枯れた感

    じがあり, TS-12AX7RIは解像度が若干上がった

    ような感じがしました.

    管球式のフォノEQアンプが手許にないため,微小

    信号増幅用途での試聴はできませんでしたが,恐らく

    再生音ははす洞じような印象を感じることができるの

    ではないかと思います.

    バランスの良い音が特徴の12 AX 7-EHは,米国で

    はFenderやAmpegをはじめとする多くのギター・

    88

    アンプや録音機材等で標準採用されているほど定評が

    あるようですが,今回発表されたTung-Sol 12 AX 7

    復刻版は,試聴の結果,これにさらに表現の豊かさや

    音楽性が加わったような印象を持ちました.

    オリジナルTung-Sol製との比較においては,復刻

    品との間に顕著な音質の差は感じられませんでしたの

    で,電極のサイズや形状といった外観や構造上の違い

    はあっても,音質的には「オリジナルを強く意識して

    開発された魅力的な新製品」といってもよいかと思い

    ます.

    Tun㌻Solブランドを所有するロシア製真空管の大

    手供給元(サプライヤー)である米国のNewSensor社

    からは,ロシア生まれのTung-Solブランド管が次々

    と発表されています.

    2月号でご紹介した6550 RI(旦e王ssue)や今回ご紹介

    した12AX7RIの他にも6V6GT-RIがすでに日

    本に上陸しています.

    NewSensor社は,これまで自社ブランドでオリジ

    ナル相当管を多数発表してきましたが,最近になって

    オリジナルそのものの復刻という路線に変わりつつあ

    るようです.

    ロシア以外にもスロバキアのJ/手Electronicにお

    いても平形プレートのECC803Sという新型管が開

    発され すでに米国で発売されたというニュースも伝

    わってきました.また,中国においても新型管が次々

    と発表されています.

    ラ ジオ 技術